【課題】高温高湿又は高温低湿の過酷な環境条件並びに急激に温度又は湿度が変化する環境条件においても発泡やハガレの発生が抑制された高い耐久性を有し、光漏れの発生が抑制された粘着剤組成物及び、該粘着剤組成物を用いた光学機能性フィルムを提供する。
【解決手段】水酸基を有する単量体に由来の構成単位、芳香環を有する単量体に由来の構成単位、及びアルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位を含むアクリル系共重合体A及びBと、イソシアネート系化合物と、を含み、前記アクリル系共重合体A中及びB中の水酸基を有する単量体に由来の構成単位の含有量(I)及び(II)が式(1)で表される関係を、前記アクリル系共重合体A及びBとの芳香環を有する単量体に由来の構成単位の総量(III)が下記式(2)で表される関係を満たす粘着剤組成物である。
前記アクリル系共重合体A中の水酸基を有する単量体に由来の構成単位の含有量(I)が0.01mol%以上2.4mol%未満であり、前記アクリル系共重合体B中の水酸基量を有する単量体に由来の構成単位の含有量(II)が1.2mol%以上10.0mol%以下である請求項1に記載の粘着剤組成物。
前記アクリル系共重合体A中の水酸基を有する単量体に由来の構成単位の含有量(I)と前記アクリル系共重合体B中の水酸基を有する単量体に由来の構成単位の含有量(II)との差((II)−(I))が、0.1mol%以上10mol%以下である請求項1又は請求項2に記載の粘着剤組成物。
前記アクリル系共重合体Bに対する前記アクリル系共重合体Aの混合比率(A/B)が、質量基準で90/10〜50/50である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
前記イソシアネート系化合物の添加量が、前記アクリル系共重合体A及び前記アクリル系共重合体Bの合計量100質量部に対して0.1質量部〜1.0質量部である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
前記アクリル系共重合体A及び前記アクリル系共重合体Bのアルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位が、炭素数1〜6のアルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
前記アクリル系共重合体A及び前記アクリル系共重合体Bの水酸基を有する単量体に由来の構成単位が、(メタ)アクリル系単量体に由来の構成単位である請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
前記アクリル系共重合体A及び前記アクリル系共重合体Bの芳香環を有する単量体に由来の構成単位が、(メタ)アクリル系単量体に由来の構成単位である請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の粘着剤組成物、及びこれを用いた光学機能性フィルムについて詳細に説明する。
本明細書において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
また(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの少なくとも一方を意味し、(メタ)アクリルとはアクリル及びメタクリルの少なくとも一方を意味する。
また、本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0017】
<粘着剤組成物>
本発明の粘着剤組成物は、水酸基を有する単量体に由来の構成単位、芳香環を有する単量体に由来の構成単位、及びアルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位を含むアクリル系共重合体Aと、水酸基を有する単量体に由来の構成単位、芳香環を有する単量体に由来の構成単位、及びアルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位を含むアクリル系共重合体Bと、イソシアネート系化合物と、を含み、前記アクリル系共重合体A中の水酸基を有する単量体に由来の構成単位の含有量(I)と前記アクリル系共重合体B中の水酸基を有する単量体に由来の構成単位の含有量(II)が下記式(1)で表される関係を満たし、前記アクリル系共重合体A及び前記アクリル系共重合体Bの、芳香環を有する単量体に由来の構成単位の総量(III)が下記式(2)で表される関係を満たす。
(II)−(I)>0mol% (1)
(III)≧3mol% (2)
【0018】
また、本発明の粘着剤組成物は、アクリル系共重合体A、アクリル系共重合体B及びイソシアネート系化合物に加えて、必要に応じて、更に、架橋剤やシランカップリング剤、及びその他添加剤などの成分を含んでいてもよい。
【0019】
従来から、粘着剤を分子量の異なる複数種の共重合体を用いて構成する技術は知られているが、単に一部の共重合体の分子量を小さくするのみでは、白抜けなどの光漏れに対して応力緩和による改善効果は期待できるが、耐久性は著しく低下し、発泡やハガレなどの発生が抑えられない。
本発明においては、水酸基を有する単量体に由来の構成単位の含有量が異なるアクリル系共重合体を特定の比率で混合し、所定の量のイソシアネート系化合物でアクリル系共重合体を架橋させることで、急激な環境条件変化による偏光ベースフィルムの変形に対しても発泡やハガレなどの発生を抑制できる高い耐久性が得られる。また、アクリル系共重合体が、芳香環を有する単量体に由来の構成単位を所定量含有することで、白抜けなどの光漏れを抑制することができる。
【0020】
本発明の作用機構は明確ではないが、本発明者らは、以下の如く推測している。
本発明において、アクリル系共重合体に含有される水酸基を有する単量体に由来の構成単位の含有量、アクリル系共重合体の分子量、アクリル系共重合体の混合比率、イソシアネート系化合物の配合量を特定の量とすることで、粘着剤組成物としたときの弾性と粘性のバランスに優れ、アクリル系共重合体に含有される水酸基を有する単量体に由来の構成単位の含有量が少ないアクリル系共重合体Aの部分で応力緩和が起こり、アクリル系共重合体に含有される水酸基を有する単量体に由来の構成単位の含有量が多いアクリル系共重合体Bの部分で粘着剤組成物としての適度な凝集力を得ることで、粘着剤組成物が、環境変化による偏光ベースフィルムの変形に追従し、発泡やハガレの発生を抑制することができると考えられる。
【0021】
以下に各成分について詳述する。
本明細書において適宜、アクリル系共重合体Aとアクリル系共重合体Bを総称してアクリル系共重合体と称する。
【0022】
−アクリル系共重合体A−
本発明の粘着剤組成物は、水酸基を有する単量体に由来の構成単位、芳香環を有する単量体に由来の構成単位、及びアルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位を含むアクリル系共重合体Aの少なくとも一種を含有する。このアクリル系共重合体Aは、少なくとも、水酸基を有する単量体に由来の構成単位、芳香環を有する単量体に由来の構成単位、及びアルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位を共重合させた共重合体であり、さらにその他の単量体に由来の構成単位を共重合させてもよい。
【0023】
前記アクリル系共重合体Aは、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよいが、ランダム共重合体であることが好ましい。
【0024】
前記アクリル系共重合体Aは、水酸基を有する単量体に由来の構成単位の少なくとも1種を含む。水酸基を有する単量体に由来の構成単位を含むことで、粘着剤組成物としての凝集力が向上して耐久性が向上し、光学機能性フィルムに適用した場合に光漏れを抑制することができる。
【0025】
前記アクリル系共重合体Aに含有される水酸基を有する単量体は、1分子中に少なくとも1つの水酸基を有し、アルキル(メタ)アクリレートと共重合可能な重合性化合物であれば特に制限はない。水酸基を有する単量体の1分子中における水酸基数は特に制限されないが、1であることが好ましい。
水酸基を有する単量体に由来の構成単位は、他の構成単位との相溶性の観点から、水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体に由来の構成単位が好ましく、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来の構成単位がより好ましい。
水酸基を有する単量体の例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,3−ジメチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2,4−トリメチル−3−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−3−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、及びポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
中でも、重合反応性が高く、得られた共重合体を含む組成としたときの架橋反応性に優れる点で、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、アルキル部位の炭素数が1〜4のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートがより好ましく、更に好ましくは、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、及び4−ヒドロキシブチルアクリレートである。
水酸基を有する単量体は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
水酸基を有する単量体に由来の構成単位の、アクリル系共重合体A中における含有量は、0.01mol%以上2.4mol%未満が好ましく、0.1mol%〜2.0mol%がより好ましく、0.1mol%〜1.0mol%がさらに好ましい。水酸基を有する単量体に由来の構成単位の含有量が前記範囲内であると、後述するアクリル系共重合体B及びイソシアネート系化合物と混合し、粘着剤組成物としたときに温度又は湿度などの変化により発生する偏光子の応力を緩和することができ、光漏れを抑制するのに有利であり、さらに粘着剤組成物を最適な粘弾性に調整することができ、耐久性の点でも有利である。
【0027】
アクリル系共重合体Aに含有される芳香環を有する単量体は、分子内に少なくとも1つの芳香環を有し、アルキル(メタ)アクリレートと共重合可能な重合性化合物であれば特に制限はない。芳香環を有する単量体における環状基としては、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基であることが好ましい。芳香環を有する単量体における芳香環の含有数は、1〜2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【0028】
芳香環を有する単量体に由来の構成単位としては、他の構成単位との相溶性の観点から、芳香環を有する(メタ)アクリル系単量体に由来の構成単位が好ましい。
芳香環を有する単量体の例としては、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−フェニルチオ−1−エチルアクリレート、8−(2−ナフチルオキシ)−1−オクチルアクリレート、2−(1−ナフチルオキシ)−1−エチルアクリレートなどが挙げられる。
中でも、共重合性の観点からフェノキシエチル(メタ)アクリレート及びベンジル(メタ)アクリレートが好ましく、フェノキシエチルアクリレート及びベンジルアクリレートが更にこのましい。
芳香環を有する単量体は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
芳香環を有する単量体に由来の構成単位のアクリル系共重合体A中における含有量は、後述するアクリル系共重合体Bの芳香環を有する単量体に由来の構成単位との総量が3mol%以上となる量であるが、光漏れの抑制の観点から、3mol%以上が好ましく、5mol%〜20mol%がより好ましく、10mol%〜20mol%が更に好ましい。
【0030】
アクリル系共重合体Aは、アルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位の少なくとも1種を含む。アルキル(メタ)アクリレートにおけるアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよいが芳香環は含まない。アルキル基の炭素数としては、1〜20であることが好ましく、1〜18であることがより好ましく、1〜12であることが更に好ましく、1〜6であることが特に好ましい。
【0031】
アクリル系共重合体Aに含有されるアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、i−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、i−ノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、及びステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、粘着剤の凝集力と接着力を調整しやすい点で、炭素数1〜6のアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数1〜6のアルキルアクリレートがより好ましく、特にはn−ブチルアクリレートが好ましい。
前記アルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
アルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位は、アクリル系共重合体Aを構成する主成分として含有される。アルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位のアクリル系共重合体A中における含有量は、65mol%〜99.5mol%が好ましく、65mol%〜94mol%がより好ましく、75mol%〜86mol%が特に好ましい。アルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位の含有量が前記範囲内であると、最適な弾性率に調整することができ、耐久性、タック性確保の点で有利である。
【0033】
アクリル系共重合体Aは、水酸基を有する単量体に由来の構成単位、芳香環を有する単量体に由来の構成単位、アルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位及び必要に応じて含まれる構成単位に加えて、これら以外のその他の単量体に由来の構成単位を含んでいてもよい。
その他の単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等の酸性基を有する単量体;アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ビニルピリジン等の塩基性基を有する単量体;アクリロニトリル、メタクロリニトリル等のシアン化ビニル単量体;ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル単量体などを挙げることができる。
これらの中でも基材との密着性の観点から酸性基を有する単量体が好ましく、アクリル酸がより好ましい。アクリル共重合体A中における酸性基を有する単量体の含有量は0.5mol%〜5mol%が好ましく、3mol%〜5mol%がより好ましい。酸性基を有する単量体の含有量が前記範囲内であると、基材との密着性に優れ、耐久性の点で有利である。
【0034】
アクリル系共重合体Aの重量平均分子量は、500,000以上が好ましく、1,000,000以上がより好ましい。アクリル系共重合体Aの重量平均分子量が500,000以上であると、ハガレなどが生じにくく、耐久性が向上する。
【0035】
アクリル系共重合体Aのガラス転移温度(TgA)としては、−50℃以上−30℃以下の範囲が好ましく、−48℃以上−35℃以下の範囲がより好ましい。TgAが−50℃以上であると、最適な弾性率に調整することができ、耐久性、光漏れ抑制に優れる。また、TgAが−30℃以下であると、粘性を極端に損なうことなくタック性、貼合適正に優れる。
【0036】
アクリル系共重合体Aの粘着剤組成物中における含有量としては、後述するアクリル系共重合体Bに対するアクリル系共重合体Aの混合比率(A/B)を満たす範囲で適宜選択することができるが、粘着剤組成物の全固形分に対して、50質量部以上90質量部以下の範囲が好ましい。アクリル系共重合体Aの含有量が前記範囲内であると、粘着剤組成物に柔軟性が与えられ、応力緩和により光漏れの発生が抑えられる。
【0037】
−アクリル系共重合体B−
本発明の粘着剤組成物は、水酸基を有する単量体に由来の構成単位、芳香環を有する単量体に由来の構成単位、及びアルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位を含むアクリル系共重合体Bの少なくとも一種を含有する。このアクリル系共重合体Bは、少なくとも、水酸基を有する単量体に由来の構成単位、芳香環を有する単量体に由来の構成単位、及びアルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位を共重合させた共重合体であり、さらにその他の単量体に由来の構成単位を共重合させてもよい。
【0038】
前記アクリル系共重合体Bは、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよいが、ランダム共重合体であることが好ましい。
【0039】
前記アクリル系共重合体Bは、水酸基を有する単量体に由来の構成単位の少なくとも1種を含む。水酸基を有する単量体に由来の構成単位を含むことで、粘着剤組成物としての凝集力が向上して耐久性を向上させることができる。
【0040】
前記アクリル系共重合体Bに含有される水酸基を有する単量体は、1分子中に少なくとも1つの水酸基を有し、アルキル(メタ)アクリレートと共重合可能な重合性化合物であれば特に制限はない。水酸基を有する単量体の1分子中における水酸基数は特に制限されないが、1であることが好ましい。
水酸基を有する単量体に由来の構成単位は、共重合性の観点から、水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体に由来の構成単位が好ましく、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来の構成単位がより好ましい。
水酸基を有する単量体の例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,3−ジメチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2,4−トリメチル−3−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−3−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、及びポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
中でも、重合反応性が高く、得られた共重合体を含む組成としたときの架橋反応性に優れる点で、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、アルキル部位の炭素数が1〜4のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートがより好ましく、更に好ましくは、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、及び4−ヒドロキシブチルアクリレートである。
水酸基を有する単量体は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
水酸基を有する単量体に由来の構成単位のアクリル系共重合体B中における含有量は、1.2mol%〜10.0mol%が好ましく、1.2mol%〜5.0mol%がより好ましく、1.2mol%〜2.5mol%がさらに好ましい。水酸基を有する単量体に由来の構成単位の含有量が前記範囲内であると、前記アクリル系共重合体A及びイソシアネート系化合物と混合し、粘着剤組成物としたときの耐久性が向上する。
【0042】
アクリル系共重合体Bに含有される芳香環を有する単量体は、分子内に少なくとも1つの芳香環を有し、アルキル(メタ)アクリレートと共重合可能な重合性化合物であれば特に制限はない。芳香環を有する単量体における環状基としては、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基であることが好ましい。芳香環を有する単量体における芳香環の含有数は、1〜2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【0043】
芳香環を有する単量体に由来の構成単位としては、他の構成単位との相溶性の観点から、芳香環を有する(メタ)アクリル系単量体に由来の構成単位が好ましい。芳香環を有する単量体の例としては、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−フェニルチオ−1−エチルアクリレート、8−(2−ナフチルオキシ)−1−オクチルアクリレート、2−(1−ナフチルオキシ)−1−エチルアクリレートなどが挙げられる。
中でも、共重合性の観点からフェノキシエチル(メタ)アクリレート及びベンジル(メタ)アクリレートが好ましく、フェノキシエチルアクリレート及びベンジルアクリレートが更に好ましい。
芳香環を有する単量体は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
芳香環を有する単量体に由来の構成単位のアクリル系共重合体B中における含有量は、前記アクリル系共重合体Aの芳香環を有する単量体に由来の構成単位との総量が3mol%以上となる量であるが、光漏れの抑制の観点から、3mol%以上が好ましく、5mol%〜20mol%がより好ましく、10mol%〜20mol%が更に好ましい。
【0045】
アクリル系共重合体Bは、アルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位の少なくとも1種を含む。アルキル(メタ)アクリレートにおけるアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよいが芳香環は含まない。アルキル基の炭素数としては、1〜20であることが好ましく、1〜18であることがより好ましく、1〜12であることが更に好ましく、1〜6であることが特に好ましい。
【0046】
アクリル系共重合体Bに含有されるアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、i−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、i−ノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、及びステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、粘着剤の凝集力と接着力を調整しやすい点で、炭素数1〜6のアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数1〜6のアルキルアクリレートがより好ましく、特にはn−ブチルアクリレートが好ましい。
【0047】
アルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位は、アクリル系共重合体Bを構成する主成分として含有される。アルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位の、アクリル系共重合体B中における含有量は、65mol%〜98.5mol%が好ましく、65mol%〜93mol%がより好ましく、75mol%〜85mol%が特に好ましい。アルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位の含有量が前記範囲内であると、最適な弾性率に調整することができ、耐久性、タック性確保の点で有利である。
【0048】
アクリル系共重合体Bは、水酸基を有する単量体に由来の構成単位、芳香環を有する単量体に由来の構成単位、アルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位及び必要に応じて含まれる構成単位に加えて、これら以外のその他の単量体に由来の構成単位を含んでいてもよい。
その他の単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等の酸性基を有する単量体;アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ビニルピリジン等の塩基性基を有する単量体;アクリロニトリル、メタクロリニトリル等のシアン化ビニル単量体;ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル単量体などを挙げることができる。
これらの中でも基材との密着性の観点から酸性基を有する単量体が好ましく、アクリル酸がより好ましい。アクリル共重合体B中における酸性基を有する単量体の含有量は0.5mol%〜5mol%が好ましく、3mol%〜5mol%がより好ましい。酸性基を有する単量体の含有量が前記範囲内であると、基材との密着性に優れ、耐久性の点で有利である。
【0049】
アクリル系共重合体Bの重量平均分子量は、500,000以上が好ましく、1,000,000以上がより好ましい。アクリル系共重合体Bの重量平均分子量が500,000以上であると、ハガレなどが生じにくく、耐久性が向上する。
【0050】
アクリル系共重合体Bのガラス転移温度(TgB)としては、−50℃以上−30℃以下の範囲が好ましく、−48℃以上−35℃以下の範囲がより好ましい。TgBが−50℃以上であると、最適な弾性率に調整することができ、耐久性、光漏れ抑制に優れる。また、TgAが−30℃以下であると、粘性を極端に損なうことなくタック性、貼合適正に優れる。
【0051】
アクリル系共重合体Bの粘着剤組成物中における含有量としては、後述するアクリル系共重合体Bに対するアクリル系共重合体Aの比率(A/B)を満たす範囲で適宜選択することができるが、粘着剤組成物の全固形分に対して、10質量部以上50質量部以下の範囲が好ましい。アクリル系共重合体Bの含有量が前記範囲内であると、粘着剤組成物の耐久性が向上し、発泡やハガレの発生が抑えられる。
【0052】
本発明におけるアクリル系共重合体A及びアクリル系共重合体Bにおいて、それぞれを構成する水酸基を有する単量体に由来の構成単位、芳香環を有する単量体に由来の構成単位及びアルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位は、アクリル系共重合体Aとアクリル系共重合体Bとで互いに異なってもよいし、同一であってもよい。
【0053】
アクリル系共重合体A中の水酸基を有する単量体に由来の構成単位の含有量(I)mol%とアクリル系共重合体B中の水酸基を有する単量体に由来の構成単位の含有量(II)mol%は下記式(1)の関係を満たす。
(II)−(I)>0mol% (1)
【0054】
アクリル系共重合体A及びアクリル系共重合体Bの水酸基を有する単量体に由来の構成単位の含有量が(II)−(I)>0mol%を満たしていると、過酷な環境条件であっても発泡やハガレの発生を抑制できる高い耐久性が得られ、また、光漏れの抑制にも優れる。
【0055】
アクリル系共重合体A中の水酸基を有する単量体に由来の構成単位の含有量(I)とアクリル系共重合体B中の水酸基を有する単量体に由来の構成単位の含有量(II)との差((II)−(I))は、0.1mol%以上10mol%以下であることが好ましく、0.5mol%以上5mol%以下であることがより好ましく、1mol%以上5mol%以下であることが更に好ましい。
上記(II)−(I)が、0.1mol%以上であると耐久性が良好となり、10mol%以下であるとアクリル系共重合体の相溶性がより良くなる。
【0056】
アクリル系共重合体A及びアクリル系共重合体B、の芳香環を有する単量体に由来の構成単位の総量(III)mol%は下記式(2)の関係を満たす。
(III)≧3mol% (2)
上記(III)が3mol%未満であると光漏れ抑制の効果が十分に得られない。
【0057】
アクリル系共重合体A及びアクリル系共重合体B、の芳香環を有する単量体に由来の構成単位の総量(III)mol%は、光漏れ抑制の観点から5mol%以上が好ましく、10mol%以上がより好ましい。
【0058】
本発明の粘着剤組成物におけるアクリル系共重合体Bに対するアクリル系共重合体Aの混合比率(A/B)としては、質量基準で90/10〜30/70の範囲が好ましい。前記混合比率(A/B)が上記範囲内であることで、アクリル系共重合体A及びアクリル系共重合体Bとイソシアネート系化合物との反応による粘着性組成物の架橋度のバランスを適正に保つことができ、応力緩和による光漏れに対する改善効果が高く、耐久性の維持とのバランスを保つことができる。
中でも、前記混合比率(A/B)としては、前記同様の理由から、90/10〜50/50の範囲がより好ましい。
【0059】
本明細書において、アクリル系共重合体のガラス転移温度(Tg)は、以下の計算により求められるモル平均ガラス転移温度である。下記式中のTg
1、Tg
2、・・・・・及びTg
nは、成分1、成分2、・・・・・及び成分nそれぞれの単独重合体のガラス転移温度であり、絶対温度(K)に換算し算出される。m
1、m
2、・・・・・及びm
nは、それぞれの成分のモル分率である。
【0060】
[ガラス転移温度(Tg)の算出式]
【数1】
【0061】
なお、ここでいう「単独重合体のガラス転移温度(Tg)」には、L.E.ニールセン著、小野木宣治訳「高分子の力学的性質」第11〜35頁に記載されている単量体のガラス転移温度が適用される。
【0062】
上記の中でも、本発明におけるアクリル系共重合体Aとアクリル系共重合体Bとの組み合わせ態様としては、下記の(1)第1の態様〜(3)第3の態様が好ましい。即ち、
(1)第1の態様として、
アクリル系共重合体Aが、0.01mol%以上2.4mol%未満の水酸基を有する単量体に由来の構成単位と、3mol%以上の芳香環を有する単量体に由来の構成単位と、アルキル基の炭素数が1〜6のアルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位とを含み、
アクリル系共重合体Bが、1.2mol%〜10.0mol%の水酸基を有する単量体に由来の構成単位と、3mol%以上の芳香環を有する単量体に由来の構成単位と、アルキル基の炭素数1〜6のアルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位とを含み、アクリル系共重合体A中の水酸基を有する単量体に由来の構成単位の含有量(I)mol%とアクリル系共重合体B中の水酸基を有する単量体に由来の構成単位の含有量(II)mol%が(II)−(I)>0mol%を満たす態様。
(2)第2の態様として、
アクリル系共重合体Aが、0.1mol%〜2.0mol%の水酸基を有する単量体に由来の構成単位と、5mol%〜20mol%の芳香環を有する単量体に由来の構成単位と、n−ブチルアクリレートに由来の構成単位とを含み、
アクリル系共重合体Bが、1.2mol%〜5.0mol%の水酸基を有する単量体に由来の構成単位と、5mol%〜20mol%の芳香環を有する単量体に由来の構成単位と、n−ブチルアクリレートに由来の構成単位とを含み、
アクリル系共重合体A中の水酸基を有する単量体に由来の構成単位の含有量(I)mol%とアクリル系共重合体B中の水酸基を有する単量体に由来の構成単位の含有量(II)mol%が(II)−(I)>0mol%を満たし、
粘着剤組成物中におけるアクリル系共重合体Bに対するアクリル系共重合体Aの混合比率(A/B)が質量基準で90/10〜30/70である態様。
(3)第3の態様として、
アクリル系共重合体Aが、0.1mol%〜2.0mol%の水酸基を有する単量体に由来の構成単位と、10mol%〜20mol%の芳香環を有する単量体に由来の構成単位と、n−ブチルアクリレートに由来の構成単位と、(メタ)アクリル酸に由来の構成単位を含み、
アクリル系共重合体Bが、1.2mol%〜5.0mol%の水酸基を有する単量体に由来の構成単位と、10mol%〜20mol%の芳香環を有する単量体に由来の構成単位と、n−ブチルアクリレートに由来の構成単位と、(メタ)アクリル酸に由来の構成単位を含み、
アクリル系共重合体A中の水酸基を有する単量体に由来の構成単位の含有量(I)mol%とアクリル系共重合体B中の水酸基を有する単量体に由来の構成単位の含有量(II)mol%との差((II)−(I))が1mol%以上5mol%以下を満たし、
粘着剤組成物中におけるアクリル系共重合体Bに対するアクリル系共重合体Aの混合比率(A/B)が質量基準で90/10〜50/50である態様。
【0063】
本発明におけるアクリル系共重合体の重合方法は、特に制限されるものではなく、溶液重合、乳化重合、懸濁重合などの方法を適用することができる。処理工程が比較的簡単で、かつ短時間で行なえることから、溶液重合が好ましい。
【0064】
溶液重合は、一般に、重合槽内に所定の有機溶媒、単量体、重合開始剤、及び、必要に応じて用いられる連鎖移動剤を仕込み、窒素気流中又は有機溶媒の還流下で、撹拌しながら数時間加熱反応させる。前記重合開始剤としては、特に制限されるものではなく、例えばアゾ系化合物を用いることができる。
【0065】
アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、反応温度、時間、溶剤量、触媒の種類や量を調整することにより、所望の分子量に調整することができる。
【0066】
本明細書において、アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、下記の方法により測定された値である。即ち、下記(1)〜(3)にしたがって測定される。
(1)アクリル系共重合体溶液を剥離シート(離型シート)上に塗工し、100℃で2分間乾燥させ、フィルム状のアクリル系共重合体を得る。
(2)前記(1)で得られたフィルム状のアクリル系共重合体をテトラヒドロフランにて固形分0.2質量部になるように溶解させる。
(3)下記条件にて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)を測定する。
<条件>
・GPC:HLC−8220 GPC〔東ソー(株)製〕
・カラム:TSK−GEL GMHXL(4本使用)
・移動相溶媒:テトラヒドロフラン
・標準試料 :標準ポリスチレン
・流速 :0.8ml/min
・カラム温度:40℃
【0067】
−イソシアネート系化合物−
本発明の粘着剤組成物は、イソシアネート系化合物の少なくとも一種を含有する。この化合物は、極性のある化合物であり、このような架橋剤を含む組成の場合に本発明の効果(光漏れの防止及び耐久性の向上)が奏される。
【0068】
イソシアネート系化合物としては、トリレンジイソシアネート系化合物が好適に挙げられる。トリレンジイソシアネート系化合物としては、イソシアネートの2量体もしくは3量体、又はイソシアネートとトリメチロールプロパンポリオールとのアダクト体などの各種イソシアネートに由来するトリレンジイソシアネート化合物を用いることができる。
【0069】
トリレンジイソシアネート系化合物は、上市されている市販品を用いてもよく、市販品の例として、住友バイエルウレタン株式会社製の商品名「デスモジュールIL1451CN」、「デスモジュールILBA」、「デスモジュールHL」、「スミジュールFL−2」、「スミジュールFL−3」、及び「SBUイソシアネート0817」、日本ポリウレタン工業株式会社製の商品名「コロネートL」、「コロネート2030」、「コロネート2037」、並びにSAPICI社製の商品名「Polurene KC」及び「Polurene HR」を挙げることができる。などを好適に使用することができる。
【0070】
イソシアネート系化合物の粘着剤組成物中における添加量は、アクリル系共重合体Aとアクリル系共重合体Bの合計量100質量部に対して、1質量部以下の範囲で添加することが好ましい。イソシアネート系化合物の含有量が1質量部以下であると、適度な凝集力が得られ、高温高湿下に曝された際に偏光ベースフィルム(特にその保護用シートであるセルローストリアセテート(TAC))との間の接着性が発現し、ハガレの発生が抑制される。
イソシアネート系化合物の粘着剤組成物中における含有量としては、0.10質量部以上1.00質量部以下の範囲が好ましく、0.10質量部以上0.50質量部以下の範囲がより好ましく、0.10質量部以上0.40質量部以下の範囲が特に好ましい。イソシアネート系化合物の含有量が0.10質量部以上であると、粘着剤層を貼着後の偏光ベースフィルムの収縮応力を抑制するのに良好な凝集力が発現し、光漏れの発生がより効果的に抑制される。
【0071】
−その他の成分−
粘着剤組成物は、前記イソシアネート化合物に加えて、これ以外のその他の架橋剤(例えば、エポキシ系架橋剤)を更に含んでいてもよい。粘着剤組成物がエポキシ系架橋剤を含む場合、凝集力の調整が容易であり、高温高湿下に曝された場合でも、外観異常が抑えられる。
【0072】
エポキシ系架橋剤の例としては、1,3−ビス(N,N−グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミンなどを挙げることができる。
また、エポキシ系架橋剤は、上市されている市販品を用いてもよく、市販品の例として、三菱ガス化学株式会社製の「TETRAD-X」、「TETRAD-C」(商品名)などを好適に使用することができる。
【0073】
エポキシ系架橋剤の粘着剤組成物中における添加量としては、アクリル系共重合体Aとアクリル系共重合体Bの合計量100質量部に対して、0.001質量部以上0.1質量部以下の範囲で添加することが好ましい。エポキシ系架橋剤の含有量が前記範囲内であると、粘着剤層の凝集力を調整することができ、過酷な環境条件での剥がれの発生を抑えることができる点で有利である。
【0074】
本発明の粘着剤組成物は、シランカップリング剤を更に含んでもよい。粘着剤組成物がシランカップリング剤を含む場合、偏光ベースフィルムが組み込まれた表示装置(例えば液晶表示装置)が高温高湿環境下に曝されても、粘着剤層と偏光ベースフィルム又は液晶セルとの間にハガレが起きにくい。本発明の粘着剤組成物は、平滑なガラスに良好な接着力を示す点で好ましい。
【0075】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、及び3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有シラン化合物、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、及び3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン等のメルカプト基含有シラン系化合物、及び3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するシラン化合物、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有シラン化合物、並びに、トリス−(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。これらは、一種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
シランカップリング剤は、上市されている市販品を用いてもよく、市販品の例としては、信越化学工業株式会社製の商品名「KBM−803」、「KBM−802」、「X−41−1810」、「X−41−1805」、「X−41−1818」等のチオール基を有するシランカップリング剤、信越化学工業株式会社製の「KBM−403」、「KBM−303」、「KBM−402」、「KBE−402」、「KBE−403」(商品名)等のエポキシ基を有するシランカップリング剤などを好適に使用することができる。
【0077】
シランカップリング剤の粘着剤組成物中における添加量としては、アクリル系共重合体A及びアクリル系共重合体Bの合計量100質量部に対して、0.01質量部以上2.0質量部以下の範囲で添加されることが好ましい。シランカップリング剤の含有量が前記範囲内であると、粘着剤層の接着性をより向上させることができる。
【0078】
粘着剤組成物は、上記成分の他、更に必要に応じて、溶剤、紫外線吸収剤等の耐候性安定剤、タッキファイアー、可塑剤、軟化剤、染料、顔料、無機充填剤などを含有してもよい。粘着剤組成物がその他の成分を含有する場合、その含有量は本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択することができる。
【0079】
<光学機能性フィルム>
本発明の粘着剤付光学機能性フィルムは、少なくとも、偏光ベースフィルムと、既述の本発明の粘着剤組成物の付与により偏光ベースフィルム上に形成された粘着剤層と、を設けて構成されている。
【0080】
偏光子としては、一般に、例えばポリビニルアルコール(PVA)フィルムなどが使用される。偏光子は、例えばトリアセチルセルロース(TAC)等の保護用シートの間に保持された例えば3層構造(例えばTAC/偏光子/TAC)に構成され、偏光ベースフィルムとして用いることができる。
【0081】
例えばTAC/偏光子/TACの3層構造の偏光ベースフィルムの少なくとも一方面に、既述の本発明の粘着剤組成物を付与することにより粘着剤層を設けることで、粘着剤付光学機能性フィルムが作製される。この場合、偏光ベースフィルム上に組成物を付与してもよいが、好ましくは使用時に剥離される保護用シート(剥離シート)上に付与する。粘着剤組成物の付与は、液体の粘着剤組成物を用いた浸漬法、塗布法、インクジェット法などの塗布方法により好適に行なえる。中でも、塗布法によることが好ましい。
具体的には、本発明の粘着剤組成物を保護用シート(剥離シート)上に塗工し、乾燥させ、保護用シート上に粘着剤層を形成した後、この粘着剤層を偏光ベースフィルム上に転写、養生させることで粘着剤付光学機能性フィルムが作製される。
【0082】
保護用シート(剥離シート)上に付与された粘着剤組成物は、熱風乾燥機等を用いて70〜120℃で1〜3分程度の乾燥条件で乾燥されることが好ましい。
【0083】
更に、偏光ベースフィルム上に設けられた粘着剤層の露出面には、被着体に対する接触面を保護する観点から、露出面を保護するための保護用シート(剥離シート)を密着して設けておくことが好ましい。この保護用シートとしては、粘着剤層との間の剥離が容易に行なえるように、フッ素系樹脂、パラフィンワックス、シリコーン等の離型剤で離型処理を施したポリエステル等の合成樹脂シートが好適に用いられる。表示パネルのガラス板等に貼り付けるときには、保護用シートを剥離し、露出した粘着剤層の表面をガラス基板等に密着させる。
また、偏光ベースフィルムの粘着剤層が設けられていない側の表面(露出面)には、その表面を保護する表面保護シートを更に設けてもよい。表面保護シートには、PETフィルムの片面に粘着加工されたプロテクトフィルム等が好適に用いられる。
【0084】
粘着剤層の層厚としては、特に制限されるものではないが、乾燥後の厚みで1μm以上100μm以下が好ましく、より好ましくは5μm以上50μm以下であり、更に好ましくは15μm以上30μm以下である。
【0085】
本発明の粘着剤付光学機能性フィルムは、積層される液晶セルの大きさが19インチワイド(260mm×415mm)以上でも適用可能である。液晶セルの大きさが19インチワイド(260mm×415mm)以上であると、偏光ベースフィルムの熱や湿度の影響による膨張、収縮が大きくなる。したがって、従来の粘着剤付光学機能性フィルムでは、高温高湿下に曝された際に応力抑制が充分でないため、大型の表示装置(例えば液晶表示装置)の光源点灯時などにおいて、ベセル周辺に発生する「光漏れ」の発生を抑制することができない。これに対して、本発明の粘着剤組成物付偏光ベースフィルムでは、共重合体の樹脂設計並びに架橋剤の種類及び量を適正した構成となっているため、高温高湿下に曝されても応力抑制が十分であり、19インチワイド(260mm×415mm)以上の大きさの液晶セルにも好適であり、また19インチ未満(更には10インチ未満)の小型の表示装置(液晶表示装置)に適用されても、適度な応力緩和性により光漏れの発生が抑えられる。
【実施例】
【0086】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0087】
(実施例1)
−共重合体Aの製造−
温度計、撹枠機、窒素導入管、及び還流冷却管を備えた反応器内に、n−ブチルアクリレート(BA)77.5質量部、フェノキシエチルアクリレート(PHEA)20.0質量部、アクリル酸(AA)2.0質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)0.5質量部、酢酸エチル(EAc)100質量部を入れ混合した後、反応器内を窒素置換した。その後、攪拌下に窒素雰囲気中で、反応容器内の混合物を70℃に昇温した後に、アゾビスジメチルバレロニトリル(ABVN)0.02質量部を混合し6時間重合反応を行なった。重合反応終了後、反応混合物を酢酸エチルで希釈して固形分15.0質量部に調整した。このようにして、BA/PHEA/AA/2HEA=81.6/14.0/3.8/0.6(mol%)のアクリル系共重合体Aの溶液を得た。得られたアクリル系共重合体Aの重量平均分子量(Mw)は160万、分子量分布(Mw/Mn)は6であった。
【0088】
−共重合体Bの製造−
温度計、撹枠機、窒素導入管、及び還流冷却管を備えた反応器内に、n−ブチルアクリレート(BA)76.0質量部、フェノキシエチルアクリレート(PHEA)20.0質量部、アクリル酸(AA)2.0質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)2.0質量部、酢酸エチル(EAc)100質量部を入れ混合した後、反応器内を窒素置換した。その後、攪拌下に窒素雰囲気中で、反応容器内の混合物を70℃に昇温した後に、アゾビスジメチルバレロニトリル(ABVN)0.02質量部を混合し6時間重合反応を行なった。重合反応終了後、反応混合物を酢酸エチルで希釈して固形分15.0質量部に調整した。このようにして、BA/PHEA/AA/2HEA=79.9/14.0/3.8/2.3(mol%)のアクリル系共重合体Bの溶液を得た。得られたアクリル系共重合体Bの重量平均分子量(Mw)は160万、分子量分布(Mw/Mn)は6であった。
【0089】
−粘着剤組成物の調製−
アクリル系共重合体Aとして、前記製造例で得たアクリル系共重合体Aの溶液600.0質量部(固形分:90.0質量部)と、アクリル系共重合体Bとして、前記製造例で得たアクリル系共重合体Bの溶液66.7質量部(固形分:10.0質量部)と、イソシアネート系化合物としてコロネートL 0.27質量部(日本ポリウレタン工業製、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンのアダクト体、固形分:0.20質量部)と、シランカップリング剤(SC剤)としてKBM−403 0.1質量部(信越化学工業社製、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、固形分:100質量%、有効成分:0.1質量部)とを充分に攪拌混合して粘着剤組成物を得た。
【0090】
(実施例2〜18、比較例1〜6)
実施例1において,下表1の通りにアクリル系共重合体Aとアクリル系共重合体Bの組成、重量平均分子量、及びアクリル系共重合体Aとアクリル系共重合体Bとの混合比率(A/B)と架橋剤の種類及び配合量を変化させた以外は実施例1と同様にして粘着剤組成物を得た。なお、下表1に記載の配合量は、固形分換算の値である。
【0091】
−光学機能性フィルムサンプルの作製−
シリコーン系離型剤で表面処理された剥離フィルムの離型剤処理面に、乾燥後の塗工量が20g/cm
2となるように、粘着剤組成物を塗布した。次に、これを熱風循環式乾燥機により100℃で60秒間乾燥させ、剥離フィルム上に粘着剤層を形成した。続いて、偏光ベースフィルム〔ポリビニルアルコール(PVA)フィルムを主体とする偏光子の両面にセルローストリアセテート(TAC)フィルムをラミネートしてTACフィルム/PVAフィルム/TACフィルムの積層構造を有するもの;約190μm〕の裏面と前記粘着剤層の表面とを重ねて貼り合せ、加圧ニップロールに通して圧着した。圧着後、23℃、65%RHの環境条件下で10日間養生させ、光学機能性フィルムサンプルとして、剥離フィルム/粘着剤層/偏光ベースフィルムの積層構造を有する光学機能性フィルムを作製した。
【0092】
−評価−
耐久性試験(W/S)
前記「光学機能性フィルムサンプルの作製」において作製した光学機能性フィルムを、吸収軸に対して長辺が0°になるようにカットした80mm×140mm(長辺)の試験片を用意し、この試験片から剥離フィルムを剥離した。剥離により露出した粘着剤層の表面を、厚さ0.7mmの無アルカリガラス板(イーグルXG、コーニング社製)の片面に密着させることにより、試験片をガラス板上に重ね、ラミネータを用いて貼付して積層体とした。次に、この積層体にオートクレーブ処理(50℃、5kg/cm
2、20分)を施し、23℃、50%RHの条件下で24時間放置した。その後、高湿条件のWET環境(50℃、95%RH)に24時間放置した後、すぐに高温条件のDry環境(70℃)に移動させ168時間放置した。放置時間が経過した後、発泡、ハガレの状態を目視により観察し、下記の評価基準にしたがって評価した。
<評価基準>
A:発泡、剥れが全くみられなかった。
B:発泡、剥れがほとんどみられなかった。
C:発泡、剥れが僅かにみられた。
D:発泡、剥れがみられた。
【0093】
耐久性試験(Dry)
前記「光学機能性フィルムサンプルの作製」において作製した光学機能性フィルムを、吸収軸に対して長辺が0°になるようにカットした80mm×140mm(長辺)の試験片を用意し、この試験片から剥離フィルムを剥離した。剥離により露出した粘着剤層の表面を、厚さ0.7mmの無アルカリガラス板(イーグルXG、コーニング社製)の片面に密着させることにより、試験片をガラス板上に重ね、ラミネータを用いて貼付して積層体とした。次に、この積層体にオートクレーブ処理(50℃、5kg/cm
2、20分)を施し、23℃、50%RHの条件下で24時間放置した。その後、高温条件のDry環境(80℃)に168時間放置した。放置時間が経過した後、発泡、ハガレの状態を目視により観察し、下記の評価基準にしたがって評価した。
<評価基準>
A:発泡、剥れが全くみられなかった。
B:発泡、剥れがほとんどみられなかった。
C:発泡、剥れが僅かにみられた。
D:発泡、剥れがみられた。
【0094】
光漏れ試験
前記「光学機能性フィルムサンプルの作製」において作製した光学機能性フィルムを、吸収軸に対して長辺が0°と90°になるようにカットした260mm×460mm(長辺)の試験片を各1枚用意し、この試験片から剥離フィルムを剥離した。剥離により露出した粘着剤層の表面を、VA方式の液晶パネルの両面に、2枚の光学機能性フィルムサンプルの偏光軸が互いに直交するように、ラミネータを用いて貼付して試験片を作製した。得られた試験片をオートクレーブ処理(50℃、5kg/cm
2(490kPa)、20分)した後、23℃、50%RHの条件で24時間放置した。その後、70℃の条件で168時間放置した。23℃、50%RHの条件下、均一光源を使用して、光漏れの状態を目視で観察し、下記評価基準で評価した。
<評価基準>
A:光漏れがほとんど認められなかった。
B:光漏れが僅かに認められた。
C:光漏れが顕著に認められた。
【0095】
【表1】
【0096】
上記表1中の各モノマー及び架橋剤について以下に説明する。
BA : n−ブチルアクリレート
AA : アクリル酸
PHEA : フェノキシエチルアクリレート
BzA : ベンジルアクリレート
(実施例15においてPHEAに替えて使用)
2HEA : 2−ヒドロキシエチルアクリレート
4HBA : 4−ヒドロキシブチルアクリレート
(実施例14において2HEAに替えて使用)
コロネートL : トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンのアダクト体
コロネート2037 : トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体
(実施例11においてコロネートLに替えて使用)
【0097】
前記表1に示されるように、実施例では、「W/S」及び「Dry」に関わらず、発泡やハガレの発生が抑えられており、良好な耐久性が得られ、かつ「光漏れ」も抑制されていることがわかる。