特開2015-36568(P2015-36568A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シンフォニアテクノロジー株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2015036568-電磁ブレーキ 図000003
  • 特開2015036568-電磁ブレーキ 図000004
  • 特開2015036568-電磁ブレーキ 図000005
  • 特開2015036568-電磁ブレーキ 図000006
  • 特開2015036568-電磁ブレーキ 図000007
  • 特開2015036568-電磁ブレーキ 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-36568(P2015-36568A)
(43)【公開日】2015年2月23日
(54)【発明の名称】電磁ブレーキ
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/12 20060101AFI20150127BHJP
   F16D 55/28 20060101ALI20150127BHJP
   F16D 65/14 20060101ALI20150127BHJP
   F16D 65/18 20060101ALI20150127BHJP
【FI】
   F16D65/12 Y
   F16D55/28 B
   F16D65/12 H
   F16D65/12 R
   F16D65/14 122
   F16D65/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-167808(P2013-167808)
(22)【出願日】2013年8月12日
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089196
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 良之
(74)【代理人】
【識別番号】100104226
【弁理士】
【氏名又は名称】須原 誠
(72)【発明者】
【氏名】長森 優太
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AA43
3J058AA48
3J058AA53
3J058AA58
3J058AA69
3J058AA73
3J058AA78
3J058AA79
3J058AA88
3J058BA21
3J058CB12
3J058CB16
3J058CC07
3J058CC13
3J058CC72
3J058CC77
3J058FA01
3J058FA42
(57)【要約】
【課題】ブレーキトルクを十分に確保できるノンバックラッシタイプの電磁ブレーキを提供することである。
【解決手段】ディスク部材20を、ロータ軸1とハブ10との間にかしめて固定される筒部21と、その外周側の弾性変形可能なディスク部22とを備え、ディスク部22が弾性変形によって軸方向へ移動可能なものとし、弾性変形するディスク部22の両面をアーマチュア4と固定プレート3とで挟持することにより、ブレーキトルクを十分に確保できるノンバックラッシタイプの電磁ブレーキを提供できるようにした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被制動回転軸の外周側に固定したヨークと、
前記被制動回転軸の軸方向で前記ヨークと対向させて固定した固定プレートと、
前記ヨークと前記固定プレートとの間で軸方向へ移動可能に配置したアーマチュアと、
前記ロータ軸と一緒に回転し、前記アーマチュアと前記固定プレートとの間で軸方向へ移動可能なディスク部材と、
前記アーマチュアを前記固定プレート側へ付勢するスプリングと、
前記ヨークに組み込まれ、通電時に前記アーマチュアを前記ヨーク側へ磁気吸引する励磁コイルとを備え、
前記スプリングで付勢されるアーマチュアで前記ディスク部材を前記固定プレートとの間に挟持し、前記励磁コイルに通電することにより、前記スプリングの付勢力に抗して前記アーマチュアを前記ヨーク側へ吸引する電磁ブレーキにおいて、
前記ディスク部材を、前記ロータ軸側に固定される筒部と、その外周側に連なる弾性変形可能なディスク部とを備えたものとし、前記ディスク部を弾性変形によって前記アーマチュアと前記固定プレートとの間で軸方向へ移動させるようにしたことを特徴とする電磁ブレーキ。
【請求項2】
前記ディスク部材を周方向に分割し、前記ディスク部の少なくとも片面側にリング部材を固着して、前記分割したディスク部材を一体化した請求項1に記載の電磁ブレーキ。
【請求項3】
前記ディスク部の内周側に、その外周側と前記筒部とを連結する複数の連結部を残す抜き部を設けた請求項1または2に記載の電磁ブレーキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁ブレーキに関し、特にノンバックラッシタイプの電磁ブレーキに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や産業用機器に用いられる小型のモータに内蔵される電磁ブレーキには、被制動回転軸としてのロータ軸の外周側に固定したヨークと、ロータ軸の軸方向でヨークと対向させて固定した固定プレートと、ヨークと固定プレートとの間で軸方向へ移動可能に配置したアーマチュアと、ロータ軸と一緒に回転し、アーマチュアと固定プレートとの間で軸方向へ移動可能なディスク部材と、アーマチュアを固定プレート側へ付勢するスプリングと、ヨークに組み込まれ、通電時にアーマチュアをヨーク側へ磁気吸引する励磁コイルとを備えたものが多く用いられている(例えば、特許文献1参照)。この電磁ブレーキは、スプリングでアーマチュアを固定プレート側へ付勢することにより、固定プレートとアーマチュアでディスク部材の両面を挟持してブレーキを作動させるとともに、励磁コイルに通電することにより、スプリングの付勢力に抗してアーマチュアをヨーク側へ吸引し、ブレーキを解除する。
【0003】
この種の電磁ブレーキは、ロータ軸と一緒に回転するディスク部材を軸方向へ移動可能とするために、ロータ軸に固定したハブとディスク部材との間にクリアランスを設ける必要があり、このクリアランスがロータ軸のバックラッシとなって、ロータ軸の加減速時等にバックラッシ音が発生する問題がある。また、ハブの外周面と接触するディスク部材の内周部が摩耗しやすく、この摩耗の進行に伴って、バックラッシ量が増加する問題もある。
【0004】
このような問題に対して、軸方向へ移動可能なディスク部材と固定プレートを省略し、ばねで付勢されるアーマチュアをロータ軸に固定したハブまたはプレートに直接押圧してブレーキを作動させるノンバックラッシタイプの電磁ブレーキが提案されている(例えば、特許文献2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−31170号公報
【特許文献2】特開2002−5205号公報
【特許文献3】特開2002−345206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2、3に記載されたノンバックラッシタイプの電磁ブレーキは、特許文献1に記載されたバックラッシタイプのものが、ディスク部材の両面に摩擦ブレーキ面が形成されるのに対して、摩擦ブレーキ面がアーマチュアとハブまたはプレートとの間の1面にしか形成されない。このため、ブレーキトルクが不足する問題がある。
【0007】
そこで、本発明の課題は、ブレーキトルクを十分に確保できるノンバックラッシタイプの電磁ブレーキを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、被制動回転軸の外周側に固定したヨークと、前記被制動回転軸の軸方向で前記ヨークと対向させて固定した固定プレートと、前記ヨークと前記固定プレートとの間で軸方向へ移動可能に配置したアーマチュアと、前記ロータ軸と一緒に回転し、前記アーマチュアと前記固定プレートとの間で軸方向へ移動可能なディスク部材と、前記アーマチュアを前記固定プレート側へ付勢するスプリングと、前記ヨークに組み込まれ、通電時に前記アーマチュアを前記ヨーク側へ磁気吸引する励磁コイルとを備え、前記スプリングで付勢されるアーマチュアで前記ディスク部材を前記固定プレートとの間に挟持し、前記励磁コイルに通電することにより、前記スプリングの付勢力に抗して前記アーマチュアを前記ヨーク側へ吸引する電磁ブレーキにおいて、前記ディスク部材を、前記ロータ軸側に固定される筒部と、その外周側に連なる弾性変形可能なディスク部とを備えたものとし、前記ディスク部を弾性変形によって前記アーマチュアと前記固定プレートとの間で軸方向へ移動させる構成を採用した。
【0009】
すなわち、ディスク部材を、ロータ軸側に固定される筒部と、その外周側に連なる弾性変形可能なディスク部とを備えたものとし、ディスク部を弾性変形によってアーマチュアと固定プレートとの間で軸方向へ移動させることにより、弾性変形するディスク部の両面をアーマチュアと固定プレートとで挟持するようにして、ブレーキトルクを十分に確保できるノンバックラッシタイプの電磁ブレーキを提供できるようにした。
【0010】
前記ディスク部材を周方向に分割し、前記ディスク部の少なくとも片面側にリング部材を固着して、前記分割したディスク部材を一体化することにより、筒部とディスク部を有するディスク部材を板材のプレス加工等によって容易に形成できるとともに、アーマチュアと固定プレートとで挟持されるディスク部を補強することができる。
【0011】
前記ディスク部の内周側に、その外周側と前記筒部とを連結する複数の連結部を残す抜き部を設けることにより、ディスク部の弾性変形を容易にして、ディスク部をスムーズに軸方向へ移動させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る電磁ブレーキは、ディスク部材を、ロータ軸側に固定される筒部と、その外周側に連なる弾性変形可能なディスク部とを備えたものとし、ディスク部を弾性変形によってアーマチュアと固定プレートとの間で軸方向へ移動させるようにしたので、ブレーキトルクを十分に確保できるノンバックラッシタイプの電磁ブレーキとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】電磁ブレーキの実施形態を示す縦断側面図
図2図1の右方からの正面図
図3】(a)は図1のディスク部材を示す正面図、(b)は(a)の側面図
図4図1のハブの正面図
図5図3のディスク部材の分割部となる素材を示す平面図
図6】(a)、(b)は、それぞれブレーキ入と切の状態を示す図1の要部拡大縦断側面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。この電磁ブレーキは小型のモータに内蔵されるものであり、図1および図2に示すように、被制動回転軸としてのロータ軸1の外周側に固定されたヨーク2と、ロータ軸1の軸方向でヨーク2と対向させて固定した固定プレート3と、ヨーク2と固定プレート3との間で軸方向へ移動可能に配置したアーマチュア4と、ロータ軸1と一緒に回転し、アーマチュア4と固定プレート3との間で軸方向へ移動可能なディスク部材20とを備えている。ヨーク2には、リード線5aからの通電でアーマチュア4を磁気吸引する励磁コイル5と、アーマチュア4を固定プレート3側へ押圧付勢するスプリングとしてのコイルばね6とが組み込まれている。
【0015】
前記固定プレート3は、コイルばね6を組み込んだヨーク2の前面と所定の間隔を開けて、カラー7を介して3本のねじ8でヨーク2の前面に固定されている。カラー7とねじ8の数は3本に限定されることはない。図示は省略するが、アーマチュア4は、3本のカラー7に案内されて軸方向に移動する。また、ロータ軸1には、後述するディスク部材20の筒部21を固定するハブ10が取り付けられている。
【0016】
図3(a)、(b)に示すように、前記ディスク部材20は、ロータ軸1とハブ10との間にかしめて固定される筒部21と、その外周側の弾性変形可能なディスク部22とを備え、周方向に3つの分割部20aに等分割されている。各分割部20aは弾性変形可能な板ばねで形成されている。
【0017】
前記ディスク部22には、外径側の環状部22aと筒部21を連結する120°の位相の3本の連結部22bを残すように、抜き部23が設けられ、環状部22aは筒部21の一方向に張り出す張出部24と連結部22bを介して筒部21と連結されている。また、各分割部20aの筒部21を形成する部分は、張出部24に連なる平坦部21aと、その両側のかしめ部21bとからなる。
【0018】
前記3分割されたディスク部材20の環状部22aの両面側にはリング部材25が固着され、分割されたディスク部材20が一体化されている。リング部材25は環状部22aの片面側のみに固着してもよい。ディスク部材20は、後述するように、リング部材25を介して環状部22aをアーマチュア4と固定プレート3との間に挟持される。
【0019】
図4に示すように、前記ハブ10は、周方向の1箇所に割部10aが設けられ、ボルト穴11に挿入されるボルト12でロータ軸1に締め付けられるようになっている。ハブ10の内周面には、周方向の3箇所に平坦な凹部13が等間隔で設けられている。図中に1点鎖線で示すように、筒部21を形成する各分割部20aの平坦部21aは凹部13に嵌め込まれ、ボルト12を締め付けることにより、その両側のかしめ部21bが、ロータ軸1の外周面とハブ10の内周面との間にかしめ付けられるようになっている。
【0020】
図5に示すように、前記分割部20aの素材は、薄い板ばね材の打ち抜きによって、筒部21、環状部22a、連結部22bおよび張出部24に相当する部分が形成されている。この素材は、図中に矢印で示すように、筒部21相当部を2本の平行な折り曲げ線Aに沿って内折りするとともに、連結部22bを折り曲げ線Bに沿って立ち上げるように折り曲げることにより、プレス加工等によって、容易に成形することができる。
【0021】
図6(a)、(b)は、上述した電磁ブレーキを入切したときの状態を示す。図6(a)は、励磁コイル5への通電を止めてブレーキを入とした状態であり、コイルばね6で付勢されたアーマチュア4が固定プレート3側へ移動して、ディスク部材20の環状部22aがリング部材25を介して固定プレート3との間に両面を挟持されている。このとき、抜き部23で残された断面積の小さい連結部22bは、容易に固定プレート3側へ傾斜するように弾性変形し、環状部22aが固定プレート3側へスムーズに移動する。
【0022】
図6(b)は、励磁コイル5に通電してブレーキを切とした状態であり、励磁コイル5の磁気吸引力がコイルばね6の付勢力に打ち勝って、アーマチュア4がヨーク2側へ移動している。このとき、アーマチュア4による押圧を解放されたディスク部材20は、連結部22bが弾性復元力により元の垂直な位置に戻る。従って、ブレーキ切となってロータ軸1が回転しても、ロータ軸1と一緒に回転するディスク部材20が固定プレート3やアーマチュア4と接触する恐れはない。
【0023】
上述した電磁ブレーキは、ディスク部材20をねじ等を用いることなくロータ軸1に固定できるので、自動車の補機等に用いられる小型のモータにも容易に組み込むことができる。また、ディスク部材20は断面積の小さい連結部22bで容易に弾性変形するので、小径のものであっても、環状部22aを十分に軸方向へ移動させることができる。
【0024】
上述した実施形態では、ディスク部材の筒部をハブでかしめ付けることにより、ディスク部材をロータ軸側に固定したが、筒部の固定方法は実施形態のものに限定されることはなく、筒部を外径側からロータ軸またはハブにねじ等で固定することもできる。
【0025】
上述した実施形態では、ディスク部材を周方向に3分割したが、ディスク部材の分割数は3分割に限定されることはない。また、分割しない一体のものとすることもできる。
【符号の説明】
【0026】
1 ロータ軸
2 ヨーク
3 固定プレート
4 アーマチュア
5 励磁コイル
5a リード線
6 コイルばね
7 カラー
8 ねじ
10 ハブ
10a 割部
11 ボルト穴
12 ボルト
13 凹部
20 ディスク部材
20a 分割部
21 筒部
21a 平たん部
21b かしめ部
22 ディスク部
22a 環状部
22b 連結部
23 抜き部
24 張出部
25 リング部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6