前記プラスチックフィルムは、ポリエチレンフィルムからなる単層フィルム、ポリエチレンフィルムとナイロンフィルムからなる多層フィルム、又は、ポリエチレンフィルムからなる多層フィルムである請求項1〜3のいずれかに記載のパウチ。
前記ノッチを設ける工程では、前記仮想線が、前記ノッチが設けられている部分でのみ前記シール部と交差するようにノッチを設ける請求項10に記載の洗剤入りパウチの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の液体包装容器では、高分子フィルムの縁部がシールされており、隅角部に設けられた切欠部をきっかけに斜め方向に手で引き裂くことで注ぎ口部を形成させ、注ぎ口部から液体を注ぐことができるとされている。
【0005】
特許文献1に記載の液体包装容器のように、高分子フィルムの隅角部を手で引き裂くことで注ぎ口部を形成させる場合には、フィルムの「引き裂き」を容易に行うことができることが望ましい。しかしながら、このような液体包装容器を用いた場合に、隅角部の引き裂きが困難である場合や、引き裂きにかなり強い力を要する場合があった。また、作業者が望む方向に引き裂くことができずに適当な広さの注ぎ口部を開口できない場合があった。
そして、適当な広さの注ぎ口部を開口できなかった場合には、液体を注ぐ際の作業性が低下することがあり、さらに、液体がこぼれて作業者の手等に付着するおそれがあった。
【0006】
また、フィルムの引き裂きに失敗した場合に、液体包装容器の隅角部が完全に切りとられずに残ってしまうこともあった。
そして、完全に切り取られなかった隅角部が液体包装容器から垂れ下がった状態で液体を注ぐ作業を行うと、液体を注ぐ際に隅角部が邪魔になって作業性が低下したり、隅角部を伝って液体がこぼれる場合があった。また、隅角部に付着した液体が作業者の手等に付着するおそれがあった。
【0007】
プラスチックフィルム製のパウチに封入して流通する可能性がある洗剤の一例として、食器洗い用の高濃度アルカリ性洗剤がある。
従来、油汚れ落し用のアルカリ性洗剤は一斗缶(18kg)やボトル(4kg、5kg等)に入れてエンドユーザーに納品されていたが、近年、高濃度アルカリ性洗剤をパウチに封入してエンドユーザーに納品し、エンドユーザーが使用前に4〜5倍程度に希釈して使用するケースが増えていくと予想できる。高濃度アルカリ性洗剤を納品することによって、輸送コストの低減及びCO
2の排出の削減を図ることができる。
【0008】
上記高濃度アルカリ性洗剤を封入する用途にパウチを用いる場合には、パウチ内に封入された洗剤を注ぐ際に高濃度アルカリ性洗剤が作業者の手に付着することを避ける必要がある。そのため、作業者の望む方向にフィルムを確実に引き裂くことができること、及び、隅角部をパウチに残すことなく切り取ることができることが特に必要である。
【0009】
本発明は、作業者の望む方向にフィルムを確実に引き裂くことができるとともに、隅角部をパウチに残すことなく切り取ることができるパウチを提供することを目的とする。
また、パウチ内に封入された洗剤を注ぐ際に洗剤が作業者の手に付着することを防止することに適した洗剤入りパウチを提供することを目的とする。また、上記洗剤入りパウチを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、従来用いられていたパウチにおいてフィルムの引き裂きの難易に影響を与えている原因について検討した。その結果、プラスチックフィルムのナイロン層とポリエチレン層、又は、ポリエチレン層とポリエチレン層の間に施された印刷処理が原因となっている可能性があることを見出した。
通常、プラスチックフィルム製のパウチには、その全面に商品名、ロゴマーク、バーコード、ロットNoなどを示すための印刷処理が施されている。印刷処理は、グラビア印刷等の方法によりなされている。
本発明者らは、印刷処理がなされているプラスチックフィルムと印刷処理がなされていないプラスチックフィルムをそれぞれ引き裂くことを試みたところ、印刷処理がある場合にはフィルムが伸びやすく、引き裂きが困難であることを見出した。
一方、印刷処理がなされていないプラスチックフィルムは、作業者の望む方向に引き裂くことが容易であることを見出した。
そして、本発明者らは、上記知見に基づき、パウチを引き裂く予定の部位に印刷処理を施さないようにすることによって、作業者の望む方向にフィルムを確実に引き裂くことができるとともに、隅角部をパウチに残すことなく切り取ることができるパウチを提供することができることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明のパウチは、液体包装用のプラスチックフィルム製袋状パウチであって、
その表面の一部には、印刷処理がされていない無地部が設けられていることを特徴とする液体包装用のパウチである。
【0012】
本発明のパウチの表面の一部には、印刷処理がされていない無地部が設けられている。
上述したように、印刷処理がされていないプラスチックフィルムは引き裂きが容易であるため、作業者は印刷処理がされていない無地部を引き裂くことによって作業者の望む方向にフィルムを確実に引き裂くことができる。
【0013】
本発明のパウチは、平面視した形状において他の部位の幅に比べて幅が狭い部位である注ぎ口部を有する形状であり、上記無地部は、上記注ぎ口部の全体又は上記注ぎ口部の一部に設けられていることが望ましい。
【0014】
また、上記パウチを平面視した形状は、短辺と長辺を有する長方形の第1の短辺上の一点を始点とし、上記長方形の第1の長辺上の一点を終点とする線である傾斜線によって上記長方形を切断してなる形状であり、上記無地部は、上記第1の短辺、上記傾斜辺、及び、上記長方形の第2の長辺の近傍に設けられていることが望ましい。
また、本発明のパウチにおける上記傾斜線は、1本若しくは複数本の直線、及び/又は、1本若しくは複数本の曲線からなることが望ましい。
また、本発明のパウチにおいて、上記無地部は、上記傾斜線上の1点を始点とし、上記第2の長辺上の1点を終点とする連続した領域に設けられていることが望ましい。
【0015】
本発明のパウチを平面視した形状における外周の一部には、シールされたシール部が設けられており、上記シール部にノッチが設けられていることが望ましい。
また、上記パウチを平面視した形状において、上記ノッチを延長した仮想線を上記パウチの外周に到達する位置まで引いた際に、上記無地部は、上記ノッチ及び上記仮想線の少なくとも両側5mmずつの領域に設けられていることが望ましい。
【0016】
本発明のパウチにおける上記プラスチックフィルムは、ポリエチレンフィルムからなる単層フィルム、ポリエチレンフィルムとナイロンフィルムからなる多層フィルム、又は、ポリエチレンフィルムからなる多層フィルムであることが望ましい。
【0017】
本発明の洗剤入りパウチは、本発明のパウチ内に洗剤が封入されており、上記洗剤の20℃における粘度が30〜2000mPa・sであることを特徴とする。
洗剤の粘度が30mPa・s以上であると、細かい泡が発生しにくく、また、引き裂きを行う前に無地部を上に向けた際に、洗剤の泡が無地部近傍に残留しにくい。そのため、無地部を引き裂く作業の際に洗剤が飛び散ることが防止される。
【0018】
一方、洗剤の粘度が2000mPa・s以下であると洗剤の流動性が良く、スムーズに洗剤を注ぐことができる。また、洗剤がフィルムの内面に付着してパウチ内に残留することも防止される。
【0019】
本発明の洗剤入りパウチにおいては、上記洗剤のpHが8〜14であることが望ましい。
中性洗剤に比べてpHが8〜14であるようなアルカリ性洗剤は作業者の手に付着することをより避ける必要があるため、パウチの引き裂き作業を容易にすることができる本発明のパウチにアルカリ性洗剤を封入した場合には、より好ましい効果を得ることができる。
【0020】
本発明の洗剤入りパウチにおいて、上記洗剤は界面活性剤と、溶剤と、アルカリ成分とを含むことが望ましい。
【0021】
本発明の洗剤入りパウチにおいて、上記アルカリ成分は、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムを含むことが望ましい。
【0022】
本発明の洗剤入りパウチの製造方法は、印刷処理がされていない無地部が設けられているプラスチックフィルムを準備する工程と、上記プラスチックフィルムを筒状に巻くことによって、両端に開口部を有するプラスチックフィルムの筒状体とする工程と、上記プラスチックフィルムの筒状体の下端の開口部を封止する工程と、上記プラスチックフィルムの筒状体の中に洗剤を充填する工程と、上記プラスチックフィルムの筒状体の上端の開口部を封止することによって上記洗剤を密封する工程を有することを特徴とする。
このような工程によると、パウチの表面の一部に無地部が設けられ、パウチ内に洗剤が封入された本発明の洗剤入りパウチを製造することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のパウチは、作業者の望む方向にフィルムを確実に引き裂くことができるとともに、隅角部をパウチに残すことなく切り取ることに適している。
また、本発明の洗剤入りパウチは、パウチに封入された洗剤が作業者の手に付着することなく洗剤を注ぐことに適している。
また、本発明の洗剤入りパウチの製造方法によると、本発明の洗剤入りパウチを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第一実施形態)
以下、本発明のパウチ、洗剤入りパウチ、及び、洗剤入りパウチの製造方法の一実施形態である第一実施形態について図面を用いて説明する。
【0026】
はじめに、本実施形態のパウチについて説明する。
図1は、本発明のパウチの一例を模式的に示す平面図である。
図1に示すパウチ10は、プラスチックフィルム製である。
パウチの材料であるプラスチックフィルムの種類は特に限定されるものではないが、ポリエチレンフィルムからなる単層フィルム、ポリエチレンフィルムとナイロンフィルムからなる多層フィルム、又は、ポリエチレンフィルムからなる多層フィルムであることが望ましい。
また、その他の材質のフィルムが含まれた多層フィルムであっても良い。
また、プラスチックフィルムの厚さは特に限定されるものではないが、50〜100μmであることが望ましい。
【0027】
図1において上側に位置する辺には、ヒートシール加工されたシール部11(トップシール部11)が設けられており、シール部11の反対側の辺にもヒートシール加工されたシール部12(ボトムシール部12)が設けられている。
パウチ10の裏側、中央の縦方向にはヒートシール加工されたセンターシール部13が設けられている。
【0028】
図1に示すパウチ10を平面視した形状は、直線である第1の短辺21、第2の短辺22、第1の長辺23、第2の長辺24を有し、曲線である傾斜線31を有する。
この形状は、第2の短辺22と同じ長さの辺を短辺とし、第2の長辺24と同じ長さの辺を長辺とする、短辺と長辺を有する長方形をはじめに考え、次に上記長方形において短辺上に位置する点(
図1における点32)を始点とし、長辺上に位置する点(
図1における点33)を終点とする曲線で上記長方形を切断してなる形状である。
上記長方形を切断する曲線が傾斜線31となる。
【0029】
図1に示すパウチの表面の一部には、印刷処理がされていない部位である無地部15が設けられている。
また、シール部11のうち無地部15に該当する部位に、プラスチックフィルムを引き裂く際の始点となる切り込みであるノッチ16が設けられている。
【0030】
無地部15を除くパウチ10の表面の大部分には印刷処理が施されている。
図1には、印刷処理が施された部位を印刷部14として示している。
図1では無地部15と印刷部14をハッチング(塗り模様)の有無で区別して示している。
印刷処理は、プラスチックフィルムに通常行われる任意の方法、例えば、グラビア印刷等の方法によってなされている。印刷部14と無地部15が設けられている部位はパウチ10の表裏で同じとなっていることが望ましい。フィルムを引き裂く際には表裏がともに無地部となっている部位を引き裂くことが望ましいためである。
【0031】
また、無地部15は、傾斜線31上の1点を始点とし、第2の長辺24上の1点を終点とする連続した領域に設けられている。そのため、傾斜線から第2の長辺に向かってフィルムを引き裂くことによって液体を注ぐための注ぎ口を開口することができる。
【0032】
図1に示すパウチ10を平面視した形状は、他の部位の幅に比べて幅が狭い部位である注ぎ口部17を有する。
図1に示すパウチ10において「他の部位の幅に比べて幅が狭い部位」とは、第2の短辺22に平行な方向の長さを「幅」として、第2の短辺22と平行な線を引いた際に第2の短辺22の長さよりも短い幅を有する部位のことを指す。
すなわち、
図1に示すパウチ10において、「他の部位の幅」は第2の短辺の長さである。
【0033】
図1に示すパウチ10においては、注ぎ口部17の位置は無地部15の位置と一致している。すなわち、
図1において注ぎ口部17はハッチングが施されていない部位として示されている。
印刷処理がされていない部位である無地部15であり、かつ、他の部位の幅に比べて幅が狭い部位である注ぎ口部17が設けられていると、注ぎ口部でフィルムを引き裂くことによって、液体を注ぐことに適した幅の開口を確実に形成することができる。
【0034】
なお、本実施形態のパウチにおいて「他の部位の幅」は、常に第2の短辺の長さにより定められるわけではなく、パウチを平面視した形状における幅として通常認識される長さにより定めることが好ましい。
【0035】
本実施形態のパウチにおいて無地部が設けられる位置は、注ぎ口部の位置と必ずしも一致していなくても良い。
図2は、
図1に示すパウチにおいて無地部が設けられた位置が異なる例を模式的に示す平面図である。
図2に示すパウチ110では、無地部115が注ぎ口部17の一部にのみ設けられている。具体的には無地部115は注ぎ口部17のうち第1の短辺21に近い側にのみ設けられている。
【0036】
このパウチ110では、無地部115が注ぎ口部17のうち第1の短辺21に近い側にのみ設けられており、注ぎ口部17かつ無地部115である位置でフィルムを引き裂くことによって、液体を注ぐことに適した幅の開口を確実に形成することができる。
無地部115を注ぎ口部17の一部にのみ設ける場合は、その幅がより狭い部位に無地部を設けることが好ましい。幅がより狭い部位は液体を注ぐことに適した幅の開口となるためである。
なお、
図2に示すパウチ110では、無地部115が設けられた位置以外の構成は
図1に示すパウチ10の構成と同様であるためその他の構成の詳細な説明を省略する。
【0037】
図3は、
図1に示すパウチにおいて無地部が設けられた位置が異なる他の例を模式的に示す平面図である。
図3に示すパウチ210では、無地部215が注ぎ口部17の一部にのみ設けられている。
無地部215の両側には、印刷部214a、印刷部214bが設けられている。無地部215と印刷部214aは境界線218aで隔てられており、無地部215と印刷部214bは境界線218bで隔てられている。
【0038】
シール部11にはノッチ16が設けられており、ノッチ16は、シール部11が設けられた傾斜線31に対し直角に形成されている。そして、ノッチ16を延長した仮想線(
図3中で一点鎖線で示す)を第2の長辺24まで引いた際に、仮想線は無地部215のみを通り、印刷部214a、214bのいずれとも交わらないようになっている。
図3に示すような部位に無地部215が設けられる場合には、無地部215は、ノッチ16及びノッチ16を延長した仮想線の少なくとも両側5mmずつの領域に設けられていることが望ましい。
言い換えると、ノッチ16及びノッチ16を延長した仮想線と境界線218aとの間隔、及び、ノッチ16及びノッチ16を延長した仮想線と境界線218bとの間隔が、共に5mm以上であることが望ましい。
【0039】
このように、無地部の両側に印刷部が設けられていると、ノッチを始点としてフィルムを引き裂く際にその経路が曲がった場合であっても、フィルムを引き裂きにくい印刷部に当たった時点でそれ以上引き裂きにくくなるため、フィルムを引き裂く経路が大きく曲がることが防止される。その結果、作業者が望む好ましい位置でフィルムを引き裂きやすくなる。すなわち、無地部が設けられているパターンがフィルムを引き裂く位置を示すガイドとなる。
なお、
図3に示すパウチ210では、無地部215及び印刷部214a、214bが設けられた位置以外の構成は
図1に示すパウチ10の構成と同様であるためその他の構成の詳細な説明を省略する。
【0040】
また、本実施形態のパウチは、フィルムを引き裂く位置に対応したミシン目を備えていても良い。また、ノッチは必ずしも備えられている必要はない。
また、ノッチとシール部が設けられた辺(傾斜線)との角度は直角に限定されるものではなく、フィルムを引き裂く予定の方向に合わせて任意の角度とすることができる。
【0041】
続いて、本発明の洗剤入りパウチの一実施形態である本実施形態の洗剤入りパウチについて説明する。
本実施形態の洗剤入りパウチは、本実施形態のパウチに洗剤が封入されたものである。
図4は、本発明の洗剤入りパウチの一例を模式的に示す平面図である。
図4に示す洗剤入りパウチ1では、
図1に示すパウチ10に洗剤2が封入されている。
洗剤入りパウチに封入される洗剤としては、その20℃における粘度が30〜2000mPa・sであるものが用いられる。
洗剤の粘度の測定は、JIS K 7117−2 に準拠し、回転粘度計を用いて行うことができる。
【0042】
洗剤の粘度が30mPa・s未満と低い場合には、洗剤が振動等を受けることにより細かい泡が発生し、フィルムの引き裂きを行う前に無地部を上に向けた際に、洗剤の泡が無地部近傍(注ぎ口部の先端近傍)に残留することがある。そして、その状態でフィルムを引き裂くと、洗剤が飛び散ることがある。また、切り取った隅角部(注ぎ口部の先端)に洗剤が残留して洗剤が作業者の手等に付着することがある。
【0043】
洗剤の粘度が30mPa・s以上であると、細かい泡が発生しにくく、また、引き裂きを行う前に無地部を上に向けた際に、洗剤の泡が無地部近傍(注ぎ口部の先端近傍)に残留しにくい。そのため、フィルムを引き裂く際に洗剤が飛び散ることが防止される。
また、切り取った隅角部(注ぎ口部の先端)に洗剤が残留しにくいため、フィルムを引き裂く際に洗剤が作業者の手等に付着することが防止される。
【0044】
一方、洗剤の粘度が2000mPa・s以下であると洗剤の流動性が良く、スムーズに洗剤を注ぐことができるため好ましい。また、洗剤がフィルムの内面に付着してパウチ内に残留することも防止される。
【0045】
パウチに封入する洗剤の種類は特に限定されるものではないが、油汚れ落とし用のアルカリ性洗剤を封入することが望ましい。特に、希釈して使用することを目的とした高濃度アルカリ性洗剤を封入することが望ましい。
中性洗剤に比べると、アルカリ性洗剤は作業者の手に付着することをより避ける必要があるため、引き裂く作業を容易にすることができる本発明のパウチにアルカリ性洗剤を封入した場合により好ましい効果を得ることができる。
【0046】
パウチに封入する洗剤のpHは8〜14であることが望ましい。このようなpHを有する洗剤は、作業者の手に付着することを避けるべき必要性がより高いためである。
また、パウチに封入する洗剤の組成は特に限定されるものではないが、例えば、キッチン用アルカリ洗浄剤、風呂用アルカリ洗浄剤等を含む洗剤等が挙げられる。
アルカリ洗浄剤としては、界面活性剤と、溶剤と、アルカリ成分とを含む洗剤が挙げられる。
アルカリ成分としては、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムを含むことが好ましい。水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムを含む洗剤は、作業者の手に付着することを避けるべき必要性がかなり高いためである。
また、本発明のパウチは、アルカリ成分の濃度の高い洗剤を封入することに特に適している。アルカリ成分の濃度の高い洗剤は、作業者の手に付着することを避けるべき必要性が極めて高いためである。
【0047】
パウチに封入する洗剤の量は、特に限定されるものではないが、パウチの内容積の70%以下であることが望ましい。
洗剤の量がパウチの内容積の70%を超えて多くなっていると、フィルムを引き裂いた際に洗剤が飛び散ることがあるためである。
【0048】
続いて、本発明の洗剤入りパウチの製造方法の一実施形態である本実施形態の洗剤入りパウチの製造方法について説明する。
図5は、洗剤入りパウチの製造工程の一部を模式的に示す斜視図である。
図5には、洗剤入りパウチの製造装置を示している。洗剤入りパウチの製造装置50は、ローラー51、洗剤投入口52、ローラー53、センターシーラー54、ボトム/トップシーラー55を備えている。
【0049】
本発明の洗剤入りパウチの製造方法では、印刷処理がされていない無地部を有するプラスチックフィルム60を準備し、洗剤入りパウチの製造装置50のローラー51で搬送する。
図5においてはプラスチックフィルム60は模式的に透明なフィルムとして示しているが、洗剤入りパウチの製造装置にプラスチックフィルムを投入する前に所定の部位に印刷処理を施しておくことが望ましい。
プラスチックフィルム60において印刷処理を施しておく位置は、製造される洗剤入りパウチの形状、並びに、印刷部及び無地部のパターンに応じて予め決めておけばよい。
【0050】
続いて、プラスチックフィルム60を、円筒状の洗剤投入口52に巻き付けて、ローラー53で下方向に搬送させながらセンターシーラー54を用いてヒートシール加工して、両端に開口部を有するプラスチックフィルムの筒状体とする。
【0051】
続いて、ボトム/トップシーラー55を用いて、プラスチックフィルムの筒状体の下端に位置する開口部をヒートシール加工することによってボトムシール部を設ける。
図6は、ボトム/トップシーラーの断面を模式的に示す断面図である。
ボトム/トップシーラー55は、ボトムシーラー55a及びトップシーラー55bがプラスチックフィルム60を挟んで対向しており、ボトムシーラー55a間、トップシーラー55b間でプラスチックフィルム60を挟むことにより同時に2箇所のヒートシール加工を行うことができる。
このような機構であると、前ロットの洗剤入りパウチのトップシール部の形成と後ロットのパウチのボトムシール部の形成を同時に行うことができる。
また、ボトムシーラー55aとトップシーラー55bの間にはカッター55cが設けられており、カッター55cを用いてプラスチックフィルムを切断することによって、2箇所のヒートシール加工、及び、前ロットの洗剤入りパウチと後ロットのパウチの分離を連続的に行うことができる。
また、
図5において下部に示す、その形状が曲線状となっているトップシーラー55bの中にもカッターが設けられており、傾斜線が設けられるようにしてトップシール部を形成することができる。
【0052】
なお、上記ボトム/トップシーラーではプラスチックフィルムを搬送させることなく2箇所のヒートシール加工及びプラスチックフィルムの切断を行うが、ヒートシール加工及びプラスチックフィルムの切断の態様はこの態様に限定されるものではない。
例えば、2箇所のヒートシール加工の後にフィルムを搬送してプラスチックフィルムの切断を別途行ってもよい。また、前ロットの洗剤入りパウチのトップシール部の形成を行った後にフィルムを搬送して、後ロットのパウチのボトムシール部の形成を行うとともにプラスチックフィルムの切断を行ってもよい。
【0053】
次に、ボトムシール部を設けたプラスチックフィルムの筒状体に、洗剤投入口52から洗剤を投入して、プラスチックフィルムの筒状体の中に洗剤を充填する。
【0054】
次に、洗剤を充填したプラスチックフィルムをさらに下方に搬送し、洗剤が充填されていない部分がトップシーラー55bよりも下方の所定位置に到達した時点で、ボトム/トップシーラー55を用いてプラスチックフィルムの筒状体の開口部にトップシール部を形成する。さらに、プラスチックフィルムの筒状体をトップシール部の外側で切断する。
このような工程により、洗剤がパウチ内に封入された洗剤入りパウチを連続的に製造することができる。
【0055】
洗剤入りパウチの製造方法は、上述したようなパウチの製造と洗剤の封入を同時に行う方法に限定されるものではなく、パウチの製造と洗剤の封入を別々に行う方法によってもよい。
上記工程において、洗剤投入口から洗剤を投入せずにトップシール部を形成すると、洗剤が入っていないパウチを製造することができる。そして、そのパウチに洗剤を封入するための開口を別途形成し、洗剤を封入した後にその開口を閉じることによっても、洗剤入りパウチを製造することができる。
【0056】
次に、洗剤入りパウチの使用方法の一例について説明する。
図7及び
図8は、洗剤入りパウチの使用方法の一例を模式的に示す斜視図である。
本実施形態の洗剤入りパウチを使用する場合は、
図7に示すように、洗剤入りパウチ1を両手で持ち、ノッチ16を始点として、ノッチ16の延長線上に沿って、無地部15のみを通るようにしてフィルムを引き裂いて、注ぎ口部の先端をパウチから切り取り、適当な広さの注ぎ口を開口する。
フィルムを引き裂く前に、洗剤が全て下方に溜まった状態としておき、無地部(注ぎ口部の先端)に泡などが付着していないようにすることが望ましい。
【0057】
そして、
図8に示すように、開口した注ぎ口を洗剤容器70の洗剤投入口71に差し込む。
注ぎ口部17の先端を洗剤投入口に差し込むようにすると、洗剤が全て自重によって洗剤容器内に注入されるため、洗剤をスムーズに洗剤容器内に注ぐことができる。
このような手順で洗剤容器内に洗剤を注ぐと、パウチに封入された洗剤が作業者の手に付着することを避けることができる。
【実施例】
【0058】
以下に本発明をより具体的に説明する実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0059】
(実施例1)
プラスチックフィルムとして、ナイロンフィルムとポリエチレンフィルムからなる厚さ75μmの多層(2層)フィルムを用い、
図5に示した洗剤入りパウチの製造装置を使用して、
図1に記載した形状並びに無地部及び印刷部を有するパウチに洗剤が封入された洗剤入りパウチ(
図4参照)を製造した。
なお、印刷部の印刷はグラビア印刷により、ナイロンフィルムとポリエチレンフィルムの間に施した。
洗剤入りパウチ内に封入する洗剤としては、20℃における粘度が50mPa・sのアルカリ性洗剤を用いた。
なお、20℃における洗剤の粘度は、JIS K 7117−2に適合する回転粘度計(東機産業株式会社製、TVE−22H)を用いて測定した。
【0060】
(実施例2)
20℃における粘度が2000mPa・sであるアルカリ性洗剤をそれぞれ用いた他は実施例1と同様にして洗剤入りパウチを製造した。
【0061】
(比較例1)
無地部が設けられておらず、プラスチックフィルム表面が全て印刷部である他は実施例1と同様にして洗剤入りパウチを製造した。
【0062】
(比較例2)
20℃における粘度が2100mPa・sであるアルカリ性洗剤を用いた他は実施例1と同様にして洗剤入りパウチを製造した。
【0063】
(比較例3)
印刷部が設けられておらず、プラスチックフィルム表面が全て無地部であるプラスチックフィルムを用い、20℃における粘度が12.5mPa・s以下(粘度計の測定限界以下)であるアルカリ性洗剤を用いた他は実施例1と同様にして洗剤入りパウチを製造した。
【0064】
各実施例等で製造した洗剤入りパウチにつき、以下の評価を行った。
(引き裂き性の評価)
各実施例で製造した洗剤入りパウチでは、ノッチを始点として無地部を引き裂くことによって作業者の望む方向にフィルムを引き裂くことができた。そして、注ぎ口部の先端を洗剤入りパウチに残すことなく切り取ることができた。
一方、比較例1で製造した洗剤入りパウチでは、ノッチを始点にして印刷部を引き裂くことを試みたが、フィルムが伸びてしまい作業者の望む方向にフィルムを引き裂けないことがあった。また、注ぎ口部の先端が洗剤入りパウチから切り取られずに残ってしまうこともあった。
【0065】
(洗剤の流動性の評価)
各実施例及び比較例2の洗剤入りパウチにおいて、注ぎ口部の先端近傍の無地部を引き裂いて注ぎ口部を開口し、
図8に示すように開口した注ぎ口を洗剤容器の洗剤投入口に差し込んで、洗剤を洗剤容器内に注いだ。
【0066】
各実施例の洗剤入りパウチでは、洗剤の粘度が2000mPa・s以下であるために洗剤の流動性が良く、スムーズに洗剤を注ぐことができた。
また、フィルムの内面に付着してパウチ内に残留した洗剤は殆どなかった。
一方、比較例2の洗剤入りパウチでは洗剤の粘度が2100mPa・sと大きかったために洗剤の流動性が悪く、洗剤をスムーズに注ぐことができず、洗剤がフィルムの内面に付着してパウチ内に残留してしまった。
【0067】
(泡立ち性の評価)
比較例3及び実施例1の洗剤入りパウチを振って洗剤入りパウチ内の洗剤を泡立て、無地部が設けられている注ぎ口部を上に向けて1分間放置した。その後、洗剤入りパウチ内の泡の様子を観察した。
【0068】
その結果、比較例3の洗剤入りパウチでは、細かい泡が発生して注ぎ口部の先端近傍に集まっていた。
そこで、注ぎ口部の先端近傍に付着していた細かい泡を含む洗剤を手でしごいて洗剤の液中へ移動させることを試みたが、細かい泡が注ぎ口部の先端近傍に向けて再度上昇して注ぎ口部の先端近傍に洗剤が残留した状態となった。
比較例3で使用した洗剤はその粘度が12.5mPa・s以下と低いため、細かい泡が注ぎ口部の先端近傍に残留したと考えられる。
この状態で注ぎ口部の先端近傍の無地部を引き裂くと、洗剤が少量飛び散って作業者の手に付着した。
【0069】
実施例1の洗剤入りパウチでは、泡が注ぎ口部の先端近傍に集まることはなく、泡は洗剤の液中及び液面に保持されていた。
また、実施例1の洗剤入りパウチでは、注ぎ口部の先端近傍に付着していた洗剤を手でしごいて洗剤の液中へ移動させることによって、注ぎ口部の先端近傍に洗剤が殆ど残留していない状態とすることができた。
この状態で注ぎ口部の先端近傍の無地部を引き裂くと、洗剤が飛び散ることがなく、作業者の手に洗剤が付着することもなかった。
【0070】
このように、本発明のパウチに洗剤が封入された洗剤入りパウチでは、無地部が設けられているため、ノッチを始点として無地部を引き裂くことによって作業者の望む方向にフィルムを引き裂くことができた。
また、本発明のパウチに洗剤が封入された洗剤入りパウチにおいて、洗剤の粘度が30〜2000mPa・sの範囲内であると、注ぎ口部の先端近傍に洗剤が殆ど残留しないために無地部の引き裂きによって洗剤が飛び散ることを防止することができた。また、洗剤をスムーズに洗剤容器内に注ぐことができた。
すなわち、本発明の洗剤入りパウチは、パウチに封入された洗剤が作業者の手に付着することなく洗剤を注ぐことに適していた。
【0071】
(その他の実施形態)
本発明のパウチの形状は、第一実施形態のパウチの形状に限定されるものではなく、以下のような形状でも良い。以下、本発明のパウチの他の実施形態について説明する。
図9、
図10、
図11及び
図12は、本発明のパウチの別の一例を模式的に示す平面図である。
図9、
図10、
図11及び
図12に示すパウチでは、傾斜線の形状が
図1に示すパウチ10と異なる。
図9に示すパウチ310では、傾斜線は1本の直線である傾斜線331からなる。
図10に示すパウチ410では、傾斜線は2本の直線である傾斜線431a、431bからなる。
図11に示すパウチ510では、傾斜線は2本の曲線である傾斜線531a、531bからなる。
図12に示すパウチ610では、傾斜線は1本の曲線631a及び1本の直線631bからなる。
すなわち、本発明のパウチが傾斜線を有する場合、傾斜線は1本若しくは複数本の直線、及び/又は、1本若しくは複数本の曲線からなっていてもよい。
【0072】
図13は、本発明のパウチの別の一例を模式的に示す平面図である。
図13に示すパウチ710では、傾斜線の形状が
図1に示すパウチ10と異なる。
図13に示すパウチ710では、傾斜線は2本の直線731a及び731bからなる。
傾斜線731bは、第2の長辺24と平行であり、かつ、第1の短辺21と形成する角度が直角となる直線である。本発明のパウチにおける傾斜線は第2の長辺及び第1の短辺とこのような角度を形成する線であってもよい。
【0073】
図9、
図10、
図11、
図12及び
図13に示すパウチでは、傾斜線の形状以外の構成は
図1に示すパウチ10の構成と同様であるためその他の構成の詳細な説明を省略する。
【0074】
図14は、本発明のパウチの別の一例を模式的に示す平面図である。
図14に示すパウチ810では、第1の短辺が設けられていない。
傾斜線831は第2の長辺24の一端を始点とし、第1の長辺23の一端を終点とする曲線である。
本発明のパウチはこのような形状であってもよい。
【0075】
図15は、本発明のパウチの別の一例を模式的に示す平面図である。
図15に示すパウチ910を平面視した形状は長方形であり、第1の短辺21と第2の短辺22の長さ、及び、第1の長辺23と第2の長辺24の長さがそれぞれ同じである。
パウチ910では、その幅が一定であり、注ぎ口部に相当する部位は設けられていない。また、傾斜線も設けられていない。
パウチ910においては、無地部915が第1の短辺21及び第2の長辺24で形成する頂点925の近傍に設けられている。
また、ノッチ16が無地部915かつシール部11である部位に設けられている。
そのため、ノッチ16を始点として無地部915を引き裂くことにより開口を形成することができる。
本発明のパウチはこのような形状であってもよい。
【0076】
これまで説明した
図9〜
図15に示す各パウチも本発明の洗剤入りパウチにおけるパウチとして使用することができる。
また、本発明の洗剤入りパウチの製造方法により
図9〜
図15に示すパウチを用いた洗剤入りパウチを製造することができる。パウチの形状を変更する方法は特に限定されるものではないが、例えば、
図5に示したパウチの製造装置におけるボトム/トップシーラーの形状を変更する方法が挙げられる。