【実施例1】
【0018】
本発明の医療関連データの統合情報処理システムは、前記従来例1,2に係るシステムの問題点を解決するためになされたものであって、本発明のシステムは、医療施設、福祉施設、介護施設等の各医療関連施設へアクセス可能とされたアクセス手段と、アクセス先のシステムから目的とする開示データを取得するデータ取得手段と、取得した各医療関連施設の開示データを統合するデータ統合手段と、その統合したデータをまとめて一元的に表示するデータ表示手段を備えている。
【0019】
アクセス手段は、ネットワーク上でコンピュータ間の電子情報の通信を行うハードウェア及びソフトウェアから構成されるシステムの構成単位であり、複数の医療施設、福祉施設、介護施設等の各医療関連施設の開示データへアクセスする機能を備えている。通常は公共インターネット回線と、インターネットイクスプローラーやクロム、オペラ、ファイヤーフォックスなどの汎用ブラウザを用いる。情報漏洩を予防するために、VPNと呼ばれる暗号化された専用回線やSSLと呼ばれる暗号化通信を用いることが望ましい。
このアクセス手段により、ネットワークへのログイン、開示請求の送信、診療データの受信などを行う。
【0020】
データ取得手段は、受信したデータから目的とする診療データを取得する手段である。ウェブサービスと呼ばれる手法で、XML形式でタグ付けされた診療データが送信されてきた場合は、受診データは、そのまま目的とする診療データである。しかし、ブラウザへの表示プログラムとして送信されてきた場合は、目的とする診療データは、HTMLなどの画面表示プログラムの中に埋め込まれているので、ブラウザでの画面表示はできるが、そのままでは診療データを取得しての二次加工はできない。この場合には、次に述べるコンテンツ抽出手段が必要となる。
【0021】
コンテンツ抽出手段は、ディスプレイに表示させるべくブラウザに送信されてきた表示用プログラムから目的とするコンテンツを抽出する。ネットワークから送信された情報は、ブラウザ(閲覧ソフト)への表示形式情報とコンテンツ情報からなる。ブラウザに表示させるためのソースコードを、表示形式情報とコンテンツ情報に分離すれば、ディスプレイに表示させようとしている診療データを抽出できる。
図9はブラウザがwebページ等の画面をディスプレイに表示させるHTMLのソースコードの一例である。このソースコードには、画面の表示形式を指定するタグで囲まれたプログラムとともに、同様にタグに囲まれたコンテンツの文字コードが配列されており、この文字コードが目的とする診療データを表している。このように、コンテンツ抽出手段は、ブラウザが受信した表示プログラムから、タグ情報を用いて、目的とする診療データのコンテンツを抽出する機能を有している。
【0022】
データ統合手段は、データ取得手段によって取得したデータを一覧表として分かりやすく統合するプログラムである。
このデータ統合手段は、各診療情報開示システムネットワークによって異なる文書のカテゴリーや書式に関して、
図6に示すような、統合形式との形式対応関係を定義する書式対応テーブルを備えており、その書式対応テーブルを参照してデータを統合する機能を備えている。
図6は左欄に各診療情報開示システムネットワークの文書カテゴリーとその細分類であるフィールドが配置され、右欄にはそれに該当(対応)する統合文書の統合文書カテゴリーとその細分類が配置されている。
【0023】
図6では、あるネットワークの各カテゴリーの文書を構成する各々のフィールドが、統合形式では、どの文書カテゴリーの、どのフィールドに対応するかが明確なので、データ取得手段で得られたネットワーク毎に異なる文書カテゴリー、フィールド構成であっても、書式対応テーブルを参照することにより、容易に統合形式での文書カテゴリー、フィールド構成に編成し統合することが出来る。
ここで、統合形式は種々のネットワーク共通の形式を用いることが多いが、必要に応じて、自院の電子カルテの書式を統合形式に指定して書式対応テーブルを準備しておけば、得られた他医療機関の診療データを自院のカルテシステムに変換し、日常使い慣れた自院の電子カルテ形式で表示できる。さらに、必要があれば、得られた診療データを、自院電子カルテデータに統合記録してもよい。
【0024】
データ表示手段は、前記データ統合手段によって統合形式で再編成された診療データを、
図8に示すように、文書カテゴリーごとに時系列表示する。
図8では各文書はアイコン表示されており、其れをクリックすることにより、そのアイコンの内容が表示されるようになっているが、ある文書カテゴリーの内容を、全て時系列で一気に表示してもよい。また、一覧表形式でなく、自院の見慣れた表示形式を用いてもよい。
【0025】
前記アクセス手段、データ取得手段では、ユーザーID、パスワードの入力による開示ネットワークへログイン、診療データを取得したい患者の選択、取得したい文書カテゴリーの選択、表示形式の選択などを、順次手動で行う方法としているが、その都度これらの操作を繰り返すのは面倒である場合、これらの操作手順の全部ないし一部を自動化する手段を備えると、より円滑な診療データの閲覧に有用である。
【0026】
次に本発明の作用を説明する。
診療情報の開示ネットワークを実現するシステムプログラムとしては例えば、NEC社製:商品名「ID-link」、富士通株式会社製:商品名「HumanBridge」が挙げられる。
両者は、開示システムの実装が異っており、互いの互換性は無い。また、地域によってIDの管理主体が異なっており、別の地域のネットワークへのログイン、参照自体は可能であるが、診療データの時系列表示は、あくまで当該ネットワーク内の診療データに限定される。即ち、
図5のX、Y、Zのグループに示すように、地域によって、採用している開示システムプログラムによって、別々の異なる閉鎖的ネットワークを構成している。
【0027】
Xネットワークグループには病院A〜病院C、Yネットワークグループには病院E〜病院G、Zネットワークグループには病院J〜病院Lが属している。
ある患者がこれらのネットワークに属する病院を跨いで受診した場合に、X系ネットワークで受診した記録としては、
図7中段に示すとおり、A病院における記録、B病院における記録、C病院における記録(ここでは記録されていない)が残される。
同様に、Y系、Z系ネットワークのグループで受診した記録は、それぞれ
図7中段に示すとおり、それずれの欄に病院における記録が残される。
なお、
図7中段に示す個別表示は縦軸に医療上の項目、横軸に日付(時間)を設定した患者に関する医療関係の履歴を示すディスプレイ表示画面である。
それぞれのX、Y、Z系ネットワークグループから得られる文書にはA、B、C等のアルファベットで示す欄の記録がなされているが、その他の欄は空白となっている。
これは、前記
図7中段に示す個別表示はネットワーク内の病院で受けた診察等の記録は残されるが、ネットワークを超えて受けて記録は残されないため、患者の一連の医療履歴を把握できないことを示している。
【0028】
そこで、本発明は、
図7中段に示す個別表示から、コンテンツ抽出手段によって、ディスプレイ表示される表示プログラムから診療データを抽出する、或いはウェブサービスによって直接得られた診療データを、統合して表示するシステムを開発したのである。
従来のネットワークは独自のプログラムによって閉鎖的な運用がされているため、それぞれ
図7中段の個別文書の形式で開示データを閲覧することはできても、
図7下段の統合表示を作成することは不可能であった。
図8は
図7下段の統合表示の詳細を示すが、
図7中段の3つの個別表示のアルファベットの記録が集約され、X、Y,Zの各ネットワークの情報が統合されていることを示している。
【0029】
以上、実施例を説明したが、本発明の具体的な構成は前記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、前記実施例ではブラウザを介してディスプレイ表示されるソースコードから抽出する構成としたが、ブラウザという汎用のプログラムを使用しない場合であっても、ディスプレイ表示される画面データからコンテンツを抽出する構成であれば本発明に含まれる。また、HTMLだけでなく、Actionscriptなどのほかの表示記述言語であってもよい。
また、ウェブサービス等の形式でブラウザ表示を介さず直接データのみを送受信する構成としても良い。
また、実装形式が同一で地域ネットワークが異なるのみの場合は、書式は同一であるので、書式対応テーブルは必ずしも必要ではない。
そして、前記実施例ではHTMLのソースコードについて説明したが、例えば、フラッシュを使用したネットワークシステムや、他のプログラムに基づくネットワークシステムであっても、ディスプレイ表示データのソースコードを抽出する構成であれば本発明に含まれる。
さらに、本発明の統合情報処理システムにおいては、操作端末上にリクエスト選択メニューを設定し、そのメニューを選択実行することにより自動的にネットワーク上の各コンピュータの開示システムに対して一括ログインする構成とすることも可能である。