(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-31068(P2015-31068A)
(43)【公開日】2015年2月16日
(54)【発明の名称】嵩上げ機能を具えた堤防
(51)【国際特許分類】
E02B 3/14 20060101AFI20150120BHJP
E02B 3/12 20060101ALI20150120BHJP
【FI】
E02B3/14 301
E02B3/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-161637(P2013-161637)
(22)【出願日】2013年8月2日
(71)【出願人】
【識別番号】306024805
【氏名又は名称】株式会社 林物産発明研究所
(72)【発明者】
【氏名】林 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】林 和志郎
(72)【発明者】
【氏名】林 宏三郎
(72)【発明者】
【氏名】林 加奈子
【テーマコード(参考)】
2D118
【Fターム(参考)】
2D118AA11
2D118AA12
2D118DA05
2D118FB03
2D118HA03
2D118HA12
2D118HA20
2D118HA34
2D118HB04
2D118HD01
2D118JA07
2D118JA11
(57)【要約】
【課題】台風時等に発生する高波に際して、波浪が堤防を越えない様にその高さを嵩上げすることが出来るようにした新規の堤防の提供を図る。
【解決手段】 高さの異なる嵩上げ用第1隔壁ブロック1bと嵩上げ用第2隔壁ブロック1cとを堤防に対する所要の載置安定部材を隔てて上下方向に形成した嵩上げ用ブロックパネル1を具え、堤防2の上面に長さ方向に沿って嵩上げ用スリット2aを設け、嵩上げ用ブロックパネル1はその嵩上げ用第1隔壁ブロック1bと嵩上げ用第2隔壁ブロック1cの何れか一方を嵩上げ用スリット2a内に挿し込むことにより、他方の隔壁ブロックが起立状態での安定化が図られるように構成した嵩上げ機能を具えた堤防。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高さの異なる嵩上げ用第1隔壁ブロック(1b)と嵩上げ用第2隔壁ブロック(1c)とを堤防に対する所要の載置安定部材を隔てて上下方向に形成した嵩上げ用ブロックパネル(1)を具え、堤防(2)の上面に長さ方向に沿って嵩上げ用スリット(2a)を設け、嵩上げ用ブロックパネル(1)はその嵩上げ用第1隔壁ブロック(1b)と嵩上げ用第2隔壁ブロック(1c)の何れか一方を嵩上げ用スリット(2a)内に挿し込むことにより、他方の隔壁ブロックが起立状態での安定化が図られるように構成した嵩上げ機能を具えた堤防。
【請求項2】
嵩上げ用ブロックパネル(1)の載置安定部材として、嵩上げ用第1隔壁ブロック(1b)と嵩上げ用第2ブロック(1c)の隣接部に鍔状ブロック(1a)を形成すると共に、当該鍔状ブロック(1a)に対する嵌合用幅広凹窪部(2b)を嵩上げ用スリット(2a)の開口部に形成した請求項1に記載の嵩上げ機能を具えた堤防。
【請求項3】
嵩上げ用スリット(2)の上面は適宜な蓋体(3)で閉じておくことが出来るように構成した請求項1または請求項2の何れかに記載の嵩上げ機能を具えた堤防。
【請求項4】
高さの異なる嵩上げ用第1隔壁ブロック(1b)と嵩上げ用第2ブロック(1c)とを堤防に対する所要の載置安定部材を隔てて上下方向に形成した嵩上げ用ブロックパネル(1)を、中空状に形成した請求項1乃至請求項3の何れかに記載の嵩上げ機能を具えた堤防。
【請求項5】
堤防(2)の嵩上げ用スリットとして、鞘状の部材(20a)を堤防に埋設するように構成した請求項1乃至請求項4の何れかに記載の嵩上げ機能を具えた堤防。
【請求項6】
嵩上げ用ブロックパネル(1)は各障壁ブロックの高さの異なるものを組み合わせて複数種類用意して、これをセットとして管理するように構成した嵩上げ機能を具えた堤防。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台風時等に発生する高波に際して、波浪が堤防を越えない様にその高さを嵩上げすることが出来るようにした堤防に関する。
【背景技術】
【0002】
水害時などに河川、湖沼などの氾濫を防ぐために麻袋等の丈夫な袋に土砂等の充填物を入れた土嚢を積み上げて堤防を嵩上げして決壊を防止することが昔から行われている。 然し乍、土嚢の充填物である土壌を緊急事態時に即座に用意することは、現代においては殆ど不可能である。
【0003】
そこで、土嚢を用いない方式として、堤防の嵩上げを所定の形状に形成した土木資材を用いる様に構成したものがある(例えば特許文献1及び特許文献2参照。)。 これは本願と同一の発明者及び同一出願人に係るものである。 そして、所定の形状に形成されている土木資材を、決壊が予想される堤防の上面に組み込むようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−42982号公報
【特許文献2】特開2010−111993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような土木資材を組み込むようにしたものであると、堤防の決壊が予想される時にその組立作業上の迅速対応性の点においてやや欠けることがある。 そして、その嵩上げ高さは定まったものに限定され、これの調節を行うことは通常は出来なかった。
【0006】
本発明はこのような従来の問題を排し、最低限高低2段階の嵩上げ作業が瞬時に達成可能とするように構成した新規の堤防の提供を図ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は請求項1に記載のように、高さの異なる嵩上げ用第1隔壁ブロック1bと嵩上げ用第2隔壁ブロック1cとを堤防に対する所要の載置安定部材を隔てて上下方向に形成した嵩上げ用ブロックパネル1を具え、堤防2の上面に長さ方向に沿って嵩上げ用スリット2aを設け、嵩上げ用ブロックパネル1はその嵩上げ用第1隔壁ブロック1bと嵩上げ用第2隔壁ブロック1cの何れか一方を嵩上げ用スリット2a内に挿し込むことにより、他方の隔壁ブロックが起立状態での安定化が図られるように構成した嵩上げ機能を具えた堤防に係る。
【0008】
本発明は請求項2に記載のように、嵩上げ用ブロックパネル1の載置安定部材として、嵩上げ用第1隔壁ブロック1bと嵩上げ用第2ブロック1cの隣接部に鍔状ブロック1aを形成すると共に、当該鍔状ブロック1aに対する嵌合用幅広凹窪部を嵩上げ用スリット2aの開口部に形成した請求項1に記載の嵩上げ機能を具えた堤防を実施の態様とする。
【0009】
本発明は請求項3に記載のように、嵩上げ用スリット2の上面は適宜な蓋体3で閉じておくことが出来るように構成した請求項1または請求項2の何れかに記載の嵩上げ機能を具えた堤防を実施の態様とする。
【0010】
本発明は請求項4に記載のように、高さの異なる嵩上げ用第1隔壁ブロック1bと嵩上げ用第2ブロック1cとを堤防に対する所要の載置安定部材を隔てて上下方向に形成した嵩上げ用ブロックパネル1を、中空状に形成した請求項1乃至請求項3の何れかに記載の嵩上げ機能を具えた堤防を実施の態様とする。
【0011】
本発明は請求項5に記載のように、堤防2の嵩上げ用スリットとして、鞘状の部材20aを堤防に埋設するように構成した請求項1乃至請求項4の何れかに記載の嵩上げ機能を具えた堤防を実施の態様とする。
【0012】
本発明は請求項6に記載のように、嵩上げ用ブロックパネル1は各障壁ブロックの高さの異なるものを組み合わせて複数種類用意して、これをセットとして管理するように構成した嵩上げ機能を具えた堤防を実施の態様とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は請求項1に記載のような構成、すなわち、高さの異なる嵩上げ用第1隔壁ブロック1bと嵩上げ用第2隔壁ブロック1cとを堤防に対する所要の載置安定部材を隔てて上下方向に形成した嵩上げ用ブロックパネル1を具え、堤防2の上面に長さ方向に沿って嵩上げ用スリット2aを設け、嵩上げ用ブロックパネル1はその嵩上げ用第1隔壁ブロック1bと嵩上げ用第2隔壁ブロック1cの何れか一方を嵩上げ用スリット2a内に挿し込むことにより、他方の隔壁ブロックが起立状態での安定化が図られるように構成したから、嵩上げしない状態、そして、例えばやや丈高とする嵩上げ並びに著しく丈高とする嵩上げ、への転化が極めて容易かつ迅速に果たすことが出来る。
従って、天気予報のデータに基づきこれに適した対応を果たすことが出来る。
【0014】
本発明は請求項2に記載のような構成、すなわち、嵩上げ用ブロックパネル1の載置安定部材として、嵩上げ用第1隔壁ブロック1bと嵩上げ用第2ブロック1cの隣接部に鍔状ブロック1aを形成すると共に、当該鍔状ブロック1aに対する嵌合用幅広凹窪部を嵩上げ用スリット2aの開口部に形成することにより、その切り替えは嵩上げ用ブロックパネル1の単なる差し替え的な載置で達成されから、例えばボルト締め等を要する場合に比として、様作業の容易性は著しいものとされる。
【0015】
本発明は請求項3に記載のような構成、すなわち、嵩上げ用スリット2の上面は適宜な蓋体3で閉じておくことが出来るように構成することにより、当該スリット内に対する雨水が溜まったり土砂が入り込んだりすることを防止できる。
【0016】
本発明は請求項4に記載のような構成、すなわち、高さの異なる嵩上げ用第1隔壁ブロック1bと嵩上げ用第2ブロック1cとを堤防に対する所要の載置安定部材を隔てて上下方向に形成した嵩上げ用ブロックパネル1を、中空状に形成することに依り、嵩上げ用ブロックパネルの著しい軽量化と製造コストの低廉化が図られることとなり、当該軽量化は作業の容易性迅速性に大きく貢献することとなる。
【0017】
本発明は請求項5に記載のような構成、すなわち、堤防2の嵩上げ用スリットとして、鞘状の部材20aを堤防に埋設するように構成することにより、嵩上げ用ス率と部分の製造の容易化と、寸法的な正確性確保が果たされることとなる。
【0018】
本発明は請求項6に記載のような構成、すなわち、嵩上げ用ブロックパネル1は各障壁ブロックの高さの異なるものを組み合わせて複数種類用意して、これをセットとして管理するように構成することにより、高波に対するきめの細かい嵩上げ高さの選定が果たされることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の要旨部材とする嵩上げ用ブロックパネル1を表した斜視図である。
【
図6】本発明の他の実施例を表した横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は近代の天気予報がもたらす情報の正確性に着眼して発明したものである。 すなわち、例えば台風情報を例に採ると、その発生から進路及び規模に関して刻々と情報が提供されている。 従って、台風の進路に当たる地域においては、何時頃どの程度の規模の台風が押し寄せるか、また、発生する高波の大きさもある程度予想されるものである。
【0021】
本発明は台風予想地域の堤防に対して、どの程度の高さの高波が押し寄せるかを予め推定しておき、それに見合う高さの嵩上げを前もって行っておくことが出来るようなシステムを採ることを可能とするような堤防の提供を図り、以て、台風に対する適切かつ合理的なる堤防管理が成されるようにしたものである。
【0022】
図において、1は本発明の要旨部材たる嵩上げ用ブロックパネルであって、後記堤防に対する載置用たる鍔状ブロック1aを隔てて、高さの異なる嵩上げ用第1隔壁ブロック1bと嵩上げ用第2ブロック1cとが上下方向に同一平面的に形成してある(
図1参照)。
【0023】
2は堤防であって、その上面には長さ方向に沿って嵩上げ用スリット2aが設けられている。 そして、当該スリット2aは、前述した嵩上げ用ブロックパネル1の最長とする隔壁ブロック部分が挿し込まれて充分収容できる程度の深さを具えていると共に、その上端開口部は、嵩上げ用ブロックパネル1の鍔状ブロック1a部分を嵌合させて載置安定化するための嵌合用幅広凹窪部2bが形成されている。
【0024】
上記堤防2であるが、通常は
図2に示すような形態を常態とし、その嵩上げ用スリット2の上面は適宜な蓋体3で閉じておくことにより、雨水等の侵入を阻止するようになっている。そして、嵩上げ用ブロックパネル1は倉庫等に収容して待機状態に保っておく。
【0025】
大型台風の来襲が予想され、発生する高波が堤防2の既設高さを超える心配がある場合は、嵩上げ用ブロックパネル1における 丈高の方の隔壁ブロック1cを、堤防2の嵩上げ用スリット2内に差し込むことにより、その丈低な隔壁ブロック1b部分を堤防上に立設する。 この時、鍔状ブロック1a部分が嵌合用幅広凹窪部2b内に合致してその安定化が図られる。 このような作業を
図4に示すように、堤防の必要部分、通常は堤防の全長に亘って所要枚数の嵩上げ用ブロックパネル1を取付けることにより、堤防の嵩上げ作業は完了する。
【0026】
予想台風が大型で、発生する高波も極めて大きいと予想される場合は、上記した嵩上げ用ブロックパネル1の取付けを上下逆転させて丈高な隔壁ブロック1c部分を堤防上に立設する。 これにより、堤防2は
図5に示すように丈高な隔壁ブロック1cによる嵩上げが成され、大きな高波に対する対応状態に転化される。
【0027】
図6は本発明の他の実施例を表したものであって、嵩上げ用ブロックパネルを中空状のもの10とすることにより、軽量化を図ると同時に、製造の低コスト化が図られる。
【0028】
また、堤防2の嵩上げ用スリットとして、図示のような鞘状の部材20aを用い、これを堤防2に埋設するように構成することにより、当該部分の製造の容易性及び強靭化を図ることが出来る。 これは嵩上げ用ブロックパネルを中空状のものとするか否かとは無関係に実施可能とされるものである。
【0029】
ところで、図面においては堤防に対して一種類の嵩上げ用ブロックパネル1を所要枚数準備して一つのセットとするように構成してある。 然し乍、当該嵩上げ用ブロックパネル1は各障壁ブロックの高さの異なるものを組み合わせて複数種類用意して、これをセットとして管理することにより、高波に対するきめの細かい嵩上げ高さの選定が成される。 本発明はこのような形態で実施する場合もある。
【符号の説明】
【0030】
1 嵩上げ用ブロックパネル
1a 鍔状ブロック
1b 嵩上げ用第1隔壁ブロック
1c 嵩上げ用第2隔壁ブロック
2 堤防
2a 嵩上げ用スリット
2b 嵌合用幅広凹窪部
20a 鞘状の部材