【実施例】
【0031】
≪ポリグリセリン脂肪酸エステルの作製≫
(1)原材料
[ポリグリセリン]
ポリグリセリンA、B、C(下記方法で作製したもの)
ポリグリセリンD(商品名:R−PG;阪本薬品工業社製)
ポリグリセリンE(商品名:ジグリセリンS;阪本薬品工業社製)
ポリグリセリンF(商品名:ポリグリセリン♯500;阪本薬品社製)
ここで、ポリグリセリンA、Bは、本発明で用いられるテトラグリセリン濃度が40質量%以上のポリグリセリンである。一方、ポリグリセリンC〜Fは、本発明で用いられるテトラグリセリン濃度が40質量%以上のポリグリセリンとは異なるポリグリセリンである。各ポリグリセリンの組成(重合度比率)を表1に示す。
[脂肪酸]
ステアリン酸(商品名:ステアリン酸300;新日本理化社製)
ラウリン酸(商品名:NAA−12;日油社製)
オレイン酸(商品名:ルナックOR;花王社製)
【0032】
(2)ポリグリセリンの作製
[ポリグリセリン生成物の作製]
温度計、撹拌装置を付した四つ口フラスコにグリセリン3000g及び苛性ソーダ300gを仕込み、窒素ガスを導入しつつ260℃で反応を行い、ポリグリセリン反応品3200gを得た。得られたポリグリセリン反応品3000gを90℃でリン酸150g、氷酢酸150gで中和し、次いで活性炭で脱色ろ過し、電気透析及びイオン交換を行い脱塩してポリグリセリン生成物を得た。
【0033】
[ポリグリセリンAの作製]
上記方法で得られたポリグリセリン生成物7000gを減圧蒸留してグリセリンを除去した後、分子蒸留(240℃、真空度13Pa)により大部分のジグリセリンを除去し、さらに分子蒸留(255℃、5Pa)によりトリグリセリンを除去し、ポリグリセリンAを1100g得た。
【0034】
[ポリグリセリンBの作製]
上記方法で得られたポリグリセリン生成物7000gを減圧蒸留してグリセリンを除去した後、分子蒸留(240℃、真空度13Pa)により大部分のジグリセリンを除去し、さらに分子蒸留(265℃、3Pa)によりトリグリセリンを除去し、ポリグリセリンBを800g得た。
【0035】
[ポリグリセリンCの作製]
上記方法で得られたポリグリセリン生成物2000gを減圧蒸留してグリセリンを除去した後、分子蒸留(240℃、真空度13Pa)により大部分のジグリセリンを除去してポリグリセリンCを300g得た。
【0036】
[ポリグリセリンの分析]
ここで、ポリグリセリンの重合度の測定方法を示す。
各ポリグリセリンを10mgとり、下記移動相1mlに溶解し、下記条件のGPCにて、重合度を分析した。なお、グリセリン重合度比率は、上記測定で得た各成分のピーク面積比率である。
装置 :島津製作所製HPL
検出器 :RI検出器
カラム温度 :40℃
カラム :Shodex-AsahipackGS220HQ×2
移動相 :30%メタノール水溶液
移動相流量 :1.0ml/min
【0037】
【表1】
【0038】
(3)ポリグリセリン脂肪酸エステルの作製
[実施例品1]
温度計、撹拌装置を付した四つ口フラスコに、ポリグリセリンA160gとステアリン酸340g及び苛性ソーダ0.25gを仕込み、窒素ガスを導入しつつ230℃に昇温し3時間反応を行い、酸価2のポリグリセリン脂肪酸エステル(実施例品1)を得た。エステル化率は41%であった。
【0039】
[実施例品2]
ポリグリセリンA190g、ステアリン酸310g及び苛性ソーダ0.25gを使用した以外は実施例1と同様に操作し、酸価2のポリグリセリン脂肪酸エステル(実施例品2)を得た。エステル化率は31%であった。
【0040】
[実施例品3]
ポリグリセリンA195g、ラウリン酸305g及び苛性ソーダ0.25gを使用した以外は実施例1と同様に操作し、酸価1のポリグリセリン脂肪酸エステル(実施例品3)を得た。エステル化率は41%であった。
【0041】
[実施例品4]
ポリグリセリンB200g、ステアリン酸300g及び苛性ソーダ0.25gを使用した以外は実施例1と同様に操作し、酸価2のポリグリセリン脂肪酸エステル(実施例品4)を得た。エステル化率は41%であった。
【0042】
[比較例品1]
ポリグリセリンC200g、ステアリン酸300g及び苛性ソーダ0.25gを使用した以外は実施例1と同様に操作し、酸価2のポリグリセリン脂肪酸エステル(比較例品1)を得た。エステル化率は36%であった。
【0043】
[比較例品2]
ポリグリセリンD152g、ステアリン酸348g及び苛性ソーダ0.25gを使用した以外は実施例1と同様に操作し、酸価2のポリグリセリン脂肪酸エステル(比較例品2)を得た。エステル化率は40%である。
【0044】
[比較例品3]
ポリグリセリンE158g、オレイン酸342g及び苛性ソーダ0.25gを使用した以外は実施例1と同様に操作し、酸価3のポリグリセリン脂肪酸エステル(比較例品3)を得た。エステル化率は32%であった。
【0045】
[比較例品4]
ポリグリセリンE160g、ステアリン酸340g及び苛性ソーダ0.25gを使用した以外は実施例1と同様に操作し、酸価3のポリグリセリン脂肪酸エステル(比較例品4)を得た。エステル化率は32%であった。
【0046】
[比較例品5]
ポリグリセリンF180g、ステアリン酸320g及び苛性ソーダ0.25gを使用した以外は実施例1と同様に操作し、酸価2のポリグリセリン脂肪酸エステル(比較例品5)を得た。エステル化率は35%であった。
【0047】
[比較例品6]
ポリグリセリンA280g、ステアリン酸220g及び苛性ソーダ0.25gを使用した以外は実施例1と同様に操作し、酸価2のポリグリセリン脂肪酸エステル(比較例品6)を得た。エステル化率は15%であった。
【0048】
[比較例品7]
ポリグリセリンA114g、ステアリンサン酸386g及び苛性ソーダ0.25gを使用した以外は実施例1と同様に操作し酸価3のポリグリセリン脂肪酸エステル(比較例品7)を得た。エステル化率は65%であった。
【0049】
≪熱可塑性樹脂組成物及び成形品の作製≫
エチレン−酢酸ビニル共重合体(VAC=5%、MI=3g/10分)100部、熱可塑性樹脂用防曇剤であるポリグリセリン脂肪酸エステル(実施例品1〜4、比較例品1〜7)2部を混合し、二軸押出し機(型式:TP−20T;サーモ・プラスティックス工業社製)で180℃で混練して熱可塑性樹脂組成物とした後、Tダイ法にて厚さ100μmのフィルム状に成形してフィルム(試作品1〜11)を作製した。
【0050】
≪防曇性及び透明性の評価≫
得られたフィルム(試作品1〜11)を用いて、防曇性及び透明性の評価を行った。
(1)低温防曇性の評価
30°の傾斜のついた評価箱(
図1の1)の上面に設けられた窓部(
図1の2)に、得られたフィルム10×27cmを張って覆い、該評価箱を30℃の水を1/2容量程度張った恒温水槽(
図1の3)上に設置し、評価箱を設置した恒温水槽(
図2)を雰囲気温度が5℃の恒温槽の庫内に入れて低温防曇性を評価した。初期の低温防曇性として12時間後のフィルムの状態を、低温防曇性の持続性として1ヶ月後のフィルム状態を目視にて下記評価基準に従って評価した。結果を表2に示す。
[防曇性の評価基準]
◎:フィルム面に水滴付着が殆ど認められない。防曇性が非常に良好である。
○:フィルム面の20%程度に水滴の付着が認められる。防曇性が良好である。
△:フィルム面の50%程度に水滴の付着が認められる。防曇性が悪い。
×:フィルム面の全体に水滴が付着している。防曇効果が認められない。
【0051】
(2)高温防曇性の評価
30°の傾斜のついた評価箱(
図1の1)の上面に設けられた窓部(
図1の2)に、得られたフィルム10×27cmを張って覆い、該評価箱を50℃の温水を1/2容量程度張った恒温水槽(
図1の3)上に設置し、評価箱を設定した恒温水槽(
図2)を雰囲気温度が20℃の恒温槽の庫内に入れて高温防曇性を評価した。初期の高温防曇性として12時間後のフィルムの状態を、高温防曇性の持続性として1ヶ月後のフィルム状態を目視にて「低温防曇性の評価」と同じ評価基準に従って評価した。結果を表2に示す。
【0052】
(3)透明性の評価
得られたフィルムを20℃×65%RHに放置して7日後と30日後のHaze値を濁度計(型式:NDH2000 日本電色社製)を用いて測定し、下記評価基準に従って評価した。結果を表2に示す。
[透明性の評価基準]
◎:Haze値が15%未満
○:Haze値が15%以上、25%未満
△:Haze値が25%以上、35%未満
×:Haze値が35%以上
【0053】
【表2】
【0054】
結果より、防曇剤として実施例品を用いて得たフィルム(試作品1〜4)は、低温及び高温での初期防曇性を有し、更に防曇性を持続した。また、長期間にわたる透明性を維持した。
一方、防曇剤として比較例品1、2を用いて得たフィルム(試作品5、6)は、低温及び高温の初期の防曇性を有しているが、防曇性を持続できず、さらに透明性を維持することができなかった。防曇剤として比較例品3、4、6を用いて得たフィルム(試作品7、8、10)は、低温及び高温の初期の防曇性を有しているが、防曇性を持続できず、さらに透明性を有していなかった。防曇剤として比較例5を用いたフィルム(試作品9)は、低温及び高温の初期の防曇性が無く。経時的な防曇効果も発起することはなかった。防曇剤として比較例7を用いたフィルム(試作品11)は、経時的な防曇効果を発揮したが初期防曇性を発揮しなかった。