特開2015-25218(P2015-25218A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-25218(P2015-25218A)
(43)【公開日】2015年2月5日
(54)【発明の名称】耐熱無機繊維
(51)【国際特許分類】
   D01F 9/08 20060101AFI20150109BHJP
【FI】
   D01F9/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-154894(P2013-154894)
(22)【出願日】2013年7月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000110804
【氏名又は名称】ニチアス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086759
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 喜平
(74)【代理人】
【識別番号】100112977
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 有子
(72)【発明者】
【氏名】岩田 耕治
(72)【発明者】
【氏名】北原 英樹
(72)【発明者】
【氏名】持田 貴仁
(72)【発明者】
【氏名】米内山 賢
(72)【発明者】
【氏名】添田 一喜
(72)【発明者】
【氏名】三木 達郎
【テーマコード(参考)】
4L037
【Fターム(参考)】
4L037CS20
4L037FA01
4L037FA02
4L037FA17
4L037PA31
4L037UA06
(57)【要約】
【課題】製繊性や繊維状態、耐アルミナ反応性が良好な新規な生体溶解性無機繊維を提供する。
【解決手段】KO、MgO、SiO及びAlを、主成分として含み、MgO>20モル%、SiO≦53モル%である無機繊維。KO、MgO、SiO及びAlを、主成分として含み、KO<12モル%である無機繊維。KO、MgO、SiO及びAlを、主成分として含み、KO、MgO、SiO及びAlの量が、以下の組成を満たす無機繊維。KO:5〜30重量%、MgO:5〜30重量%、Al:20〜65重量%、SiO:10〜45重量%
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
O、MgO、SiO及びAlを、主成分として含み、
MgO>20モル%
SiO≦53モル%
である無機繊維。
【請求項2】
O、MgO、SiO及びAlを、主成分として含み、
O<12モル%
である無機繊維。
【請求項3】
O、MgO、SiO及びAlの量が、それぞれ以下の範囲に含まれる請求項1又は2記載の無機繊維。
O:5〜50重量%
MgO:5〜50重量%
Al:5〜85重量%
SiO:5〜85重量%
【請求項4】
SiO量が60重量%以下である請求項1〜3のいずれか記載の無機繊維。
【請求項5】
Al量が65重量%以下である請求項1〜4のいずれか記載の無機繊維。
【請求項6】
MgO量が30重量%以下である請求項1〜5のいずれか記載の無機繊維。
【請求項7】
O量が30重量%以下である請求項1〜6のいずれか記載の無機繊維。
【請求項8】
O、MgO、SiO及びAlの量が、それぞれ以下の範囲に含まれる請求項1〜7のいずれか記載の無機繊維。
O:5〜30重量%
MgO:5〜30重量%
Al:5〜65重量%
SiO:5〜45重量%
【請求項9】
O、MgO、SiO及びAlを、主成分として含み、
O、MgO、SiO及びAlの量が、以下の組成を満たす無機繊維。
O:5〜30重量%
MgO:5〜30重量%
Al:20〜65重量%
SiO:10〜52重量%
【請求項10】
SiOが45重量%以下である請求項9記載の無機繊維。
【請求項11】
OとAlのモル比KO/Alが0.6〜1.25である請求項1〜10のいずれか記載の無機繊維。
【請求項12】
OとAlのモル比KO/Alが0.4以下である請求項1〜10のいずれか記載の無機繊維。
【請求項13】
SiO、Al、KO及びMgOの量の合計が、80重量%以上である請求項1〜12のいずれか記載の無機繊維。
【請求項14】
MgO、又はMgOと共に、NaO、KO、CaO及びBaOから選択される1以上を、以下の式を満たす量で含む請求項1〜13のいずれか記載の無機繊維。
NaO+KO+MgO+CaO+BaO>18重量%
【請求項15】
を不純物の量以上含有しない請求項1〜14のいずれか記載の無機繊維。
【請求項16】
600℃においてアルミナ反応性が無い請求項1〜15のいずれか記載の無機繊維。
【請求項17】
平均繊維径が10μm以下である請求項1〜16のいずれか記載の無機繊維。
【請求項18】
pH4.5又は7.4の生理食塩水に対する溶解率が10ng/cm・h以上である請求項1〜17のいずれか記載の無機繊維。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか記載の無機繊維を用いて製造された二次製品又は複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性に優れる生体溶解性の無機繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
アスベストは、軽量で扱いやすく且つ耐熱性に優れるため、例えば、耐熱性のシール材として使用されていた。しかしアスベストは人体に吸入されて肺に疾患を引き起こすため使用が禁止され、これに代わりにセラミック繊維等が使用されている。セラミック繊維等は、耐熱性がアスベストに匹敵する程高く、適切な取り扱いをすれば健康上の問題は無いと考えられているが、より安全性を求められる風潮がある。そこで、人体に吸入されても問題を起こさない又は起こしにくい生体溶解性無機繊維を目指して、様々な生体溶解性繊維が開発されている(例えば、特許文献1,2,3)。
【0003】
従来市販されている生体溶解性繊維はpH7.4の生理食塩水に対し高い溶解性を持つ物がほとんどであった。一方で繊維が肺に吸入されるとマクロファージに捕り込まれることが知られており、マクロファージ周囲のpHは4.5であることも知られている。従って、pH4.5の生理食塩水に対する溶解性の高い繊維は、肺内で溶解、分解されることが期待される。
【0004】
従来の無機繊維は、アスベストと同様に、様々なバインダーや添加物とともに、定形物、不定形物に二次加工されて、熱処理装置、工業窯炉や焼却炉等の炉における目地材、耐火タイル、断熱レンガ、鉄皮、モルタル耐火物等の隙間を埋める目地材、シール材、パッキング材、断熱材等として用いられている。使用の際は高温に晒されることが多く、耐熱性を有することが求められている。
【0005】
さらに、炉内の部材にアルミナが使用されていることが多く、二次加工品に含まれる繊維が、このアルミナと反応し二次加工品や部材が付着したり溶融したりする問題もあった。
【0006】
また、特定の組成の無機繊維が、生体溶解性等優れた特性を有していたとしても、繊維化が困難な場合が有った。工業的に生産、使用するためには、繊維化しやすく製繊性や繊維状態が良好であることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許公報第3753416号
【特許文献2】特表2005−514318
【特許文献3】特表2010−511105
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、製繊性や繊維状態、耐アルミナ反応性が良好な新規な生体溶解性無機繊維を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、以下の無機繊維等が提供される。
1.KO、MgO、SiO及びAlを、主成分として含み、
MgO>20モル%
SiO≦53モル%
である無機繊維。
2.KO、MgO、SiO及びAlを、主成分として含み、
O<12モル%
である無機繊維。
3.KO、MgO、SiO及びAlの量が、それぞれ以下の範囲に含まれる1又は2記載の無機繊維。
O:5〜50重量%
MgO:5〜50重量%
Al:5〜85重量%
SiO:5〜85重量%
4.SiO量が60重量%以下である1〜3のいずれか記載の無機繊維。
5.Al量が65重量%以下である1〜4のいずれか記載の無機繊維。
6.MgO量が30重量%以下である1〜5のいずれか記載の無機繊維。
7.KO量が30重量%以下である1〜6のいずれか記載の無機繊維。
8.KO、MgO、SiO及びAlの量が、それぞれ以下の範囲に含まれる1〜7のいずれか記載の無機繊維。
O:5〜30重量%
MgO:5〜30重量%
Al:5〜65重量%
SiO:5〜45重量%
9.KO、MgO、SiO及びAlを、主成分として含み、
O、MgO、SiO及びAlの量が、以下の組成を満たす無機繊維。
O:5〜30重量%
MgO:5〜30重量%
Al:20〜65重量%
SiO:10〜52重量%
10.SiOが45重量%以下である9記載の無機繊維。
11.KOとAlのモル比KO/Alが0.6〜1.25である1〜10のいずれか記載の無機繊維。
12.KOとAlのモル比KO/Alが0.4以下である1〜10のいずれか記載の無機繊維。
13.SiO、Al、KO及びMgOの量の合計が、80重量%以上である1〜12のいずれか記載の無機繊維。
14.MgO、又はMgOと共に、NaO、KO、CaO及びBaOから選択される1以上を、以下の式を満たす量で含む1〜13のいずれか記載の無機繊維。
NaO+KO+MgO+CaO+BaO>18重量%
15.Bを不純物の量以上含有しない1〜14のいずれか記載の無機繊維。
16.600℃においてアルミナ反応性が無い1〜15のいずれか記載の無機繊維。
17.平均繊維径が10μm以下である1〜16のいずれか記載の無機繊維。
18.pH4.5又は7.4の生理食塩水に対する溶解率が10ng/cm・h以上である1〜17のいずれか記載の無機繊維。
19.1〜18のいずれか記載の無機繊維を用いて製造された二次製品又は複合材料。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、製繊性や繊維状態、耐アルミナ反応性が良好な新規な生体溶解性無機繊維を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第1の無機繊維は、KO、MgO、SiO及びAlを、主成分として含み、MgOの量が20モル%超であり、SiOの量が53モル%以下である。
主成分とは、無機繊維が含む全ての成分のうち最も含有量(重量%)の高い4成分がKO、MgO、SiO及びAlであることを意味する。
【0012】
本発明の第2の無機繊維は、KO、MgO、SiO及びAlを、主成分として含み、KOの量が12モル%未満である。
【0013】
第2の無機繊維については、KO、MgO、SiO及びAlの量が、それぞれ以下の範囲に含まれる無機繊維がさらに好ましい。
O:5〜50重量%
MgO:5〜50重量%
Al:5〜85重量%
SiO:5〜85重量%
【0014】
本発明の無機繊維において、SiO量は好ましくは60重量%以下である。SiO量は、例えば、5重量%〜55重量%、5重量%〜52重量%、好ましくは、10重量%〜45重量%、より好ましくは、13重量%〜38重量%、さらに好ましくは30重量%〜38重量%、13重量%〜30重量%である。
【0015】
本発明の無機繊維において、Al量は好ましくは65重量%以下である。Al量は、例えば15重量%〜65重量%、好ましくは20重量%〜65重量%、より好ましくは20重量%〜60重量%である。
【0016】
本発明の無機繊維において、KO量は好ましくは30重量%以下である。KO量は、例えば、5重量%〜30重量%、好ましくは10重量%〜30重量%、より好ましくは10重量%〜15重量%、20重量%〜30重量%である。
【0017】
本発明の無機繊維において、MgO量は好ましくは30重量%以下である。MgO量は、例えば、5重量%〜20重量%、好ましくは5重量%〜15重量%、より好ましくは7重量%〜12.8重量%である。
【0018】
O、MgO、SiO及びAlの量が、それぞれ以下の範囲に含まれることが好ましい。
O:5〜30重量%
MgO:5〜30重量%
Al:5〜65重量%
SiO:5〜45重量%
【0019】
本発明の第3の無機繊維は、KO、MgO、SiO及びAlを、主成分として含み、KO、MgO、SiO及びAlの量が、以下の組成を満たす。
O:5〜30重量%
MgO:5〜30重量%
Al:20〜65重量%
SiO:10〜52重量%
【0020】
以下の組成を有することができる。
O:7〜26重量%
MgO:7〜14重量%
Al:15〜63重量%
SiO:13〜45重量%
【0021】
本発明の無機繊維において、KO/Alのモル比と加熱収縮率(耐熱性)の関係は、モル比0.60で耐熱性が最も悪い傾向がある。モル比0.60以下又は以上となると耐熱性が向上する傾向がある。0.60以上の場合、特に0.80以上、1.0以上、1.25以下の範囲において耐熱性が良好となる。0.60以下の場合、0.40以下、0.30以下となると耐熱性が良好となる。
【0022】
SiOが45重量%以下であると耐熱性が良くなる。
【0023】
本発明の無機繊維は、以下の組成1又は組成2を有すると耐熱性が高まる。
組成1
O:22〜32重量%
MgO:9〜15重量%
Al:21〜32重量%
SiO:26〜42重量%
好ましくは
O:24〜30重量%
MgO:11〜13重量%
Al:23〜30重量%
SiO:28〜40重量%
【0024】
組成2
O:8〜15重量%
MgO:6〜12重量%
Al:51〜67重量%
SiO:11〜27重量%
好ましくは
O:10〜13重量%
MgO:8〜10重量%
Al:53〜65重量%
SiO:13〜25重量%
【0025】
SiO、Al、KO及びMgOの合計を、80重量%以上、85重量%以上、90重量%以上、95重量%以上、98重量%以上、99重量%以上又は100重量%(ただし不可避不純物は含んでもよい)としてもよい。
特定する成分以外の残りは他の元素の酸化物又は不純物等である。
【0026】
本発明の無機繊維は、Sc,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Y又はこれらの混合物から選択されるそれぞれの酸化物を含んでも含まなくてもよい。これらの酸化物の量を、それぞれ5重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下又は0.5重量%以下としてもよい。
【0027】
アルカリ金属酸化物(NaO、LiO等)の各々は含まれても含まれなくてもよく、これらはそれぞれ又は合計で、5重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下又は0.5重量%以下とすることができる。
【0028】
TiO、ZnO、B、P、CaO、SrO、BaO、Cr、ZrO、Feの各々は含まれても含まれなくてもよく、それぞれ20重量%以下、18重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、7重量%以下、5重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下又は0.5重量%以下とすることができる。
【0029】
は不純物の量以上含有しないことが好ましい。例えば3重量%以下であると好ましい。
【0030】
炭化物、窒化物などの非酸化物系材料の各々も含まれていてもよく、それぞれ5重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下又は0.5重量%以下とすることができる。溶融時の雰囲気を不活性雰囲気、還元雰囲気としても良い。
【0031】
また、本発明の無機繊維は、MgO、又はMgOと共に、NaO、KO、CaO及びBaOから選択される1以上を、以下の式を満たす量で含んでもよい。
以下の式を満たすことにより、生体溶解性を向上することができる。
NaO+KO+MgO+CaO+BaO>18重量%
【0032】
本発明の無機繊維は、上記の組成を有することにより、耐アルミナ反応性と生体溶解性を有しながら、製繊性や繊維状態が良好である。または、耐アルミナ反応性、生体溶解性、製繊性のバランスが良い。
【0033】
無機繊維は溶融法、ゾルゲル法等公知の方法で製造できるが、低コストのため溶融法が好ましい。溶融法では、通常の方法により、原料の溶融物を作製し、この溶融物を繊維化して製造する。例えば、高速回転しているホイール上に熔解した原料を流し当てることで繊維化するスピニング法及び熔解した原料に圧縮空気を当てることで繊維化するブロー法等により製造できる。
【0034】
本発明の無機繊維の平均繊維径は、通常0.1〜50μm、好ましくは0.5〜20μm、さらに好ましくは1〜10μm、最も好ましくは1〜8μmである。平均繊維径は、所望の繊維径になるように回転数、加速度、圧縮空気圧力、風速、風量等、既知の製造方法で調整すればよい。
【0035】
また、本発明の無機繊維は、加熱処理してもしなくてもよい。
加熱処理する場合は、繊維形状を維持する温度であればよい。加熱温度、加熱時間により繊維物性が変化するので適宜所望の性能(耐クリープ性、収縮率、強度、弾性)がでるように処理すればよい。
所定の加熱処理により無機繊維は非晶質から結晶質へ変化するが、上記の記載のように所望の性能がでればよく、非晶質、結晶質のどちらの状態でもよく、非晶質、結晶質部分がそれぞれが混在している状態でもよい。
加熱温度は、例えば100℃以上、300℃以上、好ましくは、600℃以上、800℃以上、さらに好ましくは1000℃以上、1200℃以上、1300℃以上、1400℃以上でよく、600℃〜1400℃、さらに好ましくは、800℃〜1200℃、800℃〜1000℃である。
【0036】
本発明の無機繊維は上記の組成を有することにより、pH4.5、pH7.4の生理食塩水に対し溶解する。さらには、加熱後(結晶化後)にも溶解性を有する。
【0037】
溶解速度定数は、実施例記載の測定方法で、好ましくは10ng/cm・h以上、30ng/cm・h以上、50ng/cm・h以上、100ng/cm・h以上、150ng/cm・h以上、200ng/cm・h以上、300ng/cm・h以上、500ng/cm・h以上、1000ng/cm・h以上、1500ng/cm・h以上である。
【0038】
本発明の無機繊維は、アルミナ反応性が低いことが好ましい。好ましくは、少なくとも600℃でアルミナと反応しない。アルミナと反応しないとは、実施例記載の方法で測定したとき、アルミナペレットが、繊維から製造したフリース又はブランケットに付着しないことを意味する。
【0039】
繊維の加熱収縮率は、実施例記載の方法で測定したとき、各温度(600℃、800℃、1000℃、1100℃、1200℃、1300℃、1400℃、1500℃、1600℃)において、好ましくは50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、さらに好ましくは10%以下、8%以下、最も好ましくは5%以下である。
【0040】
さらに、本発明の無機繊維は、必須成分の種類が少なくできるので、配合過程の工数が減り、コスト減となる。また微妙な配合量を調整する成分の種類が少ないことは製造の困難性を低減する。
【0041】
本発明の繊維から、様々な二次製品が得られる。例えば、バルク、ブランケット、ブロック、ロープ、ヤーン、紡織品、界面活性剤を塗布した繊維、ショット(未繊維化物)を低減または取り除いたショットレスバルクや、水等の溶媒を使用し製造するボード、モールド、ペーパー、フェルト、コロイダルシリカを含浸したウェットフェルト等の定形品が得られる。また、それら定形品をコロイド等で処理した定形品が得られる。また、水等の溶媒を使用し製造する不定形材料(マスチック、キャスター、コーティング材等)も得られる。また、これら定形品、不定形品と各種発熱体を組み合わせた構造体も得られる。
【0042】
本発明の繊維の具体的な用途として、熱処理装置、工業窯炉や焼却炉等の炉における目地材、耐火タイル、断熱レンガ、鉄皮、モルタル耐火物等の隙間を埋める目地材、シール材、パッキング材、クッション材、断熱材、耐火材、防火材、保温材、保護材、被覆材、ろ過材、フィルター材、絶縁材、目地材、充填材、補修材、耐熱材、不燃材、防音材、吸音材、摩擦材(例えばブレーキパット用添加材)、ガラス板・鋼板搬送用ロール、自動車触媒担体保持材、各種繊維強化複合材料(例えば繊維強化セメント、繊維強化プラスチック等の補強用繊維、耐熱材、耐火材の補強繊維、接着剤、コート材等の補強繊維)等が例示される。
【実施例】
【0043】
実施例1〜43,比較例1〜3
表1に示す組成を有する繊維を溶融法で製造し、以下の方法で評価した。結果を表2に示す。
【0044】
(耐熱性)
繊維の耐熱性の評価として加熱収縮率を測定した。
繊維の加熱収縮率は、繊維からフリース又はブランケット(縦横50mm、厚み5〜50mm)を製造して、800℃〜1400℃の所定の温度で、8時間焼成した前後で測定した。
製造した各サンプル表面に白金ピンを2点以上打ち込み、その白金ピン間の距離を加熱前後で測定し、その寸法変化率を加熱収縮率とした。
【0045】
(アルミナ反応性)
純度99%以上のアルミナ粉末約1gを、直径17mmの金型でプレス成形しペレットとした。このペレットを、繊維から製造したフリース状またはブランケット(縦横50mm、厚み5〜50mm)のサンプル上に置いて、この状態で加熱し、加熱後の反応性を確認した。ペレットと全く反応していない場合を○、サンプルと軽い付着(簡単に手でペレットがはがせ、外観でペレットとサンプルが溶融していない状態)を△、反応有り(ペレットとサンプルが溶融し付着している状態)を×とした。
【0046】
(生体溶解性)
以下の方法で、未加熱の繊維の生体溶解性を測定した。
繊維を、メンブレンフィルター上に置き、繊維上にマイクロポンプによりpH4.5又はpH7.4の生理食塩水を滴下させ、繊維、フィルターを通った濾液を容器内に貯めた。貯めた濾液を24時間経過後に取り出し、溶出成分をICP発光分析装置により定量し、溶解度を算出した。測定元素は主要元素であるK、Mg、Al、Siの4元素とした。平均繊維径を測定して単位表面積・単位時間当たりの溶出量である溶解速度定数(単位:ng/cm・h)に換算した。
平均繊維径は以下の方法で測定した。
400本以上の繊維を、電子顕微鏡で観察・撮影した後、撮影した繊維について、その径を計測し、全計測繊維の平均値を平均繊維径とした。
【0047】
(製繊性)
溶融法での製繊性について評価した。尚、比較例3の繊維は、かろうじて製繊ができた程度であった。
いずれかの方法において製繊され吸引チャンバーにて集綿した際の原綿が、フリース状かつニードルパンチを施しブランケット状になる場合を◎、フリース状かつニードルパンチを施しブランケット状になるが大ショットが多い場合を○、繊維状物質が得られフリース状は得られるがニードルパンチを施しブランケット状にならない場合、及び繊維状物質が得られない場合を×とした。
【0048】
(繊維状態)
フリース状かつニードルパンチを施してブランケット状になり、さらに、ハンドリング性、柔軟性、取り扱い性が良好な場合を◎、
フリース状かつブランケット状になり、さらに、ハンドリング性、柔軟性は良好であるが、触感や取り扱い性が良好でない場合を○、
ブランケット状にはならないがフリース状にはなり、さらに、ハンドリング性、柔軟性、取り扱い性が良好である場合を△、
ブランケット状にはならないがフリース状にはなり、さらに、ハンドリング性、柔軟性、取り扱い性のいずれかが不良である場合を×とした。
【0049】
尚、取り扱い性が不良とは、サンプルを触ると繊維が皮膚に刺さる又はこすれてチクチクする頻度が多い場合や、大ショットが多くサンプルから粉落ちすることが多い場合である。
比較例3の繊維は、繊維径が太く、皮膚に繊維が非常に多く刺さった。
【0050】
【表1-1】

【表1-2】
【0051】
【表2-1】
【表2-2】
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の無機繊維は、断熱材、またアスベストの代替品として、様々な用途に用いることができる。