【実施例】
【0029】
以下に本発明の実施例を示し本発明をより詳細に説明するが、本発明の精神は以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、%及び部は、いずれも重量基準を意味する。また、結果については以下の方法で評価した。
【0030】
A 水中油型乳化物の評価方法
(1)粘度: 粘度の測定は、品温5℃でB型粘度計(VISCOMETER TV−10、TOKI SANGYO CO,LTD製)にて、3号ローター、60rpmで測定を開始し、30秒後の粘度を測定結果とした。
(2)風味の評価: 20人のパネラーに、風味評価の指標として、乳脂肪分60重量%のクロテッドクリーム(高梨乳業株式会社製)を用いて、品温5℃の水中油型乳化物2gを直食してもらい以下の基準で評価し、平均を算出した。
◎乳のコクを非常に強く感じる。
○乳のコクを強く感じる。
△乳のコクを感じるが不十分。
×乳味を感じるがコクが不十分。
【0031】
(3)モルネーソースを用いたテスト
モルネーソースの配合を表1に示した。
【表1】
モルネーソースは以下の方法で調製し評価した。
薄力粉7部、バター4部、牛乳20部、ブイヨン20部、パルメザンチーズ2部、塩1部、水26部をフードプロセッサー(MK−Z40、パナソニック株式会社製)にて2分間撹拌して品温20℃のモルネーソース原体を得た。これを容量3L、ステンレス製の鍋に入れ、ガスコンロを用いて弱火にて撹拌しながら加熱する。3分後、80℃に達温したところで水中油型乳化物を添加し、撹拌しながら弱火にて加熱する。90℃に達温した時点で加熱を止めモルネーソースを得た。水中油型乳化物を添加してから90℃に達温するまでの時間を測定し、これを作業時間の指標とした。
得られたモルネーソースの、油分離状態と色調を以下の基準で評価した。
得られたモルネーソースは品温20℃においてpH5〜5.5であった。また塩分濃度は1.5%であった。
・油分離状態
◎:油分離は全く見られない。
○:鍋の淵近辺で少量の油分離が起き始めている。
△:鍋の淵近辺で油分離が起こっている。
×:鍋の淵近辺で多量の油分離が起こっている。
××:鍋淵近辺だけでなく、中心部付近においても多量の油分離が起こっている。
・色調
◎白さが保たれており良好。
○若干黄色みがある。
△黄色みが強くなっている。
×黄色みが強すぎ、食欲をそがれる。
【0032】
(4)レトルト耐性のテスト
容量100mlのレトルトパック(株式会社生産日本社製 ラミジップスタンドタイプLZ−10)に水中油型乳化物を水で3倍希釈したものを加え、レトルト殺菌釜(HISAKA WORKS,LTD製 第一種圧力容器 TYPE RCS−40RTGN)にて121℃、30分の条件でレトルト殺菌を行い、1週間20℃にて静置した。凝集物の有無、分離状態、褐変度合について以下の基準で評価した。
・凝集物の有無
○凝集物は全く見られない。
△若干の凝集物が見られる。
×凝集物が多い
・分離状態
○分離は全く見られない。
△若干の分離が見られる。
×分離が激しい。
・褐変度合
○褐変が少なく白さを保っている。
△褐変し若干変色している。
×褐変し激しく変色している。
【0033】
(5)耐酸性のテスト
容量100mlのプラスチック製容器に、水中油型乳化物を水で3倍希釈したものを60g加え、クエン酸10%水溶液を6g添加し撹拌した後、20℃にて24時間静置した。分離度合について以下の基準で評価した。pHはすべて3.0であった。
・凝集物の有無
○凝集物は全く見られない。
△若干の凝集物が見られる。
×凝集物が多い
・分離状態
○分離は全く見られない。
△容器の底付近で若干の分離が見られる。
×完全に二層に分離している。
【0034】
(6)耐塩性のテスト
容量100mlのプラスチック製容器に、水中油型乳化物を水で3倍希釈したものを60g加え、食塩を12g添加し撹拌した後、20℃にて24時間静置した。分離度合について以下の基準で評価した。
・凝集物の有無
○凝集物は全く見られない。
△若干の凝集物が見られる。
×凝集物が多い
・分離状態
○分離は全く見られない。
△容器の底付近で若干の分離が見られる。
×完全に二層に分離している。
【0035】
(油相の融点)
融点の測定法は、日本油化学協会基準油脂分析試験法(1996年版)2.2.4.2融点(上昇融点)に規定の方法に準じて測定した。
【0036】
本願発明の実施例及び比較例を次に示すが、これらに使用した主な原材料は以下の通りである。
菜種硬化油:融点61℃(構成脂肪酸中のベヘン酸含量45重量%)
パーム油 :融点31℃
卵黄リゾレシチン:卵黄レシチンLPL−20S、キユーピー(株)製
デカグリセリンモノステアレート:SYグリスターMSW−7S、HLB値=13.4、阪本薬品工業(株)製
テトラグリセリンモノステアレート:SYグリスターMS−3S、HLB値=8.4、阪本薬品工業(株)製
テトラグリセリンペンタステアレート:SYグリスターPS−3S、HLB値=2.6、阪本薬品工業(株)製
ジグリセリンモノステアレート:ポエムDS100A、HLB値=8.0、理研ビタミン(株)製
クエン酸三ナトリウム:クエン酸三ナトリウム(結晶)、磐田化学工業(株)製
発酵セルロース複合体:サンアーティストPG、三栄源エフ・エフ・アイ(株)製
【0037】
実施例1
60L容の撹拌機付き円筒堅型三重式タンクに、70℃の水39.3部を投入し、撹拌しながら、脱脂粉乳3部、卵黄リゾレシチン1部、クエン酸三ナトリウム0.5部、発酵セルロース複合体0.2部、デカグリセリンモノステアレート1部を添加し、分散・溶解し水相とする。これとは別に菜種硬化油6部、パーム油24部、バターオイル25部を80℃に加温し、油相とする。水相と油相を混合し75℃で15分間、撹拌し予備乳化した後、148℃において6秒の直接加熱方式による滅菌処理を行った。その後、15MPa の均質化圧力で均質化して、直ちに10℃に冷却した。冷却後約24時間エージングして、実施例1に基づく高油分水中油型乳化物を得た。得られた高油分水中油型乳化物を評価法に従って評価し結果を表2に纏めた。
【0038】
実施例2
実施例1のデカグリセリンモノステアレート1部をテトラグリセリンモノステアレート1部に代えた以外は実施例1と同様な処理を行い、実施例2に基づく高油分水中油型乳化物を得た。得られた高油分水中油型乳化物を評価法に従って評価し結果を表2に纏めた。
実施例3
実施例1の水39.3部を44.3部、パーム油24部を19部に代えた以外は実施例1と同様な処理を行い、実施例3に基づく高油分水中油型乳化物を得た。得られた高油分水中油型乳化物を評価法に従って評価し結果を表2に纏めた。
参考例1
参考例として、市販品の乳脂肪分47%の生クリーム(よつば乳業株式会社製)を評価法に従って評価し結果を表2に纏めた。
【0039】
実施例1〜実施例3及び参考例1の内容と評価結果を表2に纏めた。
【表2】
【0040】
実施例4
実施例1の菜種硬化油6部を除き、パーム油24部を30部に代えた以外は実施例1と同様な処理を行い、実施例4に基づく高油分水中油型乳化物を得た。得られた高油分水中油型乳化物を評価法に従って評価し結果を表3に纏めた。
実施例5
実施例1の菜種硬化油6部を除き、パーム油24部を30部に、デカグリセリンモノステアレート1部をテトラグリセリンモノステアレート1部に代えた以外は実施例1と同様な処理を行い、実施例5に基づく高油分水中油型乳化物を得た。得られた高油分水中油型乳化物を評価法に従って評価し結果を表3に纏めた。
実施例6
実施例1の菜種硬化油6部を除き、パーム油24部を25部に、水39.3部を44.3部に代えた以外は実施例1と同様な処理を行い、実施例6に基づく高油分水中油型乳化物を得た。得られた高油分水中油型乳化物を評価法に従って評価し結果を表3に纏めた。
実施例7
実施例1の菜種硬化油6部を除き、パーム油24部を30部に、卵黄リゾレシチン1部を2部に、水39.3部を38.3部に代えた以外は実施例1と同様な処理を行い、実施例7に基づく高油分水中油型乳化物を得た。得られた高油分水中油型乳化物を評価法に従って評価し結果を表3に纏めた。
【0041】
実施例4〜実施例7の内容と評価結果を表3に纏めた。
【表3】
【0042】
比較例1
実施例1のパーム油24部を14部に、水39.3部を49.3部に代えた以外は実施例1と同様な処理を行い、比較例1に基づく高油分水中油型乳化物を得た。得られた高油分水中油型乳化物を評価法に従って評価し結果を表4に纏めた。
比較例2
60L容の撹拌機付き円筒堅型三重式タンクに、70℃の水19.3部を投入し、撹拌しながら、脱脂粉乳3部、卵黄リゾレシチン1部、クエン酸三ナトリウム0.5部、発酵セルロース複合体0.2部、デカグリセリンモノステアレート1部を添加し、分散・溶解し水相とする。これとは別に菜種硬化油6部、パーム油44部、バターオイル25部を80℃に加温し、油相とする。水相と油相を混合し75℃で15分間、撹拌混合したところ、調合液が転相し油中水型乳化物となり、粘度は測定不能であった。結果を表4に纏めた。
比較例3
実施例1の発酵セルロース複合体を除き、水39.3部を39.5部に代えた以外は実施例1と同様な処理を行い、比較例3に基づく高油分水中油型乳化物を得た。得られた高油分水中油型乳化物を評価法に従って評価し結果を表4に纏めた。
参考例2
参考例として、市販品の乳脂肪分60重量%のクロテッドクリーム(高梨乳業株式会社製)を評価法に従って評価し結果を表4に纏めた。
【0043】
比較例1〜比較例3及び参考例2の内容と評価結果を表4に纏めた。
【表4】
【0044】
実施例8
実施例1のパーム油24部を39部に、水39.3部を24.3部に代えた以外は実施例1と同様な処理を行い、実施例8に基づく高油分水中油型乳化物を得た。得られた高油分水中油型乳化物を評価法に従って評価し結果を表5に纏めた。
実施例9
実施例1のデカグリセリンモノステアレート1部をジグリセリンモノステアレート1部に代えた以外は実施例1と同様な処理を行い、実施例9に基づく高油分水中油型乳化物を得た。得られた高油分水中油型乳化物を評価法に従って評価し結果を表5に纏めた。
実施例10
実施例1のデカグリセリンモノステアレート1部をテトラグリセリンペンタステアレート1部に代えた以外は実施例1と同様な処理を行い、実施例10に基づく高油分水中油型乳化物を得た。得られた高油分水中油型乳化物を評価法に従って評価し結果を表5に纏めた。
実施例11
実施例1のバターオイル25部をパームに代えて、パーム油を49部とし、それ以外は実施例1と同様な処理を行い、実施例11に基づく高油分水中油型乳化物を得た。得られた高油分水中油型乳化物を評価法に従って評価し結果を表5に纏めた。
【0045】
実施例8〜実施例11の内容と評価結果を表5に纏めた。
【表5】
【0046】
実施例12
容量100mlのレトルトパック(株式会社生産日本社製 ラミジップスタンドタイプLZ−10)に実施例1で得た高油分水中油型乳化物を水で3倍希釈したものを加え、レトルト殺菌釜(HISAKA WORKS,LTD製 第一種圧力容器 TYPE RCS−40RTGN)にて121℃、30分の条件でレトルト殺菌を行い、1週間20℃にて静置した。凝集物の有無、分離状態、褐変度合について評価法に基づき評価し結果を表6に纏めた。
実施例13
実施例1で得た高油分水中油型乳化物を実施例8で得た高油分水中油型乳化物に代えた以外は実施例12と同様な処理を行い、凝集物の有無、分離状態、褐変度合について評価法に基づき評価し結果を表6に纏めた。
参考例3
実施例1で得た高油分水中油型乳化物を参考例1の生クリームに代えた以外は実施例12と同様な処理を行い、凝集物の有無、分離状態、褐変度合について評価法に基づき評価し結果を表6に纏めた。
参考例4
実施例1で得た高油分水中油型乳化物を参考例2のクロテッドクリームに代えた以外は実施例12と同様な処理を行い、凝集物の有無、分離状態、褐変度合について評価法に基づき評価し結果を表6に纏めた。
【0047】
実施例12、実施例13、参考例3及び参考例4の内容と評価結果を表6に纏めた。
【表6】
【0048】
実施例14
容量100mlのプラスチック製容器に、実施例1で得た高油分水中油型乳化物を水で3倍希釈したものを60g加え、クエン酸10%水溶液を6g添加し撹拌した後、20℃にて24時間静置した。凝集物の有無、分離度合について評価法に基づき評価し結果を表7に纏めた。
実施例15
実施例1で得た高油分水中油型乳化物を実施例8で得た高油分水中油型乳化物に代えた以外は実施例14と同様な処理を行い、凝集物の有無、分離状態について評価法に基づき評価し結果を表7に纏めた。
参考例5
実施例1で得た高油分水中油型乳化物を参考例1の生クリームに代えた以外は実施例14と同様な処理を行い、凝集物の有無、分離状態について評価法に基づき評価し結果を表7に纏めた。
参考例6
実施例1で得た高油分水中油型乳化物を参考例2のクロテッドクリームに代えた以外は実施例14と同様な処理を行い、凝集物の有無、分離状態について評価法に基づき評価し結果を表7に纏めた。
【0049】
実施例14、実施例15、参考例5及び参考例6の内容と評価結果を表7に纏めた。
【表7】
【0050】
実施例16
容量100mlのプラスチック製容器に、実施例1で得た高油分水中油型乳化物を水で3倍希釈したものを60g加え、食塩を12g添加し撹拌した後、20℃にて24時間静置した。凝集物の有無、分離度合について評価法に基づき評価し結果を表8に纏めた。
実施例17
実施例1で得た高油分水中油型乳化物を実施例8で得た高油分水中油型乳化物に代えた以外は実施例16と同様な処理を行い、凝集物の有無、分離状態について評価法に基づき評価し結果を表8に纏めた。
参考例7
実施例1で得た高油分水中油型乳化物を参考例1の生クリームに代えた以外は実施例16と同様な処理を行い、凝集物の有無、分離状態について評価法に基づき評価し結果を表8に纏めた。
参考例8
実施例1で得た高油分水中油型乳化物を参考例2のクロテッドクリームに代えた以外は実施例16と同様な処理を行い、凝集物の有無、分離状態について評価法に基づき評価し結果を表8に纏めた。
【0051】
実施例16、実施例17、参考例7及び参考例8の内容と評価結果を表8に纏めた。
【表8】