(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-37907(P2015-37907A)
(43)【公開日】2015年2月26日
(54)【発明の名称】回転ロック機構付きキャスター
(51)【国際特許分類】
B60B 33/00 20060101AFI20150130BHJP
【FI】
B60B33/00 J
B60B33/00 U
B60B33/00 501Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-147997(P2013-147997)
(22)【出願日】2013年7月16日
(71)【出願人】
【識別番号】000102234
【氏名又は名称】ウチヱ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123869
【弁理士】
【氏名又は名称】押田 良隆
(72)【発明者】
【氏名】内山 稔章
(57)【要約】
【課題】 キャスター本体の旋回停止と車輪の制動(回動停止)を同時に行うことができるダブルロック機能を有する回転ロック機構付きキャスターの提供。
【解決手段】 キャスターブラケットに軸支されたキャスター本体に車輪が取付けられたキャスターにおいて、キャスターブラケットと一体に取付けられた、ロック用凹部を有する円板状のロックプレートと、前記ロック用凹部に凹凸嵌合可能に車輪ロック用スプリングにて支持された旋回ロックピンと、旋回ロックピンをロックプレートに凹凸嵌合させるキャスターロック用スプリングを備えかつ前記車輪ロック用スプリングにて一定方向の回動力を付勢された操作レバーとから構成され、操作レバーを下方へ回動させると、旋回ロックピンがロックプレートと凹凸嵌合してキャスター本体の旋回が停止すると同時に、車輪ロック用スプリングが車輪を押圧して当該車輪の回動が停止する仕組みとなした回転ロック機構を備えたことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付体に固定されるキャスターブラケットにキャスター本体が旋回自在に軸支されるとともに、該キャスター本体に車輪が回転自在に軸支されてなるキャスターにおいて、前記キャスターブラケットとキャスター本体との間に、前記キャスターブラケットと一体に取着され、キャスター本体と対向する裏面の円周端面に多数のロック用凹部を有する円板状のロックプレートと、前記ロックプレートの下方に位置し、前記ロック用凹部に凹凸嵌合可能な凸部を有し、かつキャスター本体に装着された車輪ロック用スプリングに垂直に昇降可能に支持された旋回ロックピンと、キャスター本体に上下方向に回動可能に枢着されかつ前記車輪ロック用スプリングにて挟持固定されて常時上方向の回動力を付勢され、前記旋回ロックピンを前記車輪ロック用スプリングに抗して上昇させるキャスターロック用スプリングを備えた操作レバーとから構成され、前記操作レバーを下方へ回動させると、前記旋回ロックピンが上昇して前記ロックプレートと凹凸嵌合してキャスター本体の旋回が停止すると同時に、前記車輪ロック用スプリングが車輪を押圧して当該車輪の回動が停止する仕組みとなした回転ロック機構を備えたことを特徴とする回転ロック機構付きキャスター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転ロック機構付きキャスターに係り、より詳しくはキャスター本体の旋回停止と車輪の制動(回動停止)を同時に行うことができるダブルロック機能を有する回転ロック機構付きキャスターの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
キャスターは周知の通り、キャスター本体に車輪が車軸を介して回動自在に支持され、キャスター本体の前記車軸と偏心した位置に垂直に設けられた支軸がキャスターブラケット等に回動自在に取付けられる構造となしたもので、通常はキャスター本体が前記支軸を中心に自由に旋回するとともに車輪が回転して任意の方向に走行可能な自在車として使用される。この種のキャスターには、安全性等を考慮して車輪の制動(回動停止)及びキャスター本体の旋回停止の両方を行うロック装置が設けられたものがすでに知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1に記載されているキャスターは、キャスター本体と被取付体との間に介装されて、被取付体側に固定された位置決め固定部材と、この位置決め固定部材に上下動可能に支持された第1の係合手段を上下動させる操作手段と、キャスター本体に設けられ前記位置決め固定部材に支持された第1の係合手段が係合可能な第2の係合手段と、いずれか一方の係合手段を後退可能に支持する弾性体とを有し、両係合手段が互いに係合した際に、キャスター本体の水平方向の旋回を規制する旋回ロック装置を備えたものである。
【0004】
又、特許文献2に記載されているキャスターは、キャスター本体に昇降自在に支持された旋回ロック部材と、この旋回ロック部材を常時下方へ付勢するスプリングと、同旋回ロック部材を上昇させる操作部材と、被取付体側に固定され、旋回ロック部材が上昇した際に係合する旋回ロック用係合部が形成されたロックプレートと、旋回ロック部材に着脱可能に取付けられ、この旋回ロック部材と一体的に昇降する車輪ロック部材と、車輪に形成され、車輪ロック部材が上昇した際にこの車輪ロック部材に設けられた制動部に係合して車輪の走行を停止させる車輪側制動部とから構成されたロック装置を備えたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−69002号公報
【特許文献2】特開平7−132704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記した従来のロック装置付きキャスターの場合、いずれもロック装置が複雑な機構からなりコストが高くつくのみならず、キャスター全体が大型化するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記した問題を解消するためになされたもので、回転ロック機構が構造簡単でコストが安価につくのみならず、常に安定した動作が得られ性能的にも優れ、かつキャスター全体のコンパクト化がはかられる、キャスター本体の旋回停止と車輪の制動(回動停止)を同時に行うことができるダブルロック機能を有する回転ロック機構付きキャスターを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る回転ロック機構付きキャスターは、被取付体に固定されるキャスターブラケットにキャスター本体が旋回自在に軸支されるとともに、該キャスター本体に車輪が回転自在に軸支されてなるキャスターにおいて、前記キャスターブラケットとキャスター本体との間に、前記キャスターブラケットと一体に取着され、キャスター本体と対向する裏面の円周端面に多数のロック用凹部を有する円板状のロックプレートと、前記ロックプレートの下方に位置し、前記ロック用凹部に凹凸嵌合可能な凸部を有し、かつキャスター本体に装着された車輪ロック用スプリングに垂直に昇降可能に支持された旋回ロックピンと、キャスター本体に上下方向に回動可能に枢着されかつ前記車輪ロック用スプリングにて挟持固定されて常時上方向の回動力を付勢され、前記旋回ロックピンを前記車輪ロック用スプリングに抗して上昇させるキャスターロック用スプリングを備えた操作レバー(ロックレバー)とから構成され、前記操作レバーを下方へ回動させると、前記旋回ロックピンが上昇して前記ロックプレートと凹凸嵌合してキャスター本体の旋回が停止すると同時に、前記車輪ロック用スプリングが車輪を押圧して当該車輪の回動が停止する仕組みとなした回転ロック機構を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、操作レバー(ロックレバー)を上下に回動させる動作のみで、キャスター本体の旋回停止と解除及び車輪の回動停止と解除を同時に行うことができるので、キャスター本体と車輪のロックとロック解除を簡易迅速に行うことができること、又、ロック機構の主たる構成部材として、円板状のロックプレートとロックピン、キャスターロック用と車輪ロック用の二種類のスプリングと、操作レバー(ロックレバー)を採用したことにより、簡単な構成で常に安定した動作が得られるのみならず、キャスター本体を大型化することなく回転ロック機構のコンパクト化がはかられるので、高性能の回転ロック機構付きキャスターを安価に提供できること、さらに、本発明の回転ロック機構付きキャスター装置は、キャスターロック機構及び車輪ロック機構が着脱式となっているので、必要に応じてロックピンやロック用スプリングを取外したり、組み付けたりすることが可能であること、等の優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施例に係る回転ロック機構付きキャスターを一部破断して示す側面図であり、キャスター本体と車輪の静止解除状態を示している。
【
図3】同上キャスターのロックプレートを拡大して示す裏面図である。
【
図4】同上キャスターの旋回ロックピンを拡大して示す図で、(A)は斜視図、(B)は縦断面図である。
【
図5】同上キャスターの操作レバー(ロックレバー)を拡大して示す図で、(A)は斜視図、(B)は縦断面図である。
【
図6】同上キャスターの、車輪のロックと操作レバー(ロックレバー)を挟持固定する車輪ロック用スプリングを拡大して示す斜視図である。
【
図7】同上キャスターの動作説明図で、キャスター本体と車輪の静止状態を示す一部破断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1〜
図7に一実施例を示す本発明の回転ロック機構付きキャスターは、被取付体(図示せず)に固定されるキャスターブラケット10にキャスター本体1が垂直軸(旋回用軸ピン)2及び締付けナット2−1を介して水平方向に旋回自在に軸支されるとともに、該キャスター本体1に車輪3が車軸4を介して回転自在に軸支された構成において、キャスターブラケット10とキャスター本体1との間に設けた円板状のロックプレート5、キャスター本体1に昇降可能に設けた旋回ロックピン6、操作レバー(ロックレバー)7、キャスターロック用スプリング8及び車輪ロック用スプリング9とから構成される回転ロック機構を備えている。
【0012】
本実施例の回転ロック機構の主要構成部品の一つである、キャスターブラケット10とキャスター本体1との間に設けた円板状のロックプレート5は、
図1、
図3に示すように中央部に穿設された軸孔5−2と、キャスター本体1と対向する裏面の円周端面に軸孔5−2と同心円上に円周方向等間隔に多数のロック用凹部5−3を有する円板部5−1と、該円板部に突設した取付板部5−4とからなり、キャスター本体1の上面に突設した垂直軸(旋回用軸ピン)2に軸孔5−2を介して回動自在に貫通支持され、かつ取付板部5−4をねじ5−5にてキャスターブラケット10に固着されて、垂直軸2を中心にキャスターブラケット10と一体に回動する構造となっている。5−6はねじ孔である。
【0013】
このロックプレート5に係合してキャスターの水平方向の旋回を停止、解除する旋回ロックピン6は、
図1、
図4に示すようにロックプレート5のロック用凹部5−3と同心の円弧状の板部材からなり、その広幅部6−1の上部にはロックプレート5のロック用凹部5−3に凹凸嵌合する凸部6−3が形成され、狭幅部6−2の下部には操作レバー(ロックレバー)7に装着されたキャスターロック用スプリング8が貫通するスプリング孔6−4が設けられ、広幅部6−1と狭幅部6−2の境界に、当該旋回ロックピン6をキャスター本体1の所定の高さ位置に保持する車輪ロック用スプリング9の係止部6−5が形成されている。なお、旋回ロックピン6に形成する凸部6−3は、ここでは3個形成した場合を示したが、この凸部6−3は複数個に限らず一個でもよいことはいうまでもない。
【0014】
車輪ロック用スプリング9は、
図1、
図6等に示す様に略V字形に屈曲させた板状の金属板からなり、該金属板の上面部9−1には前記旋回ロックピン6を昇降可能に貫通支持する窓孔9−3を、下面部9−2には同旋回ロックピン6の下部を貫通させる窓孔9−4と当該下面部端部を屈曲させて形成した車輪制動用の車輪押圧部9−5を有している。この車輪ロック用スプリング9は、
図1に示すように上面部9−1と下面部9−2が相互に内側方向の力が付勢されるようにキャスター本体1にねじピン9−6にて縦方向に取着されている。旋回ロックピン6は、この車輪ロック用スプリング9の上面部9−1が当該旋回ロックピンの係止部6−5に係止して、3本の凸部6−3がロックプレート5のロック用凹部5−3に凹凸嵌合する位置に垂直に昇降可能に支持されている。
【0015】
操作レバー(ロックレバー)7は、
図1、
図5に示すように内部が中空となし、かつキャスター本体側の下端部に突出部7−1を、該突出部近傍にスプリング係止孔7−2をそれぞれ有する、前記車輪ロック用スプリング9と略同じ幅の矩形体からなるレバー本体の内部にキャスターロック用スプリング8が装着され、キャスター本体側の上端部に形成した取付部7−3を介してキャスター本体1にねじピン7−4にて上下方向に回動可能に取着されるとともに、前記突出部7−1と取付部7−3の部分を前記車輪ロック用スプリング9にて挟持されて常時上方向(反時針方向)の回動力を付勢されている。この操作レバー7に内装されたキャスターロック用スプリング8は、旋回ロックピン6の狭幅部6−2の下部に設けられたスプリング孔6−4に嵌入する先端部8−1が当該レバー本体の内方側端部から突出し、後端部は当該レバー本体の底部側に設けた係止孔7−2に嵌入して固定されている。7−5はねじ孔である。
即ち、操作レバー7は、ねじピン7−4を支点に上下方向に回動可能に取着され、通常は
図1に示すように車輪ロック用スプリング9にて挟持固定されて上部側に回動位置した状態にあり、この状態から当該操作レバー7を下方へ回動させると、レバー本体の内部に装着したキャスターロック用スプリング8の先端部8−1にて前記旋回ロックピン6が持ち上げられて前記ロックプレート5と凹凸嵌合してキャスター本体1の旋回が停止すると同時に、前記車輪ロック用スプリング9の車輪押圧部9−5が当該操作レバー7に形成した突出部7−1によって押圧されて車輪3の回動を停止(制動)する仕組みとなしている。なお、この操作レバー7は、下方に回動位置させた時にキャスターの旋回と車輪の回動がそれぞれキャスターロック用スプリング8と車輪ロック用スプリング9にてロックされた状態が保持されるようにキャスター本体1に枢着されていることはいうまでもない。
【0016】
上記構成の回転ロック機構付きキャスターにおいて、当該キャスターを自由に旋回可能で、かつ車輪3の回転をフリーの状態で使用する場合には、
図1に示すように操作レバー7を上方に回動位置させておく。この時には、キャスターロック用スプリング8の先端部8−1に支持されている旋回ロックピン6がキャスター本体1内に下降位置し、旋回ロックピン6の凸部6−3がキャスターブラケット10と一体のロックプレート5のロック用凹部5−3から離脱しているので、キャスター本体1とキャスターブラケット10は相互にフリーの状態になると同時に、車輪ロック用スプリング9の下面部9−2には操作レバー7による押圧力が作用しないため車輪押圧部9−5が車輪3より離れ、当該車輪3もフリーの状態になる。
【0017】
一方、キャスター本体1の旋回及び車輪3の回転のロックを行う場合には、
図7に示すように上方に位置している操作レバー7を車輪ロック用スプリング9に抗して下方へ押し下げる。この時、操作レバー内部に装着したキャスターロック用スプリング8の先端部8−1にて旋回ロックピン6が持ち上げられて当該ロックピンの3本の凸部6−3がロックプレート5のロック用凹部5−3に嵌入してキャスター本体1の旋回を直ちに停止させると同時に、車輪ロック用スプリング9の車輪押圧部9−5が操作レバー7に形成した突出部7−1によって押圧されて車輪3の回動を停止(制動)させる。このようにキャスター本体1が旋回中のどの位置にあっても、操作レバー7を下方へ押し下げるだけで最大限360度回転する間に確実にキャスター本体1の旋回と車輪3の回動をロックすることができる。このキャスター本体1の旋回と車輪3の回動をロックした状態から、キャスター本体1及び車輪3をフリーの状態にする場合は、操作レバー7を上方へ押し上げる。この時、操作レバー7は車輪ロック用スプリング9の付勢力により瞬時に上方へ回動するに伴い、キャスターロック用スプリング8の先端部8−1にて上昇位置を保持されている旋回ロックピン6が下降し旋回ロックピン6の凸部6−3がロックプレート5のロック用凹部5−3から離脱しキャスター本体1内に没して車輪ロック用スプリング9にて支持されることにより、キャスター本体1がフリーとなり、同時に車輪ロック用スプリング9の車輪押圧部9−5が車輪3より離れ、当該車輪3もフリーの状態になる(
図1)。
【0018】
以上のように本実施例に係る回転ロック機構付きキャスターは、操作レバー(ロックレバー)7を上下に回動させる動作のみで、キャスター本体1及び車輪3のロックと解除を同時に行うことができるので、キャスター本体1と車輪3のロックと解除を簡易迅速に行うことができること、又、ロック機構の主たる構成部材として、円板状のロックプレート5と旋回ロックピン6、キャスターロック用と車輪ロック用の二種類のスプリング8、9と、操作レバー7を採用したことにより、簡単な構成で常に安定した動作が得られるのみならず、回転ロック機構のコンパクト化がはかられることによりキャスターの大型化を防止できる。
なお、本実施例は、キャスターブラケット10にキャスター本体1が旋回自在に軸支された場合を示したが、キャスター本体1はキャスターブラケット10を省略して家具等の被取付体に直接取付けてもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0019】
1 キャスター本体
2 垂直軸
2−1 締付けナット
3 車輪
4 車軸
5 ロックプレート
5−1 円板部
5−2 軸孔
5−3 ロック用凹部
5−4 取付板部
5−5 ねじ
5−6、7−5 ねじ孔
6 旋回ロックピン
6−1 広幅部
6−2 狭幅部
6−3 凸部
6−4 スプリング孔
6−5 係止部
7 操作レバー(ロックレバー)
7−1 突出部
7−2 スプリング係止孔
7−3 取付部
7−4 ねじピン
8 キャスターロック用スプリング
8−1 先端部
9 車輪ロック用スプリング
9−1 上面部
9−2 下面部
9−3、9−4 窓孔
9−5 車輪押圧部
9−6 ねじピン
10 キャスターブラケット