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特開2015-25780孵化途中卵検査装置および孵化途中卵検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-25780(P2015-25780A)
(43)【公開日】2015年2月5日
(54)【発明の名称】孵化途中卵検査装置および孵化途中卵検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/08 20060101AFI20150109BHJP
   A01K 43/00 20060101ALI20150109BHJP
【FI】
   G01N33/08
   A01K43/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-156765(P2013-156765)
(22)【出願日】2013年7月29日
(71)【出願人】
【識別番号】597017812
【氏名又は名称】株式会社ナベル
(72)【発明者】
【氏名】大橋 豊昭
(72)【発明者】
【氏名】井口 浩成
(57)【要約】
【課題】セッタートレイを搬送することで生じる孵化途中卵の内部の揺れによる誤判定が起こらない孵化途中卵検査装置を提供する。
【解決手段】孵化途中卵検査装置1は、計測場所13で停止させた複数の孵化途中卵Eのバイタルサインを計測する計測部10と、計測部10が計測したバイタルサインによって各孵化途中卵Eの良否を判定する判定部5とを備え、判定部5は、複数の孵化途中卵Eが計測場所13で停止し、停止することで孵化途中卵Eの内部に生じる揺れが減衰した後のバイタルサインによって各孵化途中卵Eの良否を判定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
孵化途中の卵を検査する孵化途中卵検査装置であって、
計測場所で停止させた複数の孵化途中卵のバイタルサインを計測する計測部と、
前記計測部が計測したバイタルサインによって各孵化途中卵の良否を判定する判定部とを備え、
前記判定部は、前記複数の孵化途中卵が前記計測場所で停止し、停止することで孵化途中卵の内部に生じる揺れが減衰した後のバイタルサインによって各孵化途中卵の良否を判定する孵化途中卵検査装置。
【請求項2】
前記孵化途中卵検査装置は、前記複数の孵化途中卵を前記計測場所へ搬送する搬送部をさらに備える請求項1に記載の孵化途中卵検査装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記計測場所で前記複数の孵化途中卵が停止してからn秒経過した後のバイタルサインによって各孵化途中卵の良否を判定する請求項1または請求項2に記載の孵化途中卵検査装置。
【請求項4】
前記n秒は、前記複数の孵化途中卵ごとに適宜変更される請求項3に記載の孵化途中卵検査装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記複数の孵化途中卵が前記計測場所で停止し、停止することで孵化途中卵の内部に生じる揺れが存在しなくなった後のバイタルサインによって各孵化途中卵の良否を判定する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の孵化途中卵検査装置。
【請求項6】
前記計測部は、少なくとも2箇所の前記計測場所を含み、
前記計測部が一の計測場所で停止させた前記複数の孵化途中卵のバイタルサインを計測している時に、他の計測場所で前記複数の孵化途中卵を停止または移動させることができる請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の孵化途中卵検査装置。
【請求項7】
孵化途中の卵を検査する孵化途中卵検査方法であって、
複数の孵化途中卵を計測場所で停止させるステップと、
計測場所で停止させた複数の孵化途中卵のバイタルサインを計測するステップと、
複数の孵化途中卵が計測場所で停止し、停止することで孵化途中卵の内部に生じる揺れが減衰した後のバイタルサインによって各孵化途中卵の良否を判定するステップとを備える孵化途中卵検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、孵化途中卵のバイタルサインによって良否判定を行う孵化途中卵検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鶏卵等に代表される卵には、食用のための卵の他に、雛を生産するための卵や、ワクチンを生産するための卵がある。このような卵は、特に、「孵化途中卵(または種卵)」と称されている。孵卵場では、孵化途中卵をセッタートレイと称される専用のトレイに載置して孵卵器での孵卵工程を行う。
【0003】
孵卵工程を開始する日が入卵日とされ、その入卵日からの経過日数が、孵卵日数とされる。雛は、ほぼ孵卵日数21日目に生まれることになる。孵卵日数18日目あるいは19日目になると、孵化途中卵の孵化に備えて、孵化途中卵をセッタートレイからハッチャートレイと称される専用のトレイに移し替える作業が行われる。この移し替えの作業に際して、また、ワクチンを生産するための孵化途中卵は、ウィルスを注入する直前の孵卵日数10日目に、孵化途中卵には所定の検査が行われる。ここで、その検査について説明する。
【0004】
孵化途中卵といえども、すべての孵化途中卵が順調に成長するわけではなく、ある割合で当初から未受精の卵が含まれていたり、また、孵卵工程の途中において、胚の発育が止まってしまう発育中止卵がある。このような未受精卵や発育中止卵には、中身が腐ってしまうものがあり、中身が腐った卵は腐敗卵と呼ばれる。
【0005】
通常、雛を生産するための孵化途中卵に対しては、孵化後に伝染病等に感染するリスクを抑えるために、孵化途中卵の状態でワクチン接種が行われるが、セッタートレイに収容されている孵化途中卵にワクチンを接種する際に、腐敗によって内圧が上昇した孵化途中卵が、殻に注射針が接触するときの衝撃によって爆発してしまうことがある。また、爆発しないまでも、腐敗卵にワクチンを接種することによって注射針が汚染されてしまい、その汚染された注射針によって他の健全な孵化途中卵も汚染されてしまうことになる。さらに、ハッチャートレイに移し替えた後に孵化途中卵が爆発すると、すでに生まれた雛を汚染してしまうことがある。
【0006】
このような汚染を未然に防ぐために、孵化途中卵を胚が生存している孵化途中卵である「生存卵」と、未受精卵や、胚が死亡している発育中止卵である「非生存卵」とに分ける検査が行われる。すなわち、孵化途中卵の良否判定が行われる。従来、孵化途中卵の良否判定には、主に光学的な手法が採用されている。これらの手法では、孵化途中卵に所定の光を照射し、孵化途中卵を透過した光の時間変動成分を解析することによって良否判定が行われる。このようにして非生存卵と判定された孵化途中卵は、直ちに除去されて、生存卵が汚染されるのを防いでいる。
【0007】
生存卵を透過した光の時間変動成分には、胚の運動や、胚の心拍などのバイタルサインが含まれているが、非生存卵を透過した光の時間変動成分には、バイタルサインは含まれない。しかし、非生存卵を透過した光の時間変動成分を計測している時に外部から孵化途中卵検査装置に振動が加えられると、その振動が内部の死亡した胚に伝わるなどして、非生存卵であるにもかかわらず、胚の運動などのバイタルサインが含まれていると誤判定されてしまう。
【0008】
そのような誤判定を防ぐために、たとえば、特許文献1に提案されているように、生存卵と判定された孵化途中卵の数が予想を大幅に超えている場合や、胚の運動が所定数の孵化途中卵においてほぼ同時に発生している場合に、外部からの振動による誤判定であることを検知して、再度検査をやり直す手法が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2011−177188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来の孵化途中卵検査装置では、次のような問題点があった。上述したように、孵化途中卵検査装置が振動による誤判定であることを検知するためには、生存卵と判定された孵化途中卵の数が予想を大幅に超えている場合や、胚の運動が多数の孵化途中卵においてほぼ同時に発生しているような場合など、外部から強い振動が加えられたときに限られる。
【0011】
そうすると、図9に示す発育中止卵(腐敗卵)の内部のように死亡した胚が揺れやすい状態の場合、外部から強い振動が加わらなくても、計測場所まで運ばれた時の慣性によって死亡した胚がゆらゆらと揺れてしまう。このような揺れは胚の運動や心拍と近似しており、非生存卵であるにもかかわらず、生存卵であると誤判定されることがあった。そこで、このような場合であっても、非生存卵を生存卵であると誤判定することがない孵化途中卵検査装置が求められている。
【0012】
本発明は、上記開発の一環でなされたものであり、その目的は、孵化途中卵を計測場所まで運んだ時に生じる非生存卵の内部の揺れによって誤判定が起きない孵化途中卵検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る孵化途中卵検査装置は、計測場所で停止させた複数の孵化途中卵のバイタルサインを計測する計測部と、前記計測部が計測したバイタルサインによって各孵化途中卵の良否を判定する判定部とを備え、前記判定部は、前記複数の孵化途中卵が前記計測場所で停止し、停止することで孵化途中卵の内部に生じる揺れが減衰した後のバイタルサインによって各孵化途中卵の良否を判定する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る孵化途中卵検査装置によれば、孵化途中卵を計測場所で停止させた時に、発育中止卵の内部に生じる揺れによる誤判定が大幅に抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る孵化途中卵検査装置の構成を示す斜視図である。
図2】同実施の形態において、孵化途中卵検査装置の構成を示す平面図である。
図3】同実施の形態において、孵化途中卵検査装置の構成を示す正面概念図である。
図4】同実施の形態において、計測ヘッドによる計測動作を説明するためのフローチャートである。
図5】発育中止卵(腐敗卵)と、生存卵を透過した光の時間変動成分を示すグラフである。
図6】同実施の形態において、計測ヘッドによる別の計測動作を説明するためのフローチャートである。
図7】本発明の第2の実施の形態に係る孵化途中卵検査装置の構成を示す平面図である。
図8】同実施の形態において、計測ヘッドによる計測動作を説明するためのフローチャートである。
図9】発育中止卵(腐敗卵)と、生存卵の内部状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の第1の実施の形態に係る孵化途中卵検査装置について説明する。図1ないし図3に示すように、孵化途中卵検査装置1は、孵化途中卵Eのバイタルサインを計測する計測ヘッド11が取り付けられた計測部10と、計測されたバイタルサインによって孵化途中卵Eの判定を行う判定部5と、計測ヘッド11による計測結果に基づいて孵化途中卵Eを移載する移載ヘッド21が取り付けられた移載部20と、複数の孵化途中卵Eが収容されたセッタートレイ2を搬送する搬送部30と、これらの制御を行う制御部6を備えている。
【0017】
次に、計測ヘッド11が取り付けられた計測部10について、詳しく説明する。図3に示すように、計測部10には、孵化途中卵Eに向けて所定の光を照射する発光部12と、発光部12によって照射された光のうち、孵化途中卵Eを透過した光を計測する計測ヘッド11とが設けられている。
【0018】
発光部12は、たとえば、発光ダイオード等の複数の発光素子が、後述する搬送部30によって搬送されるセッタートレイ2に収容された複数の孵化途中卵Eのそれぞれの配置に対応するように配置されている。なお、発光素子としては、所定の波長領域の光を発光する素子であれば、発光ダイオードに限られず、たとえば、レーザ光でもよい。
【0019】
計測ヘッド11には、発光部12の発光素子の配置に対応するようにキャップ14が複数取り付けられている。すなわち、キャップ14の数はセッタートレイ2上の孵化途中卵Eの数と同数となっている。キャップ14は柔軟性と遮光性を有しており、孵化途中卵Eの上端部に接触して、孵化途中卵Eの内部から透過してくる光のみを通過させる構造となっている。
【0020】
複数のキャップ14の内側には、フォトダイオード等の受光素子が配置されている。発光部12の発光素子が発した光は孵化途中卵Eの内部を通り、孵化途中卵Eの上端部から透過してくる光のみがキャップ14の内側で受光素子によって受光される。受光素子は受光した光を電気信号に変換し、判定部5へ送る。なお、受光素子としては、孵化途中卵Eを透過した所定の光を信号として捉えることができれば、フォトダイオード等に限られない。
【0021】
判定部5は、孵化途中卵Eの良否判定を行う演算処理装置であり、受光素子から送られてきた電気信号に含まれる光の時間変動成分を解析し、セッタートレイ2に収容されているそれぞれの孵化途中卵Eに、胚の運動や、胚の心拍などのバイタルサインが含まれているか否かを判定する。バイタルサインが含まれていなければ、その孵化途中卵Eは、未受精卵や発育中止卵などの非生存卵であると判定される。また、孵化途中卵に光を当て、その透過光に含まれるバイタルサインを計測して良否判定を行う技術として、特開2011−106892などに詳しい判定方法が記載されており、その方法等を利用することができる。以下、孵化途中卵を透過した光に含まれるバイタルサインを計測して良否判定を行うことを「バイタルサイン計測」と呼ぶ。
【0022】
計測ヘッド11は、計測部10のフレームに固定された固定部15に、計測伸縮部16を介して取り付けられている。計測伸縮部16は、孵化途中卵Eの計測時には計測ヘッド11を下降させてキャップ14を孵化途中卵Eの上端部に密着させる。また、計測後には計測ヘッド11を図3の破線で描かれた位置まで上昇させる。本実施の形態では、計測伸縮部16はエアシリンダを用いているが、計測ヘッド11を昇降させることができれば、エアシリンダに限られず、たとえば、モータ駆動によって昇降させてもよい。
【0023】
次に、移載ヘッド21が取り付けられた移載部20について、詳しく説明する。図3に示すように、移載部20には、判定部5による判定結果に基づいて孵化途中卵Eを移載する移載ヘッド21と、移載ヘッド21がセッタートレイ2から移載した非生存卵Dを孵化途中卵検査装置1の外部へ排除する非生存卵排除部25とが設けられている。
【0024】
移載ヘッド21には、非生存卵Dを選択的に真空吸引するための吸盤22が、後述する搬送部30によって搬送されるセッタートレイ2に収容された孵化途中卵Eの半分の配置に対応するように複数取り付けられている。本実施の形態では、移載ヘッド21による一回の移載動作で、セッタートレイ2に収容されている複数の孵化途中卵Eの半分を移載することができる。つまり、1つのセッタートレイ2を前半部分と後半部分に分けて、二回の移載動作でセッタートレイ2上の非生存卵Dを取り除くので、移載ヘッド21に取り付けられている吸盤22の数は、計測ヘッド11に取り付けられているキャップ14の数の半分で構成されている。
【0025】
移載ヘッド21に取り付けられている吸盤22の数を、計測ヘッド11に取り付けられているキャップ14の数と同じ(つまり、セッタートレイ2が収容することができる孵化途中卵Eの数と同じ)にして、移載ヘッド21による一回の移載動作で一つのセッタートレイ2に収容されているすべての非生存卵Dを取り除くことができるようにしてもよい。しかし、一回の移載動作ですべての非生存卵Dを取り除くことができるようにすると移載ヘッド21が大きくなってしまい、孵化途中卵検査装置1をコンパクトにできないので本実施の形態では吸盤22の数をセッタートレイ2上の孵化途中卵Eの数の半分にして、二回の移載動作で非生存卵Dを取り除くようにしている。さらに、吸盤22の数をセッタートレイ2上の孵化途中卵Eの数の四分の一にすれば、セッタートレイ2上の全ての非生存卵Dを取り除くためには最大で四回の移載動作が必要になるが、装置全体をさらにコンパクトにすることも可能である。
【0026】
移載ヘッド21には、真空を発生させるコンプレッサ(図示せず)に繋がれた真空配管が複数の吸盤22のそれぞれに設けられており、前述の判定部5の判定結果に基づいて、吸盤22がセッタートレイ2上の孵化途中卵Eの中から非生存卵Dと判定されたもののみを選択的に真空吸引することができるように構成されている。また、セッタートレイ2から非生存卵Dのみを選択的に移載する技術として特開2012−231700などに詳しい移載技術が記載されており、その技術等を利用することができる。
【0027】
移載ヘッド21は、移載部20のフレームに固定された移載スライド部23に、移載伸縮部24を介して接続されている。移載伸縮部24は、非生存卵Dを移載する時には移載ヘッド21を下降させて吸盤22を非生存卵Dの上端部に密着させる。また、非生存卵Dに対して真空吸引が行われた後には移載ヘッド21を図2の破線で描かれた位置まで上昇させる。本実施の形態では、移載伸縮部24はエアシリンダを用いているが、移載ヘッド21を昇降させるさせることができれば、エアシリンダに限られず、たとえば、モータ駆動によって昇降させてもよい。
【0028】
移載スライド部23は、移載ヘッド21をセッタートレイ2上から非生存卵排除部25上まで水平移動させるスライダである。本実施の形態では、移載スライド部23の駆動にはモータとボールねじを用いているが、移載ヘッド21を水平移動させることができれば、モータとボールねじに限られず、たとえば、リニアモータの駆動によって水平移動させてもよい。
【0029】
非生存卵排除部25は、移載ヘッド21がセッタートレイ2から移載した非生存卵Dを孵化途中卵検査装置1の外部へ排除することができるように、わずかに傾斜を付けて移載部20に取り付けられている。移載ヘッド21が非生存卵排除部25上で非生存卵Dの真空吸引を解除すると、非生存卵Dは非生存卵排除部25上を傾斜面に沿って転がり、孵化途中卵検査装置1の外部に置かれた非生存卵用の回収容器(図示せず)に回収される。本実施の形態では、非生存卵Dが自重で傾斜面を転がるように構成されているが、ベルトコンベア等を用いて能動的に非生存卵Dを排除するようにしてもよい。
【0030】
また、非生存卵排除部25に替えて、生存卵を搬送するためのコンベア等を設け、判定部5によって生存卵と判定された孵化途中卵Eを移載ヘッド21によって移載し、非生存卵Dをセッタートレイ2に残して搬出方向4へ搬送するようにしてもよい。このようにすることで、中身が腐った腐敗卵が移載の衝撃で爆発してセッタートレイ2上の生存卵を汚染する問題を減らすことができる。
【0031】
移載部20は、図1ないし図3に示すとおり、カバーで覆われている。これにより、腐敗卵が移載の衝撃によって爆発した場合に、孵化途中卵検査装置1の外部へ腐敗卵の内容物が飛散しないようにしている。本実施の形態では、このカバーは不透明な部材で構成されているが、アクリル板などの透明な部材で構成すれば、孵化途中卵検査装置1の外部へ腐敗卵の内容物が飛散しないようにしながら、外部から移載の様子を監視することも可能となる。
【0032】
なお、計測部10と、移載部20とは、直接接続されずに所定の間隔をあけて配置されているため、移載ヘッド21が動作することで生じる振動を遮断することができる。
【0033】
次に、搬送部30について、詳しく説明する。図1ないし図3に示すように、搬送部30には、孵化途中卵Eが収容されているセッタートレイ2を搬入方向3へ搬送し、計測等が行われた後のセッタートレイ2を搬出方向4へ搬送するためのドグ31が設けられている。
【0034】
ドグ31は、セッタートレイ2を搬送方向の前後から挟んで搬送するための部材である。ドグ31の端部は、搬送部30の搬送方向に向かって右側と左側に設けられた2本のチェーン(図示せず)に連結されており、2本のチェーンが同時に駆動することで、搬送面32上を滑らせながらセッタートレイ2を搬送する。本実施の形態では、搬送面32はセッタートレイ2を滑らせることができるようにステンレスの部材で構成されているが、計測ヘッド11の直下の計測場所13では、発光部12からの光を通すことができるように搬送面32がガラスのような透明体となっている。
【0035】
制御部6は、演算処理装置であり、計測部10と、移載部20と、搬送部30の動作タイミング等の制御を行っている。なお、本実施の形態では、判定部5と制御部6を別々の演算処理装置として記載しているが、これらの機能を単一の演算処理装置で実現することができる。また、計測部10、移載部20、搬送部30のそれぞれに独立した制御部を設けてもよい。
【0036】
次に、本実施の形態に係る孵化途中卵検査装置1の動作について説明する。
【0037】
孵卵器から取り出したセッタートレイ2を搬送部30上のドグ31とドグ31との間の搬入位置に載せると、搬送部30はセッタートレイ2を搬入方向3へ搬送し、計測部10の内側にある二点鎖線で示された計測場所13までセッタートレイ2を搬送して停止する。
【0038】
次に、計測部10の計測動作について、図4に示すフローチャートを参照して説明を行う。セッタートレイ2が計測場所13で停止すると、計測伸縮部16は、計測ヘッド11に取り付けられているキャップ14が、計測場所13で停止している孵化途中卵Eの上端部に接触する位置まで計測ヘッド11を下降させる(S1)。
【0039】
計測場所13でセッタートレイ2が停止してから十分な時間が経過していない時にバイタルサインの計測を行うと、図9に示す発育中止卵(腐敗卵)の内部のように死亡した胚が揺れやすい状態の場合、セッタートレイ2を計測場所13まで搬送したときに生じる慣性力によって死亡した胚がゆらゆらと揺れる。このような揺れは図5に示す非生存卵の波形のように計測されるので、発育中止卵であるにもかかわらず、生存卵であると誤判定されてしまうことがある。本実施の形態ではセッタートレイ2が計測場所13で停止してから待機時間の2秒が経過した後で計測を行っている(S2)。これにより、孵化途中卵Eの内部に生じる揺れが減衰した後のバイタルサインによって各孵化途中卵の良否を判定することができる。
【0040】
なお、この待機時間は2秒に限られず、もっと長い時間待機するようにしてもよい。しかしながら、待機時間を長くすると孵化途中卵検査装置の単位時間あたりの処理量が減少するため、本実施の形態ではセッタートレイ2を最大速度が50cm/sで搬送したときの慣性力によって生じる腐敗卵の内部の揺れがほとんど消失し、誤判定が発生しない時間である2秒を待機時間に設定している。セッタートレイ2の搬送速度が遅ければ、待機時間を短くしてもよい。また、待機時間は常に一定である必要はなく、待機時間をn秒に設定し、nの値を搬送速度等に応じて適宜変更してもよい。
【0041】
計測場所13でセッタートレイ2が停止してから2秒以上が経過していると、発光部12の発光素子から光が照射され、光は孵化途中卵Eの内部を透過し、透過した光がキャップ14の内側を通り、計測ヘッド11の受光素子によって受光されることでバイタルサイン計測が行われる(S3)。受光された光は電気信号に変換されて判定部5へ送られる。判定部5は、計測部10から送られてきた電気信号を基にセッタートレイ2上の孵化途中卵Eそれぞれの良否判定を行い、判定結果を制御部6へ送る。その後、計測伸縮部16は図3の破線で示す位置まで計測ヘッド11を上昇させる(S4)。これで、計測部10の計測動作は完了となる。
【0042】
また、待機時間に加え、孵化途中卵Eの内部の揺れの程度によってバイタルサイン計測の開始タイミングを変更する例として、計測部10の計測動作の図6に示すフローチャートを参照して説明を行う。
【0043】
セッタートレイ2が計測場所13で停止すると、計測伸縮部16は、計測ヘッド11に取り付けられているキャップ14が、計測場所13で停止している孵化途中卵Eの上端部に接触する位置まで計測ヘッド11を下降させる(S10)。
【0044】
本計測動作では、セッタートレイ2が計測場所13で停止してからn秒以上の待機時間が経過した後(S11)、または、計測場所13でセッタートレイ2を停止させることで生じた孵化途中卵Eの内部の揺れが存在しない場合(S12)にバイタルサイン計測を行う(S13)。これにより、孵化途中卵Eの内部に生じる揺れが減衰した後のバイタルサインによって各孵化途中卵の良否を判定することができる。なお、「孵化途中卵Eの内部の揺れが存在しない」とは、バイタルサイン計測を行う時に誤判定が起こらない程度の揺れが含まれている場合を含み、完全に揺れが消失している場合に限られない。
【0045】
また、孵化途中卵E(この場合は腐敗卵)の内部の揺れが存在しているかどうかを判断するためには、計測ヘッド11が下降し、キャップ14が孵化途中卵Eの上端部に接触してすぐに孵化途中卵Eを透過した光の時間変動成分の計測を行う必要がある。この時に行われる光の時間変動成分の計測とは、孵化途中卵Eの良否判定を行うためのバイタルサイン計測ではなく、孵化途中卵E内部の揺れが存在しているかどうかを判定するために行われる計測である。以下、孵化途中卵E内部の揺れが存在しているかどうかを判定するために行われる計測を「揺れ計測」と呼ぶ。
【0046】
揺れ計測が行われると、図9に示す発育中止卵(腐敗卵)の内部のように死亡した胚が揺れやすい状態の場合、セッタートレイ2を計測場所13まで搬送したときに生じる慣性力によって死亡した胚のゆらゆらとした揺れが計測される。このような揺れは図5に示す発育中止卵(腐敗卵)の波形のように、生存卵の波形とは明らかに異なる波形となることが多い。
【0047】
ここで、図5に示す発育中止卵(腐敗卵)と、生存卵を透過した光の時間変動成分のグラフについて詳細に説明を行う。図5は、同じセッタートレイ2に収容され、光の時間変動成分が同時に計測された複数の孵化途中卵Eのうち、1個の発育中止卵(腐敗卵)の内部を透過した光の時間変動成分をグラフ化したもの(左側)と、1個の生存卵の内部を透過した光の時間変動成分をグラフ化したもの(右側)である。
【0048】
どちらのグラフも、縦軸は計測ヘッド11の受光素子によって受光される光の強弱を表し、横軸は時間(秒)を表している。右側の生存卵の内部を透過した光の時間変動成分は周期的に変化する心拍を含んでいるが、左側の発育中止卵(腐敗卵)の内部を透過した光の時間変動成分は心拍のような時間変動成分を含まず、セッタートレイ2を搬送したときの慣性力によって生じた揺れによる時間変動成分を含んでいる。
【0049】
揺れ計測によって図5の発育中止卵(腐敗卵)のような波形を計測した場合は、内部の揺れが存在しているとして(S12)、バイタルサインは計測されない。しかし、この時点で、計測場所13でセッタートレイ2が停止してから一定時間(n秒)が経過していれば(S11)、バイタルサイン計測が行われるが、一定時間が経過していなければ、再び光の時間変動成分の計測が行われて、孵化途中卵Eの内部の揺れが存在しているかどうかが判定される(S12)。なお、本計測動作では、「揺れ計測」と「バイタルサイン計測」を分けているが、これらを分けず最初に一回の光の時間変動成分の計測のみを行い、その中に揺れとおぼしき波形が含まれていなければ、最初に行われた光の時間変動成分の計測をバイタルサイン計測としてもよい。
【0050】
計測場所13でセッタートレイ2が停止してから一定時間が経過しているか、または孵化途中卵Eの内部の揺れが存在していなければ、バイタルサイン計測が行われる(S13)。計測ヘッド11の受光素子によって受光された光は電気信号に変換されて判定部5へ送られる。判定部5は、計測部10から送られてきた電気信号を基にセッタートレイ2上の孵化途中卵Eそれぞれの良否判定を行い、判定結果を制御部6へ送る。その後、計測伸縮部16は図3の破線で示す位置まで計測ヘッド11を上昇させる(S14)。これで、計測部10の計測動作は完了となる。
【0051】
計測ヘッド11による計測が完了すると、搬送部30は搬送を再開し、移載ヘッド21がセッタートレイ2上の前半部分に含まれる非生存卵Dを真空吸引できる位置まで搬送して停止する。この時、孵卵器から取り出された次のセッタートレイ2が搬送部30上のドグ31とドグ31との間の搬入位置に載せられていると、次のセッタートレイ2は計測場所13まで搬送されて停止する。
【0052】
セッタートレイ2が停止すると、移載伸縮部24は移載ヘッド21を下降させて吸盤22が孵化途中卵Eの上端部に接触する位置で停止する。移載ヘッド21は、計測ヘッド11の計測結果に基づいて、判定部5が非生存卵Dであると判定した孵化途中卵を選択的に真空吸引する。真空吸引が行われると、移載伸縮部24は図2の破線で示す位置まで移載ヘッド21を上昇させる。
【0053】
移載ヘッド21が破線の位置まで上昇すると、移載スライド部23が移載ヘッド21を非生存卵排除部25上へ移動させる。非生存卵排除部25上への移動が完了すると、真空吸引が解除されて非生存卵Dは非生存卵排除部25に移載される。非生存卵排除部25上の非生存卵Dは、傾斜を転がり孵化途中卵検査装置1の外部に用意された非生存卵用の回収容器に回収される。
【0054】
移載ヘッド21は非生存卵Dを非生存卵排除部25へ移載すると、再び移載スライド部23によってセッタートレイ2上へ移動を開始し、移載ヘッド21がセッタートレイ2上の後半部分に含まれる非生存卵Dを真空吸引できる位置まで移動すると停止する。その後、前半部分の非生存卵Dの移載と同様の動作が繰り返される。
【0055】
移載ヘッド21によってセッタートレイ2上の非生存卵Dが全て取り除かれると、搬送部30はセッタートレイ2を搬出方向4へ搬送し、停止する。この時、計測が完了した次のセッタートレイ2は搬送部30によって搬送されて移載ヘッド21の直下で停止しており、さらに次のセッタートレイ2は搬送部30によって搬送されて計測場所13で停止している。その後は、孵卵器にあるすべての孵化途中卵Eの検査が完了するまで、一連の動作が繰り返される。
【0056】
さらに、本実施の形態の別の例として、搬送部および移載部をなくして、計測部のみとすることもできる。この場合は、孵化途中卵の検査を行う作業者が、セッタートレイを計測部へ投入し、投入から一定時間(n秒)経過後にバイタルサイン計測を開始し、計測結果に基づいて判定部が判定を行い、判定部の判定結果に基づいて計測部内に設けたインクジェット装置によって非生存卵に印を付けるようにしてもよい。作業者は、インクジェット装置によって印が付けられた非生存卵を取り除くことで、孵化途中卵の検査が完了する。
【0057】
本実施の形態に係る孵化途中卵検査装置によれば、セッタートレイに収容された孵化途中卵を計測場所まで運ぶことによって内部に生じた揺れが減衰してからバイタルサイン計測を行うので、内部で死亡した胚が揺れているような腐敗卵や、内部で卵黄が揺れているような未受精卵などの非生存卵を生存卵であると誤判定することがない。
【0058】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る孵化途中卵検査装置について説明する。なお、上記第1の実施形態と同じ構成については同一の符号を付して説明を省略する。図7に示すように、孵化途中卵検査装置100は、孵化途中卵Eのバイタルサインを計測する計測ヘッド11が取り付けられた計測部110と、計測されたバイタルサインによって孵化途中卵Eの判定を行う判定部5(図3参照)と、計測ヘッド11による計測結果に基づいて孵化途中卵Eを移載する移載ヘッド21Aおよび移載ヘッド21Bが取り付けられた移載部120と、複数の孵化途中卵Eが収容されたセッタートレイ2を並列して独立に搬送する搬送部130Aおよび搬送部130Bと、これらの制御を行う制御部6(図3参照)を備えている。
【0059】
まず、搬送部130Aおよび搬送部130Bについて詳しく説明する。図7に示すように、搬送部130Aおよび搬送部130Bには、孵化途中卵Eが収容されているセッタートレイ2を搬入方向3へ搬送し、計測等が行われた後のセッタートレイ2を搬出方向4へ搬送するためのドグ31が設けられている。
【0060】
ドグ31は、搬送部130Aおよび搬送部130Bにおいて、セッタートレイ2を搬送方向の前後から挟んで搬送するための部材である。搬送部130Aに設けられたドグ31の端部は、搬送部130Aの搬送方向に向かって右側と左側に設けられた2本のチェーン(図示せず)に連結されており、2本のチェーンが同時に駆動することで、搬送面32上を滑らせながらセッタートレイ2を搬送する。同様に、搬送部130Bに設けられたドグ31の端部は、搬送部130Bの搬送方向に向かって右側と左側に設けられた2本のチェーン(図示せず)に連結されており、2本のチェーンが同時に駆動することで、搬送面32上を滑らせながらセッタートレイ2を搬送する。搬送部130Aおよび搬送部130Bは独立してセッタートレイ2を搬送するため、一方の搬送部が停止している時に他方の搬送部を動かすことができる。
【0061】
本実施の形態では、搬送面32はセッタートレイ2を滑らせることができるようにステンレスの部材で構成されているが、二点鎖線で示された計測場所13Aおよび計測場所13Bでは、発光部12(図3参照)からの光を通すことができるように搬送面32がガラスのような透明体となっている。
【0062】
次に、計測ヘッド11が取り付けられた計測部110について、詳しく説明する。計測部110には、発光部12によって孵化途中卵Eの下方から照射された光のうち、孵化途中卵Eを透過した光を計測する計測ヘッド11が設けられている。計測ヘッド11は、計測部110のフレームに固定された計測スライド部17に、計測伸縮部16(図3参照)を介して取り付けられている。
【0063】
計測スライド部17は、計測場所13A上と、計測場所13B上との間で計測ヘッド11を水平移動させるためのスライダである。本実施の形態では、計測スライド部17の駆動にはモータとボールねじを用いているが、計測ヘッド11を水平移動させることができれば、モータとボールねじに限られず、たとえば、リニアモータの駆動によって水平移動させてもよい。
【0064】
次に、移載ヘッド21Aおよび移載ヘッド21Bが取り付けられた移載部120について、詳しく説明する。移載部120には、判定部5による判定結果に基づいて孵化途中卵Eを移載する移載ヘッド21Aおよび移載ヘッド21Bと、移載ヘッド21Aおよび移載ヘッド21Bがセッタートレイ2から移載した非生存卵Dを孵化途中卵検査装置1の外部へ排除する非生存卵排除部125とが設けられている。
【0065】
移載ヘッド21Aおよび移載ヘッド21Bには、非生存卵Dを選択的に真空吸引するための吸盤22が、搬送部30によって搬送されるセッタートレイ2に収容された孵化途中卵Eの半分の配置に対応するように複数取り付けられている。本実施の形態では、移載ヘッド21Aまたは移載ヘッド21Bによる一回の移載動作で、セッタートレイ2に収容されている複数の孵化途中卵Eの半分を移載することができる。つまり、1つのセッタートレイ2を前半部分と後半部分に分けて、二回の移載動作でセッタートレイ2上の非生存卵Dを取り除くので、移載ヘッド21Aおよび移載ヘッド21Bのそれぞれに取り付けられている吸盤22の数は、計測ヘッド11に取り付けられているキャップ14の数の半分で構成されている。
【0066】
移載ヘッド21Aおよび移載ヘッド21Bは、移載部120のフレームに固定された移載スライド部23Aおよび移載スライド部23に、それぞれ移載伸縮部24(図3参照)を介して接続されている。
【0067】
移載スライド部23Aおよび移載スライド部23Bは、移載ヘッド21Aおよび移載ヘッド21Bをセッタートレイ2上から非生存卵排除部25上まで水平移動させるスライダである。本実施の形態では、移載スライド部23Aおよび移載スライド部23Bの駆動にはモータとボールねじを用いているが、移載ヘッド21を水平移動させることができれば、モータとボールねじに限られず、たとえば、リニアモータの駆動によって水平移動させてもよい。
【0068】
非生存卵排除部125は、移載ヘッド21Aおよび移載ヘッド21Bがセッタートレイ2から移載した非生存卵Dを孵化途中卵検査装置1の外部へ排除することができるように、わずかに傾斜を付けて移載部120に取り付けられている。移載ヘッド21Aおよび移載ヘッド21Bが非生存卵排除部25上で非生存卵Dの真空吸引を解除すると、非生存卵Dは非生存卵排除部25上を傾斜面に沿って転がり、孵化途中卵検査装置1の外部に置かれた非生存卵用の回収容器(図示せず)に回収される。本実施の形態では、非生存卵Dが自重で傾斜面を転がるように構成されているが、ベルトコンベア等を用いて能動的に非生存卵Dを排除するようにしてもよい。
【0069】
次に、本実施の形態に係る孵化途中卵検査装置100の動作について説明する。
【0070】
孵卵器から取り出したセッタートレイ2を搬送部130Aおよび搬送部130B上のドグ31とドグ31との間の搬入位置に載せると、搬送部130Aおよび搬送部130Bはセッタートレイ2を搬入方向3へ搬送し、計測部110の計測場所13Aおよび計測場所13Bまでセッタートレイ2を搬送して停止する。
【0071】
次に、計測部110の計測場所13A側の計測動作について、図8に示すフローチャートを参照して説明を行う。セッタートレイ2が計測場所13Aで停止すると、計測スライド部17が計測ヘッド11を計測場所13A上へスライドさせる(S20)。計測スライド部17が計測ヘッド11をスライドさせると、計測伸縮部16は、計測ヘッド11に取り付けられているキャップ14が、計測場所13Aで停止している孵化途中卵Eの上端部に接触する位置まで計測ヘッド11を下降させる(S21)。
【0072】
計測場所13Aでセッタートレイ2が停止してから十分な時間が経過していない時にバイタルサインの計測を行うと、図9に示す発育中止卵(腐敗卵)の内部のように死亡した胚が揺れやすい状態の場合、セッタートレイ2を計測場所13Aまで搬送したときに生じる慣性力によって死亡した胚がゆらゆらと揺れる。このような揺れは図5に示す非生存卵の波形のように計測されるので、発育中止卵であるにもかかわらず、生存卵であると誤判定されてしまうことがある。本実施の形態ではセッタートレイ2が計測場所13Aで停止してから待機時間の2秒が経過した後で計測を行っている(S22)。これにより、孵化途中卵Eの内部に生じる揺れが減衰した後のバイタルサインによって各孵化途中卵の良否を判定することができる。
【0073】
なお、この待機時間は2秒に限られず、もっと長い時間待機するようにしてもよい。しかしながら、待機時間を長くすると孵化途中卵検査装置の単位時間あたりの処理量が減少するため、本実施の形態ではセッタートレイ2を最大速度50cm/sで搬送したときの慣性力によって生じる腐敗卵の内部の揺れがほとんど消失し、誤判定が発生しない時間である2秒を待機時間に設定している。セッタートレイ2を搬送するときの最大速度が低ければ、待機時間を短くしてもよい。また、待機時間は常に一定である必要はなく、待機時間をn秒に設定し、nの値を搬送速度等に応じて適宜変更してもよい。
【0074】
計測場所13Aでセッタートレイ2が停止してから2秒以上が経過していると、発光部12の発光素子から光が照射され、光は孵化途中卵Eの内部を透過し、透過した光がキャップ14の内側を通り、計測ヘッド11の受光素子によって受光されることでバイタルサイン計測が行われる(S23)。受光された光は電気信号に変換されて判定部5へ送られる。判定部5は、計測部110から送られてきた電気信号を基にセッタートレイ2上の孵化途中卵Eそれぞれの良否判定を行い、判定結果を制御部6へ送る。その後、計測伸縮部16は計測ヘッド11を上昇させる(S24)。これで、計測場所13A側の計測動作は完了となる。
【0075】
計測ヘッド11による計測が完了すると、搬送部130Aは搬送を再開し、移載ヘッド21Aがセッタートレイ2上の前半部分に含まれる非生存卵Dを真空吸引できる位置まで搬送して停止する。この時、孵卵器から取り出された次のセッタートレイ2が搬送部130A上のドグ31とドグ31との間の搬入位置に載せられていると、次のセッタートレイ2は計測場所13Aまで搬送されて停止する。
【0076】
セッタートレイ2が停止すると、移載伸縮部24は移載ヘッド21Aを下降させて吸盤22が孵化途中卵Eの上端部に接触する位置で停止する。移載ヘッド21Aは、計測ヘッド11の計測結果に基づいて、判定部5が非生存卵Dであると判定した孵化途中卵を選択的に真空吸引する。真空吸引が行われると、移載伸縮部24は移載ヘッド21Aを上昇させる。
【0077】
移載ヘッド21Aが上昇すると、移載スライド部23Aが移載ヘッド21Aを非生存卵排除部125上へ移動させ、非生存卵排除部125上への移動が完了すると、真空吸引が解除されて非生存卵Dは非生存卵排除部125に移載される。非生存卵排除部125上の非生存卵Dは、傾斜を転がり孵化途中卵検査装置100の外部に用意された非生存卵用の回収容器(図示せず)に回収される。
【0078】
移載ヘッド21Aは非生存卵Dを非生存卵排除部125へ移載すると、再び移載スライド部23Aによってセッタートレイ2上へ移動を開始し、移載ヘッド21Aがセッタートレイ2上の後半部分に含まれる非生存卵Dを真空吸引できる位置まで移動すると停止する。その後、前半部分の非生存卵Dの移載と同様の動作が繰り返される。
【0079】
移載ヘッド21Aによってセッタートレイ2上の非生存卵Dが全て取り除かれると、搬送部130Aはセッタートレイ2を搬出方向4へ搬送し、停止する。この時、計測が完了した次のセッタートレイ2は搬送部130Aによって搬送されて移載ヘッド21Aの直下で停止しており、さらに次のセッタートレイ2は搬送部130Aによって搬送されて計測場所13Aで停止している。その後は、孵卵器にあるすべての孵化途中卵Eの検査が完了するまで、一連の動作が繰り返される。
【0080】
続いて、計測部110の計測場所13B側の計測動作について説明を行う。計測場所13Aにおいて、計測ヘッド11によるバイタルサイン計測が完了した時にセッタートレイ2が計測場所13Bで停止していると、計測スライド部17が計測ヘッド11を計測場所13B上へスライドさせる(S25)。計測スライド部17が計測ヘッド11をスライドさせると、計測伸縮部16は、計測ヘッド11に取り付けられているキャップ14が、計測場所13Bで停止している孵化途中卵Eの上端部に接触する位置まで計測ヘッド11を下降させる(S26)。
【0081】
計測ヘッド11を下降させた時点で、セッタートレイ2が計測場所13Bで停止してからすでに待機時間の2秒が経過していれば(S27)、バイタルサイン計測が行われる(S28)。これにより、孵化途中卵Eの内部に生じる揺れが減衰した後のバイタルサインによって各孵化途中卵の良否を判定することができる。なお、この待機時間は2秒に限られず、もっと長い時間待機するようにしてもよいし、セッタートレイ2の搬送速度が遅ければ、待機時間を短くしてもよい。また、待機時間は常に一定である必要はなく、待機時間をn秒に設定し、nの値を搬送速度等に応じて適宜変更してもよい。
【0082】
さらに、待機時間に加え、第1の実施の形態のように揺れ計測を行い、孵化途中卵Eの内部の揺れの程度によってバイタルサイン計測の開始タイミングを変更するようにしてもよい(図6のフローチャート参照)。
【0083】
計測ヘッド11の受光素子によって受光された光は電気信号に変換されて判定部5へ送られる。判定部5は、計測部110から送られてきた電気信号を基にセッタートレイ2上の孵化途中卵Eそれぞれの良否判定を行い、判定結果を制御部6へ送る。その後、計測伸縮部16は計測ヘッド11を上昇させる(S29)。これで、計測場所13B側の計測動作は完了となる。
【0084】
計測ヘッド11による計測が完了すると、搬送部130Bは搬送を再開し、移載ヘッド21Bがセッタートレイ2上の前半部分に含まれる非生存卵Dを真空吸引できる位置まで搬送して停止する。この時、孵卵器から取り出された次のセッタートレイ2が搬送部130B上のドグ31とドグ31との間の搬入位置に載せられていると、次のセッタートレイ2は計測場所13Bまで搬送されて停止する。
【0085】
セッタートレイ2が停止すると、移載伸縮部24は移載ヘッド21Bを下降させて吸盤22が孵化途中卵Eの上端部に接触する位置で停止する。移載ヘッド21Bは、計測ヘッド11の計測結果に基づいて、判定部5が非生存卵Dであると判定した孵化途中卵を選択的に真空吸引する。真空吸引が行われると、移載伸縮部24は移載ヘッド21Bを上昇させる。
【0086】
移載ヘッド21Bが上昇すると、移載スライド部23Bが移載ヘッド21Bを非生存卵排除部125上へ移動させ、非生存卵排除部125上への移動が完了すると、真空吸引が解除されて非生存卵Dは非生存卵排除部125に移載される。非生存卵排除部125上の非生存卵Dは、傾斜を転がり孵化途中卵検査装置100の外部に用意された非生存卵用の回収容器(図示せず)に回収される。
【0087】
移載ヘッド21Bは非生存卵Dを非生存卵排除部125へ移載すると、再び移載スライド部23Bによってセッタートレイ2上へ移動を開始し、移載ヘッド21Bがセッタートレイ2上の後半部分に含まれる非生存卵Dを真空吸引できる位置まで移動すると停止する。その後、前半部分の非生存卵Dの移載と同様の動作が繰り返される。
【0088】
移載ヘッド21Bによってセッタートレイ2上の非生存卵Dが全て取り除かれると、搬送部130Bはセッタートレイ2を搬出方向4へ搬送し、停止する。この時、計測が完了した次のセッタートレイ2は搬送部130Bによって搬送されて移載ヘッド21Bの直下で停止しており、さらに次のセッタートレイ2は搬送部130Bによって搬送されて計測場所13Bで停止している。その後は、孵卵器にあるすべての孵化途中卵Eの検査が完了するまで、一連の動作が繰り返される。
【0089】
さらに、本実施の形態の別の例として、搬送部および移載部をなくして、計測部のみとすることもできる。この場合は、孵化途中卵の検査を行う作業者が、セッタートレイを計測部の計測場所Aおよび計測場所Bへ交互に投入し、投入から一定時間経過後にバイタルサイン計測を開始し、計測結果に基づいて判定部が判定を行い、判定部の判定結果に基づいて計測部内に設けたインクジェット装置によって非生存卵に印を付けるようにしてもよい。作業者は、インクジェット装置によって印が付けられた非生存卵を取り除くことで、孵化途中卵の検査が完了する。
【0090】
また、本実施の形態では、搬送部130Aおよび搬送部130Bのそれぞれの搬入位置にセッタートレイ2を載せるようにしているが、一つの搬入位置にセッタートレイ2を載せれば、自動で搬送部130Aおよび搬送部130Bの交互にセッタートレイ2が振り分けられるようにしてもよい。さらに、計測部110を通過した後は、搬送部130Aおよび搬送部130Bから自動で一つの搬出位置に集約されるようにしてもよい。
【0091】
本実施の形態に係る孵化途中卵検査装置によれば、計測場所が2箇所に分かれているため、一方の計測場所で発育中止卵の内部の揺れが減衰するまで待機している時に、他方の計測場所でセッタートレイを停止または移動させることができる。
【0092】
さらに、本実施の形態では、計測ヘッドが一つであるため、処理速度は第1の実施の形態の1.5倍程度であるが、計測ヘッドを二つ設けて計測場所13Aおよび計測場所13Bでそれぞれ計測を行えば、第1の実施の形態の2倍程度の処理速度を達成することが可能である。
【0093】
上記説明では、対象物として孵化途中卵を説明したが、孵化途中卵は、鶏、アヒル、うずら等の種々の孵化途中卵を含む。
【0094】
今回開示された実施の形態は例示であってこれに制限されるものではない。本発明は上記で説明した範囲ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、バイタルサインを利用した孵化途中卵検査装置において、誤判定の防止に有効に利用される。
【符号の説明】
【0096】
1,100 孵化途中卵検査装置
2 セッタートレイ
3 搬入方向
4 搬出方向
5 判定部
6 制御部
10,110 計測部
11 計測ヘッド
12 発光部
13 計測場所
14 キャップ
15 固定部
16 計測伸縮部
17 計測スライド部
20,120 移載部
21 移載ヘッド
22 吸盤
23 移載スライド部
24 移載伸縮部
25,125 非生存卵排除部
30,130 搬送部
31 ドグ
32 搬送面
D 非生存卵
E 孵化途中卵
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9