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特開2015-3800エレベーター装置及びシンブルロッド回り止め機構
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-3800(P2015-3800A)
(43)【公開日】2015年1月8日
(54)【発明の名称】エレベーター装置及びシンブルロッド回り止め機構
(51)【国際特許分類】
   B66B 7/08 20060101AFI20141205BHJP
【FI】
   B66B7/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-130152(P2013-130152)
(22)【出願日】2013年6月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(71)【出願人】
【識別番号】000232944
【氏名又は名称】日立水戸エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仮屋 智貴
(72)【発明者】
【氏名】安部 貴
(72)【発明者】
【氏名】西野 義則
【テーマコード(参考)】
3F305
【Fターム(参考)】
3F305BB02
3F305BC03
3F305BC09
(57)【要約】
【課題】回転を規制する部材の取り付け及び取り外しの作業を要することなく、シンブルロッドの回転を規制する。
【解決手段】
エレベーター装置1は、ワイヤーロープ3と、ワイヤーロープ3に連結されたシンブルロッド61を有し、エレベーター装置1には、シンブルロッド回り止め機構10が設けられている。シンブルロッド回り止め機構10は、シンブルロッド61とマシンビーム7を備えている。マシンビーム7は、シンブルロッド61が貫通する縦孔71が形成された縦孔部72と、縦孔71を貫通したシンブルロッド61がシンブルロッド61の軸を中心に回転したときに、シンブルロッド61における角棒部613の周面に接触してシンブルロッド61が所定の角度を超えて回転することを規制する縦孔部72の内周面と、を有する。シンブルロッド61の角棒部613は、中心軸線から周面までの距離が周方向の位置に応じて異なるように形成されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかご及び釣合錘を懸垂するワイヤーロープと、前記ワイヤーロープに連結されたシンブルロッドを有し、前記シンブルロッドの回転を規制するシンブルロッド回り止め機構が設けられたエレベーター装置において、
前記シンブルロッド回り止め機構は、
前記シンブルロッドと、
前記シンブルロッドが貫通する貫通孔が形成された貫通部と、前記貫通孔を貫通した前記シンブルロッドが該シンブルロッドの軸を中心に回転したときに、前記シンブルロッドの周面に接触して前記シンブルロッドが所定の角度を超えて回転することを規制するロッド回転規制部と、を有する貫通部材と、を備え、
前記シンブルロッドは、前記シンブルロッドの軸から前記シンブルロッドの周面までの距離が周方向の位置に応じて異なるように形成されている
エレベーター装置。
【請求項2】
前記ロッド回転規制部は、前記貫通部の内周面であり、
前記貫通部は、前記貫通孔の中心から前記貫通部の内周面までの距離が周方向の位置に応じて異なるように形成されている
請求項1に記載のエレベーター装置。
【請求項3】
前記シンブルロッドが挿入されるコイルばねと、
前記コイルばねを介して前記シンブルロッドを支持する支持部と、を備え、
前記貫通部材は、前記支持部に対して固定され、前記コイルばねの移動を規制し、
前記ロッド回転規制部は、前記貫通部の内周面であり、
前記貫通部は、前記貫通孔の中心から前記貫通部の内周面までの距離が周方向の位置に応じて異なるように形成されている
請求項1に記載のエレベーター装置。
【請求項4】
前記支持部は、前記貫通部材が挿入されて前記貫通孔と連通し、且つ、前記シンブルロッドが貫通する係合孔を有し、前記貫通部材の移動を規制する係合部を有する
請求項3に記載のエレベーター装置。
【請求項5】
前記ロッド回転規制部は、少なくとも一部が前記貫通孔に対向している
請求項1に記載のエレベーター装置。
【請求項6】
乗りかご及び釣合錘を懸垂するワイヤーロープと、前記ワイヤーロープに連結されたシンブルロッドを有するエレベーター装置に用いられ、前記シンブルロッドの回転を規制するシンブルロッド回り止め機構であって、
前記シンブルロッドと、
前記シンブルロッドが貫通する貫通孔が形成された貫通部と、前記貫通孔を貫通した前記シンブルロッドが該シンブルロッドの軸を中心に回転したときに、前記シンブルロッドの周面に接触して前記シンブルロッドが所定の角度を超えて回転することを規制するロッド回転規制部と、を有する貫通部材と、を備え、
前記シンブルロッドは、前記シンブルロッドの軸から前記シンブルロッドの周面までの距離が周方向の位置に応じて異なるように形成されている
シンブルロッド回り止め機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗りかご及び釣合錘を懸垂するワイヤーロープと、ワイヤーロープに連結されたシンブルロッドを有するエレベーター装置及びこのエレベーター装置に用いられるシンブルロッド回り止め機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ワイヤーロープのテンション調整時にシンブルロッドの回転を防止するシンブルロッドの回り止め治具が記載されている。この回り止め治具は、紐と、この紐の一端に取り付けられた把持金具を備えている。紐が、複数のワイヤーロープのそれぞれの端部に取り付けられたシンブルロッドの横孔に連通し、把持金具が、紐の他端を把持する。これによって、シンブルロッドが一体にしばり付けられ、シンブルロッドの回転が規制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−224909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載されたシンブルロッドの回り止め治具を取り付ける場合、紐をシンブルロッドの横孔に挿通させ、紐の他端を把持金具で把持させなければならないので、手間がかかる。また、この治具を取り外す場合、紐の他端を把持金具から解放し、紐をシンブルロッドの横孔から抜き去らなければならないので、手間がかかる。
【0005】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、シンブルロッドの回転を規制する部材の取り付け及び取り外しの作業を要することなく、シンブルロッドの回転を規制することができるエレベーター装置及びエレベーター装置に用いられるシンブルロッド回り止め機構を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のエレベーター装置は、乗りかご及び釣合錘を懸垂するワイヤーロープと、ワイヤーロープに連結されたシンブルロッドを有し、シンブルロッドの回転を規制するシンブルロッド回り止め機構が設けられたエレベーター装置であって、シンブルロッド回り止め機構は、シンブルロッドと、貫通部材と、を備えている。
貫通部材は、シンブルロッドが貫通する貫通孔が形成された貫通部と、貫通孔を貫通したシンブルロッドがシンブルロッドの軸を中心に回転したときに、シンブルロッドの周面に接触してシンブルロッドが所定の角度を超えて回転することを規制するロッド回転規制部と、を有する。また、シンブルロッドは、シンブルロッドの軸からシンブルロッドの周面までの距離が周方向の位置に応じて異なるように形成されている。
【0007】
また、本発明のシンブルロッド回り止め機構は、乗りかご及び釣合錘を懸垂するワイヤーロープと、ワイヤーロープに連結されたシンブルロッドを有するエレベーター装置に用いられ、シンブルロッドの回転を規制するシンブルロッド回り止め機構であって、シンブルロッドと、貫通部材と、を備えている。貫通部材は、シンブルロッドが貫通する貫通孔が形成された貫通部と、貫通孔を貫通したシンブルロッドがシンブルロッドの軸を中心に回転したときに、シンブルロッドの周面に接触してシンブルロッドが所定の角度を超えて回転することを規制するロッド回転規制部と、を有する。シンブルロッドは、シンブルロッドの軸からシンブルロッドの周面までの距離が周方向の位置に応じて異なるように形成されている。
【0008】
本発明のエレベーター装置及びシンブルロッド回り止め機構では、シンブルロッドがシンブルロッドの軸を中心に所定の角度回転すると、ロッド回転規制部が、シンブルロッドの周面におけるシンブルロッドの軸からの距離が比較的長い箇所に接触する。これにより、シンブルロッドの所定の角度を超えた回転が規制される。したがって、ワイヤーロープの張力を調整する作業を行う際、作業者はシンブルロッドの回転を規制するための部材、例えば、複数のシンブルロッドを一体にしばり付ける回り止め治具を取り付ける又は取り外す必要がない。このため、作業者の作業負担を軽減することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シンブルロッドの回転を規制する部材の取り付け及び取り外しの作業を要することなく、シンブルロッドの回転を規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態に係るエレベーター装置の模式図である。
図2図1のエレベーター装置の要部断面図である。
図3図2のA−A線矢視断面図である。
図4図2のシンブルロッド部材のばね座を示す斜視図である。
図5図1のエレベーター装置及びシンブルロッド回り止め機構の作用を説明するための図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係るエレベーター装置のシンブルロッド回り止め機構を上方から見た要部断面図である。
図7図6のシンブルロッド部材のばね座を示す斜視図である。
図8図6のエレベーター装置及びシンブルロッド回り止め機構の作用を説明するための図である。
図9】本発明の第3の実施形態に係るエレベーター装置の要部断面図である。
図10図9のB−B線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施形態]
以下、本発明の第1の実施形態に係るエレベーター装置1及びシンブルロッド回り止め機構10について、図1図5を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
【0012】
<エレベーター装置1の構成の概要>
まず、図1を参照して、エレベーター装置1の構成の概要について説明する。
図1は、第1の実施形態に係るエレベーター装置1の模式図である。
【0013】
図1に示すように、エレベーター装置1は、ワイヤーロープ3、乗りかご4、釣合錘5、シンブルロッド部材6、マシンビーム7、巻上機8及び反らせ車9を備えている。また、エレベーター装置1は、シンブルロッド回り止め機構10を備えている。なお、エレベーター装置1は、複数のワイヤーロープ3及びシンブルロッド部材6を有しているが、図1では、ワイヤーロープ3及びシンブルロッド部材6を一つずつ示している。
【0014】
マシンビーム7は、梁状の部材である。マシンビーム7は、建物内に形成された昇降路2の上部を形成する機械室21内に設けられ、下部が機械室21の床面に固定されている。
【0015】
また、機械室21内には、巻上機8と巻上機8の駆動を制御する制御盤(図示省略)が設けられている。また、巻上機8の近傍には、反らせ車9が設けられている。
【0016】
シンブルロッド部材6は、マシンビーム7に支持されている。なお、シンブルロッド部材6のその他の構成については、後述する。
【0017】
乗りかご4は、略直方体状に形成され、下面には、かごガイドプーリ41が設けられている。
ワイヤーロープ3の一端部は、シンブルロッド部材6に連結され、ワイヤーロープ3の他端部は釣合錘5に連結されている。そして、ワイヤーロープ3は、かごガイドプーリ41、巻上機8、反らせ車9に巻回されている。
【0018】
このように構成されているエレベーター装置1において、巻上機8が駆動すると、乗りかご4は、昇降路2内に設置されたガイドレール(図示省略)に沿って昇降路2内を昇降する。
【0019】
<シンブルロッド回り止め機構10の構成>
次に、図2〜4を参照して、エレベーター装置1のシンブルロッド回り止め機構10の構成について説明する。
図2は、エレベーター装置1の要部断面図である。図3は、図2のA−A線矢視断面図である。図4は、図2のシンブルロッド部材6のばね座65を示す斜視図である。
本実施形態では、シンブルロッド部材6の後述するシンブルロッド61とマシンビーム7がシンブルロッド回り止め機構10を構成する。
【0020】
図2に示すように、シンブルロッド部材6は、シンブルロッド61、ワイヤーロープソケット62、シンブルロッドピン63、コイルばね64、ばね座65、平ワッシャ66、張力調整ナット67及びロックナット68を有している。
【0021】
ワイヤーロープソケット62は、略円筒状に形成されて、中心軸線が上下方向に沿って延びるように配置されている。ワイヤーロープソケット62は、上端部に開口を有する上開口部621を有し、また、下端部に開口を有する下開口部622を有している。
【0022】
ワイヤーロープソケット62の下部には、下開口部622の開口を挿通したワイヤーロープ3が係合している。ワイヤーロープソケット62の上部には、上開口部621の開口を挿通したシンブルロッド61の下端部と嵌合するシンブルロッドピン63が設けられている。シンブルロッドピン63がシンブルロッド61に嵌合することで、ワイヤーロープソケット62とシンブルロッド61とが係合している。
【0023】
シンブルロッド61は、上下方向に延びる棒状の部材である。シンブルロッド61は、コイル状に形成されたコイルばね64に挿入されている。
マシンビーム7には、上下方向に貫通する縦孔71が形成された縦孔部72が設けられている。シンブルロッド61は、この縦孔71を貫通している。シンブルロッド61の下端部には、シンブルロッドピン63が挿通する挿通孔(図示省略)を有する嵌合部611が形成されている。シンブルロッド61の上部は、ねじ部612を形成している。ねじ部612の周面には、ねじ溝が形成されている。
【0024】
シンブルロッド61における嵌合部611とねじ部612の間には、角棒部613が形成されている。角棒部613は、略角柱状に形成されている。図3に示すように、角棒部613は、軸方向に直交する断面が、略長方形状になるように形成されている。角棒部613は、軸方向に直交する断面の半径が所定値である円柱状の部材を用意し、この部材の周面における所定の箇所を切り取って互いに対向する2つの平面部614を設けることで、形成されている。したがって、シンブルロッド61の軸(中心軸線O)から平面部614までの距離は、シンブルロッド61の軸からシンブルロッド61の平面部614以外の周面(以降、湾曲周面615と称する場合がある)までの距離よりも短い。すなわち、シンブルロッド61の角棒部613は、シンブルロッド61の軸から周面までの距離が周方向の位置に応じて異なるように形成されている。
【0025】
また、図3に示すように、縦孔71は、縦孔71の輪郭が互いに対向する長辺部と、互いに対向する短辺部と、を有する略長方形状になるように形成されている。したがって、縦孔部72は、縦孔71の中心から縦孔部72の内周面までの距離が周方向の位置に応じて異なるように形成されている。
【0026】
角棒部613の軸方向に直交する断面における平面部614に直交する方向の長さd1は、マシンビーム7の縦孔71の輪郭における短辺部の長さd2よりも短く設定されている。
【0027】
湾曲周面615における直径d3は、マシンビーム7の縦孔71の輪郭における短辺部の長さd2よりも長く設定されている。したがって、縦孔71を貫通したシンブルロッド61の平面部614は、縦孔71の輪郭における長辺部に対向し、湾曲周面615は、縦孔71の輪郭における短辺部に対向する。
【0028】
図4に示すように、ばね座65は、外径の異なる二段の円筒状に形成されている。また、図2に示すように、ばね座65は、ばね座65の中心軸線がシンブルロッド61の中心軸線と一致するように、すなわちシンブルロッド61と同軸上に配置されている。ばね座65の上部には、円筒状の大径部651が形成されている。大径部651の筒孔には、コイルばね64の下部が挿入される。大径部651の周面は、コイルばね64の軸方向に交差する方向への移動を係止するばね係止部を形成している。
【0029】
図4に示すように、ばね座65の下部には、大径部651よりも内径の小さい円筒状の小径部652が形成されている。小径部652の内径d4は、角棒部613における湾曲周面615の内径d3(図3参照)よりもやや大きく設定されている。
【0030】
大径部651の下端部と、小径部652の上端部は、略円板状の連結部653によって連結されている。連結部653の中央には、上下方向に貫通する孔が形成されている。連結部653の孔は、小径部652の筒孔の径と同径になるように形成されている。すなわち、連結部653の孔によって、大径部651の筒孔と小径部652の筒孔とが連通している。
【0031】
小径部652には、周面の一部を切り欠いてなる切欠部654が2つ形成されている。2つの切欠部654は、小径部652の筒孔を挟んで対向するように形成されている。以降の説明において、小径部652の周面における切欠部654以外の部分(残余部分)、すなわち2つの円弧状の部分を、ばね座挿入部655と称する場合がある。2つのばね座挿入部655は、小径部652の筒孔を挟んで対向するように形成されている。
【0032】
図2に示すように、ばね座挿入部655は、マシンビーム7の縦孔71に、上方から挿入されている。また、連結部653の下面が、マシンビーム7の上面に当接している。縦孔71に挿入されたばね座挿入部655の外周面は、縦孔71の輪郭における短辺部に対向する。
【0033】
ばね座65の回転は、ばね座挿入部655の両端部が縦孔部72の内周面に当接することで規制されている。したがって、マシンビーム7の縦孔部72は、ばね座65の回転を規制している。また、縦孔部72は、ばね座65がマシンビーム7の上面を移動することを規制している。
【0034】
図2に示すように、平ワッシャ66は、中央部に上下方向に貫通する孔を有する円板状の部材である。平ワッシャ66の下面は、コイルばね64の上端部と当接している。平ワッシャ66の孔には、シンブルロッド61の上部が貫通している。
【0035】
張力調整ナット67は、シンブルロッド61のねじ部612に螺合されている。張力調整ナット67の下端部は、平ワッシャ66の上面に当接している。作業者は、張力調整ナット67を回転させてコイルばね64を弾性変形させることでシンブルロッド部材6に連結しているワイヤーロープ3の張力を調整できる。
【0036】
ロックナット68は、張力調整ナット67の上方で、シンブルロッド61のねじ部612に螺合されている。ロックナット68の下端部は、張力調整ナット67の上端部に当接しており、ロックナット68は、張力調整ナット67の緩み止めとして機能している。
【0037】
<エレベーター装置1及びシンブルロッド回り止め機構10の作用>
次に、図5を参照して、第1の実施形態に係るエレベーター装置1及びシンブルロッド回り止め機構10の作用について説明する。図5は、エレベーター装置1及びシンブルロッド回り止め機構10の作用を説明するための図である。
【0038】
図5に示すように、本実施形態のエレベーター装置1及びシンブルロッド回り止め機構10では、シンブルロッド61が中心軸線Oを中心に所定の角度回転すると、シンブルロッド61の角棒部613の周面が、マシンビーム7の縦孔部72の内周面に当接する。このため、シンブルロッド61が所定の角度を越えて回転することを規制することができる。したがって、シンブルロッド61が所定の角度を超えて回転することによって、張力調整ナット67及びロックナット68が緩んで又は締まって、ワイヤーロープ3の張力が変化することを防止することができる。
【0039】
上記のように、本実施形態では、マシンビーム7が、シンブルロッドが貫通する貫通孔(本実施形態では縦孔71)が形成された貫通部(本実施形態では縦孔部72)と、シンブルロッドが所定の角度を超えて回転することを規制するロッド回転規制部(本実施形態では縦孔部72の内周面)と、を有する貫通部材を構成する。
【0040】
また、本実施形態のエレベーター装置1及びシンブルロッド回り止め機構10では、作業者が張力調整ナット67を回転させてワイヤーロープ3の張力を調整する作業を行う際、シンブルロッド61の回転を規制するための部材、例えば、複数のシンブルロッド61を一体にしばり付ける回り止め治具を取り付ける又は取り外す必要がない。このため、作業者の作業負担を軽減することができる。
【0041】
なお、所定の角度は、小さければ小さいほど好ましいが、360度を超えない範囲で任意に設定可能である。例えば、所定の角度は、マシンビーム7の縦孔71の輪郭における短辺部の長さd2(図3参照)を調整することで、任意の角度に設定可能である。また、所定の角度は、シンブルロッド61の軸方向に直交する断面における平面部614に直交する方向の長さd1(図3参照)、又は、シンブルロッド61の湾曲周面615における内径d3(図3参照)を調整することで、任意の角度に設定可能である。
【0042】
また、本実施形態では、マシンビーム7の縦孔71を、縦孔71の輪郭が略長方形状になるように形成した。しかし、縦孔71の輪郭の形状は、縦孔部72の内周面が所定の角度回転したシンブルロッド61の角棒部613の周面と当接して所定の角度を超えたシンブルロッド61の回転を係止できる限りにおいて、任意に設定可能である。例えば、縦孔71の輪郭を、角棒部613の一回り大きい略相似形状にしてもよい。
【0043】
また、同様に、シンブルロッド61の形状も、上記に限定されない。シンブルロッド61の形状は、縦孔部72の内周面と所定の角度回転したシンブルロッド61の周面(側面)とが当接して所定の角度を超えたシンブルロッド61の回転が係止される限りにおいて、任意に変更可能である。例えば、シンブルロッド61の軸方向に直交する断面上の一方向を縦方向とし、同断面上で縦方向に直交する方向を横方向とするとき、シンブルロッド61の形状を、縦方向の寸法(縦寸法)と横方向の寸法(横寸法)とが異なる楕円状に同断面がなるようにしてもよい。この場合、縦孔部72は、縦孔71の輪郭がシンブルロッド61の同断面の一回り大きな略相似形状となるように、すなわち縦孔71の輪郭においても縦寸法と横寸法とが異なるように形成されるとよい。
【0044】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係るエレベーター装置100及びシンブルロッド回り止め機構110について、図6図8を参照して説明する。第2の実施形態は、シンブルロッド部材106の後述するシンブルロッド81及びばね座85の小径部852並びにマシンビーム107の縦孔171の形状が第1の実施形態とは異なる。なお、第1の実施形態と同一の構成の部材については、同一の符号を付し、また、その説明を適宜省略する。
【0045】
<エレベーター装置100及びシンブルロッド回り止め機構110の構成>
まず、図6及び図7を参照して、第2の実施形態におけるエレベーター装置100及びシンブルロッド回り止め機構110の構成について説明する。図6は、第2の実施形態に係るエレベーター装置100のシンブルロッド回り止め機構110を上方から見た要部断面図である。図7は、図6のシンブルロッド部材106のばね座85を示す斜視図である。本実施形態では、シンブルロッド81及びばね座85がシンブルロッド回り止め機構110を構成する。
【0046】
エレベーター装置100のマシンビーム107は、梁状の部材である。マシンビーム107は、建物内に形成された昇降路2(図1参照)の上部を形成する機械室21(図1参照)内に設けられ、下部が機械室21の床面に固定されている。マシンビーム107は、上下方向に貫通する縦孔(係合孔)171が形成された縦孔部(係合部)172を有している。図6に示すように、縦孔171の輪郭は、楕円状に形成されている。
【0047】
図7に示すように、エレベーター装置100のシンブルロッド部材106におけるばね座85は、外径の異なる二段の円筒状に形成されている。ばね座85の上部には、円筒状の大径部851が形成されている。大径部851の筒孔には、コイルばね84(図2参照)の下部が挿入される。大径部851の周面は、コイルばね84の軸方向に交差する方向への移動を係止するばね係止部を形成している。
【0048】
ばね座85の下部には、小径部852が形成されている。図6に示すように、小径部852は、軸方向に直交する断面の形状が楕円状になるように形成されている。したがって、小径部852は、小径部852の筒孔の中心から小径部852の内周面までの距離が周方向の位置に応じて異なるように形成されている。また、小径部852は、軸方向に直交する断面の形状がマシンビーム107における縦孔171の輪郭の一回り小さな略相似形状になるように形成されている。
【0049】
大径部851の下端部と、小径部852の上端部は、略円板状の連結部853によって連結されている。連結部853の中央には、上下方向に貫通する孔が形成されている。連結部853の孔は、小径部852の筒孔の径と同径になるように形成されている。ずなわち、連結部853の孔によって、大径部851の筒孔と小径部852の筒孔とが連通している。
【0050】
小径部852は、縦孔171に上方から挿入され、ばね座85は、縦孔部172に係合する。これによって、マシンビーム107の縦孔部172は、ばね座85の回転を規制し、また、ばね座85がマシンビーム107の上面を移動することを規制している。
【0051】
エレベーター装置100のシンブルロッド部材106におけるシンブルロッド81は、棒状に形成され、上部及び下部は略円柱状に形成されている。シンブルロッド81は、上部にねじ溝が形成されたねじ部(図示省略)を有している。ねじ部には、張力調整ナット67及びロックナット68(図2参照)が螺合している。また、シンブルロッド81は、下部に嵌合部(図示省略)を有している。嵌合部は、ワイヤーロープソケット62のシンブルロッドピン63(図2参照)に嵌合している。
【0052】
シンブルロッド81におけるねじ部と嵌合部との間には、第1の実施形態における角棒部613(図2参照)に代えて、楕円部813が形成されている。楕円部813は、図6に示すように、楕円部813の軸に直交する断面が楕円状になるように形成されている。したがって、楕円部813は、中心(シンブルロッド81の中心軸線O)から周面までの距離が周方向の位置に応じて異なるように形成されている。楕円部813の短径は、シンブルロッド81の上部及び下部の直径に略等しい。また、楕円部813は、軸に直交する断面の形状が小径部852における筒孔の輪郭の一回り小さな略相似形状になるように形成されている。楕円部813は、ばね座85の筒孔を貫通している。
【0053】
<エレベーター装置100及びシンブルロッド回り止め機構110の作用>
次に、図8を参照して、第2の実施形態に係るエレベーター装置100及びシンブルロッド回り止め機構110の作用について説明する。図8は、エレベーター装置100及びシンブルロッド回り止め機構110の作用を説明するための図である。
【0054】
図8に示すように、シンブルロッド81が中心軸線Oを中心に所定の角度回転すると、シンブルロッド81における楕円部813の周面が、ばね座85の小径部852の内周面に当接する。また、ばね座85の回転は、マシンビーム107の縦孔部172が規制している。
【0055】
このため、シンブルロッド81が所定の角度を越えて回転することを規制することができる。したがって、シンブルロッド81が所定の角度を超えて回転することによって、張力調整ナット67及びロックナット68(図2参照)が緩んで又は締まって、ワイヤーロープ3の張力が変化することを防止することができる。
【0056】
上記のように、本実施形態では、ばね座85が、シンブルロッドが貫通する貫通孔(本実施形態では小径部852の筒孔)が形成された貫通部(小径部852)と、シンブルロッドが所定の角度を超えて回転することを規制するロッド回転規制部(本実施形態では小径部852の内周面)と、を有する貫通部材を構成する。そして、ばね座85が固定されるマシンビーム107が支持部を構成する。
【0057】
また、本実施形態のエレベーター装置100及びシンブルロッド回り止め機構110では、作業者が張力調整ナット67を回転させてワイヤーロープ3の張力を調整する作業を行う際、作業者は、シンブルロッド81の回転を規制するための部材、例えば、複数のシンブルロッド81を一体にしばり付ける回り止め治具を取り付ける又は取り外す必要がない。このため、作業者の作業負担を軽減することができる。
【0058】
なお、所定の角度は、360度を超えない範囲で任意に設定可能である。例えば、所定の角度は、ばね座85の小径部852における軸方向に直交する断面の形状を変更することで、任意の角度に設定可能である。具体的には、断面の楕円における長径又は短径を変化させて断面の楕円の形状を変更することで所定の角度を任意の角度に設定できる。また、同様に、所定の角度は、シンブルロッド81の楕円部813における軸方向に直交する断面の楕円の形状を変更することで、任意の角度に設定可能である。
【0059】
なお、本実施形態では、シンブルロッド81の上部及び下部が略円柱状に形成された態様を説明したが、これに代えて、シンブルロッド81の下部を、楕円部813と同様に、軸方向に直交する断面が楕円状になるように形成してもよい。
【0060】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態に係るエレベーター装置200及びシンブルロッド回り止め機構210について、図9及び図10を参照して説明する。第3の実施形態は、シンブルロッド部材206のばね座95における小径部952の形状並びにマシンビーム207の縦孔部272の形状が第1の実施形態とは異なる。なお、第1の実施形態と同一の構成の部材については、同一の符号を付し、また、その説明を適宜省略する。
【0061】
<エレベーター装置200及びシンブルロッド回り止め機構210の構成>
まず、図9及び図10を参照して、第2の実施形態におけるエレベーター装置200及びシンブルロッド回り止め機構210の構成について説明する。図9は、本発明の第3の実施形態に係るエレベーター装置200の要部断面図である。図10は、図9のB−B線矢視断面図である。本実施形態では、シンブルロッド61と後述するマシンビーム207がシンブルロッド回り止め機構210を構成する。
【0062】
エレベーター装置200のマシンビーム207は、梁状の部材である。マシンビーム207は、建物内に形成された昇降路2の上部を形成する機械室21(図1参照)内に設けられ、下部が機械室21の床面に固定されている。マシンビーム207は、上下方向に貫通する縦孔271が形成された縦孔部272を有している。縦孔271の輪郭は、略真円状に形成されている。縦孔271の直経は、シンブルロッド61の湾曲周面615における内径d3(図10参照)よりも大きく設定されている。
【0063】
図9に示すように、マシンビーム207の下面には、略矩形板状の2つの狭窄部273が設けられている。2つの狭窄部273は、縦孔271を挟んで、互いに対向するように配置されている。また、各狭窄部273における上面の一部は、縦孔271と上下方向に対向している。狭窄部273のマシンビーム207の下面に、溶接、接着剤による接着又はボルト締結によって、固定されている。
【0064】
図10に示すように、互いに対向する狭窄部273の一端部間の距離d5は、シンブルロッド61の湾曲周面615における内径d3よりも小さく設定されている。
【0065】
図9に示すように、エレベーター装置200のシンブルロッド部材206におけるばね座95は、二段の円筒状に形成されている。また、ばね座95は、ばね座95の中心軸線がシンブルロッド61の中心軸線と一致するように、すなわちシンブルロッド61と同軸上に配置されている。ばね座95の上部には、円筒状の大径部951が形成されている。大径部951の筒孔には、コイルばね64の下部が挿入される。大径部951の周面は、コイルばね64の軸方向に交差する方向への移動を係止するばね係止部を形成している。
【0066】
また、ばね座95の下部には、大径部951よりも内径の小さい円筒状の小径部952が形成されている。小径部952は、軸方向に直交する断面が略真円状になるように形成されている。小径部952の外経は、縦孔271の直経(縦孔部272の内径)よりも小さく設定されている。小径部952の内径は、シンブルロッド61の湾曲周面615における内径d3よりも大きく設定されている。
【0067】
大径部951の下端部と、小径部952の上端部は、略円板状の連結部953によって連結されている。連結部953の中央には、上下方向に貫通する孔が形成されている。連結部953の孔は、小径部952の筒孔の径と同径となるように形成されている。連結部953の孔によって大径部951の筒孔と小径部952の筒孔とが連通している。
【0068】
小径部952は、縦孔271に上方から挿入され、ばね座95は、縦孔部272に係合する。これによって、マシンビーム207の縦孔部272は、ばね座95がマシンビーム207の上面を移動することを規制する。なお、ばね座95は、軸を中心に回転可能である。
【0069】
<エレベーター装置200及びシンブルロッド回り止め機構210の作用>
次に、第3の実施形態に係るエレベーター装置200及びシンブルロッド回り止め機構210の作用について説明する。
シンブルロッド61が中心軸線Oを中心に所定の角度回転すると、シンブルロッド61における角棒部613の周面が、狭窄部273に当接する。このため、シンブルロッド61が所定の角度を越えて回転することを規制することができる。したがって、シンブルロッド61が所定の角度を超えて回転することによって、張力調整ナット67及びロックナット68が緩んで又は締まって、ワイヤーロープ3の張力が変化することを防止することができる。
【0070】
上記のように、本実施形態では、マシンビーム207が、シンブルロッドが貫通する貫通孔(本実施形態では縦孔271)が形成された貫通部(縦孔部272)と、シンブルロッドが所定の角度を超えて回転することを規制するロッド回転規制部(狭窄部273)と、を有する貫通部材を構成する。
【0071】
また、本実施形態のエレベーター装置200及びシンブルロッド回り止め機構210では、作業者が張力調整ナット67を回転させてワイヤーロープ3の張力を調整する作業を行う際、シンブルロッド61の回転を規制するための部材、例えば、複数のシンブルロッド61を一体にしばり付ける回り止め治具を取り付ける又は取り外す必要がない。このため、作業者の作業負担を軽減することができる。
【0072】
なお、所定の角度は、360度を超えない範囲で任意に設定可能である。例えば、所定の角度は、互いに対向する狭窄部273の一端部間の距離d5を調整することで、任意の角度に設定可能である。また、所定の角度は、シンブルロッド61の軸方向に直交する断面における平面部614に直交する方向の長さd1の長さ、又は、シンブルロッド61の湾曲周面615における内径d3の長さを調整することで、調整可能である。
【0073】
以上、本発明のエレベーター装置及びシンブルロッド回り止め機構の実施の形態について、その作用効果も含めて説明した。しかしながら、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0074】
例えば、第1〜第3の実施形態におけるシンブルロッド回り止め機構10,110,210を乗りかごや釣合錘に設けてもよい。この場合、シンブルロッド部材6,106,206及びマシンビーム7,107,207を、乗りかごや釣合錘に設ける。
【0075】
また、第3の実施形態では、2つの狭窄部273をマシンビーム207に設けた態様を説明したが、狭窄部273を1つのみマシンビーム207に設けてもよい。また、狭窄部273をばね座65の大径部651の上面に設けてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1,100,200…エレベーター装置、 2…昇降路、 3…ワイヤーロープ、 5…釣合錘、 6,106,206…シンブルロッド部材、 7,107,207…マシンビーム、 8…巻上機、 9…反らせ車、 10,110,210…シンブルロッド回り止め機構、 21…機械室、 61,81,95…シンブルロッド、 62…ワイヤーロープソケット、 63…シンブルロッドピン、 65,85…ばね座、 66…平ワッシャ、 67…張力調整ナット、 68…ロックナット、 71,171,271…縦孔、 72,172,272…縦孔部、 273…狭窄部、 611…嵌合部、 612…ねじ部、 613…角棒部、 614…平面部、 615…湾曲周面、 651,851,951…大径部、 652,852,952…小径部、 653,853,953…連結部、 654…切欠部、 655…座挿入部、 813…楕円部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10