特開2015-36049(P2015-36049A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-36049(P2015-36049A)
(43)【公開日】2015年2月23日
(54)【発明の名称】吸引式電極装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/04 20060101AFI20150127BHJP
【FI】
   A61N1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-167965(P2013-167965)
(22)【出願日】2013年8月13日
(71)【出願人】
【識別番号】000153041
【氏名又は名称】株式会社日本メディックス
(74)【代理人】
【識別番号】100080768
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 実
(72)【発明者】
【氏名】虎井 安
(72)【発明者】
【氏名】木島 祥光
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053BB02
4C053BB15
4C053BB23
4C053BB36
(57)【要約】
【課題】吸引カップの患者体表面への装着をより確実に行えるようにする。
【解決手段】弾性部材により形成された吸引カップ1内に電極10が配設される。吸引カップ1の先端開口縁部4に、その全周に渡って、径方向外方側に向けて伸びるフランジ状の外シール部21が一体成形されると共に、径方向内方側に向けて伸びるフランジ状の内シール部22が一体成形されている。先端開口縁部4の下面(先端面)に、外シール部21と内シール部22との間において、その全周に渡って伸びる環状溝部23を形成するのが好ましい。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性部材により形成された吸引カップ内に電極が配設され、該吸引カップの先端開口縁部を患者の体表面に接触させた状態で該吸引カップ内が吸引される吸引式電極装置において、
前記吸引カップの先端開口縁部に、それぞれ該先端開口縁部の全周に渡って、径方向外方側に向けて伸びるフランジ状の外シール部が一体成形されると共に、径方向内方側に向けて伸びるフランジ状の内シール部が一体成形されている、
ことを特徴とする吸引式電極装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記先端開口縁部に、前記外シール部と内シール部との間において、該先端開口縁部の全周に渡って伸びる環状溝部が形成されている、ことを特徴とする吸引式電極装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記吸引カップ内に、前記電極と患者体表面との間での通電を確保するための導電用弾性部材が配設され、
前記吸引カップのうち前記先端開口縁部付近に、該吸引カップの周方向に間隔をあけて、径方向内方側に向けて突出されて前記導電用弾性部材の脱落を防止するための係止突起部が一体成形され、
前記係止突起部の突出端となる先端位置が、前記内シール部の先端位置よりもさらに径方向内方側に位置されている、
ことを特徴とする吸引式電極装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記係止突起部は、前記内シール部のうち周方向の一部をさらに径方向内方側に延長することにより形成されている、ことを特徴とする吸引式電極装置。
【請求項5】
4において、
前記係止突起部の下端面と前記内シール部の下端面とがほぼ面一とされている、ことを特徴とする吸引式電極装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5において、
前記係止突起部の基端部の厚さが、前記内シール部の基端部の厚さよりも大きくされている、ことを特徴とする吸引式電極装置。
【請求項7】
請求項3において、
前記係止突起部は、前記内シール部よりも上方位置に形成されている、ことを特徴とする吸引式電極装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項において、
前記吸引カップが、前記外シール部および前記内シール部を含めて全体的にシリコンゴムによって形成され、
前記外シール部および前記内シール部を含む前記吸引カップの硬度が10度〜25度の範囲に設定され、
前記外シール部および前記内シール部の厚さが、1mm〜2mmの範囲に設定されている、
ことを特徴とする吸引式電極装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか1項において、
低周波治療器用とされている、ことを特徴とする吸引式電極装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低周波治療器等に用いる吸引式電極装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
治療用の電気信号を利用して患者の患部に対してマッサージ等を行う治療器つまり電気的刺激装置の中には、例えば低周波治療器がある。この低周波治療器は、基本的に、患者の体表面のうち患部付近に電極を直接的あるいは間接的に接触させて、治療用の低周波電気信号を印加するものである。電極の患者体表面への通電を所定位置で確実に行うために、特許文献1に示すように、吸引カップ内に電極を配設して、この吸引カップ内を負圧を利用して吸引することによって、吸引カップを患者体表面に圧着させることが行われている。吸引カップ内の吸引負圧の大きさを変更することにより、マッサージ効果を得つつ、吸引カップが圧着される部位の鬱血を防止あるいは低減することも行われている。
【0003】
吸引負圧を利用した吸引カップの患者体表面への吸着を確実に行うため、吸引カップの先端開口縁部の全周に渡って、径方向外方側に向けて伸びるフランジ状の外シール部を一体成形したものがある。特許文献1には、外シール部の下面に、外シール部よりも柔らかい弾性部材を一体化して、患者体表面との密着性を向上させたものが開示されている。さらに、外シール部の代わりに、吸引カップの先端開口縁部の全周に渡って、径方向外方側に向けて伸びるフランジ状の内シール部を設けることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2004−216023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、吸引カップが装着される部位が、腕等の細い部分であると(小さな曲率半径部位であると)、吸引カップの先端開口縁部からのシールもれが生じやすくなり、吸引カップを患者体表面面に確実に吸着させておくことが難しい場合が往々にして生じる。吸引カップの先端開口縁部に外シール部を形成した場合でも、外のシール部のうち周方向のある部分では患者体表面には密着していても、別の部分で患者体表面から離間してしまい、シールもれを生じてしまうことになる。このことは、吸引カップの先端開口縁部に内シール部を形成した場合も同様である。
【0006】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、吸引カップの患者体表面への装着をより確実に行えるようにした吸引式電極装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、請求項1に記載のように、
弾性部材により形成された吸引カップ内に電極が配設され、該吸引カップの先端開口縁部を患者の体表面に接触させた状態で該吸引カップ内が吸引される吸引式電極装置において、
前記吸引カップの先端開口縁部に、それぞれ該先端開口縁部の全周に渡って、径方向外方側に向けて伸びるフランジ状の外シール部が一体成形されると共に、径方向内方側に向けて伸びるフランジ状の内シール部が一体成形されている、
ようにしてある。
【0008】
上記解決手法によれば、外シール部と内シール部との両方のシール部により、シールもれをより確実に防止して、吸引カップを患者体表面に確実に装着させておくことが可能となる。例えば患者の腕等細い部分に吸引カップを装着した場合に、例えば外シール部のうち周方向の一部が患者体表面から離間しているような状態でも、この部分で内シール部が患者体表面に密着させるということも可能となる。逆に、内シール部のうち周方向の一部が患者体表面から離間しているような状態でも、この部分で外シール部が患者体表面に密着させるということも可能となる。このように、本発明では、シールもれの事態が発生してしまう機会を大幅に低減することができる。
【0009】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項2以下に記載のとおりである。すなわち、
前記先端開口縁部に、前記外シール部と内シール部との間において、該先端開口縁部の全周に渡って伸びる環状溝部が形成されている、ようにしてある(請求項2対応)。この場合、患者体表面に装着した際に、外シール部の弾性変形が内シール部に伝達されてしまうこと、逆に内シール部の弾性変形が外シール部に伝達されてしまうことが、環状溝部によって阻止されて、各シール部が個々独立して弾性変形可能なようにして、請求項1に対応した効果をより十分に発揮させることができる。また、環状溝部の深さ分だけ、外シール部の基端部の厚さや、内シール部の基端部の厚さを薄く設定することができ(薄肉化)、各基端部を十分柔らかくして(十分に弾性変形できるようにして)、より一層シール性を高めることが可能となる。
【0010】
前記吸引カップ内に、前記電極と患者体表面との間での通電を確保するための導電用弾性部材が配設され、
前記吸引カップのうち前記先端開口縁部付近に、該吸引カップの周方向に間隔をあけて、径方向内方側に向けて突出されて前記導電用弾性部材の脱落を防止するための係止突起部が一体成形され、
前記係止突起部の突出端となる先端位置が、前記内シール部の先端位置よりもさらに径方向内方側に位置されている、
ようにしてある(請求項3対応)。この場合、係止突起部を利用して、導電用弾性部材を吸引カップ内に確実に収納しておくことができる。
【0011】
前記係止突起部は、前記内シール部のうち周方向の一部をさらに径方向内方側に延長することにより形成されている、ようにしてある(請求項4対応)。この場合、係止突起部を極力低い位置、つまり患者体表面に近い位置に設定して、導電性弾性部材の患者体表面への当接面積を極力大きく確保して、電気的刺激を付与した際に、ひりひり感やちりちり感を防止あるいは抑制する上で好ましいものとなる。また、内シール部と係止突起部とを完全に別途独立して形成する場合に比して、構造も簡単となり、吸引カップを成形するための金型構造も簡単化する上で好ましいものとなる。
【0012】
前記係止突起部の下端面と前記内シール部の下端面とがほぼ面一とされている、ようにしてある(請求項5対応)。この場合、係止突起部を極限まで患者体表面に近づけることが可能となり、請求項4に対応した効果をより一層十分に発揮させる上で好ましいものとなる。
【0013】
前記係止突起部の基端部の厚さが、前記内シール部の基端部の厚さよりも大きくされている、ようにしてある(請求項6対応)。この場合、内シール部を薄くしてそのシール機能を十分に確保しつつ、係止突起部の厚さを厚くすることによよりその剛性を高めて、導電用弾性部材の落下防止機能を十分に確保する上で好ましいものとなる。
【0014】
前記係止突起部は、前記内シール部よりも上方位置に形成されている、ようにしてある(請求項7対応)。この場合、内シール部を係止突起部の影響を与えることなく十分に薄くして、そのシール機能を十分に確保する上で好ましいものとなる。また、係止突起部を、内シール部に影響されることなく、十分に厚くして、導電用弾性部材の落下防止機能を十分に確保する上で好ましいものとなる。
【0015】
前記吸引カップが、前記外シール部および前記内シール部を含めて全体的にシリコンゴムによって形成され、
前記外シール部および前記内シール部を含む前記吸引カップの硬度が10度〜25度の範囲に設定され、
前記外シール部および前記内シール部の厚さが、1mm〜2mmの範囲に設定されている、
ようにしてある(請求項8対応)。この場合、 吸引カップの患者体表面への装着をより確実に行えるようにするための具体的な材質の種類、硬度、厚さを提供することができる。
【0016】
低周波治療器用とされている、ようにしてある(請求項9対応)。この場合、低周波治療器にあっては、同時に複数あるいは多数の吸引式電極装置を用いられることから、各吸引式電極装置を確実に患者体表面へ装着した状態を維持することが望まれるが、このような低周波治療器用として極めて好ましいものとなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、吸引式電極装置をより確実に患者体表面に装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】低周波治療器と患者とを吸引式電極装置を介して接続した状態を示す簡略斜視図。
図2】本発明が適用された吸引式電極装置の側面図。
図3図2の平面図。
図4図2の下面図。で、電極板を外した状態で示す図。
図5図2の状態から電極板を外した状態を示す図。
図6図3のX6−X6線相当断面図。
図7】係止突起部が存在しない位置での吸引カップの先端開口縁部の断面図。
図8】係止突起部が存在する位置での吸引カップの先端開口縁部の断面図。
図9】本発明の第2の実施形態を示すもので、図8に対応した断面図。
図10】外シール部の一部が円柱パイプの表面から離間してしる状態で内シール部によってシールもれが防止されている状況を示す図。
図11】本発明の効果を従来のものと比較して示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1において、Kは患者、TCは電気的刺激装置としての低周波治療器である。図1では、患者Kの腕部に対して2個一対の吸引式電極装置Dが装着されている。一対の吸引式電極装置Dに対しては、ケーブルCを介して、低周波治療器TCから治療用電気信号が印加されて、一対の吸引式電極装置D間の部位(特に電極装着部位)に対する治療が行われる。また、ケーブルCは、中空構造とされて、低周波治療器本体TCからの吸引負圧を、吸引式電極装置Dに伝達する機能をも有する。
【0020】
各吸引式電極装置Dは、それぞれ同様の構造とされて、図6に示すように、弾性部材によって構成された吸引カップ1と電極10とを有する。吸引カップ1は、ほぼ平坦とされた上壁部2と、上壁部2の周縁部から下方に伸びるスカート状の脚部3とを有する。そして、実施形態では、吸引カップ1の先端開口縁部(脚部3の先端開口縁部)4の形状が、円形とされている。
【0021】
吸引カップ1(脚部3)の先端開口縁部4には、外シール部21と内シール部22とが形成されている。外シール部21は、先端開口縁部4の全周に渡って、吸引カップ1の径方向外方側に向けて伸びるフランジ状として形成されている。内シール部22は、先端開口縁部4の全周に渡って、吸引カップ1の径方向外方側に向けて伸びるフランジ状として形成されている。そして、各シール部21と22との間には、吸引カップ1の全周に渡って伸びる環状の環状溝部23が形成されている。
【0022】
吸引カップ1の内面には、先端開口縁部4付近において、周方向に間隔をあけて複数(実施形態では4個)の係止突起部24が形成されている。この係止突起部24は、図4図6図8に示すように、内シール部22の周方向一部をさらに径方向内方側に延長することにより形成されている。ただし、係止突起部24の基端部の厚さは、内シール部22の基端部の厚さよりも厚くされており、したがって、係止突起部24の位置する部分では、係止突起部24が内シール部22の一部を兼用している、と把握することができる。
【0023】
環状溝部23によって、外シール部21と内シール部22とは、個々独立して弾性変形することが可能であり、また、その基端部が薄くされて、基端部を中心にした弾性変形(揺動変形)を行うことが可能であり、シール部材として極めて好適となっている。
【0024】
前記電極10は,薄板状とされて、吸引カップ1の奥深い位置に配設されている。吸引カップ1の上壁部2の内面には、周方向に間隔をあけて複数の突起部5が一体に形成されて、上壁部2の内面と電極1との間に空間が確保されるようになっている。電極10の中心に、中間部材11が一体化されて、この中間部材11に接続部材12が例えば螺合によって一体化されている。電極10は、中間部材11によって、上記突起部4と当接した位置から、下方へと大きく変位しないように位置規制されている。
【0025】
接続部材12および中間部材11は、それぞれ導電性部材により中空構造として形成され、低周波治療器Cからの吸引負圧が、接続部材12内および中間部材11内を通って、吸引カップ1内のうち電極10の上方空間に作用するようになっている。電極10は、吸引カップ1の上壁部2の内面から前記突起部5を取り囲むように突出形成された円筒状の保持筒部6に嵌合、保持されている。上壁部2を下方へ押圧して吸引カップ1を全体的に弾性変形させたときに、保持筒部6の下端部が拡径されて、電極10の外周縁部の空間を通して、吸引カップ1内に全体的に吸引負圧が作用される。
【0026】
吸引式電極装置Dを使用するに際しては、まず、図6に示すように、例えばスポンジ等からなる導電用弾性部材30を、先端開口縁部4側から、係止突起部24よりも奥深く吸引カップ1内に押し込んで、吸引カップ1内に収納させる。収納状態では、係止突起部24によって、導電用弾性部材30が吸引カップ1内から脱落してしまう事態が規制される。なお、導電用弾性部材30は、あらかじめ水等の導電性液体が浸された状態とされている。
【0027】
次いで、吸引式電極装置Dを、その各シール部21、22が患者体表面に接触するようにして患者体表面に装着する。装着状態で、上壁部2を患者体表面に向けて押圧して、吸引負圧を吸引カップ1内の全体に渡って作用させ、この後、上壁部2から上記押圧の外力を開放する。内外のシール部21と22とのシール作用によって、吸引カップ1の先端開口縁部4側からのシールもれが防止される。
【0028】
吸引式電極装置Dを、曲率半径が小さい部位に装着するとき、例えば患者の腕の細い部分等に装着した場合に、従来の吸引式電極装置であれば先端開口縁部4と患者体表面との間に隙間が形成されてしまって、シールもれが生じてしまうことがある。本発明による吸引式電極装置Dは、内外のシール部21と22との2重のシール作用によって、患者体表面との隙間からのシールもれを、従来に比して十分に防止あるいは抑制することが可能となる。
【0029】
ここで、吸引カップ1は、外シール部21、内シール部22、係止突起部24、突起部5、保持筒部6とが、弾性部材としての例えばシリコンゴムよって、一体成形されている。そして、吸引カップ1のうち、脚部3の厚さ、各シール部21、22の厚さは、1mm〜2mmに形成されている。また、吸引カップ1を構成する弾性部材の硬度は、10度〜25度の範囲で設定されている。これらの厚さおよび硬度の設定により、各シール部21、22についてはシール機能を十分得るための柔軟性確保の上で好ましいものとなる。また、脚部3については、吸引負圧を受けたときに、大きく潰れ変形しないようにする上で好ましいものとなる。さらに、外シール部21の長さは、先端開口縁部4の外周面から3mmとされているが、2〜4mmの範囲で適宜設定できる。同様に、さらに、内シール部22の長さは、先端開口縁部4の内周面から3mmとされているが、2〜4mmの範囲で適宜設定できる。
【0030】
図10では、患者体表面うち曲率半径の小さい部位を模した細い円柱パイプ40に、吸引式電極装置Dを装着した場合が示される。図10では、吸引カップ1の周方向一部では外シール部21が円柱パイプ40に密着して、この部分でのシールもれは生じないものとなる。この一方、吸引カップ1の周方向別の部分では、円柱パイプ40から離間しているが、この部分に対応した内シール部22が円柱パイプ40に密着していて、この部分でのシールもれも生じないものとなっている。図示を略すが、内シール部22が患者体表面から離間する一方、この部分に対応した外シール部21が患者体表面に密着する場合もある。
【0031】
このように、外シール部21と内シール部22との内外2重のシール構造によって、従来に比して、吸引負圧を利用した患者体表面への装着機能が向上されることになる。とりわけ、環状溝部23の形成によって、外シール部21と内シール部22とが個々独立して弾性変形することが可能となる。また、環状溝部23の深さ分だけ各シール部21、22の基端部の厚さを薄くすることが可能となって、当該基端部を中心として各シール部21、22が揺動するように弾性変形する自由度が高いものとなる。これにより、各シール部21、22によるシール機能がより一層向上されることになる。
【0032】
図11は、本発明による吸引式電極装置Dを従来の吸引式電極装置と比較して示す試験結果をまとめて示すものである。用いた試験用の吸引式電極装置は、先端開口縁部4の内径が70mmの共通とした。そして、「内+外」と記載してあるのが、外シール部21と内シール部22とを有する本発明による吸引式電極装置Dである(環状溝部23も有する)。「内のみ」として記載してあるのが、比較用の吸引式電極装置であり、内シール部22に相当するシール部を有するものの、外シール部21に相当するものを有しないものとなっている(環状溝部23も有しない)。「外のみ」として記載してあるのが、比較用の吸引式電極装置であり、外シール部21に相当するシール部を有するものの、内シール部22に相当するものを有しないものとなっている(環状溝部23も有しない)。
【0033】
本発明による吸引式電極装置Dと比較用の2種類の吸引式電極装置の合計3種類の吸引式電極装置について、それぞれ、吸引カップ1の硬度を、15度、20度、25度の3種類用意した(硬度は、数値の小さいものほど柔らかい)。そして、円柱パイプの外形が、114mm、89mm、60mm、48mm、32mmのものを用意した。円柱パイプを上下方向に伸ばして、その表面に上記各吸引式電極装置を吸引負圧を利用して吸着させて、吸着可能であるか否(吸引式電極装置が円柱パイプから脱落しないか否か)かを調べた。
なお、吸引負圧は、当初は−15kPaとし、それで脱落する場合は−20kPaとし、それでも脱落した場合に「×」としてある。
【0034】
図11中、○は吸引式電極装置の円柱パイプからの脱落なし(シールもれなし)で、×が脱落ありである(シールもれ)。図11から容易に理解されるように、外シール部21と内シール部22とを有する本発明による吸引式電極装置Dは、シールもれがなく、吸着性能が極めて優れているものである。
【0035】
図9は、本発明の第2の実施形態を示すものである。本実施形態では、係止突起部24を、内シール部22よりも若干上方(奥側)に形成したもので、内シール部22と別個独立した存在となっている。本実施形態においても、前記実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。特に、内シール部22のシール性に影響を与えることなく、係止突起部24の厚さ等を自由に設定できるので、導電用弾性部材30の係止機能を十分に得る上で好ましいものとなる。
【0036】
以上実施形態について説明したが、本発明はこれに限らず、例えば次のような場合をも含むものである。吸引カップ1の形状(先端開口縁部4の形状)は、円形に限らず、楕円形等適宜の形状とすることができる。1つの吸引カップ1に対して複数の電極を有する場合にも本発明を同様に適用でき、この場合、1つの吸引カップ1に設ける負圧通路は1つのみとするのが、構造の複雑化を避けるために好ましい。電極10が直接患者体表面に接触されるものであってもよい。
【0037】
低周波治療器としては、対となる電極間に低周波電流(低周波電流に搬送波としての高周波電流を重畳させたものを含む)を流すものに限らず、それぞれ高周波電流が流される対となる電極を複数組設けて、この複数組の電極の間での高周波の周波数を若干相違させて、その相互の干渉によって得られる低周波成分を利用した治療を行う干渉式の低周波治療器であってもよい。とりわけ、干渉式の低周波治療器にあっては、吸引カップ内の吸引負圧変更を積極的に行ってマッサージ効果を得るようにすることが多いので、本発明を適用して好適となる。勿論、低周波治療器以外の電気刺激装置にも本発明を適用できるものである。本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、低周波治療器等に用いる吸引式電極装置として好適である。
【符号の説明】
【0039】
K:患者
C:ケーブル
D:吸引式電極装置
TC:低周波治療器
1:吸引カップ
2:上壁部
3:脚部
4:先端開口縁部
10:電極
21:外シール部
22:内シール部
23:環状溝部
24:係止突起部
30:導電用弾性部材
40:円柱パイプ(試験用)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11