【解決手段】孵化途中卵に光を照射する発光部と、発光部から照射された光のうち孵化途中卵の内部を通過した光を受光し、電気信号に変換する受光部と、受光部が変換した電気信号の変化および通過光量から孵化途中卵の良否判定を行う判定部とを備え、孵化途中卵の内部を通過した光を電気信号に変換し、電気信号の変化によって、孵化途中卵を生存卵または非生存卵と判定する孵化途中卵検査装置であって、電気信号の変化によって生存卵と判定されるべき孵化途中卵の通過光量が所定値T1より低いときに、該孵化途中卵を非生存卵と判定する。
【背景技術】
【0002】
鶏卵等に代表される卵には、食用のための卵の他に雛を生産するための卵や、ワクチンを生産するための卵がある。このような卵は、特に「孵化途中卵(または種卵)」と称されている。孵卵場では、孵化途中卵をセッタートレイと称される専用のトレイに載置し、孵卵器の中へ入れて孵卵工程を行う。
【0003】
ところで、孵卵工程を開始する日が入卵日とされ、その入卵日からの経過日数が、孵卵日数とされる。雛は、ほぼ孵卵日数21日目に生まれることになる。雛を生産するための孵化途中卵は、およそ孵卵日数11日目〜15日目になると、孵卵日数21日目に予定どおりの数の雛を出荷することができるかを事前に確認するため、中間検卵と呼ばれる検査が行われる。また、ワクチンを生産するための孵化途中卵は、ウィルスを注入する直前の孵卵日数10日目に所定の検査が行われる。
【0004】
孵化途中卵といえども、すべての孵化途中卵が順調に成長するわけではなく、ある割合で当初から未受精の卵が含まれていたり、また、孵卵工程の途中において、胚の発育が止まってしまう発育中止卵がある。このような未受精卵や発育中止卵には、中身が腐ってしまうものがあり、中身が腐った卵は腐敗卵と呼ばれる。
【0005】
通常、雛を生産するための孵化途中卵に対しては、孵化後に伝染病等に感染するリスクを抑えるために、孵化途中卵の状態でワクチン接種が行われる。すると、セッタートレイに収容されている孵化途中卵にワクチンを接種する際に、腐敗によって内圧が上昇した孵化途中卵が、殻に注射針が接触するときの衝撃によって爆発してしまうことがある。また、爆発しないまでも、腐敗卵にワクチンを接種することによって注射針が汚染されてしまい、その汚染された注射針によって他の健全な孵化途中卵も汚染されてしまうことになる。さらに、他の孵化途中卵から雛が孵化した後に腐敗卵が爆発すると、すでに生まれた雛を汚染してしまうことがある。
【0006】
このような汚染を未然に防ぐために、孵化途中卵を胚が生存している孵化途中卵である「生存卵」と、未受精卵や、胚が死亡している発育中止卵である「非生存卵」とに分ける検査が行われる。すなわち、孵化途中卵が生存卵であれば「良」とし、非生存卵であれば「不良」とする良否判定が行われる。従来、孵化途中卵の良否判定には、たとえば、特許文献1に提案されているように、主に光学的な手法が採用されている。これらの手法では、孵化途中卵に所定の光を照射し、孵化途中卵を通過した光に生体活動に起因する変化が含まれているかどうかを解析することによって良否判定が行われる。このようにして非生存卵と判定された孵化途中卵は直ちに除去されて、生存卵が汚染されるのを防いでいる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態に係る孵化途中卵検査装置について説明する。
図1ないし
図3に示すように、孵化途中卵検査装置1は、孵化途中卵Eを通過した光の変化を計測する計測部10と、計測部10による計測結果に基づいて孵化途中卵Eの良否判定を行う判定部5と、計測部10の制御を行う制御部6と、判定部5の判定結果に基づいて孵化途中卵Eを移載する移載ヘッド21が取り付けられた移載部20と、複数の孵化途中卵Eが収容されたセッタートレイ2を搬送する搬送部30を備えている。
【0015】
次に、計測部10について、詳しく説明する。
図2および
図3に示すように、計測部10には、孵化途中卵Eに向けて所定の光を照射する発光部12と、発光部12によって照射された光のうち、孵化途中卵Eの内部を通過した光を受光する受光部11とが設けられている。
【0016】
発光部12は、たとえば、発光ダイオード等の複数の発光素子が、後述する搬送部30によって搬送されるセッタートレイ2に収容された複数の孵化途中卵Eのそれぞれの配置に対応するように配置されている。なお、発光素子としては、所定の波長領域の光を発光する素子であれば、発光ダイオードに限られず、たとえば、レーザ光でもよい。
【0017】
受光部11には、発光部12の発光素子の配置に対応するようにキャップ13が複数取り付けられている。すなわち、キャップ13の数はセッタートレイ2上の孵化途中卵Eの数と同数となっている。キャップ13は柔軟性と遮光性を有しており、孵化途中卵Eの上端部に接触して、孵化途中卵Eの内部から透過してくる光のみを通過させる構造となっている。
【0018】
複数のキャップ13の内側には、フォトダイオード等の受光素子が配置されている。発光部12の発光素子が発した光は孵化途中卵Eの内部を通り、孵化途中卵Eの上端部から通過してくる光のみがキャップ13の内側で受光素子によって受光される。受光素子は受光した光を電気信号に変換し、判定部5へ送る。なお、受光素子としては、孵化途中卵Eを通過した所定の光を信号として捉えることができれば、フォトダイオード等に限られない。
【0019】
判定部5は、孵化途中卵Eが生存卵であれば「良」とし、非生存卵であれば「不良」とする良否判定を行う演算処理装置である。判定部5は、受光素子から送られてきた電気信号の変化や通過光量によって、セッタートレイ2に収容されているそれぞれの孵化途中卵Eが生存卵であるか、非生存卵Fであるかの良否判定を行う。
【0020】
制御部6は、計測部10の制御を行う演算処理装置であり、発光部12の発光量制御や、計測伸縮部15を駆動して受光部11を上下動させるタイミング等の制御を行っている。なお、本実施の形態では、判定部5と制御部6を別々の演算処理装置として記載しているが、これらの機能を単一の演算処理装置で実現することができる。また、計測部10の制御以外に、移載部20や搬送部30の制御を行ってもよい。
【0021】
受光部11は、計測部10のフレームに固定された固定部14に、計測伸縮部15を介して取り付けられている。計測伸縮部15は、孵化途中卵Eの計測時には受光部11を下降させてキャップ13を孵化途中卵Eの上端部に密着させる。また、計測後には受光部11を
図2の破線で描かれた位置まで上昇させる。本実施の形態では、計測伸縮部15はエアシリンダを用いているが、受光部11を昇降させることができれば、エアシリンダに限られず、たとえば、モータ駆動によって昇降させてもよい。
【0022】
次に、移載ヘッド21が取り付けられた移載部20について、詳しく説明する。
図2に示すように、移載部20には、判定部5による判定結果に基づいて孵化途中卵Eを移載する移載ヘッド21と、移載ヘッド21がセッタートレイ2から移載した非生存卵Fを孵化途中卵検査装置1の外部へ排除する非生存卵排除部25とが設けられている。
【0023】
移載ヘッド21には、非生存卵Fを選択的に真空吸引するための吸盤22が、後述する搬送部30によって搬送されるセッタートレイ2に収容された孵化途中卵Eの半数の配置に対応するように複数取り付けられている。本実施の形態では、移載ヘッド21による一回の移載動作で、セッタートレイ2に収容されている複数の孵化途中卵Eの半分を移載することができる。つまり、1つのセッタートレイ2を前半部分と後半部分に分けて、二回の移載動作でセッタートレイ2上の非生存卵Fを取り除くので、移載ヘッド21に取り付けられている吸盤22の数は、受光部11に取り付けられているキャップ13の半数で構成されている。
【0024】
移載ヘッド21には、真空を発生させるコンプレッサ(図示せず)に繋がれた真空配管が複数の吸盤22のそれぞれに設けられており、前述の判定部5の判定結果に基づいて、吸盤22がセッタートレイ2上の孵化途中卵Eの中から非生存卵Fと判定されたものを選択的に真空吸引することができるように構成されている。また、セッタートレイ2から非生存卵Fを選択的に移載する技術として特開2012−231700などに詳しい移載技術が記載されており、その技術等を利用することができる。
【0025】
移載ヘッド21は、移載部20のフレームに固定された移載スライド部23に、移載伸縮部24を介して接続されている。移載伸縮部24は、非生存卵Fを移載する時には移載ヘッド21を下降させて吸盤22を非生存卵Fの上端部に密着させる。また、非生存卵Fに対して真空吸引が行われた後には移載ヘッド21を
図2の破線で描かれた位置まで上昇させる。本実施の形態では、移載伸縮部24はエアシリンダを用いているが、移載ヘッド21を昇降させるさせることができれば、エアシリンダに限られず、たとえば、モータ駆動によって昇降させてもよい。
【0026】
移載スライド部23は、移載ヘッド21をセッタートレイ2上から非生存卵排除部25上まで水平移動させるスライダである。本実施の形態では、移載スライド部23の駆動にはモータとボールねじを用いているが、移載ヘッド21を水平移動させることができれば、モータとボールねじに限られず、たとえば、リニアモータの駆動によって水平移動させてもよい。
【0027】
非生存卵排除部25は、移載ヘッド21がセッタートレイ2から移載した非生存卵Fを孵化途中卵検査装置1の外部へ排除することができるように、わずかに傾斜を付けて移載部20に取り付けられている。移載ヘッド21が非生存卵排除部25上で非生存卵Fの真空吸引を解除すると、非生存卵Fは非生存卵排除部25上を傾斜面に沿って転がり、孵化途中卵検査装置1の外部に置かれた非生存卵用の回収容器(図示せず)に回収される。本実施の形態では、非生存卵Fが自重で傾斜面を転がるように構成されているが、ベルトコンベア等を用いて能動的に非生存卵Fを排除するようにしてもよい。
【0028】
移載部20は、
図1および
図2に示すように、カバーで覆われている。これにより、腐敗卵が移載の衝撃によって爆発した場合に、孵化途中卵検査装置1の外部へ腐敗卵の内容物が飛散しないようにしている。本実施の形態では、このカバーは不透明な部材で構成されているが、アクリル板などの透明な部材で構成すれば、孵化途中卵検査装置1の外部へ腐敗卵の内容物が飛散しないようにしながら、外部から移載の様子を監視することも可能となる。
【0029】
次に、搬送部30について説明する。
図1および
図2に示すように、搬送部30には、孵化途中卵Eが収容されているセッタートレイ2を搬入方向3へ搬送し、計測等が行われた後のセッタートレイ2を搬出方向4へ搬送するためのドグ31が設けられている。
【0030】
ドグ31は、セッタートレイ2を搬送方向の前後から挟んで搬送するための部材である。ドグ31の端部は、搬送部30の搬送方向に向かって右側と左側に設けられた2本のチェーン(図示せず)に連結されており、2本のチェーンが同時に駆動することで、搬送面32上を滑らせながらセッタートレイ2を搬送する。本実施の形態では、
図3に示すように、搬送面32はセッタートレイ2を滑らせることができるようにステンレス部材33で構成されているが、受光部11の直下の計測場所では、発光部12からの光を通すことができるように搬送面32が透明体であるガラス部材34となっている。
【0031】
次に、本実施の形態に係る孵化途中卵検査装置1の動作について説明する。
【0032】
孵卵器から取り出したセッタートレイ2を搬送部30上のドグ31とドグ31との間の搬入位置に載せると、搬送部30はセッタートレイ2を搬入方向3へ搬送し、受光部11の直下(計測場所)までセッタートレイ2を搬送して停止する。
【0033】
次に、計測部10の計測動作について説明する。セッタートレイ2が計測場所で停止すると、
図3に示すように、計測伸縮部15は、受光部11に取り付けられているキャップ13が計測場所で停止している孵化途中卵Eの上端部に接触する位置まで受光部11を下降させる。
【0034】
キャップ13が孵化途中卵Eの上端部に接触する位置まで受光部11が下降すると、発光部12の発光素子から光が照射され、光は孵化途中卵Eの内部を通過し、通過した光がキャップ13の内側を通って、受光部11の受光素子によって受光されることで計測が行われる。受光された光は電気信号に変換されて判定部5へ送られる。
【0035】
判定部5は、受光部11から送られてきた電気信号の変化を基にセッタートレイ2上の複数の孵化途中卵Eそれぞれの良否判定を行い、判定結果を制御部6へ送る。その後、計測伸縮部15は
図2の破線で示す位置まで受光部11を上昇させる。これで、計測部10の計測動作は完了となる。
【0036】
ここで、判定部5の処理の流れを
図4のフローチャートを参照して説明する。発光部12の発光素子から光が照射されると、照射された光は孵化途中卵Eの卵殻や、内部に存在する胚などに遮られるが、遮られずに孵化途中卵Eの内部を通過した光がキャップ13の内側を通り、受光部11に設けられた受光素子によって受光される。
【0037】
受光された光は、受光素子によって電気信号に変換され、判定部5へと送られる。判定部5では、まず、各孵化途中卵Eの通過光量が測定される(S1)。本実施の形態では、セッタートレイ2上に孵化途中卵Eが存在しない場合に、発光部12から照射された光がそのまま受光素子で受光されるときの光の量(通過光量)を1とし、セッタートレイ2上の孵化途中卵Eによって光が遮られ、受光される光の量が減るに従い、通過光量の値は1/10、1/100、・・・となる。すなわち、通過光量とは、孵化途中卵Eの内部を通過した光の量を表したものである。
【0038】
図5は、縦軸を後述するバイタル得点とし、横軸を通過光量とした片対数表である。通過光量の最大値は1であり、
図5の片対数表では、1つの孵化途中卵Eの通過光量とバイタル得点から1つの点がプロットされる散布図となる。
図5の片対数表にプロットされる点は、通過光量が高いほど左寄りにプロットされ、通過光量が低いほど右寄りにプロットされる。
【0039】
本実施の形態では、
図5に示すように、通過光量が1/10000の所に所定値としての下限値T1が設けられており、通過光量が所定値としての下限値T1よりも低い領域(T1の右側)にある孵化途中卵は、内部で胚などが腐っている腐敗卵であるため、非生存卵Fと判定される(S2)。
【0040】
各孵化途中卵Eの通過光量が測定され、通過光量による非生存卵Fの判定が行われると、次に、各孵化途中卵Eのバイタル得点が算出される(S3)。バイタル得点とは、孵化途中卵Eの内部を通過した光に含まれる胚の胎動や心拍など生体活動に起因する変化を得点化したものであり、
図5の片対数表の縦軸で示される。判定部5は、受光素子から送られてくる電気信号の変化に対してフーリエ変換を行い、0〜2Hzまでの周波数の強度を胚の胎動の有無の判断に利用し、2〜6Hzまでの周波数の強度を心拍として0〜255点の間で得点化している。本実施の形態では、胚の胎動が存在し、かつ、バイタル得点の点数が大きいほど、孵化途中卵Eの内部を通過した光に胚の胎動や心拍など生体活動に起因する変化(バイタルサイン)が含まれていると判断される。
【0041】
本実施の形態では、バイタル得点が30点の所に所定値としての下限値Lが設けられており、バイタル得点が所定値としての下限値Lよりも低い領域(Lの下側)にある孵化途中卵は、未受精卵か、または、ある程度まで発育したが、何らかの理由で内部で胚が死亡した発育中止卵であるため、非生存卵F(バイタルサインなし)と判定され(S4)、判定部5の処理が完了する。
【0042】
なお、T1の右側の領域にはバイタル得点が、電気信号の変化によって生存卵と判定されるべき孵化途中卵Eである30点を超えるものが存在する場合があるが、これは、孵化途中卵Eの内部で胚などが黒く腐敗している腐敗卵であり、何らかの衝撃等によって腐敗卵の内部が揺れ、その揺れが胚の胎動や、心拍と近似しているためバイタル得点が30点を超えたものである。電気信号の変化のみで孵化途中卵の生死判定を行っていた従来の孵化途中卵検査装置では、腐敗卵は通過光量が低いにも関わらず、生存卵であると誤判定される可能性があったが、本実施の形態に係る孵化途中卵検査装置1によれば、バイタル得点の高低とは関係なく、
図5のT1の右側の領域に存在する腐敗卵を排除することができる。
【0043】
ここで、孵卵日数と、通過光量およびバイタル得点との関係について説明を行う。
図5の実線で示した領域D11は、孵卵日数11日目の孵化途中卵群を計測した場合に、それらの孵化途中卵の計測結果をプロットしたときの中心となる領域を示している。同様に、一点鎖線で示した領域D13および、破線で示した領域D15は、それぞれ孵卵日数13日目と15日目の孵化途中卵群を計測した場合に、これらの孵化途中卵の計測結果をプロットしたときの中心となる領域を示している。このように、孵化途中卵は、発育が進むにつれてバイタル得点が徐々に高くなり、通過光量が徐々に低くなっている。
【0044】
このように、孵卵日数と、通過光量およびバイタル得点との間には相関関係があるため、通過光量の所定値としての下限値T1を、計測対象である孵化途中卵の孵卵日数にあわせて、たとえば、孵卵日数11日目の孵化途中卵に対しては1/1800、孵卵13日目の孵化途中卵に対しては1/4000、孵卵日数15日目の孵化途中卵に対しては1/10000というように変化させてもよい。このように孵卵日数にあわせて変化させることで、より正確な判定を行うことができる。また、同様にバイタル得点の所定値としての下限値Lも孵卵日数にあわせて変化させることで、より正確な判定を行うことができる。
【0045】
なお、孵卵日数が15日目を超えると、内部の胚がさらに発育して通過光量が低下する。通過光量が低下すると、生存卵であっても通過光量が所定値としての下限値T1よりも低い領域(T1の右側の領域)に含まれる可能性が高くなるため、本実施の形態では、孵卵日数が15日目以前の孵化途中卵に対して計測を行っている。なお、稀に鶏舎で産卵された卵がしばらく放置され、産卵から数週間後に集卵されることがある。このような卵は孵卵工程前にすでに腐敗している場合があり、孵卵器内を汚染することがあるので、孵卵器に入る前の孵卵日数0日目の時点で本実施の形態に係る孵化途中卵検査装置1によって検査を行うことで、そのような孵卵器内の汚染を防ぐことができる。
【0046】
さらに、判定部5による、前述の処理の流れとは別の処理の流れを
図6に示すフローチャートを参照して説明する。
【0047】
発光部12の発光素子から光が照射されると、照射された光は孵化途中卵Eの卵殻や、内部に存在する胚などに遮られるが、遮られずに通過した光がキャップ13の内側を通り、受光部11に設けられた受光素子によって受光される。
【0048】
受光された光は、受光素子によって電気信号に変換され、判定部5へと送られる。判定部5では、まず、各孵化途中卵Eの通過光量が測定される(S11)。
【0049】
図7は、縦軸をバイタル得点とし、横軸を通過光量とした片対数表である。通過光量の最大値は1であり、
図7の片対数表では、通過光量が高いほど左寄りの値になり、通過光量が低いほど右寄りの値になる。
【0050】
本実施の形態では、
図7に示すように、通過光量が1/10000の所に所定値としての下限値T1が設けられており、通過光量が所定値としての下限値T1よりも低い領域(T1の右側)にある孵化途中卵は、内部で胚などが腐っている腐敗卵であるため、非生存卵Fと判定される(S12)。
【0051】
さらに、本処理の流れでは、所定値としての下限値T1よりも通過光量が高い1/100の所に、他の所定値としての上限値T2が設けられており、通過光量が所定値としての上限値T2よりも高い領域(T2の左側)にある孵化途中卵は、非生存卵F(未受精卵)または発育不良卵と判定される(S13)。発育不良卵とは、胚が死亡していないものの胚の発育が遅れている孵化途中卵であり、孵卵場によっては、非生存卵と同時に孵卵工程から除かれるものであるため、本処理の流れでは、非生存卵Fと同様に移載部20による排除の対象とされている。
【0052】
各孵化途中卵Eの通過光量が測定され、通過光量による非生存卵Fまたは発育不良卵の判定が行われると、次に、各孵化途中卵Eのバイタル得点が算出される(S14)。本実施の形態では、バイタル得点が30点の所に所定値としての下限値Lが設けられており、バイタル得点が所定値としての下限値Lよりも低い領域(Lの下側)にある孵化途中卵は、未受精卵か、または、ある程度まで発育したが、何らかの理由で内部で胚が死亡した発育中止卵であるため、非生存卵F(バイタルサインなし)と判定され(S15)、判定部5の処理が完了する。
【0053】
なお、所定値としての上限値T2の左側にもバイタル得点が、電気信号の変化によって生存卵と判定されるべき孵化途中卵Eである30点を超えるものが存在する場合があるが、これは、前述の発育不良卵と判断される。通過光量の所定値としての上限値T2を設けることで、このような発育不良卵を発見し、必要に応じて取り除くことができる。また、発育不良卵が通常よりも多く発生している場合は、孵卵器の故障による温度低下などが疑われるため、判定結果を孵卵工程にフィードバックして、雛の生産効率改善に役立てることができる。
【0054】
ここで、孵卵日数と、通過光量およびバイタル得点との関係について説明を行う。
図7の実線で示した領域D11は、孵卵日数11日目の孵化途中卵群を計測した場合に、それらの孵化途中卵の計測結果をプロットしたときの中心となる領域を示している。同様に、一点鎖線で示した領域D13および、破線で示した領域D15は、それぞれ孵卵日数13日目と15日目の孵化途中卵群を計測した場合に、これらの孵化途中卵の計測結果をプロットしたときの中心となる領域を示している。
【0055】
孵卵日数と、通過光量およびバイタル得点との間には相関関係があるため、通過光量の所定値としての上限値T2を計測対象である孵化途中卵の孵卵日数にあわせて、たとえば、孵卵日数11日目の孵化途中卵に対しては1/100、孵卵13日目の孵化途中卵に対しては1/250、孵卵日数15日目の孵化途中卵に対しては1/700というように変化させてもよい。このように孵卵日数にあわせて変化させることで、より正確な判定を行うことができる。また、同様にバイタル得点の所定値としての下限値Lも孵卵日数にあわせて変化させることで、より正確な判定を行うことができる。
【0056】
なお、孵卵日数10日目より前の孵化途中卵は、内部の胚があまり発育していないため通過光量が高くなる。そうすると、生存卵であっても通過光量が所定値としての上限値T2よりも高い領域(T2の左側)に含まれる可能性が高くなるため、本実施の形態では、孵卵日数が10日目以降の孵化途中卵に対して計測を行っている。
【0057】
また、本明細書では説明を行うために
図5や
図7のように、片対数表を利用して判定部5の処理の流れを示したが、実際には判定部の演算処理装置がこのような片対数表を作成することなく判定を行う。なお、孵化途中卵検査装置1にモニターなどの出力装置を追加して、
図5や
図7ような片対数表に計測結果をプロットして出力すると、孵化途中卵の検査を行う作業者が視覚的に孵化途中卵の発育状況を把握することができる。なお、ここまでに説明した判定部5の処理の流れは種々の変更が可能であって、バイタル得点の算出方法や生存卵・非生存卵の判定方法、所定値としての下限・上限の値などは例示に過ぎず、これらに限定されない。
【0058】
次に、移載部20の移載動作について説明する。計測部10による計測動作および、判定部5による判定が完了すると、搬送部30は搬送を再開し、移載ヘッド21がセッタートレイ2上の前半部分に含まれる非生存卵Fを真空吸引できる位置まで搬送して停止する。この時、孵卵器から取り出された次のセッタートレイ2が搬送部30上のドグ31とドグ31との間の搬入位置に載せられていると、次のセッタートレイ2は計測場所まで搬送されて停止する。
【0059】
セッタートレイ2が停止すると、移載伸縮部24は移載ヘッド21を下降させて吸盤22が孵化途中卵Eの上端部に接触する位置で停止する。移載ヘッド21は、判定部5の判定結果に基づいて、非生存卵Fを選択的に真空吸引する。真空吸引が行われると、移載伸縮部24は
図2の破線で示す位置まで移載ヘッド21を上昇させる。
【0060】
移載ヘッド21が破線の位置まで上昇すると、移載スライド部23が移載ヘッド21を非生存卵排除部25上へ移動させる。非生存卵排除部25上への移動が完了すると、真空吸引が解除されて非生存卵Fは非生存卵排除部25に移載される。非生存卵排除部25上の非生存卵Fは、傾斜を転がり孵化途中卵検査装置1の外部に用意された非生存卵用の回収容器に回収される。
【0061】
移載ヘッド21は非生存卵Fを非生存卵排除部25へ移載すると、再び移載スライド部23によってセッタートレイ2上へ移動を開始し、移載ヘッド21がセッタートレイ2上の後半部分に含まれる非生存卵Fを真空吸引できる位置まで移動すると停止する。その後、前半部分の非生存卵Fの移載と同様の動作が繰り返される。
【0062】
移載ヘッド21によってセッタートレイ2上の非生存卵Fが全て取り除かれると、搬送部30はセッタートレイ2を搬出方向4へ搬送し、停止する。この時、計測が完了した次のセッタートレイ2は搬送部30によって搬送されて移載ヘッド21の直下で停止しており、さらに次のセッタートレイ2は搬送部30によって搬送されて計測場所で停止している。その後は、孵卵器にあるすべての孵化途中卵Eの検査が完了するまで、一連の動作が繰り返される。
【0063】
さらに、本実施の形態の別の例として、搬送部および移載部をなくして、計測部のみとすることもできる。この場合は、孵化途中卵の検査を行う作業者が、セッタートレイを計測部へ投入し、計測結果に基づいて判定部が判定を行い、判定部の判定結果に基づいて計測部に設けたインクジェット装置等によって非生存卵に印を付けるようにしてもよい。作業者は、インクジェット装置等によって印が付けられた非生存卵を取り除くことで、孵化途中卵の検査が完了する。
【0064】
本実施の形態に係る孵化途中卵検査装置によれば、通過光量の所定値としての下限値T1を利用して良否判定を行うことで、腐敗卵を生存卵であると誤判定することがなくなる。また、通過光量の所定値としての上限値T2を利用して良否判定を行うことで、発育不良卵の数を知ることができる。
【0065】
さらに、雛を生産するための孵化途中卵(およそ孵卵日数11日目〜15日目)に対して、本実施の形態に係る孵化途中卵検査装置によって検査を行えば、予定どおりに孵卵日数21日目に孵化する雛の数を事前に知ることができるので、雛の出荷計画を立てやすくなる。また、腐敗卵が多い場合や、発育が遅れている孵化途中卵が多い場合は、判定結果を孵卵工程にフィードバックすることで、雛の生産効率改善に役立てることができる。
【0066】
上記説明では、対象物として孵化途中卵を説明したが、孵化途中卵は、鶏、アヒル、うずら等の種々の孵化途中卵を含む。
【0067】
今回開示された実施の形態は例示であってこれに制限されるものではない。本発明は上記で説明した範囲ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲でのすべての変更が含まれることが意図される。