【解決手段】(a)板材を切断して矩形材を作成し、矩形材を丸め両端部を突合せ溶接して円筒状素材6を作成する円筒状素材作成工程と、(b)円筒状素材6を一端口絞りして、ハブ取付け部となる部分をほぼ等厚に成形して得た中央部に孔11bの開いた円板状の底部11aを有する円筒状の第1成形品11を作成する口絞り工程と、(c)パンチ51と、ダイ52を有するしごき装置50にて、第1成形品11の円筒部11cの少なくとも一部をしごき加工して不等厚有底環状の第2成形品12を作成するしごき工程と、(d)第2成形品12の円筒部分12cを拡径して円筒部分12cを円錐形状として、ディスク形状とする拡径工程と、を有する、車両用ホイールディスクの製造方法。
前記しごき工程は、前記第1成形品を、しごき装置にて、前記第1成形品の前記円筒部の開口端部側はしごき加工をしないかしごき率を10%以下にしごき加工することにより成形して不等厚有底環状の前記第2成形品を作成する工程からなる、請求項1記載の車両用ホイールディスクの製造方法。
前記口絞り工程は、一対の上下型を相対接近させながら上型を下型軸芯に対して揺動させて、前記円筒状素材を一端口絞りして、ハブ取付け部となる部分をその後の加工無しに平滑に所定の厚みに等厚に成形して前記第1成形品を作成する工程からなる、請求項1または請求項2記載の車両用ホイールディスクの製造方法。
前記円筒状素材を一端口絞りして前記第1成形品を作成する前記口絞り工程では、前記円筒状素材の他端の直径を変化させずに前記第1成形品を作成する、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の車両用ホイールディスクの製造方法。
前記拡径工程では、前記第2成形品の前記円筒部分を拡径するとともに、前記しごき工程で内径側に付与されていた凹凸形状を外径側へと押し出す、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の車両用ホイールディスクの製造方法。
前記口絞り工程では、ハブ取付け部となる前記第1成形品の部分を平面化、板厚均一化するように揺動鍛造を行なう、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の車両用ホイールディスクの製造方法。
前記口絞り工程では、前記第1成形品の前記円筒部の板厚を薄くするように揺動鍛造を行なう、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の車両用ホイールディスクの製造方法。
前記口絞り工程は、プレスにて予成形を行いハブ取付け部となる部分を内径側に曲げた後に、揺動鍛造を行い前記第1成形品を作成する、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の車両用ホイールディスクの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、円筒環を皿状に加工した後にハブ取付け部となる部分の後加工を不用にでき、材料の割れを無くすことができる車両用ホイールディスクの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明はつぎの通りである。
(1) 板材を切断して矩形材を作成し、前記矩形材を丸め両端部を突合せ溶接して円筒状素材を作成する円筒状素材作成工程と、
前記円筒状素材を一端口絞りして、ハブ取付け部となる部分をほぼ等厚に成形して得た中央部に孔の開いた円板状の底部を有する円筒状の第1成形品を作成する口絞り工程と、
パンチと、ダイを有するしごき装置にて、前記第1成形品の円筒部の少なくとも一部をしごき加工して不等厚有底環状の第2成形品を作成するしごき工程と、
前記第2成形品の円筒部分を拡径して該円筒部分を円錐形状として、ディスク形状とする拡径工程と、
を有する、車両用ホイールディスクの製造方法。
(2) 前記しごき工程は、前記第1成形品を、しごき装置にて、前記第1成形品の前記円筒部の開口端部側はしごき加工をしないかしごき率を10%以下にしごき加工することにより成形して不等厚有底環状の前記第2成形品を作成する工程からなる、(1)記載の車両用ホイールディスクの製造方法。
(3) 前記口絞り工程は、一対の上下型を相対接近させながら上型を下型軸芯に対して揺動させて、前記円筒状素材を一端口絞りして、ハブ取付け部となる部分をその後の加工無しに平滑に所定の厚みに等厚に成形して前記第1成形品を作成する工程からなる、(1)または(2)記載の車両用ホイールディスクの製造方法。
(4)前記円筒状素材を一端口絞りして前記第1成形品を作成する前記口絞り工程では、前記円筒状素材の他端の直径を変化させずに前記第1成形品を作成する、(1)〜(3)のいずれか1つに記載の車両用ホイールディスクの製造方法。
(5) 前記拡径工程では、前記第2成形品の前記円筒部分を拡径するとともに、前記しごき工程で内径側に付与されていた凹凸形状を外径側へと押し出す、(1)〜(4)のいずれか1つに記載の車両用ホイールディスクの製造方法。
(6) 前記拡径工程の後に、
リム取付けフランジとなる部分を絞り加工またはしごき絞り加工して、リム取付けフランジを成形するフランジ成形工程を有する、(1)〜(5)のいずれか1つに記載の車両用ホイールディスクの製造方法。
(7) 前記口絞り工程では、ハブ取付け部となる前記第1成形品の部分を平面化、板厚均一化するように揺動鍛造を行なう、(1)〜(6)のいずれか1つに記載の車両用ホイールディスクの製造方法。
(8) 前記口絞り工程では、前記第1成形品の前記円筒部の板厚を薄くするように揺動鍛造を行なう、(1)〜(7)のいずれか1つに記載の車両用ホイールディスクの製造方法。
(9) 前記口絞り工程は、プレスにて予成形を行いハブ取付け部となる部分を内径側に曲げた後に、揺動鍛造を行い前記第1成形品を作成する、(1)〜(8)のいずれか1つに記載の車両用ホイールディスクの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
上記(1)の車両用ホイールディスクの製造方法によれば、口絞り工程ではハブ取付け部となる部分をほぼ等厚に成形するため、ハブ取付け部となる部分の後加工は不用である。
【0009】
上記(2)の車両用ホイールディスクの製造方法によれば、しごき工程では第1成形品の円筒部の開口端部側はしごき加工をしないかしごき率を10%以下にしごき加工するため、第1成形品の円筒部の開口端部側の加工硬化を抑制できる。そのため、拡径工程で材料割れが発生することを抑制できる。
【0010】
上記(3)の車両用ホイールディスクの製造方法によれば、口絞り工程では揺動鍛造が行なわれる。そのため、プレス成形ではできない精度でハブ取付け部となる部分を平滑等厚に成形できる。そのため、ハブ取付け部となる部分の後加工を不要とすることができる。
【0011】
上記(4)の車両用ホイールディスクの製造方法によれば、円筒状素材を一端口絞りして第1成形品を作成する口絞り工程では、円筒状素材の他端の直径を変化させずに第1成形品を作成するため、円筒状素材の他端の加工硬化を抑制できる。そのため、拡径工程で材料割れが発生することを抑制できる。
【0012】
上記(5)の車両用ホイールディスクの製造方法によれば、拡径工程では、しごき工程で内径側に付与されていた凹凸形状を外径側へと押し出すため、ホイールを車両に搭載する際にホイールディスクがブレーキと干渉することを抑制できる。
【0013】
上記(6)の車両用ホイールディスクの製造方法によれば、拡径工程の後にフランジ成形工程を有するため、精度の良いリム取付けフランジを得ることができる。
【0014】
上記(7)の車両用ホイールディスクの製造方法によれば、口絞り工程では、ハブ取付け部となる第1成形品の部分を平面化、板厚均一化するように揺動鍛造を行なうため、揺動鍛造にてハブ取付け部となる部分を等厚に成形できる。
【0015】
上記(8)の車両用ホイールディスクの製造方法によれば、口絞り工程では第1成形品の円筒部の板厚を薄くするように揺動鍛造を行なうため、しごき工程において第1成形品の円筒部をしごく量を減らすことができる。そのため、しごき工程でしごき加工を容易に行なうことができる。
【0016】
上記(9)の車両用ホイールディスクの製造方法によれば、口絞り工程では、プレスにて予成形を行いハブ取付け部となる部分を内径側に曲げた後に、揺動鍛造を行い第1成形品を作成するため、予成形を行わない場合に比べて揺動鍛造を容易に行なうことができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、
図1〜
図12を参照して、本発明実施例の車両用ホイールディスクの製造方法を説明する。
【0019】
先ず、本発明実施例の製造方法によって製造されるホイールディスク10について説明する。
ホイールディスク10は、トラック、バスなどの大中型ホイールディスクであり、ダブル取り付けが可能なホイールディスクである。ただし、ホイールディスク10は、乗用車、商用車、産業車両などのホイールディスクであってもよい。ホイールディスク10は、
図1に示すような平板状のディスク素材から製造されるディスクが対象である。ホイールディスク10は、鋳造品ではない。ホイールディスク10は、たとえばスチール製である。ただし、ホイールディスク10は、スチール製でなくてもよく、アルミ合金製、チタン合金製、マグネシウム合金製等であってもよい。ホイールディスク10は、図示略の環状のリム(図示略のタイヤを保持する部分)とは別に製造されており、リムと溶接されて、またはリベット、接着等で接合されてホイールになる。
【0020】
ホイールディスク10は、
図12に示すように、図示略のハブに取付けられるハブ取付け部(平板部といってもよい)20と、ハブ取付け部20の外周部からディスク軸方向(ホイール軸方向)に立ち上がる立ち上がり部(側壁部といってもよい)30と、を有する。
【0021】
ハブ取付け部20は、ダブル取り付けおよびシングル取り付けともに可能なように通常、平板状(略平板状を含む)である。ハブ取付け部20は、平板状である場合、ディスク軸方向(ホイール軸方向)と直交(略直交を含む)する平面内にある。ハブ取付け部20には、ハブ穴21と、ハブ取付けボルト穴22と、が設けられている。
【0022】
ハブ穴21は、ホイールディスク10のディスク半径方向(ホイール半径方向)の中央部に設けられる。
ハブ取付けボルト穴22は、ハブ取付け部20のハブ穴21の外周側にホイールディスク10のディスク周方向(ホイール周方向)に同心円上等間隔に複数設けられる。
【0023】
車両のハブから延びてくるハブ取付けボルト(両方共に図示略)をハブ取付けボルト穴22に挿通し、ハブ取付けボルトに図示略のハブナットを螺合することにより、ホイールディスク10(ホイール)はハブに固定される。
【0024】
立ち上がり部30は、円錐状部31と、リム取付けフランジ32と、を備える。
円錐状部31は、ハブ取付け部20の外周部に連なる。円錐状部31は、ハブ取付け部20の外周部から、ディスク半径方向外側かつ立ち上がり部30の立ち上がり量が大になる方向(ディスク軸方向に向かって)に、傾斜している。
円錐状部31の少なくとも一部は、しごき加工による薄肉化が行なわれており、ディスク素材2の厚さより薄くなっている。円錐状部31には、飾り穴33が設けられている。飾り穴33は、ホイールディスク10のディスク周方向(ホイール周方向)に同心円上等間隔に複数設けられる。
【0025】
リム取付けフランジ32は、立ち上がり部30の立ち上がり方向(ディスク軸方向)の先端部(ディスク半径方向の外周部)にある。リム取付けフランジ32は、図示略のリムの内周面に対して嵌合するように、全周にわたって連続する円筒状である。リム取付けフランジ32は、しごき加工等によって、ディスク素材2の厚さよりも薄肉化が行なわれていてもよく行なわれていなくてもよい。ホイールディスク10は、リム取付けフランジ32で図示略のリムと溶接される。
【0026】
円錐状部31、特にリム取付けフランジ32近傍に位置する円錐状部31部分は、ホイールの剛性、応力の条件がハブ取付け部20近傍と比較して負荷が低い。そのため、軽量化、材料コスト低減のため、ホイールディスク10の円錐状部31はハブ取付け部20より薄くなっている。
【0027】
つぎに、ホイールディスク10の製造方法について説明する。
ホイールディスク10の製造方法は、
(a)
図1に示すように、矩形材4を丸め両端部を突合せ溶接して円筒状素材6を作成する円筒状素材作成工程と、
(b)
図2(b)、
図2(c)に示すように、円筒状素材6の一端を口絞りして、ハブ取付け部20となる中央部に孔11bの開いた底部11aを有する円筒状の第1成形品11を作成する口絞り工程と、
(c)
図2(d)に示すように、パンチ51と、側面52aが凹凸面となったダイ52を有するしごき装置50にて、第1成形品11の円筒部11cの少なくとも一部をしごき加工して、不等厚有底環状の第2成形品12を作成するしごき工程と、
(d)
図2(e)に示すように、第2成形品12の開口側を拡径して円筒部分12cを円錐形状の円錐部13cとして、第2成形品12をディスク形状の第3成形品13とする拡径工程と、
(e)
図2(f)に示すように、リム取付けフランジ32となる部分を絞り加工またはしごき絞り加工して、リム取付けフランジ32を成形するフランジ成形工程と、
を有し、この工程の順に加工を行う。
【0028】
上記(a)の工程(円筒状素材作成工程)について
(a−1)矩形材4は、
図1(c)〜
図1(e)に示すように、筒状に巻かれ、巻いた両端部を互いに突き合わせてフラッシュバット溶接、バット溶接、アーク溶接等で溶接接合し、溶接部5の盛り上がりとバリをトリミングして、円筒状素材6に作成される。
(a−2)円筒状素材6は、等厚であり、全周にわたって連続している。
(a−3)円筒状素材作成工程では、図示はしないが、パイプ状素材を所定寸法長さに切断して円筒状素材6を作成してもよい。
【0029】
上記(b)の工程(口絞り工程)について
(b−1)口絞り工程では、
図2(b)、
図2(c)に示すように、円筒状素材6の軸方向の一端6aを口絞りして中央部に孔の開いた底部11aを有する円筒状の第1成形品11を作成する。
(b−2)口絞り工程では、円筒状素材6の軸方向の他端(一端6aの軸方向反対側の端部)6bの直径を変化させずにまたはほとんど変化させずに第1成形品11を作成する。
(b−3)第1成形品11は、ハブ取付け部20となる底部11aと、底部11aの外周端部から第1成形品11の軸方向に立ち上がる円筒部11cと、を備える。
【0030】
(b−4)第1成形品11の円筒部11cは、第1成形品11の軸方向に延びている部分である。円筒部11cは、第1成形品11の軸方向と平行に円筒状に延びていてもよく、第1成形品11の軸方向に対して傾斜して円錐状に延びていてもよい。
(b−5)口絞り工程では、ハブ取付け部20となる第1成形品11の底部11aの面を平坦化するとともに、板厚を均一化するように、揺動鍛造を行なう。
(b−6)口絞り工程では、
図9に示すように、第1成形品11の円筒部11cの底部11aと反対側の円筒部11cの開口端部11dを除いて、第1成形品11の円筒部11cの板厚を薄くするように揺動鍛造を行なってもよい。開口端部11dを除く理由は、開口端部11dの加工硬化を抑制するためである。
【0031】
(b−7)口絞り工程では、
図2(b)、
図2(c)に示すように、上型40が下型41に対して揺動可回転能な一対の上下型40,41の下型41上に円筒状素材6を載せ、上下型40,41を相対接近させながら上型40を下型41の軸芯41aに対して揺動回転運動させて、円筒状素材6を一端口絞りして、底部11aを平滑に所定の厚みに等厚(ほぼ等厚を含む)に成形して有底環状の第1成形品11を作成する。
(b−8)上型40の軸芯40aは、
図3、
図4に示すように、下型41の軸芯41aに対して所定角度αだけ傾けられているとともに上型40の軸芯40aが下型41の軸芯41aまわりに揺動回転するようになっている。
(b−9)口絞り工程では、円筒状素材6が下型41上に固定しないで載せられた状態で、下型41を上昇させて上型40に接近させて(または上型40を下降させて下型41に接近させて)円筒状素材6に軸方向に圧縮力をかけつつ、上型40の軸芯40aが下型41の軸芯41aまわりに揺動回転するように上型40を揺動させて円筒状素材6を第1成形品11に成形する。
【0032】
(b−10)揺動鍛造は、1回(1段)に限らず、型交換を含めて複数回行なってもよい。
図2(b)、
図2(c)では型交換を含めて2回行なわれる場合を示している。
(b−11)口絞り工程は、揺動鍛造を行なう前に、
図10に示すように、パンチ42とダイ43とを図示略のプレス機に組付けたプレス装置44を用いて(プレスにて)予成形を行いハブ取付け部20となる部分を内径側に曲げる工程を有していてもよい。
【0033】
上記(c)の工程(しごき工程)について
(c−1)しごき工程は、ホイールディスク10の円錐状部31となる部分を薄肉化するための工程である。
(c−2)しごき工程は、
図2(d)、
図5に示すように、第1成形品11の円筒部11cの少なくとも一部をしごき加工して、第1成形品11の円筒部11cを不等厚に成形する工程である。
(c−3)しごき工程では、第1成形品11の底部11aの板厚を変化させずに第2成形品12を作成する。
(c−4)しごき工程は、プレスによって全周同時に行なわれる。しごき加工は、1回に限らず、型交換を含めて複数回行なってもよい。
【0034】
(c−5)しごき工程では、
図5に示すように、パンチ51とダイ52とを図示略のプレス機に組付けたしごき装置50を用いてしごき加工を行なう。しごき装置50は、ワーク押え53およびワーク支持具54を有し、しごき加工をする前にワーク押え53により第1成形品の底部11a(第2成形品の底部12a)を押え、しごき加工中にワークがずれないように固定する。ワーク押え53で第1成形品の底部11aを押えたままの状態でパンチ51を軸方向に動かしてしごき加工をする。また、ワーク支持具54は開口端11d(12d)を支えることが好ましい。また、しごき加工した後にパンチ51の方向にワーク支持具54を動かして、しごき加工された第2成形品12をダイ52から押し出す機能を有する。
パンチ51は、周方向に連続した環状(円筒状)をしており、パンチ51の内周側面の径方向内側に突出する突出部51aを有し、突出部51aで第1成形品11の円筒部11cをしごく。
円柱状であるダイ52の、パンチ51の突出部51aに対向する側の側面が、凹凸面52aとされている。凹凸面52aは、パンチ51の突出部51aとの径方向の間隔が一様でなく異なる部分がある面である。ただし、凹凸面52aは、一様な面であってもよい。また、凹凸面52aは、パンチ51の突出部51aとの径方向の間隔が徐々に(なだらかに)狭くなる(または広くなる)面であってもよい。ダイ52の凹凸面52aは、パンチ51の突出部51aに対向する側の側面とパンチ51の突出部51aとの間隔を一定厚の第1成形品11の円筒部11cの板厚より狭くするために、ダイ52の側面の軸方向および/または周方向で、隣接する部分(凹部52b)に比べてパンチ51の突出部51a側に凸となる凸部52cが少なくとも1つ設けられることにより形成されている。ダイ52の凹凸面52aは、パンチ51の突出部51aに対向する側の側面とパンチ51の突出部51aとの間隔を一定厚の第1成形品11の円筒部11cの板厚より狭くするために、ダイ52の側面の周方向で、隣接する部分(凹部52b)に比べてパンチ51の突出部51a側に凸となる凸部52cが少なくとも1つ設けられることにより形成されていてもよい。凸部52cの突出量は、1つの凸部52cの中で一定とされていてもよく異なっていてもよい。また、複数の凸部52cが設けられる場合、それぞれの凸部52cの突出量は同一であってもよく異なっていてもよい。凸部52cは、ダイ52のパンチの突出部51aに対向する側の側面の少なくとも一部に形成されていてもよい。
ダイ52の側面の軸方向で、1つの凸部52cと、その1つの凸部52cに隣接する凹部52bとは、傾斜面52dで接続されている。傾斜面52dの、ダイ52の側面の軸方向に対する角度は、60度以下に緩やかにされていることが望ましく、さらには45度以下に緩やかにされていることが望ましい。各傾斜面52dの傾斜角度は、一定であってもよく、徐々に変化していてもよい。
【0035】
(c−6)パンチ51がアウターパンチからなり、ダイ52がパンチ51の内周側部分に対して、軸方向に出入りするインナーダイからなる。ダイ52の外周側面が凹凸面52aとされている。アウターパンチ51とインナーダイ52を用いてしごき加工を行なうことで、第2成形品12の円筒部分12cの内径側のみに凹凸面52aに対応する不等厚形状を得る。
(c−7)しごき工程では、パンチ51をダイ52に対して第1成形品11の円筒部11cの軸方向(ホイールディスク10の軸方向と同方向)にのみ相対動させてしごき加工する。なお、
図2(d)、
図5において、A1は、パンチ51の加工方向である。なお、パンチ51とダイ52との上下関係は、
図2(d)、
図5に示す上下関係と反対になっていてもよい。
【0036】
(c−8)しごき工程では、第1成形品11の円筒部11cの開口端部11d側はしごき加工をしないかしごき率を10%以下にしごき加工することにより成形して不等厚有底環状の第2成形品12を作成する。円筒部11cの開後端部11d側をしごき加工しないかしごき率を10%以下にしごき加工する理由は、円筒部11cの開口端部11dの加工硬化を抑制して拡径工程(上記(d)の工程)で拡径した部分に材料割れが発生することを抑制するためである。
図11は、引張強さが590Mpa材、370Mpa材、440Mpa材を用いて22.5インチホイール用のホイールディスク(大中型ホイールディスク)10を試作した場合の、しごき工程における円筒部11cの開口端部11d側のしごき率と拡径工程で発生する拡径部分の割れとの関係を示す表である。
図11から、つぎの(i)〜(iii)がわかる。(i)しごき率が10%以下では割れが発生しない。(ii)しごき率が10%より大になると割れが発生する。(iii)よって、(i)、(ii)より、しごき率が10%以下が望ましい。
【0037】
上記(d)の工程(拡径工程)について
(d−1)拡径工程では、
図2(e)、
図6に示すように、第2成形品12の全周にわたって連続する円筒部分12cの開口側を拡径する。
(d−2)拡径工程では、円錐状(略円錐状を含む)の部位を有する拡径用パンチ61を第2成形品12に押し込むことで円筒部分12cの開口端12dを円筒部分12cの底部12a側より大きく拡径加工を行なう。
(d−3)拡径工程では、拡径用パンチ61と拡径用ダイ62とを図示略のプレス機に組付けた拡径装置60を用いて拡径加工を行なう。
【0038】
(d−4)拡径工程では、拡径用パンチ61を拡径用ダイ62に対して第2成形品12の円筒部分12cの軸方向(ホイールディスク10の軸方向と同方向)に相対動させて拡径加工する。なお、
図2(e)、
図6において、A2は、拡径用パンチ61の加工方向である。なお、拡径用パンチ61と拡径用ダイ62との上下関係は、
図2(e)、
図6に示す上下関係と反対になっていてもよい。
(d−5)拡径用ダイ62が円錐状穴62aをもつアウターダイからなる。また、拡径用パンチ61が拡径用ダイ62の円錐状穴62aに円錐状穴62aの軸方向(ホイールディスク10の軸方向と同方向)に出入りするインナーパンチからなる。拡径用ダイ62は、円錐状穴62aがなく、平板部62bのみでもよい。
【0039】
(d−6)拡径工程では、拡径用パンチ61にて鍛造成形して、しごき工程(上記(c)の工程)で内径側に付与されていた凹凸形状を外径側へと押し出してもよい。これにより、狙いとする形状と板厚分布を得ることができる。ただし、拡径用パンチ61にて鍛造成形する代わりに、
図2(f)、
図7に示すように、フランジ成形工程(上記(e)の工程)にてパンチ71にて鍛造成形してもよい。また、
図8に示すように、拡径工程(上記(d)の工程)後であってフランジ成形工程(上記(e)の工程)前にパンチ81のストロークエンドにて鍛造成形してもよい。なお、
図8において、A3は、パンチ81の加工方向である。
【0040】
(d−7)拡径工程は、プレスによって全周同時に行なわれることが望ましい。
(d−8)拡径工程の加工方法は、上記に限らず、図示略のエキスパンダー等を用いた加工方法であってもよい。
【0041】
上記(e)の工程(フランジ成形工程)について
(e−1)フランジ成形工程は、ホイール10のリムと接続する取付けフランジ32を成形する工程である。フランジ成形工程は、
図2(f)、
図7に示すように、絞り加工を行なう工程である。ただし、絞り加工としごき加工を同時に行なってもよい。しごき加工のみでもよい。
(e−2)フランジ成形工程では、第3成形品13の円錐部13cの開口端部13d(リム取付けフランジ32となる部分)を絞り加工またはしごき絞り加工して、リム取付けフランジ32を成形する。フランジ成形工程では、第3成形品13の円錐部13cの開口端部13dをしごき加工して立ち上げ、狙いとする外径と板厚を得る。
(e−3)フランジ成形工程では、パンチ71とダイ72とを図示略のプレス機に組付けたフランジ成形装置70を用いて加工を行なう。
【0042】
(e−4)ダイ72が、開口部付近が筒状とされた穴72aをもつアウターダイからなる。また、パンチ71が、アウターダイ72の穴72aに該穴72aの軸方向(ホイールディスク10の軸方向と同方向)に出入りするインナーパンチ71からなる。
(e−5)ダイ72は、穴72aの開口端部72bで、第3成形品13の円錐部13cの開口端部13dをしごく。
(e−6)フランジ成形工程は、プレスによって全周同時に行なわれる。
【0043】
(e−7)フランジ成形工程では、パンチ71をダイ72に対して第3成形品13の円錐部13cの軸方向(ホイールディスク10の軸方向と同方向)にのみ相対動させて加工する。なお、
図2(f)、
図7において、A4は、パンチ71の加工方向である。なお、パンチ71とダイ72との上下関係は、
図2(f)、
図7に示す上下関係と反対になっていてもよい。
(e−8)フランジ成形工程の加工方法は、プレスによる絞り加工に限定されず、たとえばフローフォーミング(スピニング)等であってもよい。
(e−9)フランジ成形工程では、プレスによる絞り加工(またはフローフォーミング等)の後に、寸法出しのため機械加工を施してもよい。
(e−10)フランジ成形工程の加工(リム取付けフランジ32を成形する加工)は、拡径工程(上記(d)の工程)で行なわれていてもよい。
(e−11)フランジ成形工程の加工方法は、機械加工のみであってもよい。
【0044】
ホイールディスク10は、
図12に示すように、ハブ取付けボルト穴22、飾り穴33を打ち抜き、製造される。
【0045】
つぎに、本発明実施例の効果を説明する。
第1成形品11の円筒部11cの少なくとも一部をしごき加工して不等厚有底環状の第2成形品12を作成するしごき工程を有するため、スピニング加工を無くすことができる。
【0046】
しごき工程では円筒部11cの開口端部11d側はしごき加工をしないかしごき率を10%以下にしごき加工するため、円筒部11cの開口端部11d側の加工硬化を抑制できる。そのため、しごき工程の後の拡径工程で拡径した部分の材料が割れることを抑制できる。
【0047】
口絞り工程では揺動鍛造が行なわれるため、プレス成形ではできない精度でハブ取付け部20となる底部11 aを平滑等厚に成形できる。そのため、ハブ取付け部20となる底部11a(12a、13a)の機械加工を不要とすることができる。
【0048】
円筒状素材6の一端6aを口絞りして有底環状の第1成形品11を作成する口絞り工程では、円筒状素材6の他端6bの直径を変化させずに第1成形品11を作成するため、円筒状素材6の他端6bの加工硬化を抑制できる。そのため、拡径工程で材料が割れることを抑制できる。
【0049】
拡径工程では、拡径用パンチ61のストロークエンドにて鍛造成形してしごき工程で内径側にのみ付与されていた凹凸形状を外径側へと押し出すため、ホイールを車両に搭載する際にホイールディスク10がブレーキと干渉することを抑制できる。
【0050】
拡径工程の後にフランジ成形工程を有するため、精度の良いリム取付けフランジ32を得ることができる。
【0051】
口絞り工程では第1成形品11の円筒部11cの板厚を薄くするように揺動鍛造を行なう場合、しごき工程において第1成形品11の円筒部11cをしごく量を減らすことができる。そのため、しごき工程でしごき加工を容易に行なうことができる。
【0052】
口絞り工程では、プレスにて予成形を行いハブ取付け部20となる部分を内径側に曲げた後に、揺動鍛造を行い第1成形品11を作成することにより、予成形を行わない場合に比べて揺動鍛造を容易に行なうことができる。
【0053】
しごき工程ではしごき加工によって第2成形品12が成形されるため、スピニングによって第2成形品12が成形される場合に比べて、つぎの利点を有する。
1.加工時間が短い。そのため、ホイールディスク10の生産性が高い。
2.第2成形品12、第3成形品13、さらにはホイールディスク10の表面にスピニング加工の加工ロールの成形痕が残ることを抑制できる。
3.ワーク端部寸法のバラツキを小さくでき、加工後に端部を切断する必要がない。そのため、材料が低減できる。また、加工硬化したワーク端部を切断するのに用いられる刃工具の破損のおそれも抑制できる。