【実施例】
【0170】
実施例1
我々は、完全に特性決定されたグリアジン、「A−グリアジン」の全配列にわたる51セットの合成15マーペプチドを使用することによりセリアック病のエピトープマッピングを実施した(表1参照)。A−グリアジンペプチドはtTGにより個々に処理されることにより、インビボで生成したものを模倣したかもしれない生成物を生成した
3。我々は
、実験上の感染及び自己免疫疾患において記載されたとおり、エピトープの「拡散」又は「消費」が起きたかもしれない可能性を避けるために、疾患の消滅の開始点においてセリアック病患者を研究しようとも努めた。
3日及び10日のパンチャレンジによる臨床上及びA−グリアジン特異的なT細胞応答
パイロット研究において、セリアック病の2人の患者が緩解したが、血清の抗−筋内膜抗体(EMA)の不在により定義され、グルテンフリーダイエットは彼らの通常のグルテンフリーダイエットに加えて、標準のグルテン含有白パン4スライスを毎日給仕された。被験者1は3日後に腹痛、口の潰瘍及びゆるい下痢のためにパンを停止したが、被験者2は1週間目に軽い吐き気があっただけで10日間継続した。EMAは被験者2においてパンチャレンジの1週間後に陽性になったことから、使用したパンがセリアック病の再発を導いたことを示す。しかし、被験者1においては、EMAはパンチャレンジから2カ月まで陰性のままであった。両被験者において、パンチャレンジにより出現した兆候はグルテンフリーダイエットに戻って2日以内に解消した。
【0171】
IFNγELISPOTアッセイのA−グリアジンに対するPBMC応答は、パンチャレンジの前と間に見いだされなかった。しかし、被験者1においてはパンの消費の1日後に(4日目)、tTGにより処理したA−グリアジン51−85にわたる5つのオーバーラップするペプチドの単一のプール(プール3)が有力なIFNγ応答を示した(
図1a参照)。被験者1においては、A−グリアジンペプチドに対するPBMC IFNγ応答はプール3単独に標的化されたままであり、8日目に最大であった。プール3に対する応答の動力学及び大きさは、α−キモトリプシン消化されたグリアジンにより導かれるのと同様であった。tTG処理したプール3に対するPBMC IFNγ応答はtTG処理されなかったプール3より5から12倍の大きさに一貫し、そしてα−キモトリプシン消化したグリアジンに対する応答はtTG処理した場合の3から10倍大きかった。被験者2においては、tTG処理されたプール3も、8日目にA−グリアジンペプチドの免疫源セットのみであったが、この応答は被験者1よりも弱く、4日目には観察されず、11日目にはプール3に対する応答は減少し、そしてA−グリアジンペプチドの他のtTG処理プールがより強いIFNγ応答を導いた(
図1b参照)。
【0172】
パイロット研究は、これらのセリアック病被験者における初期T細胞応答が5つのペプチドの単一のtTG処理A−グリアジンプールに対してであったこと、及び末梢血において容易に測定されたことを示した。抗原暴露が3日ではなく10日間続いたなら、他のA−グリアジンペプチドに対するT細胞応答が、エピトープの拡散に一致して、出現する。tTG処理されたA−グリアジンペプチドによるセリアック病特異的IFN−g誘導
グルテンフリーダイエットの別の6人のセリアック病被験者の内の5人において(表1参照)、3日間のパンチャレンジはtTG処理されたペプチドをプール3に同定し、特に、PBMCからIFNγを導く唯一のA−グリアジン成分としての56−70(12)及び60−75(13)に相当するペプチドであった(
図2参照)。IFNγ ELISPOTと平行して流したIL−10 ELISPOTは、tTG処理されたペプチド12又は13に対してIL−10の応答を示さなかった。一人の被験者においては、パンチャレンジの4日前、4日間又は4日目まで、あらゆるA−グリアジンペプチド又はα−キモトリプシン消化されたグリアジンに対してIFNγ応答はなかった。パンチャレンジの2カ月後まで測定した場合に、これらのセリアック病被験者の誰にも基底ラインからEMA状態が変化しなかった。
【0173】
HLA−DQ対立遺伝子α1
*0501,β1
*0201(28−52歳、2人は女性)を有し、3日間パンチャレンジを受けて1カ月間グルテンフリーダイエットを受けた、4人の健康なEMA陰性被験者からのPBMCは、tTG処理をしてもしなくても、何れのA−グリアジンペプチドに対しても陰性対照を超えるIFNγ応答を示さなかった。即ち、PBMC中のIFNγのtTG処理プール3及びA−グリアジンペプチド56−70
(12)及び60−75(13)への誘導は、セリアック病特異的であった(7/8対0/4、p<0.01,カイ2乗分析による)。
最小のA−グリアジンT細胞エピトープのファインマッピング
A−グリアジン56−75の末端削除に相当するtTG処理したペプチドは、同じコアペプチド配列QPQLP(配列番号:9)が評価された5人のセリアック病被験者の全てにおいて抗原性に必須であったことを明らかにした(
図3参照)。PBMC IFNγは、7マーのPQPQLPY(配列番号:4)で始まるこのコア配列にわたり、長さを伸ばしたtTG処理ペプチドに応答することから、tTG処理された17マーのQLQPFPQPQLPYPQPQS(配列番号:19)(A−グリアジン57−73)がIFNγ ELISPOTにおいて最大の活性を所有したことを示した(
図4参照)。
tTGによるQ65の脱アミド化はA−グリアジン中の免疫上優勢なT細胞エピトープを生じる
HPLC分析は、A−グリアジンのtTG処理が、親ペプチドにおいてあとで隣接して溶出した単一の生成物を生じたことを証明した。アミノ酸配列決定は、A−グリアジン56−75中に含まれる6つのグルタミン(Q)残基の中から選択的にtTGにより脱アミド化されたことを示した(
図5参照)。グルタミン酸(E)置換されたQ65のコアA−グリアジン62−68からの連続伸長物(serial expansions)に相当するペプチドの生物活性は、tTG処理後のQ65を有する同じペプチドと均等であった(
図4a参照)。Q57及びQ72のEによる両方又は単独の置換にE65が伴うと、調査された3人のセリアック病被験者において、上記17マーの抗原性を増強しなかった(
図6参照)。グリアジンペプチドにおいてグルタミン残基にプロリンが続くと、インビトロにおいてtTGにより脱アミド化されないため、Q57及びQ72を調査した(W.Vader et al,Proceedings 8th International
Symposium Coeliac Disease)。よって、免疫上優勢なT細胞エピトープをQLQPFPQP
ELPYPQPQS(配列番号:2)と定義した。
免疫上優勢なT細胞エピトープ応答はDQ−2制限され且つCD4依存性である
HLA−DQα1
*0501,β1
*0201に関して同型接合の(homozygous)2人のセリアック病被験者において、抗−DQモノクローナル抗体がtTG処理されたA−グリアジン56−75に対するELISPOT IFNγ応答をブロックしたが、抗−DP及び−DR抗体はブロックしなかった(
図7参照)。2人のセリアック病被験者からのPBMCの抗−CD4及び−CD8磁気ビーズ除去(depletion)は、tTG処理されたA−グリアジン56−75に対するIFNγ応答がCD4 T細胞媒介性であることを示した。
考察
この研究において、我々は、配列:QLQPFPQPELPYPQPQS(配列番号:2)(残基57−73)のtTG処理されたA−グリアジン17マーに応答性のセリアック病被験者の末梢血においてCD4 T細胞の一過性集団を誘導するために、普通の白パンを用いたむしろ単純なダイエット抗原チャレンジを記載した。A−グリアジン(Q→E65)に対する免疫応答はセリアック病関連対立遺伝子DQα1
*0501,β1
*0201に限定される。インビトロにおける組織のトランスグルタミナーゼ作用はQ65を選択的に脱アミド化する。置換Q→E65を有する合成A−グリアジンペプチドに対する誘導された末梢血IFNgの応答は、tTG処理されたQ65 A−グリアジンペプチドに均等であり;両者は未修飾のQ65 A−グリアジンペプチドよりもIFNg ELISPOTにおいて10倍にまで、より多くのT細胞を刺激する。
【0174】
我々は、エピトープマッピングにおけるT細胞クローンの使用により生じるかもしれない方法論上の人工物の可能性を回避するため、インビボ抗原チャレンジ及び短期間エクスビボ免疫アッセイを用いて、このセリアック病特異的T細胞エピトープを慎重に定義した。我々の発見は、グルテンの摂取に対する末梢血のT細胞応答が迅速であるが短命であり、且つエピトープマッピングに利用可能であることを示す。インビボ抗原チャレンジは、
A−グリアジンペプチドに対する免疫応答の時間の経過順の階層(temporal hierarchy)が存在することを示し;tTGにより修飾されたA−グリアジン57−73はP中のもっとも強いIFNg応答を誘導するのみならず、第1のIFNg応答も出現する。
【0175】
我々はA−グリアジンにわたるペプチドしか評価しなかったので、セリアック病の病因において等しいか又はより重要な他のグリアジン内の別のエピトープが存在するかもしれない。事実、我々が同定したPQPQLPY(配列番号:4)であるA−グリアジン内のコアエピトープにおけるペプチド配列は幾つかのべつのグリアジンに共通する(SwissProt and Trembl受け入れ番号:P02863,Q41528,Q41531,Q41533,Q9ZP09,P04722,P04724,P18573)。しかしながら、生検チャレンジ及びインビボ研究において生物活性を所有することが以前に示されたA−グリアジンペプチド(例えば:31−43、44−55及び206−217)
4,5は、セリアック病被験者において3日間のパンチャレンジ後にPBMCにおいてIFNg応答を誘導しなかった。これらのペプチドは、免疫応答の拡散を伴って現れる「二次」T細胞エピトープであるかもしれない。
実施例2
免疫上優勢なエピトープ内の置換に対するT細胞認識の効果
57−73A−グリアジンエピトープにおける65位のグルタミンの置換の効果を、合成ペプチドを用いてIFNγ ELISPOTアッセイにおいて置換されたエピトープに対する末梢血応答を測定することにより決定した(50μg/mlにおいて)。応答は3人のセリアック病患者においてグルテンチャレンジを始めて6日後に測定した(3日間4スライスのパンを毎日)。結果を表3及び
図8に示す。グルタミン酸から、ヒスチジン、チロシン、トリプトファン、リジン、プロリン又はアルギニンへの置換において観察され得るように、免疫上優勢なエピトープに対する応答の大きさの10%より低い大きさの応答を刺激した。即ち、この位置におけるA−グリアジンの変異は、免疫反応性を低下させるか又は不在にする変異グリアジンを生成するのに使用することができた。
実施例3
他の天然に生じるグリアジンからの均等なペプチドの免疫反応性の試験
他の天然に生じるコムギのグリアジン由来の均等なペプチドの免疫反応性を、天然に生じる配列に相当する合成ペプチドをトランスグルタミナーゼにより処理して使用することにより、評価した。これらのペプチドは、ELISPOTにおいて、実施例2に記載されたのと同じ被験者からのPBMCを用いて同じ様式にて試験した。少なくとも5つのペプチドがA−グリアジン57−73 E65ペプチドに匹敵する免疫反応性を示す(トランスグルタミナーゼ処理後)ことから、コムギ中の他のグリアジン蛋白質も同ようにこのセリアック病特異的免疫応答を誘導することを示唆する(表4及び
図9)。
方法
被験者:研究において使用した患者は、英国のオックスフォードにおいてセリアック病クリニックにかかっている。セリアック病は、特有の小腸の組織構造、及び兆候の標準化及びグルテンフリーダイエットの小腸組織構造に基づいて診断された。
組織型判定:組織型判定は、EDTA抗凝血末梢血から抽出されたDNAを用いて実施した。HLA−DQA及びDQB遺伝子型判定は、PCRにより配列特異的プライマーミックスを用いて実施した
6−8。
抗筋内膜抗体アッセイ:EMAは、サルの食道(oesophagus)を用いて1:5に希釈された患者の血清を用い、続いてFITCコンジュゲートヤギ抗−ヒトIgAを用いた間接免疫蛍光により検出した。IgAをEMAの前に定量したが、どの被験者もIgA欠損ではなかった。
抗原チャレンジ:グルテンフリーダイエット後のセリアック病被験者に、4スライスのグルテン含有パンを毎日3又は10日間食べ尽くさせた(セインズベリーズの標準の「白サンドイッチパン」)。パンチャレンジを始める前の週及び2カ月後まで、EMAを査定し
た。グルテンフリーダイエットを4週間経験した健康な被験者は、3日間グルテン含有パン4スライスを含む彼らの通常のダイエットを食べつくし、そして次にさらに4日間グルテンフリーダイエットに戻った。
IFNγ及びIL−10 ELISPOT:Ficoll−Hypaque密度遠心分離により50−100mlの静脈血からPBMCを調製した。3回洗浄後に、PBMCを再度、10%熱不活性化ヒトAB血清を含む完全RPMIに懸濁した。IFNγ及びIL−10の単一細胞の分泌に関するELISPOTアッセイを、市販のキット(Mabtech;ストックホルム、スエーデン)を用いて96−ウエルプレート(MAIP−S−45;Millipore,ベッドフォード、MA)により、製造者の指示書(ほかで記載されたとおり
9)に従い、2−5x10
5(IFNγ)又は二重のウエルにて査定し、そしてミコバクテリウムツベルクロシスの精製された蛋白質誘導体(PPD RT49)(Serum Institute;コペンハーゲン、デンマーク)(20μg/ml)を全てのアッセイにおいて陽性対照として含ませた。
ペプチド:合成ペプチドはResearch Genetics(ハンツビル、アラバマ)から購入し、質量分光分析及びHPLCにより確認されたペプチドの真正度は70%>精製度であった。グリアジン(Sigma;G−3375)(100mg/ml)のα−キモトリプシン(Sigma;C−3142)200:1(w/w)による消化は、0.1M NH
4HCO
3中で2M尿素と共に室温において実施し、98℃において10分間加熱することにより24時間後に中止した。遠心分離(13,000g,10分間)後に、グリアジン消化上清をフィルター滅菌した(0.2mm)。グルテンの消化をSDS−PAGEにより確認して、蛋白質濃度を査定した。α−キモトリプシン−消化されたグリアジン(640μg/ml)及び合成グリアジンペプチド(15マー:160μg/ml,他のペプチド:0.1mM)を個別にtTG(Sigma;T−5398)(50μg/ml)によりPBS中にてCaCl
2を1mM加えて、2時間37℃において処理した。ペプチド及びペプチドプールを滅菌96−ウエルプレートに分配して、使用まで−20℃に凍結保存した。
ペプチドのアミノ酸配列決定:逆相HPLCを使用して、A−グリアジン56−75のtTG処理によるペプチドを精製した。単一生成物を同定して、アミノ酸配列決定(自動化配列決定機モデル494A,Applied Biosystems,フォスターシティー、カリフォルニア)に供した。未修飾のG56−75の配列はLQLQPFPQPQLPYPQPQSFP(配列番号:5)と確認され、そしてtTG処理されたG56−75はLQLQPFPQPELPYPQPQSFP(配列番号:11)と確認された。グルタミン残基の脱アミド化は、アミノ酸配列決定のサイクル2、4、8、10、15及び17において回収されたグルタミン及びグルタミン酸の合わせた量のパーセントとして表された、回収されたグルタミン酸の量(pmol)として定義された。tTGに帰する脱アミド化は、(tTG処理されたペプチド中のグルタミンの脱アミド化の%−未処理のペプチド中の脱アミド化の%)/(100−未処理のペプチド中の脱アミド化の%)として定義された。
CD4/CD8及びHLAクラスII制限:抗−CD4又は抗−CD8コートされた磁気ビーズ(Dynal,オスロ、ノルウエー)をRPMIにより4回洗浄し、次に10%熱不活性化ヒトAB血清を含む完全RPMI中のPBMCと共に、30分間氷の上でインキュベートした。ビーズを磁石により取り出して、残る細胞を計数した。tTG処理されたA−グリアジン56−75に対する免疫応答のインビボのHLA−クラスII制限は、PBMC(5x10
6細胞/ml)を抗−HLA−DR(L243),−DR(L2),及び−DP(B7.21)モノクローナル抗体(10μg/ml)と、室温において、ペプチドの添加前に1時間インキュベートすることにより、確立した。
実施例4
グリアジン−特異的末梢血リンパ球による粘膜インテグリンの発現
内皮とリンパ球のアドレシンの間の相互作用は、器官特異的なリンパ球のホーミングを促進させる。多数のアドレシンが公知である。ヘテロダイマーα
4β
7は粘膜固有層消化
管及び他の粘膜リンパ球に特異的であり、そしてα
Eβ
7は消化管及び皮膚において内皮リンパ球内に特異的である。末梢血CD4 T細胞の約30%がα
4β
7を発現し、そして粘膜部位へ移動中であると推定され、末梢血CD4 T細胞の5%がα
Eβ
7を発現する。α
E又はβ
7特異的な抗体をコートされた免疫磁気ビーズは、それぞれ、α
Eβ
7又はα
Eβ
7及びα
4β
7を発現する細胞のPBMCを除去する。ELISpotアッセイとの組み合わせにより、免疫磁気ビーズの除去は、これらの細胞を粘膜表面へのホーミングとして同定するかもしれないグリアジン特異的T細胞のアドレシン発現の決定を可能にする。おもしろいことに、インビボのグルテンチャレンジは小腸の粘膜固有層へのCD4
T細胞の迅速な流入に関連しており(内皮部位内ではなく)、90%を超えるリンパ球がα
4β
7を発現する。
【0176】
免疫磁気ビーズを製造して、3日間のグルテンチャレンジの後で6日目又は7日目にセリアック病被験者からのPBMCを除去するのに使用した。FACS分析は、α
Eビーズが約50%の陽性CD4 T細胞を除去し、一方β
7ビーズは全てのβ
7陽性CD4 T細胞を除去した。CD4−又はβ
7−ビーズを用いたがCD8−又はα
Eビーズを用いないPBMC除去はインターフェロンガンマELISpotにおいて応答を完全に破壊した。tTGグリアジン及びPPD応答はCD4除去により完全に破壊されたが、インテグリン特異的ビーズ除去により一貫して影響された。
【0177】
即ち、セリアック病においてグルテンチャレンジ後に誘導されたA−グリアジン57−73 QE65特異的T細胞は、小腸中の粘膜固有層CD4 T細胞上に存在するインテグリンα
4β
7を発現する。
実施例5
最適なT細胞エピトープの長さ
A−グリアジン中の優勢なT細胞エピトープのコアにわたる7から17の長さのアミノ酸からのペプチドを試験する以前のデータは、3日間のグルテンチャレンジ開始から6日後にセリアック病のボランティアからの末梢血単核細胞(PBMC)を用いたインターフェロンガンマElispotにおいて17マーのA−グリアジン57−73 QE65(配列番号:2)が最大の応答を誘導したことを示した。
【0178】
A−グリアジン中の優勢なT細胞エピトープのコア配列からの伸長を示すペプチドを、3日間のグルテンチャレンジ開始から6日後にセリアック病のボランティアからの末梢血単核細胞(PBMC)を用いたIFNガンマELISPOTにおいて査定した(n=4)。ペプチド13:A−グリアジン59−71 QE65(13マー)、ペプチド15:58−72 QE65(15マー)、...、ペプチド27:52−78 SE65(27マー)。
【0179】
図11に示すとおり、A−グリアジン57−73 QE65の伸長はIFNガンマElispotにおいて応答を実質上は増強しない。次の実施例は、17マーペプチドを用いたA−グリアジン57−73 QE65のアゴニスト及びアンタゴニスト活性を特性決定する。
実施例6
A−グリアジン57−73 QE65とセリアック病における他のDQ2−制限されるT細胞エピトープの比較
セリアック病の腸の生検からのグルテン特異的T細胞クローン及び系列のT細胞エピトープに相当する未修飾及びトランスグルタミナーゼ処理ペプチドに相当するペプチドを用いて、用量応答研究を実施した。ペプチドに対する応答はA−グリアジン57−73 QE65に対する応答のパーセントとして表現した。全ての被験者はHLA−DQ2+であった(誰もDQ8+でなかった)。
【0180】
上記の研究は、A−グリアジン57−73 QE65が、グルテンチャレンジ後にセリアック病のPBMCを用いたELISpotアッセイにおいてインターフェロンガンマの誘導に関してもっとも有効性のあるグリアジンペプチドであることを示す(
図12a−h,及び表5及び6を参照)。第2及び第3のエピトープは、より大きなペプチド、即ちA−グリアジン57−73 QE65及びGDA4 WHEAT P04724−84−100 QE92の準最適断片である。上記エピトープは適度に生物活性であるにすぎない(ブランクを差し引いた後ではA−グリアジン57−73 QE65より約1/20活性)。
【0181】
A−グリアジン57−73 QE65はセリアック病において他の公知のT細胞エピトープよりも有効性がある。配列決定されたグリアジン遺伝子の間でA−グリアジン57−73(配列PQLPY(配列番号:12)を含む)の16の多型が存在し、それらの生物活性を次で査定する。
実施例7
末梢血中でのグリアジン−及びA−グリアジン57−73 QE65の比較
セリアック病におけるグリアジンに対する全T細胞応答に対しての、優勢なエピトープA−グリアジン57−73 QE65の相対的な寄与は重大な問題である。ペプシン−トリプシン及びキモトリプシンにより消化されたグリアジンが、セリアック病におけるT細胞系列及びクローンの分化のための抗原として伝統的に使用されてきた。しかしながら、これらのプロテアーゼは特定のペプチドエピトープを分断するかもしれないと言える。事実、組換えα9−グリアジンのキモトリプシン消化はペプチドQLQPFPQPELPY(配列番号:13)を生じるが、最適エピトープ配列QLQPFPQPELPYPQPQS(配列番号:2)の末端削除体である(上を参照)。トランスグルタミナーゼ処理は、実質上、グリアジン特異的T細胞クローン及び系列の増殖アッセイにおいて、キモトリプシン消化されたグリアジンの能力を増加させる。よって、トランスグルタミナーゼ処理されたキモトリプシンで消化されたグリアジン(tTGグリアジン)は理想的な抗原ではないかもしれないが、この混合物に対する応答はグリアジンに特異的な末梢血リンパ球の「全」数に近似するかもしれない。ELISpotアッセイにおけるA−グリアジン57−73 QE65及びtTGグリアジンに対する応答の比較は、セリアック病におけるグリアジンに対する全免疫応答へのこの優勢なエピトープの寄与の指標を提供し、またエピトープ拡散の基準でもある。
【0182】
4人のセリアック病被験者においてグルテンチャレンジを開始して6日目又は7日目に回収されたPBMCを、キモトリプシン消化されたグリアジン+/−tTG処理を用いた用量応答研究において査定し、そして最適濃度のA−グリアジン57−73 QE65(25mcg/ml)に対するELISpot応答と比較した。グリアジンのtTG処理はELISpotにおいて約10倍PBMC応答を増強した(単独で査定した場合にtTGはブランクと同等であった)(
図13a−c参照)。研究した4人のセリアック病被験者において、A−グリアジン57−73 QE65(25mcg/ml)はtTGグリアジン(500mcg/ml)の14から115%の間の応答を誘導し、そしてA−グリアジン57−73 QE65に対する応答が大きければ大きいほど、tTGグリアジン応答を表した比率が大きくなった。
【0183】
相対的に限られたデータから、A−グリアジン57−73 QE65応答が幾つかの被験者においてtTGグリアジンと同等であることが示唆される。より進化した抗−グリアジンT細胞応答に関連したエピトープ拡散は、幾つかの個体において末梢血の「全」応答へのA−グリアジン57−73 QE65の僅かな寄与の説明となるかもしれない。エピトープ拡散はさほど厳しくないグルテンフリーダイエットを受けた個体において保持されるかもしれない。
実施例8
セリアック病において生物活性なグリアジンペプチドの定義:A−グリアジン57−73の多型
A−グリアジンの全配列にわたるオーバーラップする15マーのペプチドを査定することにより、セリアック病の免疫上優勢な配列を同定した。A−グリアジンは最初に全配列を決定されたアルファグリアジン蛋白質及び遺伝子であったが、コムギにおいて約30−50の関連するアルファグリアジン蛋白質のひとつである。蛋白質データベースSwiss−Prot及びTREMBLを検索することにより、25の別々のアルファ−グリアジン遺伝子が同定され、さらに8つのアルファグリアジンを記述した。これら25のアルファグリアジンに含まれたのは、A−グリアジン57−73に相当する16の異なる多型である(表7参照)。
【0184】
トランスグルタミナーゼによるインビトロにおける処理、並びに10位において置換されたグルタミン酸による処理後、未修飾形態でのこれらの16の多型に相当する合成ペプチドを、通常のグルテンフリーダイエット後の、インターフェロンガンマELISpotアッセイにおけるグルテンチャレンジの6日又は7日後に、セリアック病の被験者からのPBMCを用いて査定した。グルタミン酸置換したペプチドを3つの濃度において(2.5、25及び250mcg/ml)査定し、未修飾のペプチド及びトランスグルタミナーゼ処理されたペプチドを25mcg/mlの濃度のみにて査定した。生物活性は、個々の被験者においてA−グリアジン57−73 QE65 25mcg/mlに付随した応答の%として表現した(n=4)(
図14参照)。
「野生型」ペプチドの生物活性はトランスグルタミナーゼ処理により実質増加した(>5倍)。野生型ペプチドのトランスグルタミナーゼ処理は10位においてグルタミン酸により置換された同じペプチドの生物活性と同ような生物活性をもたらした。5つのグルタミン酸置換ペプチド(B,C,K,L,M)の生物活性はA−グリアジン57−73 QE65の>70%であったが、A−グリアジン57−73 QE65よりも顕著に高い生物活性のものはなかった。2.5及び250mcg/mlの濃度においてグルタミン酸置換されたペプチドに対するPBMC応答は25mcg/mlにおけるのと同等であった。6つのグルタミン酸置換グリアジンペプチド(H,I,J,N,O,P)は、A−グリアジン57−73 QE65の生物活性の<15%であった。他のペプチドは生物活性において中間であった。
【0185】
少なくとも6つのグリアジン由来のペプチドがトランスグルタミナーゼによる修飾語にA−グリアジン57−73 QE65に対する有効性が均等である。相対的に非生物活性のA−グリアジン57−73 QE65の多型も存在する。これらのデータは、トリチカムエステビウム、トリチカムウアルツ、トリチカムスペルタの幾つかのグリアジン由来のペプチドのトランスグルタミナーゼ修飾がセリアック病において免疫上優勢なT細胞エピトープを生成できるかもしれないことを示す。
【0186】
非−セリアック病−毒性コムギを生成するコムギの遺伝子修飾は、複数のグリアジン遺伝子の除去又は修飾を必要とするかもしれない。A−グリアジン57−73の変更されたペプチドリガンドアンタゴニストを定義する配列を取り込んだグリアジン又は他の蛋白質又はペプチドを含むコムギの生産は、セリアック病において「非毒性」よりむしろ治療用である遺伝学上修飾されたコムギを生成するための別の戦略である。
実施例9
コアエピトープ配列の定義:
N−末端又はC−末端からのA−グリアジン56−75の末端削除に相当するペプチドの比較は、T細胞エピトープのコア配列がPELPY(A−グリアジン64−68)であることを示した。非アゴニスト及びアンタゴニストを定義する試みは、その生物活性に実質貢献する残基において置換されたA−グリアジンのバリアントに焦点を注ぐことになる。
【0187】
残基57から73を置換したアラニン(
図15)又はリジン(
図16)を有するA−グリアジン57−73 QE65に相当するペプチドを、3日間のグルテンチャレンジ開始から6日後にセリアック病のボランティアからの末梢血単核細胞(PBMC)を用いたIFNガンマELISPOTにおいて比較した(n=8)。(BLはブランク、EはA−グリアジン57−73 QE65:QLQPFPQPELPYPQPQS(配列番号:2))。
【0188】
A−グリアジン60−70 QE65(PFPQPELPYPQ(配列番号:14)に相当する残基はA−グリアジン57−73 QE65のにおいて生物活性に実質貢献することを見いだした。60−70位において置換されたA−グリアジン57−73 QE65のバリアントは2段階の手法により査定する。最初に、対照的な特性を有する、10の異なるアミノ酸を用いて60−70位において置換されたA−グリアジン57−73 QE65を査定した。A−グリアジン57−73 QE65のバリアントの第2群(全ての他の天然に生じるアミノ酸により置換されているが、修飾に敏感であると証明された位置のシステインを除く)を第2ラウンドにおいて査定した。
実施例10
A−グリアジン57−73 QE65の置換されたバリアントのアゴニスト活性
A−グリアジン60−70 QE65は、A−グリアジンにおいて優勢なT細胞エピトープのコア配列である。このエピトープのアンタゴニスト及び非アゴニストペプチドバリアントは、このコア配列の修飾により生成されるらしい。最初に、対照的な特性を有する、10の異なるアミノ酸を用いて60−70位において置換されたA−グリアジン57−73 QE65を、3日間のグルテンチャレンジ開始から6日後にセリアック病の被験者からのPBMCを用いたIFNガンマELISPOTにおいて査定する。A−グリアジン57−73 QE65のバリアントの第2群(システイン以外、全ての他の天然に生じるアミノ酸により置換されている)も第2ラウンドにおいて査定した。両群のペプチド(全て50mcg/mlにおいて、二重)を8人の被験者からのPBMCを用いて査定して、未修飾のペプチドと比較した(アッセイあたり20反復)。様々な研究が、このアッセイにおけるA−グリアジン57−73 QE65の最適な濃度が10から100mcg/mlの間であることを示す。
【0189】
結果を、スポット形成細胞(95%コンフルエントの間隔)の平均応答として、個々の個体の%A−G 57−73 QE65平均応答として表現する。対になっていないt−試験を使用することにより、修飾されたペプチドのELISPOT応答をA−G 57−73 QE65と比較する。スーパー−アゴニストを、p<0.01の有意性のレベルにおいてA−G 57−73 QE65よりも高い応答を有するものとして定義し;部分アゴニストはp<0.01の有意性のレベルにおいてA−G 57−73 QE65よりも低い応答を有するものとして定義し、そして非アゴニストはブランク(ペプチド無しのバッファー)と顕著に異ならないものと定義した。A−G 57−73 QE65のアゴニスト活性の30%又はそれ未満のアゴニスト活性を有するペプチドは、アンタゴニスト活性を評価するための「適切な」部分アンタゴニスト又は非アンタゴニストと考えた(表8及び
図17−27参照)。
【0190】
PBMCのA−グリアジン57−73 QE65に対するIFNガンマELISPOT応答は分子レベルにおいて特異性が高い。64位のプロリン(P64)、65位のグルタミン酸(E65)及び66位のロイシン(L66)、及び程度は劣るがQ63,P67,Y68及びP69が修飾に対して特に感受性である。Y61及びY70の置換は共に親ペプチドより30%高い生物活性のスーパー−アゴニストを生じ、おそらくは、HLA−DQ2への結合を増強するためであるが、何故ならば、このHLA分子のモチーフが1位及び9位の巨大な疎水性残基に関する選択性を示すからである。18の非アゴニストペプチ
ドを同定した。バリアントの生物活性(50mcg/ml):P65,K64,K65及びY65(生物活性7−8%)はブランク(7%)と同等であった。全部で、A−グリアジン57−73 QE65の57の変異バリアントがA−グリアジン57−73 QE65の30%又はそれ未満の生物活性であった。
【0191】
優勢なエピトープ、A−グリアジン57−73 QE65に対する末梢血リンパ球(PBL)T細胞応答の分子特異性は、HLA−DQ2+セリアック病被験者の間で一貫して再現性があり、そして上記7アミノ酸の中の限定された数のアミノ酸に特異性が高い。A−グリアジン57−73 QE65の特定の単一アミノ酸バリアントは、全てのHLA−DQ2+セリアック病被験者において一貫して非アゴニストである。
実施例11
置換されたバリアントのアンタゴニスト活性
HLA−DQ2+被験者におけるA−グリアジン57−73 QE65に対するPBL
T細胞応答の均質性は、PBL T細胞応答がポリクローナル又はオリゴクローナルであるらしいとしても、PBMCにおいてか又はエクスビボにおいて拮抗可能な変更されたペプチドリガンド(APL)が存在するかもしれないことを示唆する。APLアンタゴニストは一般に弱いアゴニストである。30%又はそれ未満のアゴニスト活性のA−グリアジン57−73 QE65の57の単一アミノ酸置換バリアントが同定されて、APLアンタゴニストとしての適切な候補である。さらに、A−グリアジン57−73 QE65の特定の弱い生物活性の天然に生じる多型も同定されて(以下参照)、「天然に生じる」APLアンタゴニストかもしれない。また、MHCへの結合が抗原特異的T細胞免疫とも拮抗するかもしれないことが示唆された。よって、グルテンチャレンジ後にセリアックPBMCにおいてIFNガンマ応答を誘導しないがHLA−DQ2に結合することが知られている非グリアジンペプチドは、A−グリアジン57−73 QE65により誘導されるT細胞応答を低下させることができるかもしれない。HLA−DQ2へ貪欲に結合する2つのペプチドはHLAクラス1α46−60(HLA 1a)(PRAPWIEQEGPEYW(配列番号:15))及びチロイドペルオキシダーゼ(tp)632−645Y(IDVWLGGLLAENFLPY(配列番号:16))である。
【0192】
3日間のグルテンチャレンジを開始後のセリアックボランティア6人からのPBMCを用いたIFNガンマELISPOTにおけるペプチド(50μg/ml)又はバッファー及びA−グリアジン57−73 QE65(10μg/ml)の同時添加(n=5)。結果は、ペプチドプラスA−G 57−73 QE65による応答として(二重の平均)、バッファープラスA−G 57−73 QE65による応答(20反復の平均)の%応答として表した(表9参照)。
【0193】
A−グリアジン57−73 QE65の4つの単一アミノ酸置換バリアントは、A−グリアジン57−73 QE65に対するインターフェロンガンマPBMC ELISPOT応答(p<0.01)を25%から28%低下させ、別の13のペプチドバリアントはELISPOT応答を18%から24%低下させた(p<0.06)。HLA−DQ2バインダー、チロイドペプチド(tp)632−645Yは、A−グリアジン57−73 QE65に対するPBMCインターフェロンガンマ応答を31%低下させる(p<0.0001)が、他のHLA−DQ2バインダー、HLAクラス1a46−60は応答を変化させない(表9及び10参照)。A−グリアジン57−73のトランスグルタミナーゼ修飾された多型に相当するペプチド、SwissProt受け入れ番号P04725 82−98 QE90(PQPQPFPPELPYPQPQS(配列番号:17))は、A−グリアジン57−73 QE65に対する応答を19%低下させる(p<0.009)(表11参照)。
【0194】
ELISPOTアッセイにおいてのA−グリアジン57−73 QE65に対するPB
MCのインターフェロンガンマ応答は、特定の単一アミノ酸A−グリアジン57−73 QE65バリアント、A−グリアジン57−73 QE65の多型、及び5倍過剰にHLA−DQ2を結合することが公知の非関連ペプチドの同時投与により低下する。これらの発見は、A−グリアジン57−73 QE65の変更されたペプチドリガンドアンタゴニストが存在することを示唆する。仮想上のAPLのみならず、HLA−DQ2を結合する特定のペプチドも、A−グリアジン57−73 QE65に対するPBL T細胞応答を有効に低下させる。
【0195】
これらの発見は、HLA−DQ2+セリアック病において優勢なA−グリアジンエピトープに対するT細胞応答を破壊する2つの戦略を支持する。
【0196】
1.「伝統的な」ペプチド薬剤としての使用のため又はコムギにおけるグリアジン遺伝子の特異的遺伝的修飾のための、一つの位置より多い位置において(64−67)アミノ酸を置換することによる、APLアンタゴニストの最適化。
【0197】
2.HLA−DQ2に付随してA−グリアジン57−73 QE65の提示を競合阻害するための、高親和性HLA−DQ2結合ペプチドの使用。
【0198】
これらの2つのアプローチは相互に両立可能かもしれない。F61及びQ70をチロシン残基で置き換えることにより、スーパー−アゴニストを生成した。これらのスーパー−アゴニストはT細胞受容体との増強された接触よりむしろHLA−DQ2への結合の改善によりもたらされたらしい。これらの修飾を適度に有効なAPLアンタゴニストを生成する他の置換と組み合わせることにより、置換されたA−グリアジン57−73 QE65バリアントの阻害効果を実質上増強するかもしれない。
実施例12
PBMC及びA−グリアジン57−73 QE65及びP04724 84−100 QE92をセリアック病の診断法として使用したインターフェロンガンマELISpotの開発:新たに診断されたセリアック病における免疫応答の定義
インターフェロン番号ELISpotにおいて測定されたPBMC中の優勢なA−グリアジンT細胞エピトープに対する応答性の誘導を、長期間の厳格なグルテンフリーダイエット(GFD)を受けたほとんど全てのDQ2+セリアック病被験者においてはグルテンチャレンジに続いて行ったが、厳格なGFDを受けて4週間後の健康なDQ2+被験者においては続いて行わなかった。A−グリアジン57−73 QE65応答はグルテンチャレンジ前のセリアック病被験者のPBMCにおいて測定不可能であり、そしてパイロットデータはこれらの応答が未処理の被験者のPBMCにおいて測定できなかったことを示唆した。これらのデータは、セリアック病において、A−グリアジン57−73 QE65に対する免疫応答性が抗原排除(GFD)後に復元することを示唆する。ELISpotアッセイ及びPBMCを用いて診断試験が開発されるとしたら、グルテンチャレンジが
血液中のA−グリアジン57−73 QE65及び他の免疫反応性グリアジンペプチドに対する応答を誘導できる前に必要とされるGFDの期間を定義することが望まれる。
【0199】
新たに診断されたDQ2+セリアック病被験者を、胃腸学の外来患者サービスから補充した。PBMCを調製して、被験者がGFDを始める前及びGFDを初めて1週間又は2週間後に、インターフェロンガンマELISpotアッセイにおいて試験した。さらに、グルテンチャレンジ(3日間は4スライスの標準の白パンを摂取、200g/日)を、GFD開始の1又2週間後に実施した。PBMCを調製し、そしてグルテンチャレンジを開始して6日後にアッセイした。A−グリアジン57−73 QE65(A),P04724 84−100 QE92(B)(単独及び化合して)及びA−グリアジン57−73
QP65(P65)(非生物活性バリアント、上記参照)(全て25mcg/ml)を査定した。
【0200】
1人の患者を除いて皆、新たに診断されたセリアック病患者はDQ2+であった(一人はDQ8+であった)(n=11)。未処置か又はGFDの1又は2週間後の新たに診断されたセリアック病患者からのPBMCは、A−グリアジン57−73 QE65及びP04724 84−100 QE92(単独及び化合して)に対する応答を示さずブランク又は及びA−グリアジン57−73 QP65と顕著な差異はなかった(n=9)(
図28参照)。たった1週間しかGFDを受けなかったセリアック病患者におけるグルテンチャレンジは、A−グリアジン57−73 QE65及びP04724 84−100 QE92(単独及び化合して)に対する応答を実質上増強しなかった。しかし、GFDを開始して2週間後のグルテンチャレンジは、A−グリアジン57−73 QE65及びP04724 84−100 QE92(単独及び化合して)に対する応答を誘導し、非生物活性バリアントA−グリアジン57−73 QP65及びブランクより顕著に高かった。グルテンチャレンジ2週間後のこれらの応答は価値のあることであるが、GFD開始後>2カ月の被験者よりは低いらしい。A−グリアジン57−73 QE65単独に対する応答は、P04724 84−100 QE92単独に対する応答又はA−グリアジン57−73 QE65と混合した場合の応答と等しいか又はより大きかった。被験者のだれもがグルテンチャレンジの苦痛の兆候を経験しなかった。
【0201】
A−グリアジンに対する免疫応答性(グルテンチャレンジ後にPBMC中で測定)はGFDを開始して2週間後に部分的に回復したことから、この優勢なT細胞エピトープに対する「免疫非応答性」は、未処置のセリアック病患者において且つGFD開始後の少なくとも1週間は優勢であることを示唆する。グルテンチャレンジ及びELISpotアッセイにおけるA−グリアジン57−73 QE65に対する応答の測定を用いたセリアック病の診断試験のタイミングは、GFDを開始して少なくとも2週間後である。
【0202】
A−グリアジン57−73 QE65に特異的なインターフェロンガンマ分泌T細胞は未処置のセリアック病患者においては末梢血中にて測定できず、GFDの少なくとも2週間後のグルテンチャレンジにより誘導することができる(抗原排除)。よって、この方法論を用いた診断試験のタイミングは非常に重大であり、そしてその最適化にはさらなる研究が必要である。これらの発見は、抗原排除により逆転した優勢なエピトープ、A−グリアジン57−73 QE65に特異的なT細胞の機能アネルギーと一致する。この現象は、ヒト疾患において以前には証明されておらず、T細胞アネルギーがセリアック病においてはペプチド治療により誘導可能かもしれないという可能性を支持する。
実施例13
コムギグリアジンT細胞エピトープの包括的マッピング
抗原チャレンジは末梢血中で抗原特異的T細胞を誘導する。セリアック病においては、グルテンがこの免疫媒介性疾患を維持する抗原である。グルテンフリーダイエットで処置されたセリアック病のグルテンチャレンジは末梢血中のグルテン特異的T細胞の出現を導き、グルテンT細胞エピトープの分子特異性の決定を可能にさせる。上記のとおり、我々はモデルグルテン蛋白質中の単一の優勢なエピトープ、A−グリアジン(Q65において脱アミド化された57−73)を同定した。この実施例においては、セリアック病患者のグルテンチャレンジを用いて、GenBank中の111エントリーに由来する各公知のコムギグリアジン蛋白質中の全ての有力な12のアミノ酸配列を試験した。全部で、652の20マーペプチドをHLA−DQ2及びHLA−DQ8関連のセリアック病において試験した。セリアック病において90%を超えて存在する古典的なHLA−DQ2複合体(HLA−DQA1
*05,HLA−DQB1
*02)のセリアック病被験者9人のうちの7人は、末梢血中に誘導可能なA−グリアジン57−73 QE65−及びグリアジン−特異的T細胞応答を有した。A−グリアジン57−73は、HLA−DQ2関連セリアック病において、唯一の重要なα−グルテンT細胞エピトープであり、並びにもっとも有力なグリアジンT細胞エピトープであった。さらに、インターフェロン−γ ELISp
otアッセイにおいてA−グリアジン57−73ほど有効性のある10%から70%の構造上関連したペプチドの5ファミリーほど存在した。これらの新規なT細胞エピトープは、γ−及びω−グリアジンに由来しており、そしてA−グリアジン57−73のコア配列(コア配列:FPQPQLPYP(配列番号:18))、例えばFPQPQQPFP(配列番号:19)及びPQQPQQPFP(配列番号:20)と構造上極めて類似しているが同一ではない共通配列を含んだ。A−グリアジン57−73の相同体はライムギ又はオオムギにおいて見いだされなかったが、他の2つの穀類はセリアック病において毒性であり、γ−及びω−グリアジン中の新たに定義されたT細胞エピトープはライムギ及びオオムギの保存蛋白質において完全に適合した(それぞれ、セカリン(secalins)及びホルデイン(hordeins))。
【0203】
HLA−DQ2に関連しないセリアック病はほとんど常にHLA−DQ8と関連していた。7人のHLA−DQ8+セリアック病被験者のだれもが、彼らが完全なHLA−DQ2複合体も所有していないなら、誘導可能なA−グリアジン57−73−特異的T細胞応答をグルテンチャレンジ後に有さなかった。完全なHLA−DQ2複合体を有さない4人のHLA−DQ8+セリアック病被験者のうちの2人は、誘導可能なグリアジンペプチド特異的T細胞応答をグルテンチャレンジ後に有した。一人のHLA−DQ8被験者においては、新規な優勢T細胞エピトープが、コア配列LQPQNPSQQQPQ(配列番号:21)を用いて同定された。このペプチドのトランスグルタミナーゼによる脱アミド化バージョンは非脱アミド化ペプチドよりも有効性であった。以前の研究は、トランスグルタミナーゼにより脱アミド化したペプチドが配列LQPENPSQEQPE(配列番号:22)を有するはずであることを示唆したが;この配列を確認するためには、さらなる研究が必要である。1カ月の間グルテンフリーダイエットを受けた健康なHLA−DQ2(10)及びHLA−DQ8(1)の被験者の間で、グリアジンペプチド特異的T細胞応答は不変であり、グルテンチャレンジによりほとんど変わらず、そして、セリアック病の被験者においてグルテンチャレンジにより明らかにされた有効性T細胞エピトープでは決してなかった。結論として、HLA−DQ2関連セリアック病において6より多い重要なT細胞エピトープが存在するらしく、そのうち、A−グリアジン57−73がもっと有効性である。HLA−DQ2−及びHLA−DQ8−関連セリアック病は同じT細胞特異性を共有しない。
【0204】
我々は、グルテンフリーダイエット後のセリアック病の個体の短期間のグルテンチャレンジが末梢血中にてグリアジン特異的T細胞を誘導することを示した。これらのT細胞の頻度は末梢血中で6日目に最大であり、続いて、次の週を通して迅速に弱まる。末梢血のグリアジン特異的T細胞は消化管の粘膜固有層へのホーミングに関連するインテグリンα47を発現する。我々は、原型的なグルテンα−グリアジン蛋白質、A−グリアジンにおいてセリアック病に関連したT細胞エピトープをマップするためにこのヒト抗原−チャレンジデザインを開発した。トランスグルタミナーゼ(tTG)による脱アミド化が有る場合も無い場合も10アミノ酸がオーバーラップする15マーのペプチドを用いて、我々は、末梢血中で誘導されたT細胞が、65位のグルタミン酸が脱アミド化されたひとつのA−グリアジンペプチドの残基57−73を最初に標的化することを証明した。当該エピトープはHLA−DQ2−制限されており、HLA−DQ2のセリアック病との密接な関連と一致する。
【0205】
コムギ、ライムギ、及びオオムギの暴露によりセリアック病は再活性化される。コムギのグルテンのα/β−グリアジン画分はセリアック病においては一致して毒性であり、そしてほとんどの研究はこれらの蛋白質に焦点を合わせてきた。α/β−グリアジンをコードする遺伝子クラスターはコムギ染色体の6C上に位置する。ライムギ又はオオムギにはα/β−グリアジンの相同物がない。しかしながら、コムギのグリアジンサブタイプの3つ全て(α/β、γ、及びω)がセリアック病において毒性である。γ−及びω−グリア
ジン遺伝子はコムギでは染色体1APL上に位置しており、ライムギ及びオオムギのセカリン及びホルデインに相同である。
【0206】
パンコムギ(Triticum aestivum)においては61のα−グリアジンに関して同定された遺伝子が今存在する。α−グルテン配列は密接に相同であるが、A−グリアジンにおいて優勢なエピトープは、α−グリアジン配列においてほとんど多型性の領域に由来する。Andersonら(1997)は、パンコムギ(T.aestivum)中に全部で約150の異なるα−グリアジン遺伝子が存在するが、多くは偽遺伝子であると見積もった。よって、セリアック病に関連するT−細胞のエピトープが公知のα−グリアジン配列中に含まれないことは、ありそうもない。
【0207】
我々の研究は、セリアック病に特異的な有効性のT細胞エピトープとしてA−グリアジン57−73にほとんど同一の、脱アミド化されたα−グリアジンペプチドのグループを同定した。90%を超えるセリアック病患者はHLA−DQ2+であり、これまで、我々はグルテンチャレンジ後のHLA−DQ2+セリアック病被験者のみを査定してきた。しかしながら、HLA−DQ2を発現しないセリアック病患者がほとんど皆HLA−DQ8を有する。よって、他のコムギ、ライムギ及びオオムギグルテン蛋白質中のA−グリアジン57−73及びその相同体が、HLA−DQ2+及びHLA−DQ8+セリアック病の両方においてグルテンチャレンジにより誘導されるT細胞により認識される唯一のT細胞エピトープであるか否かを知ることは非常に不可欠である。これが事実なら、セリアック病のための治療用のペプチドのデザインは、たった一つのペプチドのみしか必要としないかもしれない。
A−グリアジン57−73のT細胞エピトープとしての相同体
A−グリアジン57−73(PQLPY<配列番号:12>)のコア配列をコードする穀物遺伝子に関するSwissProt及びTrembl遺伝子データベースの最初の検索は、α/β−グリアジンを明らかにしただけであった。しかしながら、A−グリアジン57−73 QE65エピトープの我々の初期のマッピング研究は、コア領域(PQLP)中の許容可能な点の置換が限定された数であることを明らかにした(Q65はエピトープ中で実際に脱アミド化されている)。よって、我々は、配列XXXXXXXPQ[ILMP][PST]XXXXXX(配列番号:23)を有するペプチドをコードするSwissProt及びTremblデータベースの中の遺伝子に我々の検索を拡大した。相同体は、γ−グリアジン、グルテニン、ホルデイン及びセカリンの間に同定された(表12参照)。さらなる相同体は、GenBankにおいて3つのω−グリアジンエントリーの可視検索によりω−グリアジン中に同定された。
【0208】
A−グリアジン57−73のこれらの相同体は、tTGによる脱アミド化(又は4つの密接な相同体中のグルタミン酸(QE)−置換されたバリアントの合成)の後に、IFNγELISpotアッセイを用いて、末梢血単核細胞を用いて、セリアック病の被験者においてグルテンチャレンジ後に査定した。ω−グリアジン配列(AAG17702 141−157)は唯一の生物活性ペプチドであり、約半分がA−グリアジン57−73として有効である(表12、及び
図29参照)。よって、優勢なA−グリアジンエピトープの相同体の検索は、γ−グリアジン、セカリン、及びホルデインの毒性に関して考慮することを怠った。
方法
全ての可能性のあるコムギグリアジンT−細胞エピトープにわたるペプチドのセットのデザイン
公知のパンコムギ(Triticum aestivum)のグリアジン遺伝子又は遺伝子断片によりコードされた全ての可能なT細胞エピトープを同定するため(GenBank中の61α/β−,47γ−,及び3ω−グリアジンエントリー)、遺伝子由来の蛋白質配列を、CustalWソフトウエア(MegAlign)を用いてアラインメント
を行い、そして分類することにより系統発生グループ化した(表22参照)。多くのエントリーは、より長い配列の末端削除を表し、そして多くの遺伝子セグメントは、ポリグルタミン繰り返しの長さ又は稀な置換を除いて同一であった。よって、公知のコムギ遺伝子によりコードされる全ての有力な12アミノ酸配列を有理化して(rationalize)652の20マーペプチドのセットに含ませることができた。(シグナルペプチド配列は含まれなかった)。ペプチド配列を表23に掲載する。
包括的エピトープマッピング
4週間グルテンフリーダイエットを受けた健康な対照(HLA−DQ2+ n=10,及びHLA−DQ8+ n=1)、及び長期間のグルテンフリーダイエットを受けたセリアック病の被験者(6人のHLA−DQ2,4人の複合同型接合HLA−DQ2/8、及び3人のHLA−DQ8/X)(表13参照)を、グルテンチャレンジの前及び後の6及び7日目に調査した(標準の白パン50gスライス4切れ−セインズベリーズサンドイッチパン、毎日)。末梢血(7日間にわたり全部で300g)を採血して、末梢血単核細胞(PBMC)をLymphoprep密度勾配により分離した。PBMCを6又は8の20マーペプチド、又はtTGにより脱アミド化されたか又はされていない単一のペプチドのプールと、一晩、インターフェロンガンマ(IFNγ)ELISpotアッセイにおいてインキュベートした。
【0209】
ペプチドはPepsets(Mimotopes Inc.,メルボルン、オーストラリア)において96のバッチ中で合成した。約0.6マイクロモルの各651の20マーを提供した。2つのマーカー20マーペプチドを96の各セットに含ませ(VLQQHNIAHGSSQVLQESTY)−ペプチド161(配列番号:24)、そしてIKDFHVYFRESRDALWKGPG(配列番号:25)を逆相−HPLC及びアミノ酸配列分析により特性決定した。これらのマーカーペプチドの平均純度はそれぞれ50%及び19%であった。ペプチドを最初にアセトニトリル(10%)及びHepes 100mMから10mg/mlに溶解した。
【0210】
IFNγELISpotアッセイのためにPBMCとインキュベートされたプール(又は単独)中の個々のペプチドの最終濃度は20μg/mlであった。ペプチドの5倍濃縮した溶液及び1mMの塩化カルシウムを含むPBS中のプールを分配して、ELISpotアッセイにおいて後に使用されるテンプレートに従い96ウエルプレート中に保存した。モルモット組織tTG(Sigma T5398)との100:32の比における2時間37℃のインキュベーションにより、脱アミド化されたペプチド及びペプチドのプールを調製した。ペプチド溶液を−20℃において保存して、使用前に新たに解凍した。
【0211】
エンドトキシンフリーの水及び2M尿素中のグリアジン(Sigma G3375)(100mg/ml)を10分間ボイルし、室温に冷却し、そしてフィルター(0.2μm)−滅菌されたHCl 0.02M中のペプシン(Sigma P6887)(2mg/ml)又は重炭酸アンモニウム中のキモトリプシン(C3142)(4mg/ml)とインキュベートした。4時間のインキュベーション後に、ペプシン消化されたグリアジンを水酸化ナトリウムにより中和し、そして次にペプシン−消化グリアジン及びキモトリプシン−消化グリアジンの両方を15分間ボイルした。グリアジンを除いたプロテアーゼとの同一のインキュベーションも実施した。サンプルを15 000gにおいて遠心分離し、次に、蛋白質濃度を上清中でBCA法(Pierce,USA)により見積もった。IFNγELISpotアッセイにおける最終的な使用の前に、グリアジン−プロテアーゼのアリコートをtTGと共に比率2500:64μg/mlにてインキュベートした。
【0212】
IFNγELISpotアッセイ(Mabtech,スエーデン)を96−ウエルプレート(MAIP S−45,Millipore)中で、各ウエルが25μlのペプチド溶液及び100μlのPBMC(2−8105/ウエル)を、10%熱不活性化ヒトAB
血清を含むRPMI中に含むように、実施した。脱アミド化されたペプチドプールを一つの96−ウエルELISpotプレート中で査定し、そして第2プレート上で脱アミド化なしのペプチドプール(同一のレイアウト)を0日目及び6日目に査定した。脱アミド化されたペプチドを含むプレート中の全てのウエルがtTGを含んだ(64μg/ml)。各ELISpotプレート中に、ペプチドプールを含む83のウエルが存在し(各ウエル中唯一のプール)、そして「対照」ペプチドのウエルのシリーズ(ペプチドは全て>90%の純度、MS及びHPLCにより特性決定された、Research Genetics):P04722 77−93(QLQPFPQPQLPYPQPQP(配列番号:26)、P04722 77−93 QE85(二重)(QLQPFPQPELPYPQPQP(配列番号:27)、P02863 77−93(QLQPFPQPQLPYSQPQP(配列番号:28)、P02863 77−93 QE85(QLQPFPQPELPYSQPQP(配列番号:29)、及びキモトリプシン消化されたグリアジン(500μg/ml)、ペプシン消化されたグリアジン(500μg/ml)、キモトリプシン(20μg/ml)単独、ペプシン(10μg/ml)単独、及びブランク(PBS+/−tTG)(二重)。
【0213】
展開及び乾燥後に、IFNγELISpotプレートをMAIP自動化スポット形成ELISpotカウンターを用いて査定した。HLA−DQ2の健康被験者及びセリアック病被験者において、IFNγELISpotアッセイにおいてペプチドプールによりスポット形成細胞(sfc)の誘導を、100万PBMCあたりのスポット形成細胞(sfc)マイナスブランクに適用した、一方をつないだ(one−tailed)Wilcoxon Matched−Pairs Signed−Ranks試験(SPSSソフトウエア)を用いて、6日目体0日目(「正味の応答」)にて試験した。インビボグルテンチャレンジによるPBMC中のペプチドプールに対するIFNγ応答の顕著な誘導を、少なくとも10sfc/100万PBMC及び有意性レベルp<0.05の中央値の「正味の応答」として定義した。6日目のペプチドの特定のプールに対する顕著な応答に、同日又は7日目に採られたPBMCを使用して各プール内において個々のペプチドの評価を続けた。
【0214】
個々のペプチドのIFNγELISpotアッセイに関して、生物活性を同じELISpotプレート中で査定されたP04722 77−93 QE85に対する応答のパーセントとして表現した。36万(範囲:0.3−0.72)、PBMCの中央値を用いて、ブランクに対する中央値の応答(PBS単独)はウエルあたり0.2sfc(範囲0−5)であり、そしてウエルあたり陽性対照(P04722 77−93 QE85)76.5(範囲25−383)sfcであった。よって、P04722 77−93 QE65のパーセンテージとして表現されたブランクに対する中央値の応答は0.2%(範囲:0−6.7)であった。P04722 QE85のそれより10%高い平均生物活性を有する個々のペプチドを共通の構造上のモチーフに関して分析した。
結果
健康なHLA−DQ2被験者
1カ月グルテンフリーダイエットを受けた健康なHLA−DQ2+被験者の誰も、グルテンチャレンジの前又は後にA−グリアジン57−73の相同体に対してIFNγELISpot応答を有さなかった。しかしながら、10人の健康な被験者のうち9人において、グルテンチャレンジが、グリアジンのペプシン消化及びキモトリプシン消化の両方に対するIFNγ応答の顕著な増加を伴い、0日目の0−4sfcの中央値/百万から16−29sfcの中央値/百万であった(表14参照)。健康な被験者のグリアジン応答は脱アミド化により影響されなかった(表15参照)。健康な被験者のうち、特定のグリアジンペプチドプールに対するIFNγ応答の、グルテンチャレンジとの一致した誘導はなかった(
図30、及び表16参照)。IFNγELISpot応答は場合によりみられたが、弱く、そして脱アミド化により影響されなかった。プールに対するもっとも強い応答の
多くも0日目には存在しなかった(表17、被験者H2,H8及びH9参照)。4人の健康な被験者はプール50に対して明確な応答を示し、6日目にもっとも強い応答をもった2人は0日目にも応答を有した。両被験者において、プール50に対するチャレンジ後の応答はペプチド390(QQTYPQRPQQPFPQTQQPQQ(配列番号:30))によった。
HLA−DQ2セリアック病被験者
HLA−DQ2+セリアック病被験者におけるグルテンチャレンジの後、P04722
77−93 QE85に対する中央値のIFNγELISPpot応答は0から133sfc/百万の中央値から上がった(表4参照)。6人のセリアック病被験者のうちの一人(C06)はP04722 77−93 QE85(2sfc/百万)に応答せず、そしてグリアジンペプチドプールに弱く応答しただけであった(最大:プール50+tTG
27sfc/百万)。前の研究に一致して、野生型P04722の生物活性はtTGによる脱アミド化により6.5倍上昇した(表15参照)。グリアジン消化に対するインターフェロンガンマ応答はベースラインに存在したが、キモトリプシン−グリアジンに関しては20から92sfcの中央値/百万まで、そしてペプシン−グリアジンに関しては44から176sfcの中央値/百万まで、グルテンチャレンジにより実質上は増加した。グリアジンの脱アミド化は、キモトリプシン−グリアジンに関して3.2倍の中央値、そしてペプシン−グリアジンに関して1.9倍の中央値だけ生物活性を増加させた(表15参照)。(ペプシンによる消化に要求される酸性度はグリアジンの部分脱アミド化をもたらすらしい。)
健康な被験者とは対照的に、グルテンチャレンジは、α−,γ−、及びω−グリアジンを含む83の処理されたプールのうちの22に対してIFNγELISpot応答を誘導した(
図31及び表17参照)。プールの生物活性は被験者間で一致していた(表18参照)。ペプチドプールにより誘導されたIFNγELISpot応答は脱アミド化によりほとんどいつも増加した(表17参照)。だが、脱アミド化によるプールの生物活性の増強は、A−グリアジン57−73の相同体を含むプールに関してさえ、P04722 77−73 QE85ほど顕著ではなかった。これは、Pepsetペプチドが合成又は調製の間に部分的に脱アミド化されていたことを示唆し、例えばPepsetペプチドはトリフルオロ酢酸(TFA)の塩としてTFA溶液からの凍結乾燥後にデリバリーされる。
【0215】
21のもっとも生物活性なプールからの170の個々のtTG脱アミド化ペプチドを別々に査定した。72の脱アミド化ペプチドは均等な濃度においてP04722 77−93 QE85より10%生物活性が高かった(20μg/ml)(表19参照)。5つのもっとも有効なペプチド(P04722 QE85の85−94%の生物活性)は、以前にα−グリアジン相同A−グリアジン57−73として同定された。50の生物活性ペプチドはA−グリアジン57−73と相同でなかったが、構造上関連する配列の6ファミリーに分類できた(表20参照)。各々のペプチドファミリーのもっとも生物活性な配列は:PQQPQQP
QQPFPQPQQPFPW(配列番号:31)(ペプチド626、P04722 QE85の中央値72%生物活性)、QQP
QQPFPQPQQPOLPFPQQ(配列番号:32)(343、34%)、QA
FPQPQQTFPHQPQQQFPQ(配列番号:33)(355、27%)、TQQP
QQPFPQQPQQPFPQTQ(配列番号:34)(396、23%)、
PIQPQQPFPQQPQQPQQPFP(配列番号:35)(625、22%)、PQQSFS
YQQQPFPQQPYPQQ(配列番号:36)(618、18%)(コア配列に下線を引く)であった。これらの配列の全ては、トランスグルタミナーゼによる脱アミド化に感受性であると予測されたグルタミン残基を含む(例えば、QXP,QXPF(配列番号:37),QXX[FY](配列番号:38))(Vader et al 2002参照)。幾つかの生物活性ペプチドは異なるファミリーからの2つのコア配列を含む。
【0216】
異なるT細胞集団が別のコア配列を有するエピトープに応答するという可能性と一致し
て、異なるファミリーからのペプチドの生物活性は付加的らしい。例えば、tTG処理されたプール81の中央値生物活性はP04722 QE85の141%であったが、個々のペプチドの生物活性は:ペプチド631(A−グリアジン57−73の相同体)61%、636(626の相同体)51%、そして635 19%、629 16%、そして634 13%(全て396の相同体)の順位の序列であった。
【0217】
単純化しすぎたかもしれないが、グリアジンペプチドに対する合計のIFNγELISpot応答に対する各「ペプチドファミリー」の貢献をHLA−DQ2+セリアック病被験者において比較した(
図32参照)。従って、グリアジンペプチドに対する合計の応答に対するP04722 77−73 E85の貢献は、1/5と2/3の間であった。
【0218】
インターネットのワールドワイドウエブ、例えば「cbrg.inf.ethz.ch/subsection3_1_5.html」を通してアクセス可能な、ペプチド相同性検索プログラム、WWW PepPepSearchを用いて、及びライムギのセカリンのGenBank配列との直接の比較により、厳密な適合が、オオムギのホルデイン(HOR8)及びライムギセカリン(A23277,CAA26499,AAG35598)中にコア配列:QQPFPQPQQPFP(配列番号:39)及びオオムギホルデイン(HOG1及びHOR8)中にコア配列:QQPFPQQPQQPFP(配列番号:40)に関して厳密な適合が発見され、そしてPIQPQQPFPQQP(配列番号:41)に関して、オオムギホルデイン(HOR8)中に発見された。
HLA−DQ8関連セリアック病
7人のHLA−DQ8+セリアック病被験者をグルテンチャレンジの前と後に研究した。これらのHLA−DQ8+(HLA−DQA0
*0301−3,HLA−DQB0
*0302)被験者のうちの5人も、セリアック病関連HLA−DQ2複合体(DQA0
*05,DQB0
*02)の一方又は両方を有した。両方のセリアック病関連HLA−DQ複合体を有する3人の被験者のうちの2人は、質的及び量的にHLA−DQ2セリアック病被験者と同一であったグリアジンペプチドプール(及びP04722 77−93 QE85を含む個々のペプチド)に対して有効な応答性を有した(
図33及び34、及び表18を参照)。脱アミド化されたペプチドプール74は両HLA−DQ2/8被験者において生物活性であったが、6人のHLA−DQ2/X被験者の一人においてのみであった。プール74のtTGによる前処理は生物活性を3.8倍から22倍増強し、そして3人の応答者におけるtTG処理されたプール74の生物活性は、P04722 77−93 E85の生物活性の78%及び350%の間に等しい。現在、何れのペプチドが被験者C02,C07及びC08においてプール74において生物活性であるかわかっていない。
【0219】
セリアック病に関連したHLA−DQ2対立遺伝子の両方又は一方を欠く4人のHLA−DQ8セリアック病被験者のうちの2人はグリアジンペプチドプールに対して極めて弱いIFNγELISpot応答しか示さなかったが、残りの2人はプロテアーゼ−消化されたグリアジン及び特異的ペプチドプールの両方に応答した。被験者C12(HLA−DQ7/8)は、脱アミド化されたプール1−3に対して激しく応答した(
図35参照)。これらのプールにおける個々のペプチドの評価は、コア配列LQP
QNPSQ
QQP
Q(配列番号:42)を含む一連の密接に関連した生物活性ペプチドを同定した(表20参照)。以前の研究(我々による)は、この配列中の3つのグルタミン残基がtTG媒介脱アミド化に感受性であることを証明した(下線)。WWW PepPepSearchを用いた相同性検索は、コムギα−グリアジンにおいてのみLQPQNPSQQQPQ(配列番号:43)に対して密接な適合を同定した。
【0220】
4人のHLA−DQ8被験者(C11)は、tTG処理されたプール33に対して誘導可能なIFNγELISpot応答を有した(
図36参照)。プール32及び33はtTGによる脱アミド化後に活性な以前に定義されたHLA−DQ8制限されたグリアジンエ
ピトープ(QQYPSG
QGSFQPSQ
QNPQ(配列番号:44))の多型を含む(下線を引かれたGlnは脱アミド化されて生物活性を運ぶ)(van der Wal et al 1998)。現在、何れのペプチドがプール33において被験者C11において生物活性であるか分かっていない。
【0221】
インビボグルテンチャレンジ及びコムギグリアジン中の全ての公知の12アミノ酸配列にわたる652ペプチドのセットを使用した、HLA−DQ2関連セリアック病における包括的T細胞エピトープマッピングは、即ち、公知のα−グリアジンエピトープ、A−グリアジン57−73 QE65の10%の生物活性の少なくとも72のペプチドを同定した。しかしながら、これらの生物活性ペプチドはほんの5つほどの異なるが密接に関連したペプチドファミリーのセットに減らされ得る。ほとんど全てのこれらペプチドは、プロリン、グルタミン、フェニルアラニン、及び/又はチロシンが豊富であり、そして配列PQ(QL)P(FY)P(配列番号:45)を含む。この配列はtTGによる2位のQの脱アミド化を促進させる。A−グリアジン57−68の脱アミド化による類推により(Arentz−Hansen 2000)、tTGによる脱アミド化により広く見いだされたこれらのペプチドの増強された生物活性は、HLA−DQ2に関する結合の親和性の増加よるかもしれない。
【0222】
これらの生物活性グリアジンペプチドの一つより多くをインビボにおいて認識するT細胞の間の交差反応性は起こり得る。しかしながら、関連するペプチドの各セットが別のT細胞集団をインビボにおいて活性化するなら、A−グリアジン57−73 E65に相当するエピトープはもっとも有効であり、そしてグルテンチャレンジの後のグリアジンに対する応答においてIFNγを分泌する末梢血T細胞の少なくとも40%により広く認識される。
【0223】
非グリアジン−ペプチド特異的応答が、HLA−DQ2/X関連のセリアック病におけるものと質的に異なったHLA−DQ2/8セリアック病において見いだされた。しかしながら、HLA−DQ2対立遺伝子の両方を持たないHLA−DQ8+のセリアック病被験者の末梢血T細胞は、A−グリアジン57−73 E65相同体を認識しなかった。2つの異なるエピトープが2つのHLA−DQ8+セリアック病において優勢であった。れらのHLA−DQ8+の個体における優勢なエピトープは以前に同定されていなかった(LQPQNPSQQQPQ(配列番号:46))。
【0224】
本明細書中の教示を仮定すれば、共通に認識されるT細胞エピトープの全てを利用してセリアック病のための免疫治療のデザインが実用的になり、6より少ない異なるペプチドを含むかもしれない。コムギのγ−及びω−グリアジン中のエピトープは、オオムギホルデイン及びライムギセカリン中にも存在する。
実施例14
幾つかのELISpotアッセイを前記のとおりに実施して、以下の結果及び/又は結論を生じた:
PQLPYによる複数のα−グリアジン多型の拡大
A−グリアジン57−73QEの有効なアゴニスト(G01)は、QLQPFPQPELPYPQPQS(G01),PQL−Y−−−−−−−−−−−−−−P(G10),及びPQPQPFL−−−−−−−−−−−−−(G12)を含む。有効性が劣るのは、−−−−−−−−−−−−L−−−−−−−−P(G04),−−−−−−−−−−−−−R−−−−−−−−−−−P(G05),及び−−−−−−−−−−−−S−−−−−P(G06)を含む。有効性がさらに劣るのは、−−−−−−L−−−−−−−−S−−−−−P(G07),−−−−−S−−−−−−−−−−S−−−−−−−−−P(G08)−−−−−−−−−−−−−−−S−−S−−−−−P(G09),及びPQPQPFP−−−−−−−−−−−−−−−−−(G13)を含む。ダッシュは特定の位置にお
けるG01配列との同一性を示す。
グルテンチャレンジは新たに診断されたセリアック病においてたった2週間のグルテンフリーダイエット後にA−グリアジン57−73 QE65 T細胞を含む
追加の分析は、tTG脱アミド化されたグリアジン応答が新たに診断されたセリアック病において2週間後に変化することを示した。他の分析は、脱アミド化されたグリアジン特異的T細胞がCD4
+α
4β
7+HLA−DQ2制限されることを示した。
最適なエピトープ(クローン対グルテンチャレンジ)
「優勢な」エピトープがγIFN ELISpotによりグルテンチャレンジ後に定義される。QLQPFPQPELPYPQPQS(100%ELISpot応答)。腸のT細胞クローンにより定義されたエピトープ:QLQPFPQPELPY(27%),PQPELPYPQPELPY(52%),及びOOLPQPEQPQQSFPEQERPF(9%)。
個々のペプチド配列間の順位
順位はコムギ又はライムギに依存する。コムギに関して、優勢なペプチドは、ペプチド番号89、90及び91を含む(表23における番号を参照)。ライムギに関して、優勢なペプチドは、ペプチド番号368、369、370、371、及び372を含む(表23における番号を参照)。635及び636(表23における番号を参照)を含む幾つかのペプチドは、ライムギ及びコムギの両方において活性を示した。
インビボグルテンチャレンジはT細胞エピトープのヒエラルキーがセリアック病に関して定義されることを可能にする
エピトープのヒエラルキーはHLA−DQ2
+セリアック病の間で一致しているが、HLA−DQ8
+セリアック病に関しては異なる。ヒエラルキーはコムギ穀物が消費されることに依存する。脱アミド化はほとんど全てのグリアジンエピトープを生成する。HLA−DQ2,DQ8及びDR4が脱アミド化されたペプチドを提示する。HLA−DQ2/8−関連のセリアック病は優先的にDQ2−関連グリアジンエピトープを提示する。グリアジンエピトープは、エピトープに基づく治療剤の開発を正当であると理由付けするのに十分制限される。
【0225】
他の分析は以下を示した:HLA−DR3−DQ2(85−95%)及びHLA−DR4−DQ8(5−15%)。
【0226】
他の分析は以下を示した:
【0227】
【表2】
【0228】
被験者12のプール1−3において個々のtTG−脱アミド化されたペプチドの生物活性を測定するために、別の分析を実施した。結果は次のとおりである(配列の番号は表23に掲載されたペプチドを指す):配列8(100%),配列5(85%)、配列6(82%)、配列3(77%)、配列1(67%)、配列2(59%)、配列9(49%)、配列7(49%)、配列10(33%)、配列4(15%)、配列12(8%)、配列11(0%)、配列23(26%)、配列14(18%)、配列15(18%)、配列17(18%)、配列16(13%)、配列14(8%)、配列22(5%)、配列18(3%)、配列19(3%)、配列20(0%)、配列21(0%)。予測された脱アミド化配列はLQPENPSQEQPEである。
PBMCによる個々のELISpot応答(ELISpotリーダーにより測定されたスポット形成細胞)
【0229】
【表3】
【0230】
交差反応性
29人の被験者の652のペプチドからのデータを扱うため、又は特定の応答が真実の陽性のペプチド特異的T細胞応答であるかを決定するため、又はペプチドに対する応答が別の構造上関連するペプチドとの交差反応性によるかを決定するために、特定のペプチド応答の発現を「優勢な」ペプチド応答のパーセンテージとすることができる。或いは、当該発現はペプチド応答間の相関係数としての「遅延(retardness)」とし得るか、又はバイオインフォマティックスにより得る。
追加のエピトープ
代表的な結果は次の通りである:
ペプチドのP04722Eとの組み合わせ(全て20mcg/ml)(n=4)
単独 P04722E+
Pep626 60 135
P04722E 100 110
HLAa 0 85
(P04722Eのパーセントとして表された)
626+tT:PQQPQQPQQPFPQPQQPFPW
04722E:QLQPFPQPELPYPQPQL
ペプチド626のtTG脱アミド化(n=12)
tTGなし=100%
tTG=170%
特定の位置における置換
ペプチド626PQQP[Q1]QP[Q2]QPFPQP[Q3]QPFPVの置換(n=12)
Glu Arg
Q1 95 90
Q2 145 80
Q3 155 10
(野生型ペプチドのパーセントとして表された)
tTG処理された15マーに及ぶペプチド626/627(PQQPQQPQQPFPQPQQPFPWQP)(n=8)
P1−15 5
P2−16 4
P3−17 3
P4−18 38
P5−19 65
P6−20 95
P7−21 65
P8−22 90
(最大の15マー応答のパーセントとして表された)
複数エピトープ:
P04722E:QLQPFPQPQLPYPQPQL
626+tTG:PQQPQQPQQPFPQPQQPFPW
最小エピトープ:QPQQPFPQPQQPFPW
抗−CD4によりコードされたビーズ及び抗インテグリンβ
7によるPBMCの免疫磁気除去はIFNγELISpot応答を除去させたが、抗−CD8によりコードされたビーズ又は抗アルファEインテグリンによるPBMCの免疫磁気除去はそうでなかった。即ち、IFNγを分泌するPBMCはCD4+及びα
4β
7+であり、消化管内の粘膜固有層へのホーミングに関連した。
【0231】
HLA−DQ2に関して異型接合及び同型接合においては、抗−DQ抗体によりブロックされたが抗−DR抗体によりブロックされなかった。これは一つの配列中の複数のエピトープを暗示するかもしれない。
セリアック病のT細胞エピトープ
他の研究者らは、特定の腸T細胞クローンエピトープを特性決定した。例えば、Vader et al.,Gastroenterology 2002,122:1729−37;Arentz−Hansen et al.,Gastroenterology 2002,123:803−809を参照。これらは、T細胞をクローン化するために使用されたインビトロ技術のためにその関係がいくらよく見ても不明であるエピトープの例である。
腸対末梢血クローン
腸:1)腸生検、2)グルテンのペプシン−トリプシン消化に対して生じさせたT細胞クローン、3)全てHLA−DQ2制限される、4)クローンはトランスグルタミナーゼにより脱アミド化されたグリアジンに応答する。
末梢血:グルテンに対して生じさせたT細胞クローンはHLA−DR,DQ及びDP制限される。結果:腸T細胞クローンはセリアック病関連エピトープをマップするのに限定的に使用することができる。
GDA_9コムギ307aa定義アルファ/ベータ−グリアジンMM1前駆体(プロラミ
ン)受け入れ番号P18573−−GenBank(その全体を引用により本明細書に編入する)
腸T細胞クローンエピトープ
腸T細胞クローンエピトープの定義は、例えば、Arentz−Hansen et al.,J Exp Med.2000,191:603−12に見いだすことができる。また、腸T細胞クローンに関するグルテンエピトープも開示されている。脱アミド化されたQLQPFPQPQLPYがエピトープであり、QLQPFPQPELPYの脱アミド化配列もある。HLA−DQ2制限がある。相同性検索は他の生物活性γアルファ−グリアジンがPQPQLPYを単独又は二重に含むことを示す。大多数のT細胞クローンはDQ2−αI:QLQPFPQPELPY DQ2−αII:PQPELPYPQPELPYの何れかに応答する。
優勢なグリアジンT細胞エピトープ
全てトランスグルタミナーゼにより脱アミド化される。
グルテンチャレンジ6日後の末梢血:A−グリアジン57−73:
QLQPFPQPELPYPQPQS
腸T細胞クローン:DQ2−αI:QLQPFPQPELPY DQ2−αII:PQPELPYPQPELPY
腸T細胞クローンエピトープマッピング
【0232】
【表4】
【0233】
末梢血におけるIFNγ−分泌A−グリアジン57−73 QE65−特異的T細胞のグルテン暴露及び誘導
未処理のセリアック病を1、2又は8週間グルテンフリーダイエットさせ、次にグルテン暴露し(3日 パン200g/日)、次にグルテンフリーダイエットをさせた。
【0234】
結果1:グルテンフリーダイエットの期間及びグルテンチャレンジの0日目及び6日目のIFNγELISpot応答:A−グリアジン57−73 QE65(IFNγ特異的スポット/百万PPBMCとして表された結果)
0日目:なし(0)、1週(1)、2週(2)、8週(1)
6日目:なし(0)、1週(4)、2週(28)、8週(48)
結果2:グルテンフリーダイエットの期間及びグルテンチャレンジの0日目及び6日目のIFNγELISpot応答:tTG−グリアジン57−73 QE65(IFNγ特
異的スポット/百万PPBMCとして表された結果)
0日目:なし(45)、1週(62)、2週(5)、8週(5)
6日目:なし(0)、1週(67)、2週(40)、8週(60)
結果3:グルテンフリーダイエットの期間及びグルテンチャレンジの0日目及び6日目のIFNγELISpot応答:A−グリアジン57−73 P65(IFNγ特異的スポット/百万PPBMCとして表された結果)
0日目:なし(1)、1週(2)、2週(1)、8週(1)
6日目:なし(0)、1週(0)、2週(0)、8週(0)
結果4:グルテンフリーダイエットの期間及びグルテンチャレンジの0日目及び6日目のIFNγELISpot応答:PPD(IFNγ特異的スポット/百万PPBMCとして表された結果)
0日目:なし(90)、1週(88)、2週(210)、8週(150)
6日目:なし(0)、1週(100)、2週(210)、8週(100)
結果5:グルテンフリーダイエットの期間及びグルテンチャレンジの0日目及び6日目のIFNγELISpot応答:tTG(IFNγ特異的スポット/百万PPBMCとして表された結果)
0日目:なし(5)、1週(4)、2週(3)、8週(2)
6日目:なし(0)、1週(4)、2週(1)、8週(2)
長期間のグルテンに対するHLA−DQ2セリアック病におけるグルテンチャレンジ
抗グリアジンT細胞応答の特性決定を、末梢血において、3日間のグルテンチャレンジの6−8日後に実施した。
結果1:PBMC 6日目長期間グルテンフリーダイエット(抗HLA−DR及び−DQ抗体と前インキュベーション)(%阻害として表現)
DR−:tTG−グリアジン100mcg/ml(105),A−グリアジン57−73 QE65 50mcg/ml(90),PPD 5mcg/ml(30)
DQ−:tTG−グリアジン 100mcg/ml(5),A−グリアジン57−73
QE65 50mcg/ml(22),PPD 5mcg/ml(78)。
【0235】
結果2:PBMC 6日目長期間グルテンフリーダイエット(%CD8−除去PBMC応答として表現)
B7除去:tTG−グリアジン n=6(7),A−グリアジン57−73 n=9(6),PPD n=8(62)
AE除去:tTG−グリアジン n=6(120),A−グリアジン57−73 ん=9(80)、PPD n=8(110)。
【0236】
CD4除去:tTG−グリアジン n=6(10),A−グリアジン57−73 n=9(9),PPD n=8(10)。
治療用ペプチドは限定ではないが以下を含む
【0237】
【表5】
【0238】
簡単には、経口の抗原チャレンジ後に、末梢血T細胞の特異性が腸のT細胞クローンの特異性を反映する。末梢血においては、腸T細胞クローンのエピトープは、最適なα−グリアジンエピトープであるA−グリアジン57−73 QE65に比較して準最適である。実施例15
以下のとおりのマッピング目的のためにもELISpotアッセイを実施した。
優勢なDQ−8関連エピトープのファインマッピング
【0239】
【表6】
【0240】
優勢なエピトープのファインマッピング(2)
【0241】
【表7】
【0242】
実施例16
IFNγ−ELISpotにおけるグリアジンエピトープの生物活性(25mcg/ml,n=6)(A−グリアジン57−73 QE65応答の%として表された)
DQ2−AII:野生型(WT)(4),WT+tTG(52),Glu−置換された(52)
DQ2−AI:野生型(WT)(2),WT+tTG(22),Glu−置換された(28)
GDA09:野生型(WT)(1),tTG(7),Glu−置換された(8)
A−G31−49:野生型(WT)(2),tTG(3),Glu−置換された(0)A−グリアジン57−73 QE65(G01E)の用量応答(n=8)(G01Eの最大応答の%として表された)
0.025mcg/ml(1),0.05mcg/ml(8),0.1mcg/ml(10),0.25mcg/ml(22),0.5mcg/ml(38)<1mcg/ml(43),2.5mcg/ml(52),5mcg/ml(70),10mcg/ml(81),25mcg/ml(95),50mcg/ml(90),100mcg/ml(85)。
【0243】
単独又はA−グリアジン57−75(G01E)と混合されたグリアジンエピトープに対するIFNγELISpot応答(全て50mcg/ml,tTG−グリアジン100mcg/ml,PPD 5mcg/ml;n=9)(G01E応答の%として表された)
単独:DQ2−A1(20),DQ2−A2(55),オメガG1(50),tTGグリアジン(80)、PPD(220),DQ2バインダー(0)
G01E+:DQ2−A1(90),DQ2−A2(95),オメガG1(100),tTGグリアジン(120)、PPD(280),DQ2バインダー(80)
個々のセリアック病被験者におけるIFNγELISpot応答に対するA−グリアジン57−73 QE65のアラニン及びリジン置換の効果(n=8)
エピトープ配列:QLQPFPQPELPYPQPQS
57−59位及び72−73位におけるアラニンの置換はA−グリアジン57−73 QE65応答の%において、ほとんど又は全く低下を示さなかった。60−62位及び68−71位におけるアラニンの置換はA−グリアジン57−73 QE65応答の%において穏やかな低下を示した。63−67位におけるアラニンの置換はA−グリアジン57−73 QE65応答の%において最大の低下を示した。
個々のセリアック病被験者におけるIFNγELISpot応答に対するA−グリアジン57−73 QE65のリジン置換の効果(n=8)
エピトープ配列:QLQPFPQPELPYPQPQS
57−59位及び71−73位におけるリジンの置換はA−グリアジン57−73 QE65応答の%において、ほとんど又は全く低下を示さなかった。60−61位及び69−70位におけるリジンの置換はA−グリアジン57−73 QE65応答の%において穏やかな低下を示した。62−68位におけるリジンの置換はA−グリアジン57−73
QE65応答の%において最大の低下を示した。
実施例17
表24は、コムギ又はライムギでチャレンジした数人の患者を用いた652のペプチドを試験する分析の結果を示す。
【0244】
【表8】
【0245】
本明細書において引用されたか又は言及されたPCTの公表、合衆国特許、他の特許、定期刊行物、及びあらゆるその他の刊行物はそれらの全体を引用により本明細書に編入する。
【0246】
【表9】
【0247】
【表10】
【0248】
【表11】
【0249】
【表12】
【0250】
【表13】
【0251】
【表14】
【0252】
【表15】
【0253】
【表16】
【0254】
【表17】
【0255】
【表18】
【0256】
【表19】
【0257】
【表20】
【0258】
【表21】
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【表22】
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【表23】
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【表30】
【0268】
【表31】
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【表33】
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【表34】
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