(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-34282(P2015-34282A)
(43)【公開日】2015年2月19日
(54)【発明の名称】基板製造用複合材及びこれを用いて製造された回路基板原資材
(51)【国際特許分類】
C08G 63/692 20060101AFI20150123BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20150123BHJP
C08L 67/04 20060101ALI20150123BHJP
C08G 63/682 20060101ALI20150123BHJP
【FI】
C08G63/692
H05K1/03 610M
C08L67/04
C08G63/682
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-77687(P2014-77687)
(22)【出願日】2014年4月4日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0094189
(32)【優先日】2013年8月8日
(33)【優先権主張国】KR
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
2.TEFLON
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100166420
【弁理士】
【氏名又は名称】福川 晋矢
(72)【発明者】
【氏名】ユン・グム・ヒ
(72)【発明者】
【氏名】イ・クン・ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム・ジン・ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ユ・ソン・ヒュン
【テーマコード(参考)】
4J002
4J029
【Fターム(参考)】
4J002BD153
4J002CF201
4J002CF202
4J002FD013
4J002GQ01
4J029AA06
4J029AB02
4J029AB07
4J029AC04
4J029AD09
4J029AE01
4J029AE18
4J029BH03
4J029CB05A
4J029DC05
4J029EB05A
4J029EC06A
4J029FA17
4J029FB15
4J029FB16
(57)【要約】
【課題】回路基板の熱的及び機械的安定性を向上することができる、基板製造用複合材及びこれを用いて製造された基板原資材を提供する。
【解決手段】本発明の絶縁性複合材は、1MHz以上の高周波帯域において使われる基板の製造に用いられるもので、熱硬化性液晶オリゴマーを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1MHz以上の高周波帯域において用いられる基板の製造のための絶縁性複合材であって、
熱硬化性液晶オリゴマーを含む回路基板製造用複合材。
【請求項2】
前記熱硬化性液晶オリゴマーは、下記の化学式
【化1】
で表現される熱硬化性芳香族ポリエステル樹脂組成物である請求項1に記載の回路基板製造用複合材。
【請求項3】
下記の化学式
【化2】
で表現されるフローリン化合物を、さらに含む請求項1に記載の回路基板製造用複合材。
【請求項4】
前記複合材は、3.50以下の誘電率を有する請求項1に記載の回路基板製造用複合材。
【請求項5】
前記複合材は、10以下の熱膨脹係数(ppm/℃)を有する請求項1に記載の回路基板製造用複合材。
【請求項6】
前記複合材に対比して5wt%〜30wt%で充填されるテフロン充填材を、さらに含む請求項1に記載の回路基板製造用複合材。
【請求項7】
前記テフロン充填材は、PTFE充填材である請求項6に記載の回路基板製造用複合材。
【請求項8】
1MHz以上の高周波帯域において使われる回路の基板の製造のための基板原資材であって、
前記基板原資材は熱硬化性液晶オリゴマーを含む絶縁性複合材を使って製造され、
前記熱硬化性液晶オリゴマーは、下記の化学式
【化3】
で表現される熱硬化性芳香族ポリエステル樹脂組成物である基板原資材。
【請求項9】
前記複合材は、下記の化学式
【化4】
で表現されるフローリン化合物を、さらに含む請求項8に記載の基板原資材。
【請求項10】
前記複合材に対比して5wt%〜30wt%で充填されるテフロン充填材を、さらに含む請求項8に記載の基板原資材。
【請求項11】
前記複合材は、3.50以下の誘電率を有する請求項8に記載の基板原資材。
【請求項12】
前記複合材は、10以下の熱膨脹係数(ppm/℃)を有する請求項8に記載の基板原資材。
【請求項13】
前記基板原資材は、プリプレグである請求項8に記載の基板原資材。
【請求項14】
前記基板原資材は、銅箔積層板のコアラミネートである請求項8に記載の基板原資材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板製造用複合材及びこれを用いて製造された回路基板原資材に関し、特に、高速及び高周波帯域において信号伝送特性が向上するように、優秀な熱的及び機械的安定性を有する基板製造用複合材及びこれを用いて製造された回路基板原資材に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、電子器機の発展に伴って印刷回路基板などの回路基板の小型化、薄板化及び多機能化が進められている。また、情報通信装備に使われる周波数帯域がますます高周波帯域へと移行している。最近の超高速無線通信器機では、使用周波数帯域が数十GHzの帯域へ拡がっている。
【0003】
このような要求に応じるため、電子機器に使われる印刷回路基板などの基板の回路も非常に複雑になり、且つ高集積化が進められている。かかる状況下で、印刷回路基板の電気的、熱的、機械的安定性及び信頼性は非常に肝要な要素であり、特に熱的変形(Coefficient of Thermal Expansion:CTE)は、基板の製造過程において最終印刷回路基板の安定性及び信頼性の観点から非常に重要な要素になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】韓国特許出願公開第2008−0073788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、高速及び高周波帯域で使用可能な印刷回路基板の特性に応じるためには、基板製造用絶縁性複合材の高分子物質は低誘電率を有しなければならない。特に、高速及び高周波帯域で使用可能な印刷回路基板の場合、極めて低い誘電率を有するが、現在、絶縁特性のために主に用いられるエポキシ樹脂(epoxy resin)入り複合材は、通常4以上の相対的に大きい誘電率を有している。このようなエポキシ樹脂系複合材を用いて印刷回路基板を製造する場合、高速及び高周波帯域において、回路の信号伝送に干渉を起こすという不都合がある。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みて成されたものであって、回路基板の熱的及び機械的安定性を向上させることが可能な基板製造用複合材、及びこれを用いて製造された基板原資材を提供することに、その目的がある。
【0007】
また、本発明の他の目的は、熱的及び機械的安定性が優秀で、且つ高速及び高周波帯域で使用可能な印刷回路基板製造用複合材、及びこれを用いて製造された回路基板原資材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による基板製造用複合材は、1MHz以上の高周波帯域で使われる基板の製造のための絶縁性複合材であって、熱硬化性液晶オリゴマー(Liquid Crystal Thermosetting Oligomer)を含む。
【0009】
本発明の実施形態によれば、前記熱硬化性液晶オリゴマーは、下記の化学式1で表現される熱硬化性芳香族ポリエステル樹脂組成物である。
【0010】
【化1】
(化学式1)
【0011】
本発明の実施形態によれば、基板製造用複合材は、下記の化学式2で表現されるフローリン化合物をさらに含む。
【0012】
【化2】
(化学式2)
【0013】
本発明の実施形態によれば、前記複合材は3.50以下の誘電率を有する。
【0014】
本発明の実施形態によれば、前記複合材は10以下の熱膨脹係数(ppm/℃)を有する。
【0015】
本発明の実施形態によれば、前記複合材に対比して5wt%〜30wt%で充填されるテフロン充填材(teflon filler)をさらに含む。
【0016】
本発明の実施形態によれば、前記テフロン充填材としては、例えば、PTFE充填材が挙げられる。
【0017】
また、上記目的を解決するために、本発明による回路基板原資材は、1MHz以上の高周波帯域において用いられる回路基板の製造のための基板原資材であって、この基板原資材は熱硬化性液晶オリゴマーを含む絶縁性複合材によって製造され、前記熱硬化性液晶オリゴマーは、下記の化学式1で表現される熱硬化性芳香族ポリエステル樹脂組成物である。
【0018】
【化3】
(化学式1)
【0019】
本発明の実施形態によれば、前記複合材は、下記の化学式2で表現されるフローリン化合物をさらに含む。
【0020】
【化4】
(化学式2)
【0021】
本発明の実施形態によれば、前記複合材に対比して5wt%〜30wt%で充填されるテフロン充填材をさらに含む。
【0022】
本発明の実施形態によれば、前記複合材は3.50以下の誘電率を有する。
【0023】
本発明の実施形態によれば、前記複合材は10以下の熱膨脹係数(ppm/℃)を有する。
【0024】
本発明の実施形態によれば、前記基板原資材はフリープレグである。
【0025】
本発明の実施形態によれば、前記基板原資材は銅箔積層板のコアラミネート(laminate)である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、熱的(CTE)、機械的安定性に優れる熱硬化性液晶オリゴマー、及び該熱硬化性液晶オリゴマーの主鎖に反応可能な官能基を有するフッ素化合物を重合反応させて熱硬化性液晶オリゴマーを作成する。この熱硬化性液晶オリゴマーに、選択的にテフロンフィラーを添加したものが、基板材料組成物の優秀な熱的及び機械的安定性とともに、高速及び高周波領域での優れた信号伝送特性を発揮する回路基板の材料として使用される。
【0027】
本発明による基板原資材は、熱的(CTE)、機械的安定性に優れる熱硬化性液晶オリゴマー、及び該熱硬化性液晶オリゴマーの主鎖に反応可能な官能基を有するフッ素化合物を重合反応させて熱硬化性液晶オリゴマーを作成する。この熱硬化性液晶オリゴマーに、選択的にテフロンフィラーが充填された複合材を用いて製造することができ、これは高速及び高周波領域で優れた信号伝送特性を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の好適な実施の形態を、図面を参考して詳細に説明する。次に示される各実施の形態は当業者にとって本発明の思想が十分に伝達されることができるようにするために例として挙げられるものである。従って、本発明は以下示している各実施の形態に限定されることなく他の形態で具体化されることができる。そして、図面において、装置の大きさ及び厚さなどは便宜上誇張して表現されることができる。明細書全体に渡って同一の参照符号は同一の構成要素を示している。
【0029】
本明細書で使われた用語は、実施形態を説明するためのものであって、本発明を制限しようとするものではない。本明細書において、単数形は特別に言及しない限り複数形も含む。明細書で使われる「含む」 とは、言及された構成要素、ステップ、動作及び/又は素子は、一つ以上の他の構成要素、ステップ、動作及び/又は素子の存在または追加を排除しないことに理解されたい。
【0030】
本発明の実施形態による複合材は、所定の基板の製造のための絶縁性材料である。この複合材は、印刷回路基板製造用ラミネートまたはプリプレグ(prepreg)などの絶縁シートの製造のための絶縁性組成物であって、特に高速及び約1MHz以上の高周波帯域において使用可能な印刷回路基板に適用されるように、相対的に低誘電率を有する複合材である。この複合材は、4未満の誘電率を有する。
【0031】
前記複合材は、熱硬化性液晶オリゴマーを主材料にし、その他のフローリン化合物または充填材などを追加して製造されてもよい。
【0032】
前記熱硬化性液晶オリゴマーは、相対的に熱的(CTE)及び機械的安定性が非常に優れた絶縁材料である。前記熱硬化性液晶オリゴマーは主鎖に一つ以上の可溶性構造単位を有し、主鎖の末端のうちの少なくともいずれか一つには熱硬化性グループを有する。前記熱硬化性グループとしては、マレイミド(maleimide)、ネドイミド(nadimide)、フタルイミド(phtahlimide)、アセチレン(acdetylene)、プロパジルエテル(propagylether)、ベンゾシクルロブテン(benzocyclobutene)、シアネイト(cyanate)、及びそれらの置換体または誘導体のうちの少なくともいずれか一つが挙げられる。
【0033】
詳しくは、前記複合材は、熱硬化性芳香族ポリエステル樹脂組成物及びフローリン化合物(fluoroine)のうちの少なくともいずれか一つを選択的に含む。一例として、前記複合材は、エポキシ樹脂(epoxy resin)なしに、下記の化学式1で表現される熱硬化性芳香族ポリエステル樹脂組成物、及び下記の化学式2で表現されるフローリン化合物を含む。他の例として、前記複合材は、エポキシ樹脂と下記の化学式2で表現されるフローリン化合物なしに、下記の化学式1で表現される熱硬化性芳香族ポリエステル樹脂組成物を含む。
【0035】
上記化学式1に示すように、前記熱硬化性芳香族ポリエステル樹脂組成物は、優秀な熱的特性を具現する構造、及び溶媒に溶ける可溶性構造の両方を有する。また、熱による硬化構造を有する部分が両端に存在する。
【0036】
このような熱硬化性芳香族ポリエステル樹脂組成物は、エポキシ樹脂を代替するためのものでもよい。詳しくは、一般的なエポキシ樹脂では、自体熱膨脹係数(CTE)が約70〜100ppm/℃であり、誘電率は約4.0以上である。そのため、このような材料特性では、回路線幅が極めて微細化され、高速及び高周波帯域において使用される薄板化された印刷回路基板への適用が不可能になる。従来には、エポキシ樹脂を高周波帯域において使用するため、低誘電率の具現のためのテフロン充填材を用いてガラスクロス(glass cloth)に含浸して使うことを試みた。しかし、エポキシ樹脂を主材料として用いて製造された基板原資材は、銅箔との接着力が劣り、テフロン充填材が、エポキシ樹脂の全般に亘って均一に分散されにくくなり、最終的に製造された基板原資材は、局所的に誘電率の差が生じ、誘電損失や電子伝送に問題が発生することになる。
【0037】
しかし、本発明の実施形態による複合材は、優れた熱的特性を具現する構造を有すると共に、溶媒への可溶性が良い構造を有する、下記の化学式1で表現される熱硬化性芳香族ポリエシト樹脂組成物を主材料として使うことによって、既存のエポキシ樹脂を使用する場合に具現しにくかった、低い誘電率特性、及びテフロン充填材の均一な分散度を得ることができる。
【0039】
上記の化学式2に示すように、前記フローリン化合物は、前記熱硬化性芳香族ポリエステル樹脂組成物を合成する過程で、前記組成物の主鎖に反応することができる官能基を有する。これによって、前記フローリン化合物は、上記化学式1の組成物との重合反応によって共有結合を形成し、前記組成物の固有の熱的、機械的特性を維持しながらも低誘電率を具現することができる。
【0040】
一方、本発明の実施形態による複合材は、上述の化学式1及び2の組成物に対して熱的、機械的及び電気的特性をさらに向上させるために、相対的に少量のテフロン充填材をさらに添加する。このテフロンは、非粘着性、耐熱性、非油性、低摩擦係数、内薬品性、耐熱性などが優秀な材料であって、前記複合材に添加され、該複合材の特性を向上させることができる。前記テフロン充填材には、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoro ethylene:PTFE)、ペルフルオロアルコキシル(perfluoroalkoxy:PFA)、フッ素化エチレンプロピレン(fluorinated ethylene propylene:FEP)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン(ethylene chlorotrifluoro ethylene:ECTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ethylene tetrafluoro ethylene、ETFE)、ポリビニリデンフルオロライド(polyvinyliden fluoride:PVDF)、ポリプロピレン(polypropylene:PP)及びポリビニルクロライド(polyvinyl chloride:PVC)のうちの少なくともいずれか一つのテフロン材質からなる充填材が挙げられる。一例として、前記テフロン充填材には、PTFEパウダーが使われる。その他にも、前記複合材には、各種特性を付与するための充填材として無機フィラー(inorganic filler)をさらに添加してもよい。前記無機フィラーにはシリカ(silica)などが挙げられる。
【0041】
前記テフロン充填材は、前記複合材に対して約5wt%〜30wt%の含量で充電される。前記テフロン充填材の含量が5wt%未満の場合、該テフロン充填材の含量が極めて低く、該複合材の熱的及び機械的特性を向上させることが難しくなる。これに反して、前記テフロン充填材の含量が30wt%超の場合、過度なテフロン充填材の添加によって適切な熱的及び機械的特性をはずれ、むしろ複合材の物性が低下し、加工性が非常に劣ってしまう。
【0042】
前記のような複合材は、ウォーブンガラスファイバー(woven glass fiber)などの基礎纎維に含浸してプリプレグ形態で製作するか、またはビルドアップフィルムそれ自体で製作され、印刷回路基板製造用基板原資材として製造される。また、こうして製造されたプリプレグの両面に銅箔を形成し、銅箔積層板(Copper Clad Laminate:CCL)を製作して、印刷回路基板製造用基板原資材として使用してもよい。このような基礎纎維の材料には、ガラス纎維または高分子纎維などが挙げられる。このような纎維を用いて、クロースを製作して、前記ベース纎維を製作することができる。
【0043】
また、このように製造された基板原資材で、一般的な印刷回路基板の製造工程を用いて、印刷回路基板を製造することができる。例えば、本発明の実施形態による印刷回路基板の製造方法は、前記基板原資材を、ロールを用いてシート化するステップと、該シート化された原資材を所望の大きさで裁断するステップと、前記シートなどにキャリアフィルム及び保護フィルムを付着して板状の基板原資材を製造する。また、前記印刷回路基板の製造工程の際、前記シートから前記キャリアフィルム及び前記保護フィルムを除去し、前記シートに対して露光、現像、腐食、薄利、乾燥などの工程を行って回路パターンを形成した後、後続の工程処理によって所定の印刷回路基板を製造することができる。
【0044】
前述のように、本発明の実施形態による回路基板製造用複合材は、エポキシ樹脂を熱硬化性芳香族ポリエステル樹脂組成物で取り替え、その他のフローリン(fluoroine)化合物及び充填材を選択的に添加し、高速及び高周波帯域において適用可能な低誘電率特性を有することになる。この場合、エポキシ樹脂を主材料として使って製造された複合材に比べて、4未満の低い誘電率を有することによって、高速回路及び高周波領域で回路の信号伝送干渉による信号損失を防止することができる。これによって、本発明による回路基板製造用複合材は、熱的(CTE)、機械的安定性に優れる熱硬化性液晶オリゴマー、及び該熱硬化性液晶オリゴマーの主鎖に反応可能な官能基付きフッ素化合物を重合反応させて作成した熱硬化性液晶オリゴマーに、選択的にテフロンフィラーを添加し、基板材料組成物の優秀な熱的及び機械的安定性とともに、高速及び高周波領域で優れた信号伝送特性を発揮できる回路基板の材料として使用可能である。
【0045】
また、本発明による基板原資材は熱的、機械的安定性に優れる熱硬化性液晶オリゴマー、及び該熱硬化性液晶オリゴマーの主鎖に反応可能な官能基付きフッ素化合物を重合反応させて作った熱硬化性液晶オリゴマーに、選択的にテフロンフィラーが充電された複合材を用いて製造することによって、高速及び高周波領域で優れた信号伝送特性を発揮できる。
【0046】
以下、本発明の実施形態による複合材及びその合成方法、並びに該複合材を用いて印刷回路基板を製造する方法の具体的な実施形態について詳記する。ここで、上述の複合材及び印刷回路基板に重複する説明は省略する。
[実施例1]
1.1.熱硬化性芳香族ポリエステルオリゴマーの合成
【0047】
約20l容量のガラス反応器を準備する。ガラス反応器には密閉された機械的撹拌器、窒素注入チューブ、温度計及び還流コンデンサーが装着される。前記ガラス反応器に4−アミノフェノール2182.6g(20.0mol)、イソプタル酸2491.95g(15mol)、4−ヒドロキシベンゾ酸1609.10g(11.65mol)、6−ヒドロキシ−2−ナプト酸780.95g(4.15mol)及びアセット酸無水物6266.18g(61.38mol)を添加した。反応器の内部を窒素ガスで充分に切り替えた後、反応器内の温度を窒素ガス流れ下で約140℃の温度に上昇させた。該温度を維持させながら約3時間間、前記有機反応器内を還流させた。
【0048】
続いて、反応副産物であるアセット酸及び未反応アセット酸無水物を除去しながら、約250℃の温度に上昇させた。その後、6−ヒドロキシ−2−ナプト酸1411.35g(7.5mol)を、前記ガラス反応器に追加で添加した後、約250℃〜300℃の温度範囲で温度を調節しながら、約2〜4時間反応させ、ヒドロキシ基を有する液晶性熱硬化型オリゴマーを製造した。
1.2.4−ネドイミド安息香酸の合成
【0049】
約1000ml容量のフラスコを準備した。5−ノ−ルボネン−2.3−ジ−カルボキシル酸無水物32.82g(0.2mol)を氷酢酸400mlに入れて約110℃に加熱して溶解させた後、過量の4−アミノ−ベンゾ酸41.1g(0.3mol)を前記フラスコに投入した後、約2時間撹拌しながら反応させた。続いて、常温で沈澱させて得た沈殿物を、氷酢酸と水とで各々洗浄した後、約60℃の真空オーブンで乾燥させて、4−ネドイミド安息香酸を合成した。
1.3.熱硬化性芳香族ポリエステルフルオロオリゴマーの合成
【0050】
コンデンサー及び機械的撹拌器を備えた約500mlの容量を有するフラスコを用意した。このフラスコにイソフタル酸10.789g(0.065mol)、6−ヒドロキシ−2−ナプト酸47.948g(0.254mol)、4−アミノフェノール14.187g(0.130mol)及び無水酢酸58.396g(9.5mol)を入れた。続いて、前記プルラスト内部を窒素雰囲気下で、約140℃までに少しずつ温度が上昇するように加熱した後、該温度を維持しながら3時間反応させてアセチル化反応を進行させた。
【0051】
続いて、先に合成した4−ネドイミド安息香酸36.79g(0.130mol)とクロロトミネイティドモノ−カルボキシル酸ポリヘキサフルオロルプロピルレンオキサイド27.25gを、前記フラスコに添加した後、反応副産物である酢酸及び未反応の無水酢酸を除去しながら、毎分当たり約1〜2℃の上昇条件で、前記フラスコを約215℃までに昇温させた。該昇温状態において約4時間反応させることにより、主鎖にフルオロル化合物が含有され、両端のうちの少なくともいずれか一つ以上のネドイミド基が導入された熱硬化性芳香族ポリエステルフルオロルオリゴマーを得た。
1.4.プリプレグの製造
【0052】
先に得られた熱硬化性芳香族ポリエステルオリゴマー2.0g〜33.0g(21.9wt%〜32.9wt%)、及び熱硬化性芳香族ポリエステルフルオロルオリゴマー22.0g〜33.0g(21.9wt%〜32.9wt%)を準備し、これをアラルダイト(Araldite) MY−721(ハンツマン[Huntsmann]社製)11.0g〜22.0g(10.9wt%〜1.9wt%)及びビスマレイミドジ−フェニルメタン(4、4'−diphenylmethanebismaleimide)11.0g〜22.0g(10.9wt%〜21.9wt%)を、約45.0g(44.8wt%〜44.9wt%)のN、N'−ジメチルアセトアミド(DMAc)に添加して、混合溶液を製造した。該混合溶液にテフロンフィラー(PTFEパウダー)を重量比で10%〜60%添加し、均一に混合した。続いて、ガラスファイバー(Nittobo社製2116またはAsahi社製2116)を、前記混合溶液を用いて一様に含浸させた後、約200℃のヒーティングゾーン(heating zone)を通過させ、半硬化させて、プリプレグ(Prepreg)を製造した。
[実施例2]
2.1.4−マレイミド−ベンゾイルクロライドの合成
【0053】
約250ml容量のフラスコを用意し、該フラスコにp−アミノ−ベンゾ酸41.1g(0.3mol)、及び酢酸300mlを入れて溶解させた後、無水マレイン酸29.4g(0.3mol)を約10℃で、少しずつ添加して、黄色の沈殿物を得た。この沈殿物を、DMF/エチルアルコール50:50(w/w)溶液で再結晶した。該再結晶された中間体を、酢酸ナトリウム及び酢酸無水物を用いて、約85℃で15分間処理した後、常温に冷却し、氷湯煎器に沈澱させて沈殿物を得た。
【0054】
このように、沈殿物を酢酸エチル/n−ヘキサン50:50(w/w)溶液で再結晶し、N−(p−カルボキシフェニル)マレイミドを得た。こうして得たN−(p−カルボキシフェニル)マレイミド15g(0.07mol)を、80mlのベンゼンに添加した。ここに、塩化オキサリル21.83g(0.172mol)を少しずつ添加し、温度を上昇させて約2時間還流させた。続いて、未反応の塩化オキサリルを除去して常温で冷却させた後、フィルタリングしてヘキサンで洗浄して、4−マレイミド−ベンゾイルクロライドを得た。
2.2.熱硬化性芳香族ポリエステルフルオロルオリゴマーの合成
【0055】
約250ml容量のフラスコを準備し、該フラスコに約100mlのジメチルホルムアミドを入れた後、4−アミノフェノール3.274g(0.03mol)、4,4−ジ−ヒドロキシビフェニル4.655g(0.025mol)、及びトリエチルアミン18mlを添加して溶解させた。続いて、これを氷水に浸して冷却させた状態で、イソプタルロイルクロライド10.151g(0.05mol)を添加し、常温で60時間反応させた後、水とエチルアルコールを使って精製した後、乾燥させた。
【0056】
乾燥した試料1gを、約9gのNMPPに溶解させた後、先立って得た4−マレイミド−ベンゾイルクロライド0.1g、クロロタミネートモノ−カルボキシル酸ポリヘキサフルオロルプロピレンオキサイド0.1g、及びトレエチルアミン10mlを添加し、常温で約12時間反応させることにより、主鎖のフルオロ化合物が含有され、両端の少なくとも一つにマレイミド反応器を導入した熱硬化性芳香族ポリエステルフルオロルオリゴマーを得た。
2.3.プリプレグの製造
【0057】
先に得た熱硬化性芳香族ポリエステルオリゴマー22.0g〜33.0g(21.9wt%〜32.9wt%)、及び熱硬化性芳香族ポリエステルフルオロルオリゴマー22.0g〜33.0g(21.9wt%〜32.9wt%)、アラルダイト(Araldite) MY−721(ハンツマン[Huntsmann]社製)11.0g〜22.0g(10.9wt%〜21.9wt%)、及びビスマレイミドジフェニルメタン(4,4'−diphenylmethanebismaleimide)11.0g〜22.0g(10.9wt%〜21.9wt%)を、約45.0g(44.8wt%〜44.9wt%)のN,N'−ジメチルアセトアミド(DMAc)に添加し、混合溶液を製造した。
【0058】
この混合溶液に、テフロンフィラー(PTFEパウダー)を重量比で約10%〜60%を添加して混合させた。ガラスファイバー(Nittobo社製の2116またはAsahi社製の2116)を、前記混合溶液を用いて一様に含浸させた。続いて、前記混合溶液が含浸したガラスファイバーを200℃のヒーティングゾーンを通過させては半硬化させ、プリプレグを得た。
[比較例1]
【0059】
熱硬化性芳香族ポリエステルフルオロルオリゴマー及びテフロンフィラー(PTFEパウダー)を添加しないで、前述の実施例と同じ条件で熱硬化性芳香族ポリエステルオリゴマーを用いてプリプレグを製造した。
[比較例2]
【0060】
熱硬化性芳香族ポリエステルフルオロルオリゴマーは添加するが、テフロンフィラー(PTFEパウダー)を添加しないで、前述の実施例と同じ条件で熱硬化性芳香族ポリエステルオリゴマーを用いてプリプレグを製造した。
【0061】
上述の実施例1、2及び比較例1、2に従って製造されたプリプレグの各々に対して、熱膨脹係数(CTE)及び誘電率を測定し、その結果を下記の表1に示した。CTE値は窒素をパージ(purge)した状態で、昇温速度を10℃/minにして測定した値であり、熱膨脹係数は50℃〜150℃の温度範囲で計算した平均値である。
【0063】
表1の結果からわかるように、本発明の実施形態によるプリプレグは、エポキシ樹脂を主要絶縁材料として用いる比較例1及び2によるプリプレグに比べて、熱膨脹係数及び誘電率が低いことが認められた。本発明の実施形態によるプリプレグは、約10以下で、13以上である比較例に比べて、非常に低くなることが認められる。誘電率の場合、約10以下で、誘電率は3.50以下で低くなることが認められた。これによって、本発明の実施形態による回路基板製造用複合材は、エポキシ樹脂を主材料として用いて製造された複合材に比べて、4未満の低い誘電率を有し、高速及び高周波帯域において適用可能な低誘電率特性を有していることが認められた。
【0064】
前記のように、合成された熱硬化性芳香族ポリエステル樹脂組成物のメトリックス主鎖に繋がれたフルオロル化合物は。低誘電率を具現する物質であって、分散の困難さなしに、均一にメトリックス内に分布させることができる。このような方式で、メトリックス内に均一に分布したフルオロル化合物と熱硬化性芳香族ポリエステル樹脂組成物との複合体は、誘電率の局所的な差がなく、高速回路及び高周波領域の印刷回路基板絶縁材料として用いることができる。また、熱硬化性芳香族ポリエステル樹脂組成物固有の性質である熱的、機械的特性が大きく低下しないため、既存のエポキシ素材が備える非常に低い熱膨脹係数、及び低誘電率の特性を共に発現可能な印刷回路基板の絶縁材料を製作することができる。
【0065】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、前記した実施の形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。