【解決手段】このガイドワイヤ挿入装置10は、金属管からなり、先端が軸方向に対して斜めにカットされて、人体組織に穿刺可能とされた穿刺部21をなす筒状針20と、筒状針20の基端側に接続され、同筒状針20を所定方向に移動させる操作チューブ30と、操作チューブ30及び筒状針20に挿入されて、筒状針20の穿刺部21の開口から出没可能とされたガイドワイヤ1とを備え、筒状針20の穿刺部21は、その先端側に人体組織に切込み可能な刃面23aが形成され、基端側の内周面は、前記刃面がない構造とされている。
前記筒状針の穿刺部は、刃面を有する刃先部と、少なくとも内周には刃面がない顎部とを有し、前記刃先部は、軸方向から見て外周側に刃面が広がるように斜めにカットされ、前記顎部は、前記刃先部のカット面に対して、側面から見て凹状になるように深くカットされている請求項1記載のガイドワイヤ挿入装置。
前記筒状針及び前記操作チューブの外周には、前記筒状針により人体組織に形成された穿刺孔を拡径させるための、径の異なる複数の拡径用チューブが、径の小さいものを内側にし、径の大きいものを外側にして、多重に配置されている請求項1又は2記載のガイドワイヤ挿入装置。
【背景技術】
【0002】
以前から、胆管、膵管、尿管、気管、血管等の管状器官にガイドワイヤを挿入して、その先端部を所定位置まで移動させ、その後、このガイドワイヤを介してカテーテル等の医療用チューブを挿入し、該チューブを通して、ステントや血管閉塞具を留置したり、造影剤や制癌剤、栄養剤等の薬液を注入したりすることが行われている。
【0003】
ガイドワイヤの先端部を所定位置まで挿入する場合、例えば、内視鏡でガイドワイヤを視認しつつ挿入することが行われているが、例えば、ある管状器官内から体腔を介して別の管状器官内へカテーテルを挿入したい場合など、内視鏡で視認できない箇所にガイドワイヤを挿入することはできない。そのため、そのような場合には、超音波内視鏡を利用して、ガイドワイヤの先端部を所定位置に挿入することが行われている。
【0004】
例えば、
図10〜13には、先端に超音波プローブ2aを有する超音波内視鏡2を利用して、ある管状器官V1(例えば胃・十二指腸)内から、体腔V3(例えば腹腔)を通して、別の管状器官V2(例えば胆管)内にカテーテルを挿入する方法が記載されている。
【0005】
すなわち、超音波内視鏡2を管状器官V1内に挿入し、その先端部を管状器官V1の所定箇所に到達させて(
図10(a)参照)、超音波プローブ2aで穿刺部位を確認し、超音波内視鏡2の図示しないルーメンの先端開口から、筒状針3を収容したチューブ4を挿出すると共に、同チューブ4の先端から筒状針3を突き出して、管状器官V1内からその壁を貫通させて、体腔V3を通して、他の管状器官V2内に挿入し、それぞれの管状器官V1、V2に穿刺孔5を形成する(
図10(b)参照)。なお、筒状針3の基端側には、図示しない可撓性の操作チューブが連結されており、この操作チューブを操作して筒状針3を進退動作させることができるようになっている。
【0006】
次いで、筒状針3の内腔にガイドワイヤ1を挿入し、筒状針3の先端開口からガイドワイヤ1を挿出して、その先端部を管状器官V2内の所定位置に移動させ(
図11(a)参照)、その後、筒状針3及びチューブ4を管状器官V1,V2から引き抜く(
図11(b)参照)。
【0007】
次に、ガイドワイヤ1を介して拡径用チューブ6を管状器官V1,V2に挿入して、穿刺孔5を拡径して(
図12(a)参照)、同拡径用チューブ6を管状器官V1,V2から引き抜き(
図12(b)参照)、その後、拡径用チューブ6よりも大径の拡径用チューブ7を管状器官V1,V2に挿入して、穿刺孔5を更に拡径させる(
図13(a)参照)。
【0008】
こうして穿刺孔5が十分に拡径したら、拡径用チューブ7を引き抜いて、カバードステント9を収容したカテーテル8を、ガイドワイヤ1に沿って管状器官V1,V2に挿入して、その先端部を管状器官V2に配置し(
図13(b)参照)、その後、カテーテル先端からカバードステント9を開放して留置する。こうして、体腔V3を介して離れた管状器官V1とV2とを、カバードステント9で連結することが可能となる。
【0009】
一方、下記特許文献1には、縫合針と、この縫合針をスライド可能に収容するチューブ状部材とを備えた縫合装置が記載されている。前記チューブ状部材は、金属パイプを斜めカットされてなる穿刺部が形成された穿刺筒を有しており、この穿刺筒の先端開口から縫合針が出没するようになっている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、
図1及び
図2を参照して、本発明のガイドワイヤ挿入装置の一実施形態について説明する。
【0021】
図1に示すように、この実施形態のガイドワイヤ挿入装置10は、円筒状の金属管からなり、先端が軸方向に対して斜めにカットされて、人体組織に穿刺可能とされた穿刺部21をなす筒状針20を有している。なお、人体組織とは、例えば、皮膚や、体腔、体腔内に配置された各種臓器(胃や肝臓等)、更に、胆管や、膵管、十二指腸等の管状器官などを意味する。
【0022】
そして、前記穿刺部21は、その先端側に人体組織に切込み可能な刃面23aが形成され、基端側の内周面には、そのような刃面がない構造とされている。
【0023】
具体的には
図1及び
図2に示すように、この実施形態における穿刺部21は、その先端側に人体組織に切込み可能な刃面23aが形成された刃先部23を有していると共に、この刃先部23に隣接した基端側に、少なくとも内周に刃面がない顎部25を有している。
【0024】
図1及び
図2(a)に示すように、前記刃先部23は、筒状針20を斜めにカットした後、軸方向先端側から見た場合に、その外周側に刃面23aが広がるように更に斜めにカットした形状をなしている。すなわち、刃面23aが、軸方向先端側から見て、ハの字状に広がる傾斜面をなしている。
【0025】
一方、
図2(a)に示すように、前記顎部25は、筒状針20を側面から見た場合に、前記刃先部23の刃面23aに対して、緩やかに湾曲した凹状になるように深くカットされた形状をなしている。なお、この実施形態における顎部25には、内周のみならず、その外周にも刃面が形成されていないが、顎部25の外周に刃面を形成してもよい。
【0026】
図2(b)に示すように、前記刃先部23の先端から基端までの軸方向に沿った長さL1は、筒状針20の外径Dの0.3〜1.2倍であることが好ましく、0.4〜1.0倍であることがより好ましい。また、前記顎部25の先端から基端までの軸方向に沿った長さL2(
図2(b)参照)は、筒状針20の外径Dの1.3〜5.0倍であることが好ましく、1.5〜3.0倍であることが好ましい。
【0027】
前記刃先部23の長さL1が、筒状針20の外径Dの0.3倍未満では、刃先部23の軸方向に対する傾斜角度が大きくなって、刃先部23を人体組織に穿刺しにくくなる傾向がある。また、前記刃先部23の長さL1が、筒状針20の外径Dの1.2倍を超えると、刃先部23が長くなるので、ガイドワイヤ1が刃先部23側から出没しやすくなる。一方、前記顎部25の長さL2が、筒状針20の外径Dの1.3倍未満では、顎部25の長さが短いため、ガイドワイヤ1が刃先部23側から出没しやすくなり、5.0倍を超えると、筒状針20の穿刺部21の強度が低下する傾向がある。
【0028】
また、
図2(a)に示すように、筒状針20を側面から見た場合に、前記刃先部23の先端から基端までの半径方向に沿った高さH1が、筒状針20の外径Dの0.3〜0.7倍であることが好ましく、0.4〜0.6倍であることがより好ましい。更に、前記顎部25は、筒状針20を側面から見た場合に、その先端から基端までの半径方向に沿った高さH2(
図2(a)参照)が、筒状針20の外径Dの0.3〜0.7倍であることが好ましく、0.4〜0.6倍であることがより好ましい。
【0029】
前記刃先部23の高さH1が、筒状針20の外径Dの0.3倍未満では、人体組織に穿刺しにくくなる傾向があり、0.7倍を超えると、ガイドワイヤ1が刃先部23側から出没しやすくなる。一方、前記顎部25の高さH2が、筒状針20の外径Dの0.3倍未満の場合、ガイドワイヤ1が刃先部23側から出没しやすくなり、0.7倍を超えると、刃先部23の高さH1が低くなるので、刃先部23が人体組織に穿刺しにくくなると共に、筒状針20の穿刺部21の強度が低下する傾向がある。
【0030】
この実施形態おける筒状針20は、例えば、次のようにして製造することができる。すなわち、まず、円筒状をなした金属管の先端を軸方向に斜めにカットすると共に、その刃先を外周側に刃面23aが広がるように更に斜めにカットする。そして、刃面23aを形成する際に、グラインダーやリューター、砥石、ヤスリ等によって研削することにより、刃先に微小な凹凸が形成されて、人体組織に切り込み可能な刃面23aとなる。
【0031】
一方、刃先部23の基端側から、例えば、ワイヤ放電加工、レーザー加工、エッチング加工等の加工手段によって、側面から見て凹状の顎部25を形成する。ワイヤ放電加工、レーザー加工、エッチング加工等の加工手段によって形成されるカット面は、そのエッジ部分に微小な凹凸を有さない、すなわち刃面を有さない形状となる。その結果、顎部25の内周は、刃面がない構造となる。
【0032】
また、本発明において「刃面がない構造」とは、電子顕微鏡や光学顕微鏡等で視認したときに、微少な凹凸が少ないか、ほとんど存在しない状態となっており、人体組織に対して切込まない(人体組織に食い込まず、引っ掛かりがない状態)構造であることを意味する。
【0033】
なお、上記筒状針20は、円筒状の金属管から形成されているが、例えば、角筒状の金属管等から形成してもよく、特に限定はない。
【0034】
また、上記筒状針20の材質としては、例えば、ステンレス、Ni、W、リン青銅、若しくは、Ni−Ti系、Ni−Ti−X(X=Fe,Cu,V,Co等)、Cu−Al−Ni系、Cu−Zn−X(X=Si,Al,Sn,Fe等)等の形状記憶合金を用いることができる。
【0035】
更に、この筒状針20の外周面は、例えば、サンドブラスト等によって微少な凹凸が形成され、これにより超音波を反射可能となっており、超音波内視鏡下でその存在が確認しやすくなっている。
【0036】
また、このガイドワイヤ挿入装置10は、前記筒状針20の基端側に接続された、操作チューブ30を有しており、前記筒状針20を所定方向に移動させることが可能となっている。
【0037】
更に、同ガイドワイヤ挿入装置10は、前記操作チューブ30及び前記筒状針20に挿入され、同筒状針20の穿刺部21の開口から出没可能とされたガイドワイヤ1を有している。
【0038】
次に、上記構造からなる本発明のガイドワイヤ挿入装置10の使用方法の一例について説明する。
【0039】
すなわち、皮膚や、体腔、各種臓器、胆管等の管状器官などの人体組織に対して、操作チューブ30を介して筒状針20の穿刺部21を押し込むことで、刃先部23の刃面23aが人体組織に切込んで穿刺して、所定径の穿刺孔が形成される。その後、前記穿刺孔を介して、筒状針20が人体組織内を移動し、穿刺部21の刃先部23を人体組織の所定位置まで到達させる。この状態で、ガイドワイヤ1を、操作チューブ30及び筒状針20の内腔を通して、同筒状針20の穿刺部21の開口から挿出させることで、ガイドワイヤ1の先端部を人体組織の所定位置まで移動させることができる。その後、操作チューブ30を手元側に引張ることにより、ガイドワイヤ1に沿って筒状針20を移動させて、人体組織から筒状針20を引き抜くことができる。
【0040】
上記のように、ガイドワイヤ1を操作チューブ30及び筒状針20を通して挿入したり、ガイドワイヤ1に沿って筒状針20を移動させて引き抜くときに、ガイドワイヤ1が筒状針20の穿刺部21の基端側の内周面に摺接することになる。特にこの実施形態では、穿刺部21の顎部25の内周面に摺接しながら出没しやすくなっている。
【0041】
このとき、このガイドワイヤ挿入装置10においては、筒状針20の穿刺部21の基端側の内周面、すなわち、顎部25の内周面に刃がない構造とされているので、ガイドワイヤ1が損傷することを防止することができる。
【0042】
また、この実施形態では、穿刺部21の刃先部23が、軸方向から見て外周側に刃面23aが広がるように斜めにカットされているので(
図2(c)参照)、人体組織に穿刺部21をより穿刺しやすくすることができる。
【0043】
更に、顎部25は、刃先部23の刃面23a対して、側面から見て凹状になるように深くカットされているので(
図2(a)参照)、ガイドワイヤ1を穿刺部21の開口から突出させる際や、操作チューブ30を介して筒状針20をガイドワイヤ1に沿って移動させる際に、顎部25の内周面によって、顎部25側にガイドワイヤ1が誘導されて、顎部25側の開口からガイドワイヤ1が出没しやすくなっており、その結果、ガイドワイヤ1を刃先部23側の刃面内周に摺接させにくくして、ガイドワイヤ1をより損傷しにくくすることができる。また、顎部25の開口を大きくすることができるので、ガイドワイヤ1を顎部25の内周に接触させずに、顎部25の開口から出し入れしやすくなり、摺動抵抗を低減させて、操作性を向上させることができる。
【0044】
図3〜9には、本発明のガイドワイヤ挿入装置の実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0045】
図3及び
図4に示すように、この実施形態のガイドワイヤ挿入装置10aは、前記筒状針20及び前記操作チューブ30の外周に、それらよりも大径の第1拡径用チューブ40が配置され、更にその外周に、該第1拡径用チューブ40よりも大径の第2拡径用チューブ45が配置されており、多重筒状構造をなしている。これらの拡径用チューブ40,50は、筒状針20により人体組織に形成された穿刺孔5(
図5(b)参照)を拡径させるためのものである。
【0046】
また、前記操作チューブ30、第1拡径用チューブ40、及び、第2拡径用チューブ45は、それぞれ軸方向に相対的にスライド可能となるように構成されている。
【0047】
具体的には
図4に示すように、前記操作チューブ30は、その基端側に接続された固定用チューブ30aを有しており、該固定用チューブ30aの外周には、筒状のハンドル50がスライド可能に配置されている。なお、固定用チューブ30aの基端側には、筒状をなすと共に、基端外周にフランジを設けた、抜け止め部材31が装着されている。
【0048】
また、上記ハンドル50の軸方向の途中には、ネジ孔52が形成されており(
図4参照)、このネジ孔52にネジ軸53aを有するストッパ53が螺着されており、同ストッパ53のネジ軸53aを締め付けて、前記固定用チューブ30aの外周を押圧することで、操作チューブ30とハンドル50とがスライドしないように固定されるようになっている。また、前記ハンドル50の先端部には、環状の嵌合凸部54が突設されている(
図4参照)。
【0049】
よって、ストッパ53のネジ軸53aを緩めることで、操作チューブ30とハンドル50とを軸方向に対して相対的にスライドさせることができ、ストッパ53のネジ軸53aを締めることで、操作チューブ30とハンドル50とをスライドしないように固定することができる。なお、前記固定用チューブ30aの基端側に装着された抜け止め部材31が、ハンドル50の基端側開口部周縁に係合することで、操作チューブ30からハンドル50が抜け外れないようになっている。
【0050】
また、前記第1拡径用チューブ40の基端部、及び、前記第2拡径用チューブ45の基端部には、筒状をなし基端外周にフランジを設けた把持部41,46がそれぞれ取付けられている。前記把持部41の先端外周に、環状の嵌合凸部41aが突設されている。また、各把持部41,46の基端側内周には、環状の嵌合凹部41b,46bがそれぞれ形成されている。
【0051】
そして、ハンドル50を介して筒状針20及び操作チューブ30がスライドし、把持部41を介して第1拡径用チューブ40がスライドし、把持部46を介して第2拡径用チューブ45がスライドするように構成されており、筒状針20及び操作チューブ30、第1拡径用チューブ40、及び、第2拡径用チューブ45を、それぞれ軸方向に相対的にスライド可能となっている。
【0052】
よって、第2拡径用チューブ45の先端開口から、第1拡径用チューブ40や筒状針20の穿刺部21を出没可能にスライドさせることができると共に、第1拡径用チューブ40の先端開口から筒状針20の穿刺部21を出没可能にスライドさせることができるようになっている。
【0053】
なお、この実施形態においては、筒状針20及び操作チューブ30、第1拡径用チューブ40、及び、第2拡径用チューブ45を、それぞれ相対的に回転させることもできるようになっている。
【0054】
また、把持部41の嵌合凹部41bに、ハンドル50の嵌合凸部54が着脱可能に嵌合することで、筒状針20及び操作チューブ30と、第1拡径用チューブ40との、スライド動作がロックされ、一方、把持部46の嵌合凹部46bに、把持部41の嵌合凸部41aが着脱可能に嵌合することで、第1拡径用チューブ40と、第2拡径用チューブ45との、スライド動作がロックされるようになっている。
【0055】
なお、この実施形態では、2本の拡径用チューブ40,45が配置されているが、それ以上の本数の拡径用チューブを配置してもよく、特に限定はない。また、操作チューブ30や、各拡径用チューブ40,45を操作する部材としては、上記のようなハンドル50や、把持部41,46に限定されるものではなく、各チューブを操作可能であればよい。
【0056】
次に、上記構造からなる本発明のガイドワイヤ挿入装置10aの使用方法の一例について説明する。ここでは、超音波内視鏡を利用して、ガイドワイヤ1を管状器官等の所定位置に移動させる場合について説明する。
【0057】
まず、先端に超音波プローブ2aを有する超音波内視鏡2を管状器官V1に挿入し、その先端部を管状器官V1の所定箇所に配置させて、その位置で動かないように保持する(
図5(a)参照)。
【0058】
その後、筒状針20及び操作チューブ30と、第1拡径用チューブ40と、第2拡径用チューブ45とが互いにスライドロックされた状態の(
図4参照)、ガイドワイヤ挿入装置10aを、超音波内視鏡2の基端側から図示しないルーメンに挿入し、同超音波内視鏡のルーメンの先端開口から、第1拡径用チューブ40を突出させると共に、同第1拡径用チューブ40の先端開口から、筒状針20を突き出す。
【0059】
そして、超音波を照射して、筒状針20の外周面で反射させて、管状器官V1,V2における筒状針20を穿刺すべき箇所を把握する。その状態で、筒状針20の穿刺部21を、管状器官V1内からその壁を貫通させて、体腔V3を通して管状器官V2に挿入して、各管状器官V1,V2を穿刺して穿刺孔5を形成し、穿刺部21の先端部を管状器官V2の所定位置に配置する(
図5(b)参照)。
【0060】
次いで、抜け止め部材31(
図4参照)の基端開口からガイドワイヤ1を挿入して、固定用チューブ30a及び操作チューブ30を通して、筒状針20の穿刺部21の開口からガイドワイヤ1を挿出させ、その先端部を管状器官V2の所定位置に配置する(
図6(a)参照)。それにより、体腔V3を介して、管状器官V1及び管状器官V2にガイドワイヤ1が配置される。
【0061】
上記状態で、ガイドワイヤ1の先端部を位置決めしつつ、第1拡径用チューブ40を、筒状針20及び操作チューブ30に沿ってガイドワイヤ先端側にスライドさせ、その先端部を、筒状針20の先端よりもガイドワイヤ先端寄りに移動させて、穿刺孔5を拡径させる(
図6(b)参照)。
【0062】
その状態で、第1拡径用チューブ40を保持しつつ、第2拡径用チューブ45を、第1拡径用チューブ40に沿ってガイドワイヤ先端側にスライドさせ、その先端部を、第1拡径用チューブ40の先端よりもガイドワイヤ先端寄りに移動させて、穿刺孔5を更に拡径させる(
図7(a)参照)。
【0063】
上記状態で、ガイドワイヤ1だけを残して、筒状針20及び操作チューブ30、第1拡径用チューブ40、及び、第2拡径用チューブ45を、管状器官V1,V2からまとめて引き抜く。次いで、カバードステント9を収容したカテーテル8を、ガイドワイヤ1に沿って管状器官V1,V2に挿入して、その先端部を管状器官V2に配置する(
図7(b)参照)。その後、カテーテル先端からカバードステント9を、ステントデリバリーシステム等を介して開放することで、体腔V3を介して互いに離れた管状器官V1と管状器官V2とに、カバードステント9が留置されるようになっている(
図8参照)。
【0064】
このように、この実施形態では、筒状針20及び操作チューブ30の外周に、第1拡径用チューブ40及び第2拡径用チューブ45が配置されているので、筒状針20の穿刺部21で管状器官V1,V2等の人体組織を穿刺した後、筒状針20及び操作チューブ30に沿って第1拡径用チューブ40を移動させると共に、同第1拡径用チューブ40に沿って第2拡径用チューブ45を移動させることで、筒状針20を人体組織から引き抜くことなく穿刺孔5を順次拡径させることができる。
【0065】
ここでは、カバードステント9を収容したカテーテル8を挿入する直前に、筒状針20及び操作チューブ30、第1拡径用チューブ40、及び、第2拡径用チューブ45を、管状器官V1,V2からまとめて引き抜くため、
図10〜13に示す従来例のように、複数のチューブ6,7を抜き差しする必要がなく、穿刺孔5からの体液の漏出を極力抑制することができる。
【0066】
なお、上記説明では、線材を編み組みしてなる自己拡張型のステントにカバーを被覆して構成されたカバードステント9を、管状器官V1,V2に留置するようになっているが、カバーが被覆されていないステントや、金属筒をレーザーカットしてなるステント、樹脂チューブからなるチューブステントなどであってもよく、特に限定はない。
【0067】
また、この実施形態のガイドワイヤ挿入装置10aは、例えば、
図9に示すような部位にカバードステント9を留置する際に、好適に用いることができる。
【0068】
図9に示すように、十二指腸12の下部からは、乳頭を介して胆管13や膵管14が分岐して伸びており、また、肝臓15により生成される胆汁は、肝内胆管15aを介して胆管13(総胆管)へと供給されるようになっている。そして、乳頭を迂回して胆汁を十二指腸12へと供給するために、十二指腸12と胆管13との間にカバードステント9を留置して内瘻としたり、或いは、胆汁を胃16へ供給するために、胃16と肝内胆管15aとの間にカバードステント9を留置して内瘻としたりする場合がある。
【0069】
この際に、この実施形態のガイドワイヤ挿入装置10aを利用した場合、十二指腸12と胆管13を筒状針20で穿刺して、両者にガイドワイヤ1を架け渡した後、上述した作業で、十二指腸12と胆管13との間にカバードステント9が留置され、一方、胃16と肝内胆管15aを筒状針20で穿刺して、両者にガイドワイヤ1を架け渡した後、上述した作業で、胃16と肝内胆管15aとの間にカバードステント9が留置される。
【0070】
このとき、上述したように、十二指腸12と胆管13、或いは、胃16と肝内胆管15aに、2本の拡径用チューブ40,45を穿刺孔5に順次挿入して拡径した後、両チューブ40,45をカテーテル挿入前にまとめて引き抜くようになってるので、胆管13や肝内胆管15aの穿刺孔5から胆汁が漏れ出ることをなるべく防いで、身体への侵襲を抑制することができる。
【0071】
なお、この実施形態のガイドワイヤ挿入装置10aは、上記のような、十二指腸12と胆管13、或いは、胃16と肝内胆管15aへの、ガイドワイヤ挿入用に限定されず、胆膵管14、気管、食道、大腸、血管等の管状器官や、その他の体内組織に適用でき、特に限定されない。また、この実施形態のガイドワイヤ挿入装置10aは、超音波内視鏡2と併せて用いられるが、通常の内視鏡用に用いてもよく、経皮的に用いてよく、特に限定はない。