【解決手段】頁めくり装置3は、開かれた本Bの頁Pに対して吸着する吸着部35を先端に有し、頁Pのめくり元位置で当該頁Pに吸着部35を吸着させ、頁Pのめくり先位置で当該頁Pから吸着部35を分離させるべく、めくり元位置及びめくり先位置で吸着部35を頁Pの上方で往復動作させるように揺動するアーム部34と、駆動軸32を中心にアーム部34を揺動させる駆動部(第一駆動部33)と、アーム部34及び第一駆動部33を収納する収納ケース31とを備えている。アーム部34は収納ケース31から引き出されることで動作状態となる。これにより、不使用時に頁めくり装置をコンパクトに収納することができ、ユーザビリティが高められる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0009】
図1は本実施形態の書画カメラシステムの概略構成を示す斜視図である。なお、以下の説明においては本Bの頁Pを左から右へとめくる場合について説明する。
図1に示すように、書画カメラシステム1には、本Bの頁Pを撮像する撮像手段としての書画カメラ2と、本Bの頁Pをめくる頁めくり装置3と、書画カメラ2及び頁めくり装置3に通信自在に接続されたパソコン4とを備えている。
【0010】
書画カメラ2には、スタンド部21と、スタンド部21の上端に取り付けられたカメラ22とが設けられている。スタンド部21は本Bとカメラ22との相対的な位置関係を調整できるように、前後方向、左右方向に傾倒自在であるとともに、上下方向に伸縮自在となっている。カメラ22は、その画角内に本Bが収まるようにレンズが下方を向いている。カメラ22とスタンド部21との接合部には位置調整機構が設けられており、これによってカメラ22のレンズが向く方向も調整できるようになっている。
【0011】
頁めくり装置3は、開かれた本Bを保持する保持台6と、保持台6上の本Bの頁Pのめくり元位置で頁Pを保持し、頁Pのめくり先位置で頁Pに対する保持を解除するめくり装置本体30とを備えている。
【0012】
保持台6は、図示しないヒンジにより折り畳み自在な一対の保持板61,62を備えている。ここで、本Bの頁Pが左から右へとめくられる場合は、一対の保持板61,62のうち、左側に配置された一方の保持板61が卓上に沿うように置かれ、右側に置かれる他方の保持板62が一方の保持板61に対して所定の角度で起き上がるように傾斜して卓上に置かれる。一方の保持板61上には、本Bのめくり元位置となる頁Pが置かれ、他方の保持板62上には、本Bのめくり先位置となる頁Pが置かれることになる。
これにより、保持台6は、めくり元位置にある頁Pよりもめくり先にある頁Pの方が本Bの綴じ目b2に対して起きる方向に傾斜するように本Bを保持することになる。なお、一対の保持板61,62がヒンジにより折り畳み自在となっているので、一対の保持板61,62のなす角度も調整することができ、めくり先位置にある頁Pの水平面に対する傾斜角度θが調整自在となっている。傾斜角度θとしては30〜45度内の範囲で調整することが好ましい。
【0013】
図2は頁めくり装置3の要部構成を模式的に示す上面視図である。
図3は頁めくり装置3の要部構成を模式的に示す斜視図である。
図4は頁めくり装置3の要部構成を模式的に示す正面図である。
図5は頁めくり装置3の内部構成を模式的に示す側面図である。
図1〜
図5に示すように、めくり装置本体30は、略直方体形状の収納ケース31と、駆動軸32を有するモータなどの第一駆動部(駆動部)33と、駆動軸32を中心に揺動するアーム部34と、アーム部34の先端に取り付けられ、本Bの頁Pに対して吸着する吸着部35と、第一駆動部33、アーム部34及び吸着部35を支持する台座部38と、めくり元位置にある頁Pの上方に風を通過させることでめくり先位置にある頁Pに対して風を当てる送風部5と、各部を制御する図示しない制御部36(
図18参照)とを備えている。
【0014】
収納ケース31は、第一駆動部33、アーム部34、吸着部35、台座部38、送風部5及び制御部36を収納している。収納ケース31の主面には、第一駆動部33、アーム部34、吸着部35及び台座部38を収納するための第一収納凹部311と、送風部5を収納するための第二収納凹部312とが設けられている。なお、制御部36については、露出しないように収納ケース31に内蔵されている。
第一収納凹部311は、不使用時のアーム部34を収納するための第一凹部313と、揺動時のアーム部34の動作を妨げないように形成された第二凹部314とを備えている。第一凹部313は収納ケース31の底部に沿って矩形状に形成されている。第二凹部314は第一凹部313の一端部から連続して扇状に形成されている。また第二凹部314の側部は開放されている。
第二収納凹部312は、第一凹部313の上方に矩形状に形成されている。
【0015】
台座部38は、第一収納凹部311内で水平方向に回動自在となるように設けられている。台座部38には、底板381と、底板381の奥側の一辺から立設し、第一駆動部33を支持する支持部382と、底板381の一端部から立設し、支持部382に隣接するストッパー383とが設けられている。そして、底板381の一端部には、台座部38を水平方向に回動自在とする回動軸384が設けられている。支持部382によって支持された第一駆動部33の駆動軸32も底板381の一端部側に配置されている。換言すると台座部38の回動軸384が駆動軸32側に配置されている。
【0016】
図6は台座部38が収納ケース31内に収納された状態を示す上面視図であり、
図7は斜視図である。ここで、
図2〜
図5においては、台座部38が収納ケース31から引き出された状態(動作状態)を示している。この状態から回動軸384を中心にして台座部38を収納ケース31側に回動させると、
図6及び
図7に示すように第一駆動部33、アーム部34、吸着部35及び台座部38が第一収納凹部311内に収納される。
【0017】
また、収納ケース31の下端部には、図示しないヒンジによって開閉自在な蓋部42が設けられている。開状態において蓋部42は卓上に載置され、
図1及び
図2に示すように、蓋部42上に保持台6が設置される。
図8は蓋部42が閉状態となった場合の収納ケース31を示す斜視図である。第一駆動部33、アーム部34、吸着部35及び台座部38が第一収納凹部311内に収納されると、蓋部42を閉状態とすることによって第一駆動部33、アーム部34、吸着部35及び台座部38が覆い隠されることになる。
【0018】
図5に示すように、動作状態においては第一駆動部33の駆動軸32は、本B側に向けて傾いており、駆動軸32が回転するとアーム部34が駆動軸32を中心にして円弧を描くように頁Pのめくり元位置と、頁Pのめくり先位置との間を往復動作するようになっている。つまり、駆動軸32がアーム部34の揺動軸である。以下の説明においては、頁Pのめくり元位置からめくり先位置までの移動を往動とし、めくり先位置からめくり元位置までの移動を復動とする。
【0019】
図9は、駆動軸32の傾きが頁Pのめくり動作にどのように影響するかを模式的に示した説明図である。なお、
図9においては見やすさのために、保持台6を用いずに本Bを卓上に直接載置した場合を示している。
図9(a)は駆動軸32が綴じ目b2の延長線上に沿って、なおかつ水平に配置された場合を示している。この場合には、綴じ目b2を対称軸とした経路で吸着部35が移動するので、吸着部35はめくり先位置においても右側の頁P上に接触したままとなり、頁Pから分離することができない。
【0020】
図9(b)は駆動軸32を水平なまま、当該駆動軸32の後端部が頁Pの綴じ目b2に対して右側となって、基端部にあたる前端部が綴じ目b2に対して左側となるように傾かせた場合を示している。この場合には頁Pのめくり元位置で吸着部35を吸着させたとしても、アーム部34が駆動軸32を中心に回転すると往動の終点位置では吸着部35が本Bから前側に離れることなる。このため、吸着していた頁Pから吸着部35を分離させやすくすることができる。
しかし、スムーズに頁Pがめくれない場合があることがわかった。この原因としては頁めくりの前半から中盤(楕円S部分)で本Bと吸着部35との距離が長くなってしまうことが一因だと考えられる。
【0021】
図9(c)は駆動軸32を本Bの綴じ目b2に対して傾かせ、なおかつ水平面に対しても傾かせた場合、つまり本実施形態の駆動軸32の場合を示している。この場合、頁めくりの前半から中盤(楕円S部分)での本Bと吸着部35との距離が
図9(b)の場合よりも短くなる。
具体的には、
図10は駆動軸32が水平な場合と、水平面に対して傾かせた場合とによって吸着部35の経路の異なりを示す模式図であり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
図10では、本Bの左右方向をx方向、本Bの上下方向をy方向、本Bの鉛直方向をz方向としている。
図10においては、駆動軸32を水平面に対して傾かせた点を明確にするため、駆動軸32と本Bの綴じ目b2とが一直線上に並んだ場合を示している。
図10に示すように、駆動軸32が水平な場合(図中、点線部)には吸着部35の軌跡n1は、上面から見ると左右方向に沿った直線状となり(
図10(a))、側面から見ると鉛直線方向に沿った直線状となり(
図10(b))、正面から見ると半円状となっている(
図10(c))。一方、水平面に対して駆動軸32を傾かせた場合(図中、実線部)には吸着部35の軌跡n2は、上面から見ると後側を凸にする弧状となり(
図10(a))、側面から見ると上端が後側に傾いた直線状となり(
図10(b))、正面から見ると半円がつぶれた弧状となっている(
図10(c))。
図10(b)に示す軌跡n2は、吸着部35の駆動軌跡平面を側方から見た状態を示しているが、本Bの左右方向と、本Bの鉛直法線とを含む面(xz平面)に対して傾いていることが分かる。
また、
図10(c)から明らかなように、吸着部35から綴じ目b2までの距離は、吸着部35が綴じ目b2上方を通過する際の方が、めくり元位置で頁Pに吸着したときよりも短くなる。つまり、吸着部35が綴じ目b2上方を通過する際においては、軌跡n2の方が軌跡n1よりも本Bから吸着部35までの距離を短くすることが可能となっている。
このことから、
図9(c)に示す本実施形態の場合では、頁めくりの後半で本B(綴じ目b2)と吸着部35との距離を長くし、吸着していた頁Pから吸着部35を分離させやすくするとともに、頁めくりの前半から中盤(楕円S部分)での本B(綴じ目b2)と吸着部35との距離を短くすることができ、頁Pを適度にたるませることができるので、確実に頁Pをめくることが可能となる。
そして、復動時では、往動時と進行方向は逆であり、同経路で吸着部35は頁Pから分離した状態で移動し、最終的に頁Pのめくり元位置で新たな頁Pに吸着する。この往復動作を繰り返すことで頁Pのめくり動作が進行する。
【0022】
なお、本実施形態では、
図9(c)に示すように、駆動軸32が開かれた本Bの綴じ目b2に対して傾いているとともに、水平面に対しても傾いている例で説明したが、駆動軸32が綴じ目b2、水平面のどちらか一方に対して傾いている場合についても、個別に効果があることはもちろんである。
駆動軸32が水平面だけに対して傾いている場合については、後述するように、第二駆動部37を駆動させたり、右側では吸着部35が左側よりも高い位置で止まるようにしたりして、吸着部35を頁から分離させやすくすればよい。
【0023】
次に、アーム部34及び吸着部35の具体的構成について説明する。
図11はアーム部34の概略構成を示す斜視図である。
図11に示すように駆動軸32の先端部には回転体321が取り付けられている。この回転体321には、駆動軸32に直交する平面に沿うようにアーム部34が取り付けられている。アーム部34は例えば樹脂製の矩形板状部材である。このアーム部34は、長手方向に垂直な断面の形状が扁平な板状となっている。アーム部34の先端には例えばモータなどの第二駆動部37を介して吸着部35が取り付けられている。
第二駆動部37はその駆動軸39がアーム部34の長手方向に対して直交する方向に沿うように配置されている。この駆動軸39には吸着部35が着脱自在に取り付けられていて、当該駆動軸39の回転に伴って吸着部35が回転するようになっている。
【0024】
図12は吸着部35の概略構成を示す正面図である。
図12に示すように吸着部35は略円柱状の粘着部である。吸着部35には、円柱状の回転ローラ351と、回転ローラ351の周囲に巻き付けられた粘着部材352とが備えられている。
ここで、第二駆動部37の駆動軸39に対する吸着部35の交換作業効率を向上させたいという要望がある。このため、回転ローラ351を例えばスポンジなどのような弾性体から形成し、その中心部に駆動軸39が嵌合する嵌合穴353を形成している。スポンジ以外の弾性体としてはゴムや発泡体等が挙げられる。嵌合穴353の内径は駆動軸39の外径よりも小さく形成されていて、嵌合穴353に駆動軸39を押し込むことにより回転ローラ351が収縮して嵌合穴353内に駆動軸39が嵌合する。したがって、交換時においても駆動軸39から回転ローラ351を引き抜くだけで取り外せることが可能となっている。このように、回転ローラ351が弾性体であるため、駆動軸39に対する吸着部35の着脱動作を容易に行うことができ、交換作業を容易化することができる。
【0025】
図13は粘着部材352の概略構成を示す斜視図である。
図13に示すように粘着部材352はシート体であり例えば両面テープなどのように両面粘着構造を有している。粘着部材352は二層構造となっていて、本Bに吸着する側(表面側)においては弱粘性で剥がしてもカスが残らない特性と、複数回使用できる特性を有する弱粘層354となっている。他方、裏側においては回転ローラ351に巻き付けられた状態を維持できるように弱粘層354よりも強い粘性を有する強粘層355となっている。そして、粘着部材352には所定の長さ毎にミシン目356が形成されている。
【0026】
図14は、粘着力が弱くなった粘着部材352を剥がす手順を示す説明図である。まず、ユーザーは粘着力が弱くなったと感じた場合、
図14(a)に示すように最表面の粘着部材352を1周分剥がすことで新たな粘着部材352の弱粘層354を露出させる。そして粘着力が弱った部分をミシン目356に沿って切断する。この切断時に
図14(b)に示すように一時的に剥がれた部分があると、ユーザーは当該部分を再度貼り付ける。これにより、新たな弱粘層354が露出するため、頁めくり動作を適切に再開することが可能となる。
【0027】
図15は、吸着部35がめくり元位置の頁Pに接触した当初の状態を示す模式図である。
図15に示すように、アーム部34が矢印Y3方向に揺動して吸着部35がめくり元位置の頁Pに接触した当初は、吸着部35の有効面(粘着面)が頁Pに対して斜めに当たっている。具体的には、略円柱状である吸着部35の一方の底面の円周部35aの一部が頁Pに対して斜めに当たるように、駆動軸32,39、アーム部34の長さや角度、取付位置などが予め設定されている。なお、吸着部35の有効面は母線からなる外周面である。
このように有効面が頁Pに対して斜めに当たっていれば、接触当初においては頁Pに対する接触面積が小さいために、高い圧力が頁Pに作用することになり、確実に吸着部35を頁Pに吸着(粘着)させることができる。
【0028】
図16は、
図15に示した状態からさらにアーム部34が揺動した状態を示す模式図である。めくり元位置の頁Pに吸着部35が接触した当初の状態となってもアーム部34の揺動は終わっておらず、第一駆動部33によってアーム部34はさらに矢印Y3方向に進行し続ける。吸着部35は頁Pに接触したままであるため、アーム部34は長手方向に平行な軸回りにねじれる。さらに、弾性体からなる回転ローラ351に嵌合された駆動軸39も回転ローラ351の中心T1からねじれ、吸着部35が母線(を含むある幅)で頁Pに密着することになる。これにより、吸着部35の有効面が接触直後よりも広い面積で頁Pに密着する。
【0029】
図17は、
図15に示した状態を正面から見た模式図である。この
図17に示すように、めくり元位置の頁Pに撓みがあったとしても、吸着部35の有効面が頁Pに対して斜めに当たるのであれば接触当初においては頁Pに対する接触面積が小さくなる。したがって、高い圧力を頁Pに作用させることができ、確実に頁Pに吸着させることができる。
このように、吸着時に、吸着部35が2段階で頁Pに吸着するように動作するので、吸着部35を確実に頁Pに吸着させることができる。
【0030】
図1及び
図2に示すように、送風部5は、本Bのめくり元位置の上流側に配置されている。例えば本実施形態のように本Bの頁Pが左から右へとめくられる場合は、本Bのめくり元位置にある頁Pよりも左側に送風部5は配置される。送風部5は、第二収納凹部312内において水平方向に回動するように回動軸51によって回動自在に軸支されている。これにより、風の進行方向が調整自在となっている。なお、風の進行方向が調整自在であれば、送風部5の回動軸は一軸でなくても二軸以上でもよい。二軸の場合は水平方向への回動と、上下方向への回動ができることが好ましい。また、例えばピボット機構などのような回転軸の定まらない機構によって送風部5を第二収納凹部312内に取り付けてもよい。
【0031】
次に、本実施形態の書画カメラシステム1の主制御構成について説明する。
図18は書画カメラシステム1の主制御構成を示すブロック図である。
図18に示すように、頁めくり装置3の制御部36には、第一駆動部33を駆動するためのモータドライバ361と、第二駆動部37を駆動するためのモータドライバ362と、送風部5を駆動するためのモータドライバ368と、各種プログラムが記録されたROM363と、ROM363中のプログラムの実行時に当該プログラムが展開されるRAM364と、各種指示が入力される操作部365と、操作部365からの指示に基づいてROM363中のプログラムをRAM364に展開し実行することでモータドライバ361,362を制御するCPU366と、パソコン4が接続されるI/F367と、電源370とが備えられている。
操作部365には、頁めくり処理を開始させるための開始スイッチ365aと、頁めくり処理を停止させるための停止スイッチ365b等が設けられている。CPU366は、開始スイッチ365aが操作されてから、停止スイッチ365bが操作されるまでにめくられた頁数をN値としてカウントする。このN値はRAM364に記憶されている。
【0032】
以下、書画カメラシステム1による頁めくり処理について説明する。
図19は頁めくり処理の流れを示すフローチャートである。
まず、頁めくり処理が実行される前の準備について説明する。
収納状態にあるめくり装置本体30から蓋部42を開いて開状態とし、さらに回動軸384を中心にして台座部38を収納ケース31から引き出すように回動させて、アーム部34が動作する動作状態へと切り替える(
図1及び
図2参照)。その後、開状態にある蓋部42上に保持台6を設置して、当該保持台6上に本Bを設置する。そして、送風部5からの風が、頁Pのめくり元位置にある頁Pの上方を通過するとともに、頁のめくり先位置にある頁Pに当たるように送風部5の風の進行方向を調整する。図中、矢印Y2は風の進行方向を示している。
【0033】
また、予め起点(復動の終点位置)に吸着部35が配置されるようにアーム部34の位置を合わせる。具体的には、めくり元位置にある頁Pの左上付近に吸着部35が当たるように保持台6の位置も合わせる(
図1及び
図2参照)。
この際、ユーザーは粘着部材352の粘着性を確認し、粘性が弱い場合には当該弱い部分を剥がし、新たな粘着部材352を露出させておく。そして、本Bを開き、取り込み始めたい頁Pの一頁前の頁Pを開いて、吸着部35を往動の終点位置(復動の起点位置)に移動させておく。この際、
図20及び
図21に示すように、ストッパー383によってアーム部34が支持される位置が往動の終点位置(復動の起点位置)となる。
【0034】
これで準備が完了したため頁めくり装置3の電源370をONにすると、CPU366がROM363中の頁めくり処理用のプログラムをRAM364に展開し実行する。
【0035】
図19に示すようにステップS1では、CPU366は開始スイッチ365aが操作されたか否かを判断し、操作されていない場合はそのままの状態を継続し、操作された場合はステップS2に移行する。
ステップS2では、CPU366は、RAM364に記憶されているN値を0にリセットする。
ステップS3では、CPU366は、送風部5を駆動して当該送風部5からの送風を実行する。
【0036】
ステップS4では、CPU366はアーム部34が右から左に移動(復動)するように第一駆動部33を制御する。
ステップS5では、CPU366は第一駆動部33の駆動時間が第一所定時間を超えたか否かを判断し、第一所定時間以下である場合にはそのまま第一駆動部33の駆動を継続し、第一所定時間を超えた場合にはステップS6に移行する。第一所定時間は、復動の起点から終点までアーム部34を移動させることのできる時間に設定されている。
ステップS6では、CPU366は第一駆動部33を停止する。これにより、吸着部35の回転が停止された状態で左側の頁Pに吸着することになる(
図1及び
図2参照)。
【0037】
ステップS7では、CPU366はアーム部34が左から右に移動(往動)するように第一駆動部33を制御する。これによりめくり元位置にあった頁Pが吸着部35に吸着した状態でめくり先位置へと移動しはじめる(
図22及び
図23参照)。
ステップS8では、CPU366は第一駆動部33の駆動時間が第二所定時間を超えたか否かを判断し、第二所定時間以下である場合にはそのまま第一駆動部33の駆動を継続し、第二所定時間を超えた場合にはステップS9に移行する。第二所定時間は、第一所定時間よりも短い時間に設定されており、特にアーム部34が往動し始めてから往動の半分地点を通過する付近から往動を終える前までの時間に設定されていることが好ましい。
ステップS9では、CPU366は第一駆動部33を駆動させたままの状態で第二駆動部37を制御して吸着部35を回転させる。この回転によって、吸着部35を頁Pから分離させる際に吸着部35の吸着強度が変化することになり、吸着部35を頁Pから確実に分離させることが可能となっている。さらに、
図22に示すように往動時では、アーム部34は時計回りに回転している(矢印Y1)。より分離性能を高めるためには、第二駆動部37がアーム部34の揺動とは反対方向、つまり反時計回り(矢印Y4)に吸着部35を回転させることが好ましい。
【0038】
ステップS10では、CPU366は第一駆動部33の駆動時間が第一所定時間を超えたか否かを判断し、第一所定時間以下である場合にはそのまま第一駆動部33及び第二駆動部37の駆動を継続し、第一所定時間を超えた場合にはステップS11に移行する。
ステップS11では、CPU366は第一駆動部33及び第二駆動部37を停止する。このとき、アーム部34は慣性力によってそのまま時計回りの回転を続けようとするが、ストッパー383によってそれ以上の回転が規制される。つまり、ストッパー383は、アーム部の往復動作のうち、頁送り側の動作範囲を規制するものである。
そして、第二駆動部37が回転している期間内で、頁Pは吸着部35から分離される。この際、送風部5からの風が吸着部35から分離した頁Pに当たるため、当該頁Pはめくり先位置へと案内された上で、当該頁Pがめくり元位置に戻ってしまうことを防止することができる。また、吸着部35はめくり先位置の頁Pから離れた位置に頁Pから分離した状態で配置されることになる。この位置であると吸着部35及びアーム部34はカメラ22の画角Gから外れることになる(
図25参照)。
なお、
図26は一頁分のめくり動作の第一駆動部33及び第二駆動部37の駆動タイミングを示している。
ここでは、第二駆動部37の駆動終了タイミングを第一駆動部33の駆動終了タイミングと同じにする例で説明しているが、第二駆動部37の駆動終了タイミングを第一駆動部33の駆動終了タイミングより早めるようにしてもよい。
【0039】
ステップS12では、CPU366はパソコン4に頁めくり完了信号を出力する。
ステップS13では、パソコン4は、入力された頁めくり完了信号に基づいてカメラ22を制御し、現在開かれている頁P(見開きの状態)の撮像を行う。このとき、吸着部35、アーム部34及び送風部5はカメラ22の画角Gから離れているので、現在開かれている頁Pのみが撮像されることになる。カメラ22での撮像画像データは、一枚毎(一撮像毎)にナンバリングされてパソコン4の記録部41に記録される。
なお、ステップS13では、現在開かれている見開きの状態の両方の頁Pを撮像してもよいが、傾斜していないめくり元位置に対応する頁P、例えば奇数頁のみを撮像するようにし、別途めくり元位置の頁Pが偶数頁になるようにして偶数頁のみを撮像した画像とともに、互い違いに頁順に並び替えるようにして、全頁のスキャン画像としてまとめるようにすることが望ましい。
【0040】
ステップS14では、CPU366はN値に1を加えてRAM364に記憶する。
ステップS15では、CPU366は停止スイッチ365bが操作されたか否かを判断し、操作されていない場合にはステップS2に移行し、操作されている場合には頁めくり処理を終了する。これにより、頁めくり動作と撮像動作が繰り返され、所望の頁Pの撮像が完了する。
【0041】
以上のように、本実施形態によれば、アーム部34が収納ケース31から引き出されることで動作状態となるので、収納状態においてはアーム部34を収納ケース31内に収めることができる。したがって、不使用時に頁めくり装置3をコンパクトに収納することができ、ユーザビリティを高めることができる。
【0042】
また、台座部38を水平方向に回動させるだけで、アーム部34の収納状態と動作状態とを切り替えることができる。台座部38は回動軸384を中心に回動するものであるので、簡単な構成で収納状態と動作状態とを切り替えることができる。
また、台座部38の回動軸384が、アーム部34の駆動軸(揺動軸)32側に配置されているので、台座部38の回動に基づいて駆動軸32の配線等の移動量も小さくすることができ、配線の引き回し長さを抑制することができる。
【0043】
アーム部34の往復動作のうち、頁送り側の動作範囲を規制するストッパー383が設けられているので、アーム部34の動作範囲を簡単な構成で規制することができる。
【0044】
収納ケース31におけるストッパー383の上方が開放されているので、収納ケース31を大きくすることなくアーム部34の動作範囲を90度以上、例えば135度程度確保させた状態で規制することができる。
【0045】
また、送風部5が、めくり元位置にある頁Pの上方に風を通過させることで、めくり先位置にある頁Pに対して風を当てるので、めくり元位置にある頁Pに対する風の影響を抑えつつもめくり先位置にある頁Pを押さえることができる。これにより、めくり先位置からめくり元位置へと頁Pが戻ってしまうことを防止することができ、頁めくりの確実性を高めることが可能となる。
また、送風部5が収納ケース31内に配置されているので、送風部5も込みでコンパクトに収納することができる。
【0046】
また、風の進行方向が調整自在となるように送風部5が収納ケース内に設けられているので、本Bの大きさ、厚さなどに合わせて最適な位置へ風の進行方向を調整することができる。
【0047】
また、収納ケース31に蓋部42が設けられているので、例えば長期的に使用されずに収納された状態であったとしても、蓋部42によって埃等が収納ケース31内に入り込むことを防ぐことができる。これにより、可動部であるアーム部34や吸着部35等の劣化を抑制することができ、頁めくり装置3の信頼性を高めることができる。
【0048】
また、収納ケース31が略直方体状であるので、本Bとともに収納ケース31を本棚に収めたとしても違和感のない印象を与えることができる。
【0049】
なお、本発明は上記実施形態に限らず適宜変更可能である。
例えば、上記実施形態では、吸着部35が粘着部材352を備えていて当該粘着部材352の粘着性によって頁Pに吸着する場合を例示して説明したが、吸引等によって頁Pに吸着部を吸着させることも可能である。この場合、例えば吸着部の周面に内部空間と連通する連通孔を形成し、吸着部の内部空間とポンプとを連通させることによって、ポンプを駆動し内部空間を負圧にすれば連通孔に対して吸引力が作用することになる。この吸引力を用いて吸着部に頁Pを吸着させることが可能である。
また、吸引、粘着以外にも静電吸着による吸着を吸着部に適用することも可能である。
【0050】
上記実施形態では、頁めくり装置3と書画カメラ2とが別体である場合を例示して説明したが、書画カメラを収納ケースに収納させることも可能である。
図27及び
図28は書画カメラを収納ケースに収納させた書画カメラシステムの一例を示す斜視図であり、
図27は収納状態を示し、
図28は動作状態を示している。なお、以下の説明では上記実施形態と同一の部分に同一の符号を付してその説明を省略する。
【0051】
図27に示すように、書画カメラシステム1Aは、頁めくり装置3と、頁めくり装置3の収納ケース31aに対して一体化された副収納ケース82とを備えている。
副収納ケース82は、収納ケース31aの側面に着脱自在に取り付けられている。副収納ケース82には書画カメラ2aが収納されている。書画カメラ2aには、副収納ケース82内に収納された折り畳み自在なアーム部23と、アーム部23の先端に取り付けられたヘッド部24とが設けられている。アーム部23の基端部は、副収納ケース82内で前後方向、左右方向に位置調整自在に取り付けられている。また、ヘッド部24には、開かれた本Bの頁Pを撮像するカメラ25と、前記頁Pに明かりを照らす照明部26とが一体化されて備えられている。カメラ25の画角は照明部26の照射範囲内に収められている。ヘッド部24とアーム部23との接合部には位置調整機構が設けられており、これによってカメラ25のレンズが向く方向も調整できるようになっている。
収納ケース31aの上面には、カメラ25で撮像された画像を表示する表示部27が設けられている。
図27に示すように収納状態においては、収納ケース31aが副収納ケース82に取り付けられて一体化されている。他方、
図28に示すように動作状態においては収納ケース31aから副収納ケース82が分離されている。これにより、撮像時においては書画カメラ2aがアーム部34から離れることになる。
【0052】
このように、収納ケース31aと一体化された副収納ケース82に収納されているので、書画カメラ2aと頁めくり装置3とを一体化した状態でコンパクトに収納することができる。
さらに照明部26も副収納ケース82に収納されているので、照明部26もまとめて一体化した状態でコンパクトに収納することができる。また、照明部26によって適切な明るさで撮像することも可能である。
そして、表示部27が収納ケース31aに収納されているので、表示部27もまとめて一体化した状態でコンパクトに収納することができる。また、別体の画像表示装置等を設けなくても、撮像した画像をその場で確認することができる。
【0053】
また、表示部27や、図示しない操作キーなどにタッチパネル機能を設け、ユーザーが操作したコマンド等の入力を受け付けるようにすれば、パソコン4がなくとも、その設定状態等を表示部27で確認することができる。
【0054】
また、アーム部34から分離された状態で書画カメラ2aが動作状態となるので、撮像時にアーム部34の揺動が書画カメラ2aに伝達することが抑制され、ブレのない画像を撮像することができる。また、アーム部34の連続する揺動動作によりセッティングした状態がずれてしまう現象も抑制することができる。カメラ25と制御部36等の接続は、図示しない配線や無線接続等により、アーム部34の揺動がカメラ25に直接伝わらない状態で行われるようにすればよい。
【0055】
また、上記実施形態では、開かれた本Bを保持する保持台6がめくり装置本体30とは別体である場合を例示して説明したが、これらが一体となっていてもよい。
図29及び
図30は蓋部42の内面に保持台6が一体化された書画カメラシステムの一例を示す斜視図であり、
図29は収納状態を示し、
図30は動作状態を示している。
図29に示すように収納状態においては、蓋部42上の保持台6は閉ざされた状態となっている。他方、
図30に示すように動作状態においては保持台6が開かれて、当該保持台6上に本Bを載置可能な状態となる。なお、アーム部34に対する本Bの位置調整が行えるように保持台6は蓋部42に対して着脱自在であることが好ましい。例えば、適度な強度のマグネットで保持されるようにすれば位置調整も容易である。
このように、本Bを保持する開閉自在な保持台6が折り畳まれた状態で蓋部42に設けられているので、保持台6もまとめて一体化した状態でコンパクトに収納することができる。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
【0057】
〔付記〕
<請求項1>
本の頁をめくるための頁めくり装置であって、
開かれた前記本の頁に対して吸着する吸着部を先端に有し、前記頁のめくり元位置で当該頁に前記吸着部を吸着させ、前記頁のめくり先位置で当該頁から前記吸着部を分離させるべく、前記めくり元位置及び前記めくり先位置で前記吸着部を前記頁の上方で往復動作させるように揺動するアーム部と、
駆動軸を中心に前記アーム部を揺動させる駆動部と、
前記アーム部及び前記駆動部を収納する収納ケースと、を備え、
前記アーム部は前記収納ケースから引き出されることで動作状態となることを特徴とする頁めくり装置。
<請求項2>
請求項1記載の頁めくり装置において、
前記アーム部を揺動自在に保持する台座部を備え、
前記台座部は、前記収納ケースに対して水平方向に回動することで、前記アーム部が前記収納ケース内に収納された収納状態と、前記アーム部が前記収納ケースから引き出された動作状態とを切り替えることを特徴とする頁めくり装置。
<請求項3>
請求項2記載の頁めくり装置において、
前記台座部の回動軸は、前記アーム部の揺動軸側に配置されていることを特徴とする頁めくり装置。
<請求項4>
請求項2又は3記載の頁めくり装置において、
前記台座部には、前記アーム部の往復動作のうち、頁送り側の動作範囲を規制するストッパーが設けられていることを特徴とする頁めくり装置。
<請求項5>
請求項4記載の頁めくり装置において、
前記収納ケースにおける前記ストッパーの上方は開放されていることを特徴とする頁めくり装置。
<請求項6>
請求項1〜5のいずれか一項に記載の頁めくり装置において、
前記頁のめくり元位置にある前記頁の上方に風を通過させ、前記頁のめくり先位置にある前記頁に対して風を当てる送風部をさらに備え、
前記送風部が前記収納ケース内に配置されていることを特徴とする頁めくり装置。
<請求項7>
請求項6記載の頁めくり装置において、
前記送風部は、風の進行方向が調整自在となるように前記収納ケース内に設けられていることを特徴とする頁めくり装置。
<請求項8>
請求項1〜7のいずれか一項に記載の頁めくり装置において、
前記収納ケース内に収納された前記アーム部及び前記駆動部を覆い隠す蓋部をさらに備えることを特徴とする頁めくり装置。
<請求項9>
請求項8記載の頁めくり装置において、
前記蓋部には、前記本を保持する開閉自在な保持台が折り畳まれた状態で設けられていることを特徴とする頁めくり装置。
<請求項10>
請求項1〜9のいずれか一項に記載の頁めくり装置において、
前記収納ケースは、略直方体状であることを特徴とする頁めくり装置。
<請求項11>
請求項1〜10のいずれか一項に記載の頁めくり装置と、
前記本の頁を撮像する撮像手段と、を備え、
前記撮像手段は、前記収納ケースに収納されていることを特徴とする書画カメラシステム。
<請求項12>
請求項11記載の書画カメラシステムにおいて、
前記撮像手段は、前記アーム部から分離された状態で動作状態となることを特徴とする書画カメラシステム。
<請求項13>
請求項11又は12記載の書画カメラシステムにおいて、
前記頁に明かりを照らす照明部をさらに備え、
前記照明部は前記収納ケースに収納されていることを特徴とする書画カメラシステム。
<請求項14>
請求項11〜13のいずれか一項に記載の書画カメラシステムにおいて、
前記撮像手段によって撮像された画像を表示する表示部をさらに備え、
前記表示部は前記収納ケースに収納されていることを特徴とする書画カメラシステム。