【解決手段】ファミリーシール50は、互いに対向するおもて面50aとうら面50bを有し、第2ハウジングに対向するおもて面から突出して設けられ、ファミリーシール50が正規の向きとは異なる誤った向きでランスハウジング10に組み付けられるのを規制する規制体53と、ファミリーシール50が誤った向きで組み付けられると、規制体53をファミリーシール50の内部に逃がす第1逃げ54,第2逃げ55と、を備える。アウターハウジング60は、ファミリーシールが正規の向きで組み付けられると、規制体53が挿入される認識窓63を備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように凹凸(特許文献1の凹部14,リブ35)の組み合わせをファミリーシールと組み付け相手のハウジングに設けても、以下説明するように、不具合が生ずることがある。
つまり、ファミリーシールは弾性の大きいゴムで作製されているために、誤った向きのままで組み付けられると、凸部がハウジングとの間に挟み込まれてしまい、凸部の周囲が不必要に変形してしまうことがある。また、凹凸の相対的な位置が大きくずれてしまうと、凸部が凹部の中に挿入することができずに、誤った向きで組み付けられるのと同様に挟み込みが生ずる。位置ずれが小さければ、凸部は凹部の中に一応は挿入されるが、凹部の途中までしか凸部が挿入されないために、凸部の周囲が不必要に変形してしまうことがある。以上のように、ファミリーシールに不必要な変形が生じると、所望するシール性能が得られないおそれがある。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、誤った向きで組み付けられる際に、又は、凹凸の位置ずれが生じた際に、ファミリーシールに生じる不必要な変形を抑制できる防水コネクタを提供することを目的とする。
また、本発明は、誤った向きで組み付けられるのを規制する規制体の位置ずれを防止しつつ、誤った向きで組み付けられるのを容易に認識できる防水コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的のもとなされた本発明(第1発明)の防水コネクタは、複数のコンタクトを保持する第1ハウジングと、第1ハウジングに組み付けられ、コンタクトに接続される複数の電線が挿入される複数の電線挿通孔を有し、かつ、各電線挿通孔の内周面が前記電線の外周面に密着することで前記電線との間をシールするファミリーシールと、第1ハウジングと互いに嵌合される第2ハウジングと、を備える。
第1発明のファミリーシールは、互いに対向するおもて面とうら面を有し、第2ハウジングに対向するうら面から突出して設けられ、ファミリーシールが正規の向きとは異なる誤った向きで第1ハウジングに組み付けられるのを規制する第1規制体と、ファミリーシールが誤った向きで組み付けられると、第1規制体をファミリーシールの内部に逃がす逃げ溝と、を備える。
第1発明の第2ハウジングは、ファミリーシールが正規の向きで組み付けられると、第1規制体が挿入される第1規制体受けを備える。
【0007】
第1発明の防水コネクタによると、第1規制体が逃げ溝に逃げることができる。したがって、第1発明の防水コネクタは、ファミリーシールが誤った向きで組み付けられるか、または、第1規制体に位置ずれが生じたとしても、ファミリーシールに生じる不必要な変形を抑制できる。
【0008】
第1発明において、第1規制体受けは、第2ハウジングを貫通して設けられることが好ましい。そうすると、第1規制体が第1規制体受けに挿入されていることを、第2ハウジングを貫通する第1規制体受けを通じて視認することによって、ファミリーシールが正しい向きで組み付けられていることを確認できる。
【0009】
第1発明において、逃げ溝は、ファミリーシールのうら面から所定の深さまで至る、第1規制体の周囲に形成される第1逃げ溝と、ファミリーシールのおもて面から規制体の根元まで形成され、第1規制体の横断面積よりも開口径の大きい第2逃げ溝と、からなることが好ましい。
第1逃げ溝は、主にファミリーシールの平面方向に第1規制体が変位して逃げるのに有効であり、また、第2逃げ溝は、主にファミリーシールの厚さ方向に第1規制体が変位して逃げるのに有効である。したがって、第1逃げ溝と第2逃げ溝の両者を設けることにより、第1規制体を任意の向きに逃がすことができる。
【0010】
第1発明において、第1ハウジングは、ファミリーシールが正規の向きに組み付けられると、第2逃げ溝の内部に所定の間隙を設けて挿入される第2規制体を備える、ことが好ましい。
通常、ハウジングは樹脂で形成されており、ゴム製のファミリーシールに比べて剛性が大きいために、第1ハウジングに第2規制体を設け、第2逃げ溝に挿入すれば、第1規制体の位置ずれを抑制することができる。第2規制体は、所定の間隙を設けて第2逃げ溝に挿入されるので、仮に第1規制体が位置ずれしたとしても、第1規制体がファミリーシールの厚さ方向に逃げる余地が残されているので、第1規制体の位置ずれに対応できる。
【0011】
第1発明において、逃げ溝は、おもて面から第1規制体の内部の所定位置まで至る第3逃げ溝とすることができる。この場合には、第1ハウジングは、ファミリーシールが正規の向きに組み付けられると、第3逃げ溝の内部に実質的に隙間を設けることなく挿入される第3規制体を備えることとする。
この形態によると、第1ハウジングの第3規制体がファミリーシールの第1規制体の内部に至る第3逃げ溝に挿入されることで、ファミリーシールが正しい向きで組み付けられると、第1規制体の位置ずれを抑制することができる。
【0012】
防水コネクタは、規制体(凸部)を、ファミリーシールに設けるのに限らず、ハウジングに設けることもできるが、以下説明するように、本願発明(第2発明)も規制体(凸部)をハウジングに設けることができる。
第2発明の防水コネクタは、複数のコンタクトを保持する第1ハウジングと、第1ハウジングに組み付けられ、コンタクトに接続される複数の電線が挿入される複数の電線挿通孔を有し、かつ、各電線挿通孔の内周面が電線の外周面に密着することで電線との間をシールするファミリーシールと、
第1ハウジングと互いに嵌合され、ファミリーシールと対向するおもて面と、おもて面に対向するうら面とを備える第2ハウジングと、を備える。
第2発明による第2ハウジングは、おもて面から突出して設けられ、ファミリーシールが正規の向きとは異なる誤った向きで第1ハウジングに組み付けられるのを規制する第4規制体と、ファミリーシールが誤った向きで組み付けられると、第4規制体をファミリーシールの内部に逃がす第4逃げ溝と、を備える。
また、第2発明によるファミリーシールは、正規の向きに組み付けられると、第4規制体が挿入される第4規制体受けを備える。
【0013】
第2発明によると、誤った向きで組み付けられるのを規制する規制体を、ファミリーシールに比べて剛性の高いハウジングに設けるので、位置ずれを起し難い。また、ファミリーシールが誤った向きで組み付けられても、剛性の高い規制体がファミリーシールに突き当たるので、認識しやすい。
【0014】
第2発明において、第4逃げ溝は、うら面から第4規制体の根元まで形成され、第4規制体の横断面積よりも開口径を大きくすることが好ましい。そうすれば、第4規制体が第2ハウジングの厚さ方向に容易に変位することができる。
【0015】
第2発明において、ファミリーシールが誤った向きで組み付けられると、第4規制体は、第2ハウジングから破断することで、第4逃げ溝に逃げることができる。
通常、電気コネクタのハウジングは、樹脂で形成されており、塑性を示す。そこで、そのハウジングの塑性を利用して、荷重が加わることにより第4規制体を第2ハウジングから破断させ、かつ、破断した第4規制体を第4逃げ溝に回収することとした。第4逃げ溝は、第2ハウジングのうら面まで至っているので、破断し、第4逃げ溝に回収された第4規制体は、第2ハウジングの外部に取り出すことができる。
【0016】
第2発明において、第1ハウジングは、第5規制体を備えることができる。
第5規制体は、ファミリーシールに対向するおもて面から突出して設けられ、ファミリーシールが正規の向きとは異なる誤った向きで第1ハウジングに組み付けられるのを規制するものである。また、第5規制体は、ファミリーシールが正規の向きに組み付けられると、第4規制体受けに挿入される。
第5規制体は、その先端を王冠型に形成することが好ましい。
【0017】
以上説明した第1発明及び第2発明は、“規制体”に逃げ溝を付随させているが、逃げ溝を設けることなく、本発明は、その課題を解決する第3発明に係る防水コネクタを提供することができる。
第3発明の防水コネクタは、複数のコンタクトを保持する第1ハウジングと、第1ハウジングに組み付けられ、コンタクトに接続される複数の電線が挿入される複数の電線挿通孔を有し、かつ、各電線挿通孔の内周面が前記電線の外周面に密着することで前記電線との間をシールするファミリーシールと、第1ハウジングと互いに嵌合される第2ハウジングと、を備える。
第3発明のファミリーシールは、互いに対向するおもて面とうら面を有し、第2ハウジングに対向するおもて面から突出して設けられ、ファミリーシールが正規の向きとは異なる誤った向きで第1ハウジングに組み付けられるのを規制する、先細りの第6規制体と、を備える。
また、第3発明の第2ハウジングは、ファミリーシールが正規の向きで組み付けられると、第6規制体が挿入される第6規制体受けを備える。
【0018】
第3発明の防水コネクタは、第6規制体が先細りの形状をしており、根元が太いために、位置ずれを起し難いのに加えて、誤った向きで第1ハウジングに組み付けられようとしても、反発力が大きいので、誤った向きであることを認識しやすい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、誤った向きで組み付けられる際に、又は、規制体の位置ずれが生じる際に、ファミリーシールに生じる不必要な変形を抑制できる防水コネクタを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係る防水コネクタの実施形態を詳細に説明する。
以下では、5つの実施形態に区分して説明するが、第1,2,5実施形態は、ファミリーシールに誤組付けを認識するための突起(検知体)が設けられており、第3,4実施形態は、ハウジングの側に検知体が設けられている。
【0022】
〔第1実施形態〕
本実施の形態による防水コネクタ1は、
図1及び
図2に示すように、複数の雌型のコンタクト(図示せず)が収容されるランスハウジング10(第1ハウジング)と、フロントキャビティ20と、リテーナ30と、シールリング40と、ファミリーシール50と、アウターハウジング60(第2ハウジング)と、1対のスライダ70とを備えている。
防水コネクタ1は、ファミリーシール50が誤った向きで組み付けられるのを検知することを前提としつつ、仮に誤った向きで組み付けられたとしても、ファミリーシール50による防水性に与える影響を抑制できる機能を備えている。なお、以下では、ファミリーシール50が正しい向きで組み付けられることを正組付け、誤った向きで組み付けられることを誤組付けということがある。
【0023】
以下、防水コネクタ1の構成を、
図1及び
図2を参照して、要素ごとに説明する。
<ランスハウジング10>
ランスハウジング10は、前後方向に貫通する複数のコンタクト収容キャビティ11を備えている。なお、本実施形態において、
図1におけるx軸方向、y軸方向、及び、z軸方向を、各々、長さ方向、幅方向、及び、前後方向と定義して以下説明する。前後方向については、相手コネクタと嵌合される側(z軸の矢印が示す側)を前と定義する。
各コンタクト収容キャビティ11には、コンタクトが
図1における矢印Aで示す向きに挿入される。そして、各コンタクトは、ランスハウジング10に設けられるハウジングランス14によって一次的に係止される。また、ランスハウジング10の後側には、ファミリーシール50を収容するシール収容空間12が設けられている。ランスハウジング10の長さ方向の両端には、アウターハウジング60をランスハウジング10に係止するための1対のラッチアーム13が設けられている。また、ランスハウジング10には、リテーナ30が組み付けられるリテーナ収容凹部15が設けられている。リテーナ収容凹部15は、シール収容空間12よりも前方に設けられる。
【0024】
ランスハウジング10は、
図4に示すように、ファミリーシール50が正組み付けされると、後述するファミリーシール50の第2逃げ55に挿入される規制体16(第2規制体)を備えることができる。規制体16は、ランスハウジング10の後面から所定の高さだけ突出する円柱状の突起であり、ランスハウジング10と一体的に形成される。
ファミリーシール50が正組付けされると、規制体16は、ファミリーシール50の第2逃げ55に挿入されることで、ファミリーシール50の位置ずれを抑制することができる。また、ファミリーシール50が誤組付けされると、規制体16はファミリーシール50の前面に突き当たることで、誤組付けを検知できる。この点について詳しくは、後述する。
【0025】
ランスハウジング10は、絶縁性の樹脂を射出成形することにより一体的に形成される。以下説明するフロントキャビティ20、リテーナ30、アウターハウジング60も同様に、各々、絶縁性の樹脂を射出成形することにより一体的に形成される。
【0026】
<フロントキャビティ20>
フロントキャビティ20は、ランスハウジング10の前側に組み付けられるよう構成されている。フロントキャビティ20は、ランスハウジング10の前面を覆うとともに、相手側の電気コネクタのコンタクトが挿入される複数の相手コンタクト挿通孔21が前後方向に貫通して形成されている。
【0027】
<リテーナ30>
リテーナ30は、ランスハウジング10に形成されたリテーナ収容凹部15に組み付けられるよう構成され、
図1に示すように、略板状に形成されている。リテーナ30は、ランスハウジング10に設けられたコンタクト収容キャビティ11に対応するように形成された複数のコンタクト挿通孔31を有している。そして、リテーナ30は、コンタクトがコンタクト挿通孔31を貫通してコンタクト収容キャビティ11内に挿入可能となる仮係止位置でランスハウジング10に仮保持され、仮保持の位置よりもさらに押し込まれる本係止位置においてランスハウジング10に固定される。リテーナ30が本係止位置でランスハウジング10に固定されると、コンタクトがリテーナ30により二次的に係止される。
【0028】
<シールリング40>
シールリング40は、ランスハウジング10の外側に密着することで、相手側コネクタと防水コネクタ1が嵌合したときに、相手側コネクタのハウジングとランスハウジング10との間をシールし、嵌合部からランスハウジング10の内部に水が浸入するのを阻止する機能を有する。
シールリング40は、絶縁性のゴムを射出成形することによって形成される。
【0029】
<ファミリーシール50>
ファミリーシール50は、ランスハウジング10に保持されるコンタクトに接続される電線を伝ってランスハウジング10の内部に水が浸入するのを阻止するものである。
ファミリーシール50は、略板状に形成されたゴム製の部材であり、ランスハウジング10の後側に形成されたシール収容空間12内に収容される。そして、ファミリーシール50は、ランスハウジング10のシール収容空間12を形成する外壁部分の内周面に密着するようになっている。ファミリーシール50には、ランスハウジング10に設けられたコンタクト収容キャビティ11に対応する位置に断面円形状の複数の挿通孔51が形成されている。各挿通孔51は、前後方向に貫通している。コンタクト収容キャビティ11内に収容されたコンタクトに接続された電線(図示せず)は、挿通孔51を貫通してアウターハウジング60よりも後方に向けて導出される。各挿通孔51の内周面には、複数の環状シール突起52が形成されており(
図2(c))、これら環状シール突起52は、図示しない電線の外周面に密着し、挿通孔51からランスハウジング10の内部への水の浸入を阻止する。
なお、防水コネクタ1に組み付けられたファミリーシール50において、ランスハウジング10に対向する側の面をおもて面50a、アウターハウジング60に対向する側の面をうら面50bと定義する。ただし、この定義はファミリーシール50が正規の向きに組み付けられていることを前提とする。
【0030】
ファミリーシール50は、誤組付けを検知するための規制体53(第1規制体)を備えている。
規制体53は、ファミリーシール50のうら面50bから所定の高さだけ突出して、ファミリーシール50と一体的に形成されている。規制体53は、挿通孔51が形成されていない周辺の領域に設けられている。
【0031】
ファミリーシール50は、規制体53に付随して、
図2(b),(c)に示すように、第1逃げ54と第2逃げ55(逃げ溝)を備えている。
第1逃げ54(第1逃げ溝)は、軸方向の圧縮により生ずる規制体53の変形を、主にファミリーシール50の平面方向に逃がす機能を備えている。第1逃げ54は、規制体53の周囲に連なり、かつ、うら面50bから所定の深さだけ窪んで形成される環状の空隙からなる。
【0032】
第2逃げ55(第2逃げ溝)は、規制体53に軸方向の圧縮により生ずる変形を、主にファミリーシール50の厚さ方向に逃がす機能を備えている。第2逃げ55は、ファミリーシール50のおもて面50aから規制体53に達する深さだけ窪む円柱状の空隙からなる。第2逃げ55は、規制体53と同軸状に形成されており、その開口径φ
55が規制体53の径φ
53よりも微少量だけ大きく設定されている。なお、本実施形態では、第2逃げ55の開口径φ
55は、第1逃げ54の外径φ
54と同等とされている。
第2逃げ55は、
図4に示すように、ランスハウジング10が規制体16を備える場合であって、ファミリーシール50が正組み付けされるときに、ランスハウジング10の規制体16の挿入を受け入れる機能も有する。
【0033】
第1逃げ54と第2逃げ55を形成することで、規制体53は、ブリッジ56を介してファミリーシール50と接続されている。ブリッジ56は、規制体53の根元53aの周囲にリング状に設けられており、前後方向の寸法である厚さは薄い。したがって、規制体53は、軸線方向に負荷を受けると、ブリッジ56が弾性変形することで、負荷を受けた向きに容易に変位することができる。
【0034】
<アウターハウジング60>
アウターハウジング60は、防水コネクタ1を組み付けた状態で、ランスハウジング10、フロントキャビティ20等を覆うように位置し、ランスハウジング10に設けられたラッチアーム13によってランスハウジング10に係止される。これにより、ファミリーシール50をランスハウジング10に対して前後方向に押え付ける。このアウターハウジング60には、ファミリーシール50に設けられた挿通孔51に対応する位置に複数の挿通孔61が形成された挿通プレート62が設けられている。各挿通孔61は、前後方向に貫通している。各コンタクトに接続された電線は、ファミリーシール50の各挿通孔51及びアウターハウジング60の各挿通孔61を通って後方へ導出される。
【0035】
アウターハウジング60は、挿通プレート62に認識窓63(第1規制体受け)を備えている。認識窓63は、正組付けされたファミリーシール50の規制体53が挿入されることで、アウターハウジング60の後方側から規制体53を視認するために設けられている。認識窓63は、正組付けされたファミリーシール50の規制体53に対応する位置に、挿通プレート62の表裏を貫通して形成されている。
アウターハウジング60の幅方向の両端部には、長さ方向に延びる1対のスライダ収容溝64が形成されている。スライダ収容溝64には、以下説明するスライダ70が挿入される。
【0036】
<スライダ70>
スライダ70は、図示を省略するレバーとともに倍力機構として作用するものであり、レバーを回動するとスライダ70が長さ方向に移動し、これにより、相手側コネクタが嵌合する向きに移動し、また、防水コネクタ1から離間する向きに移動するようになっている。
スライダ70は、
図1に示すように略板状に形成され、アウターハウジング60のスライダ収容溝64内にスライド動作可能に収容されている。各スライダ70の内側の面には、相手側コネクタに設けられたカム突起の引き込み及び押し出しを行うカム溝71が2つずつ設けられている。各スライダ70の後端縁には、レバーのピニオンと噛合うラック部72が形成されている。
【0037】
防水コネクタ1は、以上説明した構成要素の他に、図示を省略するが、アウターハウジング60の各挿通孔61を介して後方へ導出された電線の束を保護するワイヤカバー、ワイヤカバーに対して回動可能に支持されるレバーを備えている。また、防水コネクタ1は、レバーの動作に基づいて、相手側コネクタと嵌合される。
【0038】
<誤組付け及び位置ずれ時の挙動>
ファミリーシール50が正組付けされた防水コネクタ1は、
図2(b)に示すように、アウターハウジング60の認識窓63を通じて視認できる。ファミリーシール50の規制体53の突出する寸法(以下、長さ)を大きくするほど、認識窓63を通じて規制体53を視認し易くなるので、正組付けと誤組付けを識別する精度が上がる。その反面、規制体53が長くなれば、規制体53は認識窓63に対して位置ずれが生じ易くなる。規制体53を含めファミリーシール50が軟質なゴムで形成されているためである。しかし、本実施形態の防水コネクタ1は、第1逃げ54及び第2逃げ55を設けることで、規制体53の位置ずれの問題に対応することができる。第1逃げ54及び第2逃げ55は、ファミリーシール50が誤組付けされたときの対応にも寄与する。以下、誤組付け及び位置ずれによるファミリーシール50の挙動について説明する。
【0039】
<第1のケース:誤組付けによる規制体の変位>
はじめに、
図3を参照して、ファミリーシール50が誤組付けされたときについて説明する。ここで、誤組付けとは、ファミリーシール50とアウターハウジング60が、規制体53と認識窓63が対応しないように組み付けられることを意味している。したがって、ファミリーシール50は正しい向きに組み付けられているが、アウターハウジング60が誤った向きに組み付けられる場合に限らず、この逆も誤組付けに含まれる。
誤組付けにより、
図3に示すように、ファミリーシール50の規制体53は、先端がアウターハウジング60の挿通プレート62の前面に突き当たり、前方に向けて負荷を受ける。規制体53の周囲には第1逃げ54が設けられ、また、規制体53の前方には第2逃げ55が設けられているために、規制体53は、負荷を受けることで前方に向けて変位することができる。このとき、規制体53は、それ自身が軸方向に縮むことができるが、それよりもブリッジ56が弾性変形することが主となって前方に向けて変位する。規制体53は、先端を含む全体が、ファミリーシール50の厚さの範囲内に収まるように変形及び変位する。なお、
図3(b)の白抜き矢印は、負荷及び変形・変位を示している。以下も同様である。
【0040】
規制体53は、ブリッジ56が弾性変形することで、第1逃げ54及び第2逃げ55の中に退避するので、規制体53の周囲のファミリーシール50には弾性変形の影響は及ばないか、及んだとしてもわずかである。したがって、ファミリーシール50は、所期の通りの防水性能を発揮することができる。
【0041】
図3は、誤組付けの例を示しているが、規制体53に位置ずれが生じて、規制体53がアウターハウジング60の認識窓63の中に挿入されずに、規制体53の先端が挿通プレート62の前面に突き当たる場合もある。この場合にも、以上で説明した誤組付けの場合と同様に、ファミリーシール50は、所期の通りの防水性能を発揮することができる。
【0042】
<第2のケース:位置ずれによる規制体の変位(規制体付きランスハウジング)>
次に、規制体53に位置ずれが生じている場合について、
図5を参照して説明する。なお
図5は、規制体16が設けられてランスハウジング10を用いており、かつ、ファミリーシール50が正組付けされていることを前提としている。
アウターハウジング60を装着し始める過程で、位置ずれが生じているために規制体53が認識窓63に挿入されずに、規制体53の先端が挿通プレート62の前面に突き当たることがある。アウターハウジング60とファミリーシール50の間に隙間があるので、
図5(a),(b)に示すように、規制体53は軸線方向に対して倒れる。規制体53の周囲に第1逃げ54が設けられている一方、規制体53は肉厚の薄いブリッジ56で根元53aが支持されているだけなので、規制体53は容易に倒れる。このとき、規制体53は、第1逃げ54に向けて変位している。
【0043】
アウターハウジング60を装着完了の位置まで押し込む。そうすると、アウターハウジング60とファミリーシール50の間に隙間がなくなるので、
図5(c),(d)に示すように、規制体53は、先端が認識窓63の入口付近に係止され、負荷を受ける。しかし、ブリッジ56が弾性変形することで、第1逃げ54及び第2逃げ55の中に退避するので、規制体53の周囲のファミリーシール50には弾性変形の影響は及ばないか、及んだとしてもわずかである。したがって、ファミリーシール50は、所期の通りの防水性能を発揮することができる。なお、第2逃げ55は縮むために、規制体16の周囲の隙間がなくなることもある。
【0044】
図5に示す場合でも、視認性は劣るものの、認識窓63を通じて規制体53の先端を認識することができる。
【0045】
<第3のケース:誤組付けによる規制体の変位(規制体付きランスハウジング)>
次に、
図6を参照して、規制体16が設けられたランスハウジング10を用いる場合に、誤組付けされたときについて説明する。なお、ファミリーシール50は、正組付けに対して、前後方向が逆であるとともに、幅方向にも逆に誤組付けされている。また、
図6は、アウターハウジング60の装着が完了している。
【0046】
ファミリーシール50の規制体53は、
図6(a)に示すように、ランスハウジング10の後面に突き当たることで、後方に変位する。規制体53の根元53aは後方に配置される第2逃げ55に逃げる。したがって、第1のケースと同様に、ファミリーシール50は、所期の通りの防水性能を発揮することができる。
また、アウターハウジング60の認識窓63を覗いても規制体53が視えないので、ファミリーシール50が誤組付けされているであろうことを認識できる。
一方で、
図6(b)に示すように、ランスハウジング10の規制体16は、ファミリーシール50を表面から突き刺さって内部に進入することができる。その結果、ファミリーシール50は、規制体16の周囲において、平面方向に変位するだけなので、当該領域においても防水性能を発揮する場合もある。
【0047】
ここでは、アウターハウジング60の装着が完了していることを前提として、ファミリーシール50が誤組付けされていることを確認できることを述べたが、以下説明するように、これ以前にもファミリーシール50の誤組付けを認識することができる。
ファミリーシール50をランスハウジング10に装着する際に、ランスハウジング10の規制体16がファミリーシール50の前面に突き当たる。したがって、作業者は触覚により誤組付けを認識できるのに加えて、ファミリーシール50をシール収容空間12の奥まで押し込むと、規制体16が前面に突き当たることでその裏側が盛り上がるので視覚的にも認識できる。
仮に、ファミリーシール50を装着する過程で誤組付けを認識できなかったとしても、アウターハウジング60の装着時には、ファミリーシール50の規制体53がランスハウジング10に突き当たるのに加えて、ランスハウジング10の規制体16がファミリーシール50に突き当たる。したがって、アウターハウジング60を介して受ける反発力は、例えば規制体53だけによる反発力に比べて大きくなるので、触覚により誤組付けを認識しやすい。
【0048】
以上説明したように、第1実施形態の防水コネクタ1によると、ファミリーシール50に規制体53を設ける一方、アウターハウジング60に設けた認識窓63から規制体53を視認できるようにしたので、ファミリーシール50の誤組付けを高い精度で認識できる。
仮に、誤組付けを認識できなかった、あるいは、規制体53に位置ずれが生じていたとしても、第1逃げ54及び第2逃げ55を設けることで、規制体53及びブリッジ56の変形及び変位によりファミリーシール50のシール性の低下を最低限に抑えることができる。ここで、規制体53を長くすれば位置ずれを助長することになるが、第1実施形態は、規制体53の位置ずれを許容できるから、規制体53を長くできることになる。規制体53が長ければ、認識窓63を介する規制体53の視認性が向上するので、ファミリーシール50の誤組付けを認識する精度がより高くなる。
【0049】
また、ファミリーシール50の第2逃げ55に挿入される規制体16をランスハウジング10に設けると、規制体16が規制体53の位置ずれを抑制する。これに加えて、規制体16は、規制体53とともに触覚を通じて作業者にファミリーシール50が誤組み付けされることを認識させやすくなる。
【0050】
正組み付けされる場合に、
図4(a)に示すように第2逃げ55の内部に規制体16が隙間なく挿入されてしまうと、位置ずれが生じたときに、規制体53は逃げ場を失ってしまい、第2逃げ55が有効に機能しなくなる。したがって、規制体16は、正組み付けされる場合に、
図4(b)に示すように、規制体53の逃げ場となる隙間が確保されることが好ましい。
【0051】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態を、
図7及び
図8を参照して説明する。
第2実施形態による防水コネクタ101は、ファミリーシール150に規制体153を設けるところは第1実施形態と同じであるが、規制体153の位置ずれを防ぐ構成をランスハウジング110が備えている点で第1実施形態と相違する。以下、第1実施形態との相違点を中心に防水コネクタ101を説明する。なお、第1実施形態と同様の構成部分には、第1実施形態と同じ符号を付している。
【0052】
図7に示すように、防水コネクタ101は、ファミリーシール150に規制体153が形成されている。
規制体153は、ファミリーシール150のうら面50bから所定の高さだけ突出し、ファミリーシール150と一体的に形成されている。
ファミリーシール150は、規制体153の内部まで達する規制体受容キャビティ155(第3逃げ溝)が形成されている。規制体受容キャビティ155は、一端が規制体153の先端で閉塞され、他端はファミリーシール150のおもて面50aに開口している。
【0053】
ランスハウジング110は、規制体116(第3規制体)を備えている。規制体116は、ランスハウジング110の後面から所定の高さだけ突出する円柱状の突起であり、ランスハウジング110と一体的に形成されている。
ファミリーシール150が正組み付けされると、規制体116は規制体受容キャビティ155の中で径方向に隙間なく挿入される。規制体116は規制体153に比べて剛性が大きいので、ファミリーシール150の規制体153は規制体116により位置決めされることになる。したがって、第2実施形態の規制体153は、位置ずれが規制される。
【0054】
<誤組付けの認識>
防水コネクタ101は、以下説明するように、誤組付けを3段階で認識することができる。
<ファミリーシール150の装着時>
図8(a)に示すように、ランスハウジング110にファミリーシール150が誤組付けされそうになると、ランスハウジング110の規制体116がファミリーシール150に突き当たる。したがって、ファミリーシール150をランスハウジング110に対して押し込もうとしても、当該部分が突き出したままであるから、誤組付けであることを容易に認識できる。
【0055】
<アウターハウジング60の装着初期>
仮に
図8(a)の状態のままでアウターハウジング60を装着させようとしても、
図8(b)に示すように、ランスハウジング110の規制体116がファミリーシール150を支持していることになる。したがって、アウターハウジング60を押し込もうとしても、ファミリーシール150から受ける反発力が大きいために、作業者は誤組付けに気付きやすい。
【0056】
<アウターハウジング60の装着完了時>
反発力を無視してアウターハウジング60を装着完了の位置まで押し込んだものとする。
そうすると、
図8(c)に示すように、ランスハウジング110の規制体116がファミリーシール150を突き破り、規制体116はアウターハウジング60の認識窓63に進入する。したがって、防水コネクタ101を組み付ける作業者は、認識窓63を介して規制体116を視認することで、誤組付けを認識することができる。なお、正組付けの場合には、認識窓63から視えるのは、ファミリーシール150の規制体153であるが、ランスハウジング110とファミリーシール150を異なる色で形成しておけば、両者を容易に区別することができる。
一方、ファミリーシール150の規制体153は、潰れて規制体受容キャビティ155の中に入り込む。
【0057】
以上説明したように、第2実施形態の防水コネクタ101によると、誤組付けを、ファミリーシール150の装着時、アウターハウジング60の装着初期及び装着完了時の、3段階で認識する機会があるので、防水コネクタ101は誤組付けの検知精度が高い。
また、防水コネクタ101は、ファミリーシール150の規制体153の位置ずれが生ずるのを規制するので、位置ずれにより規制体153が認識窓63に挿入されないという事態が生じにくい。
【0058】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態を、
図9及び
図10を参照して説明する。
第3実施形態による防水コネクタ201は、アウターハウジング260に規制体263(第4規制体)が設けられるとともに、ファミリーシール250に規制体263を受容する規制体受容キャビティ255(第4規制体受け)が設けられている。以下、第1実施形態との相違点を中心に防水コネクタ201を説明する。なお、第1実施形態と同様の構成部分には、第1実施形態と同じ符号を付している。以下の実施形態も同様である。
【0059】
図9に示すように、アウターハウジング260は、そのおもて面60aから所定の高さだけ突出する規制体263を備えている。規制体263は、ブリッジ266を介して根元263aがアウターハウジング260と一体的に形成されている。アウターハウジング260は、ファミリーシール250よりも剛性の高い樹脂で成形されているので、規制体263もまた、ファミリーシールに一体的に形成される規制体に比べて剛性が高い。
【0060】
アウターハウジング260は、規制体263の根元263aよりも後方側に、認識窓265(第4逃げ溝)を備えている。認識窓265は、ファミリーシール250が誤組付けされたときに、ファミリーシール250を視認する機能を与える。ただし、認識窓265は、アウターハウジング260のうら面60b側は開口しているが、おもて面60a側は規制体263の根元263aにより閉塞されている。
【0061】
ファミリーシール250は、正組み付けされると、アウターハウジング260の規制体263が挿入される規制体受容キャビティ255を備えている。規制体受容キャビティ255は、ファミリーシール250のうら面50b側が開口しているが、おもて面50a側は閉塞されている。
【0062】
<正組付けの認識>
防水コネクタ201は、ファミリーシール250が正組付けされていれば、認識窓265は空隙のままであるので、作業者は内部が空の認識窓265を視ることにより、正組付けを認識できる。
【0063】
<誤組付けの認識>
防水コネクタ201は、以下説明するように、アウターハウジング260を装着する過程において、誤組付けを2段階で認識することができる。なお、以下の説明は、気付かずにファミリーシール250が誤組付けされていることを前提としている。
【0064】
図10(a)に示すように、ファミリーシール250が誤組付けされていると、アウターハウジング260の規制体263に対応する位置には規制体受容キャビティ255が存在しない。したがって、アウターハウジング260を装着しようとすると、規制体263がファミリーシール250のおもて面50aに突き当たるので、作業者は反発力によりファミリーシール250が誤組付けされているであろうことを認識できる。
【0065】
仮に誤組付けに気付かないままで装着完了の位置までアウターハウジング260の押し込みを続けるものとする。そうすると、規制体263をアウターハウジング260に支持している薄肉のブリッジ266は容易に破断してしまい、
図10(b)に示すように、規制体263はアウターハウジング260から離脱する。したがって、認識窓265は、挿通プレート62の表裏を貫通するので、作業者は認識窓265を通じてファミリーシール250のおもて面50aを視ることができる。ファミリーシール250が正組付けされていれば、認識窓265を通じて視えるのは、規制体263の根元263aであるから、作業者はその相違から誤組付けを認識できる。
このように、規制体263の離脱を捉えることによって、または、認識窓265を通じて視える対象によって、ファミリーシール250の誤組付けを認識できる。
【0066】
以上説明したように、第3実施形態の防水コネクタ201によると、誤組付けを、剛性の高い規制体263がファミリーシール250に突き当たる装着初期及び規制体263の装着完了時の、2段階で認識する機会があるので、誤組付けの検知精度が高い。
また、規制体263がファミリーシール250よりも剛性が高いことに加え、規制体263と規制体受容キャビティ255の間のクリアランスを拡くすることにより、規制体263の位置ずれによる不都合は解消される。
【0067】
〔第4実施形態〕
次に、本発明の第4実施形態を、
図11及び
図12を参照して説明する。
第4実施形態による防水コネクタ301は、ファミリーシール350に規制体受容キャビティ355が設けられている点で第3実施形態と同じであるが、ファミリーシール350が正組み付けされると、規制体受容キャビティ355には、アウターハウジング360の規制体363及びランスハウジング310の規制体316(第5規制体)が挿入される。以下、第1,第3実施形態との相違点を中心に防水コネクタ301を説明する。なお、第1,第3実施形態と同様の構成部分には、第1,第3実施形態と同じ符号を付している。
【0068】
図11に示すように、アウターハウジング360は、そのおもて面60aから所定の高さだけ突出する規制体363を備えている。規制体363は、ブリッジ366を介して根元363aがアウターハウジング360と一体的に形成されている。規制体363は、第2実施形態の規制体263に比べて突出高さが低い。
【0069】
ファミリーシール350は、前述したように、2つの規制体363及び規制体316が挿入される規制体受容キャビティ355を備えている。そのめたに、規制体受容キャビティ355はファミリーシール350の表裏を貫通して形成される(
図13(c)も参照)。
【0070】
第3実施形態は、ランスハウジング310にも規制体316が設けられている。規制体316は、ランスハウジング310の後面から所定の高さだけ突出する円柱状の突起であり、ランスハウジング310と一体的に形成されている。
【0071】
ファミリーシール350が正組み付けされると、規制体363と規制体316は規制体受容キャビティ355の中に挿入される。ここでは、規制体363の先端と規制体316の先端の間に隙間を設けない例を示しているが、隙間を設けることもできる。
【0072】
<正組付けの認識>
防水コネクタ301は、ファミリーシール350が正組付けされていれば、認識窓365は空隙のままであるので、空の認識窓365を視ることにより、作業者は正組付けを認識できる。
【0073】
<誤組付けの認識>
防水コネクタ301は、以下説明するように、誤組付けを3段階で認識することができる。
<ファミリーシール350の装着時>
図12(a)に示すように、ランスハウジング310にファミリーシール350が誤組付けされそうになると、ランスハウジング310の規制体316がファミリーシール350に突き当たる。したがって、ファミリーシール350をランスハウジング310に対して押し込もうとしても、当該部分が突き出したままであるから、誤組付けであることを容易に認識できる。
【0074】
<アウターハウジング360の装着初期>
仮に
図12(a)の状態のままでアウターハウジング360を装着させようとしても、
図12(b)に示すように、ファミリーシール350は、ランスハウジング310の規制体316とアウターハウジング360の規制体363により、表裏が挟み込まれ。したがって、アウターハウジング360を強い力で押し込もうとしても、アウターハウジング360から受ける反発力が大きくなるため、作業者は誤組付けに気付きやすい。
【0075】
<アウターハウジング360の装着完了時>
反発力を無視してアウターハウジング360を装着完了の位置まで押し込み続けるものとする。そうすると、規制体363をアウターハウジング360に支持している薄肉のブリッジ366は容易に破断してしまい、
図12(c)に示すように、規制体363はアウターハウジング360から離脱する。したがって、認識窓365は、挿通プレートの表裏を貫通するので、作業者は認識窓365を通じてファミリーシール350のおもて面50aを視ることができる。このように、規制体363の離脱を捉えることによって、または、認識窓365を通じて視える対象によって、ファミリーシール350の誤組付けを認識できる。一方、ファミリーシール350が正組付けされていれば、認識窓365を通じて視えるのは、規制体363の根元363aである。ランスハウジング310の規制体316は、ファミリーシール350を突き破るなどして周囲を押し退けながら前進する。
【0076】
以上説明したように、第4実施形態の防水コネクタ301によると、誤組付けを、ファミリーシール350の装着時、規制体363及び規制体316がファミリーシール350に突き当たる装着初期及び規制体263の装着完了時の、3段階で認識する機会があるので、誤組付けの検知精度が高い。
また、規制体316及び規制体363がファミリーシール250よりも剛性が高いことに加え、規制体316及び規制体363の各々と規制体受容キャビティ355の間のクリアランスを拡くすることにより、規制体316及び規制体363の位置ずれによる不都合は解消される。
【0077】
<変更例>
第4実施形態の変更例を、
図13を参照して説明する。
第4実施形態に対する主要な変更部分は、ランスハウジング310の規制体317である。つまり、規制体316(
図11)が単純な円柱形状からなるのに対して、規制体317は、周囲に薄肉なリング状の頂壁317bを残してその先端に窪み317aを備えることで、先端が王冠型をしている。アウターハウジング360の規制体363は、その先端が窪み317aの中に挿入される。
【0078】
変更例の規制体317は、ファミリーシール350が誤組付けされたときに効果を発揮する。つまり、規制体317は、ファミリーシール350に埋没する際に、頂壁317bが刃物のように機能して、ファミリーシール350を切断しながら進む。頂壁317bの内部には切断されたファミリーシール350の素材が残るので、素材が周囲に逃げる規制体316に比べて、アウターハウジング360から受ける反発力が大きくなるので、誤組付けを認識しやすい。
【0079】
〔第5実施形態〕
次に、本発明の第5実施形態を、
図14を参照して説明する。
第5実施形態による防水コネクタ401は、ファミリーシール450の規制体453(第6規制体)を円錐台形にしている点、及び、第1逃げ54,第2逃げ55に相当する、規制体453に付随する逃げを設けていない点、で第1実施形態と相違するが、それ以外の部分は第1実施形態と同じである。以下、第1実施形態との相違点を中心に防水コネクタ401を説明する。なお、第1実施形態と同様の構成部分には、第1実施形態と同じ符号を付している。
【0080】
規制体453は、円錐台形をなしており、その根元453aの径が太い。したがって、例えば、先端453bと同程度の径の円柱状の規制体であれば倒れてしまうような荷重を受けたとしても、規制体453が倒れることはない。また、根元453aの径が太いので、位置ずれを起し難い。
【0081】
ファミリーシール450をランスハウジング110に装着する際に、ファミリーシール450を誤組付けしそうになったものとする。ところが、規制体453は先端453bから根元453aに向けて径が太くなっているために、剛性が大きい。したがって、誤組付けしたときにファミリーシール450を介して規制体453から受ける反発力が大きいので、誤組付けであることを容易に認識できる。この後に、アウターハウジング60を装着させようとしても、同様である。
位置ずれなくファミリーシール450が装着されると、規制体453は認識窓63(第6規制体)に挿入される。
【0082】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
防水コネクタの構成は任意であり、ファミリーシールを備える防水コネクタに広く適用することができる。
また、以上説明した第1実施形態では、正組付けされるときに、規制体53を受けるのにアウターハウジング60を貫通する認識窓63を設けた。しかし、貫通していなくても、規制体53を受けることができれば、規制体53とともに誤組付けを規制することができるので、本発明における規制体受けは貫通を必須とするものではない。
また、以上説明した第1実施形態では、第1逃げ54と第2逃げ55の二つの逃げ溝を設けたが、逃げ溝としての機能が発揮されるのであれば、必ずしも二つの逃げ溝を設けるのに限定されない。例えば、第2逃げ55だけでも逃げ溝としての機能を発揮しうる。