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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-350(P2015-350A)
(43)【公開日】2015年1月5日
(54)【発明の名称】多重バイポーラサンプリング
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/04 20060101AFI20141202BHJP
   A61B 19/00 20060101ALI20141202BHJP
【FI】
   A61B5/04 P
   A61B19/00 502
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-123215(P2014-123215)
(22)【出願日】2014年6月16日
(31)【優先権主張番号】13/919,229
(32)【優先日】2013年6月17日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヴ・リキテンスタイン
【テーマコード(参考)】
4C027
【Fターム(参考)】
4C027AA02
4C027AA06
4C027AA10
4C027DD03
4C027EE01
4C027KK01
(57)【要約】
【課題】 複数のモジュールから成る装置を提供する。
【解決手段】 モジュールはそれぞれ、絶縁性フレームと、離間した個々の位置でフレームに固着された一対の電極と、一対の電極から信号を受信し、それに反応して差分信号を出力するように構成された回路機構とを有する。装置は更に、遠位端及び近位端を有すると共に、遠位端に近接して長手方向で間隔を空けた位置に複数のモジュールを収容する、挿入チューブから成る。チューブを通り、差分信号をモジュールから近位端へと搬送するように接続された、ケーブル布線が存在する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
複数のモジュールであって、各モジュールが、
絶縁性フレーム、
離間した個々の位置で前記フレームに固着された一対の電極、及び、
前記一対の電極から信号を受信し、それに反応して差分信号を出力するように構成された回路機構を含む、モジュールと、
遠位端及び近位端を有し、前記遠位端に近接して長手方向で間隔を空けた位置に前記複数のモジュールを収容する、挿入チューブと、
前記チューブを通り、差分信号を前記モジュールから前記近位端へと搬送するように接続されたケーブル布線と、を備える装置。
【請求項2】
前記絶縁性フレームがプリント回路基板(PCB)を含み、前記回路機構が前記PCBに搭載される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ケーブル布線が、前記差分信号を搬送するように構成されたデータ線及び接地線を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記データ線が、前記差分信号に加えてクロック信号及び電力を搬送するように構成される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記回路機構が、前記遠位端が挿入されている患者に対して、前記一対の電極の一方を介して電流を送り込むように構成された電流発生器を備え、前記装置が、送り込まれた前記電流に反応して前記患者の表面で受け取られる異なる電流を測定し、測定された前記異なる電流に反応して前記一対の電極の前記一方の位置を判断するように構成されたプロセッサを更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記挿入チューブが、患者の心臓に挿入されるカテーテルに組み込まれ、前記差分信号が、前記心臓と接触することによって前記一対の電極が獲得する電極電位に反応して発生する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記ケーブル布線が、前記複数のモジュールを長手方向で間隔を空けた前記位置に維持するように、前記複数のモジュールに接続される、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記回路機構が、前記一対の電極の一方から信号を受信し、それに反応してユニポーラ信号を出力するように構成され、前記ケーブル布線が、前記ユニポーラ信号を前記近位端へと搬送するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記回路機構が、前記信号を格納するように構成されたメモリと、コントローラとを備え、前記コントローラが、ノイズを低減するために、前記メモリからのデータの出力を遅延させるように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
方法であって、
遠位端及び近位端を有する挿入チューブを提供することと、
複数のモジュールが前記チューブ内で前記遠位端に近接して長手方向で間隔を空けた位置にあるように、前記チューブに前記モジュールを挿入することであって、各モジュールが、
絶縁性フレーム、
離間した個々の位置で前記フレームに固着された一対の電極、及び、
前記一対の電極から信号を受信し、それに反応して差分信号を出力するように構成された回路機構を含む、ことと、
ケーブル布線を前記チューブに通し、差分信号を前記モジュールから前記近位端へと搬送するように前記ケーブル布線を接続することとを含む、方法。
【請求項11】
前記絶縁性フレームがプリント回路基板(PCB)を含み、前記方法が、前記回路機構を前記PCBに搭載することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ケーブル布線が、前記差分信号を搬送するように構成されたデータ線及び接地線を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記データ線が、前記差分信号に加えてクロック信号及び電力を搬送するように構成される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記遠位端が挿入されている患者に対して、前記一対の電極の一方を介して電流を送り込むことと、前記一対の電極の前記一方の位置を判断するために、送り込まれた前記電流に反応して前記患者の表面で受け取られる異なる電流を測定することとを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記挿入チューブが、患者の心臓に挿入されるカテーテルに組み込まれ、前記差分信号が、前記心臓と接触することによって前記一対の電極が獲得する電極電位に反応して発生する、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記ケーブル布線が、前記複数のモジュールを長手方向で間隔を空けた前記位置に維持するように、前記複数のモジュールに接続される、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記回路機構が、前記一対の電極の一方から信号を受信し、それに反応してユニポーラ信号を出力するように構成され、前記ケーブル布線が、前記ユニポーラ信号を前記近位端へと搬送するように構成される、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記回路機構が、前記信号を格納するように構成されたメモリを含み、前記方法が、ノイズを低減するために、前記メモリからのデータの出力を遅延させることを更に含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として、導体を使用した信号伝送に関し、具体的には、最小限の数の導体を通して多重信号を伝送することに関する。
【背景技術】
【0002】
外科処置では、患者に対して比較的多数の測定を同時に行うことが必要な場合があり、測定値を患者から、測定値が分析され表示されるであろう比較的離れたコンソールへと伝達するのが必要な場合がある。伝達の問題は、患者へのアクセスが限定されていることによって悪化する場合がある。例えば、低侵襲性の外科手術では、手術を受けている患者へのアクセスのサイズが非常に限定される場合があり、そのため手術に使用されるカテーテル又は器具は、ミリメートル単位の直径を有する必要がある。測定値を伝達するのに使用される導体の数を最小限に抑えることによって、カテーテル又は器具の直径を低減させることが可能になり、それに対応して患者に対する利益を伴う。
【0003】
参照により本特許出願に組み込まれる文書は、組み込まれた文書内の用語が、本明細書で明示的又は暗黙的に行われる定義と相反するように定義される場合を除き、本出願の一体部分と見なされるべきであり、本明細書における定義のみが検討されるべきである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一実施形態は、装置を提供し、前記装置は、
複数のモジュールであって、各モジュールが、
絶縁性フレーム、
離間した個々の位置でフレームに固着された一対の電極、及び、
一対の電極から信号を受信し、それに反応して差分信号を出力するように構成された回路機構を含むモジュールと、
遠位端及び近位端を有し、遠位端に近接して長手方向で間隔を空けた位置に複数のモジュールを収容する、挿入チューブと、
チューブを通り、差分信号をモジュールから近位端へと搬送するように接続されたケーブル布線と、を備える。
【0005】
絶縁性フレームは、一般的に、プリント回路基板(PCB)から成り、回路機構はPCBに搭載されてもよい。
【0006】
開示される一実施形態では、ケーブル布線は、差分信号を搬送するように構成されたデータ線及び接地線を含む。データ線は、差分信号に加えてクロック信号及び電力を搬送するように構成されてもよい。
【0007】
更に開示される実施形態では、回路機構は、遠位端が挿入されている患者に対して、一対の電極の一方を介して電流を送り込むように構成された電流発生器を含み、装置は、送り込まれた電流に反応して患者の表面で受け取られる異なる電流を測定し、測定された異なる電流に反応して一対の電極の一方の位置を判断するように構成されたプロセッサを更に含む。
【0008】
更に別の開示される実施形態では、挿入チューブは、患者の心臓に挿入されるカテーテル内に組み込まれ、差分信号は、心臓と接触することによって一対の電極が獲得する電極電位に反応して発生する。
【0009】
代替実施形態では、ケーブル布線は、複数のモジュールを長手方向で間隔を空けた位置で維持するように、複数のモジュールに接続される。
【0010】
更なる代替実施形態では、回路機構は、一対の電極の一方から信号を受信し、それに反応してユニポーラ信号を出力するように構成され、ケーブル布線は、ユニポーラ信号を近位端へと搬送するように構成される。
【0011】
更に別の代替実施形態では、回路機構は、信号を格納するように構成されたメモリと、コントローラとを含み、コントローラは、ノイズを低減するために、メモリからのデータの出力を遅延させるように構成される。
【0012】
更に、本発明の一実施形態によれば、
遠位端及び近位端を有する挿入チューブを提供することと、
複数のモジュールがチューブ内で遠位端に近接して長手方向で間隔を空けた位置にあるように、チューブにモジュールを挿入することであって、各モジュールが、
絶縁性フレーム、
離間した個々の位置でフレームに固着された一対の電極、及び、
一対の電極から信号を受信し、それに反応して差分信号を出力するように構成された回路機構を含む、ことと、
ケーブル布線をチューブに通し、差分信号をモジュールから近位端へと搬送するように、ケーブル布線を接続することと、を含む方法が提供される。
【0013】
本開示は、以下の発明を実施するための形態を、以下の図面と併せ読むことによって、より完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態による、多重バイポーラサンプリングシステムを使用する侵襲性医療処置を示す概略図である。
図2】本発明の一実施形態による、システムで使用される挿入チューブの遠位端の外観を示す概略図である。
図3】本発明の一実施形態による、システムによって使用されるバイポーラサンプリングモジュールを示す概略図である。
図4】本発明の一実施形態による、サンプリングモジュールの要素を示す概略ブロック図である。
図5】本発明の代替実施形態による、システムによって使用されるバイポーラサンプリングモジュールを示す概略図である。
図6】本発明の一実施形態による、直列構成で互いに接続された多重サンプリングモジュールを示す概略図である。
図7】本発明の更なる代替実施形態による、システムによって使用されるバイポーラサンプリングモジュールを示す概略図である。
図8】本発明の一実施形態による、図7のモジュールの要素を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
概論
本発明の一実施形態は、挿入チューブに挿入されてもよい複数のモジュールを提供し、それにより、一般的に、複数のモジュールが、チューブの遠位端に近接して長手方向で間隔を空けた位置に位置付けられる。チューブは近位端を有し、一般的に、カテーテルの一部を形成する。各モジュールは、一対の電極が固着される絶縁性フレームを、一般的にはプリント回路基板(PCB)を有し、フレームは、実質的に変動しない距離で一対の電極を分離するように作用する。各モジュールはまた、信号を、一般的にはバイポーラ信号を、その一対の電極から受信し、それに反応して差分信号を出力するように構成された回路機構を含む。別の方法として、又はそれに加えて、回路機構は、電極の一方又は両方からユニポーラ信号を受信するように構成されてもよい。特段の指示がある場合を除いて、簡単にするため、以下の説明では、バイポーラ信号が所与のモジュールの一対の電極から受信されるものと仮定する。
【0016】
チューブが患者の心臓に挿入される場合、各一対の電極は、電極が心臓に接触する位置で発生する電極電位からバイポーラ信号を獲得するのに使用されてもよい。
【0017】
ケーブル布線は、チューブの遠位端と近位端との間で挿入チューブを通り、ケーブル布線は、モジュールの差分信号をチューブの近位端へと搬送するようにして、モジュールに接続される。一般的に、差分信号を受信するように、プロセッサが近位端に接続される。
【0018】
モジュールを接続するケーブル布線は、一般的に4つの導体を備えるが、いくつかの実施形態では、2つの導体のみがケーブル布線に使用される。しかしながら、複数のモジュールの数は事実上無制限であり、一般的には5つ以上であってもよい。したがって、心臓に挿入されるカテーテルの場合、カテーテルを横断する4つ又は更にはより少数の導体を使用して、カテーテルによって多数のバイポーラ信号が獲得されてもよい。
【0019】
システムの説明
以下の記載において、図面中の同様の要素は同様の数字により識別され、同様の要素は、必要に応じて識別数字に文字を添えることにより区別される。
【0020】
図1は、本発明の実施形態による、多重バイポーラサンプリングシステム10を使用する侵襲性医療処置を示す概略図であり、図2は、本発明の実施形態による、システムで使用される挿入チューブの遠位端の外観を示す概略図である。一例として、システム10は、医療専門家14によってヒトの患者18の心臓の心筋16に対して行われる、侵襲性医療処置に使用される装置12に組み込まれるものと仮定される。医療処置は、心筋の複数位置20、即ち位置20A、20B、...、のバイポーラ電極電位の測定を含む。測定を行うために、専門家14は、挿入チューブの遠位端24が患者の心臓に入るように、本明細書では挿入チューブ22とも呼ばれるカテーテル22を患者に挿入する。挿入チューブ22は近位端26を有する。
【0021】
図2に示されるように、遠位端24は、全体的に類似した円筒電極の対34、36、例えば電極34A、36A;34B、36B;34C、36C;...を備える。本開示では、簡単にするため、一対の電極34、36は電極38と呼ばれることもあり、そのため、例えば、電極34A、36Aは電極38Aと呼ばれることもある。電極38は、それらが接触している領域の電極電位を獲得し、以下の説明では、電極38A、38B、38C、...は、心筋の位置20A、20B、20C、...とそれぞれ接触しているものと仮定される。
【0022】
システム10は、装置12の操作コンソール48に配置されたシステムプロセッサ46によって制御される。処置の間、プロセッサ46は、一般的に、当該技術分野において既知の任意の方法を使用して、カテーテルの遠位端24の位置及び向きを追跡する。例えば、プロセッサ46は、患者18の体外にある磁気送信機が遠位端に位置付けられたコイルで信号を発生させる、磁気追跡方法を使用してもよい。Biosense Webster(Diamond Bar,CA)により生産されるCarto(登録商標)システムはこのような追跡方法を用いている。遠位端24の位置及び向きを追跡することによって、かつ遠位端とその電極38の物理的寸法に関する知識により、プロセッサ46は、電極と接触している位置20A、20B、20C、...の数値を見積もることができる。電極38に送り込まれる電流を使用して、遠位端24を追跡する代替の方法について後述する。
【0023】
より詳細に後述するように、電極38が獲得した電極電位から導き出される信号は、電極が心臓と接触していることにより、カテーテル22内のケーブル布線30を介してプロセッサ46に戻される。プロセッサは、受信した信号を分析してもよく、分析の結果をコンソールに取り付けられた画面50上に提示してもよい。分析から導き出される結果は、一般的に、局所的活性化時間などの心臓の電気的特性のマップ、数値表示、および/または電極電位対時間のグラフを含む。
【0024】
図3は、本発明の実施形態による、システム10によって使用されるバイポーラサンプリングモジュール70を示す概略図、図4は、本発明の実施形態による、サンプリングモジュールの要素を示す概略ブロック図100である。バイポーラサンプリングモジュール70は、2つの全体的に類似した絶縁性ディスク102及び104を備え、円筒電極34、36は、ディスクの外側の円筒面上に形成される。ディスク102及び104は、本明細書では平面プリント回路基板(PCB)を備えるものと仮定され、絶縁性フレームによって互いに接続されており、本明細書ではPCB 106と呼ばれる。本明細書では集積回路(IC)を備えるものと仮定され、本明細書ではIC 108とも呼ばれる回路機構108は、PCB 106上に搭載される。電源導体110、及びリターン導体、即ち接地導体112は、構成要素70を横断し、IC 108に電力供給するのに使用される。第3の導体114は集積回路との間でデータを伝達し、第3の導体はデータバス線として作用し、したがって本明細書ではデータ線114とも称される。第4の導体116は、クロック信号を回路108に伝送し、本明細書ではクロック線116とも称される。データ線114及びクロック線116は両方ともモジュール70を横断する。より詳細に後述するように、導体110、112、114、及び116はケーブル布線30に含まれる。
【0025】
電極34、36並びに導体110、112、114、及び116は全てIC 108に接続される。簡単にするため、接続は図3には示されていないが、図4に示されている。
【0026】
IC 108は、それぞれ電極34及び36から入力を受け取るように接続された、2つの緩衝増幅器118、119を備える。緩衝増幅器からの出力は、バッファ及び低域フィルタとしても構成されてもよい、差動増幅器120に対する入力として接続される。IC 108はまた、それぞれ緩衝増幅器118、119、及び差動増幅器120の出力に接続された、オン/オフスイッチ121A、121B、及び121Cを備える。スイッチ121A、121B、及び121Cは、総称的にスイッチ121と呼ばれる。
【0027】
スイッチ121及びIC 108の他の要素は、クロック線116から、又はデータ線114からクロック信号を受信する、ローカルコントローラ124の局所的制御下にある。スイッチ121を開閉することによって、コントローラ124は、モジュール70をバイポーラモードで、又はユニポーラモードで動作させることができる。したがって、スイッチ121A及び121Bが開いており、スイッチ121Cが閉じている場合、電極34及び36からの信号は差動増幅器12の入力に伝達され、その差分信号が接合部123に出力される。この構成では、モジュール70はバイポーラモードで動作する。
【0028】
スイッチ121Aが閉じており、スイッチ121B及び121Cが開いている場合、電極34からの信号が、緩衝増幅器118を介して接合部123へと移動する。スイッチ121Bが閉じており、スイッチ121A及び121Cが開いている場合、電極36からの信号が、緩衝増幅器119を介して接合部123へと移動する。これら2つの構成では、モジュール70は、接地線112が一般的にウィルソン結合電極(WCT)に、又はWCTと同等の電位レベルに接続される、ユニポーラモードで動作する。
【0029】
接合部123からの信号は、アナログ・デジタル(A/D)変換器122に直接入力され、コントローラ124は、A/D 122によって生成されるデータをローカルメモリ126に格納する。コントローラ124は、バスインターフェース128を介してメモリ126からデータ線114にデータを伝達することができ、コントローラはまた、バスインターフェースを介して、増幅器120を動作させるためのパラメータなどのデータをモジュール70内へと伝達することができる。バイポーラモードでは、プロセッサ46(図1)は、A/D 122によって生成されることができ、データ線114を介して伝達されるデータを使用して、電極34及び36の間で発生するバイポーラ信号を獲得する。ユニポーラモードでは、プロセッサは、電極34又は36からユニポーラ信号を獲得してもよい。
【0030】
スイッチ121の異なる状態を時分割多重化することによって、本発明の実施形態は、接合部123に対してほぼ同時に、電極34及び36からのバイポーラ信号並びに2つのユニポーラ信号を提供できることが理解されるであろう。IC 108の要素を使用して、変更すべき点は変更して、バイポーラ信号及び2つのユニポーラ信号を接合部123にほぼ同時に提供する他の方法は、当業者には明白となるであろうと共に、全てのかかる方法は本発明の範囲に含まれる。
【0031】
いくつかの実施形態では、IC 108は、電極36及び34にそれぞれ接続される、局所電流発生器130、132を組み込む。コントローラ124及び/又はプロセッサ46は、電流発生器を動作させて電流を電極から患者18に送り込み、患者の皮膚上に配置された電極(図1には図示せず)において電流の送り込みに反応して受信される、本明細書では表皮電流と称される電流を測定するように構成される。カテーテル電極と患者の表面上の電極との間を移動する異なる電流の値を測定することによって、患者の体内にあるカテーテルの電極の位置を確認する方法は、当該技術分野において既知である。
【0032】
例えば、その開示が参照することにより本明細書に組み込まれる、Bar−Talらの米国特許出願公開第2010/0079158号は、調査器具の電流の測定値を使用する、患者の体内における調査器具の追跡システムについて記載している。当業者であれば、変更すべき点は変更して、米国特許出願公開第2010/0079158号の開示を使用して、発生器130及び/又は132によって送り込まれる電流反応して発生する表皮電流の測定値を用いて電極34及び/又は36の位置を判断することができるであろう。
【0033】
図5は、本発明の代替実施形態による、システム10によって使用されるバイポーラサンプリングモジュール170を示す概略図である。後述する違いは別として、モジュール170の動作はモジュール70(図3及び4)の動作と概ね同様であり、モジュール70及び170の両方において同じ参照番号で示される要素は、構造及び動作の点で概ね同様である。モジュール170では、円筒電極34、36は、モジュール70の絶縁性ディスク102及び104に代わる、絶縁性リング172及び174の外側の円筒面に形成される。モジュール70に関しては、リング172及び174は、本明細書では湾曲したPCB 176を備えるものと仮定される、絶縁性フレームによって互いに接続される。いくつかの実施形態では、PCB 176は可撓性PCBを含んでもよい。モジュール170の構成によって、管材及び/又はケーブル布線などの要素を、リング172及び174の中心の空き領域にねじ込むことが可能になっている。
【0034】
図6は、本発明の一実施形態による、直列構成200で互いに接続された多重サンプリングモジュール70を示す概略図である。当業者であれば、モジュール70の代わりに少なくともいくつかのモジュール170が直列構成で互いに接続される場合に、以下の説明を適応させることができるであろう。一例として、直列構成200では、一対の電極38A、38B、38C、38D、及び38Eをそれぞれ有する、5つのモジュール70、即ちモジュール70A、70B、70C、70D、及び70Eが存在するものと仮定される。モジュール70A、70B、70C、70D、及び70Eは直列構成で互いに接続され、モジュールが遠位端内で、又はそれに近接して長手方向で間隔を空けるようにして、それらのモジュールが遠位端24(図2)内に設置されてもよい。一般的に、直列構成で遠位端内に設置するために、遠位端の外被に「窓」が形成される。窓は、一対の電極38A、38B、38C、38D、及び38Eと整列するように構成されて、一対の電極が心筋の位置20A、20B、20C、...(図2)から信号を獲得することを可能にしている。
【0035】
モジュールを互いに接続するために、全ての接続されたモジュールは共通の導体線110、112、114、及び116を有し、それら導体線は、カテーテル22を横断し、モジュールをそれらの直列構成で物理的に接合するのに、かつ遠位端においてモジュールをそれらの長手方向で間隔を空けた位置で維持するのに使用される。導体線110、112、114、及び116はまた、モジュール自体の間で、並びにモジュールとプロセッサ46(図1)との間で、信号及び電力を搬送するのに使用される。
【0036】
したがって、データ線114を使用して、プロセッサ46は、各一対の電極38によって発生したバイポーラ信号の値を、又は選択された電極34若しくは選択された電極36によって発生したユニポーラ信号の値を受信することができる。一般的に、固有のアドレスが各モジュール70に割り当てられるので、所与のモジュールをアドレス指定することによって、プロセッサは、そのモジュールで発生したバイポーラ又はユニポーラ信号のデジタル値を受信する。構成200の異なるモジュールからプロセッサ46へのデータの伝達は、一般的に、時分割多重化を使用して実施される。
【0037】
図7は、本発明の代替実施形態による、システム10によって使用されるバイポーラサンプリングモジュール270を示す概略図、図8は、本発明の代替実施形態による、モジュール270の要素を示す概略ブロック図300である。IC 108を備えるモジュール70とは対照的に、モジュール270はIC 272を備える。ブロック図300はIC 272の動作を示している。後述する違いは別として、モジュール270及びIC 272の動作はモジュール70及びIC 108(図3及び4)の動作と概ね同様であり、モジュール70及び270並びにIC 108及びIC 272の両方において同じ参照番号で示される要素は、構造及び動作の点で概ね同様である。
【0038】
IC 272では、接合部123からの信号がA/D 122に直接伝達される代わりに、信号はアナログメモリ304に入力される。いくつかの実施形態では、アナログメモリ304は「バケットブリゲード」の原理で動作して、接合部123から受信した信号の値をアナログ形式で格納する。一般的に、コントローラ124は、遅延する形でIC 272を動作させて、アナログメモリ304を使用して、データ線114を介して信号を伝送する前に、1秒間などの所定の期間にわたって獲得された一連の信号を格納する。一連の信号を獲得するまで信号の伝送を遅延させることによって、コントローラ124が、獲得した信号のノイズを低減させることが可能になってもよい。かかる遅延はまた、IC 108(図3及び4)を使用してモジュール70に対して実施されてもよいことが理解されるであろう。
【0039】
モジュール270では、A/D 122もメモリ126も存在しない。それよりもむしろ、アナログメモリ304からのアナログデータは、アナログバスインターフェース310(上述のバスインターフェース128に代わる)に、かつインターフェース310からデータバス320に直接伝達される。データバス320は、モジュール270などのモジュールからのアナログデータ、並びにモジュール70などのモジュールからのデジタルデータを伝送するように構成される。
【0040】
複数のモジュール270は、上述の構成200(図6)にほぼ類似した直列構成で配列されてもよい。あるいは、モジュール70及びモジュール270の混合が、かかる構成で配列されてもよい。直列構成200の説明に戻ると、モジュール70は、ケーブル布線30によって互いに接続されて、電力線、接地線、データ線、及びクロック線としてそれぞれ使用される4つの導体110、112、114、及び116を備える。接地線112は、電力線110を介して伝達される電力のリターン線として作用する。一般的に、接地線112は、システムプロセッサ側で、患者18のウィルソン結合電極(WCT)と同等の出力電位を有する低インピーダンスドライバに接続されてもよく、それに加えて、局所電流発生器130及び/又は132を有する実施形態の場合、接地線112は、発生器のリターン線として作用する。したがって、4つの導体は、多数の、実質的に無限の数のモジュールに電力供給し、それらから信号を獲得するのに使用されてもよく、一般的に、構成200におけるモジュールの数は5つ以上であってもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、3つの別個の導体110、114、及び116を有する代わりに、プロセッサ46によって制御される多重化プロセスを使用して、単一の導体が、電力線、データ線、及びクロック線に使用される。例えば、クロック及びデータ信号は、組み合わされた信号を与えるために時分割多重化されてもよく、電力はDCであるため、組み合わされた信号に重ね合わされてもよい。単一の導体で電力、データ信号、及びクロック信号を伝達する他の方法は、当業者には明白となるであろうと共に、全てのかかる方法は本発明の範囲内にあるものと仮定される。
【0042】
結果として、構成200によって例示されるような直列構成では、構成のモジュールを接続するのに、上述の4つの導体ではなく、2つの導体のみが使用されてもよい。この場合、構成に関して機能性の損失はなく、構成に含めることができる、多数の、実質的に無限の数のモジュールにおける低減はない。
【0043】
上述した実施形態は一例として記載されたものであり、本発明は、本明細書において上に具体的に図示及び説明した内容に限定されないことが明らかとなろう。むしろ、本発明の範囲には、上で説明した様々な特徴の組み合わせと部分的組み合わせの両方、並びにそれらの変形形態及び修正形態が含まれ、これらは、上述の説明を読めば当業者には想到するものであり、従来技術では開示されていないものである。
【0044】
〔実施の態様〕
(1) 装置であって、
複数のモジュールであって、各モジュールが、
絶縁性フレーム、
離間した個々の位置で前記フレームに固着された一対の電極、及び、
前記一対の電極から信号を受信し、それに反応して差分信号を出力するように構成された回路機構を含む、モジュールと、
遠位端及び近位端を有し、前記遠位端に近接して長手方向で間隔を空けた位置に前記複数のモジュールを収容する、挿入チューブと、
前記チューブを通り、差分信号を前記モジュールから前記近位端へと搬送するように接続されたケーブル布線と、を備える装置。
(2) 前記絶縁性フレームがプリント回路基板(PCB)を含み、前記回路機構が前記PCBに搭載される、実施態様1に記載の装置。
(3) 前記ケーブル布線が、前記差分信号を搬送するように構成されたデータ線及び接地線を含む、実施態様1に記載の装置。
(4) 前記データ線が、前記差分信号に加えてクロック信号及び電力を搬送するように構成される、実施態様3に記載の装置。
(5) 前記回路機構が、前記遠位端が挿入されている患者に対して、前記一対の電極の一方を介して電流を送り込むように構成された電流発生器を備え、前記装置が、送り込まれた前記電流に反応して前記患者の表面で受け取られる異なる電流を測定し、測定された前記異なる電流に反応して前記一対の電極の前記一方の位置を判断するように構成されたプロセッサを更に備える、実施態様1に記載の装置。
【0045】
(6) 前記挿入チューブが、患者の心臓に挿入されるカテーテルに組み込まれ、前記差分信号が、前記心臓と接触することによって前記一対の電極が獲得する電極電位に反応して発生する、実施態様1に記載の装置。
(7) 前記ケーブル布線が、前記複数のモジュールを長手方向で間隔を空けた前記位置に維持するように、前記複数のモジュールに接続される、実施態様1に記載の装置。
(8) 前記回路機構が、前記一対の電極の一方から信号を受信し、それに反応してユニポーラ信号を出力するように構成され、前記ケーブル布線が、前記ユニポーラ信号を前記近位端へと搬送するように構成される、実施態様1に記載の装置。
(9) 前記回路機構が、前記信号を格納するように構成されたメモリと、コントローラとを備え、前記コントローラが、ノイズを低減するために、前記メモリからのデータの出力を遅延させるように構成される、実施態様1に記載の装置。
(10) 方法であって、
遠位端及び近位端を有する挿入チューブを提供することと、
複数のモジュールが前記チューブ内で前記遠位端に近接して長手方向で間隔を空けた位置にあるように、前記チューブに前記モジュールを挿入することであって、各モジュールが、
絶縁性フレーム、
離間した個々の位置で前記フレームに固着された一対の電極、及び、
前記一対の電極から信号を受信し、それに反応して差分信号を出力するように構成された回路機構を含む、ことと、
ケーブル布線を前記チューブに通し、差分信号を前記モジュールから前記近位端へと搬送するように前記ケーブル布線を接続することとを含む、方法。
【0046】
(11) 前記絶縁性フレームがプリント回路基板(PCB)を含み、前記方法が、前記回路機構を前記PCBに搭載することを含む、実施態様10に記載の方法。
(12) 前記ケーブル布線が、前記差分信号を搬送するように構成されたデータ線及び接地線を含む、実施態様10に記載の方法。
(13) 前記データ線が、前記差分信号に加えてクロック信号及び電力を搬送するように構成される、実施態様12に記載の方法。
(14) 前記遠位端が挿入されている患者に対して、前記一対の電極の一方を介して電流を送り込むことと、前記一対の電極の前記一方の位置を判断するために、送り込まれた前記電流に反応して前記患者の表面で受け取られる異なる電流を測定することとを含む、実施態様10に記載の方法。
(15) 前記挿入チューブが、患者の心臓に挿入されるカテーテルに組み込まれ、前記差分信号が、前記心臓と接触することによって前記一対の電極が獲得する電極電位に反応して発生する、実施態様10に記載の方法。
【0047】
(16) 前記ケーブル布線が、前記複数のモジュールを長手方向で間隔を空けた前記位置に維持するように、前記複数のモジュールに接続される、実施態様10に記載の方法。
(17) 前記回路機構が、前記一対の電極の一方から信号を受信し、それに反応してユニポーラ信号を出力するように構成され、前記ケーブル布線が、前記ユニポーラ信号を前記近位端へと搬送するように構成される、実施態様10に記載の方法。
(18) 前記回路機構が、前記信号を格納するように構成されたメモリを含み、前記方法が、ノイズを低減するために、前記メモリからのデータの出力を遅延させることを更に含む、実施態様10に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【外国語明細書】
2015000350000001.pdf