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特開2015-36416感光性絶縁樹脂組成物およびこれを用いた製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-36416(P2015-36416A)
(43)【公開日】2015年2月23日
(54)【発明の名称】感光性絶縁樹脂組成物およびこれを用いた製品
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20150127BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20150127BHJP
   C08F 4/04 20060101ALI20150127BHJP
   C08G 59/17 20060101ALI20150127BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20150127BHJP
【FI】
   C08F2/44 B
   H05K1/03 610L
   C08F4/04
   C08G59/17
   C08F290/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-251145(P2013-251145)
(22)【出願日】2013年12月4日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0096210
(32)【優先日】2013年8月13日
(33)【優先権主張国】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100089347
【弁理士】
【氏名又は名称】木川 幸治
(74)【代理人】
【識別番号】100154379
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】リ,ヒュン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジン ウォン
【テーマコード(参考)】
4J011
4J015
4J036
4J127
【Fターム(参考)】
4J011PA07
4J011PA13
4J011PA25
4J011PA27
4J011PA29
4J011PA30
4J011PA36
4J011PA86
4J011PB39
4J011QA22
4J011QA23
4J011QA24
4J011QA25
4J011SA01
4J011SA21
4J011SA84
4J011TA10
4J011VA01
4J015AA01
4J036AD08
4J036AJ14
4J036CA21
4J036CB00
4J036CD11
4J036DA01
4J036EA02
4J036EA04
4J036FA03
4J036HA02
4J036HA12
4J036JA05
4J127AA03
4J127AA04
4J127BB041
4J127BB131
4J127BB221
4J127BC031
4J127BC131
4J127BD191
4J127BE341
4J127BE34Y
4J127BF311
4J127BF31Y
4J127BG051
4J127BG05Y
4J127BG101
4J127BG10Y
4J127BG121
4J127BG12Y
4J127CB152
4J127CB341
4J127CC152
4J127DA12
4J127DA52
4J127FA08
4J127FA38
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低い熱膨張係数及び高い剥離強度の特性を有する感光性絶縁樹脂組成物およびこれを用いた製品を提供する。
【解決手段】2つ以上のアクリル基をアクリレート化合物又はアクリレート化合物と多官能モノマーの混合物である、感光性樹脂50〜95重量%と、アセトアセトキシエチルメタクリレート、エチレンジアミンテトラ酢酸、アミノ酸、有機酸金属塩、金属塩、1,3−ジケトン金属錯塩および金属アルコキシドの中から1種以上選ばれる金属結合剤1〜30重量%と、光硬化開始剤1〜10重量%と、特定のアゾ系熱硬化開始剤1〜15重量%と、を含んでなる感光性絶縁樹脂組成物であり、更にエポキシ樹脂、無機充填剤および熱硬化剤を含んでなるものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光性樹脂、
金属結合剤、
光硬化開始剤、および
熱硬化開始剤を含んでなる、感光性絶縁樹脂組成物。
【請求項2】
前記絶縁樹脂組成物が、50〜95重量%の感光性樹脂、1〜30重量%の金属結合剤、1〜10重量%の光硬化開始剤および1〜15重量%の熱硬化開始剤を含む、請求項1に記載の感光性絶縁樹脂組成物。
【請求項3】
前記感光性樹脂が、2つ以上のアクリル基を有するアクリレート化合物、またはアクリレート化合物と多官能性モノマーとの混合物である、請求項1に記載の感光性絶縁樹脂組成物。
【請求項4】
前記2つ以上のアクリル基を有するアクリレート化合物は、クレゾールノボラック型エポキシアクリレート、ビスフェノールA型エポキシアクリレート、ビスフェノールF型エポキシアクリレート、ビスフェニル型エポキシアクリレート、ウレタン系アクリレート、フェノールノボラック型エポキシアクリレート、およびトリフェノールメタン型エポキシアクリレートよりなる群から1種以上選ばれる、請求項3に記載の感光性絶縁樹脂組成物。
【請求項5】
前記2つ以上のアクリル基を有する多官能性モノマーは、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、グリセリルプロピルトリアクリレート、プロポキシ化グリセリルトリアクリレート、およびジヒドロジシクロペンタ−ジエニルアクリレートよりなる群から1種以上選ばれる、請求項3に記載の感光性絶縁樹脂組成物。
【請求項6】
前記金属結合剤は、アセトアセトキシエチルメタクリレート、エチレンジアミンテトラ酢酸、アミノ酸、有機酸金属塩、金属塩、1,3−ジケトン金属錯塩および金属アルコキシドの中から1種以上選ばれる、請求項1に記載の感光性絶縁樹脂組成物。
【請求項7】
前記金属結合剤が、下記化学式1で表されるアセトアセトキシエチルメタクリレートである、請求項6に記載の感光性絶縁樹脂組成物。
【化1】
【請求項8】
前記光硬化開始剤は、ベンゾフェノン、アセトフェノン、アシルホスフィンオキシド、α−アミノケトンおよびα−ヒドロキシケトンよりなる群から1種以上選ばれる、請求項1に記載の感光性絶縁樹脂組成物。
【請求項9】
前記熱硬化開始剤は、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2,2’−アゾビス[N−(2−プロフェニル)−2−メチルプロピオンアミド]、ジ−tert−ブチルペルオキシド、およびベンゾイルペルオキシドよりなる群から1種以上選ばれる、請求項1に記載の感光性絶縁樹脂組成物。
【請求項10】
前記熱硬化開始剤が、下記化学式2で表される2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)である、請求項9に記載の感光性絶縁樹脂組成物。
【化2】
【請求項11】
前記絶縁樹脂組成物がエポキシ樹脂、無機充填剤および熱硬化剤をさらに含む、請求項1に記載の感光性絶縁樹脂組成物。
【請求項12】
前記エポキシ樹脂は、2つ以上のエポキシ基を有し、前記絶縁樹脂組成物100重量部に対して1〜30重量部含有され、芳香族エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルアクリル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂およびポリエステル型エポキシ樹脂よりなる群から1種以上選ばれる、請求項11に記載の感光性絶縁樹脂組成物。
【請求項13】
前記無機充填剤は、前記絶縁樹脂組成物100重量部に対して20〜85重量部含有され、シリカ(SiO)、タルク(Talc)、硫酸バリウム(BaSO)、チタン酸バリウム(BaTiO)、アルミナ(Al)、粘土、炭酸マグネシウム(MgCO)、炭酸カルシウム(CaCO)、水酸化アルミニウム(Al(OH))およびシリケート(Silicate)よりなる群から1種以上選ばれる、請求項11に記載の感光性絶縁樹脂組成物。
【請求項14】
前記熱硬化剤は、前記絶縁樹脂組成物100重量部に対して0.01〜1重量部含有され、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、ポリアミン硬化剤、ポリスルフィド硬化剤、フェノールノボラック型硬化剤、ビスフェノールA型硬化剤、およびジシアンジアミド硬化剤よりなる群から1種以上選ばれる、請求項11に記載の感光性絶縁樹脂組成物。
【請求項15】
請求項1に記載の感光性絶縁樹脂組成物が基材上に形成された絶縁フィルム。
【請求項16】
前記絶縁フィルムの表面粗さ(Ra)が0.001〜0.5μmであることを特徴とする、請求項15に記載の絶縁フィルム。
【請求項17】
請求項15に記載の絶縁フィルムを回路パターンの形成された基材上にラミネートさせて形成されるプリント基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性絶縁樹脂組成物およびこれを用いた製品に関する。
【背景技術】
【0002】
電子産業の発展に伴い、電子部品の多機能化、高機能化および小型化への要求が急速に高まっている。また、電子部品の軽薄短小化に伴い、電子部品が実装されるプリント基板も、小さい面積に多くの電子製品を集積しなければならない回路パターンの高密度化が求められている。
【0003】
プリント基板の回路パターンが微細化され且つ回路の層間間隔が狭くなるにつれて、誘電損失やショート(short)などの不良、または回路と絶縁体間の密着力が低減して製品の信頼性が低下するという問題点が生じている。
【0004】
よって、プリント基板や半導体パッケージ基板、フレキシブルプリント基板(FPCB)などには、微細な開口パターンを形成することが可能な感光性絶縁フィルムが用いられている。
【0005】
一方、特許文献1には、顔料を使用することなく視認性および隠蔽力を示す感光性樹脂を含む絶縁組成物が開示されているが、この絶縁組成物は、層間接着強度および熱膨張係数の特性を向上させるには限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国公開特許第2012−0107373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明者は、感光性絶縁樹脂組成物において、金属結合剤および熱硬化開始剤を含む組成物を用いて製造された製品が低い熱膨張係数を有し、低い粗度でも回路パターンとの密着力が高いことを見出し、これに基づいて本発明の完成に至った。
【0008】
したがって、本発明の目的は、低い熱膨張係数および高い剥離強度の特性を有する感光性絶縁樹脂組成物を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、前記樹脂組成物から製造される、低い熱膨張係数および高い剥離強度の特性を有する絶縁フィルムを提供することにある。
【0010】
本発明の別の目的は、前記絶縁フィルムを備えるプリント基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明のある観点によれば、感光性樹脂、金属結合剤、光硬化開始剤、および熱硬化開始剤を含んでなる、感光性絶縁樹脂組成物(以下、「第1発明」という)を提供する。
【0012】
第1発明において、前記絶縁樹脂組成物は、50〜95重量%の感光性樹脂、1〜30重量%の金属結合剤、1〜10重量%の光硬化開始剤、および1〜15重量%の熱硬化開始剤を含んでなる。
【0013】
第1発明において、前記感光性樹脂は、2つ以上のアクリル基を有するアクリレート化合物、またはアクリレート化合物と多官能性モノマーとの混合物である。
【0014】
第1発明において、前記2つ以上のアクリル基を有するアクリレート化合物は、クレゾールノボラック型エポキシアクリレート、ビスフェノール型エポキシアクリレート、ビスフェノールF型エポキシアクリレート、ビスフェニル型エポキシアクリレート、ウレタン系アクリレート、フェノールノボラック型エポキシアクリレート、およびトリフェノールメタン型エポキシアクリレートよりなる群から1種以上選ばれる。
【0015】
第1発明において、前記2つ以上のアクリル基を有する多官能性モノマーは、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、グリセリルプロピルトリアクリレート、プロポキシ化グリセリルトリアクリレート、およびジヒドロジシクロペンタ−ジエニルアクリレートよりなる群から1種以上選ばれる。
【0016】
第1発明において、前記金属結合剤は、アセトアセトキシエチルメタクリレート、エチレンジアミンテトラ酢酸、アミノ酸、有機酸金属塩、金属塩、1,3−ジケトン金属錯塩
、および金属アルコキシドから1種以上選ばれる。
【0017】
第1発明において、前記金属結合剤は、下記化学式1で表されるアセトアセトキシエチルメタクリレートである。
【0018】
【化1】
【0019】
第1発明において、前記光硬化開始剤は、ベンゾフェノン、アセトフェノン、アシルホスフィンオキシド、α−アミノケトンおよびα−ヒドロキシケトンよりなる群から1種以上選ばれる。
【0020】
第1発明において、前記熱硬化開始剤は、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2,2’−アゾビス[N−(2−プロフェニル)−2−メチルプロピオンアミド]、ジ−tert−ブチルペルオキシド、およびベンゾイルペルオキシドよりなる群から1種以上選ばれる。
【0021】
第1発明において、前記熱硬化開始剤は、下記化学式2で表される2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)である。
【0022】
【化2】
【0023】
第1発明において、前記絶縁樹脂組成物は、エポキシ樹脂、無機充填剤および熱硬化剤をさらに含む。
【0024】
第1発明において、前記エポキシ樹脂は、2つ以上のエポキシ基を有し、前記絶縁樹脂組成物100重量部に対して1〜30重量部含有され、芳香族エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルアクリル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂およびポリエステル型エポキシ樹脂よりなる群から1種以上選ばれる。
【0025】
第1発明において、前記無機充填剤は、前記絶縁樹脂組成物100重量部に対して20〜85重量部含有され、シリカ(SiO)、タルク(Talc)、硫酸バリウム(BaSO)、チタン酸バリウム(BaTiO)、アルミナ(Al)、粘土、炭酸マグネシウム(MgCO)、炭酸カルシウム(CaCO)、水酸化アルミニウム(Al(OH))およびシリケート(Silicate)よりなる群から1種以上選ばれる。
【0026】
第1発明において、前記熱硬化剤は、前記絶縁樹脂組成物100重量部に対して0.01〜1重量部含有され、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、ポリアミン硬化剤、ポリスルフィド硬化剤、フェノールノボラック型硬化剤、ビスフェノールA型硬化剤、およびジシアンジアミド硬化剤よりなる群から1種以上選ばれる。
【0027】
本発明の他の観点によれば、前記第1発明に係る感光性絶縁樹脂組成物を基材上に塗布および硬化させて形成される、絶縁フィルム(以下、「第2発明」という)を提供する。
【0028】
第2発明において、前記絶縁フィルムの表面粗さ(Ra)が0.001〜0.5μmである。
【0029】
本発明の別の観点によれば、前記第2発明の絶縁フィルムを回路パターンの形成された基材上にラミネートさせて形成される、プリント基板(以下、「第3発明」という)を提供する。
【発明の効果】
【0030】
本発明の代表的な具現例に係る感光性絶縁樹脂組成物において、金属結合剤および熱硬化開始剤を含む前記組成物を用いて製造された製品は、低い熱膨張係数および高い剥離強度を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一具現例に係る絶縁フィルムが適用可能な一般なプリント基板の断面図である。
図2】本発明の無機充填剤を含む実施例2および比較例2に係る絶縁フィルムの剥離強度(peel strength)測定値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明をさらに具体的に説明する前に、本明細書及び特許請求の範囲に使用された用語又は単語は、通常的且つ辞典的な意味に限定されてはならず、発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に立脚して、本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈されなければならない。よって、本明細書に記載された実施例の構成は、本発明の好適な一例に過ぎず、本発明の技術的思想をすべて代弁するものではない。このため、本出願時点にこれらを代替することが可能な様々な均等物及び変形例があり得ることを理解すべきである。
【0033】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を容易に実施し得るように、本発明の好適な実施例を詳細に説明する。尚、本発明を説明するにあたり、本発明の要旨を不明瞭にする可能性がある係る公知技術についての詳細な説明は省略する。
【0034】
(感光性樹脂)
本発明の代表的な具現例に係る感光性樹脂組成物は、感光性樹脂を含み、その使用量は特に限定されるものではないが、好ましくは50〜95重量%である。前記感光性樹脂の使用量が50重量%未満の場合には、樹脂組成物の物性が低下するおそれがあり、前記感光性樹脂の使用量が95重量%を超える場合には、未反応物質が生じるか、他の組成物の使用量が減少してフィルムの成形に問題点が生じるおそれもある。本発明に使用される前記感光性樹脂として、2つ以上のアクリル基を有するアクリレート化合物と多官能性モノマーとの混合物が選択できる。
【0035】
前記2つ以上のアクリル基を有するアクリレート化合物は、クレゾールノボラック型エポキシアクリレート、ビスフェノールA型エポキシアクリレート、ビスフェノールF型エポキシアクリレート、ビスフェニル型エポキシアクリレート、ウレタン系アクリレート、フェノールノボラック型エポキシアクリレート、およびトリフェノールメタン型エポキシアクリレートよりなる群から1種以上選択できる。
【0036】
前記2つ以上のアクリル基を有する多官能性モノマーは、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(dipentaerythritol hexaacrylate)、グリセリルプロピルトリアクリレート、プロポキシ化グリセリルトリアクリレート(propoxylated glyceryl triacrylate)、およびジヒドロジシクロペンタ−ジエニルアクリレート(dihydro dicyclopenta−dienyl acrylate)よりなる群から1種以上選択できる。
【0037】
(金属結合剤)
本発明の代表的な具現例に係る感光性絶縁樹脂組成物は、プリント基板の絶縁層と金属層間の接着力を向上させるために、金属結合剤を含む。本発明に使用される前記金属結合剤は、アセトアセトキシエチルメタクリレート(acetoacetoxyethyl methacrylate)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、アミノ酸、有機酸金属塩、金属塩、1,3−ジケトン金属錯塩、および金属アルコキシドの中から1種以上選ばれ、特に、下記化学式1で表されるアセトアセトキシエチルメタクリレートを使用することが好ましい。
【0038】
【化3】
【0039】
前記金属結合剤は、絶縁樹脂組成物内に含まれて金属と配合結合を行うことにより、絶縁層と金属層間の接着力を強化させることができる。本発明の樹脂組成物内において、金属結合剤の使用量は、特に限定されるものではないが、1〜30重量%であり、特に、5〜30重量%が好ましい。前記金属結合剤の使用量が1重量%未満の場合には、絶縁層と金属層間の接着力が低下するおそれがあり、前記金属結合剤の使用量が30重量%を超える場合には、絶縁層と金属層間の接着力がもはや向上せず、他の組成物の使用量が減少してフィルムの成形に問題点が発生するおそれもある。
【0040】
(光硬化開始剤)
本発明の代表的な具現例に係る感光性絶縁樹脂組成物は、感光性樹脂の硬化反応を行うために、光硬化開始剤を含む。本発明に使用される前記光硬化開始剤は、ベンゾフェノン、アセトフェノン、アシルホスフィンオキシド、α−アミノケトンおよびα−ヒドロキシケトンよりなる群から1種以上選択でき、具体的な例としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(bis(2,4,6−trimethylbenzoyl)−phenylphosphineoxide)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(1−hydroxy−cyclohexyl−phenyl−ketone)、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロフェニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(2−hydroxy−1−{4−[4−(2−hydroxy−2−methyl−prophenyl)−benzyl]−phenyl}−2−methyl−propan−1−one)、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(4,4’−bis(diethylamino)benzophenone)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1(2−benzyl−2−dimethylamino−1−(4−morpholinophenyl)−butanone−1)、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキシド(2,4,6−trimethylbenzoyl−diphenylphosphine oxide)、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン(2−methyl−1−[4−(methylthio)phenyl]−2−morpholinopropan−1−one)、および2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1(2−benzl−2−dimethylamino−1−(4−morpholinophenyl)−butanone−1)を使用することができる。
【0041】
前記光硬化開始剤の使用量は、特に限定されるものではないが、好ましくは1〜10重量%である。前記光硬化開始剤の使用量が1重量%未満の場合には、感光性樹脂の硬化反応が円滑に行われず、未反応物質が組成物内に残留するおそれもあり、前記光硬化開始剤の使用量が10重量%を超える場合には、他の組成物の使用量が減少してフィルムの成形に問題点が発生するおそれもある。
【0042】
(熱硬化開始剤)
本発明の代表的な具現例に係る感光性絶縁樹脂組成物は、未反応物質を硬化させて絶縁フィルムの機械的物性を向上させかつ接着力を向上させるために、熱硬化開始剤を含む。本発明に使用される前記熱硬化開始剤は、官能基を1つ以上含むことを特徴とするアゾ(zeo)系またはペルオキシド(peroxide)系開始剤であって、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)(2,2’−azobis(N−butyl−2−methylpropionamide)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)(2,2’−azobis(N−cyclohexyl−2−methylpropionamide)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(2,2’−azobis(N−methoxy−2,4−dimethylvaleronitrile)、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド(1−[(1−cyano−1−methylethyl)azo]formamide)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロフェニル)−2−メチルプロピオンアミド](2,2’−azobis[N−(2−prophenyl)−2−methylpropionamide]、ジ−tert−ブチルペルオキシド(di−tert−butylperoxide)、およびベンゾイルペルオキシド(benzoylperoxide)よりなる群から1種以上選ばれ、特に、下記化学式2で表される2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)を使用することが好ましい。
【0043】
【化4】
【0044】
前記熱硬化開始剤の使用量は、特に限定されるものではないが、1〜15重量%が好ましい。前記熱硬化開始剤の使用量が1重量%未満の場合には、前記樹脂組成物内の未反応物質を硬化させるのに不十分であるおそれがあり、前記熱硬化開始剤の使用量が15重量%を超える場合には、他の組成物の使用量が減少してフィルムの成形に問題点が発生するおそれがあり、前記組成物内の未反応物質がもはや残っていないので、硬化反応による効果が得られないおそれもある。また、前記絶縁樹脂組成物に金属結合剤を添加することにより、層間剥離強度は改善されるものの、前記金属結合剤を添加する分だけ他の組成物の使用量が減少して熱膨張係数の特性が低下する傾向がある。これを補完するために、熱硬化開始剤を前記絶縁樹脂組成物に添加することにより、層間剥離強度および熱膨張係数の特性を向上させることができる。
【0045】
(エポキシ樹脂)
本発明の代表的な具現例に係る感光性絶縁樹脂組成物は、前記樹脂組成物の結合力を増加させるために、エポキシ樹脂をさらに含むことができる。前記エポキシ樹脂は、2つ以上のエポキシ基を含んでおり、特に限定されるものではないが、前記樹脂組成物100重量部に対して1〜30重量部が使用できる。前記エポキシ樹脂の使用量が1重量部未満の場合には、樹脂組成物間の結合力が弱くなるおそれがあり、前記エポキシ樹脂の使用量が30重量部を超える場合には、硬化していない未反応エポキシ樹脂が組成物内に存在して物性の低下が生じるおそれもある。
【0046】
前記エポキシ樹脂の具体的な例としては、芳香族エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルアクリル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、およびポリエステル型エポキシ樹脂よりなる群から1種以上選択できる。
【0047】
(無機充填剤)
本発明の代表的な具現例に係る感光性絶縁樹脂組成物は、前記樹脂組成物の熱膨張係数を低めるために、無機充填剤をさらに含むことができる。前記無機充填剤は、特に限定されるものではないが、前記樹脂組成物100重量部に対して20〜85重量部含有され、シリカ(SiO)、タルク(Talc)、硫酸バリウム(BaSO)、チタン酸バリウム(BaTiO)、アルミナ(Al)、粘土、炭酸マグネシウム(MgCO)、炭酸カルシウム(CaCO)、水酸化アルミニウム(Al(OH))およびシリケート(Silicate)よりなる群から1種以上選択できる。
【0048】
前記無機充填剤の使用量が20重量部未満の場合には、熱膨張係数が増加するおそれがあり、前記無機充填剤の使用量が85重量部を超える場合には、フィルムの成形が難しいか、露光または現像などのフォトリソグラフィー加工性が阻害されるおそれもある。また、無機充填剤は、前記樹脂組成物に単独で添加されてもよいが、分散性および樹脂間の結合力を向上させるために、シランカップリング剤または分散剤と併用して添加することが好ましい。
【0049】
(熱硬化剤)
本発明の代表的な具現例に係る感光性絶縁樹脂組成物は、熱硬化剤をさらに含むことができる。前記熱硬化剤は、特に限定されるものではないが、前記樹脂組成物100重量部に対して0.01〜1重量部含有され、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、ポリアミン硬化剤、ポリスルフィド硬化剤、フェノールノボラック型硬化剤、ビスフェノールA型硬化剤、およびジシアンジアミド硬化剤よりなる群から1種以上選択できる。
【0050】
前記熱硬化剤は、エポキシ樹脂の硬化反応を起こし、感光性樹脂も硬化反応させることが可能な活性エステル化合物、ベンゾオキサジン化合物、マレイミド化合物、熱硬化性陽イオン重合触媒、光硬化性陽イオン重合開始剤、およびシアネートエステル樹脂から1種以上使用できる。
【0051】
本発明の代表的な具現例に係る感光性絶縁樹脂組成物を用いてプリント基板の絶縁フィルムを製造することができる。前記製造された絶縁フィルムの表面粗さ(Ra)は、0.001〜0.5μmの範囲である。前記絶縁フィルムの表面粗さ(Ra)が0.001μm未満の場合には、金属層との接着力が発生しないため容易に剥離してしまうおそれがあり、前記絶縁フィルムの表面粗さ(Ra)が0.5μmを超える場合には、絶縁フィルム自体の厚さが薄いため前記フィルムの厚さを超えることになり、フィルムの成形に問題点が発生するおそれもある。
【0052】
一般に粗度が低い絶縁フィルムを使用すると、金属層との接着力が低下するため、基板では絶縁膜の粗度を高めて接着力を保っている。ところが、本発明の感光性絶縁樹脂組成物を用いて製造された絶縁フィルムは、金属結合剤を含んでおり、これにより低い粗度においても金属層との接着力が維持できる。
【0053】
図1は、本発明の樹脂組成物を用いて製造された絶縁フィルムが適用できる一般なプリント基板の断面図である。
【0054】
すなわち、プリント基板100は、大きく絶縁層131と回路層132から構成される。図1を参照すると、絶縁体110の両面に回路層132が形成され、このような回路層132上にさらにビルドアップフィルムを用いて絶縁層131を形成し、その絶縁層131上にさらに回路層132を形成して連続的なビルドアップ層130を構成する。
【0055】
このようなプリント基板100は、必要に応じてキャパシタ140、抵抗素子150またはその他の電子部品120を含んでいてもよく、最外郭には回路基板を保護するために半田レジスト層160を備えている。このようなプリント基板100は、実装される電子製品によっては外部接続手段170を備えることもあり、パッド層180を備えることもある。本発明の代表的な一具現例によって製作されたプリント基板100は、熱膨張係数特性に優れるうえ、絶縁層と金属層間の剥離強度にも非常に優れる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例および比較例によって本発明をさらに具体的に説明する。ところが、これらの実施例および比較例は本発明の範疇を限定するものではない。
【0057】
(絶縁フィルムの製造)
[実施例1]
クレゾールノボラックエポキシアクリレート160g、ビスフェノールAノボラックエポキシ樹脂42g、グリセリルプロピルトリアクリレート(GPTA)19g、アセトアセトキシエチルメタクリレート11gおよび1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(Irgacure184D)3gを混合した。ここに、熱硬化剤としての2−エチル−4−メチルイミダゾール12gおよび熱硬化開始剤としての2,2’−アゾビス(N−ブチル−メチルプロピオンアミド)5gを溶解させて樹脂バーニッシュを製造した。その後、バーコータを用いて前記樹脂バーニッシュを厚さ約38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に塗布および半硬化(B−stage)させて厚さ約30μmの絶縁フィルムを製造した。
【0058】
[実施例2]
ビスフェノールAノボラックエポキシ樹脂42g、クレゾールノボラックエポキシアクリレート160g、グリセリルプロピルトリアクリレート(GPTA)19g、アセトアセトキシエチルメタクリレート11g、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(Irgacure184D)3gおよびメチルエチルケトン溶媒に分散させた平均粒径0.3μmの球状シリカ(SiO)485gを混合し、ビーズミル(bead mill)を用いて分散させた。ここに、熱硬化剤としての2−エチル−4−メチルイミダゾール12gおよび熱硬化開始剤としての2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピロンアミド)10gを溶解させて樹脂バーニッシュを製造した。その後、バーコータを用いて前記樹脂バーニッシュを厚さ約38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に塗布および半硬化(B−stage)させて厚さ30μmの絶縁フィルムを製造した。
【0059】
[比較例1]
ビスフェノールA型エポキシ樹脂80g、クレゾールノボラックエポキシアクリレート160g、酸変性型エポキシアクリレート360g、リン系難燃性エポキシ樹脂30gおよび1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(Irgacure184D)5gを混合した。ここに、熱硬化剤としての2−エチル−4−メチルイミダゾール15gを溶解させて樹脂バーニッシュを製造した。その後、バーコータを用いて前記樹脂バーニッシュを厚さ約38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に塗布および半硬化させて厚さ約30μmの絶縁フィルムを製造した。
【0060】
[比較例2]
ビスフェノールA型エポキシ樹脂80g、クレゾールノボラックエポキシアクリレート240g、酸変性型エポキシアクリレート400g、リン系難燃性エポキシ樹脂40g、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(Irgacure184D)3g、およびメチルエチルケトン溶媒に分散させた平均粒径0.3μmの球状シリカ(SiO)923gを混合し、ビーズミル(bead mill)を用いて分散させた。ここに、熱硬化剤としての2−エチル−4−メチルイミダゾール12gを溶解させて樹脂バーニッシュを製造した。その後、バーコータを用いて前記樹脂バーニッシュを厚さ約38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に塗布および半硬化(B−stage)させて厚さ約30μmの絶縁フィルムを製造した。
【0061】
(プリント基板の製造)
[実施例3]
両面に銅箔が積層されている内部層回路基板を約120℃の温度で30分間乾燥させた後、実施例2で製造された絶縁フィルムをMorton CVA 725真空ラミネーターを用いて約90℃、2MPaの条件で約20秒間両面に真空ラミネートさせることにより、プリント基板を製造した。
【0062】
実施例1、2および比較例1、2で製作された絶縁フィルムの物性評価を下記表1に示す。
【0063】
熱膨張係数は、熱機械分析装置(Thermo Mechanical Analysis、TMA)を用いて温度範囲50〜130℃および180〜250℃の2つの区間で測定した。その測定結果を引張加重法で熱機械分析した。絶縁フィルムの試片を前記装置に取り付けた後、昇温速度5℃/分の測定条件で測定した。測定における熱膨張係数α1(50〜130℃)およびα2(180〜250℃)区間の平均線熱膨張率(ppm)を算出した。剥離強度の測定および評価は、引張強度測定機(Univeral Testing Machine、UTM)を用いて銅張層および絶縁層間の剥離強度を測定することにより行った。
【0064】
【表1】
【0065】
表1から分かるように、実施例1および比較例1は、無機充填剤を含んでいない絶縁フィルムを用いて測定し、実施例2および比較例2は、無機充填剤を含む絶縁フィルムを用いて測定した。実施例1の熱膨張係数および剥離強度は、比較例1のそれより優れることが分かり、実施例2の熱膨張係数および剥離強度も比較例2のそれより優れることが分かる。実施例1および2で製作された絶縁フィルムは、熱硬化開始剤および金属結合剤を含むことにより、熱膨張係数および剥離強度特性が向上したことを確認することができた。
【0066】
また、図2に示すように、無機充填剤を含む実施例2および比較例2に係る絶縁フィルムの剥離強度測定値をグラフで示した。
【0067】
このグラフより、実施例2で製造された絶縁フィルムが比較例2で製造された絶縁フィルムに比べて向上した剥離強度を有することを肉眼で確認することができる。したがって、本発明に係る絶縁フィルムは、基板材料として適した水準であることが分かる。
【0068】
以上、本発明を具体的な実施例に基づいて詳細に説明したが、これは本発明を具体的に説明するためのものであり、本発明はこれに限定されず、当該分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想内にての変形や改良が可能であることは明白であろう。
【0069】
本発明の単純な変形乃至変更はいずれも本発明の領域に属するものであり、本発明の具体的な保護範囲は添付の特許請求の範囲により明確になるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、感光性絶縁樹脂組成物およびこれを用いた製品に適用可能である。
【符号の説明】
【0071】
100 プリント基板
110 絶縁体
120 電子部品
130 ビルドアップ層
131 絶縁層
132 回路層
140 キャパシタ
150 抵抗素子
160 半田レジスト層
170 外部接続手段
180 パッド層
図1
図2