特開2015-3275(P2015-3275A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-3275(P2015-3275A)
(43)【公開日】2015年1月8日
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
   A62B 18/02 20060101AFI20141205BHJP
【FI】
   A62B18/02 C
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-207829(P2014-207829)
(22)【出願日】2014年10月9日
(62)【分割の表示】特願2009-251128(P2009-251128)の分割
【原出願日】2009年10月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100098752
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 吏規夫
(72)【発明者】
【氏名】藤村 利晴
(72)【発明者】
【氏名】板倉 敦彦
(72)【発明者】
【氏名】荒川 哲吉
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185BA01
2E185BA04
2E185BA16
2E185BA17
2E185CB11
2E185CC73
(57)【要約】
【課題】使用中にずれにくく、通気性が良好であって使用感に優れ、しかも製造工数が少なく、安価なマスクの提供を目的とする。
【解決手段】口および鼻孔を含む顔面の一部を覆い、左右両端側に耳掛け部13を有するマスク10として、一端11a側に耳掛け部13として開口部13aが形成され、他端11bに外方へ膨らんだ湾曲形状部15が形成されたシート状のマスク半体11の2枚を、湾曲形状部15で接合し、接合した湾曲形状部15が2枚のマスク半体11,11を広げた際にマスク外方へ膨出するようにし、マスク半体11の材質を、弾性を有するポリウレタンフォームを除膜したもので構成した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
口および鼻孔を含む顔面の一部を覆い、左右両端側に耳掛け部を有するマスクにおいて、
弾性を有し、伸び率が200%以上500%以下、セル数が40個/25mm以上110個/25mm以下、厚みが1〜4mmの除膜したシート状ポリエステル系ポリウレタンフォームの一端側に耳掛け部としての開口部を形成し、他端に外方へ膨らんだ湾曲形状部を形成した2枚のマスク半体を前記湾曲形状部で接合することにより、前記接合した湾曲形状部が前記2枚のマスク半体を広げた際にマスク外方へ膨出する部分となり、該膨出部分から左右両端側の耳掛け部に至るまで除膜されたポリウレタンフォームで形成されていることを特徴とするマスク。
【請求項2】
前記耳掛け部としての開口部が楕円形であり、前記開口部と前記耳掛け部の外周縁との間隔が2mm以上であることを特徴とする請求項1記載のマスク。
【請求項3】
前記マスクは、口および鼻孔を含む顔面の一部を覆うことで、使用時にずれることなく花粉を遮断することを特徴とする請求項1又は2記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口および鼻孔を含む顔面の一部を覆い、左右両端側に耳掛け部を有するマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マスクとして、口および鼻孔を含む顔面の一部を覆うガーゼや不織布からなる本体部に、ゴム紐等からなる別部材の耳掛け部を取り付けたものが広く知られている。また、中央部の裁断線を縫い合わせることにより鼻の高さに合う膨出形状にしたマスクが提案されている(特許文献1)。また、口および鼻孔を含む顔面の一部を覆う本体部を低反発のポリウレタンフォームで構成したマスクが提案されている(特許文献2)。また、内面素材の両面に基材シートを積層して縦および横方向の伸縮性を付与した3層構造からなる一枚の通気性シート材で構成したマスクが提案されている(特許文献3)。
【0003】
しかし、従来のマスクは、それぞれのマスクが目的としている問題については改善するものの、他の問題を有している。例えば、本体部と耳掛け部が別体のマスクにあっては、本体部と耳掛け部の一体化等の工数が必要なために高価になる問題がある。また、ガーゼや不織布からなるマスクにあっては、顔面との接触部に隙間を生じやすく、さらに接触部での摩擦抵抗が低いために使用中にずれやすい問題がある。また、低反発のポリウレタンフォームからなるマスクにあっては、除膜処理がなされない場合、通気性が低いために不快に感じる問題や、低反発のポリウレタンフォーム自体が高価なため、マスクが高価になる問題がある。また、3層構造のマスクは製造工数が多いために高価になる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭53−4799号公報
【特許文献2】特開2008−136754号公報
【特許文献3】特開2007−14577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、使用中にずれにくく、通気性が良好で使用感に優れ、しかも製造工数が少なく、安価なマスクの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、口および鼻孔を含む顔面の一部を覆い、左右両端側に耳掛け部を有するマスクにおいて、弾性を有し、伸び率が200%以上500%以下、セル数が40個/25mm以上110個/25mm以下、厚みが1〜4mmの除膜したシート状ポリエステル系ポリウレタンフォームの一端側に耳掛け部としての開口部を形成し、他端に外方へ膨らんだ湾曲形状部を形成した2枚のマスク半体を前記湾曲形状部で接合することにより、前記接合した湾曲形状部が前記2枚のマスク半体を広げた際にマスク外方へ膨出する部分となり、該膨出部分から左右両端側の耳掛け部に至るまで除膜されたポリウレタンフォームで形成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1において、前記耳掛け部としての開口部が楕円形であり、前記開口部と前記耳掛け部の外周縁との間隔が2mm以上であることを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記マスクは、口および鼻孔を含む顔面の一部を覆うことで、使用時にずれることなく花粉を遮断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、弾性を有するポリウレタンフォームを除膜したものからなるシート状の2枚のマスク半体を接合したものでマスクが構成されているため、マスクを製造する際に、2枚のマスク半体を湾曲形状部で接合すればよく、耳掛け部を別に取り付ける必要もないことから、材料が1種類であり、部品点数が2点と少ないため、製造工数が少なく、マスクが安価となる。また、弾性を有するポリウレタンフォームを除膜したものは、ポリウレタンフォーム自体の特性から、方向性の無い良好な弾性と良好な摩擦抵抗を有するため、および、マスクを顔面に装着した際に鼻の先端側および口の付近を覆う部分となる2枚のマスク半体の接合された湾曲形状部分が、2枚のマスク半体を広げた際にマスク外方へ膨出するため、マスクの周縁が顔面に密着し易くなると共に、その密着部での摩擦抵抗によってずれにくくなる。さらに、弾性を有するポリウレタンフォームを除膜したものは、セル膜の除去により三次元網状構造となっているものであるため、良好な通気性を有し、マスクの使用時に息苦しさを感じにくく、使用感が良好である。
【0010】
さらに本発明によれば、弾性を有する、伸び率が200%以上500%以下、セル数が40個/25mm以上110個/25mm以下、厚みが1〜4mmの除膜したシート状ポリエステル系ポリウレタンフォームを使用し、耳を掛ける開口部と耳掛け部の外周縁との間隔を2mm以上とすることで、耳掛け部を引っ張った際に耳掛け部付近で破断しにくくなる。さらに、前記除膜したシート状ポリエステル系ポリウレタンフォームでマスクを構成し、口および鼻孔を含む顔面の一部をマスクが覆うことで、使用時にマスクがずれることなく花粉を遮断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るマスクの斜視図である。
図2図1のマスクにおいて2枚のマスク半体を重ねた状態を示す斜視図である。
図3図1のマスクを製造する際の工程を示す図である。
図4】実施例のマスク半体の形状を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のマスクの実施形態について、図面を用いて説明する。図1および図2に示すマスク10は、口および鼻孔を含む顔面の一部を覆い、左右両端側に耳掛け部13を有するものであり、2枚のシート状のマスク半体11,11を接合したものからなる。
【0013】
前記マスク半体11は、弾性を有するポリウレタンフォームを除膜したシート状のものである。前記弾性を有するポリウレタンフォームとしては、ポリエーテル系、ポリエステル系の何れでもよいが、ポリエステル系とすれば、2枚のマスク半体11,11の接合を溶着で行うことができ、健康面に心配のある接着剤を用いなくても接合することができる。また、弾性を有するポリウレタンフォームの除膜は、ポリウレタンフォームのセル膜除去であり、公知の除膜処理、例えば溶剤によってセル膜を溶解する方法、爆発によりセル膜を破壊する方法等により行われる。
【0014】
前記弾性を有するポリウレタンフォームを除膜したものは、伸び率(JIS K6400−5:2004ダンベル2号型)が200%以上500%以下、セル数(JIS K6400−1:2004付属書1(参考))が40個/25mm以上110個/25mm以下のものがより好ましい。伸び率を前記範囲とすれば、前記マスク10の周縁が顔面により良好に密着し、顔面との間に隙間を生じにくくなると共に、耳掛け部が切れにくくなり、また耳が痛くなり難い。また、セル数を前記範囲とすれば、前記マスク10の周縁部表面が、マスクのずれ防止に関してより良好な摩擦抵抗を有するようになると共に、肌に対してザラザラした感じを与えない上、息苦しさを感じなくなり、より良好な装着感が得られる。セル数が40個/25mm未満であれば、花粉などの集じん率が低下し、セル数が110個/25mmより多い除膜したポリウレタンフォームは、製造が困難であり現実的でない。
【0015】
前記マスク半体11の厚み、すなわち前記弾性を有するポリウレタンフォームを除膜したものの厚みは1〜4mmが好ましい。厚みが1mmよりも薄い場合には扱いにくく、顔面へマスク11を装着する際などに破断し易くなる。一方、厚みが4mmよりも厚い場合には、嵩張るために扱いにくくなると共に、マスクのコストが高くなる。
【0016】
前記マスク半体11の形状は、前記マスク10の左右方向中間位置で2分された形状からなり、一端11a側に耳掛け部13として開口部13aが形成され、他端11bに外方へ膨らんだ湾曲形状部15が形成されたものからなる。図示の実施形態では、図2に示すように、前記マスク半体11における左右(長さ方向)のほぼ中間位置M1から前記湾曲形状部15が形成されている他端11bへ向かって幅(使用時の上下幅)が拡大した形状からなる。
【0017】
前記耳掛け部13としての開口部13aは貫通孔からなり、前記マスク10を顔面へ装着する際に耳が挿入されて耳に引っかけられる大きさに形成されている。前記開口部13aの形状は、耳の挿入が可能な大きさの孔であればよく、特に限定されない。例えば、円形、四角形、楕円形等、適宜の形状の孔を挙げる。また、前記開口部13aと前記マスク半体11の外周縁との間隔dは、最も狭い部分で2mm以上にして、前記耳掛け部13を引っ張った際に前記耳掛け部13付近で破断しにくくするのが好ましい。
【0018】
前記湾曲形状部15は、2つの前記マスク半体11,11を接合する部分である。前記湾曲形状部15は、外方へ膨らんだ湾曲形状(すなわちほぼ円弧形状)とされているため、前記マスク半体11の2枚を前記湾曲形状部15で接合した後、前記2枚のマスク半体11,11を広げた際に前記接合された湾曲形状部15がマスク外方へ膨出するようになる。また、前記接合された湾曲形状部15は、前記マスク10の左右中間位置にあり、前記マスク10を顔面に装着した際に鼻先および口と対応する位置にあるため、前記外方への膨出により前記マスク10が鼻の位置で外方へ膨らんだ状態となり、鼻柱の付近でマスクの縁が顔面に密着しやすくなり、前記マスク10の周縁が顔面に密着すると共に、鼻孔や口周囲に空間が形成され、呼吸がしやすい。なお、前記湾曲形状部15は、全ての部分が湾曲した形状になっていなくてもよく、一部が直線状になっていてもよい。特に鼻柱から鼻先に当接する部分の一部が直線状になっていれば、より良好な装着感が得られる。
【0019】
前記湾曲形状部15,15における接合は、接着剤や溶着、ホットメルト等によって行われる。溶着には、熱溶着、振動溶着、超音波溶着、レーザー溶着等がある。特に、熱溶着等の溶着による接合は、接着剤のように健康に心配がある溶剤を使用しなくてもよいため、好ましいものである。なお、接合を溶着で行う場合、前記マスク半体11を構成する弾性を有するポリウレタンフォームを除膜したものは、ポリエステル系ポリウレタンフォームで構成される。ポリエステル系ポリウレタンフォームは、熱溶着に好適である。
【0020】
前記マスク10の製造を図3を用いて簡単に説明する。前記マスク10の製造は、前記弾性を有するポリウレタンフォームを除膜したシートから、打ち抜き等によって2つの前記マスク半体11,11を形成し、2枚のマスク半体11,11を、図3の(3−1)および(3−2)のように重ね、図3の(3−3)のように、前記マスク半体11,11の湾曲形状部15,15を接着剤あるいは溶着等により接合し、前記マスク10とする。なお、前記湾曲形状部15,15を熱溶着により接合する場合には、重ねた前記マスク半体11,11の湾曲形状部15,15を熱板で挟むことにより行う。その際の熱板の温度は、前記弾性を有するポリウレタンフォームが熱溶着可能な温度とする。
【実施例】
【0021】
・実施例1
除膜された軟質ポリウレタンフォーム(株式会社イノアックコーポレーション製、品名:MF−80A、ポリエステル系、伸び率:500%、セル数:80個/25mm)を厚み2mmのシートに裁断し、このシートから打ち抜きにより、図4に示す形状のマスク半体を2枚形成した。このマスク半体を2枚重ねて、前記湾曲形状部を熱板で挟み、熱溶着により接合して実施例1の大人用マスクを形成した。湾曲形状部の接合幅(接合量)は3mmである。
【0022】
・参考例2
除膜された軟質ポリウレタンフォーム(株式会社イノアックコーポレーション製、品名:MF−40、ポリエステル系、伸び率:200%、セル数:40個/25mm)を用いて、実施例1と同様にして参考例2の大人用マスクを形成した。
【0023】
・参考例3
除膜された軟質ポリウレタンフォーム(株式会社イノアックコーポレーション製、品名:MF−50、ポリエステル系、伸び率:300%、セル数:50個/25mm)を用いて、実施例1と同様にして参考例3の大人用マスクを形成した。
【0024】
・実施例4
除膜された軟質ポリウレタンフォーム(株式会社イノアックコーポレーション製、品名:MF−110、ポリエステル系、伸び率:500%、セル数:110個/25mm)を用いて、実施例1と同様にして実施例4の大人用マスクを形成した。
【0025】
・比較例
除膜処理されていない低反発ポリウレタンフォーム(株式会社イノアックコーポレーション製、品名:EGR−2、伸び率:150%)を用いて、実施例1と同様にして比較例の大人用マスクを形成した。
【0026】
実施例1、参考例2、参考例3、実施例4及び比較例のマスクを顔面に装着して使用感を判断したところ、実施例1、参考例2、参考例3、実施例4のマスクは良好な通気性を有し、息苦しさを感じにくく、使用感が良好であると共に、使用中のずれを感じなかった。一方、比較例のマスクは、通気性が低く、息苦しさを感じた。
【0027】
また、実施例1に用いた除膜された軟質ポリウレタンフォームのシート(2mm厚)を試験体として、花粉粒子の捕集(ろ過)効率を測定した。測定結果は、3回の平均値が99.4%であった。試験方法は、試験系を一定の空気流量で吸引した状態で、試験体の上方から整粒装置により整粒された試験粉体(花粉代替粒子)を一定の速度で流下させた。そして、試験体に捕捉された粒子質量と試験体を通過した粒子質量を測定し、下記の式[数1]に基づいて花粉粒子の捕集(ろ過)効率を算出した。なお、試験条件は下記に示すとおりである。
【0028】
【数1】
【0029】
・試験条件
試験粉体(花粉代替粒子):石松子(APPIE標準粉体)
試験流量:28.3L/min
試験粉体量:75±5mg
試験粉体速度:20±5mg/min
試験室の温湿度:20±5℃、50±10%RH
【符号の説明】
【0030】
10 マスク
11 マスク半体
13 耳掛け部
13a 開口部
15 湾曲形状部
図1
図2
図3
図4