特開2015-26812(P2015-26812A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.の特許一覧

<>
  • 特開2015026812-チップ電子部品及びその製造方法 図000006
  • 特開2015026812-チップ電子部品及びその製造方法 図000007
  • 特開2015026812-チップ電子部品及びその製造方法 図000008
  • 特開2015026812-チップ電子部品及びその製造方法 図000009
  • 特開2015026812-チップ電子部品及びその製造方法 図000010
  • 特開2015026812-チップ電子部品及びその製造方法 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-26812(P2015-26812A)
(43)【公開日】2015年2月5日
(54)【発明の名称】チップ電子部品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20150109BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20150109BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20150109BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20150109BHJP
   H01F 27/24 20060101ALI20150109BHJP
   H01F 27/255 20060101ALI20150109BHJP
   H01F 1/153 20060101ALI20150109BHJP
   H01F 1/20 20060101ALI20150109BHJP
【FI】
   H01F17/04 F
   H01F17/00 B
   H01F41/02 D
   H01F41/02 C
   H01F41/04 C
   H01F27/24 C
   H01F27/24 D
   H01F1/14 C
   H01F1/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】27
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-77766(P2014-77766)
(22)【出願日】2014年4月4日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0089619
(32)【優先日】2013年7月29日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2013-0122004
(32)【優先日】2013年10月14日
(33)【優先権主張国】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】リュ、ハン ウール
(72)【発明者】
【氏名】ファン、グワン ファン
(72)【発明者】
【氏名】リー、クゥイ ジョン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ファン ソー
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ハン キュ
【テーマコード(参考)】
5E041
5E062
5E070
【Fターム(参考)】
5E041AA11
5E041AA20
5E041BD03
5E041NN06
5E062AA02
5E062DD01
5E070AA01
5E070AB01
5E070BB02
5E070BB03
5E070CB06
5E070CB12
5E070CB13
5E070CB17
5E070EA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】薄膜型に製造されることにより薄い厚さが維持されて小型化が可能となり且つ高周波及び高電流でも磁性損失による効率低下を防止することができ、充填率を向上させることにより高透磁率、高効率及び高Isat値を示すことができるチップ電子部品を提供する。
【解決手段】薄膜型インダクター10は、鉄(Fe)を含む非晶質金属である、粗粉の第1の磁性粒子52と微粉の第2の磁性粒子53とを混合して磁性体本体50を形成することにより、充填率が向上する効果をもたらし、これにより、透磁率が顕著に向上してインダクタンス及びIsat値が向上する効果をもたらす。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板を含む磁性体本体と、
前記絶縁基板の少なくとも一面に形成される内部導体パターン部と、
前記磁性体本体の外面に形成され、前記内部導体パターン部と接続する外部電極と、
を含み、
前記磁性体本体は第1の磁性粒子及び第2の磁性粒子を含み、
前記第1の磁性粒子及び前記第2の磁性粒子は鉄(Fe)を含む非晶質金属であり、
前記第1の磁性粒子は長軸の長さが15μm以上の粗粉であり、
前記第2の磁性粒子は長軸の長さが5μm以下の微粉である、チップ電子部品。
【請求項2】
前記第1の磁性粒子及び前記第2の磁性粒子は、鉄(Fe)以外に少なくとも三つ以上の金属をさらに含む非晶質金属である、請求項1に記載のチップ電子部品。
【請求項3】
前記第1の磁性粒子及び前記第2の磁性粒子は、鉄(Fe)と、珪素(Si)、ホウ素(B)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)及びアルミニウム(Al)からなる群から選択された少なくとも三つ以上の金属と、を含む非晶質金属である、請求項1または2に記載のチップ電子部品。
【請求項4】
前記第1の磁性粒子及び前記第2の磁性粒子は、Fe‐Si‐B‐Cr系非晶質金属である、請求項1から3の何れか1項に記載のチップ電子部品。
【請求項5】
前記磁性体本体の一断面において、前記第1の磁性粒子及び前記第2の磁性粒子の占める断面積比は10:1〜18:1である、請求項1から4の何れか1項に記載のチップ電子部品。
【請求項6】
前記第1の磁性粒子の粒度分布D50は、前記第2の磁性粒子の粒度分布D50に比べて4〜13.5倍大きい、請求項1から5の何れか1項に記載のチップ電子部品。
【請求項7】
前記第1の磁性粒子は、粒度分布D50が18〜22μmである、請求項1から6の何れか1項に記載のチップ電子部品。
【請求項8】
前記第1の磁性粒子の粒度分布D50は、前記第2の磁性粒子の粒度分布D50に比べて15〜18μm大きい、請求項1から7の何れか1項に記載のチップ電子部品。
【請求項9】
前記第2の磁性粒子は、粒度分布D50が2〜4μmである、請求項1から8の何れか1項に記載のチップ電子部品。
【請求項10】
前記第1の磁性粒子及び前記第2の磁性粒子は、6:4〜8:2の重量比で混合される、請求項1から9の何れか1項に記載のチップ電子部品。
【請求項11】
前記磁性体本体の充填率(density)は80%以上である、請求項1から10の何れか1項に記載のチップ電子部品。
【請求項12】
絶縁基板の少なくとも一面に内部導体パターンを形成する段階と、
前記内部導体パターンが形成された基板の上面及び下面に磁性体層を積層し圧着して磁性体本体を形成する段階と、
前記磁性体本体の外面に前記内部導体パターンと接続するように外部電極を形成する段階と、
を含み、
前記磁性体本体は第1の磁性粒子及び第2の磁性粒子を混合して形成され、
前記第1の磁性粒子及び前記第2の磁性粒子は鉄(Fe)を含む非晶質金属であり、
前記第1の磁性粒子は長軸の長さが15μm以上の粗粉であり、
前記第2の磁性粒子は長軸の長さが5μm以下の微粉である、チップ電子部品の製造方法。
【請求項13】
前記第1の磁性粒子及び前記第2の磁性粒子は、鉄(Fe)と、珪素(Si)、ホウ素(B)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)及びアルミニウム(Al)からなる群から選択された少なくとも三つ以上の金属と、を含む非晶質金属である、請求項12に記載のチップ電子部品の製造方法。
【請求項14】
前記第1の磁性粒子及び前記第2の磁性粒子は、Fe‐Si‐B‐Cr系非晶質金属である、請求項12または13に記載のチップ電子部品の製造方法。
【請求項15】
前記第1の磁性粒子及び前記第2の磁性粒子を6:4〜8:2の混合重量比で混合する、請求項12から14の何れか1項に記載のチップ電子部品の製造方法。
【請求項16】
前記第1の磁性粒子の粒度分布D50は、前記第2の磁性粒子の粒度分布D50に比べて4〜13.5倍大きい、請求項12から15の何れか1項に記載のチップ電子部品の製造方法。
【請求項17】
前記第1の磁性粒子は、粒度分布D50が18〜22μmである、請求項12から16の何れか1項に記載のチップ電子部品の製造方法。
【請求項18】
前記第1の磁性粒子の粒度分布D50は、前記第2の磁性粒子の粒度分布D50に比べて15〜18μm大きい、請求項12から17の何れか1項に記載のチップ電子部品の製造方法。
【請求項19】
前記第2の磁性粒子は、粒度分布D50が2〜4μmである、請求項12から18の何れか1項に記載のチップ電子部品の製造方法。
【請求項20】
第1の主面及び前記第1の主面と対向する第2の主面を有する絶縁基板を含む磁性体本体と、
前記絶縁基板の前記第1の主面上に形成された第1の内部導体パターン部と、
前記絶縁基板の前記第2の主面上に形成された第2の内部導体パターン部と、
前記磁性体本体の第1の表面上に形成され、前記第1の内部導体パターン部と接続する第1の外部電極と、
前記第1の外部電極と対向し、前記磁性体本体の第2の表面上に形成された第2の外部電極と、
を含み、
前記第1の内部導体パターン部と前記第2の内部導体パターン部は前記絶縁基板を貫通するビア電極によって電気的に連結され、
前記磁性体本体は第1の磁性粒子及び第2の磁性粒子を含み、
前記第1の磁性粒子及び前記第2の磁性粒子は鉄(Fe)を含む非晶質金属であり、
前記第1の磁性粒子の粒度分布D50は前記第2の磁性粒子の粒度分布D50に比べて4〜13.5倍大きい、チップ電子部品。
【請求項21】
前記第1の磁性粒子は長軸の長さが15μm以上であり、前記第2の磁性粒子は長軸の長さが5μm以下である、請求項20に記載のチップ電子部品。
【請求項22】
前記第1及び第2の内部導体パターン部は第1及び第2の磁性粒子で充填されたコア部をさらに含む、請求項20または21に記載のチップ電子部品。
【請求項23】
前記第1の磁性粒子は粒度分布D50が18〜22μmである、請求項20から22の何れか1項に記載のチップ電子部品。
【請求項24】
前記第1の磁性粒子の粒度分布D50は前記第2の磁性粒子の粒度分布D50に比べて15〜18μm大きい、請求項20から23の何れか1項に記載のチップ電子部品。
【請求項25】
前記第2の磁性粒子は粒度分布D50が2〜4μmである、請求項20から24の何れか1項に記載のチップ電子部品。
【請求項26】
前記第1の磁性粒子及び前記第2の磁性粒子は6:4〜8:2の混合重量比で混合される、請求項20から25の何れか1項に記載のチップ電子部品。
【請求項27】
前記磁性体本体は気孔度が20%以下である、請求項20から26の何れか1項に記載のチップ電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ電子部品に関し、より詳細には、ITデバイス等に備えられてノイズ(Noise)を除去することができるチップ電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
チップ電子部品の一つであるインダクター(inductor)は、抵抗、キャパシタと共に電子回路をなし、ノイズ(Noise)を除去する代表的な受動素子であり、電磁気的特性を用いてキャパシタと組み合わせて特定周波数帯域の信号を増幅させる共振回路、フィルタ(Filter)回路等の構成に用いられる。
【0003】
一方、携帯電話、ノートパソコン等のデジタル機器及びマルチメディア製品等の各種電気電子情報通信機器の小型軽量化及び薄型化に伴い、インダクターも小型で高密度の自動表面実装が可能なチップに急速に転換されており、これにより、メッキで取り付けられたコイル導線の上に磁性粉末を樹脂と混合させて形成させた薄膜型インダクターが開発されている。
【0004】
小型軽量化及び薄型化に伴い、高いインダクタンス(Inductance、L)又は微細容量、高い品質係数(Quality Factor、Q)、高い自己共振周波数(Self Resonant Frequency、SRF、低い直流抵抗(Rdc)及び高い耐電流特性(Rated Current)の製品が求められている。
【0005】
決められた単位体積で高いインダクタンス(Inductance)を得るためには、高い透磁率の材料が求められ、高い透磁率を得るためには、通常、粒度の大きい磁性体を用いる。
【0006】
しかしながら、大きな粒子は、周波数及び使用電流が大きくなる場合には、磁性損失(Core Loss)による効率が低下するという問題がある。したがって、高周波における効率低下を防止するためには、粒子のサイズを減らすことが必要である。
【0007】
但し、小さな粒子を用いる場合には、大きな粒子を用いる場合に比べて透磁率が低いことからインダクタンス(Inductance)が減少するという問題がある。したがって、充填率を高めて透磁率を高める方案が必須である。図1は、従来の薄膜型インダクターの断面図であり、均一な粒子の磁性体を用いることから充填率が低いため十分な透磁率が得られないという問題を有する。
【0008】
下記特許文献1は、粒度分布が5〜30μmの金属磁性粉末の磁性層を用いたコイル装置を開示している。しかしながら、特許文献1の発明は、均一な粒度の磁性体粒子で構成されることから十分な充填率を確保することができないため透磁率の向上に限界があるという問題を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】日本特開2008−166455号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、薄膜型に製造されることにより薄い厚さが維持されて小型化が可能となり、充填率を向上させることにより高透磁率、高効率及び高Isat値を有するチップ電子部品及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明の一実施形態によれば、絶縁基板を含む磁性体本体と、上記絶縁基板の少なくとも一面に形成される内部導体パターン部と、上記磁性体本体の外面に形成され、上記内部導体パターン部と接続する外部電極と、を含み、上記磁性体本体は第1の磁性粒子及び第2の磁性粒子を含み、上記第1の磁性粒子及び第2の磁性粒子は鉄(Fe)を含む非晶質金属であり、上記第1の磁性粒子は長軸の長さが15μm以上の粗粉であり、上記第2の磁性粒子は長軸の長さが5μm以下の微粉であるチップ電子部品が提供される。
【0012】
上記第1の磁性粒子及び第2の磁性粒子は、鉄(Fe)以外に少なくとも三つ以上の金属をさらに含む非晶質金属であれば良い。
【0013】
上記第1の磁性粒子及び第2の磁性粒子は、鉄(Fe)と、珪素(Si)、ホウ素(B)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)及びアルミニウム(Al)からなる群から選択された少なくとも三つ以上の金属と、を含む非晶質金属であれば良い。
【0014】
上記第1の磁性粒子及び第2の磁性粒子は、Fe‐Si‐B‐Cr系非晶質金属であれば良い。
【0015】
上記磁性体本体の一断面において、上記第1の磁性粒子及び第2の磁性粒子の占める断面積比は10:1〜18:1であれば良い。
【0016】
上記第1の磁性粒子の粒度分布D50は、第2の磁性粒子の粒度分布D50に比べて4〜13.5倍大きければ良い。
【0017】
上記第1の磁性粒子は、粒度分布D50が18〜22μmであれば良い。
【0018】
上記第1の磁性粒子の粒度分布D50は、第2の磁性粒子の粒度分布D50に比べて15〜18μm大きければ良い。
【0019】
上記第2の磁性粒子は、粒度分布D50が2〜4μmであれば良い。
【0020】
上記第1の磁性粒子及び第2の磁性粒子は、6:4〜8:2の重量比で混合されることができる。
【0021】
上記磁性体本体の充填率(density)は80%以上であれば良い。
【0022】
本発明の他の実施形態によれば、絶縁基板の少なくとも一面に内部導体パターンを形成する段階と、上記内部導体パターンが形成された基板の上面及び下面に磁性体層を積層し圧着して磁性体本体を形成する段階と、上記磁性体本体の外面に上記内部導体パターンと接続するように外部電極を形成する段階と、を含み、上記磁性体本体は第1の磁性粒子及び第2の磁性粒子を混合して形成され、上記第1の磁性粒子及び第2の磁性粒子は鉄(Fe)を含む非晶質金属であり、上記第1の磁性粒子は長軸の長さが15μm以上の粗粉であり、上記第2の磁性粒子は長軸の長さが5μm以下の微粉であるチップ電子部品の製造方法が提供される。
【0023】
上記第1の磁性粒子及び第2の磁性粒子は、鉄(Fe)と、珪素(Si)、ホウ素(B)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)及びアルミニウム(Al)からなる群から選択された少なくとも三つ以上の金属と、を含む非晶質金属であれば良い。
【0024】
上記第1の磁性粒子及び第2の磁性粒子は、Fe‐Si‐B‐Cr系非晶質金属であれば良い。
【0025】
上記第1の磁性粒子及び第2の磁性粒子を6:4〜8:2の混合重量比で混合することができる。
【0026】
上記第1の磁性粒子の粒度分布D50は、第2の磁性粒子の粒度分布D50に比べて4〜13.5倍大きければ良い。
【0027】
上記第1の磁性粒子は、粒度分布D50が18〜22μmであれば良い。
【0028】
上記第1の磁性粒子の粒度分布D50は、第2の磁性粒子の粒度分布D50に比べて15〜18μm大きければ良い。
【0029】
上記第2の磁性粒子は、粒度分布D50が2〜4μmであれば良い。
【発明の効果】
【0030】
本発明の一実施形態によるチップ電子部品は、薄膜型に製造されることにより薄い厚さが維持されて小型化が可能となり且つ高周波及び高電流でも磁性損失による効率低下を防止することができ、充填率を向上させることにより高透磁率、高効率及び高Isat値を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】従来のチップ電子部品の断面図である。
図2】本発明の一実施形態によるチップ電子部品の斜視図である。
図3図2のI‐I'線に沿う断面図である。
図4】(a)〜(d)は図2のチップ電子部品の製造方法を概略的に示す図である。
図5】本発明の一実施形態によるチップ電子部品のWT方向の断面を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)で2,000倍拡大して観察した写真である。
図6】本発明の一実施形態によるチップ電子部品のWT方向の断面を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)で2,000倍拡大して観察した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために誇張されることがある。
【0033】
[チップ電子部品]
図2は本発明の一実施形態によるチップ電子部品の概略斜視図であり、図3図2のI‐I'線に沿う断面図である。
【0034】
図2及び図3を参照すると、チップ電子部品の一例として電源供給回路の電源ラインに用いられる薄膜型インダクター10が示されている。上記チップ電子部品は、チップインダクター以外にもチップビーズ(chip beads)、チップフィルタ(chip filter)等として適切に応用されることができる。
【0035】
上記薄膜型インダクター10は、磁性体本体50、絶縁基板23、内部導体パターン部42、44及び外部電極80を含む。
【0036】
上記磁性体本体50は六面体形であれば良く、図2のL、W及びTはそれぞれ長さ方向、幅方向、厚さ方向を示す。
【0037】
上記磁性体本体50は、厚さ方向の両端面、長さ方向の両端面及び幅方向の両端面を含むことができる。上記磁性体本体50は、長さ方向の長さが幅方向の長さより大きい直方体の形状を有することができる。
【0038】
上記磁性体本体50の内部に形成される上記絶縁基板23は、電解メッキ(electro plating)で内部導体パターン部42、44が形成できる材質であれば特に制限されず、例えば、エポキシ樹脂等を含み、薄い薄膜で形成されることができる。
【0039】
上記絶縁基板23の一面にコイル状のパターンを有する内部導体パターン部42が形成され、上記絶縁基板23の反対面にもコイル状のパターンを有する内部導体パターン部44が形成されることができる。上記絶縁基板23の一面に形成される内部導体パターン部42の一端部は磁性体本体50の長さ方向の一端面に露出し、絶縁基板23の反対面に形成される内部導体パターン部44の一端部は磁性体本体50の長さ方向の他端面に露出することができる。
【0040】
また、上記絶縁基板23の一面と反対面に形成される内部導体パターン部42、44は、上記絶縁基板23に形成されるビア電極46を介して電気的に接続されることができる。
【0041】
上記絶縁基板23の中央部には絶縁基板を貫通するホールが形成され、上記ホールは磁性体本体を形成する金属系軟磁性材料等の磁性体で充填されてコア部71を形成することができる。磁性体で充填されるコア部71を形成することにより、インダクタンスを向上させることができる。
【0042】
上記磁性体本体50の長さ方向の両端面には、露出する上記内部導体パターン部42、44と接続するように外部電極80が形成されることができる。上記内部導体パターン部42、44、ビア電極46、外部電極80は、電気伝導性に優れた金属、例えば、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)又はこれらの合金等で形成されることができる。
【0043】
より具体的には、上記磁性体本体50は第1の磁性粒子52及び第2の磁性粒子53を含み、上記第1の磁性粒子52及び第2の磁性粒子は鉄(Fe)を含む非晶質金属であり、上記第1の磁性粒子は長軸の長さが15μm以上の粗粉であり、上記第2の磁性粒子は長軸の長さが5μm以下の微粉である。
【0044】
本発明の一実施形態による薄膜型インダクター10の断面図である図3を参照すると、磁性体本体50は、粗粉の第1の磁性粒子52と微粉の第2の磁性粒子53とが混合されて形成される。
【0045】
このように粒度分布の相違した第1の磁性粒子52及び第2の磁性粒子53を混合して磁性体本体50を形成することにより、充填率が向上する効果をもたらし、これにより、透磁率が顕著に向上してインダクタンス及びIsat値が向上する効果をもたらす。
【0046】
上記第1の磁性粒子52及び第2の磁性粒子53は、鉄(Fe)以外に少なくとも三つ以上の金属をさらに含む非晶質金属であれば良い。
【0047】
粗粉の第1の磁性粒子52のみならず微粉の第2の磁性粒子53も非晶質金属で形成されることにより、インダクタンス等の性能の向上に有利な効果をもたらし、粒子の形状も容易に球形となるため、充填率の向上にも優れた効果をもたらす。
【0048】
上記第1の磁性粒子52及び第2の磁性粒子53は、鉄(Fe)と、珪素(Si)、ホウ素(B)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)及びアルミニウム(Al)からなる群から選択された少なくとも三つ以上の金属と、を含む非晶質金属、例えば、Fe‐Si‐B‐Cr系非晶質金属であれば良い。
【0049】
上記第1の磁性粒子52及び第2の磁性粒子53は、同種の非晶質金属であっても良く、別種の非晶質金属であっても良い。
【0050】
上記第1の磁性粒子52の粒度分布D50は、第2の磁性粒子53の粒度分布D50に比べて4〜13.5倍大きければ良い。
【0051】
ここで、粒度分布D50を定義するにあたり、1,000倍に撮影したSEM(Scanning Electron Microscope)写真の1視野当たりの面積を12.5μmとしたときに50視野分に該当する磁性粒子の粒度を求めて粒度の小さい順に並べた後、各粒度の累計が視野全体の50%に達する順位の粒度をその視野における粒度分布D50と定義した。
【0052】
第1の磁性粒子52の粒度分布D50が第2の磁性粒子53の粒度分布D50に比べて4〜13.5倍大きいとき、充填率が顕著に向上し、透磁率が増加してインダクタンスが顕著に向上する効果がある(表3参照)。
【0053】
より具体的には、上記第1の磁性粒子52の粒度分布D50は、第2の磁性粒子53の粒度分布D50に比べて15〜18μm大きければ良い。第1の磁性粒子52と第2の磁性粒子53との粒度分布D50の差が15μm未満であるか18μmを超える場合は、充填率の向上の効果が弱くてインダクタンスの向上率が少なくなる可能性がある。
【0054】
上記第1の磁性粒子52は、粒度分布D50が18〜22μmであれば良い。第1の磁性粒子52の粒度分布D50が18〜22μmの場合は、高周波における磁性損失が少なく且つ高い透磁率を確保することができる。第1の磁性粒子52の粒度分布D50が18μm未満の場合は、十分な透磁率を確保することができず、22μmを超える場合は、高周波数及び高電流における効率が顕著に減少する問題が発生する可能性がある。
【0055】
また、上記第2の磁性粒子53は、粒度分布D50が2〜4μmであれば良い。第2の磁性粒子53の粒度分布D50が2〜4μmの場合は、第1の磁性粒子52と混合されて充填率が顕著に向上し、透磁率が顕著に向上することができる。第2の磁性粒子53の粒度分布D50が2μm未満であるか4μmを超える場合は、充填率の向上の効果が弱くて透磁率が減少する問題が発生する可能性がある。
【0056】
上記第1の磁性粒子及び第2の磁性粒子を6:4〜8:2の重量比で混合して磁性体本体50を形成することができる。
【0057】
この際、磁性体本体50の一断面において、上記粗粉の第1の磁性粒子52及び第2の磁性粒子53の占める断面積比が10:1〜18:1であれば良い。上記第1の磁性粒子52及び第2の磁性粒子53の断面積比が上記範囲内の場合、充填率が顕著に向上して高透磁率を示すことができる。
【0058】
本発明の一実施形態による上記磁性体本体50は、充填率(density)が80%以上を満たすことができる。
【0059】
粒度分布D50が3μmの磁性粒子を均一に形成した場合(比較例1)には充填率(density)が62.7%に過ぎないが、本発明の一実施形態により粒度分布D50が20μmの第1の磁性粒子と粒度分布D50が3μmの第2の磁性粒子を7:3の重量比で混合して形成した場合(実施例5)には充填率(density)が76.1%と、約14%以上向上した(表1参照)。
【0060】
これにより、本発明の一実施形態による薄膜型インダクター10は、高透磁率、高効率及び高Isat値を具現することができる(表2参照)。
【0061】
[チップ電子部品の製造方法]
図4は、図2のチップ電子部品の製造方法を概略的に示す図である。
【0062】
まず、図4(a)を参照すると、絶縁基板23の一面及び反対面に内部導体パターン部42、44を形成することができる。内部導体パターン部42、44の形成方法としては、プリント配線板の製造工程に用いられているメッキ法、エッチング法、印刷法、転写法等の工程を用いることができるが、内部導体パターン部42、44をより厚く形成するためにはメッキ法が好ましい。上記内部導体パターン部42、44は、電気伝導性に優れた金属、例えば、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)又はこれらの合金等で形成されることができる。
【0063】
上記絶縁基板23の一部にホールを形成し伝導性物質を充填してビア電極46を形成することができる。上記ビア電極46を介して絶縁基板23の一面と反対面に形成される内部導体パターン部42、44は電気的に接続されることができる。
【0064】
上記絶縁基板23の中央部には、絶縁基板を貫通するホール70が形成されることができる。ホール70は、ドリル、レーザー、サンドブラスト、パンチング加工等を行って形成されることができるが、これに制限されない。
【0065】
次に、図4(b)を参照すると、絶縁基板23の一面及び反対面に形成された内部導体パターン部42、44を絶縁層27で被覆することができる。
【0066】
次に、図4(c)を参照すると、上記内部導体パターン部42、44が形成された絶縁基板23の上面及び下面に磁性体層を積層して磁性体本体50を形成することができる。磁性体層を絶縁基板23の両面に積層し、ラミネート法や静水圧プレス法で圧着して磁性体本体50を形成することができる。この際、上記ホール70を磁性体で充填することによりコア部71を形成することができる。
【0067】
この際、上記磁性体本体50は第1の磁性粒子及び第2の磁性粒子を含み、第1の磁性粒子及び第2の磁性粒子は鉄(Fe)を含む非晶質金属であり、上記第1の磁性粒子は長軸の長さが15μm以上の粗粉であり、上記第2の磁性粒子は長軸の長さが5μm以下の微粉である。
【0068】
なお、本発明の一実施形態によるチップ電子部品の製造方法に同一に適用される上記第1の磁性粒子及び第2の磁性粒子に関する詳細な説明は以下省略する。
【0069】
最後に、図4(d)を参照すると、上記磁性体本体50の長さ方向の両端面に外部電極80を形成して薄膜型インダクター10を製造することができる。上記外部電極80は、上記内部導体パターン部42、44の端部と連結されるように形成され、ディッピング(dipping)法等を行って形成されることができる。上記外部電極は、電気伝導性に優れた金属、例えば、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)又はこれらの合金等で形成されることができる。
【0070】
下記表1及び表2は、Fe‐Si‐B‐Cr系非晶質金属である第1の磁性粒子と第2の磁性粒子との混合重量比による薄膜型インダクターの充填率、透磁率及びインダクタンス値の結果を示したものである。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
下記表3は、Fe‐Si‐B‐Cr系非晶質金属である第1の磁性粒子と第2の磁性粒子との粒子のサイズの比による充填率、透磁率及びインダクタンス値の結果を示したものである。
【0074】
【表3】
図5及び図6は、本発明の一実施形態によるチップ電子部品のWT方向の断面部を走査電子顕微鏡(SEM)で2,000倍拡大して撮影した写真である。図5及び図6を参照すると、粗粉の第1の磁性粒子と微粉の第2の磁性粒子とが混合されたことが分かる。このように粒度分布の相違する第1の磁性粒子と第2の磁性粒子とを混合することにより、充填率が向上する効果が得られ、これにより、透磁率が顕著に向上してインダクタンス及びIsat値が向上する。
【0075】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。
【符号の説明】
【0076】
10 薄膜型インダクター
46 ビア電極
50 磁性体本体
27 絶縁層
52 第1の磁性粒子
70 ホール
53 第2の磁性粒子
71 コア部
23 絶縁基板
80 外部電極
42、44 内部導体パターン部
図1
図2
図3
図4
図5
図6