特開2015-36405(P2015-36405A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2015-36405熱可塑性樹脂用防曇剤及び該剤を含有する熱可塑性樹脂組成物並びに該組成物の成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-36405(P2015-36405A)
(43)【公開日】2015年2月23日
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂用防曇剤及び該剤を含有する熱可塑性樹脂組成物並びに該組成物の成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20150127BHJP
   C08K 5/103 20060101ALI20150127BHJP
【FI】
   C08L101/00
   C08K5/103
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-168291(P2013-168291)
(22)【出願日】2013年8月13日
(71)【出願人】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宮田 侑典
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB031
4J002BB051
4J002BB061
4J002BB121
4J002BC031
4J002BD041
4J002BD121
4J002BG061
4J002BN151
4J002CF061
4J002CF071
4J002CK021
4J002CL011
4J002EH046
4J002EH076
4J002FD206
4J002GA01
4J002GG02
(57)【要約】
【課題】熱可塑性樹脂組成物の低温及び高温での初期防曇性とその持続性を賦与し、且つ樹脂組成物の透明性を長期間維持することができる熱可塑性樹脂用防曇剤を提供すること。
【解決手段】テトラグリセリン濃度が40質量%以上であるポリグリセリンと炭素数が8〜22の脂肪酸とから構成されるポリグリセリン脂肪酸エステルであってそのエステル化率が20〜60%の範囲であることを特徴とする熱可塑性樹脂用防曇剤。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラグリセリン濃度が40質量%以上であるポリグリセリンと炭素数が8〜22の脂肪酸とから構成されるポリグリセリン脂肪酸エステルであってそのエステル化率が20〜60%の範囲であることを特徴とする熱可塑性樹脂用防曇剤。
【請求項2】
請求項1の熱可塑性樹脂用防曇剤を含有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂用の防曇剤に関し、更に詳しくは熱可塑性樹脂用の練り込み型防曇剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、熱可塑性樹脂組成物は耐衝撃性強度、透明性、保湿性、耐候性等に優れることから、そのシートやフィルムが農業用フィルムや食品包装等の用途として多量に使用されている。しかし、熱可塑性樹脂の多くは疎水性であるために種々の問題点を有している。例えば、フィルムを使用して農業用ハウスや食品の包装として使用する場合、フィルムの両面(内面及び外面)に温度差が生じたり、急激に温度が変化する使用条件では、フィルム表面に水滴が付着し曇りを生じるために光透過が阻害されたり、内容物が見えなくなる等使用上の不都合が生じる。
【0003】
具体例としては、広く行われている、ポリ塩化ビニルフィルムやポリオレフィン系多層フィルム等の農業用被覆材を使用してのハウス栽培やトンネル栽培においては、外気温度が室内温度より低い場合にはフィルムにより被覆された室内部の土壌中や栽培作物からの水蒸気がフィルム内表面に水滴上に凝縮し曇りとなり太陽光線の透過を妨げたり、フィルム表面で凝縮した水滴が落下して農作物の発育不良を招いたり、病害虫の発生を促進したりする現象が発生する。
【0004】
又、食品包装の場合、特に包装された食品の水分量が高く、包装体内部が多湿状態の雰囲気であったり、冷凍・冷蔵保存する場合において温度が露点に達し包装体内部の水蒸気圧が飽和水蒸気圧になると、この温度を境にして水蒸気の凝縮が起こり、著しい場合にはフィルム表面に凝縮した水滴のために、外部から内容物の識別ができなくなる。又、凝縮した水滴が落下すると、その部分の水分濃度が高くなり腐敗等の変質を引き起こす。
【0005】
これらフィルムの表面の物性を改善するために一般に界面活性剤により防曇性を賦与する方法が採用されている。この防曇性を賦与する方法としては、液状の防曇剤をフィルムの表面に塗布する方法、防曇剤をフィルムに練り込む方法及び練り込みと塗布とを併用する方法とがある。
【0006】
熱可塑性樹脂に防曇剤を練り込んで熱可塑性樹脂組成物に防曇性を賦与する従来技術としては、ポリ塩化ビニル樹脂にグリセリンの縮合体(2量体〜5量体)と脂肪酸からなるポリグリセリン脂肪酸エステルであって、未反応物のグリセリン縮合体を除去したものを、添加したストレッチフィルム(特許文献1)、スチレン系樹脂フィルムに、特定比率のオレイン酸とラウリン酸の混合脂肪酸からなり、ジエステル含有率が30%以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルを添加する方法(特許文献2)、ステリン系樹脂フィルムに、脂肪酸又はグリセリン脂肪酸エステルとグリシドールから合成されたモノエステル化率の高いポリグリセリン脂肪酸エステルを使用する方法(特許文献3)、きのこ包装用のストレッチフィルムにモノ、ジ、又はポリグリセリン脂肪酸エステルを添加する方法(特許文献4)、トリグリセリン濃度が50質量%以上であるポリグリセリンと脂肪酸からなるエステル化率20〜60%のポリグリセリン脂肪酸エステルを添加する方法(特許文献5)、平均縮合度1.5〜12のポリグリセリンと炭素数8〜22の脂肪酸とのエステルで、融点が20℃以下であるポリグリセリン脂肪酸エステルと、特定のポリアルキレングリコール脂肪酸エステルを特定比率で含有する合成樹脂用防曇剤組成物(特許文献6)等が開示されている。しかし、上記従来技術では一長一短があり更に好ましい熱可塑性樹脂用防曇剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭59−71352号公報
【特許文献2】特開平6−212095号公報
【特許文献3】特開平9−194655号公報
【特許文献4】特開平11−152163号公報
【特許文献5】特開2002−275308号公報
【特許文献6】特開2002−60629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物の低温及び高温での初期防曇性とその持続性を賦与し、且つ樹脂組成物の透明性を長期間維持することができる熱可塑性樹脂用防曇剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決する為に鋭意研究を重ねた結果、特定のテトラグリセリン脂肪酸エステルを含有するポリグリセリン脂肪酸エステルを熱可塑性樹脂に練り込んだ熱可塑性樹脂組成物が、上記課題を解決することを見出した。本発明者は、これらの知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
[1]テトラグリセリン濃度が40質量%以上であるポリグリセリンと炭素数が8〜22の脂肪酸とから構成されるポリグリセリン脂肪酸エステルであってそのエステル化率が20〜60%の範囲であることを特徴とする熱可塑性樹脂用防曇剤、
[2]前記[1]の熱可塑性樹脂用防曇剤を含有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物、
[3]前記[2]に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品、
からなっている。
【発明の効果】
【0010】
熱可塑性樹脂に本発明の熱可塑性樹脂用防曇剤を練り込んで得た熱可塑性樹脂組成物の成形品は、低温及び高温での初期防曇性を有し、その防曇性が持続し、且つ成形品の透明性を長期間維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】防曇性の評価に用いる評価箱と恒温水槽の構造を示す模式図である。
図2】評価箱を恒温水槽に設置した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明におけるポリグリセリンは、テトラグリセリン濃度が40質量%以上、好ましくは約45質量%以上含有するポリグリセリン組成物である。ポリグリセリン組成物中のテトラグリセリン以外のポリグリセリンのそれぞれの濃度は、テトラグリセリン濃度を上回ることはなく、好ましくはジグリセリン濃度が12質量%以下、トリグリセリン濃度が35質量%以下、ペンタグリセリン濃度が30質量%以下、ヘキサグリセリン濃度が10質量%以下、ヘプタグリセリン以上のポリグリセリン濃度が5質量%以下であり、より好ましくはジグリセリン濃度が5質量%以下、トリグリセリン濃度が30質量%以下、ペンタグリセリン濃度が25質量%以下、ヘキサグリセリン濃度が7質量%以下、ヘプタグリセリン以上のポリグリセリン濃度が3質量%以下である。また、ポリグリセリン組成物にはグリセリンを含んでも良いが、ポリグリセリン組成物中のグリセリン濃度は1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。
【0013】
従来のポリグリセリンは、グリセリンの脱水重縮合反応、グリシドール、エピクロルヒドリン、グリセリンハロヒドリン等のグリセリン類縁体を用いての合成、あるいは合成グリセリンのグリセリン蒸留残分からの回収等によって得られるが、一般的には、グリセリンに少量のアルカリ触媒を加えて200℃以上の高温に加熱し、生成する水を除去しながら重縮合反応させる方法によって得られる。
【0014】
反応は逐次的な分子間脱水反応により、順次高重合体が生成するが反応生成物は均質なもので無く、未反応グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン等の複雑な混合組成物となり、反応温度が高いほど、あるいは反応時間が長いほど反応は高重合度側にシフトする。
【0015】
未反応のグリセリンは減圧蒸留による蒸留が容易であり、ジグリセリンは分子蒸留による蒸留が容易であるため、一般的にはジグリセリンは高純度品が使用され、それ以上の重合度ポリグリセリンは通常グリセリン又はジグリセリンを蒸留で留去した残分が使用される。従って、一般にポリグリセリンといわれるものは複雑な多成分の混合物である。
【0016】
本発明に用いられるテトラグリセリン濃度が40質量%以上であるポリグリセリンは、一般的には上記の如くグリセリンに少量のアルカリ触媒を加えて加熱反応した各種重合度の異なる成分の混合物から未反応のグリセリン及びジグリセリンを減圧留去精製し、更に精製してトリグリセリン含有量を低減したものである。精製方法としては、蒸留法、カラムクロマトグラフィ分取法、溶剤分別法等が挙げられ、好ましくは蒸留法であり、より好ましくは分子蒸留法である。
【0017】
本発明の熱可塑性樹脂用防曇剤であるポリグリセリ脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルチミチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、リノール酸、エルカ酸、イソステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等の炭素数8〜22の範囲である飽和又は不飽和の脂肪酸の1種又は2種以上の混合物が用いられる。好ましくは炭素数8〜22の飽和脂肪酸、より好ましくは炭素数12〜18の飽和脂肪酸である。炭素数12〜18の飽和脂肪酸を用いることにより、防曇性の持続が良好であり好ましい。
【0018】
本発明の熱可塑性樹脂用防曇剤であるポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率は、20〜60%であり、好ましくは35〜45%の範囲である。エステル化率が20%より小さくなると、反応で生成するエステル混合物の組成はモノエステル及び未反応のポリグリセリンの比率が高く、樹脂との相溶性が小さくなり、初期防曇性の効果は大きくなるがブリードが多くなり、防曇性の持続性が悪くなる。また、エステル化率が60%より大きくなると樹脂との相溶性は向上するが防曇性が発揮しづらくなる。
【0019】
ここで、エステル化率は、下記式にて算出した値が採用することができる。
エステル化率(%)={(ケン化価−酸価)/(ケン化価−酸価+水酸基価)}×100
なお、ケン化価、酸価及び水酸基価は、「基準油脂分析試験法(I)」(社団法人 日本油化学会編)の[2.3.2―1996 ケン化価]、[2.3.1−1996 酸価]及び[2.3.6―1996 ヒドロキシル価]に準じて測定される。
【0020】
本発明の熱可塑性樹脂用防曇剤であるポリグリセリン脂肪酸エステルの具体例としては、テトラグリセリンラウレート、テトラグリセリンパルミテート、テトラグリセリンステアレート、テトラグリセリンオレート、テトラグリセリンベヘネート等が挙げられ、好ましくはテトラグリセリンラウレート、テトラグリセリンパルミテート、テトラグリセリンステアレートである。
【0021】
本発明の熱可塑性樹脂用防曇剤であるポリグリセリン脂肪酸エステルは、前記ポリグリセリンと前記脂肪酸とのエステル化生成物であり、エステル化反応等自体公知の方法で製造される。
【0022】
本発明の熱可塑性樹脂用防曇剤であるポリグリセリン脂肪酸エステルの製法としては、次の方法が好ましく挙げられる。例えば、攪拌機、加熱用のジャケット、窒素導入管、水分定量管、空冷管等を備えた通常の反応容器に、テトラグリセリン濃度が40質量%以上のポリグリセリンと脂肪酸を約1:0.5〜8のモル比で仕込み、触媒として酸化亜鉛、水酸化カルシウムを加えて攪拌混合し、窒素ガス雰囲気下で、エステル化反応により生成する水を系外に除去しながら、温度調節器を用いて所定温度で加熱する。反応温度は通常、約210〜250℃の範囲、好ましくは約220〜240℃の範囲である。また、反応圧力条件は減圧下又は常圧下で、反応時間は約2〜8時間である。反応の終点は、通常反応混合物の酸価を測定し、約5以下を目安に決められる。
【0023】
本発明の熱可塑性樹脂用防曇剤を含有する熱可塑性樹脂組成物は本発明の形態の1つである。
本発明で用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−αオレフィン共重合体のいずれか単独又はこれらの混合物からなるポリオレフィン樹脂(ここでエチレン−αオレフィン共重合体のαオレフィンとしては、炭素数4〜10でブテン−1、ペンテン−1、オクテン−1、デセン−1等が挙げられる)、ナイロン−6、ナイロン−12等のポリアミド樹脂、ポリスチレン、ABS等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸メチル等のビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、フッソ樹脂等を使用できるが、これらに限定されるものではない。また、これらの樹脂を数種数積層させたものでも良い。
【0024】
熱可塑性樹脂用防曇剤の熱可塑性樹脂への配合量は、熱可塑性樹脂に対し、0.5〜5.0質量%が好ましく、1.0〜3.0質量%がより好ましい。上記範囲内であると、熱可塑性樹脂組成物の低温及び高温における初期防曇性及び防曇性の持続、並びに長期間の透明性維持という効果を発揮するため好ましい。
【0025】
熱可塑性樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で公知の安定剤、可塑剤、紫外吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤等の各種添加剤を用いることができる。また、防曇性機能及び防霧性機能を有する公知のグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、本発明の熱可塑性樹脂用防曇剤であるポリグリセリン脂肪酸エステル以外のポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルやフッ素系、シリコン系等を併用することもできる。
【0026】
熱可塑性樹脂用防曇剤を熱可塑性樹脂に配合する方法としては、熱可塑性樹脂に防曇剤を均一に練り込む方法であれば特に制限はなく、例えば、バンバリーミキサー、一軸混練機及び多軸混練機等の公知の混合機又は混練機を用いて練り込んで配合する方法などが挙げられる。具体的には、例えば、多軸混練機で熱可塑性樹脂と熱可塑性樹脂用防曇剤を160℃〜220℃で約1〜10分間混練して熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
【0027】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品も本発明の形態の1つである。本発明でいう成形とは、押出し成形、カレンダー成形、インフレーション成形等が挙げられる。また、前記成形によって得られた成形品としては、シート、フィルム等が挙げられる。
【0028】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を、シート、フィルム、その他の成形品に成形加工する方法としては、公知の方法が利用できる。予め、熱可塑性樹脂と熱可塑性樹脂用防曇剤等を均一に混練した熱可塑性樹脂組成物を、各種成形法により目的の成形品を得ることができる。フィルム、シートに成形する方法としては、例えば、Tダイ法、インフレーション法、カレンダー法等の常法が利用できる。又、フィルムに強度やその他の機能を付与する目的に共押出し法や、他のフィルム等のラミネーションによる多層化もできる。更に、チューブラーニ二軸延伸、テンダー二軸延伸を施すこともできる。その他の成形品では、通常の押出し法、射出成形法、ブロー成形法等が利用できる。
【0029】
かくして得られた熱可塑性樹脂組成物成形品は、低温及び高温での初期防曇性及び継続的防曇性、並びに透明性を有しているため、例えば、農業用ハウスフィルム、農業用トンネルフィル、農業用マルチフィルム、農業用カーテンフィルム、食品包装用ラップフィルム、食品包装用ストレッチフィルム等に用いられ、特に軟化塩化ビニル樹脂製やポリオレフィン樹脂製の農業用ハウスフィルム、農業用トンネルフィルム、農業用マルチフィルム、農業用カーテンフィルムに好ましく用いられる。
【0030】
以下に本発明を実施例で説明するが、これは本発明を単に説明するだけのものであって、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0031】
≪ポリグリセリン脂肪酸エステルの作製≫
(1)原材料
[ポリグリセリン]
ポリグリセリンA、B、C(下記方法で作製したもの)
ポリグリセリンD(商品名:R−PG;阪本薬品工業社製)
ポリグリセリンE(商品名:ジグリセリンS;阪本薬品工業社製)
ポリグリセリンF(商品名:ポリグリセリン♯500;阪本薬品社製)
ここで、ポリグリセリンA、Bは、本発明で用いられるテトラグリセリン濃度が40質量%以上のポリグリセリンである。一方、ポリグリセリンC〜Fは、本発明で用いられるテトラグリセリン濃度が40質量%以上のポリグリセリンとは異なるポリグリセリンである。各ポリグリセリンの組成(重合度比率)を表1に示す。
[脂肪酸]
ステアリン酸(商品名:ステアリン酸300;新日本理化社製)
ラウリン酸(商品名:NAA−12;日油社製)
オレイン酸(商品名:ルナックOR;花王社製)
【0032】
(2)ポリグリセリンの作製
[ポリグリセリン生成物の作製]
温度計、撹拌装置を付した四つ口フラスコにグリセリン3000g及び苛性ソーダ300gを仕込み、窒素ガスを導入しつつ260℃で反応を行い、ポリグリセリン反応品3200gを得た。得られたポリグリセリン反応品3000gを90℃でリン酸150g、氷酢酸150gで中和し、次いで活性炭で脱色ろ過し、電気透析及びイオン交換を行い脱塩してポリグリセリン生成物を得た。
【0033】
[ポリグリセリンAの作製]
上記方法で得られたポリグリセリン生成物7000gを減圧蒸留してグリセリンを除去した後、分子蒸留(240℃、真空度13Pa)により大部分のジグリセリンを除去し、さらに分子蒸留(255℃、5Pa)によりトリグリセリンを除去し、ポリグリセリンAを1100g得た。
【0034】
[ポリグリセリンBの作製]
上記方法で得られたポリグリセリン生成物7000gを減圧蒸留してグリセリンを除去した後、分子蒸留(240℃、真空度13Pa)により大部分のジグリセリンを除去し、さらに分子蒸留(265℃、3Pa)によりトリグリセリンを除去し、ポリグリセリンBを800g得た。
【0035】
[ポリグリセリンCの作製]
上記方法で得られたポリグリセリン生成物2000gを減圧蒸留してグリセリンを除去した後、分子蒸留(240℃、真空度13Pa)により大部分のジグリセリンを除去してポリグリセリンCを300g得た。
【0036】
[ポリグリセリンの分析]
ここで、ポリグリセリンの重合度の測定方法を示す。
各ポリグリセリンを10mgとり、下記移動相1mlに溶解し、下記条件のGPCにて、重合度を分析した。なお、グリセリン重合度比率は、上記測定で得た各成分のピーク面積比率である。
装置 :島津製作所製HPL
検出器 :RI検出器
カラム温度 :40℃
カラム :Shodex-AsahipackGS220HQ×2
移動相 :30%メタノール水溶液
移動相流量 :1.0ml/min
【0037】
【表1】
【0038】
(3)ポリグリセリン脂肪酸エステルの作製
[実施例品1]
温度計、撹拌装置を付した四つ口フラスコに、ポリグリセリンA160gとステアリン酸340g及び苛性ソーダ0.25gを仕込み、窒素ガスを導入しつつ230℃に昇温し3時間反応を行い、酸価2のポリグリセリン脂肪酸エステル(実施例品1)を得た。エステル化率は41%であった。
【0039】
[実施例品2]
ポリグリセリンA190g、ステアリン酸310g及び苛性ソーダ0.25gを使用した以外は実施例1と同様に操作し、酸価2のポリグリセリン脂肪酸エステル(実施例品2)を得た。エステル化率は31%であった。
【0040】
[実施例品3]
ポリグリセリンA195g、ラウリン酸305g及び苛性ソーダ0.25gを使用した以外は実施例1と同様に操作し、酸価1のポリグリセリン脂肪酸エステル(実施例品3)を得た。エステル化率は41%であった。
【0041】
[実施例品4]
ポリグリセリンB200g、ステアリン酸300g及び苛性ソーダ0.25gを使用した以外は実施例1と同様に操作し、酸価2のポリグリセリン脂肪酸エステル(実施例品4)を得た。エステル化率は41%であった。
【0042】
[比較例品1]
ポリグリセリンC200g、ステアリン酸300g及び苛性ソーダ0.25gを使用した以外は実施例1と同様に操作し、酸価2のポリグリセリン脂肪酸エステル(比較例品1)を得た。エステル化率は36%であった。
【0043】
[比較例品2]
ポリグリセリンD152g、ステアリン酸348g及び苛性ソーダ0.25gを使用した以外は実施例1と同様に操作し、酸価2のポリグリセリン脂肪酸エステル(比較例品2)を得た。エステル化率は40%である。
【0044】
[比較例品3]
ポリグリセリンE158g、オレイン酸342g及び苛性ソーダ0.25gを使用した以外は実施例1と同様に操作し、酸価3のポリグリセリン脂肪酸エステル(比較例品3)を得た。エステル化率は32%であった。
【0045】
[比較例品4]
ポリグリセリンE160g、ステアリン酸340g及び苛性ソーダ0.25gを使用した以外は実施例1と同様に操作し、酸価3のポリグリセリン脂肪酸エステル(比較例品4)を得た。エステル化率は32%であった。
【0046】
[比較例品5]
ポリグリセリンF180g、ステアリン酸320g及び苛性ソーダ0.25gを使用した以外は実施例1と同様に操作し、酸価2のポリグリセリン脂肪酸エステル(比較例品5)を得た。エステル化率は35%であった。
【0047】
[比較例品6]
ポリグリセリンA280g、ステアリン酸220g及び苛性ソーダ0.25gを使用した以外は実施例1と同様に操作し、酸価2のポリグリセリン脂肪酸エステル(比較例品6)を得た。エステル化率は15%であった。
【0048】
[比較例品7]
ポリグリセリンA114g、ステアリンサン酸386g及び苛性ソーダ0.25gを使用した以外は実施例1と同様に操作し酸価3のポリグリセリン脂肪酸エステル(比較例品7)を得た。エステル化率は65%であった。
【0049】
≪熱可塑性樹脂組成物及び成形品の作製≫
エチレン−酢酸ビニル共重合体(VAC=5%、MI=3g/10分)100部、熱可塑性樹脂用防曇剤であるポリグリセリン脂肪酸エステル(実施例品1〜4、比較例品1〜7)2部を混合し、二軸押出し機(型式:TP−20T;サーモ・プラスティックス工業社製)で180℃で混練して熱可塑性樹脂組成物とした後、Tダイ法にて厚さ100μmのフィルム状に成形してフィルム(試作品1〜11)を作製した。
【0050】
≪防曇性及び透明性の評価≫
得られたフィルム(試作品1〜11)を用いて、防曇性及び透明性の評価を行った。
(1)低温防曇性の評価
30°の傾斜のついた評価箱(図1の1)の上面に設けられた窓部(図1の2)に、得られたフィルム10×27cmを張って覆い、該評価箱を30℃の水を1/2容量程度張った恒温水槽(図1の3)上に設置し、評価箱を設置した恒温水槽(図2)を雰囲気温度が5℃の恒温槽の庫内に入れて低温防曇性を評価した。初期の低温防曇性として12時間後のフィルムの状態を、低温防曇性の持続性として1ヶ月後のフィルム状態を目視にて下記評価基準に従って評価した。結果を表2に示す。
[防曇性の評価基準]
◎:フィルム面に水滴付着が殆ど認められない。防曇性が非常に良好である。
○:フィルム面の20%程度に水滴の付着が認められる。防曇性が良好である。
△:フィルム面の50%程度に水滴の付着が認められる。防曇性が悪い。
×:フィルム面の全体に水滴が付着している。防曇効果が認められない。
【0051】
(2)高温防曇性の評価
30°の傾斜のついた評価箱(図1の1)の上面に設けられた窓部(図1の2)に、得られたフィルム10×27cmを張って覆い、該評価箱を50℃の温水を1/2容量程度張った恒温水槽(図1の3)上に設置し、評価箱を設定した恒温水槽(図2)を雰囲気温度が20℃の恒温槽の庫内に入れて高温防曇性を評価した。初期の高温防曇性として12時間後のフィルムの状態を、高温防曇性の持続性として1ヶ月後のフィルム状態を目視にて「低温防曇性の評価」と同じ評価基準に従って評価した。結果を表2に示す。
【0052】
(3)透明性の評価
得られたフィルムを20℃×65%RHに放置して7日後と30日後のHaze値を濁度計(型式:NDH2000 日本電色社製)を用いて測定し、下記評価基準に従って評価した。結果を表2に示す。
[透明性の評価基準]
◎:Haze値が15%未満
○:Haze値が15%以上、25%未満
△:Haze値が25%以上、35%未満
×:Haze値が35%以上
【0053】
【表2】
【0054】
結果より、防曇剤として実施例品を用いて得たフィルム(試作品1〜4)は、低温及び高温での初期防曇性を有し、更に防曇性を持続した。また、長期間にわたる透明性を維持した。
一方、防曇剤として比較例品1、2を用いて得たフィルム(試作品5、6)は、低温及び高温の初期の防曇性を有しているが、防曇性を持続できず、さらに透明性を維持することができなかった。防曇剤として比較例品3、4、6を用いて得たフィルム(試作品7、8、10)は、低温及び高温の初期の防曇性を有しているが、防曇性を持続できず、さらに透明性を有していなかった。防曇剤として比較例5を用いたフィルム(試作品9)は、低温及び高温の初期の防曇性が無く。経時的な防曇効果も発起することはなかった。防曇剤として比較例7を用いたフィルム(試作品11)は、経時的な防曇効果を発揮したが初期防曇性を発揮しなかった。
【符号の説明】
【0055】
1・・・評価箱
2・・・評価箱の窓部
3・・・恒温水槽
4・・・評価箱の窓部に張り付けたフィルム
図1
図2