特開2015-34140(P2015-34140A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2015034140-抗肥満剤 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-34140(P2015-34140A)
(43)【公開日】2015年2月19日
(54)【発明の名称】抗肥満剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/18 20060101AFI20150123BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20150123BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20150123BHJP
   A23L 1/30 20060101ALN20150123BHJP
   A23L 2/52 20060101ALN20150123BHJP
   A23L 2/38 20060101ALN20150123BHJP
   A23L 2/00 20060101ALN20150123BHJP
   A23L 2/39 20060101ALN20150123BHJP
【FI】
   A61K35/78 C
   A61P3/04
   A61P3/06
   A23L1/30 B
   A23L2/00 F
   A23L2/38 C
   A23L2/00 A
   A23L2/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-165059(P2013-165059)
(22)【出願日】2013年8月8日
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(72)【発明者】
【氏名】曽野 陽子
(72)【発明者】
【氏名】松本 元伸
(72)【発明者】
【氏名】石角 篤
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 淳
【テーマコード(参考)】
4B017
4B018
4C088
【Fターム(参考)】
4B017LC03
4B017LE01
4B017LE05
4B017LG15
4B017LK13
4B018LB01
4B018LB08
4B018MD61
4B018ME01
4B018MF01
4C088AB12
4C088AC06
4C088BA09
4C088BA10
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZA70
4C088ZC33
(57)【要約】      (修正有)
【課題】脂肪細胞への脂肪蓄積を抑制し、体重増加抑制作用を有する抗肥満剤、および該抗肥満剤を配合した経口組成物の提供。
【解決手段】セイヨウヤナギの水もしくは水-エチルアルコール混合溶媒で抽出して得られる抽出物からなる抗肥満剤、および該抗肥満剤を配合した経口組成物。該セイヨウヤナギとしては、サリックス・ダフノイデス、サリックス・プルプレア、サリックス・フラギリス、サリックス・アルバから選ばれる一種以上であることが好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セイヨウヤナギの水もしくは水-エチルアルコール混合溶媒で抽出して得られる抽出物からなる抗肥満剤。
【請求項2】
セイヨウヤナギが、サリックス・ダフノイデス、サリックス・プルプレア、サリックス・フラギリス、サリックス・アルバから選ばれる一種以上である請求項1に記載の抗肥満剤。
【請求項3】
請求項1に記載の抗肥満剤を配合したことを特徴とする経口組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗肥満剤および当該抗肥満剤を配合した経口組成物に関する。より詳細には、セイヨウヤナギ抽出物を含む脂肪蓄積を抑制する抗肥満剤に関する。
【背景技術】
【0002】
高カロリー食の普及や日常の運動量の低下などの生活習慣要因により、中高年層だけでなく若年層においても糖尿病を発症する若しくはインスリン抵抗性を示す人が増えている。これらの主たる要因のひとつに肥満が挙げられる。肥満は、体脂肪量の過剰状態であり、この状態には、脂肪細胞自身の肥大化と脂肪細胞の数の増加が関与しているものと考えられている。特に、極端な体重の変化や体型の変化には成熟脂肪細胞が関与していると考えられている。
【0003】
成熟脂肪細胞は前駆脂肪細胞が分化したものであり、形態によりいわゆる「小型脂肪細胞」と「肥大化脂肪細胞」に大別されている。また、別の観点からは、「褐色脂肪細胞」と「白色脂肪細胞」の2つにも大別されている。
【0004】
「肥大化脂肪細胞」は「小型脂肪細胞」が脂肪を細胞内に蓄積している状態であり、場合によっては「小型脂肪細胞」には見られない細胞増殖を生じることが知られている。「肥大化脂肪細胞」の発生によって、細胞増殖により新たに発生した脂肪細胞にもさらに脂肪が蓄積され、顕著な体重増加および体型変化を引き起こすという悪循環が起こり得る。そのため、脂肪細胞における脂肪滴の蓄積を抑制または防止し「肥大化脂肪細胞」の発生を抑制若しくは防止することで、顕著な体重の増加および体型変化を防ぐことが可能である。
【0005】
たとえば、肥満を解消し、また予防するための食品および医薬品として、特許文献1には、白色脂肪細胞への脂肪蓄積を抑制するための組成物が開示されている。この組成物は、α−リポ酸とコエンザイムQ10とともに、バリン、ロイシン又はイソロイシンから選ばれる少なくとも一種のアミノ酸を含有する内服用組成物である。
【0006】
脂肪細胞における脂肪滴の蓄積を抑制もしくは防止を経口組成物で達成しようとするためには、経口組成物の日常的な摂取が必要となることから、安全性の高い天然由来の成分を活用することが望ましい。しかし、特許文献1に記載の化合物は天然界にも存在するものの、特許文献1の効果を得るためには化学合成等により純度の高い原料を使用し、通常の食品と比較して高い配合量を実現させる必要があった。したがって、摂取量が飲食者の意思に委ねられている食品に当該技術を応用した場合、極端な過剰摂取の事例において安全性に懸念が生じる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−151909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
脂肪細胞内における中性脂肪の蓄積を抑制や防止することで、脂肪細胞の肥大化を抑制することができれば、体重増加を抑えることができるとともに、正常な成熟脂肪細胞である小型脂肪細胞の数を維持または増加させ、中性脂肪の代謝を促進しやすい体質に改善することができる。このような改善により、運動による脂質代謝効果を向上させ、また一時的な過食等によるダイエットリバウンドを抑制することができる。また、脂肪細胞が肥大化しないため、スリムな体型を維持することができるという美容効果が期待できる。さらに、セルライトの発生を予防する効果をも期待できる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、脂肪細胞における脂肪蓄積を抑制することで肥満を防止する抗肥満剤、および当該抗肥満剤を配合した経口組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、かかる事情に鑑み鋭意検討を重ねた結果、驚くべきことにセイヨウヤナギ抽出物に優れた脂肪蓄積の抑制効果および肥満防止効果が存在することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、項1〜4の抗肥満剤およびそれを配合した経口組成物を提供するものである。
項1.セイヨウヤナギの水もしくは水-エチルアルコール混合溶媒で抽出して得られる抽出物からなる抗肥満剤。
項2.セイヨウヤナギが、サリックス・ダフノイデス、サリックス・プルプレア、サリックス・フラギリス、サリックス・アルバから選ばれる一種以上である項1に記載の抗肥満剤。
項3.項1に記載の抗肥満剤を配合したことを特徴とする経口組成物。
項4.痩身や体重減量を目的とした食品であることを特徴とした項3に記載の経口組成物。
さらに本願では、以下の項5〜7に記載の血中中性脂肪低減剤およびそれを配合した経口組成物をも提供するものである。
項5.セイヨウヤナギの水もしくは水-エチルアルコール混合溶媒で抽出して得られる抽出物からなる血中中性脂肪低減剤。
項6.セイヨウヤナギが、サリックス・ダフノイデス、サリックス・プルプレア、サリックス・フラギリス、サリックス・アルバから選ばれる一種以上である項5に記載の血中中性脂肪低減剤。
項7.項5に記載の血中中性脂肪低減剤を配合したことを特徴とする経口組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、以上のように、脂肪細胞における脂肪蓄積を抑制することができるため、肥大化脂肪細胞の増加を抑制し小型脂肪細胞の存在比率を高めることによって、肥満を防止することができる。また、脂肪分解の効率を高めることによって、肥満防止にとどまらず体重減少をも促し、理想的な体型を取得しかつ維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、セイヨウヤナギ各濃度における脂肪細胞の脂肪滴蓄積抑制効果の評価結果を示す。
図2図2は、マウスにセイヨウヤナギ抽出物を経口摂取させた時の体重増加抑制効果の試験結果を示す。
図3図3は、マウスにセイヨウヤナギ抽出物を経口摂取させた時の血中中性脂肪の低下作用の試験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明における抗肥満剤は、セイヨウヤナギの植物の抽出物、特に、サリックス・ダフノイデス、サリックス・プルプレア、サリックス・フラギリス、サリックス・アルバから選ばれる一種以上のセイヨウヤナギ抽出物からなるものである。以下に本発明を詳しく説明する。なお、本願明細書において配合比率は、特に断りのない限り配合質量比率を表す。
【0015】
本発明のセイヨウヤナギ抽出物の製造に使用するセイヨウヤナギは、サリックス・ダフノイデス(Salix daphnoides、セイヨウエゾヤナギ)、サリックス・プルプレア(Salix purpurea、セイヨウコリヤナギ)、サリックス・フラギリス(Salix fragilis、ポッキリヤナギ)、サリックス・アルバ(Salix alba、セイヨウシロヤナギ、White Willow)が好ましく、こられ単独若しくは二種以上を混合して使用でき、前記以外のヤナギ科植物が混入していても問題ない。本発明のセイヨウヤナギ抽出物は、例えば、欧州薬局方およびドイツ薬局方に規格に適合する「Salicis cort extract(Frutarom Switzerland Ltd.社製)」を使用できる。具体的には、「Salicis cort extract(Frutarom Switzerland Ltd.社製)」は、「Salix purpurea、Salix daphnoidesおよびSalix fragilisの樹皮および/または新芽・若枝を、水を用いて抽出して得られた粉末状のエキス」である。
【0016】
抽出において、水及び/又はエチルアルコールを溶媒として用いることができるが、水もしくは水-エチルアルコール混合溶媒を用いることが好ましく、水溶媒がもっとも好ましい。抽出方法として、特に限定されず、通常行われる植物体の抽出方法であれば用いることができる。抽出後のエキスは、保存安定性を高めるため、粉末化することが好ましい。粉末化方法としては、通常の方法を用いることができ、たとえば、スプレードライや凍結乾燥などの方法が挙げられる。
【0017】
本発明においては、セイヨウヤナギ抽出物からなる抗肥満剤を配合した経口組成物も提供する。経口組成物におけるセイヨウヤナギ抽出物の配合量は、経口組成物全量に対して乾燥質量換算で0.01〜10質量%、好ましくは0.05〜5質量%配合することができる。
【0018】
本発明の抗肥満剤は、飲食品、経口医薬品および経口医薬部外品などの経口組成物に利用することができる。飲食品である場合、たとえば、痩身用、ダイエット用もしくは糖尿病などの食事療法目的などで摂食する食品、特定保健用食品、栄養補助食品、機能性食品、老人用食品などであることができる。
【0019】
本発明の抗肥満剤の形態は、たとえば、液体、顆粒、細粒、粉体など、経口組成物に配合しやすい形態が好ましいが、抗肥満剤自体を経口摂取する場合には、ペースト、ゲル、カプセルなどの形態にもすることができる。
【0020】
本発明の抗肥満剤を配合した経口組成物の形態は、たとえば、錠剤、チュアブル錠、発泡錠、トローチ錠、ドロップ錠、(硬、軟)カプセル剤、顆粒剤、散剤、丸剤、ドライシロップ剤、浸剤、煎剤、舐剤、チューイングガム剤、シロップ剤、ドリンク剤、懸濁剤、酒精剤、口腔内崩壊剤、ゼリー剤、ホイップ剤、スプレー剤、ペースト剤、ゲル剤、シート剤が挙げられるが、一般の飲食品に本発明の抗肥満剤を配合して利用することもできる。
【0021】
本発明の飲食品は、通常、容器詰飲食品として提供される。本発明において容器詰飲食品とは、本発明の抗肥満剤を配合する飲食品を、容器に充填し密封された状態で消費者に提供される飲食品をいう。ここでいう容器とは、ガラス壜、合成樹脂製のボトル、合成樹脂やラミネート材などの複合体などで構成されるシート材(袋体、イージーピール接合体、パウチなど)、紙容器、金属缶、PTP包装体などを意味する。
【0022】
本発明の抗肥満剤を配合した経口組成物は、本願効果を損なわない範囲であれば、セイヨウヤナギ抽出物以外の一般的に食品や医薬品等で用いられる公知の成分を配合することができる。たとえば、賦形剤、粘結剤、乳化剤、甘味料、酸味料、強化剤、食物繊維、酸化防止剤、調味料、香料、着色料、滑沢剤、増粘多糖類等の従来公知の食品添加物等、従来食品に添加される他の成分(食品添加物の他食品も含む)を含んでもよい。
【0023】
賦形剤としては、たとえば、マルチトール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール等の糖アルコール類、結晶セルロース、乳糖、白糖、ブドウ糖、デンプン、炭酸塩類およびリン酸塩類等を配合することができる。
【0024】
粘結剤は、たとえばゼラチン、アルギン酸、キサンタンガム、セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カラギーナン、プルランおよびペクチン等を配合することができる。
【0025】
乳化剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリエチレンステロール、アルキルグルコシド、リン脂質などの界面活性剤;デンプン液、ゼラチン溶液、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、結晶セルロース、粉末セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム末、プルラン、ペクチン、デキストリン、トウモロコシデンプン、アルファー化デンプン、ゼラチン、キサンタンガム、ジェランガム、カラギーナン、トラガント、トラガント末、マクロゴールなどの高分子が挙げられる。これらは、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0026】
甘味剤としては、例えばサッカリン、サッカリンナトリウム、アセスルファムカリウム、ステビアエキス、ステビオサイド、スクラロース、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、グリチルリチン、ペリラルチン、ソウマチン、アスパルチルフェニルアラニンメチルエステル、メトキシシンナミックアルデヒド、トレハロース、エリスリトール、ソルビトール、パラチノース、パラチニット、キシリトール、マルトース、ラクチトール、フルクトース、還元パラチノース、グルコース、砂糖、三温糖、精製はちみつ、未精製はちみつ、還元水飴、水飴、異性化糖(ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖など)などが挙げられる。これら甘味剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0027】
酸味料としては、たとえば、クエン酸、グルコン酸、りんご酸、酒石酸などの果実酸類、酢酸、乳酸、リン酸、コハク酸、グルタミン酸などを配合することができる。
【0028】
強化剤としては、たとえば、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類、動植物エキス、ペプチドなどを配合することができる。
【0029】
食物繊維としては、水溶性食物繊維や水不溶性食物繊維を配合することができる。たとえば、難消化性デキストリン、セルロース(パルプ)、アップルファイバー、ポテトデキストロース、サイリウム、ビートファイバーなどを配合することができる。
【0030】
抗酸化剤としては、たとえば、ジブチルヒドロキシトルエン、アスコルビン酸、エリソルビン酸、トコフェロール、「カテキン」や「緑茶ポリフェノ−ル」などの茶エキス、オリーブ葉エキス、「ルチン(抽出物)」、「クエルセチン」、「ルチン酵素分解物」、「酵素処理ルチン(抽出物)」や「酵素処理イソクエルシトリン」などのルチン類、酵素分解リンゴエキス、「ショ糖脂肪酸エステル」、「ソルビタン脂肪酸エステル」、「酵素処理レシチン」、「酵素分解レシチン」、「サポニン」等の乳化剤、等を配合することができる。
【0031】
本発明の抗肥満剤および当該抗肥満剤を配合した経口組成物は、脂肪分解し易い体質に改善し、食事コントロールまたは運動により得られるダイエット効果を向上させるだけでなく、平常時における脂肪分解能を向上させる可能性もある。したがって、本発明は、ダイエット用食品、美容食品、運動療法時向けの食品、肥満治療食、および、病気や運動機能障害、高齢などの理由より肉体活動量が極端に少ない人向けの飲食品などとして最適に用いることができる。本発明は、ダイエット、美容または肥満改善に適している旨の表示を付した飲食品であることもできる。また、肥大化脂肪細胞の生成を防ぐ側面もあることから、肥満、糖尿病およびこれらに関する種々の疾患の予防および改善に寄与することもでき、肥満、メタボリックシンドローム、糖尿病、動脈硬化、耐糖能異常、高血圧、高脂血症、高中性脂肪血症、高コレステロール血症および肝疾患などの予防および改善のための経口組成物、医薬品、飲食品などにも用いることもできる。また、本発明は、歯周病(歯肉炎、歯周炎)などの肥満や糖尿病の合併症の予防および改善のための経口組成物、医薬品、飲食品などに用いることもでき、上述した疾患の予防または改善に適している旨の表示を付した飲食品とすることもできる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。なお、以下特に断りのない限り「%」は「質量%」を示す。
【0033】
脂肪細胞における脂肪滴蓄積抑制
前駆脂肪細胞3T3-L1細胞を用いて、脂肪細胞における脂肪滴蓄積抑制効果の評価を行った。3T3-L1細胞は、マウスの繊維芽細胞から脂肪を蓄積する株として分離された細胞であり、細胞自体が不死化されているため、分化誘導前は、繊維芽細胞として大量増殖することができる。また、3T3-L1細胞は、インスリン、デキタメタゾンおよび3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX)により、脂肪細胞に95%以上分化誘導することができる。
【0034】
(培地調製)
継代用培地として、継代用培地A(DMEM(4.5g/L Glu)、(Sigma、glucose、D5769)、10%BS(Gibco、16170)および1%抗生物質(Gibco、 Antibiotic-Antimycotic、 15240-062))、並びに継代用培地B(DMEM(4.5g/L Glu)、10%FBS(Biowest、S1560)および1%抗生物質)を用いた。
【0035】
分化誘導培地としては、継代用培地Bに、10μg/mLインスリン溶液(Wako、093-06351)、0.25μM Dexamethasone(Sigma、D4902) および0.11mg/mL 3-イソブチル-1-メチルキサンチン(Sigma、15879)を加えたものを用いた。分化促進培地としては、継代用培地Bに5μg/mLインスリン溶液を加えたものを用いた。分化誘導培地および分化促進培地は用時調製した。
【0036】
(サンプルの調製方法)
セイヨウヤナギ抽出物は、ヤナギ(サリックス・ダフノイデス、サリックス・プルプレア、サリックス・フラギリス、サリックス・アルバの混合物)の新芽を含む若枝の水抽出物(乾燥粉末)を用いた。実験には、最終濃度が2.5、5、12.5、25、50、100および200μg/mlとなるように、培地で希釈して用いた。
【0037】
(細胞培養とサンプル添加方法)
3T3-L1細胞(大日本住友製薬, Embryo mouse)は、継代用培地Aにて必要量を増殖させ、コラーゲンコート培養プレート(住友ベークライト,スミロンセルタイトC-1)に、2.5×104ce1l/ウェルの濃度となるように、細胞懸濁液1mLを播種し、37℃、5%CO2下で2日間培養した。その後、継代用培地Bに培地交換し、コンフルエント後、約2日間、継代用培地Bにて培養を続け、分化誘導培地に交換した(0日目)。分化誘導培地により分化誘導して48時間以内に、分化促進培地に交換した(2日目)。各々のサンプルは、分化誘導培地交換時(0日目)から、7-8日目まで、継続的に添加し続けた。
【0038】
(脂肪細胞のOil Red染色方法)
[試薬調製]
冷10%ホルマリン/PBSは、PBSに10%(v/v)量ホルマリンを添加し、pH7.4に調整して調製し、4℃で保管した。本試験では、10%中性緩衝ホルマリン液(Wake, 060-03845)を使用した。
【0039】
染色液には0.5% Oil Red O/イソプロパノール溶液を用いた。Oil Red O(Wake, 154-02072)をイソプロパノール(Sigma)に振盪溶解し、飽和溶液として調製した。使用直前に、0.5%Oil Red O/イソプロパノール溶液と蒸留水とを3:2の割合で混合した(用時調製)。
【0040】
[染色方法]
上記の培養方法にて、7-8日目まで培養したウェルプレートの3T3-L1細胞を用いた。培地が入った状態で、冷10%ホルマリン/PBSを0.5ml/ウェル添加し、室温放置した。培地を除き、新たに冷10%ホルマリン/PBSを0.5ml/ウェル添加し、室温にて放置した。ホルマリン溶液を除き、蒸留水(1ml/ウェル)で2-3回洗浄し、残った蒸留水を完璧に除いた。60%イソプロパノール(0.5ml/ウェル)で1回洗浄後、渡過した染色液を1ml/ウェル添加し、室温にて放置した。染色後、60%イソプロパノール(0.5ml/ウェル)で1回洗浄し、蒸溜水(1ml/ウェル)で2-3回洗浄した。100%イソプロパノール(0.5ml/ウェル)で溶解し、パラフィルムでプレート側面を巻き、20℃、20 min ゆっくり振盪させながら抽出した。溶出させたイソプロパノール溶液をマイクロプレートリーダーにてOD490nmで測定した。
【0041】
(Oil Red O染色の結果)
各サンプル存在下で上記培養方法にて分化を促進させた7〜8日目における3T3-L1細胞の油滴を、Oil Red O染色にて赤色で染めて、得られた結果を図1に示す。
【0042】
図1に示すように、セイヨウヤナギ抽出物は、25μg/mlの少量でも優れた脂肪細胞への脂肪滴蓄積抑制効果を有することがわかった。特に50μg/ml以上では80%以上の蓄積抑制効果を確認した。
【0043】
マウスにおける体重増加抑制効果の評価
ノーマルマウスであるC57BL6J(日本チャールズ・リバー社)を用いて、普通食(CTL)を与えた群、高脂肪高糖食(HFHS)を与えた群およびセイヨウヤナギ抽出物を0.25%添加した高脂肪高糖+セイヨウヤナギエキス食(HFHS+SE)を与えた群において、体重変化、および飼育終了時の血中中性脂肪値を測定した。予備飼育期間および試験食開始後の餌は自由摂取としたが、各群の摂食量には統計的に有意差がなかった。試験開始後の飼育期間は84日間とした。
【0044】
[血中中性脂肪の測定方法]
飼育期間終了後に採血し、血中の中性脂肪量を測定した。測定は日立7070自動分析装置を用いた酵素法(GPO-POD系 遊離グリセロール消去法)にて測定した。
【0045】
[体重変化]
体重は、毎週同じ時間に測定した。試験食開始後の体重変化を図2に示す。HFHS群と比べてHFHS+SE群の体重は14日目以降体重が少ない傾向が見られ、29日目以降の期間においては有意に体重が少なかった。
【0046】
[血中中性脂肪量]
測定結果を図3に示す。セイヨウヤナギ抽出物を0.25%添加した高脂肪高糖食の摂食群は、通常食より6倍以上脂肪含量が高いにもかかわらず通常食群の同等以下の測定値となった。一方、高脂肪高糖食を単独で摂食した群は、通常食に比べ、高い値を示した。
【0047】
以下、本発明に係る抗肥満剤を配合した経口組成物の実施例の処方を挙げるが、本発明は下記の処方に限定されるものではない。なお、特に指定の無いかぎり配合量は質量部を示す。
【0048】
処方例1:スポーツ飲料
成 分 配合量
セイヨウエゾヤナギ水抽出物(粉末) 0.3
果糖 8
食塩 2
重曹 2
クエン酸 0.25
香料 0.1
水 残部
合 計 500
【0049】
処方例2:粉末茶
成 分 配合量
セイヨウコリヤナギ水抽出物(粉末) 22
香料 3
デキストリン 75
合 計 100
【0050】
処方例3:チュアブル錠
成 分 配合量
ポッキリヤナギ水抽出物(粉末) 100
キシリトール 285
アスパルテーム 4
ステアリン酸マグネシウム 10
香料 1
合 計 400
【0051】
処方例4:チューイングガム
成 分 配合量
セイヨウシロヤナギ水抽出物(粉末) 100
ガムベース 500
キシリトール 1000
還元パラチノース 700
香料 200
合 計 2500
【0052】
処方例5:焼き菓子
成 分 配合量
セイヨウエゾヤナギ水/エタノール抽出物(粉末) 0.3
薄力粉 17.85
ベーキングパウダー 0.3
米油 2.4
還元水あめ 9
香料 0.15
合 計 30
【0053】
処方例6:ゼリー飲料
成 分 配合量
セイヨウエゾヤナギ/セイヨウコリヤナギエキス
混合物の水抽出末 0.35
オリゴ糖シロップ 27
還元水あめシロップ 27
濃縮果汁 7.2
グルコマンナン 5.4
pH調整剤 4.5
ゲル化剤 2.7
香料 0.45
水 残 部
合 計 100
【0054】
処方例7:ショットドリンク
成 分 配合量
セイヨウシロヤナギ水/エタノール抽出物 0.3
オリゴ糖シロップ 15
還元水あめシロップ 15
濃縮果汁 4
pH調整剤 2.5
安定化剤 1
香料 0.25
スクラロース 0.02
水 残部
合 計 100
【0055】
処方例8:カプセル剤 (300mg/個)
成 分 配合量
セイヨウエゾヤナギ水抽出物(粉末) 150
コーンスターチ 60
セルロース 60
トコフェロール 6
乳糖 23
安定化剤 1
合 計 300
【0056】
処方例9:錠剤(250mg錠)
成 分 配合量
ポッキリヤナギ水抽出物(粉末) 150
コーンスターチ 25
セルロース 25
ビタミンC 50
合 計 250
図1
図2
図3