【解決手段】 建物100の軒の裏側に設けられ、上方に軒裏空間が形成される軒天井部材10である。前記軒天井部材10は、厚み方向に積層するように配置された少なくとも2枚の面材11a,11bと、前記少なくとも2枚の面材を固定する固定部材とを備え、前記固定部材は、前記少なくとも2枚の面材に挟まれるように積層配置された金属板部15と、前記金属板部に設けられ、面材の端縁を厚み方向に係止することで前記少なくとも2枚の面材を固定する固定金具14a,14bと、前記金属板部15に対する前記面材の主面に沿った方向の取り付け位置を異ならせるように位置決めする位置決め部16a,16bと、を備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の面材は、金属板を貼り付けることで耐火性能を向上させることを目的とするものでああるが、面材そのものの耐火性能は向上する
【0006】
しかし、軒裏天井構造は、壁面に沿って複数の軒裏天井板を並べて配置することが求められており、軒裏天井板の継ぎ目には隙間が生じてしまう。当該隙間部分には、面材が存在しないため耐火性能が劣り、結果として要求される性能を実現できない場合があった。
【0007】
したがって、本発明が解決しようとする技術的課題は、面材の継ぎ目をなくし、耐火性能が低い部分をなくすことができる軒天井部材及び軒裏天井構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記技術的課題を解決するために、以下の構成の軒天井部材及び軒裏天井構造を提供する。
【0009】
本発明の第1態様によれば、建物の軒の裏側に設けられ、上方に軒裏空間が形成される軒天井部材であって、
前記軒天井部材は、厚み方向に積層するように配置された少なくとも2枚の面材と、前記少なくとも2枚の面材を固定する固定部材とを備え、
前記固定部材は、
前記少なくとも2枚の面材に挟まれるように積層配置された金属板部と、
前記金属板部に設けられ、面材の端縁を厚み方向に係止することで前記少なくとも2枚の面材を固定する固定金具と、
前記金属板部に対する前記面材の主面に沿った方向の取り付け位置を異ならせるように位置決めする位置決め部と、を備えることを特徴とする、軒天井部材を提供する。
【0010】
本発明の第2態様によれば、前記固定金具は、金属板部の端縁から金属板部の両面側に伸びるように立設された鈎状の部材であり、
前記面材位置決め部は、金属板部の両面側にそれぞれ設けられ、一方が前記固定金具が設けられている端縁に隣接する端縁に、他方が前記金属板部の中間位置に設けられていることを特徴とする、第1態様の軒天井部材を提供する。
【0011】
本発明の第3態様によれば、建物の軒の裏側に軒天井部材を設け、前記軒天井部材の上方に軒裏空間が形成されている軒裏天井構造であって、
前記軒天井部材は、厚み方向に積層するように配置された少なくとも2枚の面材と、前記少なくとも2枚の面材を固定する固定部材とを備え、
前記固定部材は、
前記少なくとも2枚の面材に挟まれるように積層配置された金属板部と、
前記金属板部に設けられ、面材の端縁を厚み方向に係止することで前記少なくとも2枚の面材を固定する固定金具と、
前記金属板部に対する前記面材の主面に沿った方向の取り付け位置を異ならせるように位置決めする位置決め部と、を備えることを特徴とする、軒裏天井構造を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、2枚の面材を互いにずらした状態に固定することで、いわゆる相じゃくり構成とすることができ、軒天井部材間の継ぎ目をなくすることができる。したがって、面材が設けられていない部分をなくすことができ、部分的に耐火性能が劣ることを防止することができる。また、面材がずれて配置されている箇所には、金属板部が設けられているため、面材に較べて高い耐火性能を可能とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る通気化粧部材及び当該通気化粧部材を用いた軒裏天井構造について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は本発明の実施形態にかかる軒裏天井構造が用いられた家屋の例を示す図である。
本実施形態にかかる軒裏天井構造1は、建物の軒の裏側に軒天井部材を設け、前記軒天井部材の上方に軒裏空間が形成されており、天井裏換気に優れたものである。なお、本発明の軒裏天井構造は、屋根101の破風側102又は鼻隠し側103のいずれにも用いることができる。以下、本発明の各実施形態にかかる軒裏天井構造について詳細に説明する。
【0016】
図2は、本発明の第1実施形態にかかる軒裏天井構造の例を示す断面図である。本実施形態は、破風側の軒裏天井構造を例として説明するものであり、
図1のII-II線における断面図に相当する。
【0017】
本実施形態にかかる軒裏天井構造1においては、上記の通り破風側の軒裏天井構造の例であり、本実施形態にかかる軒裏天井構造1では、垂木3の上に野地板4を敷いて、瓦などの屋根化粧材(図示なし)を載せる。野地板4の先端部分には水切り板5が設けられる。
【0018】
また、垂木3の先端側には野縁6が設けられている。野縁6は、垂木3の延在方向に沿って交差する方向に設けられており、当該野縁6に下地材7及び通気胴縁8が固定される。
【0019】
通気胴縁8は、軒天井部材10を固定するための部材であり、垂木3と平行に所定の間隔をおいて配置される縦胴縁8aと、それぞれの縦胴縁の後端部分を連結して補強する横胴縁8bとが設けられる。
【0020】
軒天井部材10は、通気胴縁8及び家壁9に固定される。また、通気胴縁8によって画定される垂木3及び軒天井部材10との間の隙間8cには、断熱材20を配置してもよい。
【0021】
軒天井部材10を家壁9に係止する軒天取り付け金具21は、先端側で軒天井部材10の壁側端縁を上下方向から狭持する一方、後端側で家壁の上端に積載係止する。また、軒天井部材10の通気胴縁8への固定には、釘やドリルビスなどの固定手段23が用いられる。なお、軒天井部材10の固定方法は、上記に限られるものではない。
【0022】
化粧破風2は、破風取り付け金具24を介して下地材7に固定される。また、下地材7には、けらばに設けられる瓦などの屋根化粧部材(図示なし)によって化粧破風2に荷重が集中しないように、保持部材25が釘26aなどの手段によって固定されている。また、保持部材25には、水切り板5が釘26bによって固定されている。
【0023】
化粧破風2は、板状に構成されている。軒天井部材10には、後述する通気構造が設けられており、軒裏への通気が確保されている。
【0024】
化粧破風2は、セメント系押出成形体からなり、曲げ載荷に際して、好ましくは、引っ張り応力の作用に対しても、多重亀裂を生じて破壊する高い靱性を有するものが好適に使用される。さらに具体的には、繊維補強水硬性組成物の押出成形体を採用し、これにより曲げ載荷に際して、多重亀裂を生じて破壊する性質を持たせたものなどを好適に使用できる。
【0025】
本実施形態において、化粧破風2は、例えば、長手方向の寸法が3000mm、高さ方向寸法が180mm程度、厚み寸法が25mm程度の長尺平板上の部材である。なお、化粧破風2の大きさは、必ずしも上記サイズに限定されるものではなく、軒裏天井構造の大きさに応じて適宜変更することができる。
【0026】
図3は、本実施形態にかかる軒裏天井構造に用いられる軒天井部材の構成を示す斜視図である。軒天井部材10は、
図2及び
図3に示すように、2枚の面材11a,11bの間に第1固定部材12の一部である金属板部15が挟まれた3層構造となっている。また、軒天井部材10の軒先側には、これらの3層をまとめて挟持して固定する、第2固定部材13が設けられている。
【0027】
2枚の面材11a,11bは、所定の耐火性能を有する平板状の繊維混入けい酸カルシウム板により形成されており、当該けい酸カルシウム板の厚さは、それぞれ6mm〜25mmが好適に用いられる。本実施形態では、耐火性能の観点からは10〜20mmの厚さを有するものが用いられている。ここで、軒天井部材10の所定の耐火性能とは、例えば、軒天井部材10を敷設した軒に対して所定の耐火試験を行った際に、当該軒の軒裏空間と外壁との間に設けられる板(標準板という)裏面の温度を所定時間の間一定の温度以下の雰囲気に維持することを可能とする性能のことを示すが、建築基準法により規定されている性能についても当然に含み、将来規定されるあらゆる評価試験において規定される性能のことをも含む。
【0028】
本実施形態においては、面材11a,11bとして繊維混入けい酸カルシウム板を採用しているが、面材11a,11bとしては、繊維混入けい酸カルシウム板に代えて、繊維混入セメントけい酸カルシウム板、繊維補強セメント板、石灰・けい酸カルシウム板、硬質木片セメント板等の窯業系サイディングボード等が用いられ、面材11a,11bの厚さは、要求される耐火性能や材質によって適宜選択される。
【0029】
第1固定部材12は、厚みが0.2〜3mm程度、好ましくは0.5〜2.5mm程度のステンレス板、鋼板、アルミニウム板で構成することができる。金属板部15を設けることにより、金属板部15が、当該面材11a,11bの耐火性能を補完して軒天井部材10全体の耐火時間を延長させることができる。
【0030】
2枚の面材11a,11bの間に位置する金属板部15は、第1固定部材12の一部を構成するものである。金属板部15の大きさは、概ね固定する面材11a,11bの大きさと同程度に構成されている。
【0031】
また、第1固定部材12は、2枚の面材11a,11bを互いに固定する固定金具14a,14bを備えている。固定金具14a,14bは、金属板部15の一端縁から両面側に伸びるように立設されており、鈎状に構成されて2枚の面材11a,11bを厚み方向に係止して固定する。
【0032】
本実施形態では、第1固定部材12は、1枚の板材に切り込みを入れ、切り込みの端縁を図示下向きに、例えばプレス成形等で折り曲げることにより固定金具14bを形成すると供に、当該切り込み部分が固定金具14aとして形成される。
【0033】
軒天井部材10は、
図3及び
図6に示すように、2枚の面材11a,11bを金属板部15に積層するように配置し、第1固定部材12の固定金具14a,14bにより厚み方向に係止させた後、第2固定部材13により、3層をまとめて厚み方向に挟持することにより固定される。この構成を採用することにより、3層の間に接着剤塗布やビス止めなどをしなくてもしっかりと各部材を固定することができる。
【0034】
また、金属板部15の両面には、それぞれの面材11a,11bの位置決めを行う面材位置決め部16a,16bが設けられている。本実施形態においては、一方の面材位置決め部16aは金属板部15の中間位置(端縁ではない位置)に設けられ、他方の面材位置決め部16bは金属板部15の固定金具14a,14bが設けられている端縁15aに隣接する端縁15bに設けられている。このように、面材位置決め部の位置を異ならせることにより、
図7に示すように2枚の面材の継ぎ目の位置を異ならせて、いわゆる相じゃくり構成とすることができ、面材の継ぎ目部分の耐火性能を向上させることができる。
【0035】
第2固定部材13は、
図8に示すように、軒天井部材10を構成する2枚の面材11a,11b及び金属板部15からなる3層をまとめて固定する固定部17と、固定部17下端部分から面材の主面方向に突出して設けられた通気用凸片の一例である庇部18が設けられている。庇部18には、厚み方向に貫通して設けられた通気孔19が複数設けられており、当該通気孔19を介して軒下と外部との通気することができる。
【0036】
庇部18は、通気フィルタ29を保持することができるように、上方に折り返して構成されており、庇部の上面18aと下面18bとで通気フィルタ29を挟持する。通気フィルタ29は、細長い棒状のメッシュ材料で構成されており、通気をさせつつ防水、防虫機能を持たせた部材である。一例としては、厚み数cmのハニカム材などを好適に用いることができる。
【0037】
化粧破風2の下端部分には、軒天井部材10の下側へ張り出した張り出し部30が設けられている。張り出し部30を設けることにより、軒天井部材10と化粧破風2との隙間を小さくすると共に、当該隙間を軒天下側から視認しにくくすることができる。当該軒天井部材10と化粧破風2との隙間31には、湿式のシール材などを塗布し、軒天井部材10と化粧破風2とを接続させる。張り出し部30によって隙間31が十分に小さくなるため、湿式のシール材等の塗布を容易にすることができる。
【0038】
本実施形態にかかる軒裏天井構造においては、
図2の矢印90に示すように、第2固定部材13に設けられた通気孔19を通気経路として、屋根裏と外気との間の換気を行なうことができる。
【0039】
次に、上記化粧破風を用いた軒裏天井構造の施工方法について説明する。本実施形態にかかる軒裏天井構造は、予め種々の厚みの面材を準備することなく、2枚の面材を積層させることによって、面材単独では十分でない所望の耐火性能を発揮させることができるものである。
【0040】
軒下構造の骨組みである垂木3及び野縁6を組みあげる。これらの骨組み構造に下地材7を固定し、通気胴縁8を取り付ける。その後、野地板4、水切り板5、保持部材25等を取り付ける。
【0041】
破風取り付け金具24を位置決めし、下地材7に固定する。上記のように破風取り付け金具24には、係止片24aが設けられており、化粧破風2の上下方向の取り付け位置が決定される。係止片24aを化粧破風2の固定溝内に挿入し、化粧破風2を下地材7の表面に沿うように配置する。次いで、ビス28を用いて、化粧破風2を固定する。
【0042】
次いで、軒天井部材10の寸法を決定し、上記のように、第1固定部材12及び2枚の面材11a,11bを建築物に合わせた大きさに適宜切断して、第1固定部材12の固定金具14a,14b及び面材位置決め部16a,16bに当接するように、2枚の面材11a,11bを取り付け、第2の固定部材により3層を固定して軒天井部材10を組立てる。このとき用いる面材11a、11bの厚みは、任意のものを用いてもよく、軒天井部材10全体として、要求される耐火性能を発揮できればよい。
【0043】
その後、通気胴縁8に軒天井部材10を釘23及び軒天取り付け金具21を用いて取り付ける。この際、軒天井部材10の庇部18は、化粧破風2の張り出し部30の上側に載置されるように軒天の寸法を決定する。なお、張り出し部30が軒天の下側に張り出しているため、軒天井部材10と化粧破風2との隙間が外部から視認されにくく、軒天井部材10の寸法調整を容易にすることができる。
【0044】
軒天井部材10を取り付けた後、軒天井部材10と化粧破風2との隙間31をシール材で密閉する。
【0045】
上記のようにして構成された軒裏天井構造においては、
図2に示すように、屋根裏と外気とを通気するための通気経路90が形成される。また、2枚の面材を用いて軒天井部材10を組立てるため、耐火性能を向上させることができ、建築物ごとに要求される耐火性能を実現するために、厚み寸法の異なる面材を用意する必要がない。
【0046】
以上説明したように、2枚の面材を互いにずらした状態に固定することで、いわゆる相じゃくり構成とすることができ、軒天井部材間の継ぎ目をなくすることができる。したがって、面材が設けられていない部分をなくすことができ、部分的に耐火性能が劣ることを防止することができる。また、面材がずれては位置されている箇所には、金属板部が設けられているため、面材に較べて高い耐火性能を可能とすることができる。
【0047】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施可能である。例えば、面材位置決め部は金属板部の表面に、固定金具と別に設けられている必要はなく、
図9に示すように、一体的に構成されていてもよい。