【課題】本発明は、紫外線吸収剤を多く含有し、日焼け防止効果に優れ、簡単に薄く均一に広範囲に噴射することができ、噴射面がべたつかず使用感に優れ、さらに紫外線吸収剤が析出しない安定なエアゾール式日焼け防止剤を提供することを目的とする。
【解決手段】トリアゾン誘導体を除く紫外線吸収剤、油分およびアルコールを含む非水原液ならびに液化ガスからなるエアゾール組成物が耐圧容器に充填されてなり、前記トリアジン誘導体を除く紫外線吸収剤の含有量が、非水原液中20〜50質量%であり、前記液化ガスの含有量が、エアゾール組成物中50〜80質量%であるエアゾール式日焼け防止剤。
前記トリアジン誘導体を除く紫外線吸収剤が、アミノ安息香酸誘導体、サリチル酸誘導体、ケイ皮酸誘導体、ジフェニルアクリレート誘導体およびベンゾフェノン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載のエアゾール式日焼け防止剤。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外線から皮膚を保護することを目的とする日焼け防止剤は広く使用されている。特に近年は、紫外線から皮膚を保護することに対する意識が高くなり、日焼け防止効果に優れた日焼け防止剤が求められている。日焼け防止剤は、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤等を含有することにより紫外線A波(UVA)および紫外線B波(UVB)の皮膚への到達を遮り、紫外線の害から皮膚を守る。
【0003】
日焼け防止剤のUVA防御指数はPA値(PA+〜PA++++)、UVB防御指数はSPF値(SPF2〜SPF50+)で表される。従来までのPA値の最高値はPA+++であったが、2013年よりPA++++に引き上げられ、表示できるようになったことからも、さらに高い日焼け防止効果が求められていることがわかる。
【0004】
一般的な日焼け防止剤として、ジェル状、クリーム状、乳液状のものや、エアゾール式のものが挙げられる。エアゾール式日焼け防止剤は、均一かつ容易に噴射、塗布できる点、皮膚に使用する場合は冷却感が得られる点、頭髪にも使用しやすい点で優れるが、日焼け防止効果および使用感の両方に優れたエアゾール式日焼け防止剤は得られていない。
【0005】
日焼け防止効果を高めるために紫外線吸収剤を多量に含有するエアゾール式日焼け防止剤とすると、紫外線吸収剤は液化ガスへの溶解性が低いため紫外線吸収剤が析出し、エアゾールバルブの導入孔や噴射部材の噴射孔で詰まって噴射状態が悪くなる、さらには噴射できなくなるなどの問題がある。
【0006】
特許文献1には、特定の変性高分子シリコーンと、揮発性シリコーンおよび/または揮発性炭化水素油と、紫外線吸収剤および/または紫外線散乱剤を含有する日焼け止め化粧料が開示されており、特に実施例7には非水原液処方のエアゾール組成物が開示されている。しかしながら、非水原液中に油分と紫外線吸収剤しか含有していないため、変性高分子シリコーンにより噴射面でべたつきやすく、乾燥性も悪く、使用感に問題がある。
【0007】
特許文献2の比較例4には、油分、アルコール、紫外線吸収剤、紫外線散乱効果のあるパウダーを含有する非水原液と液化ガスからなる日焼け止め用のエアゾール組成物が開示されている。しかしながら、紫外線吸収剤が原液中に10重量%と少ないため日焼け防止効果が不充分という問題がある。
【0008】
特許文献3には、(a)特定の紫外線吸収剤、(b)特定のポリエーテル変性シリコーン、(c)低粘度シリコーン油、(d)水を含有する水中油型日焼け止め化粧料が開示されており、特にUVAおよびUVBを防御できるトリアジン誘導体であるビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンを必須とすることで高い紫外線防御効果が得られる日焼け止め化粧料が開示されている。この化粧料は紫外線吸収剤を20質量%以上含有しているため日焼け防止効果は非常に高い。しかしながら、紫外線吸収剤を高濃度に含有し、液化ガスを用いたエアゾール製品とすると、紫外線吸収剤が析出しやすく、特に紫外線吸収剤としてトリアジン誘導体を含有する場合は、長期間保管したときに徐々に析出する問題があることが分かった。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のエアゾール式日焼け防止剤は、非水原液および液化ガスからなるエアゾール組成物が耐圧容器に充填されている。
【0018】
前記非水原液は、トリアジン誘導体を除く紫外線吸収剤、油分およびアルコールを含有する。
【0019】
前記トリアジン誘導体を除く紫外線吸収剤は、皮膚に付着して紫外線を吸収し、皮膚に紫外線が到達することを防止するなどを目的として用いられる。
【0020】
トリアジン誘導体を除く紫外線吸収剤としては、例えば、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ジメチルアミノ安息香酸エチルヘキシル、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチル、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸オクチルなどのアミノ安息香酸誘導体;サリチル酸エチルヘキシル、サリチル酸ジプロピレングリコール、サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸オクチル、サリチル酸フェニル、サリチル酸ホモメンチル、サリチル酸ミリスチルなどのサリチル酸誘導体;メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、ジイソプロピルケイ皮酸メチル、ジメトキシケイ皮酸エチルヘキシルグリセリル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、トリメトキシケイ皮酸メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルイソペンチル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、パラメトキシケイ皮酸ナトリウム、パラメトキシケイ皮酸カリウム、パラメトキシケイ皮酸モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリルなどのケイ皮酸誘導体;オクトクリレン、エトクリレンなどのジフェニルアクリレート誘導体;オキシベンゾン−1、オキシベンゾン−2、オキシベンゾン−3、オキシベンゾン−4、オキシベンゾン−5、オキシベンゾン−6、オキシベンゾン−9などのベンゾフェノン誘導体;ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸エチルヘキシル、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸オクチルなどのベンジリデンショウノウ誘導体;フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸Na、フェニルジベンズイミダゾールテトラスルホン酸2Naなどのフェニルベンズイミダゾール誘導体;ポリシリコン−15などのベンザルマロレート誘導体;t−ブチルメトキシジベンゾイルメタンなどのジベンゾイルメタン誘導体;などが挙げられる。なかでも、アミノ安息香酸誘導体、サリチル酸誘導体、ケイ皮酸誘導体、ジフェニルアクリレート誘導体およびベンゾフェノン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種とすることが、高濃度に含有し、液化ガスと共にエアゾール組成物としても析出が起こりにくく、日焼け防止効果が高くなるという理由から好ましい。
【0021】
トリアジン誘導体を除く紫外線吸収剤の含有量は、非水原液中20〜50質量%であり、25〜45質量%が好ましい。紫外線吸収剤の含有量が20質量%未満の場合は、皮膚に付着する量が少なく(吐出物中の濃度が低く)、紫外線を遮断する効果が低くなる傾向があり、繰り返し噴射、塗布する必要がある。また、50質量%を超える場合は、均一に噴射、塗布しにくくなる傾向、噴射面でべたつきやすくなる傾向、長期間保管したときに析出しやすくなる傾向がある。
【0022】
前記油分は、紫外線吸収剤を溶解する溶媒として作用し、紫外線吸収剤を均等に噴射、塗布しやすく、紫外線吸収剤を皮膚に付着しやすくするなどを目的として用いられる。また、後述する紫外線散乱剤も含有する場合は、紫外線散乱剤を分散させる溶媒としても作用し、紫外線吸収剤および紫外線散乱剤を均等に噴射、塗布することができる。
【0023】
油分としては、エステル油、シリコーンオイル、油脂、炭化水素などが挙げられる。
【0024】
前記エステル油としては、例えば、ジネオペンタン酸メチルペンタンジオール、ジネオペンタン酸ジエチルペンタンジオール、ジ−2−エチルへキサン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジラウリン酸プロピレングリコール、ジステアリン酸エチレングリコール、ジラウリン酸ジエチレングリコール、ジステアリン酸ジエチレングリコール、ジイソステアリン酸ジエチレングリコール、ジオレイン酸ジエチレングリコール、ジラウリン酸トリエチレングリコール、ジステアリン酸トリエチレングリコール、ジイソステアリン酸トリエチレングリコール、ジオレイン酸トリエチレングリコールなどの脂肪酸と2価アルコールとのジエステル;モノステアリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸プロピレングリコール、モノステアリン酸エチレングリコールなどの脂肪酸と2価アルコールとのモノエステル;トリ2−エチルへキサン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリンなどの脂肪酸と3価アルコールとのトリエステル;イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシルなどの分岐脂肪酸と分岐アルコールとのエステル;コハク酸ジエトキシエチル、リンゴ酸ジイソステアリルなどのカルボン酸とアルコールとのエステル;ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、イソオクタン酸セチル、ヒドロキシステアリン酸オクチル、ヒドロシキシステアリン酸エチルヘキシルなどの脂肪酸とアルコールとのエステル;などが挙げられる。特に、紫外線吸収剤をアルコールと共に配合して液化ガス中に安定して溶解できる点から脂肪酸と2価アルコールとのジエステルが好ましい。
【0025】
前記シリコーンオイルとしては、例えば、メチルポリシロキサン、シクロペンタシロキサン、シクロヘキサシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、テトラヒドロテトラメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどが挙げられる。
【0026】
前記油脂としては、例えば、ツバキ油、トウモロコシ油、オリーブ油、ヒマシ油、サフラワー油、ホホバ油、ヤシ油、米サラダ油などが挙げられる。
【0027】
前記炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、ノルマルペンタン、イソペンタンなどが挙げられる。
【0028】
油分の含有量は、非水原液中1〜30質量%が好ましく、3〜25質量%がより好ましく、5〜20質量%がさらに好ましい。油分の含有量が1質量%未満の場合は、紫外線吸収剤が析出しやすくなる傾向、紫外線吸収剤の付着性が悪くなる傾向がある。また、30質量%を超える場合は、噴射面でべたつきやすくなる傾向がある。
【0029】
前記アルコールは、紫外線吸収剤を溶解する溶媒として、油分や紫外線吸収剤等によるべたつきを抑制する、噴射面での乾燥性を良くするなどを目的として用いられる。
【0030】
アルコールとしては、例えば、エタノール、イソプロパノールなどの炭素数2〜3個の1価アルコールが挙げられる。
【0031】
アルコールの含有量は、非水原液中30〜70質量%が好ましく、35〜65質量%がより好ましい。アルコールの含有量が30質量%未満の場合は、紫外線吸収剤が析出しやすくなる傾向、噴射面でべたつきやすくなる傾向、乾燥性が悪くなる傾向がある。また、70質量%を超える場合は、紫外線吸収剤を高濃度に含有しにくくなり、紫外線を遮断する効果が悪くなる傾向、噴射面での付着性が悪くなる傾向がある。
【0032】
前記非水原液は、トリアゾン誘導体を除く紫外線吸収剤、油分およびアルコール以外にも、無機酸化物粉体、無機酸化物粉体以外のパウダー、紫外線吸収剤以外の有効成分(以下、他の有効成分とも記載する)、界面活性剤などを適宜含有することができる。
【0033】
前記無機酸化物粉体は、皮膚に付着して紫外線を散乱させ、皮膚の日焼けを防止する紫外線散乱剤として用いられる。無機酸化物粉体としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、シリカなどが挙げられる。なお、表面をハイドロゲンジメチコンなどのシリコーン、水酸化アルミニウム、含水シリカなどで処理したものを用いることが好ましい。また、無機酸化物粉体は、エステル油などの油分に分散させたものを用いても良い。
【0034】
無機酸化物粉体の比表面積は1〜1000m
2/gが好ましく、5〜800m
2/gがより好ましく、10〜200m
2/gがさらに好ましい。比表面積が1m
2/g未満の場合は、パウダーの表面が滑らかになり紫外線を散乱させる効果が弱くなる傾向、噴射面で白くなりやすくなる傾向がある。また、1000m
2/gを超える場合は、比重が軽くなりすぎてエアゾール組成物中での分散性が悪くなる傾向、噴射したときに飛散しやすく、皮膚に付着しにくくなる傾向がある。なお、本発明における比表面積は、窒素を用いたBET法により測定される比表面積である。
【0035】
無機酸化物粉体の一次粒子径は1〜100nmが好ましく、5〜50nmがより好ましい。一次粒子径が1nm未満の場合は、固く凝集しやすくなり、使用前にエアゾール組成物を攪拌しても分散しにくく、均一な組成で噴射できなくなる傾向がある。また、100nmを超える場合は、紫外線散乱効果が弱くなりやすく、また皮膚や頭髪上で乾燥すると白くなりやすくなる傾向がある。
【0036】
無機酸化物粉体を含有する場合の含有量は、非水原液中0.1〜15質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。無機酸化物粉体の含有量が0.1質量%未満の場合は、無機酸化物粉体を含有する効果が得られにくくなる傾向がある。また、15質量%を超える場合は、噴射面で白くなりやすくなる傾向がある。
【0037】
前記無機酸化物粉体以外のパウダーは、紫外線吸収剤によるべたつきを改善して使用感を向上させるなどを目的として用いられる。当該パウダーとしては、例えば、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンアルミニウム、ナイロンパウダー、タルク、ベントナイトなどが挙げられる。特に、噴射面がべたつかずにさらさらになることから球状のナイロンパウダーを用いることが好ましい。
【0038】
無機酸化物粉体以外のパウダーの含有量は、非水原液中0.1〜15質量%が好ましく、0.3〜10質量%がより好ましい。当該パウダーの含有量が0.1質量%未満の場合は、無機酸化物粉体以外のパウダーを含有する効果が得られにくくなる傾向がある。また、15質量%を超える場合は、エアゾールバルブや噴射部材などで詰まりやすくなる傾向がある。
【0039】
前記他の有効成分は、皮膚に潤いを付与する、痒みや炎症を抑制する、清涼感を付与する、紫外線吸収剤の臭いをマスキングするなどの効果を付与するなどを目的として用いられる。他の有効成分としては、例えば、天然香料、合成香料などの各種香料;l−メントール、カンフル、ハッカ油などの清涼化剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ジプロピレングリコール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、コラーゲン、ヒアルロン酸、カロニン酸、乳酸ナトリウム、dl−ピロリドンカルボン酸塩、ケラチン、カゼイン、レシチン、尿素などの保湿剤;アスコルビン酸、α−トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソールなどの酸化防止剤;レチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、パントテン酸カルシウム、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸ナトリウム、dl−α−トコフェロール、酢酸トコフェロール、トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、ジベンゾイルチアミン、リボフラビンおよびこれらの混合物などのビタミン類;アラントインヒドロキシアルミニウム、タンニン酸、クエン酸、乳酸、ミョウバンなどの収斂剤;塩酸ジブカイン、塩酸テトラカイン、塩酸リドカイン、リドカインなどの局所麻酔剤;ジフェンヒドラミン、酢酸トコフェロール、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸ジカリウムなどの抗炎症剤;塩化アルミニウム、オキシ塩化アルミニウム、塩基性臭化アルミニウム、硫酸アルミニウム、クロルヒドロキシアルミニウム、硫酸亜鉛、フェノールスルホン酸亜鉛、塩基性乳酸アルミニウム亜鉛等の制汗成分;イソプロピルメチルフェノール、塩化ベンザルコニウムなどの殺菌剤;ラウリル酸メタクリレート、安息香酸メチル、フェニル酢酸メチル、ゲラニルクロトレート、ミリスチン酸アセトフェノン、酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジル、緑茶エキスなどの消臭剤;などが挙げられる。なお、これらの有効成分は溶解性に応じて、油分またはアルコールに溶解させればよい。
【0040】
他の有効成分を含有する場合の含有量は、非水原液中0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜8質量%がより好ましい。前記他の有効成分の含有量が0.1質量%よりも少ない場合は、皮膚に付着する量が少なく、有効成分の効果が不充分になる傾向がある。また、10質量%を超える場合は、均一に噴射、塗布しにくくなり、含有量に対して効果が不充分になる傾向がある。
【0041】
前記界面活性剤は、無機酸化物粉体および無機酸化物粉体以外のパウダーなどの分散性を向上させるなどを目的として用いられる。界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・メチルポリシロキサン共重合体などのシリコーン系界面活性剤、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリ(ジ・トリ・テトラ・ヘキサ・ペンタ・デカなど)グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などの非イオン性界面活性剤などが挙げられる。なかでも、HLBが1〜10の非イオン性界面活性剤が好ましく、HLBが2〜9の非イオン性界面活性剤がより好ましい。
【0042】
界面活性剤を含有する場合の含有量は、非水原液中0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜8質量%がより好ましい。界面活性剤の含有量が0.1質量%未満の場合は、界面活性剤を含有する効果が得られにくくなる傾向がある。また、10質量%を超える場合は、噴射面でべたつきやすくなる傾向がある。
【0043】
前記非水原液は、紫外線吸収剤を油分に溶解させ、これにアルコールを添加することにより調製することができる。また、非水原液に無機酸化物粉体や他の有効成分を含有させる場合は、調製された非水原液に各成分を添加すればよい。なお、無機酸化物粉体などの含有量を調整してスラリー状にしてもよい。他の有効成分は油分やアルコールに溶解させてから添加することもできる。無機酸化物粉体と無機酸化物粉体以外のパウダーとは混合物として添加してもよい。
【0044】
非水原液の含有量は、エアゾール組成物中20〜50質量%が好ましく、25〜45質量%がより好ましい。非水原液の含有量が20質量%未満の場合は、噴射物中の紫外線吸収剤の濃度が低くなり、充分な日焼け防止効果が得られなくなる傾向がある。また、50質量%を超える場合は、べたつきやすくなり、使用感が悪化する傾向がある。
【0045】
前記液化ガスは、耐圧容器内では圧力を有する液体であり、非水原液を溶解する主溶媒として作用する。特に、紫外線吸収剤や無機酸化物粉体の含有により、非水原液の粘度が高くなった場合でも、液化ガスが溶媒として作用するために、エアゾール組成物としての粘度は低下させることができる。また、適度な大きさの噴霧粒子で噴射することができ、噴射面に均一に付着させることができる。
【0046】
液化ガスとしては、例えば、液化石油ガス、ジメチルエーテル、ハイドロフルオロオレフィンおよびこれらの混合物が挙げられる。なかでも、圧力を調整してソフトに噴射できるという理由から液化石油ガスが好ましい。また、噴射面に対する冷却効果を高める、燃焼性を抑えることができるという理由からジメチルエーテル、ハイドロフルオロオレフィンを含有させることが好ましい。
【0047】
液化ガスの含有量は、エアゾール組成物中50〜80質量%であり、55〜75質量%が好ましい。液化ガスの含有量が50質量%未満の場合は、噴射物が粗い霧状になり均一に付着させにくくなる傾向、べたつきやすくなり使用感が悪化する傾向がある。また、80質量%を超える場合は、エアゾール組成物中で紫外線吸収剤が析出しやすくなる傾向、噴射物中の紫外線吸収剤の濃度が低くなり、噴射面で不均一に付着し充分な日焼け防止効果が得られなくなる傾向がある。
【0048】
また、液化ガス以外に、耐圧容器内の圧力の調整、噴射状態の調整などを目的として圧縮ガスを含有することができる。圧縮ガスとしては、例えば、炭酸ガス、亜酸化窒素ガス、窒素ガス、圧縮空気などを含有することができる。
【0049】
本発明のエアゾール式日焼け防止剤は、耐圧容器に非水原液を充填し、エアゾールバルブを固着して密閉し、エアゾールバルブから液化ガスを充填して製造することができる。なお、液化ガスは、エアゾールバルブを固着する前にアンダーカップ充填により充填してもよい。
【0050】
前記耐圧容器としては、本発明の効果を損なわないものである限り特に限定されず、通常のエアゾール製品に用いられるエアゾール容器などが挙げられる。例えば、アルミニウム、ブリキなどの金属製のもの、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂製のもの、耐圧ガラス製のものであって、耐圧性を有し、上端に開口部を有する有底筒状に成形したものを用いることができる。
【0051】
前記エアゾールバルブとしては、たとえば、耐圧容器の開口部に固着されるマウンティングカップと、マウンティングカップに保持されるハウジングと、ハウジング内に上下動自在に収容されるステムと、ステムを常時上方に付勢するスプリングと、ステムのステム孔を塞ぐステムラバーと、容器内のエアゾール組成物をハウジング内に供給するチューブを備えたものがあげられる。
【0052】
噴射した粒子を細かくできる点、燃焼性を抑制できる点から、エアゾール組成物の気相を導入するためのベーパータップ孔を備えたハウジングを用いることが好ましい。なお、ベーパータップ孔の断面積は0.005〜1mm
2であることが好ましく、0.01〜0.5mm
2がより好ましい。
【0053】
本発明のエアゾール式日焼け防止剤による噴射形態は霧状の噴射が好ましく、噴霧粒子の平均粒子径は10〜50μmが好ましく、15〜45μmがより好ましい。平均粒子径が10μmよりも小さい場合は、皮膚や頭髪などの噴射対象物上で噴霧粒子が舞い散りやすく、付着量が低下しやすくなったり、吸引しやすくなったりする傾向がある。また、平均粒子径が50μmよりも大きい場合は、噴射面に均一に付着しにくくなる傾向がある。
【0054】
本発明のエアゾール式日焼け防止剤は、高濃度に紫外線吸収剤を含有し、日焼け防止効果に優れ、簡単に薄く均一に広範囲に噴射することができ、噴射面がべたつかず使用感に優れ、さらに紫外線吸収剤が析出しない安定なエアゾール式日焼け防止剤である。さらに、充填されたエアゾール組成物が、非水原液および液化ガスからなるため、乾燥性が良く垂れ落ちにくく、また、噴射直後に液化ガスの気化による冷却効果が得られる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
原液の調製
実施例および比較例の試験用エアゾール製品に用いる各原液を表1に示す処方に従って調製した。
【0057】
【表1】
*1:Uvinul A plus B(商品名)、BASFジャパン株式会社製
*2:Uvinul A plus Granular(商品名)、BASFジャパン株式会社製
*3:Eusolex OCR(商品名)、メルク株式会社製
*4:Eusolex OS(商品名)、メルク株式会社製
*5:PARSOL MCX(商品名)、DSMニュートリションジャパン株式会社製
*6:Tinosorb S(商品名)、BASFジャパン株式会社製
*7:Neosolue MP(商品名)、日本精化株式会社製
*8:DC345(商品名)、東レ・ダウコーニング株式会社製
*9:TTO−S−2(商品名)、比表面積:70m
2/g、一次粒子径:50nm、石原産業株式会社製
*10:MZ−500HP(商品名)、比表面積:40m
2/g、一次粒子径:25nm、テイカ株式会社製
【0058】
実施例1〜7および比較例1〜7
表2〜3に示す処方に従い、各原液(表1参照)と液化ガス(*11)を耐圧ガラス製容器に充填し、エアゾールバルブを固着し試験用エアゾール製品を調製した。得られた試験用エアゾール製品について下記の評価を行った。結果を各表に示す。
*11:ノルマルブタンとイソブタンとの混合物(25℃での蒸気圧が0.2MPa)
【0059】
(1)エアゾール組成物の安定性
各試験用エアゾール製品を低温(−20℃)および高温(45℃)で1箇月間静置後のエアゾール組成物の状態を目視で確認し、下記の基準に基づき評価した。
○:析出物は発生しなかった。
△:薄いモヤが発生したが、エアゾール製品を上下に振とうすると消えた。
×:析出物が発生した。
【0060】
(2)使用感
試験用エアゾール製品を25℃の恒温水槽中に30分間浸漬し、腕に1g噴射し、噴射面の状態を下記の基準に基づき評価した。
◎ :直ぐに乾燥し、噴射面はべたつきが無く、さらさらしてすべり感に優れ、白くならなかった。
○ :直ぐに乾燥し、噴射面はべたつきも無く、白くならなかった。
△1:べたつきは無かったが、噴射面が白くなった。
△2:少しべたつくが、噴射面は白くならなかった。
×1:乾燥しにくく、べたついた。
×2:舞い散りが多く、ほとんど腕に付着しなかった。
− :析出が発生したため、評価しなかった。
【0061】
(3)紫外線遮断効果
各試験用エアゾール製品を紫外線があたると白色から紫色に変色する塗布板(フォトクロシックプレート、吉田コスメワークス株式会社製)に非水原液の噴射量が1gとなるように噴射し、塗布板に紫外線ランプを照射し、UVA防御指数がPA++++に該当する実施例1(ISO24442に従って測定したUVAPFが19.2)を基準品とし、他の各試験用エアゾール製品を噴射した塗布板の変色状態と比較し、下記の基準に基づき評価した。
○:基準品と同様に、10分間照射しても、変色しなかった。
×:30秒以内に変色した。
−:析出が発生したため、評価しなかった。
【0062】
また、実施例1および2ならびに比較例1〜4の紫外線遮断効果の評価結果(紫外線ランプを10分間照射した後の塗布板の写真)を、
図1〜6にそれぞれ示す。
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
図1および
図2に示すように実施例1および実施例2は、エアゾール組成物が均一に塗布されており、変色せずに白色のままであることがわかる。しかし、
図3に示すように比較例1は液化ガスの含有量が多すぎるため、噴射物の舞い散りが多く、付着量が少なくなり、全体的に変色した。さらに、塗布板に噴射物を均一に付着させることが出来なかったため、部分的に濃く変色していることがわかる。また、
図5に示すように比較例3は紫外線吸収剤の含有量が少ないため、紫外線遮断効果が弱く、噴射した箇所は全体的に薄紫色に変色していることがわかる。なお、実施例3〜7は実施例1および2と同様の結果であった。また、
図1〜6に示す全ての塗布板の上部には試験用エアゾール製品を噴射しなかったため、濃紫色に変色した。
【0066】
処方例1 エアゾール式日焼け防止剤
下記の原液16g(40質量%)をポリエチレンテレフタレート製の耐圧容器(満注量100ml)に充填し、エアゾールバルブを固着した。そして、エアゾールバルブから液化ガス(*11)24g(60質量%)を充填して試験用エアゾール製品を製造した。得られた試験用エアゾール製品について上記の評価を行った。結果を表4に示す。
【0067】
<原液>
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル/
メトキシケイヒ酸エチルヘキシル(*1) 16.0
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル(*2) 3.4
オクトクリレン(*3) 3.0
サリチル酸エチルヘキシル(*4) 3.6
エタノール 53.0
ジネオペンタン酸メチルペンタンジオール(*7) 10.0
シクロヘキサシロキサン(*8) 10.0
オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンアルミニウム(*12) 1.0
合計(質量部) 100.0
*12:DRY FLO PURE(商品名)、アグゾノーベル株式会社製
【0068】
処方例2 エアゾール式日焼け防止剤
下記の原液12g(30質量%)をポリエチレンテレフタレート製の耐圧容器(満注量100ml)に充填し、エアゾールバルブを固着した。そして、エアゾールバルブから液化ガス(*11)24g(60質量%)を充填し、次いで液化ガス(*13)4g(10質量%)を充填して試験用エアゾール製品を製造した。得られた試験用エアゾール製品について上記の評価を行った。結果を表4に示す。
*13:ジメチルエーテル
【0069】
<原液>
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル/
メトキシケイヒ酸エチルヘキシル(*1) 15.0
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル(*2) 2.0
オクトクリレン(*3) 2.0
サリチル酸エチルヘキシル(*4) 2.0
オキシベンゾン−3(*14) 2.0
エタノール 62.0
イソノナン酸イソトリデシル(*15) 7.0
流動パラフィン(*16) 7.0
オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンアルミニウム(*12) 1.0
合計(質量部) 100.0
*14:Uvinul MC40(商品名)、BASFジャパン株式会社製
*15:サラコス913(商品名)、日清オイリオグループ株式会社製
*16:ハイコールK−230(商品名)、カネダ株式会社製
【0070】
処方例3 エアゾール式日焼け防止剤
下記の原液16g(40質量%)をポリエチレンテレフタレート製の耐圧容器(満注量100ml)に充填し、エアゾールバルブを固着した。そして、エアゾールバルブから液化ガス(*11)24g(60質量%)を充填して試験用エアゾール製品を製造した。得られた試験用エアゾール製品について上記の評価を行った。結果を表4に示す。
【0071】
<原液>
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル/
メトキシケイヒ酸エチルヘキシル(*1) 16.0
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル(*2) 3.0
オクトクリレン(*3) 3.0
サリチル酸エチルヘキシル(*4) 3.0
エタノール 53.0
ジ−2−エチルへキサン酸ネオペンチルグリコール(*17) 10.0
シクロヘキサシロキサン(*8) 5.0
酸化チタン(*9) 1.0
酸化亜鉛(*10) 1.0
ナイロンパウダー(*18) 5.0
合計(質量部) 100.0
*17:コスモール 525(商品名)、日清オイリオグループ株式会社製
*18:DAIAMID MSP−100(商品名)、ダイセル・エボニック株式会社製
【0072】
【表4】
【0073】
また、処方例1〜3の紫外線遮断効果の評価結果(紫外線ランプを10分間照射した後の塗布板の写真)は実施例1および2と同様に、噴射物を塗布した箇所は変色せずに白色のままであった。