【課題】黒色色素を追加する厳しい状況の下でも優れた基板接着性と現像性を兼ね備えることができ、保護膜、絶縁層等に使用することができ、さらに、カラーフォトレジスト、ブラックマトリックス等に用いる色素を含む感光性樹脂組成物に用いる、多官能アクリル化合物及びその多官能アクリル化合物を含む感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】複数のアクリル基、アルコキシシリル基、カルボキシル基およびそれらを結合する、エステル基を含む化合物、または更にシクロヘキサン基を結合基とする化合物である多官能アクリル化合物である重合性モノマーを第一成分とし、複数のアクリル基を有し、シラン基とカルボン酸基を同時に含まない重合性モノマーを第二成分とし、更に含み、光開始剤と接着用樹脂とを溶媒とを含む感光性樹脂組成物。接着用樹脂はアルカリ可溶性接着用樹脂、酸性基を有する接着剤樹脂で良い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのため、樹脂ブラックマトリックス組成物は、リソグラフィに必要な高感光度(photosensitivity)と基板に対する高接着性(adherence)を備えていなければならない。しかしながら、樹脂ブラックマトリックス組成物の「黒色」の本質に付随する高遮光性により、リソグラフィを行うと、組成物が基板の一部に近付けば近付くほど(光源から離れるほど)受光量が低くなるため、この部分の樹脂は架橋が不完全であるために基板に対する接着性が低い。したがって、高感光性、高接着性および高現像性を同時に備えた樹脂を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、基板に対する接着性が高く、且つ現像性が良好な樹脂組成物を製造することのできる多官能アクリル化合物およびその多官能アクリル化合物を含む感光性樹脂組成物を提供する。
【0006】
本発明の多官能アクリル化合物は、複数のアクリル基(acrylic group)、および式(1)または式(2)で表される基を含む。
【0007】
【化1】
……式(1)
……式(2)
【0008】
式中、
nは、0、1または2であり、
R
1は、C
pアルキレン基‐X
1‐C
qアルキレン基であり、そのうち、pは、1〜10の整数、qは、1〜10の整数であり;
X
1は、‐CH
2‐、‐O‐または‐S‐であり;
R
2は、それぞれC
1〜C
4アルキル基であり;
R
3は、それぞれC
1〜C
10アルキル基であり;
R
4は、二価連結基である。
【0009】
本発明のある実施形態中、nは、0であり、R
1は、C
1〜C
3アルキレン基‐O‐C
1〜C
3アルキレン基であり、R
2は、それぞれC
1〜C
2アルキル基である。
【0010】
本発明のある実施形態中、R
4は、式(2‐1)〜式(2‐6)で表される基から成る群から選択された任意の基である。
【0011】
【化2】
……式(2‐1)
……式(2‐2)
……式(2‐3)
……式(2‐4)
……式(2‐5)
……式(2‐6)
【0012】
式中、式(2‐1)〜式(2‐6)のHは、それぞれ独立してC
1〜C
10アルキル基または‐COOHにより置換され、且つ*は、R
4と式(1)または式(2)の‐CO‐および‐COOHの結合部位を示す。
【0013】
本発明のある実施形態中、R
4は、式(2‐3)で表される基である。
【0014】
本発明の感光性樹脂組成物は、光開始剤;接着用樹脂;上述した多官能アクリル化合物を含む第1重合性モノマー;および溶媒を含む。
【0015】
本発明のある実施形態中、上述した接着用樹脂を100重量部とすると、上述した光開始剤は、3重量部〜80重量部であり、上述した第1重合性モノマーは、5重量部〜150重量部であり、上述した溶媒は、1000重量部〜5000重量部である。
【0016】
本発明のある実施形態中、感光性樹脂組成物は、さらに、複数のアクリル基を有する第2重合性モノマーを含み、且つ、前記第2重合性モノマーは、シラン基とカルボン酸基を同時に含まず、上述した接着用樹脂を100重量部とすると、上述した第2重合性モノマーの含有量は、5重量部〜150重量部である。
【0017】
本発明のある実施形態中、感光性樹脂組成物は、さらに、黒色色素(black colorant)を含み、上述した接着用樹脂を100重量部とすると、上述した黒色色素の含有量は、100重量部〜500重量部である。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、上述した多官能アクリル化合物は、1分子に複数のアクリル基、少なくとも1つのアルコキシシラン基および少なくとも1つのカルボン酸基を含む化合物である;アクリル基は、優れた感光性を有し、アクリル化合物が光の作用の下で重合反応できるようにすることができる;アルコキシシラン基とガラス基板は相溶性が良いため、これらが存在することによって、重合後の樹脂のガラス基板に対する接着性を増やすことができる;また、カルボン酸基の導入により、感光性樹脂組成物の照光されていない部分が現像後の樹脂に残留する問題を効果的に解決することができる。
【0019】
本発明の上記および他の目的、特徴、および利点をより分かり易くするため、幾つかの実施形態を以下に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書において、ある基が置換されたものであるかどうかを特に明記していない場合、当該基は、置換された基、または、置換されていない基を表すことができる。例えば、「アルキル基」は、置換されたアルキル基、または、置換されていないアルキル基を表すことができる。また、ある基を「C
x」で示している場合、当該基の主鎖がX個の炭素原子を有することを意味する。
【0021】
本明細書において、化合物の構造を骨格式(skeleton formula)で示す時があるが、この表示法は、炭素原子、水素原子および炭素水素結合を省略することができる。もちろん、構造式において原子または原子基が明確に示されている場合は、それを基準とする。
【0022】
本明細書において、「ある数値から別の数値」で表示した範囲は、明細書で当該範囲内の全ての数値を1つ1つ挙げることを回避するための概要的表示方法である。したがって、ある特定数値範囲についての描写は、当該数値範囲内の任意の数値および当該数値範囲内の任意の数値により限定される比較的小さな数値範囲を含むことを意味し、明細書において明記されている当該任意の数値および当該比較的小さな数値範囲と同じである。例えば、「20重量部〜50重量部」の範囲は、明細書において他の数値が列挙されているかどうかに関わらず、いずれも「25重量部〜35重量部」の範囲を含む。
【0023】
本発明は、多官能アクリル化合物を提供し、当該アクリル化合物は、1分子に複数のアクリル基、カルボン酸基およびアルコキシシラン基を有する化合物である。具体的に説明すると、本発明の多官能アクリル化合物は、1分子に複数のアクリル基、および式(1)または式(2)で表される基を含む化合物である。
【0024】
【化3】
……式(1)
……式(2)
【0025】
式中、
nは、0、1または2であり、
R
1は、C
pアルキレン基‐X
1‐C
qアルキレン基であり、そのうち、pは、1〜10の整数、qは、1〜10の整数であり、
X
1は、‐CH
2‐、‐O‐または‐S‐であり、
R
2は、それぞれC
1〜C
4アルキル基であり、
R
3は、それぞれC
1〜C
10アルキル基であり、
R
4は、二価連結基である。
【0026】
式(1)または式(2)の最も左側の単結合は、本発明の多官能アクリル化合物のその他の部分と結合する。
【0027】
本発明の1つの実施形態中、nは、0である;すなわち、式(1)または式(2)で表される基は、例えば、トリメトキシシラン基、トリエトキシシラン基等のトリアルコキシシラン基を有する。
【0028】
本発明の1つの実施形態中、R
1は、C
1〜C
3アルキレン基‐O‐C
1〜C
3アルキレン基であり、且つ、R
2は、それぞれC
1〜C
2アルキル基である;例えば、R
1は、‐CH
2‐O‐C
3H
6‐または‐CH
2‐O‐C
2H
4‐であってもよく、R
2は、メチル基であってもよい。
【0029】
本発明の1つの実施形態中、R
4は、式(2‐1)〜式(2‐6)で表される基から成る群から選択された任意の基である。
【0030】
【化4】
……式(2‐1)
……式(2‐2)
……式(2‐3)
……式(2‐4)
……式(2‐5)
……式(2‐6)
【0031】
式中、「*」は、R
4と式(1)または式(2)の‐CO‐および‐COOHの結合部位を示し、且つ、式(2‐1)〜式(2‐6)のHは、それぞれ独立してC
1〜C
10アルキル基または‐COOHにより置換される。具体例を挙げると、R
4は、式(2‐3)で表される基であり、且つ、その中のHは、いずれも置換されていない。
【0032】
上述した多官能アクリル化合物は、感光性樹脂組成物の成分として、リソグラフィに適用することができる。理由としては、上述したように、当該化合物は、1分子に複数のアクリル基、少なくとも1つのアルコキシシラン基および少なくとも1つのカルボン酸基を有する化合物である;アクリル基は、優れた感光性を有し、上述した多官能アクリル化合物が電磁放射(例えば、可視光、紫外光、X線等)の作用の下で重合反応できるようにすることができる;アルコキシシラン基の立体構造とガラス基板の表面分子構造は類似しており、且つ、Si‐O結合とガラスの化学結合も相溶性が良好である。したがって、アルコキシシラン基の存在により、重合後の樹脂のガラス基板に対する接着性を増やすことができる;また、カルボン酸基は、多官能アクリル化合物全体の酸価(acid value)を上げるため、感光性樹脂組成物の照光されていない部分が現像後の樹脂に残留する問題を効果的に解決することができる。
【0033】
本発明は、また、光開始剤、接着用樹脂、第1重合性モノマーおよび溶媒を含む感光性樹脂組成物を提供する;第1重合性モノマーは、上述した多官能アクリル化合物であってもよい。1つの実施形態において、接着用樹脂を100重量部とすると、第1重合性モノマーの量は、5重量部〜150重量部である。
【0034】
接着用樹脂は、アルカリ可溶性接着用樹脂、つまり、酸性基を含有する接着用樹脂であってもよい。その結合は、特に限定されず、いずれも本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者にとって周知の接着用樹脂を使用することができる。1つの実施形態において、接着用樹脂は、アクリル樹脂(acrylic resin)であってもよい。
【0035】
光開始剤は、光照射の下で自由基を生成することができるため、重合作用を促進するのに適切な化合物である。1つの実施形態において、接着用樹脂を100重量部とすると、光開始剤の量は、5重量部〜80重量部である。
【0036】
光開始剤の実例は、例えば、2,4‐トリクロロメチル‐(4’‐メトキシフェニル)‐6‐トリアジン(2,4-trichloromethyl-(4'-methoxyphenyl)-6-triazine)等のトリアジン化合物;例えば、2,2’‐ビス(2‐クロロフェニル)‐4,4’‐5,5’‐テトラフェニル非イミダゾール(2,2'-bis(2-chlorophenyl)-4,4'-5,5'-tetraphenyl non-imidazole)の非イミダゾール化合物;例えば、2‐ヒドロキシ‐2‐メチル‐1‐フェニルプロパン‐1‐オン(2-hydroxy-2-methyl-1-phenylpropane-1-on)のアセトフェノン(acetophenone)化合物;例えば、4,4’‐ビス(ジメチルアミノ)ベンゾ‐フェノン(4,4'-bis(dimethylamino)benzo-phenone)のベンゾフェノン化合物;例えば、2,4‐ジエチルチオキサントン(2,4-diethyl thioxanthone)のチオキサントン化合物;例えば、2,4,6‐トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(2,4,6-trimethylbenzoyl diphenylphosphine oxide)のホスフィンオキシド化合物;例えば、3,3’‐カルボビニル‐7‐(ジエチルアミノ)(3,3'-carbovinyl-7-(diethylamino))のクマリン(coumarin)化合物およびBASFから購入できるイルガキュア(Irgacure)OXE‐01およびOXE‐02のO‐アシルオキシム(O-acyloxime)を含んでもよい。
【0037】
光開始剤は、単独で使用しても、あるいは、2種類以上の光開始剤を混合して使用してもよい。
【0038】
溶媒は、感光性樹脂組成物の各成分を溶解するのに適した任意の溶媒であってもよい。1つの実施形態において、接着用樹脂を100重量部とすると、溶媒の量は、1000重量部〜5000重量部である。
【0039】
溶媒の実例は、メチルエチルケトン(methylethylketone)、メチルセロソルブ(methylcellosolve)、エチルセロソルブ(ethylcellosolve)、プロピルセロソルブ(propylcellosolve)。エチレングリコールジメチルエーテル(ethyleneglycol dimethylether)、エチレングリコールジエチルエーテル(ethyleneglycol diethylether)、エチレングリコールメチルエチルエーテル(ethyleneglycol methylethylether)、プロピレングリコールジメチルエーテル(propyleneglycol dimethylether)、プロピルグリコールジエチルエーテル(propylglycol diethylether)、プロピレングリコールメチルエチルエーテル(propyleneglycol methylethylether)、2‐エトキシプロパノール(2-ethoxypropanol)、2‐メトキシプロパノール(2-methoxypropanol)、3‐メトキシブタノール(3-methoxybutanol)、シクロペンタノン(cyclopentanone)、シクロヘキサノン(cyclohexanone)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(propyleneglycol methylether acetate,PGMEA)、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート(propyleneglycol ethylether acetate)、3‐メトキシブチルアセテート(3-methoxybutyl acetate)、エチル3‐エトキシプロピオネート(ethyl 3-ethoxy propionate)、エチルセロソルブアセテート(ethyl cellosolve acetate)、メチルセロソルブアセテート(methyl cellosolve acetate)、ブチルアセテート(butyl acetate)またはジプロピレングリコールモノメチルエーテル(dipropyleneglycol monomethylether)であってもよい。
【0040】
溶媒は、単独で使用しても、あるいは、2種類以上の溶媒を混合して使用してもよい。
【0041】
本発明の感光性樹脂組成物は、さらに、第2重合性モノマーを含んでもよい。この第2重合性モノマーは、複数のアクリル基を有し、且つ、シラン基とカルボン酸基を同時に有さない。1つの実施形態において、接着用樹脂を100重量部とすると、第2重合性モノマーの含有量は、5重量部〜150重量部である、具体的に説明すると、第2重合性モノマーは、トリプロピレングリコールジアクリレート(tripropylene glycol diacrylate,TPGDA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(trimethylolpropane triacrylate,TMPTA)、ペンタエリトリトールトリアクリレート(pentaerythritol triacrylate,PETA)またはペンタエリトリトールヘキサアクリレート(pentaerythritol hexaacrylate,DPHA)等の化合物であってもよい。
【0042】
樹脂ブラックマトリックス組成物の応用において、本発明の感光性樹脂組成物は、さらに、黒色色素を含んでもよい。1つの実施形態において、接着用樹脂を100重量部とすると、黒色色素の含有量は、100重量部〜500重量部である。
【0043】
黒色色素は、無機材料または有機材料であってもよい。その実例は、カーボンブラック、グラファイトまたはチタンブラック等の金属酸化物を含む。
【0044】
本発明の感光性樹脂組成物は、光の作用の下で重合反応することができ、且つ、上述した多官能アクリル化合物を含有することによって、照射されて重合反応が起こった後に得られる樹脂重合物の基板に対する接着性が非常に良くなり、感光性樹脂組成物の照光されていない部分が現像後の樹脂に残留する問題が発生しない。
【0045】
以下に、実験例を参照して、本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実験を例として説明するが、本発明の範囲から逸脱しない状況では、使用する材料、その分量および比率、処理内容および処理過程等を適切に変更してもよい。したがって、以下に述べる実験により本発明を限定するものとして解釈すべきではない。
[実験]
【0046】
反応過程I〜IVは、化合物1、化合物2、化合物4および化合物5の合成を簡単に示したものである;そのうち、
Meは、メチル基であり;
M‐520は、東亞合成株式会社製のアロニックス(Aronix)M‐520を示し;
DYNASYLAN(R) GLYMOは、エボニック(EVONIK)社製の3‐エポキシプロポキシプロピルトリメトキシシランを示し;
THPAは、Chingtide Corporationが提供するテトラヒドロ‐無水フタル酸(tetra hydro-phthalic anhydride)であり;
化合物3は、下記の方法により合成した化合物である:
プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(propyleneglycol methylether acetate)でカプロラクトン変性のジペンタエリトリトールモノヒドロキシペンタアクリレートを希釈して、無水コハク酸(succinic anhydride)をこの希釈溶液中に添加し(無水コハク酸とカプロラクトン変性のジペンタエリトリトールモノヒドロキシペンタアクリレートのモル比は、1:1)、80℃で12時間撹拌することにより、化合物3が得られる。
カプロラクトン変性のジペンタエリトリトールモノヒドロキシペンタアクリレートの合成は、ヨーロッパ特開EP0099661Aまたは以下の合成ステップを参照することができる。
まず、ツインネックフラスコに1当量のジペンタエリトリトール、1当量のカプロラクトンおよび触媒量のチタニウムイソプロポキシドを加え、窒素下で160℃〜170℃に加熱し、未反応のカプロラクトンが<1%の時に反応を終了する。蝋状の縮合物Iが得られ、平均して各縮合物の分子には1単位のカプロラクトン断片がある。
続いて、ツインネックフラスコに1当量の縮合物I、5.5当量のアクリル酸、0.4当量のp‐トルエンスルホン酸および0.04当量のヒドロキノンを加える。ベンゼンとシクロペンタンを溶媒として、77℃〜81℃に加熱する。ディーン・スターク(Dean-Stark)蒸留器を用いて蒸留脱水を行い、5当量の水が蒸留された時に反応を終了する。ベンゼンとシクロペンタンで反応物を希釈する。20%の水酸化ナトリウム水溶液の中和反応により溶液を中性にする。20%の塩化ナトリウム水溶液で有機層を3回洗浄する。減圧蒸留で有機溶媒を除去することにより、淡黄色粘性液体のカプロラクトン変性のジペンタエリトリトールモノヒドロキシペンタアクリレートが得られる。
【0047】
表1および表2の上半分に示した量(重量部)に基づいて、各比較例と各実験例の感光性樹脂組成物を製造する;
接着用樹脂として用いるアクリル樹脂は、48gのメタクリル酸(methacrylic acid,MAA)、139gのスチレン(styrene)、113gのメタクリル酸ベンジル(benzyl methacrylate,BzMA)および3gのアゾビスイソブチロニトリル(azobisisobutyro-nitrile,AIBN)を456gのPGMEAに溶かし、70℃で10時間反応させて得られる樹脂の分子量=10000、酸価=100であり;
光開始剤は、BASF社製のイルガキュア(Irgacure)242(OXE‐02)であり;
黒色色素は、Yung Chi Paint & Varnish Mfg. Co., Ltd製のDXBK1017Aであり;
均染剤(levelling agent)は、DIC社製のF554であり;
溶媒として用いるPGMEAは、Shiny Chemical Industrial Co., Ltd.製のプロピレングリコールメチルエーテルアセテートであり;
M‐520および化合物3は、カルボン酸基を有するがアルコキシシラン基を有さない多官能アクリル化合物であり;
化合物1および化合物4は、アルコキシシラン基を有するがカルボン酸基を有さない多官能アクリル化合物であり;
化合物2および化合物5は、アルコキシシラン基とカルボン酸基を同時に有する本発明の多官能アクリル化合物である。
【0051】
表1および表2の下半分は、各比較例と各実験例の感光性樹脂組成物の現像特性を示す。
【0052】
「BT」は、「ブレイクタイム」を示し、感光性樹脂組成物の現像に必要な時間を指す。
「現像接着」は、感光性樹脂組成物の接着性の指標であり、その数値は、BTに到達した後さらに一定の現像時間(20秒または30秒)を経てもなお基板上に残留することのできる樹脂の最小線幅を指す。例を挙げて説明すると、表1からわかるように、M‐520を含む感光性樹脂組成物は、BT+20秒の現像時間を経た後、線幅が14μmの樹脂のみが基板上に残留し、線幅がさらに小さい樹脂は、長時間現像の衝撃に耐えることができず、既に基板上から脱落している。言い換えれば、「現像接着」の欄の数値が小さければ小さいほど、感光性樹脂組成物の接着性が良くなる。
「現像残留物」は、感光性樹脂組成物の現像性の指標であり、現像後、照光されなかった感光性樹脂組成物が基板上に残留している部分がある場合は「X」で示し、照光されていない部分が現像により上手く除去されている場合は「O」で示してある。
【0053】
表1および表2からわかるように、比較例1‐1と比較例2‐1の感光性樹脂組成物の反応により得られる樹脂は、基板に対する接着性が悪く;比較例1‐2と比較例2‐2の感光性樹脂組成物を用いた場合には、樹脂の基板に対する接着性を増やすことはできても、現像残留物が生じる問題が残る。反対に、実験例1と実験例2の感光性樹脂組成物を用いて露光と現像を行った後に得られる樹脂重合物は、優れた基板接着性と現像性を同時に有する。
【0054】
本発明の多官能アクリル化合物は、化合物2および化合物5に限定されないため、例えば、以下の式で表されるその他の化合物を含んでもよい。
【0056】
式中、Zは、それぞれ独立し、且つ、少なくとも1つのZは、式(1)または式(2)で表される基であり、その他のZは、下記の式で表される基である。
【0059】
この式で表される化合物の合成方法は、以下の通りである。脂肪族ポリヒドロキシ化合物(ペンタエリトリトールまたはジペンタエリトリトール、あるいは、ペンタエリトリトールまたはジペンタエリトリトールのカプロラクトン変性物)を不飽和カルボン酸と反応させて、エステルを取得し、その後、非芳香族カルボン酸無水物を当該エステル中の脂肪族ポリヒドロキシ化合物から得られる未反応ヒドロキシル基と反応させて、当該エステル中に酸基を導入することにより、カルボン酸基を有するがアルコキシシラン基を有さない多官能アクリル化合物を取得する。この商用製品の実例は、東亞合成株式会社製のM‐510およびM‐520を含む。続いて、カルボン酸基を有するがアルコキシシラン基を有さない多官能アクリル化合物を上述したステップ(反応過程I&IIまたはIII&IV)に基づいてアルコキシシラン基を有する構造にグラフトすることにより、この式で表される化合物が得られる。
【0060】
本発明の感光性樹脂組成物は、黒色色素を追加する厳しい状況の下でも優れた基板接着性と現像性を兼ね備えることができるため、保護膜、絶縁層等の透明感光性樹脂組成物の製造に使用することができ、さらに、カラーフォトレジスト、ブラックマトリックス等の色素を含む感光性樹脂組成物の製造にも使用することができるが、本発明はこれらの用途に限定されないものとする。
【0061】
以上のごとく、この発明を実施形態により開示したが、もとより、この発明を限定するためのものではなく、当業者であれば容易に理解できるように、この発明の技術思想の範囲内において、適当な変更ならびに修正が当然なされうるものであるから、その特許権保護の範囲は、特許請求の範囲および、それと均等な領域を基準として定めなければならない。