【解決手段】電動弁1において、弁ガイド20内にピストン状に移動可能に収容された弁部材30が、その軸心が弁座部16の軸心を通る軸線P上に配置される。この弁部材30は、環状面32及び当該環状面32の外周縁全周にわたって内周縁が連接された外周面31cを有しており、環状面32と外周面31cとの連接箇所であるシールエッジKが、弁閉時にその全周にわたって着座面17に当接されるように形成されている。そして、着座面17、環状面32及び外周面31cのそれぞれと軸線Pとがなす角度をそれぞれα、β1及びβ2としたとき(但し、α、β1及びβ2はそれぞれ同じ向きに開く角の角度)、β2<α<β1、及び、β1−β2<90度、の関係を満たすようにそれぞれの面が形成されている。
弁ポートが設けられた弁ハウジングと、前記弁ポートと連通して設けられ、すり鉢形状の着座面を有する環状の弁座部と、前記弁座部の軸心を通る軸線上に軸心が配置され、前記弁ハウジング内で当該弁座部と一方の端部が間隔をあけて対向するように設けられたシリンダ部と、前記弁座部の着座面に対して離座及び着座するように前記シリンダ部内にピストン状に移動可能に収容された弁部材と、前記シリンダ部内の空間が前記弁部材に区画されて形成された当該シリンダ部内における他方の端部側の背圧室と前記弁ポートとを連通するように、前記弁ハウジング又は前記弁部材に設けられた均圧路と、を備えた流量制御弁において、
前記弁部材が、それぞれ前記軸線を中心として配置された第1の面及び当該第1の面の外周縁全周にわたって内周縁が連接された第2の面を有し、
前記第1の面と前記第2の面との連接箇所が、弁閉時にその全周にわたって前記着座面に当接されるように形成され、
前記着座面、前記第1の面及び前記第2の面のそれぞれと前記軸線とがなす角度をそれぞれα、β1及びβ2としたとき(但し、α、β1及びβ2はそれぞれ同じ向きに開く角の角度)、β2<α<β1、及び、β1−β2<90度、の関係を満たすようにそれぞれの面が形成されている
ことを特徴とする流量制御弁。
前記第1の面が、環状に形成されるとともに、その内周縁が前記軸線と直交するように形成された前記弁部材における前記弁ポート寄りの端面の外周縁と全周にわたって連接され、
前記第1の面と前記軸線とがなす角度β1がβ1<90度の関係を満たすように、当該第1の面が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の流量制御弁。
前記第1の面と前記第2の面との連接箇所内側の平面視面積が前記シリンダ部の内側空間の横断面積と略同一になるように、前記弁部材が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の流量制御弁。
前記弁部材に設けられるとともに外周縁が前記シリンダ部の内周面に摺動可能に接して、又は、前記シリンダ部に設けられるとともに内周縁が前記弁部材の外周面に摺動可能に接して、前記シリンダ部と前記弁部材との間を封止する環状に形成されたシール部材をさらに備え、
前記第1の面と前記第2の面との連接箇所内側の平面視面積が前記シール部材における前記摺動可能に接する外周縁又は内周縁の内側の平面視面積と略同一になるように、前記弁部材が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の流量制御弁。
【背景技術】
【0002】
従来、このような圧力バランス型の流量制御弁として、例えば、特許文献1に開示されたものがある。
図9に、従来の圧力バランス型の流量制御弁の一例としての電動膨張弁の縦断面図を示す。
【0003】
図9に示す電動膨張弁(図中、符号800で示す)は、弁本体801と、弁部材804と、ばね805と、弁棒806と、パッキン807と、電動アクチュエータ809と、を備えている。
【0004】
弁本体801は、略円筒形に形成されている。弁本体801の側壁801aには、第1流体通路A1と連通する入口ポート811が設けられ、底壁801bには、第2流体通路A2と連通する弁ポート812が設けられている。弁ポート812は、すり鉢形状の着座面813aを備えた弁座部813と連通されている。また、弁本体801の図中上部には蓋816が取り付けられており、蓋816には、雄ねじ筒817が植立されている。雄ねじ筒817には、弁棒806の図中上部が貫通されている。
【0005】
弁部材804は、軸方向全体にわたって外径が均一な円柱状に形成されており、弁本体801をシリンダ部としてピストン状に移動可能に収容されている。弁部材804は、弁本体801の内部空間を弁室814と背圧室815とに区画している。弁室814は、入口ポート811と連通されている。弁部材804の図中下方に位置する下端面804aは、弁座部813に対向している。また、弁部材804には、弁ポート812と背圧室815とを連通する均圧路841が設けてある。弁部材804は、ばね805によって弁座部813に向かって常時押圧されている。弁部材804は、その図中上部に弁棒806の下端がストッパ806aにより係止可能に貫入されており、当該弁棒806が図中上方に引き上げられるとストッパ806aが弁部材804に係止して、弁部材804も共に引き上げられる。環状のパッキン807は、外周縁が弁本体801に固定され、内周縁内側に弁部材804が挿通されて、弁本体801と弁部材804との間で流体の漏洩を阻止し、かつ相互に摺動することを妨げないように設けられている。
【0006】
電動アクチュエータ809は、弁本体801の図中上部に取り付けられており、ロータ892と、ステータコイル893と、シールドチューブ894と、を有している。ロータ892は、シールドチューブ894の内側に設けられている。ロータ892は、雄ねじ筒817に回転自在に螺着され、かつ弁棒806の上端部863と回転自在に結合している。ステータコイル893は、シールドチューブ894の外側に取り付けられている。
【0007】
ロータ892は、回転されることによって雄ねじ筒817の軸心方向(図中、上下方向)に移動する。そして、ロータ892の移動は、ばね895によって遊びがないように弁棒806に伝えられて、弁棒806はロータ892の回転量に比例して進退する。つまり、電動アクチュエータ809の駆動により、弁棒806及びその下端に固着された弁部材804が上下動し、弁ポート812の周囲の弁座部813の着座面813aに対して弁部材804が離座/着座する。
【0008】
この電動膨張弁800において、弁ポート812と背圧室815とは、均圧路841によって連通されている。そのため、弁部材804の背圧室815側の上端面804bに作用する流体圧力と、弁部材804の弁ポート812側の下端面804aに作用する流体圧力との圧力バランスがとれ、弁部材804を上下動させるときの電動アクチュエータ809の駆動力が軽減される。
【0009】
具体的には、パッキン807の弁部材804に対するシール面積(即ち、パッキン804の内周縁内側の平面視面積であり、弁部材804の上端面804bの面積と同一)をS1、下端面804aの面積をS2、弁ポート812における流体圧力をP2、上向きの力を正とすると、弁閉時の圧力バランス、即ち、弁部材804に対してその軸心方向(図中上下方向)に加わる力Fは、次の(i)式で表され、
F=P2(S2−S1) ・・・(i)
つまり、弁部材804の上端面804bの面積S1と下端面804aの面積S2とを同一(略同一含む)にすることで弁部材804に対して軸心方向に加わる力を相殺させて、弁部材804の移動に必要な駆動力を小さくし、これにより、電動アクチュエータ809を小型化できた。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1実施形態)
以下に、本発明の流量制御弁の第1実施形態としての電動弁を、
図1〜
図3を参照して説明する。
【0025】
図1は、本発明に係る流量制御弁の第1実施形態である電動弁の縦断面図である。
図2は、
図1の電動弁の弁部材及び弁座部を模式的に示した拡大断面図であって、弁部材が着座している状態(弁閉状態)を示す図である。
図3は、第1実施形態の電動弁において、弁部材が離座している状態(弁開状態)での弁座部の着座面及び弁部材との間を流れる流体の様子について説明する図である。なお、以下の説明における「上下」の概念は、各図における上下に対応しており、各部材の相対的な位置関係を示すものであって、絶対的な位置関係を示すものではない。
【0026】
本実施形態の電動弁(各図中、符号1で示す)は、弁ハウジングとしての弁本体10と、弁座部16と、シリンダ部としての弁ガイド20と、弁部材30と、均圧路36と、シール部材としてのパッキン部37と、弁部材移動手段としての弁部材駆動部40と、を有している。
【0027】
弁本体10は、略円筒形状に形成されており、その内側には弁室10Aが形成されている。弁本体10は、その周壁10aに円形の一次側継手接続孔11が形成され、その下端の底壁10bに円形の二次側継手接続孔12が形成されている。一次側継手接続孔11には、一次側継手管A1が固定して取り付けられて、当該一次側継手管A1と弁本体10に設けられた一次側ポート13とが連通されている。また、二次側継手接続孔12には、二次側継手管A2が固定して取り付けられて、この二次側継手管A2と弁本体10に設けられた二次側ポート14と連通されている。二次側ポート14は後述する環状の弁座部16と連通されている。二次側ポート14は、弁ポートに相当する。
【0028】
弁座部16は、円形環状に形成されて、弁本体10内に二次側ポート14を通じて二次側継手接続孔12と連通して設けられている。弁座部16は、図中上方から下方に向かうにしたがって内径が徐々に小さくなる単一のすり鉢形状の着座面17を有している。この着座面17は、後述する弁部材30が弁座部16に着座したときに当該弁部材30が当接される。
【0029】
弁ガイド20は、弁ガイド本体部21と、弁ガイド蓋部22と、を有している。弁ガイド本体部21は、両端部が開口された略円筒形状に形成されている。弁ガイド本体部21は、その下端部21aと弁座部16とが間隔をあけて対向するように配置されて、弁本体10内に固定して取り付けられている。弁ガイド蓋部22は、弁ガイド本体部21の上端部21bを塞ぐように当該弁ガイド本体部21に固定金具23によって固定して取り付けられている。弁ガイド蓋部22には、それを上下方向に貫通するように形成された雌ねじ部22aが設けられている。弁ガイド20は、シリンダ部に相当する。弁ガイド本体部21内の空間が、シリンダ部の内側空間に相当する。
【0030】
弁部材30は、全体として略円柱形状に形成されており、弁ガイド20内に上下方向に摺動移動可能に配設されている。つまり、弁部材30は、弁ガイド20内にピストン状に移動可能に収容されている。弁部材30は、弁ガイド20内に収容されることにより、弁ガイド20内の空間を区画して、弁ガイド20内における上端部21b側に背圧室25が形成される。
【0031】
弁部材30は、弁体31と、連結金具34と、を有している。
【0032】
弁体31は、略円柱形状に形成されている。弁体31は、その外周面31cが弁ガイド本体部21の内周面21cに摺動可能に接して配置されている。即ち、弁体31の外径は、弁ガイド本体部21の内径と略同一である。弁体31の詳細形状については後述する。
【0033】
連結金具34は、弁体31より外径の小さい略円筒形状に形成されている。連結金具34は、下端部34aが開口されかつ上端部34bにばね受け部35が設けられている。連結金具34の周壁34cにおける上端部34b寄りの箇所には、連結金具34の内外を連通する貫通孔34dが形成され、この貫通孔34dの下方の箇所には、フランジ部34eが設けられている。
【0034】
連結金具34は、その図中下側の半分程度が弁体31を貫通して固定して取り付けられている。これにより、連結金具34の内側空間及び貫通孔34dによって、二次側ポート14と背圧室25とを連通する均圧路36が構成される。
【0035】
パッキン部37は、円形環状に形成されており、その外周縁が弁ガイド本体部21の内周面21cに密封状態で摺動可能に接するよう構成されている。パッキン部37は、連結金具34のフランジ部34eと弁体31の上面31dとの間に、皿ばね受け38及び皿ばね39とともに狭持されている。つまり、パッキン部37は、円形環状に形成され、弁部材30に設けられるとともに外周縁が弁ガイド本体部21の内周面21cに摺動可能に接して、弁ガイド本体部21と弁部材30との間を封止する。この構成以外にも、例えば、
図9に示す従来の構成のパッキン807のように、パッキン部が、環状に形成され、弁ガイド本体部21に設けられるとともに内周縁が弁部材30(具体的には、弁体31)の外周面31cに摺動可能に接して、弁ガイド本体部21と弁部材30との間を封止するような構成としてもよい。パッキン部37は、シール部材に相当する。
【0036】
二次側継手接続孔12、二次側ポート14、弁座部16、弁ガイド20及び弁部材30は、それぞれの軸心が軸線P上に位置づけられるように配置されている。
【0037】
弁部材駆動部40は、弁部材ホルダ50と、モータ60と、を有している。
【0038】
弁部材ホルダ50は、ホルダ部51と、コイル状の圧縮ばね53と、ばね受け部54と、を有している。ホルダ部51は、下端部51aが開口されかつ上端部51bが上壁52で塞がれた略円筒形状に形成されている。ホルダ部51には、圧縮ばね53が収容されており、さらに、この圧縮ばね53の上端部を受けるようにしてばね受け部54がホルダ部51内を上下方向に移動可能に収容されている。また、ホルダ部51の下端部51aには、弁部材30の連結金具34のばね受け部35が圧縮ばね53の下端部を受けるようにして固定して取り付けられている。これにより、圧縮ばね53によってばね受け部54がホルダ部51の上壁52に押しつけられている。ホルダ部51の上壁52は、後述するモータ60のロータ軸64の下方の先端64aが当該ホルダ部51に対して回転可能に貫通しており、ホルダ部51内で、この先端64aとばね受け部54とが接している。
【0039】
モータ60は、ステッピングモータで構成されており、モータケース61と、マグネットロータ63と、ステータコイル66と、回転ストッパ機構70と、を有している。
【0040】
モータケース61は、下端部61aが開口されかつ上端部61bが上壁62で塞がれた略円筒形状に形成されている。モータケース61は、その下端部61aが弁ガイド本体部21の上端部21bに固定して取り付けられている。
【0041】
マグネットロータ63は、モータケース61内に同軸に収容されている。マグネットロータ63は、ロータ軸64と、ロータ軸64に固定して取り付けられたマグネット部65と、を有している。ロータ軸64は、その軸心が軸線P上に位置づけられるように配置されている。ロータ軸64の外周面の一部には雄ねじ部64bが設けられており、弁ガイド蓋部22の雌ねじ部22aと螺合されている。このように、マグネットロータ63は、弁ガイド20(具体的には弁ガイド蓋部22)と螺合されているので、回転されることにより軸線P方向(即ち、上下方向)に移動する。
【0042】
ステータコイル66は、モータケース61の外周面に固定して取り付けられている。このステータコイル66は、パルス信号が与えられることにより、そのパルス信号に含まれるパルス数に応じてマグネットロータ63を回転させる。
【0043】
回転ストッパ機構70は、モータケース61の上壁52の内面側に設けられている。回転ストッパ機構70は、螺旋ガイド線体71と、マグネットロータ63のマグネット部65に取り付けられた竿65aにより螺旋ガイド線体71の各螺旋間を蹴り回される可動ストッパ部材72と、を有している。回転ストッパ機構70は、マグネットロータ63が所定の上限位置(即ち、弁部材30の弁開上限位置)まで移動したとき、可動ストッパ部材72が、モータケース61に設けられたストッパ(図示なし)に突き当たる。これにより、マグネットロータ63の回転、即ち、上限位置を超えた移動が規制される。
【0044】
次に、
図2を参照して、弁部材30の弁体31の具体的な形状について説明する。
【0045】
図2に示すように、弁体31の環状の下端面31aと環状の外周面31cとの間には、図中上方から下方に向かうにしたがって徐々に外径が小さくなる先細りのテーパ状の環状面32が設けられている。この環状面32は、中心が軸線P上に位置づけられるように形成されている。環状面32は、その外周縁が全周にわたって外周面31cの図中下方の縁部(内周縁)に連接されており、つまり、環状面32は、外周面31cと軸線P方向に連接して同心に配置されている。環状面32は、第1の面に相当し、外周面31cは、第2の面に相当する。環状面32は、面取りによって形成される微少なテーパ面などは含まず、本発明の作用効果が発揮できる程度の大きさを有しているものである。環状面32は、その幅が弁部材30のシールエッジKの半径の5%以上あることが好ましい。
【0046】
環状面32と外周面31cとが連接されることにより外側に凸の角部となるシールエッジKが形成される。このシールエッジKは、弁閉時に全周にわたって着座面17に当接されるように形成されており、シールエッジKが着座面17に当接されることにより、弁室10Aと二次側ポート14との間を密封して仕切る。このシールエッジKは、その径が弁ガイド本体部21の内周面21cに対するパッキン部37のシール径(即ち、パッキン部37の外周縁の径であり、弁ガイド本体部21の内径でもある)と略同一に形成されている。これにより、シールエッジK内側について軸線P方向から見た平面視面積は、パッキン部37の外周縁の内側の平面視面積と略同一となり、また、弁ガイド本体部21の内側空間の横断面積(軸方向に直交する断面の面積)と略同一となる。シールエッジKは、環状面32(第1の面)と外周面31c(第2の面)の連接箇所に相当する。
【0047】
また、弁座部16の着座面17、弁体31の環状面32及び外周面31cのそれぞれと軸線Pとがなす角度をそれぞれα、β1及びβ2としたとき(但し、α、β1及びβ2はそれぞれ同じ向き(図中上方向き)に開く角の角度)β2<α<β1の関係を満たすように、それぞれの面が形成されている。これにより、弁閉時においてシールエッジKのみが確実に着座面17に当接される。
【0048】
また、β1−β2<90度の関係を満たすように環状面32及び外周面31cが形成されている。これにより、環状面32と外周面31cとがなす角度θ1が鈍角(90度超)となる。そのため、外周面31cに沿って流れる流体が環状面32に至ったときに、当該流体の流れる方向の角度変化が90度未満となる。環状面32と外周面31cとがなす角度θ1は、100度〜120度程度が好ましい。本実施形態において、β1<90度である。また、β2=0であり、つまり、外周面31cと軸線Pとは平行に形成されている。
【0049】
また、弁体31の下端面31aは、軸線Pを中心として当該軸線Pに対して直交するように形成され、外周面31cは軸線Pに平行に形成されている。このことから、環状面32と下端面31aとがなす角度θ2についても鈍角(90度超)となる。そのため、上記と同様に、環状面32に沿って流れる流体が下端面31aに至ったときに、当該流体の流れる方向の角度変化が90度未満となる。
【0050】
次に、
図3を参照して、上述した本実施形態の電動弁1における動作(作用)について説明する。
【0051】
電動弁1において、弁閉時に弁部材30(具体的には弁体31)における環状面32と外周面31cとの連接箇所であるシールエッジKが全周にわたって弁座部16の着座面17に当接して、弁室10A側と二次側ポート14(弁ポート)側とを仕切り、流体の流れを遮断する。
【0052】
そして、弁部材駆動部40により弁部材30が弁開方向に移動されて、弁部材30のシールエッジKが着座面17から離れると、弁開状態となって、着座面17と弁部材30との間を通って弁室10A側から二次側ポート14側に流体が流れる。
【0053】
このときの流体の流れを
図3に示す。電動弁1においては、弁部材30の外周面31cと環状面32とがなす角度θ1が鈍角(90度超)となるように当該弁部材30が形成されているので、着座面17とシールエッジKとの間を通過した流体(図中、その流れを矢印で示す)は、流速が比較的速い場合でも弁部材30の環状面32に沿うように回り込むことが可能となり、当該環状面32から大きく剥離してしまうことが抑制される。そのため、環状面32の外周面31c寄りの周縁部分近傍に圧力の低い箇所が生じることを防ぐことができる。これにより、弁部材30に対して軸心方向に加わる力のバランスを保つことができる。
【0054】
また、環状面32から下端面31aに流れるときも、これら面がなす角度θ2が鈍角であるため、同様に下端面31aの環状面32寄りの周縁部分近傍に圧力の低い箇所が生じることを防ぐことができる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態の電動弁1は、二次側ポート14が設けられた弁本体10と、二次側ポート14と連通して設けられ、すり鉢形状の着座面17を有する環状の弁座部16と、弁座部16の軸心を通る軸線P上に軸心が配置され、弁本体10内で当該弁座部16と下端部21aが間隔をあけて対向するように設けられた弁ガイド20と、弁座部16の着座面17に対して離座及び着座するように弁ガイド20内にピストン状に移動可能に収容された弁部材30と、弁ガイド20内の空間が弁部材30に区画されて形成された当該弁ガイド20内における上端部21b側の背圧室25と二次側ポート14とを連通するように、弁部材30に設けられた均圧路36と、を備えている。弁部材30が、それぞれ軸線Pを中心として配置された環状面32及び環状面32の外周縁全周にわたって内周縁が連接された外周面31cを有し、環状面32と外周面31cとの連接箇所であるシールエッジKが、弁閉時にその全周にわたって着座面17に当接されるように形成されている。そして、着座面17、環状面32及び外周面31cのそれぞれと軸線Pとがなす角度をそれぞれα、β1及びβ2としたとき(但し、α、β1及びβ2はそれぞれ同じ向きに開く角の角度)、β2<α<β1、及び、β1−β2<90度、の関係を満たすようにそれぞれの面が形成されている。
【0056】
また、電動弁1は、環状面32の内周縁が、軸線Pと直交するように形成された弁部材30における二次側ポート14の下端面31aの外周縁と全周にわたって連接され、環状面32と軸線Pとがなす角度β1がβ1<90度の関係を満たすように、当該環状面32が形成されている。
【0057】
また、電動弁1は、シールエッジK内側の平面視面積が弁ガイド本体部21の内側空間の横断面積と略同一になるように、弁部材30が形成されている。
【0058】
また、電動弁1は、弁部材30に設けられるとともに外周縁が弁ガイド本体部21の内周面21cに摺動可能に接して、弁ガイド本体部21と弁部材30との間を封止する円形環状に形成されたパッキン部37をさらに備えている。そして、シールエッジK内側の平面視面積がパッキン部37における外周縁の内側の平面視面積と略同一になるように、弁部材30が形成されている。
【0059】
以上より、本実施形態によれば、弁ガイド20内にピストン状に移動可能に収容された弁部材30は、その軸心が弁座部16の軸心を通る軸線P上に配置される。この弁部材30は、それぞれ軸線Pを中心として配置された環状面32及び当該環状面32の外周縁全周にわたって内周縁が連接された外周面31cを有しており、環状面32と外周面31cとの連接箇所であるシールエッジKが、弁閉時にその全周にわたって着座面17に当接されるように形成されている。そして、着座面17、環状面32及び外周面31cのそれぞれと軸線Pとがなす角度をそれぞれα、β1及びβ2としたとき、β2<α<β1、及び、β1−β2<90度、の関係を満たすようにそれぞれの面が形成されている。このようにしたことから、弁閉時は、上記シールエッジKがその全周にわたって着座面17に当接されることにより二次側ポート14が閉じられる。そして、弁開時は、外周面31cからシールエッジKを通過して環状面32に流体が流れるところ、外周面31cから環状面32に至ったときの角度変化が90度より小さくなるため、従来の構成に比べて、外周面31cからシールエッジKを通過したあとに環状面32に沿って流体が流れやすくなり、環状面32から流体の流れが剥離することを抑制できる。そのため、弁開時において弁部材30の軸心方向に加わる力のバランスが崩れてしまうことを抑制できる。
【0060】
また、環状面32の内周縁が、弁座部16の軸心を通る軸線Pと直交するように形成された弁部材30の下端面31aの外周縁と全周にわたって連接され、環状面32と軸線Pとがなす角度β1がβ1<90度の関係を満たすように、当該環状面32が形成されている。このようにしたことから、弁部材30の下端面31aを第1の面とした構成に比べて、第1の面としての環状面32と下端面31aとが別個に設けられて流体が段階を経て流れの角度が変えられて当該下端面31aに至るため、環状面32及び下端面31aから流体の流れが剥離することを抑制でき、弁開時において弁部材30の軸心方向に加わる力のバランスが崩れてしまうことをより抑制できる。
【0061】
また、環状面32と外周面31cの連接箇所であるシールエッジK内側の平面視面積が弁ガイド本体部21の内側空間の横断面積と略同一になるように、弁部材30が形成されている。このようにしたことから、流体圧力により弁部材30に対して軸心方向に加わる力を相殺させて、弁部材30の軸心方向に加わる力をバランスさせることができる。
【0062】
また、弁部材30に設けられるとともに外周縁が弁ガイド本体部21の内周面21cに摺動可能に接して、弁ガイド本体部21と弁部材30との間を封止する円形環状に形成されたパッキン部37をさらに備えている。そして、環状面32と外周面31cの連接箇所であるシールエッジK内側の平面視面積がパッキン部37における弁ガイド本体部21の内周面21cに摺動可能に接する外周縁の内側の平面視面積と略同一になるように、弁部材30が形成されている。このようにしたことから、パッキン部37により弁ガイド本体部21と弁部材30との間の封止性をより高め、流体圧力により弁部材30に対して軸心方向に加わる力をより確実に相殺させて、弁部材30の軸心方向に加わる力をさらにバランスさせることができる。
【0063】
(第2実施形態)
以下に、本発明の流量制御弁の第2実施形態としての電動弁を、
図4、
図5を参照して説明する。
【0064】
図4は、本発明に係る流量制御弁の第2実施形態である電動弁の弁部材及び弁座部を模式的に示した拡大断面図であって、弁部材が着座している状態(弁閉状態)を示す図である。
図5は、第2実施形態の電動弁において、弁部材が離座している状態(弁開状態)での弁座部の着座面及び弁部材との間を流れる流体の様子について説明する図である。
【0065】
第2実施形態の電動弁1Aは、上述した第1実施形態の電動弁1において、弁部材30に代えて、構成の異なる弁部材30Aを有していること以外は、第1実施形態の電動弁1と同一であるので、同一の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0066】
弁部材30Aは、弁体31Aと、連結金具34と、を有している。連結金具34は、上述した第1の実施形態と同一の構成である。
【0067】
図4に示すように、弁体31Aは、略円柱形状に形成された本体部分311と、本体部分311の図中下方の端部に半径方向に張り出した突出部分312と、を有している。本体部分311は、その外周面311cが弁ガイド本体部21の内周面21cに摺動可能に接して配置されている。即ち、本体部分311の外径は、弁ガイド本体部21の内径と略同一である。
【0068】
突出部分312には、図中上方から下方に向かうにしたがって徐々に外径が小さくなる先細りのテーパ状の環状面33が設けられている。この環状面33は、中心が軸線P上に位置づけられるように形成されている。環状面33は、その内周縁が全周にわたって下端面31aの外周縁と連接されており、換言すると、下端面31aの外周縁が全周にわたって環状面33の内周縁と連接されている。下端面31aは、第1の面に相当し、環状面33は、第2の面に相当する。環状面33は、面取りによって形成される微少なテーパ面などは含まず、本発明の作用効果が発揮できる程度の大きさを有しているものである。環状面33は、その幅が弁部材30AのシールエッジKの半径の5%以上あることが好ましい。
【0069】
下端面31aと環状面33とが連接されることにより外側に凸の角部となるシールエッジKが形成される。このシールエッジKは、弁閉時に全周にわたって着座面17に当接されるように形成されており、シールエッジKが着座面17に当接されることにより、弁室10Aと二次側ポート14との間を密封して仕切る。このシールエッジKは、その径が弁ガイド本体部21の内周面21cに対するパッキン部37のシール径(即ち、パッキン部37の外周縁の径であり、弁ガイド本体部21の内径でもある)と略同一に形成されている。これにより、シールエッジK内側について軸線P方向から見た平面視面積は、パッキン部37の外周縁の内側の平面視面積と略同一となり、また、弁ガイド本体部21の内側空間の横断面積と略同一となる。シールエッジKは、下端面31a(第1の面)と環状面33(第2の面)との連接箇所に相当する。
【0070】
また、弁座部16の着座面17、弁体31Aの下端面31a及び環状面33のそれぞれと軸線Pとがなす角度をそれぞれα、β1及びβ2としたとき(但し、α、β1及びβ2はそれぞれ同じ向き(図中上方向き)に開く角の角度)β2<α<β1の関係を満たすように、それぞれの面が形成されている。これにより、弁閉時においてシールエッジKのみが確実に着座面17に当接される。
【0071】
また、β1−β2<90度の関係を満たすように下端面31a及び環状面33が形成されている。これにより、下端面31aと環状面33とがなす角度θが鈍角(90度超)となる。そのため、環状面33に沿って流れる流体が下端面31aに至ったときに、当該流体の流れる方向の角度変化が90度未満となる。下端面31aと環状面33とがなす角度θは、100度〜120度程度が好ましい。本実施形態において、β1=90であり、つまり、下端面31aと軸線Pとは直交するように形成されている。また、0<β2である。
【0072】
次に、
図5を参照して、上述した本実施形態の電動弁1Aにおける動作(作用)について説明する。
【0073】
電動弁1Aにおいて、弁閉時に弁部材30A(具体的には弁体31A)における下端面31aと環状面33との連接箇所であるシールエッジKが全周にわたって弁座部16の着座面17に当接して、弁室10A側と二次側ポート14(弁ポート)側とを仕切り、流体の流れを遮断する。
【0074】
そして、弁部材駆動部40により弁部材30Aが弁開方向に移動されて、弁部材30AのシールエッジKが着座面17から離れると、弁開状態となって、着座面17と弁部材30Aとの間を通って弁室10A側から二次側ポート14側に流体が流れる。
【0075】
このときの流体の流れを
図5に示す。電動弁1Aにおいては、弁部材30Aの環状面33と下端面31aとがなす角度θが鈍角(90度超)となるように当該弁部材30Aが形成されているので、着座面17とシールエッジKとの間を通過した流体(図中、その流れを矢印で示す)は、流速が比較的速い場合でも弁部材30Aの下端面31aに沿うように回り込むことが可能となり、当該下端面31aから大きく剥離してしまうことが抑制される。そのため、下端面31aの環状面33寄りの周縁部分近傍に圧力の低い箇所が生じることを防ぐことができる。これにより、弁部材30Aに対して軸心方向に加わる力のバランスを保つことができる。
【0076】
以上説明したように、本実施形態の電動弁1Aは、二次側ポート14が設けられた弁本体10と、二次側ポート14と連通して設けられ、すり鉢形状の着座面17を有する環状の弁座部16と、弁座部16の軸心を通る軸線P上に軸心が配置され、弁本体10内で当該弁座部16と下端部21aが間隔をあけて対向するように設けられた弁ガイド20と、弁座部16の着座面17に対して離座及び着座するように弁ガイド20内にピストン状に移動可能に収容された弁部材30Aと、弁ガイド20内の空間が弁部材30Aに区画されて形成された当該弁ガイド20内における上端部21b側の背圧室25と二次側ポート14とを連通するように、弁部材30Aに設けられた均圧路36と、を備えている。弁部材30Aが、それぞれ軸線Pを中心として配置された下端面31a及び下端面31aの外周縁全周にわたって内周縁が連接された環状面33を有し、下端面31aと環状面33との連接箇所であるシールエッジKが、弁閉時にその全周にわたって着座面17に当接されるように形成されている。そして、着座面17、下端面31a及び環状面33のそれぞれと軸線Pとがなす角度をそれぞれα、β1及びβ2としたとき(但し、α、β1及びβ2はそれぞれ同じ向きに開く角の角度)、β2<α<β1、及び、β1−β2<90度、の関係を満たすようにそれぞれの面が形成されている。
【0077】
また、電動弁1Aは、環状面33と軸線Pとがなす角度β2が0<β2の関係を満たすように、当該環状面33が形成されている。
【0078】
また、電動弁1Aは、シールエッジK内側の平面視面積が弁ガイド本体部21の内側空間の横断面積と略同一になるように、弁部材30Aが形成されている。
【0079】
また、電動弁1Aは、弁部材30Aに設けられるとともに外周縁が弁ガイド本体部21の内周面21cに摺動可能に接して、弁ガイド本体部21と弁部材30Aとの間を封止する円形環状に形成されたパッキン部37をさらに備えている。そして、シールエッジK内側の平面視面積がパッキン部37における外周縁の内側の平面視面積と略同一になるように、弁部材30Aが形成されている。
【0080】
以上より、本実施形態によれば、弁ガイド20内にピストン状に移動可能に収容された弁部材30Aは、その軸心が弁座部16の軸心を通る軸線P上に配置される。この弁部材30Aは、それぞれ軸線Pを中心として配置された下端面31a及び当該下端面31aの外周縁全周にわたって内周縁が連接された環状面33を有しており、下端面31aと環状面33との連接箇所であるシールエッジKが、弁閉時にその全周にわたって着座面17に当接されるように形成されている。そして、着座面17、下端面31a及び環状面33のそれぞれと軸線Pとがなす角度をそれぞれα、β1及びβ2としたとき、β2<α<β1、及び、β1−β2<90度、の関係を満たすようにそれぞれの面が形成されている。このようにしたことから、弁閉時は、上記シールエッジKがその全周にわたって着座面17に当接されることにより二次側ポート14が閉じられる。そして、弁開時は、環状面33からシールエッジKを通過して下端面31aに流体が流れるところ、環状面33から下端面31aに至ったときの角度変化が90度より小さくなるため、従来の構成に比べて、環状面33からシールエッジKを通過したあとに下端面31aに沿って流体が流れやすくなり、下端面31aから流体の流れが剥離することを抑制できる。そのため、弁開時において弁部材30Aの軸心方向に加わる力のバランスが崩れてしまうことを抑制できる。
【0081】
また、環状面33と弁座部16の軸心を通る軸線Pとがなす角度β2が0<β2の関係を満たすように、当該環状面33が形成されている。このようにしたことから、環状面33と上記軸線Pとがなす角度β2が、着座面17と上記軸線Pとがなす角度αに近づくので、従来の構成(β2=0とした構成)に比べて、弁開時において、二次側ポート14に向かう方向について着座面17と環状面33との幅が徐々に狭くなっていく変化の度合いをより小さくすることができる。そのため、着座面17とシールエッジKとの間を通過する流体の速度をより遅くすることができるので、下端面31aに沿って流体がより流れやすくなり、下端面31aから流体の流れが剥離することを抑制でき、弁開時において弁部材30Aの軸心方向に加わる力のバランスが崩れてしまうことをより抑制できる。
【0082】
また、下端面31a及び環状面33の連接箇所であるシールエッジK内側の平面視面積が弁ガイド本体部21の内側空間の横断面積と略同一になるように、弁部材30Aが形成されている。このようにしたことから、流体圧力により弁部材30Aに対して軸心方向に加わる力を相殺させて、弁部材30Aの軸心方向に加わる力をバランスさせることができる。
【0083】
また、弁部材30Aに設けられるとともに外周縁が弁ガイド本体部21の内周面21cに摺動可能に接して、弁ガイド本体部21と弁部材30Aとの間を封止する円形環状に形成されたパッキン部37をさらに備えている。そして、環状面32と外周面31cの連接箇所であるシールエッジK内側の平面視面積がパッキン部37における弁ガイド本体部21の内周面21cに摺動可能に接する外周縁の内側の平面視面積と略同一になるように、弁部材30Aが形成されている。このようにしたことから、パッキン部37により弁ガイド本体部21と弁部材30Aとの間の封止性をより高め、流体圧力により弁部材30Aに対して軸心方向に加わる力をより確実に相殺させて、弁部材30Aの軸心方向に加わる力をさらにバランスさせることができる。
【0084】
(第3実施形態)
以下に、本発明の流量制御弁の第3実施形態としての電動弁を、
図6、
図7を参照して説明する。
【0085】
図6は、本発明に係る流量制御弁の第3実施形態である電動弁の弁部材及び弁座部を模式的に示した拡大断面図であって、弁部材が着座している状態(弁閉状態)を示す図である。
図7は、第3実施形態の電動弁において、弁部材が離座している状態(弁開状態)での弁座部の着座面及び弁部材との間を流れる流体の様子について説明する図である。
【0086】
第3実施形態の電動弁1Bは、上述した第1実施形態の電動弁1において、弁部材30に代えて、構成の異なる弁部材30Bを有していること以外は、第1実施形態の電動弁1と同一であるので、同一の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0087】
弁部材30Bは、弁体31Bと、連結金具34と、を有している。連結金具34は、上述した第1の実施形態と同一の構成である。
【0088】
図6に示すように、弁体31Bは、略円柱形状に形成された本体部分313と、本体部分313の図中下方の端部に半径方向に張り出した突出部分314と、を有している。本体部分313は、その外周面313cが弁ガイド本体部21の内周面21cに摺動可能に接して配置されている。即ち、本体部分313の外径は、弁ガイド本体部21の内径と略同一である。
【0089】
弁体31Bの環状の下端面31aの周囲には、図中上方から下方に向かうにしたがって徐々に外径が小さくなる先細りのテーパ状の第1環状面32Bが設けられている。この第1環状面32Bは、中心が軸線P上に位置づけられるように形成されている。第1環状面32Bは、その内周縁が全周にわたって下端面31aの外周縁と連接されており、換言すると、下端面31aの外周縁が全周にわたって第1環状面32Bの内周縁と連接されている。
【0090】
突出部分314には、図中上方から下方に向かうにしたがって徐々に外径が小さくなる先細りのテーパ状の第2環状面33Bが設けられている。この第2環状面33Bは、中心が軸線P上に位置づけられるように形成されている。第2環状面33Bは、上記第1環状面32Bと軸線P方向に連接して同心に配置されている。第2環状面33Bは、その内周縁が全周にわたって第1環状面32Bの外周縁と連接されており、換言すると、第1環状面32Bの外周縁が全周にわたって第2環状面33Bの内周縁と連接されている。第1環状面32Bは、第1の面に相当し、第2環状面33Bは、第2の面に相当する。第1環状面32B及び第2環状面33Bは、面取りによって形成される微少なテーパ面などは含まず、本発明の作用効果が発揮できる程度の大きさを有しているものである。第1環状面32B及び第2環状面33Bは、それぞれの幅が弁部材30BのシールエッジKの半径の5%以上あることが好ましい。
【0091】
第1環状面32Bと第2環状面33Bとが連接されることにより外側に凸の角部となるシールエッジKが形成される。このシールエッジKは、弁閉時に全周にわたって着座面17に当接されるように形成されており、シールエッジKが着座面に当接されることにより、弁室10Aと二次側ポート14との間を密封して仕切る。このシールエッジKは、その径が弁ガイド本体部21の内周面21cに対するパッキン部37のシール径(即ち、パッキン部37の外周縁の径であり、弁ガイド本体部21の内径でもある)と略同一に形成されている。これにより、シールエッジK内側について軸線P方向から見た平面視面積は、パッキン部37の外周縁の内側の平面視面積と略同一となり、また、弁ガイド本体部21の内側空間の横断面積と略同一となる。シールエッジKは、第1環状面32B(第1の面)と第2環状面33B(第2の面)との連接箇所に相当する。
【0092】
また、弁座部16の着座面17、弁体31Bの第1環状面32B及び第2環状面33Bのそれぞれと軸線Pとがなす角度をそれぞれα、β1及びβ2としたとき(但し、α、β1及びβ2はそれぞれ同じ向き(図中上方向き)に開く角の角度)、β2<α<β1の関係を満たすようにそれぞれの面が形成されている。これにより、弁閉時においてシールエッジKのみが確実に着座面17に当接される。
【0093】
また、β1−β2<90度の関係を満たすように第1環状面32B及び第2環状面33Bが形成されている。これにより、第1環状面32Bと第2環状面33Bとがなす角度θ1が鈍角(90度超)となる。そのため、第2環状面33Bに沿って流れる流体が第1環状面32Bに至ったときに、当該流体の流れる方向の角度変化が90度未満となる。第1環状面32Bと第2環状面33Bとがなす角度θ1は、100度〜120度程度が好ましい。本実施形態において、0<β2<β1<90度とされている。
【0094】
次に、
図7を参照して、上述した本実施形態の電動弁1Bにおける動作(作用)について説明する。
【0095】
電動弁1Bにおいて、弁閉時に弁部材30B(具体的には弁体31B)における第1環状面32Bと第2環状面33Bとの連接箇所であるシールエッジKが全周にわたって弁座部16の着座面17に当接して、弁室10A側と二次側ポート14(弁ポート)側とを仕切り、流体の流れを遮断する。
【0096】
そして、弁部材駆動部40により弁部材30Bが弁開方向に移動されて、弁部材30BのシールエッジKが着座面17から離れると、弁開状態となって、着座面17と弁部材30Bとの間を通って弁室10A側から二次側ポート14側に流体が流れる。
【0097】
このときの流体の流れを
図7に示す。電動弁1Bにおいては、弁部材30Bの第1環状面32Bと第2環状面33Bとがなす角度θ1が鈍角(90度超)となるように当該弁部材30Bが形成されているので、着座面17と弁部材30BのシールエッジKとの間を通過した流体(図中、その流れを矢印で示す)は、流速が比較的速い場合でも弁部材30Bの第1環状面32Bに沿うように回り込むことが可能となり、当該第1環状面32Bから大きく剥離してしまうことが抑制される。そのため、第1環状面32Bの第2環状面33B寄りの周縁部分近傍に圧力の低い箇所が生じることを防ぐことができる。これにより、弁部材30Bに対して軸心方向に加わる力のバランスを保つことができる。
【0098】
また、第1環状面32Bから下端面31aに流れるときも、これら面がなす角度θ2が鈍角であるため、同様に下端面31aの第1環状面32B寄りの周縁部分近傍に圧力の低い箇所が生じることを防ぐことができる。
【0099】
以上説明したように、本実施形態の電動弁1Bは、二次側ポート14が設けられた弁本体10と、二次側ポート14と連通して設けられ、すり鉢形状の着座面17を有する環状の弁座部16と、弁座部16の軸心を通る軸線P上に軸心が配置され、弁本体10内で当該弁座部16と下端部21aが間隔をあけて対向するように設けられた弁ガイド20と、弁座部16の着座面17に対して離座及び着座するように弁ガイド20内にピストン状に移動可能に収容された弁部材30Bと、弁ガイド20内の空間が弁部材30Bに区画されて形成された当該弁ガイド20内における上端部21b側の背圧室25と二次側ポート14とを連通するように、弁部材30Bに設けられた均圧路36と、を備えている。弁部材30Bが、それぞれ軸線Pを中心として配置された第1環状面32B及び第1環状面32Bの外周縁全周にわたって内周縁が連接された第2環状面33Bを有し、第1環状面32Bと第2環状面33Bとの連接箇所であるシールエッジKが、弁閉時にその全周にわたって着座面17に当接されるように形成されている。そして、着座面17、第1環状面32B及び第2環状面33Bのそれぞれと軸線Pとがなす角度をそれぞれα、β1及びβ2としたとき(但し、α、β1及びβ2はそれぞれ同じ向きに開く角の角度)、β2<α<β1、及び、β1−β2<90度、の関係を満たすようにそれぞれの面が形成されている。
【0100】
また、電動弁1Bは、第2環状面33Bと軸線Pとがなす角度β2が0<β2の関係を満たすように、当該第2環状面33Bが形成されている。
【0101】
また、電動弁1Bは、第1環状面32Bの内周縁が、軸線Pと直交するように形成された弁部材30Bにおける二次側ポート14の下端面31aの外周縁と全周にわたって連接され、第1環状面32Bと軸線Pとがなす角度β1がβ1<90度の関係を満たすように、当該第1環状面32Bが形成されている。
【0102】
また、電動弁1Bは、シールエッジK内側の平面視面積が弁ガイド本体部21の内側空間の横断面積と略同一になるように、弁部材30Bが形成されている。
【0103】
また、電動弁1Bは、弁部材30Bに設けられるとともに外周縁が弁ガイド本体部21の内周面21cに摺動可能に接して、弁ガイド本体部21と弁部材30Bとの間を封止する円形環状に形成されたパッキン部37をさらに備えている。そして、シールエッジK内側の平面視面積がパッキン部37における外周縁の内側の平面視面積と略同一になるように、弁部材30Bが形成されている。
【0104】
以上より、本実施形態によれば、弁ガイド20内にピストン状に移動可能に収容された弁部材30Bは、その軸心が弁座部16の軸心を通る軸線P上に配置される。この弁部材30Bは、それぞれ軸線Pを中心として配置された第1環状面32B及び当該第1環状面32Bの外周縁全周にわたって内周縁が連接された第2環状面33Bを有しており、第1環状面32Bと第2環状面33Bとの連接箇所であるシールエッジKが、弁閉時にその全周にわたって着座面17に当接されるように形成されている。そして、着座面17、第1環状面32B及び第2環状面33Bのそれぞれと軸線Pとがなす角度をそれぞれα、β1及びβ2としたとき、β2<α<β1、及び、β1−β2<90度、の関係を満たすようにそれぞれの面が形成されている。このようにしたことから、弁閉時は、上記シールエッジKがその全周にわたって着座面17に当接されることにより二次側ポート14が閉じられる。そして、弁開時は、第2環状面33BからシールエッジKを通過して第1環状面32Bに流体が流れるところ、第2環状面33Bから第1環状面32Bに至ったときの角度変化が90度より小さくなるため、従来の構成に比べて、第2環状面33BからシールエッジKを通過したあとに第1環状面32Bに沿って流体が流れやすくなり、第1環状面32Bから流体の流れが剥離することを抑制できる。そのため、弁開時において弁部材30Bの軸心方向に加わる力のバランスが崩れてしまうことを抑制できる。
【0105】
また、第2環状面33Bと弁座部16の軸心を通る軸線Pとがなす角度β2が0<β2の関係を満たすように、当該第2環状面33Bが形成されている。このようにしたことから、第2環状面33Bと上記軸線Pとがなす角度β2が、着座面17と上記軸線Pとがなす角度αに近づくので、従来の構成(β2=0とした構成)に比べて、弁開時において、二次側ポート14に向かう方向について着座面17と第2環状面33Bとの幅が徐々に狭くなっていく変化の度合いをより小さくすることができる。そのため、着座面17とシールエッジKとの間を通過する流体の速度をより遅くすることができるので、第1環状面32Bに沿って流体がより流れやすくなり、第1環状面32Bから流体の流れが剥離することを抑制でき、弁開時において弁部材30Bの軸心方向に加わる力のバランスが崩れてしまうことをより抑制できる。
【0106】
また、第1環状面32Bの内周縁が、弁座部16の軸心を通る軸線Pと直交するように形成された弁部材30Bの下端面31aの外周縁と全周にわたって連接され、第1環状面32Bと軸線Pとがなす角度β1がβ1<90度の関係を満たすように、当該第1環状面32Bが形成されている。このようにしたことから、弁部材30Bの下端面31aを第1の面とした構成に比べて、第1の面としての第1環状面32Bと下端面31aとが別個に設けられて流体が段階を経て流れの角度が変えられて当該下端面31aに至るため、第1環状面32B及び下端面31aから流体の流れが剥離することを抑制でき、弁開時において弁部材30Bの軸心方向に加わる力のバランスが崩れてしまうことをより抑制できる。
【0107】
また、第1環状面32B及び第2環状面33Bの連接箇所であるシールエッジK内側の平面視面積が弁ガイド本体部21の内側空間の横断面積と略同一になるように、弁部材30Bが形成されている。このようにしたことから、流体圧力により弁部材30Bに対して軸心方向に加わる力を相殺させて、弁部材30Bの軸心方向に加わる力をバランスさせることができる。
【0108】
また、弁部材30Bに設けられるとともに外周縁が弁ガイド本体部21の内周面21cに摺動可能に接して、弁ガイド本体部21と弁部材30Bとの間を封止する円形環状に形成されたパッキン部37をさらに備えている。そして、環状面32と外周面31cの連接箇所であるシールエッジK内側の平面視面積がパッキン部37における弁ガイド本体部21の内周面21cに摺動可能に接する外周縁の内側の平面視面積と略同一になるように、弁部材30Bが形成されている。このようにしたことから、パッキン部37により弁ガイド本体部21と弁部材30Bとの間の封止性をより高め、流体圧力により弁部材30Bに対して軸心方向に加わる力をより確実に相殺させて、弁部材30Bの軸心方向に加わる力をさらにバランスさせることができる。
【0109】
以上、本発明について、好ましい実施形態を挙げて説明したが、本発明の流量制御弁は上記実施形態の構成に限定されるものではない。
【0110】
例えば、上述した各実施形態では、弁座部16が有する着座面17が、すり鉢形状として断面形状が外縁から内縁に向かって直線状となる形状に形成されているものであったが、これに限定されるものではない。例えば、
図8に示すように、断面形状が図中上方の外縁から図中下方の内縁に向かって軸心方向に凸の曲線状となる形状に形成された着座面17Cを有する弁座部16Cであってもよい。この場合、着座面17Cと軸線Pとがなす角度αとは、着座面17CにおけるシールエッジKが当接される箇所の接線と軸線Pとがなす角度とする。または、軸線Pに対してなす角度が互いに異なる複数の環状面部分が軸線P方向に連接された着座面であってもよい。この場合、着座面と軸線Pとがなす角度αとは、シールエッジKが当接される面部分と軸線Pとがなす角度とする。これらのように、本発明の目的に反しない限り、すり鉢形状とは、略すり鉢形状も含むものである。
【0111】
また、上述した各実施形態では、シリンダ部としての弁ガイド20が弁ハウジングとしての弁本体10内に設けられた構成であったが、これに限定されるものではない。例えば、
図9に示す従来の構成のように、弁部材をピストン状に移動可能とするシリンダ部を弁ハウジング(弁本体)と一体に設けてもよい。
【0112】
また、上述した各実施形態では、弁座部16、弁ガイド20及び弁部材30が、それぞれ、円形環状、円筒形状及び円柱形状に形成されているものであったが、これに限定されるものではなく、弁座部16、弁ガイド20及び弁部材30について軸線P方向から見た平面視形状が相似関係にあれば、円形以外にも、四角形や八角形などの多角形形状などであってもよく、本発明の目的に反しない限り、弁座部16、弁ガイド20及び弁部材30の形状は任意である。
【0113】
また、上述した各実施形態では、シリンダ部としての弁ガイド20(具体的には、弁ガイド本体部21)と弁部材30との間を封止するシール部材としてのパッキン部37を備えるものであったが、これに限定されるものではない。このようなシール部材を設けることが好ましいが、例えば、シール部材を設けずに、シリンダ部と弁部材との間のクリアランスを調整して封止する構成としたり、シリンダ部又は弁部材にラビリンス溝を設けて当該ラビリンス溝の作用により封止する構成としたり、してもよい。
【0114】
また、各実施形態では、ステッピングモータによって弁部材を駆動する電動弁であったが、これに限定されるものではなく、手動により弁部材を駆動する流量制御弁などであってもよく、電磁コイルとプランジャにより弁部材を駆動する電磁弁式であってもよい。
【0115】
また、各実施形態では、二次側ポート14と背圧室25とを連通する均圧路36が弁部材30に設けられていたが、弁部材30に代えて、弁本体10に二次側ポート14と背圧室25とを連通する均圧路が設けられていてもよい。
【0116】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の流量制御弁の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。