伝達するトルクが、予め設定された上限トルクを越えたときに、ケーシングチューブ4とケリーバ9との動力伝達を切断する油圧モータ10を有するトルクリミッタであり、油圧モータ10の出口ポートを、リリーフバルブ121を介して、入口ポートと接続することにより、上限トルクを設定する。また、リリーフバルブ121に接続可能な複数の油圧設定バルブ122、123、124を有し、リリーフバルブ121と油圧設定バルブ122、123、124との接続を変更することにより、上限トルクを変更することができる。
チュービング装置により回転・圧入されるケーシングチューブの内側を掘削する内部掘削装置に、前記ケーシングチューブと係合してトルクをケリーバに伝達する動力伝達装置であって、
伝達するトルクが予め設定された上限トルクを超えたときに動力伝達を遮断するトルクリミッタを備え、前記トルクリミッタは油圧モータを有するとともに、
前記油圧モータの出口ポート又は入口ポートの一方を、リリーフバルブを介して前記油圧モータの出口ポート又は入口ポートの他方と接続され、
前記リリーフバルブは接続可能な複数のリリーフ圧設定バルブを有するとともに、選択した1のリリーフ圧設定バルブと接続することにより前記上限トルクを設定すること、
を特徴とする動力伝達装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ケーシングチューブとケリーバとをダイレクトに連結して、チュービング装置の回転トルクを、ケリーバや掘削バケットに直接伝達する方法には、次の問題があった。
チュービング装置の油圧モータの定格トルクが、1000〜2000kN・m程度である一方、ケリーバに回転トルクを与えるケリードライブの油圧モータの定格トルクは、100kN・m程度である。すなわち、ケリーバや掘削バケットの上限トルクは、一般的に言って、チュービング装置の油圧モータの定格トルクの1/10程度なのである。
そのため、ケリーバにより掘削を行っている時に、掘削バケットが岩盤に突き当たると、上限トルク以上の過大なトルクがケリーバや掘削バケットに作用して、ケリーバあるいは掘削バケットが破損する問題があった。
【0005】
他方、チュービング装置の油圧モータの定格油圧は30MPaであるので、使用する油圧を3MPa程度にしてケリーバに伝達する回転トルクを低下させることが考えられる。しかし、ケーシングチューブを回転させるだけで大きな回転トルクを必要とし、その回転トルクも機械損失等の影響により、大きく変動する。そのため、使用する油圧を3MPaに低下させて、ケリーバを駆動制御することは技術的に困難である。
【0006】
上記問題を解決するために、本出願人の一人は、特願2012−227926号により、動力伝達装置にトルクリミッタ機構を持たせることを提案した。すなわち、
図13に動力伝達装置900の全体構成を示し、
図11に第1参考例の動力伝達装置のトルクリミッタ装置の構成を示す。
図13に示すように、ケーシングチューブ901の上端にケーシング902がボルト902aにより連結されている。ケーシング902の上端面には、トルクを伝達するための凸部903が2個形成されている。
一方、ケリーバ906は、
図11に示すように、トルクリミッタ装置904に、ケリーバガイドバー907により回転方向において連結されている。トルクリミッタ装置904の外周には、2本の延設部905が形成されている。延設部905は、凸部903と係合して、トルクを伝達する。
図11に示すように、トルクリミッタ装置904は、内側ケース910と外側ケース911とを有する。内側ケース910の外周には、8カ所に三角凸部912が形成されている。外側ケース911の内周には、8カ所に凹部が形成され、皿バネ908に付勢された先端断面が三角形状の摺動部材909が、摺動可能に保持されている。
【0007】
次に、第1参考例のトルクリミッタ装置の作用を説明する。
ケリーバ906の上限トルク内で作用している場合には、内側ケース910の三角凸部912と、外側ケース911の摺動部材909とが係合している。そのため、内側ケース910と外側ケース911とは、一体的に回転しており、ケーシングチューブ901の回転トルクが、そのままケリーバ906に伝達されている。
そして、ケリーバ906に上限トルクを越える過大なトルクが作用した場合、皿バネ908が圧縮されて、摺動部材909が皿バネ908方向に引き込められるため、摺動部材909と三角凸部912との係合状態が解除され、滑る状態となりケーシングチューブとケリーバ906との動力伝達が切断される。そのため、ケリーバ906の上限トルクを超える過大な回転トルクは、それ以上ケリーバ906に伝達されることがない。
【0008】
次に、第2の参考例のトルクリミッタ装置の構成を
図12に示す。第2の参考例では、トルクリミッタ装置は、
図13に示すケーシング902内に組み込まれている。ここで、ケリーバ906、トルクリミッタ装置904、延切部905は一体的に構成されている。
ケーシングチューブ901の上端は、外側に延設され、延設円板901aが形成されている。延設円板901aは、ケーシング902の内部に付設されている一対のブレーキパッド922,923により挟み込まれている。ブレーキパッド922には、油圧ブレーキ921により、所定の押圧力が付与されている。このような油圧ブレーキが複数個所に設けられている。
第2の参考例では、ケリーバ906は、延設部905と常に一体的に回転する。
【0009】
次に、第2参考例のトルクリミッタ装置の作用を説明する。
ケリーバ906の上限トルク内で作用している場合には、ブレーキパッド922,923と、延設円板901aとが係合しているため、ケーシング902と延設円板901aとは、一体的に回転しており、ケーシングチューブ901の回転トルクが、そのままケリーバ906に伝達されている。
そして、ケリーバ906に上限トルクを越える過大なトルクが作用した場合、ブレーキパッド922、923と延設円板901aとの間に滑りが発生しケーシングチューブとケリーバ906との動力伝達が切断される。そのため、ケリーバ906の上限トルクを超える過大な回転トルクは、それ以上ケリーバ906に伝達されることがない。
【0010】
次に、上記第1及び第2参考例の問題点を説明する。
すなわち、ケリーバ906の先に取り付けられている図示しない掘削バケットは、大きさにより、例えば、100kN・m、75kN・m、50kN・m等、複数の許容トルクを定格としている。そのため、掘削バケットを交換するたびに、トルクリミッタ装置の上限トルクを変更しなければならない。第1の参考例では、8個の皿バネ908を交換する必要があり、手間と時間が係る問題があった。同様に、第2の参考例では、複数個所の油圧ブレーキを交換する必要があり、手間と時間が係る問題があった。また、機械的な摩耗による係合であるため、摩擦部での損耗は避けられない。
【0011】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、使用する掘削バケットを変更した時に、そのケリーバや掘削バケットの上限トルクに調整することの容易なトルクリミッタ装置を有する動力伝達装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係る動力伝達装置は、以下の構成を有する。
(1)チュービング装置により回転・圧入されるケーシングチューブの内側を掘削する内部掘削装置に、前記ケーシングチューブと係合してトルクをケリーバに伝達する動力伝達装置であって、伝達するトルクが予め設定された上限トルクを超えたときに動力伝達を遮断するトルクリミッタを備え、前記トルクリミッタは油圧モータを有するとともに、前記油圧モータの出口ポート又は入口ポートの一方を、リリーフバルブを介して前記油圧モータの出口ポート又は入口ポートの他方と接続され、前記リリーフバルブは接続可能な複数のリリーフ圧設定バルブを有するとともに、選択した1のリリーフ圧設定バルブと接続することにより前記上限トルクを設定すること、を特徴とする。
【0013】
それにより、トルクを油圧モータの油圧に変換して管理しているため、リリーフバルブと油圧設定バルブにより上限トルクを管理することができる。そのため、掘削バケットを変更した時に、リリーフバルブと油圧設定バルブとの接続を変更するだけで、トルクリミッタの上限トルクを変更することができるため、容易に掘削バケットの交換に対応することができる。
【0014】
(2)(1)に記載する動力伝達装置において、前記リリーフ圧設定バルブの設定圧力が、複数の掘削装置に対応してそれぞれ予め調整されていること、が好ましい。
【0015】
それにより、例えば、複数の第1油圧設定バルブ,第2油圧設定バルブ,第3油圧設定バルブの各々について、工事現場における工事作業工程において使用する複数の掘削バケットの上限トルクに対応する油圧値a1,a2,a3に調整しておけば、現場で調整する手間が省けるため、工事の効率化を図ることができる。
【0016】
(3)(1)又は(2)に記載する動力伝達装置において、前記リリーフ圧設定バルブの選択のための手動弁を有すること、が好ましい。
【0017】
それにより、手動弁を操作するだけで、配管をつなぎ直す必要がないため、さらに工事の効率化を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、掘削バケットを変更した時に、リリーフバルブと油圧設定バルブとの接続を変更するだけで、トルクリミッタの上限トルクを変更することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の動力伝達装置の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、第1実施形態に係る動力伝達装置の正面図を示す。
図2は、動力伝達装置の側面図を示す。
図3は、動力伝達装置の主要部の断面図及び回路図(1)を示す。
図4は、動力伝達装置のケリーバ設置前の状態の側面図を示す。
(第1実施形態)
<動力伝達装置の全体構成>
動力伝達装置2は、後述するチュービング装置3の動力をケリーバ9に動力を伝達するための装置である。
図1に示すように、動力伝達装置2は、大きくは外筒のトルクリミッタ本体部20と内筒のケリーバ回転体29との二重構造である。
【0021】
はじめに、トルクリミッタ本体部20について説明する。トルクリミッタ本体部20は、伝達するトルクが、予め設定された上限トルクを越えたときに、ケーシングチューブ4とケリーバ9との動力伝達を切断するものである。
図1に示すように、円筒形状のトルクリミッタ本体部20は、半径方向で外周に向かって4つの延設部21が付設されている。
図4に示すように、延設部21の下面には、後述するケーシングチューブ4に固設されている係合凹部45と係合する係合部22が付設されている。
また、
図1にトルクリミッタ本体部20の上方には、油圧モータ10、トルク調整部17、及びリリーフバルブ121が取り付けられている。
図3に示すように、油圧モータ10には、出力軸11が回転可能に保持され、出力軸11には小歯車12が付設されている。小歯車12は、後述するケリーバ回転体29の外周に形成された大歯車28と噛合している。
油圧モータ10は、本実施形態においてはアキシャルピストンモータを使用しているが、他の油圧モータを使用することもできる。油圧モータ10の定格油圧は30MPaである。
【0022】
次に、ケリーバ回転体29について説明する。
図3に示すように、ケリーバ回転体29の中心には円筒形状のケリーバ貫通穴23が形成されている。
図3中ケリーバ9は省略している。また、
図1に示すように、ケリーバ貫通穴23の内周面には、ケリーバ9と係合させトルクを伝達するためのケリーバ用凹部24が6箇所形成されている。ケリーバ9の先端には、ドリルバケット41(
図6)又は拡底バケット42(
図8)が取り付けられている。
図3に示すように、ケリーバ回転体29の外周円盤部29aには大歯車28が付設されている。外周円盤部29aの上下位置には、一対の軸受30が取り付けられており、ケリーバ回転体29はトルクリミッタ本体部20に対して回転可能に保持されている。
また、ケリーバ回転体29の上位置には上部ダンパ25が付設され、下位置には下部ダンパ26が付設されている。
【0023】
続いて、油圧回路の構成について
図3を用いて説明する。
図3に示すように、油圧モータ10には、第1ポート101、第2ポート102、ドレンポート103が形成されている。
例えば、第1ポート101は、出力軸11が右回転する場合には、第1ポート101が入口ポートとなり第2ポート102が出口ポートとなる。出力軸11が左回転する場合には、第1ポート101が出口ポートとなり第2ポート102が入口ポートとなる。
【0024】
第1ポート101と第2ポート102は、配管により連結され油圧回路110を形成する。
第1ポート101と連通する第1配管151は、第1逆止弁141を介して第3配管153と連通している。第3配管153は、第2逆止弁142を介して第2配管152と連通している。第2配管152は第2ポート102と連通している。
第1逆止弁141は、第1配管151からの流れは流し、第3配管153からの逆流を止める逆止弁である。第2逆止弁142は、第2配管152からの流れは流し、第3配管153からの逆流を止める逆止弁である。
【0025】
また、第1配管151は第3逆止弁143を介して第4配管154と連通している。第4配管154は第4逆止弁144を介して第2配管152と連通している。
第3逆止弁143は、第4配管154からの流れを流し、第1配管151からの逆流を止める逆止弁である。第4逆止弁144は、第4配管154からの流れは流し、第2配管152からの逆流を止める逆止弁である。
第3配管153には第5配管155が連通し、第5配管155はリリーフバルブ121を介して第6配管156と連通している。第6配管156と第4配管154は連通する。
【0026】
図3に示すように、リリーフバルブ121のベントポート121aはパイロット配管157と連通する。ベントポート121aは、リリーフバルブ121が作用する上限トルクを変更するためのものである。パイロット配管157は、
図1及び
図3に示すように、任意に第1接続配管117、第2接続配管118、第3接続配管119に接続することができる。本実施形態においては、パイロット配管157は
図3に示すように、第1接続配管117と接続している。第1接続配管117は、リリーフバルブ121の上限油圧20MPaに設定するための第1油圧設定バルブ122と連結し、第2接続配管118は、リリーフバルブ121の上限油圧15MPaに設定するための第2油圧設定バルブ123と連結し、第3接続配管119は、リリーフバルブ121の上限油圧10MPaに設定するための第3油圧設定バルブ124と連結している。
例えば、ケリーバ9の先端に取り付けられている上限トルクが100kN・mのドリルバケット41を使用する時には設定油圧20MPa、上限トルクが75kN・mの時には設定油圧15MPa、上限トルクが50kN・mの拡底バケット42を使用する時には設定油圧10MPaになるように、リリーフバルブ121のパイロット配管157の接続先を変更することで、ケリーバ9に伝達される上限トルクを任意に変更することができる。
【0027】
そのため、ケリーバ9の先端に取り付けられている掘削バケットを変更した時に、リリーフバルブ121と第1油圧設定バルブ122、第2油圧設定バルブ123、第3油圧設定バルブ124との接続先を変更するだけで、トルクリミッタの上限油圧を変更することができ、容易にドリルバケット41、又は拡底バケット42の交換に対応することができる。
また、複数の第1接続配管117につながる第1油圧設定バルブ122,第2接続配管118につながる第2油圧設定バルブ123,第3接続配管119につながる第3油圧設定バルブ124の各々について、工事現場における工事作業工程で使用する複数のケリーバに対応する設定油圧20MPa,15MPa,10MPaに調整しておけば、現場で調整する手間が省けるため、工事の効率化を図ることができる。
第1油圧設定バルブ122、第2油圧設定バルブ123、及び第3油圧設定バルブ124はともにリザーバタンク126と連結するリザーブ配管114と連結している。
図3に示すように、ドレンポート103はリザーバタンク126と連結するドレン配管160と連結している。
【0028】
<掘削装置の作用効果>
次に、本動力伝達装置を用いたケリーバ9と掘削バケットによる掘削作業について、
図6乃至
図10を用いて説明する。
動力伝達装置2には、ケーシングチューブ4から回転力が伝達される。
本実施形態では、
図6に示すようにあらかじめチュービング装置3を地盤Jに固定する。その状態で、ケーシングチューブ4の外周を把持部材35で把持してケーシングチューブ4を回転させながら軸方向に押し下げることによりケーシングチューブ4を地盤Jに掘削して押し込む。ケーシングチューブ4の最上部には、係合凹部45が来るようにセットする。係合凹部45は、ケーシングチューブ4の最上面の対角線上の4箇所に固設されている。チュービング装置3の作用効果は従来技術と異なるところがないため詳細な説明を割愛する。ケーシングチューブ4が挿入された後に、
図6に示すように、動力伝達装置2をケーシングチューブ4の上方に位置させる。
【0029】
続いて、
図7に示すように、ケーシングチューブ4の上端に付設されている係合凹部45と動力伝達装置2の係合部22を係合させる。それにより、ケーシングチューブ4の動力をケリーバ軸90に伝達することができる。
動力伝達装置2により、ケリーバ9を回転させその先端のドリルバケット41によりケーシングチューブ4内の土砂を掘削する。目標まで土砂を掘削したときに掘削を終了する。
図8に示すように、動力伝達装置2を地上にもち上げ、ケリーバ9先端に取り付けられたドリルバケット41を拡底バケット42に付け替える。
図9に示すように、ケーシングチューブ4の上端に付設されている係合凹部45と動力伝達装置2の係合部22を係合させる。それにより、ケーシングチューブ4の動力をケリーバ9に伝達することができる。
次いで、
図10に示すよう、動力伝達装置2により、ケリーバ9を回転させその先端の拡底バケット42を拡径させ、底部を拡大する。それにより拡底杭を造成することができる。
以上により掘削作業を終了する。
【0030】
<動力伝達装置の作用効果>
・通常時の使用状態
本実施形態では、
図3に示す第1ポート101が出口ポートであり、第2ポート102が入口ポートである。
通常時は、第1ポート101へと流出する油が第1配管151及び第1逆止弁141を介し第3配管153内の圧力を高める。第3配管153に流出しようとする油は第2逆止弁142により第2配管152へ流出することはない。
【0031】
通常時には、ドリルバケット41により土砂を掘削作業している時には上限トルク内で回転しているため、ケリーバ9の先端に取り付けられたドリルバケット41の上限トルク100kN・mを超えた過大なトルクが小歯車12を介し出力軸11にかかることはない。ケリーバ9の回転トルクを、大歯車28、小歯車12を介し出力軸11が受ける。しかし、ケリーバ9は通常回転をしているための上限トルク100kN・m以上の過大トルクが出力軸11にかかることはない。そのため、油が第3配管153へと流出しようとするため第3配管153内の圧力は高まるが、通常時においては、第3配管153内の圧力は上限油圧である20MPaを超えることがない。そのため、上限油圧の20MPa以上にならなければ作動しないリリーフバルブ121は作動しない。
リリーフバルブ121が作動しないことにより、第1ポート101と第2ポート102は非連通状態にあり、出力軸11は回転しない。そのため、出力軸11は常に大歯車28と一体化して回転する。
【0032】
以上から、通常時においては、ケーシングチューブ4が回転すると、係合部22を介して係合するトルクリミッタ本体部20が回転する。出力軸11と大歯車28が一体化して回転しているため、トルクリミッタ本体部20と係合するケリーバ回転体29が同様に回転し、ケリーバ回転体29内に固定されたケリーバ9が回転する。
【0033】
・上限トルクを超える過大なトルクがケリーバに作用した使用状態
例えば、チュービング装置3の油圧モータの定格トルクが、1000〜2000kN・m程度である一方、ケリーバ9に回転トルクを与える油圧モータ10の定格トルクは、100kN・m程度である。すなわち、ケリーバ9や、その先端に取り付けられた掘削バケットの上限トルクは、一般的に言って、チュービング装置3の油圧モータの定格トルクの1/10程度である。
そのため、ケリーバ9と掘削バケットにより掘削を行っている時に、掘削バケットが岩盤に突き当たると、上限トルク以上の過大なトルクがケリーバ9と掘削バケットに作用して、ケリーバ9又は掘削バケットが破損する可能性がある。
本実施形態においては、掘削バケットが岩盤等に突き当たり伝達するトルクが、予め設定された上限トルクを越えたときに、油圧モータ10がケーシングチューブ4とケリーバ9との動力伝達を切断する。そのため、上限トルク以上の過大なトルクがケリーバ9に作用して、ケリーバ9又は掘削バケットが破損することがない。
【0034】
具体的には、第1ポート101へと流出しようとする油が第1配管151及び第1逆止弁141を介し第3配管153へと流出する。第3配管153へと流出した油は第2逆止弁142により第2配管152へ流出することはない。
上限トルクを超えた過大なトルクがケリーバ9にかかった時には、過大なトルクが小歯車12を介し出力軸11が受ける。そのため、出力軸11に過大なトルクがかかることで第3配管153内に流出している油の圧力が高まり上限油圧の20MPaを超える。したがって、第3配管153内の圧力が上限油圧の20MPaを超えて高まり、リリーフバルブ121が作動し、開弁状態となる。
【0035】
リリーフバルブ121が開弁することにより、第3配管153と第6配管156は連通する。第6配管156に流出した油は第4配管154、第4逆止弁144を介して第2配管152に流出し、第2ポート102へと流出する。すなわち、第1ポート101と第2ポート102が連通される。
第1ポート101と第2ポート102が連通することにより、出力軸11は回転し、出力軸11と大歯車28は一体化状態から解放されフリーな状態となる。
【0036】
さらに、例えば、本実施形態においては、ドリルバケット41は上限トルクが100kN・mと拡底バケット42は上限トルクが50kN・mで異なる。その理由は、下方向に掘削をするドリルバケット41に比べて、拡底バケット42は拡径するため形状が複雑である。そのため、拡底バケット42の方が複雑であるため、故障頻度が高く上限トルクを小さくする必要があるためである。
例えば、
図6に示すように、ドリルバケット41を使用する際には上限油圧を20MPaとするためパイロット配管157を第1接続配管117と接続する。それに対して、
図9及び
図10に示すように、拡底バケット42を使用する際には上限油圧を10MPaとするためパイロット配管157を第3接続配管119と接続する。本実施形態においては、リリーフバルブ121のパイロット配管157の接続先を変更することで、上限トルクを容易に変更することができる。
【0037】
パイロット配管157を第3接続配管119に接続した場合には、圧力設定バルブ124と連結し、上限油圧が10MPaとなる。
上限トルクを超えた過大なトルクがケリーバ9にかかった時には、過大なトルクが小歯車12を介し出力軸11が受ける。そのため、出力軸11に過大なトルクがかかることで第3配管153内に流出している油の圧力が高まり上限油圧の10MPaを超える。したがって、第3配管153内の圧力が上限油圧の10MPaを超えて高まり、リリーフバルブ121が作動し、開弁状態となる。
【0038】
リリーフバルブ121が開弁することにより、第3配管153と第6配管156は連通する。第6配管156に流出した油は第4配管154、第4逆止弁144を介して第2配管152に流出し、第2ポート102へと流出する。すなわち、第1ポート101と第2ポート102が連通される。
第1ポート101と第2ポート102が連通することにより、出力軸11は回転し、出力軸11と大歯車28は一体化状態から解放されフリーな状態となる。
【0039】
以上から、ケリーバ9の先端に取り付けられた掘削バケットの上限トルクを超えた過大トルクがケリーバ9に作用した時においては、ケーシングチューブ4が回転すると、係合部22を介して係合するトルクリミッタ本体部20が回転する。出力軸11と大歯車28の一体化が解除されるため、トルクリミッタ本体部20と係合するケリーバ回転体29は別々に回転し、ケリーバ回転体29内に固定されたケリーバ9に過大なトルクがかかることがない。そのため、ケリーバ9又は掘削バケットが破損することがない。
【0040】
本実施形態においては、伝達するトルクが、予め設定された上限油圧20MPaを越えたときに、ケーシングチューブ4とケリーバ9との動力伝達を切断する油圧モータ10を有する。また、油圧モータ10の出口ポートである第1ポート101を、リリーフバルブ121を介して、入口ポートである第2ポート102と接続している。そのため、リリーフバルブ121の油圧を調整することだけで過大トルクをケリーバ9に伝達することを防止することができる。
【0041】
また、機械的な摩擦係合部がないため、摩擦による損耗に対しての補修が必要ないため、メンテナンスコストを低減することができる。
【0042】
以上詳細に説明したように、本発明に係る動力伝達装置は、以下の構成及び作用効果を有する。
(1)チュービング装置3により回転、押し込みにより挿入されたケーシングチューブ4内をケリーバ9と掘削バケットからなる内部掘削装置により内部掘削するときに、チュービング装置3がケーシングチューブ4を回転させる力をケリーバ9と掘削バケットからなる内部掘削装置のケリーバ9に伝達する動力伝達装置2である。また、伝達するトルクが、予め設定された上限トルクを越えたときに、ケーシングチューブ4とケリーバ9との動力伝達を切断するトルクリミッタ本体部20を有する。また、トルクリミッタ本体部20は油圧モータ10を有し、油圧モータ10の出口ポートを、リリーフバルブ121を介して、入口ポートと接続することにより、上限トルクを設定する。さらに、リリーフバルブ121に接続可能な複数の第1油圧設定バルブ122、第2油圧設定バルブ123、第3油圧設定バルブ124を有し、リリーフバルブ121との接続を変更することにより、上限トルクを変更することができる。
それにより、トルクを油圧モータ10の油圧に変換して管理しているため、例えばドリルバケット41を使用するときにはリリーフバルブ121と第1油圧設定バルブ122を接続し、拡底バケット42を使用するときにはリリーフバルブ121と第3油圧設定バルブ124を接続することによりトルクを管理することができる。そのため、ドリルバケット41及び拡底バケット42を変更した時に、リリーフバルブ121と第1油圧設定バルブ122、第2油圧設定バルブ123、第3油圧設定バルブ124との接続を変更するだけで、トルクリミッタ本体部20の上限トルクを変更することができるため、容易にドリルバケット41及び拡底バケット42の交換に対応することができる。
【0043】
さらに、(1)に記載する動力伝達装置2において第1油圧設定バルブ122、第2油圧設定バルブ123、第3油圧設定バルブ124が作用する油圧が、予め調整済みであることにより、工事現場における工事作業工程において使用する複数の掘削バケットに対応する油圧値a1,a2,a3に調整しておけば、現場で調整する手間が省けるため、工事の効率化を図ることができる。
【0044】
(第2実施形態)
第2実施形態は、第1実施形態と油圧回路の構成が異なるのみで、その他は同様の構成を取るため、異なる構成の油圧回路を説明する。
図5に油圧回路210を示す。
図5のうち
図3に示す第1実施形態にかかる油圧回路110と同様の部分については同様の符号を示す。
図5に示すように、リリーフバルブ121はパイロット配管157と連通する。パイロット配管157は、第1手動弁211を介して連結配管213及び第1接続配管117と連通している。連結配管213は、第2手動弁212を介して第2接続配管118及び第3接続配管119と連結している。
【0045】
本実施形態においては、パイロット配管157は
図5に示すように、第1手動弁211がON状態にあるため、第1手動弁211を介して第1接続配管117と接続している。第1接続配管117は、上限油圧20MPaの第1油圧設定バルブ122と連結している。また、パイロット配管157は、連結配管213、第2手動弁212を介して第2接続配管118と連結している、第2接続配管118は、上限油圧15MPaの第2油圧設定バルブ123と連結している。また、パイロット配管157は、連結配管213、第2手動弁212を介して第3接続配管119と連結している、第3接続配管119は、上限油圧10MPaの第3油圧設定バルブ124と連結している。
リリーフバルブ121は、第1手動弁211及び第2手動弁212のON/OFFの切り替えにより、接続先を第1油圧設定バルブ122、第2油圧設定バルブ123、第3油圧設定バルブ124に変更することができ上限トルクを調整することができる。
【0046】
<動力伝達装置の作用効果>
・上限トルクを超える過大なトルクがケリーバに作用した使用状態
第2実施形態の動力伝達装置の作用効果も第1実施形態の動力伝達装置の作用効果と同一である。異なる作用効果についてのみ以下説明する。
例えば、本実施形態においては、ドリルバケット41と拡底バケット42では、上限トルクが異なる。その理由は、下方向に掘削をするドリルバケット41に比べて、拡底バケット42は拡径するため形状が複雑である。そのため、拡底バケット42の方が故障頻度が高いため上限トルクが小さい必要がある。
例えば、
図1に示すように、ドリルバケット41を使用する際には上限油圧を20MPaとするため第1手動弁211をON状態にする。それに対して、
図9及び
図10に示すように、拡底バケット42を使用する際には上限油圧を10MPaとするため第1手動弁
211をOFF状態にし、第2手動弁212をOFF状態にする。本実施形態においては、第1手動弁211及び第2手動弁212のON/OFFの切り替えにより、リリーフ
バルブ121の接続先を変更することができ上限トルクを調整することができる。そのため、第1実施形態と比較してパイロット配管157を接続変更することなく上限トルクを調整することができるため、作業性がよい。
【0047】
具体的には、
図5に示すように第1手動弁211がON状態にある場合には、パイロット配管157は、第1手動弁211を介し第1接続配管117に連通する。さらに、第1油圧設定バルブ122と連通するため定格油圧20MPa以上となるとリリーフバルブ121が開弁する。
また、第1手動弁211がOFF状態で、第2手動弁212がON状態にある場合には、パイロット配管157は、第1手動弁211、第1連結配管213、第2手動弁212を介し第2接続配管118に連通する。さらに、第2リリーフバルブ123と連通するため定格油圧15MPa以上となるとリリーフバルブ121が開弁する。
また、第1手動弁211がOFF状態で、第2手動弁212がOFF状態にある場合には、パイロット配管157は、第1手動弁211、第1連結配管213、第2手動弁212を介し第3接続配管119に連通する。さらに、第3リリーフバルブ124と連通するため定格油圧10MPa以上となるとリリーフバルブ121が開弁する。
また、第1手動弁211及び第2手動弁212を操作するだけで、配管をつなぎ直す必要がないため、さらに工事の効率化を図ることができる
【0048】
本実施形態においては、手動弁213のON/OFFによりリリーフバルブの使用を選択することができる。
【0049】
本実施形態は(1)又は(2)において、第1油圧設定バルブ122、第2油圧設定バルブ123、第3油圧設定バルブ124との接続を変更するための第1手動弁211及び第2手動弁212を有することにより第1手動弁211及び第2手動弁212を操作するだけで、配管をつなぎ直す必要がないため、さらに工事の効率化を図ることができる。
【0050】
<変形例>
尚、本発明は、上記実施の形態に限定されることなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で色々な応用が可能である。
例えば、本実施形態においては設定油圧の異なる油圧設定バルブを3つ設置することとしたが、4つ以上設置することもできる。4つ以上設置することにより上限トルクを4つ以上に変更することができる。また、油圧設定バルブが2つである場合には油圧設定を変更することができる。
例えば、本実施形態においては延設部21の下面には、ケーシングチューブ4に固設されている係合凹部45と係合する係合部22が付設することとしたが、延切部21の下面に係合凹部を付設し、ケーシングチューブ4に係合凸部を付設することもできる。