【解決手段】ステアリング装置1では、二次衝突時には、可動ブラケット24が、操舵部材を伴って、所定の移動方向Z1における下流側へ向けて固定ブラケット23に対して相対移動可能である。可動ブラケット24では、後端部321には、上流側スライド部材89Uが組み付けられ、前端部322には、下流側スライド部材89Dが組み付けられている。上流側スライド部材89Uおよび可動ブラケット24において、一方に、凸部94が設けられ、他方に、凸部94が嵌め込まれる凹部97が設けられている。下流側スライド部材89Dおよび可動ブラケット24において、一方に、凸部94が設けられ、他方に、凸部94が嵌め込まれる凹部97が設けられている。
前記可動ブラケットは、前記上流側部分および下流側部分を有する板状部と、前記板状部において前記移動方向に対する直交方向における両側から同じ方向に屈曲した一対の屈曲部と、を含み、
前記上流側スライド部材および下流側スライド部材のそれぞれは、前記板状部と前記固定ブラケットとの間に差し込まれる本体部と、前記本体部から延び出して前記一対の屈曲部の間に配置されつつ、前記本体部との間で前記板状部を挟む挟持部と、を含み、
前記直交方向における前記本体部の最大寸法は、前記一対の屈曲部の間隔よりも大きく、
前記直交方向における前記挟持部の一端縁および他端縁の間隔は、前記一対の屈曲部の間隔以下であることを特徴とする、請求項1記載のステアリング装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態におけるステアリング装置1の模式的側面図であり、ステアリング装置1の概略構成を示している。なお、
図1における左側が、ステアリング装置1および(ステアリング装置1が取り付けられる)車体の前側であり、
図1における右側が、ステアリング装置1および車体の後側である。また、
図1における上側が、ステアリング装置1および車体の上側であり、
図1における下側が、ステアリング装置1および車体の下側である。
【0019】
図1を参照して、ステアリング装置1は、ステアリングホイール等の操舵部材2に連結されて前後方向に延びるステアリングシャフト3と、ステアリングシャフト3に自在継手4を介して連結された中間軸5と、中間軸5に自在継手6を介して連結されたピニオン軸7と、ラック軸8と、ステアリングコラム15とを主に備えている。
ピニオン軸7の端部(下端部)の近傍には、ピニオン7Aが設けられていて、ラック軸8のラック8Aと噛み合っている。ピニオン軸7およびラック軸8を含むラックアンドピニオン機構によって、操舵機構A1が構成されている。ラック軸8は、車体側部材(車体そのもの、または車体に固定された部材をいい、以下同じ)9に固定されたハウジング10によって支持されている。ラック軸8は、車両の幅方向である車幅方向(紙面とは直交する方向)に移動可能である。ラック軸8の各端部は、図示しないタイロッドおよびナックルアームを介して、転舵輪(車輪)に連結されている。
【0020】
ステアリングシャフト3は、例えばスプライン結合を用いて、同行回転可能に且つ軸方向X1に相対移動可能に連結されたアッパーシャフト11およびロアーシャフト12を含んでいる。ステアリングシャフト3は、車体側部材13,14に固定されたステアリングコラム15によって、軸受(アッパーベアリング75、ロアーベアリング76)を介して回転可能に支持されている。
【0021】
ステアリングコラム15は、ステアリングシャフト3の軸方向X1に相対移動可能に嵌め合わされた筒状のアッパージャケット16およびロアージャケット17と、ロアージャケット17の軸方向X1における一端(下端)に連結されたハウジング18とを備えている。ステアリングシャフト3では、前端部(下端部でもある)と後端部(上端部でもある)との間の途中部分が、ステアリングコラム15内に収容されている。ハウジング18は、ロアーベアリング76を介してロアーシャフト12に連結されている。アッパージャケット16は、アッパーベアリング75を介してアッパーシャフト11に連結されており、アッパーシャフト11を伴って軸方向X1に移動することができる、アッパージャケット16をロアージャケット17に対して軸方向X1に相対移動させることによって、ステアリングコラム15およびステアリングシャフト3のテレスコピック調整(テレスコ調整)が可能となる。
【0022】
ハウジング18内には、操舵補助用の電動モータ19の動力を減速してロアーシャフト12に伝達する減速機構20が収容されている。減速機構20は、電動モータ19の回転軸(図示せず)と同行回転可能に連結された駆動ギヤ21と、駆動ギヤ21に噛み合ってロアーシャフト12と同行回転する被動ギヤ22とを有している。
操舵部材2を回転させることによって操舵すると、操舵部材2の回転は、ステアリングシャフト3、自在継手4、中間軸5、自在継手6およびピニオン軸7に対してこの順番で伝達され、ラック軸8の車幅方向における直線移動へと変換される。これにより、転舵輪の転舵が達成される。また、必要に応じて、電動モータ19が駆動されて、ステアリングシャフト3の回転が補助されるので、操舵部材2の操舵が補助される。
【0023】
このように、本実施の形態では、ステアリング装置1が電動パワーステアリング装置に適用された例に則して説明しているが、本発明を、電動モータ19による操舵の補助が省略されたマニュアルステアリング装置に適用してもよい。
そして、車体側部材14に固定されたロアーブラケット59が、ピボット軸であるチルト中心軸36を支持している。チルト中心軸36は、ステアリングコラム15のハウジング18を介して、ステアリングコラム15全体を、当該チルト中心軸36の回りに揺動可能に支持している。ステアリングコラム15を揺動させることによって、チルト調整が可能となる。なお、本発明は、テレスコ調整機能およびチルト調整機能の両方を有するステアリング装置だけでなく、どちらかの調整機能だけを有するステアリング装置にも適用可能である。
【0024】
次に、ステアリング装置1における車体側部材13の周辺について説明する。ここで、前述した前後上下方向や軸方向X1に加えて、軸方向X1に対する直交方向である左右方向Y1(前述した車幅方向と同じ)を用いて説明を行うことにする。
概略断面図である
図2に示すように、ステアリング装置1は、車体側部材13に固定された固定ブラケット23と、アッパージャケット16に連結された可動ブラケット24と、一対の吊り下げ機構T1,T2とをさらに含んでいる。固定ブラケット23は、吊り下げ機構T1,T2を介して可動ブラケット24(換言すれば、可動ブラケット24に連結されたアッパージャケット16)を吊り下げている。
【0025】
次に、ステアリング装置1の分解斜視図である
図3も参照して、固定ブラケット23、可動ブラケット24および吊り下げ機構T1,T2等について説明する。なお、
図3では、左上側が、ステアリング装置1の前側であり、右下側が、ステアリング装置1の後側である。
固定ブラケット23は、アッパーブラケットともいい、例えば板金等により形成されている。固定ブラケット23は、軸方向X1および左右方向Y1の両方に沿って延びる平板状の第1板30と、第1板30の一対の側縁(左右方向Y1における外側縁)からそれぞれ下向きに延設された一対の側板37と、一対の側板37からそれぞれ(左右方向Y1における)外側方へ延設された一対の取付板38とを備えている。第1板30の上面30Aおよび下面30Bは、軸方向X1および左右方向Y1の両方に沿って平坦である。各取付板38に形成されたねじ挿通孔39に対して下から挿通された金属製の固定ボルト40(
図5参照)によって、各取付板38が、車体側部材13に固定されている(
図2参照)。これにより、固定ブラケット23が車体側部材13に固定されている。
【0026】
可動ブラケット24は、チルトブラケットともいい、固定ブラケット23と同様に、板金等により形成されている。可動ブラケット24は、第1板30と平行に延びる平板状の第2板32(板状部)と、第2板32の一対の側縁(左右方向Y1における外側縁)から下向きに延設された一対の側板41とを含んでおり、上下が逆になったU字状をなしている。このように、一対の側板41は、第2板32において左右方向Y1における両側(厳密には、両端部)から同じ方向に屈曲した一対の屈曲部となっている。第2板32は、軸方向X1に延びる2辺と左右方向Y1に延びる2辺とを有する略矩形状(
図3では略正方形状)をなしている。第2板32の上面32Aは、平面視で第2板32と一致する略矩形状であり、上面32Aの全域は、軸方向X1および左右方向Y1の両方に沿って平坦である。可動ブラケット24は、固定ブラケット23の真下に位置していて、固定ブラケット23の第1板30に対して可動ブラケット24の第2板32の上面32Aが下から対向配置されている。つまり、第2板32の上面32Aは、可動ブラケット24において固定ブラケット23に対向する対向面となっている。第2板32と各側板41との連結部70は、
図3に示すように左右方向Y1における外方へ張り出した湾曲状に形成されていてもよい。
【0027】
そして、
図1および
図2に示すように、ステアリング装置1は、ロック機構29を備えている。簡単に説明すると、ロック機構29は、運転者等による操作レバー27の操作に応じて左右方向Y1に移動する締付軸28によって、可動ブラケット24を介して、コラムジャケット26の位置(ひいてはアッパージャケット16および操舵部材2の位置)をロックしたり、そのロックを解除したりする。
【0028】
ロック機構29に関連して、
図2に示すように、ステアリングコラム15のアッパージャケット16には、前述したコラムジャケット26が固定されている。コラムジャケット26は、可動ブラケット24における一対の側板41の内側で側板41にそれぞれ対向する一対の側板71と、一対の側板71の下端間を連結する連結板72とを備えたU字状をなしている。
【0029】
前述した締付軸28は、可動ブラケット24およびコラムジャケット26の側板41,71を左右方向Y1において貫通するボルトで構成されている。そのため、アッパージャケット16に固定されたコラムジャケット26と、可動ブラケット24とは、締付軸28を介して連結されている。また、前述したように、操舵部材2がアッパーシャフト11に連結されて、アッパージャケット16が(アッパーベアリング75を介して)アッパーシャフト11に連結されているので(
図1参照)、操舵部材2とアッパージャケット16とは連結されている。よって、可動ブラケット24が操舵部材2に連結されていることがわかる。
【0030】
そして、締付軸28に螺合するナット73を、操作レバー27の回転操作によって回転させることにより、締付軸28におけるボルトの頭部28Aとナット73との間に、両側板41,71を締め付け、両側板41,71をロックする。これにより、テレスコ調整やチルト調整後の操舵部材2の位置をロックできる。一方、操作レバー27を逆向きに回転操作すると、両側板41,71の締め付け(ロック)が解除されるので、テレスコ調整やチルト調整が可能となる。
【0031】
図3に示すように、固定ブラケット23の第1板30には、軸方向X1(前後方向)に沿って直線状に延びる長溝31が、プレス加工での打ち抜きや切削等によって形成されている。一方、可動ブラケット24の第2板32には、挿通孔33が形成されている。長溝31および挿通孔33のそれぞれは、一対の吊り下げ機構T1,T2に対応して一対ずつ設けられている。
【0032】
一対の長溝31は、第1板30を板厚方向に貫通しつつ、互いに平行な状態で左右方向Y1に間隔を隔てて並んでいる。ステアリング装置1を上方から見た平面視において、軸方向X1における各長溝31の両端部(前端部31Aおよび後端部31Bの両方)は、円弧状に丸められている。
また、第1板30には、1対の長溝31を仕切る境界部分35が一体的に設けられている。境界部分35は、固定ブラケット23の一部として1対の長溝31の間で軸方向X1に沿って帯状に延びている。軸方向X1における境界部分35の一端部(後端部)には、境界部分35(第1板30)を板厚方向に貫通する第1貫通孔66が形成されている。第1貫通孔66と各長溝31との左右方向Y1における間隔は等しい。
【0033】
一対の挿通孔33は、第2板32を板厚方向に貫通する丸孔であって、左右方向Y1に間隔を隔てて並んでおり、左右方向Y1で同じ位置にある長溝31の一部に対して下から対向している。つまり、1対の挿通孔33は、1対の長溝31のそれぞれに対して1つずつ対向している。第2板32において左右方向Y1における1対の挿通孔33の間には、第2板32を板厚方向に貫通する第2貫通孔67が形成されている。第2貫通孔67と各挿通孔33との左右方向Y1における間隔は等しい。なお、第1貫通孔66および第2貫通孔67は、後述するピン61が挿通される孔であり、詳しくは、後述する。
【0034】
そして、二次衝突時以外の通常状態では、(可動ブラケット24における)1対の挿通孔33は、(固定ブラケット23における)1対の長溝31のそれぞれの一端部(後端部31B)に対して1つずつ対向している(
図1参照)。
各吊り下げ機構T1,T2は、吊り部材25と、皿ばね等の板ばね42と、ナット34と、スライドプレート43とによって構成されている。吊り部材25、板ばね42およびナット34のそれぞれは、吊り下げ機構T1,T2に応じて1対(2つ)ずつ設けられていて、左右方向Y1に並んで配置されている。
【0035】
吊り部材25は、上下に延びて上端に頭部52を有するボルトである。各吊り部材25は、対向状態にある(第1板30の)長溝31の後端部31Bおよび(第2板32の)挿通孔33に対して上から1本ずつ挿通されている。そして、各吊り部材25の下端部は、ナット34に螺合している。これにより、各吊り部材25は、ナット34と共同して第1板30と第2板32とを連結しており、固定ブラケット23から延びて可動ブラケット24(換言すれば、コラムジャケット26およびアッパージャケット16)を吊り下げている(
図2参照)。
【0036】
また、
図1を参照して、各吊り部材25は、二次衝突時に、長溝31に沿って、可動ブラケット24、コラムジャケット26、アッパージャケット16、アッパーシャフト11および操舵部材2(これらを「可動部材」と総称することにする)と共に、軸方向X1における前側へ移動することができる。このとき、長溝31は、二次衝突時における吊り部材25の移動をガイドしている。また、このとき、可動ブラケット24は、操舵部材2を伴って、軸方向X1に沿って固定ブラケット23に対して前側へ向けて相対移動する。ここで、二次衝突時での可動ブラケット24の移動方向に、符号「Z1」を付すことにすると、軸方向X1と移動方向Z1とは平行であって、軸方向X1における前側とは、所定の移動方向Z1における下流側ということになる。なお、吊り部材25および前記可動部材が円滑に移動できるように、必要に応じて、ステアリングコラム15のハウジング18が車体側のロアーブラケット59から外れてもよい。
【0037】
そして、前述したスライドプレート43は、左右方向Y1に長手の薄板であり、
図2に示すように、第1板30と板厚方向が一致した状態で、両板ばね42と第1板30の上面30Aとの間に介在している。スライドプレート43の少なくとも第1板30側の面(下面であり、摺動面43Aということにする)の全域には、例えばフッ素樹脂や四フッ化エチレン樹脂等の摩擦低減材81が設けられている(後述する
図6および
図7も参照)。なお、スライドプレート43全体が摩擦低減材81で形成されていてもよいし、スライドプレート43の摺動面43Aだけが摩擦低減材81で被覆されていてもよい。スライドプレート43では、可動ブラケット24における1対の挿通孔33のそれぞれと対向する位置(左右方向Y1で同じ位置)に、スライドプレート43を板厚方向に貫通する第2挿通孔44が1つずつ(合計で1対)形成されている。これらの第2挿通孔44は、左右方向Y1に並んでいる。
【0038】
各吊り部材25は、環状の板ばね42と、スライドプレート43の対応する(左右方向Y1で同じ位置にある)第2挿通孔44と、第1板30の対応する長溝31と、第2板32の対応する挿通孔33とに対して、この順で上から挿通されて、第2板32の下方のナット34にねじ込まれている。これにより、各吊り部材25が可動ブラケット24を吊り下げている。
【0039】
二次衝突時には、吊り部材25が固定ブラケット23の長溝31に沿って可動ブラケット24と共に移動し、その際、スライドプレート43は、固定ブラケット23に対して前側(移動方向Z1における下流側)へ摺動することによって1対の吊り部材25と共に移動可能である。スライドプレート43では、前述した摺動面43Aが、固定ブラケット23の第1板30の上面30Aに対して摺動する。
【0040】
ここで、ステアリング装置1は、二次衝突時における固定ブラケット23の第1板30と可動ブラケット24の第2板32との間の摩擦(摺動抵抗)を低減するためのスライド部材89をさらに含んでいる。なお、説明の便宜上、スライド部材89の図示が省略された図(
図1等)がある。スライド部材89は、
図3に示すように、2つ存在し、これらのスライド部材89は、移動方向Z1に並んで配置されている。移動方向Z1における上流側(後側)のスライド部材89を上流側スライド部材89Uといい、移動方向Z1における下流側(前側)のスライド部材89を下流側スライド部材89Dということにする。
【0041】
スライド部材89(上流側スライド部材89Uおよび下流側スライド部材89D)の説明に当たり、
図3だけでなく、
図4も参照する。
図4では、紙面における左下側が、ステアリング装置1の前側であり、右上側が、ステアリング装置1の後側である。
そして、上流側スライド部材89Uと下流側スライド部材89Dとは、同一構造であり、形状および大きさが等しい。そのため、以下では、各スライド部材89を、上流側スライド部材89Uや下流側スライド部材89Dと区別することなく、説明することがある。
【0042】
各スライド部材89は、本体部90と、折曲部91とを一体的に含んでいる。
図3を参照して、本体部90は、第1板30および第2板32のそれぞれと平行に配置される薄板状である。板厚方向から見たときの本体部90は、左右方向Y1に長い長方形状をなしている。本体部90において、軸方向X1に延びる左端縁および右端縁が、当該長方形状における左右一対の辺(短辺)であり、左右方向Y1に延びる前端縁および後端縁が、当該長方形状における前後一対の辺(長辺)である。本体部90における前端縁および後端縁の一方(上流側スライド部材89Uの場合は前端縁であり、下流側スライド部材89Dの場合は後端縁)の左右方向Y1における中央には、当該中央における本体部90を板厚方向に貫通するように切り欠く切り欠き部93が形成されている。切り欠き部93は、本体部90における前端縁および後端縁の他方(上流側スライド部材89Uの場合は後端縁であり、下流側スライド部材89Dの場合は前端縁)へ向けて窪んでいる。切り欠き部93は、当該他方へ向けて左右方向Y1において幅狭となる矩形状である。
【0043】
本体部90において、上面に符号「90A」を付し、下面に符号「90B」を付すことにする。下面90Bにおいて、左右方向Y1における切り欠き部93の両側には、下側へ突出する凸部94が1つずつ(合計2つ)設けられている。本体部90の上面90Aにおいて凸部94が形成される予定の部分を、エンボス加工等によって下向きに凹ませると、下面90Bにおいて当該部分と一致する部分が下方へ略半球状に盛り上がる。この略半球状部分が、凸部94である。本体部90において、これら2つの凸部94は、切り欠き部93を挟んで対称となるように配置されている。上流側スライド部材89Uの凸部94は、第1凸部として機能し、下流側スライド部材89Dの凸部94は、第2凸部として機能する。
【0044】
折曲部91は、本体部90の前端縁および後端縁のうち、切り欠き部93が形成されていない方(上流側スライド部材89Uの場合は後端縁であり、下流側スライド部材89Dの場合は前端縁)に設けられている。折曲部91は、左右方向Y1における本体部90の両端側(両端縁よりも左右方向Y1において少し内側)に1つずつ(合計2つ)設けられている。各折曲部91は、本体部90から前後のどちらか(切り欠き部93から離れる側であって、上流側スライド部材89Uの場合は後側、下流側スライド部材89Dの場合は前側)へ少し延び出てから、本体部90と略直角となるように、本体部90から下方へ折れ曲がっている。なお、各折曲部91において本体部90から前後に延び出た部分(本体部90につながっている部分)を、本体部90の一部とみなしてもよい。各折曲部91は、鉤形フック形状である。折曲部91の板厚は、本体部90の板厚と同じである。また、各折曲部91では、本体部90側とは反対側の先端部(
図3における下端部)が、切り欠き部93側へ折り曲げられている。この先端部を、挟持部95ということにすると、挟持部95は、本体部90から延び出した折曲部91の一部であり、切り欠き部93に近付くのに従って本体部90の下面90Bに接近するように、本体部90(軸方向X1)に対して傾斜している。
【0045】
以上のような各スライド部材89は、左右方向Y1における中心を基準として左右対称な形状を有している。
ここで、各スライド部材89において、複数(ここでは左右2つ)の挟持部95を1つの挟持部95とみなし、左右方向Y1における当該1つの挟持部95の一端縁95Aおよび他端縁95Bを定義する。
図3における上流側スライド部材89Uに着目すると、この実施形態において、一端縁95Aは、実際は2つ存在する挟持部95における左側の挟持部95の左端縁であり、他端縁95Bは、右側の挟持部95の右端縁である。または、一端縁95Aを、右側の挟持部95の右端縁とし、他端縁95Bを、左側の挟持部95の左端縁としてもよい。このことは、下流側スライド部材89Dにも当てはまる。いずれにせよ、左右方向Y1における挟持部95の一端縁95Aおよび他端縁95Bの間隔Kは、可動ブラケット24における一対の側板41と第2板32との境界における一対の側板41の間隔L以下である。厳密には、間隔Kは、間隔Lより若干小さい。一方で、左右方向Y1における本体部90の最大寸法Mは、一対の側板41の間隔L、さらには、一対の側板41の最大間隔N(
図4参照。前述した連結部70における間隔であり、間隔L以上の大きさを有する)よりも大きい。
【0046】
また、上流側スライド部材89Uの本体部90(各折曲部91において本体部90から後側へ延び出た部分も含む)の軸方向X1における最大寸法Pは、可動ブラケット24の第2板32の上面32Aにおいて挿通孔33および第2貫通孔67よりも後側の領域の軸方向X1における寸法Qよりも小さい。また、下流側スライド部材89Dの本体部90(各折曲部91において本体部90から前側へ延び出た部分も含む)の軸方向X1における最大寸法Pは、上面32Aにおいて挿通孔33および第2貫通孔67よりも前側の領域の軸方向X1における寸法Vよりも小さい。ただし、この実施形態では、上流側スライド部材89Uと下流側スライド部材89Dとが同一構造なので、本体部90の軸方向X1における最大寸法Pは、上流側スライド部材89Uと下流側スライド部材89Dとで同じである。
【0047】
各スライド部材89は、1枚の薄板に切り欠き部93を形成してから、当該薄板に折曲加工を施して折曲部91(挟持部95も含む)を形成することによって製造される。なお、各折曲部91における折れ曲がり部分には、R面取り部分96が自然に形成されている(
図4参照)。R面取り部分96は、当該折れ曲がり部分の角を丸める円弧状をなしている。また、スライド部材89における縁(特に、本体部90の上面90Aの前端縁や切り欠き部93における縁)は、尖らないように、丸められている。
【0048】
そして、各スライド部材89は、各折曲部91が下を向いた状態で、可動ブラケット24の第2板32に対して軸方向X(移動方向Z1における上流側または下流側)から組み付けられる。
ここで、第2板32への各スライド部材89の組み付けに関連して、第2板32の後端部321(移動方向Z1における可動ブラケット24の上流側部分)における上面32Aには、凹部97(第1凹部)が設けられている。また、第2板32の前端部322(移動方向Z1における可動ブラケット24の下流側部分)における上面32Aにも、凹部97(第2凹部)が設けられている。前端部322および後端部321のそれぞれでは、各スライド部材89の凸部94と同数(ここでは2つ)の凹部97が左右方向Y1に並んで設けられている。前端部322および後端部321のそれぞれでは、2つの凹部97は、第2板32の左右方向Y1における中央を基準として対称に配置されていて、当該2つの凹部97の間隔は、各スライド部材89における2つの凸部94の間隔と等しい。また、前端部322の2つの凹部97は、挿通孔33および第2貫通孔67よりも前側に位置しており、後端部321の2つの凹部97は、挿通孔33および第2貫通孔67よりも後側に位置している。この実施形態では、各凹部97は、第2板32を上面32Aから板厚方向に貫通して下面32Bまで到達しているが(後述する
図6および
図7参照)、下面32Bまで到達していなくてもよい。また、各凹部97の断面は、略半球状の凸部94とほぼ同じ(または僅かに大きい)直径を有する円形状である。
【0049】
そして、上流側スライド部材89Uは、切り欠き部93が前側を向いた状態で、第2板32の後端部321よりも後側に配置され、後端部321に対して後側(移動方向Z1における上流側)から組み付けられる。下流側スライド部材89Dは、切り欠き部93が後側を向いた状態で、第2板32の前端部322よりも前側に配置され、前端部322に対して前側(移動方向Z1における下流側)から組み付けられる。
【0050】
図4に示すように、組み付け後の上流側スライド部材89Uでは、本体部90が、第2板32の後端部321に上から載っていて、後端部321における上面32Aに沿っている。そして、本体部90の下面90Bにおける各凸部94が、後端部321の上面32Aにおいて左右方向Y1で同じ位置にある凹部97に対して上からぴったりと(ほとんど遊びがない状態で)嵌め込まれている(
図6および
図7も参照)。また、上流側スライド部材89Uでは、左右の折曲部91が、後側(前述した移動方向Z1における上流側)から可動ブラケット24(第2板32の後端部321)に引っ掛かっている。また、各折曲部91の先端の挟持部95が、可動ブラケット24における一対の側板41の間に配置されつつ、本体部90との間で第2板32の後端部321を挟んでいる(
図6および
図7も参照)。組み付け前の上流側スライド部材89Uでは、挟持部95は、前述したように、切り欠き部93に近付くのに従って本体部90の下面90Bに接近するように本体部90に対して傾斜している。そのため、組み付け後の上流側スライド部材89Uでは、挟持部95は、本体部90との間で後端部321を弾性的に挟んでいる。
【0051】
また、組み付け後の下流側スライド部材89Dでは、本体部90が、第2板32の前端部322に上から載っていて、前端部322における上面32Aに沿っている。そして、本体部90の下面90Bにおける各凸部94が、前端部322の上面32Aにおいて左右方向Y1で同じ位置にある凹部97に対して上からぴったりと嵌め込まれている(
図6および
図7も参照)。また、下流側スライド部材89Dでは、左右の折曲部91が、前側(前述した移動方向Z1における下流側)から可動ブラケット24(第2板32の前端部322)に引っ掛かっている。また、各折曲部91の先端の挟持部95が、可動ブラケット24における一対の側板41の間に配置されつつ、本体部90との間で第2板32の前端部322を挟んでいる(
図6および
図7も参照)。組み付け前の下流側スライド部材89Dでは、挟持部95は、前述したように、切り欠き部93に近付くのに従って本体部90の下面90Bに接近するように本体部90に対して傾斜している。そのため、組み付け後の下流側スライド部材89Dでは、挟持部95は、本体部90との間で後端部321を弾性的に挟んでいる。
【0052】
前述した寸法P、QおよびVの関係(P<Q,P<Vであり、
図3参照)より、第2板32に載せられた上流側スライド部材89Uおよび下流側スライド部材89Dは、軸方向X1において隙間Wを隔てて互いに離間している。各スライド部材89の切り欠き部93は、隙間Wの一部となっている。そのため、隙間Wは、左右方向Y1における中央において軸方向X1における両側へ広くなっている。このような隙間Wから、第2板32の第2貫通孔67および両方の挿通孔33が完全に露出されている。両スライド部材89の切り欠き部93は、軸方向X1において第2貫通孔67の両側に位置している。
【0053】
また、各スライド部材89では、少なくとも本体部90の上面90A(各折曲部91において本体部90から軸方向X1へ延び出た部分の上面も含む)の全域に、前述した摩擦低減材81が設けられている。もちろん、スライド部材89全体が、摩擦低減材81で構成されていてもよい。
図2を参照して、前述したように各吊り部材25が固定ブラケット23から延びて可動ブラケット24を吊り下げている状態において、可動ブラケット24に組み付けられた各スライド部材89では、本体部90が、可動ブラケット24の第2板32の上面32Aと固定ブラケット23の第1板30との間に差し込まれている。本体部90では、上面90Aが、摩擦低減材81を介して第1板30の下面30Bに対して下から面接触している。そのため、第2板32(可動ブラケット24)の上面32Aと第1板30(固定ブラケット23)の下面30Bとの間には、前後一対のスライド部材89が常に介在された状態となっていて、可動ブラケット24と固定ブラケット23とは直接接触していない(
図6および
図7も参照)。
【0054】
次に、
図3を参照して、吊り部材25について詳説すると、各吊り部材25は、前述したフランジ状の頭部52と、頭部52に連なり頭部52より小径の大径部53と、大径部53に連なり大径部53より小径の小径部54と、大径部53と小径部54との間に形成された段部55と、小径部54に設けられたねじ部56とを一体的に備えている。頭部52には、例えば六角孔形状の工具係合部57が設けられている。
【0055】
二次衝突時以外の通常状態において、
図2に示すように、各吊り部材25では、頭部52が板ばね42に上から係合している。また、各吊り部材25では、大径部53が、板ばね42の中空部分と、スライドプレート43の第2挿通孔44と、長溝31の後端部31Bとに対して上から挿通されている。これにより、スライドプレート43は、各吊り部材25の頭部52と固定ブラケット23(長溝31の縁)との間に介在された状態となっている。段部55は、上流側スライド部材89Uと下流側スライド部材89Dとの軸方向X1における隙間Wを通って、第2板32の上面32Aに当接し、上面32Aによって受けられている。段部55とナット34との間で第2板32が挟持されて、吊り部材25と第2板32とが固定されている。
【0056】
頭部52と段部55との間隔H1(大径部53の軸長に相当)は、第1板30と第2板32との間に介在する各スライド部材89の本体部90の板厚と、第1板30の板厚と、第1板30の上面30Aに沿うスライドプレート43の板厚と、最圧縮時の板ばね42の板厚との合計よりも若干大きくされている。これにより、板ばね42が、スライドプレート43を介して第1板30を第2板32側へ弾性的に付勢している。
【0057】
前述した通常状態には、各吊り部材25が長溝31の後端部31Bに位置している(
図5参照)。このときの可動ブラケット24(第2板32)の軸方向X1(移動方向Z1)における位置を、初期位置ということにする(
図1、
図2および
図6も参照)。
そして、ステアリング装置1は、連結・離脱機構R1を備えている。連結・離脱機構R1は、固定ブラケット23と可動ブラケット24とを連結し、二次衝突時に、可動ブラケット24を初期位置から
図7に示すように軸方向X1における前側(移動方向Z1における下流側)へ向けて第1板30から離脱(相対移動)させる。
【0058】
図2および一部破断概略平面図である
図5に示すように、連結・離脱機構R1は、左右方向Y1に関して、一対の吊り下げ機構T1,T2の間(すなわち固定ブラケット23の第1板30の一対の長溝31の間)に配置されている。具体的には、連結・離脱機構R1は、左右方向Y1に関して、一対の長溝31の間(すなわち一対の吊り部材25の間)の中央位置に配置されている。連結・離脱機構R1は、二次衝突時に剪断(破断)する樹脂製のピン61と、ピン61の軸方向の一部に嵌合した円筒状の金属カラー62とで構成されている(
図3参照)。なお、金属カラー62に代えて、高硬度の樹脂やセラミック等のカラーを用いてもよい。
【0059】
図6を参照して、連結・離脱機構R1のピン61は、例えば断面円形の頭部63と、頭部63よりも小径の円柱状の軸部64とを備えている。円筒状の金属カラー62は、軸部64の外周に嵌合されている。金属カラー62の外径は、ピン61の頭部63の外径と等しい。
前述した通常状態では、固定ブラケット23の第1板30の第1貫通孔66と、可動ブラケット24の第2板32の第2貫通孔67とが、軸方向X1(移動方向Z1)および左右方向Y1において同じ位置(上流側スライド部材89Uと下流側スライド部材89Dとの隙間Wの内側領域)にあって、上下に対向している。このとき、ピン61の頭部63と金属カラー62の大部分とは、固定ブラケット23の第1板30の第1貫通孔66に挿通されている。金属カラー62の一部は、第1貫通孔66から下方へ突出している。ピン61の軸部64のうち、金属カラー62から突出した部分が、可動ブラケット24の第2板32の第2貫通孔67に挿通されている。つまり、ピン61は、対向状態にある第1貫通孔66および第2貫通孔67に対して跨って挿通されている。これによって、ピン61は、固定ブラケット23に対して可動ブラケット24を位置決めしている。
【0060】
金属カラー62の軸方向の第1端部621(
図6における上端部)が、ピン61の頭部63に当接し、金属カラー62の軸方向の第2端部622(
図6における下端部)が、第2板32の上面32Aによって受けられている。これにより、ピン61および金属カラー62が、第2板32の下方へ脱落することが防止されている。
一方、スライドプレート43が、ピン61の頭部63の上方を覆うように配置されることで、ピン61の上方への脱落が防止されている。また、スライドプレート43には、ピン61の頭部63に対向して、頭部63の外径よりも小さい覗き孔65が形成されている。連結・離脱機構R1の組立後に、スライドプレート43の覗き孔65を通してピン61の頭部63を視認することにより、ピン61の組み付け忘れ等の作業不良を容易に判断することができる。
【0061】
図2のVIII−VIII線に沿う断面である
図8に示すように、第1板30の第1貫通孔66は、左右方向Y1に関して、吊り下げ機構T1,T2用の長溝31間の中央位置に1つ配置されている。すなわち、ピン61は、左右方向Y1に関して、一対の吊り部材25間の中央位置に配置されている。
また、第1板30の各第1貫通孔66は、左右方向Y1に長い横長孔に形成されている。これにより、左右方向Y1に関して、金属カラー62の外周と第1貫通孔66の内周との間に隙間S1,S2が設けられている。
【0062】
図2のIX−IX線に沿う断面である
図9に示すように、可動ブラケット24の第2板32の第2貫通孔67は、左右方向Y1に関して、一対の挿通孔33間の中央位置に1つ配置されている。第2貫通孔67は、ピン61の軸部64の外径と同じか又は若干大きい内径を持つ円孔により形成されている。
二次衝突時には、
図7に示すように、第1貫通孔66と第2貫通孔67とがずれる。これに伴う金属カラー62の第2端部622と第2板32との合わせ面のずれによって、ピン61の軸部64が、第1貫通孔66と第2貫通孔67との間の位置で剪断(破断)される。金属カラー62の第2端部622の内周縁で構成される剪断刃は、円弧状であり(
図8参照)、第2板32の第2貫通孔67の縁部で構成される剪断刃も、円弧状である(
図9参照)。
【0063】
二次衝突時には、ピン61の破断により、可動ブラケット24が、固定ブラケット23から解放され、前述したように、初期位置(
図6参照)から
図7に示すように軸方向X1における前側(移動方向Z1における下流側)へ離脱する。つまり、二次衝突時には、ピン61は、互いにずれる第1貫通孔66と第2貫通孔67との間で破断することによって、軸方向X1における固定ブラケット23に対する可動ブラケット24の相対移動を許可する。これにより、二次衝突における衝撃が吸収される。
【0064】
また、二次衝突時には、可動ブラケット24の後端部321に組み付けられた上流側スライド部材89Uが、後端部321(後端部321における上面32A)と固定ブラケット23(第1板30の下面30B)との間に介在された状態で、移動方向Z1における下流側へ向けて可動ブラケット24と一体移動する。また、二次衝突時には、可動ブラケット24の前端部322に組み付けられた下流側スライド部材89Dが、前端部322(前端部322における上面32A)と固定ブラケット23(第1板30の下面30B)との間に介在された状態で、移動方向Z1における下流側へ向けて可動ブラケット24と一体移動する。上流側スライド部材89Uおよび下流側スライド部材89Dは、このように可動ブラケット24と一体移動しながら、固定ブラケット23の第1板30の下面30Bに摺擦する。具体的に、上流側スライド部材89Uおよび下流側スライド部材89Dのそれぞれでは、本体部90における第1板30側の面(上面90A)が、摩擦低減材81を介して固定ブラケット23に摺擦する。
【0065】
以上のように、このステアリング装置1では、二次衝突時には、可動ブラケット24が移動方向Z1における下流側へ向けて固定ブラケット23に対して相対移動することによって、二次衝突時における衝撃を吸収することができる。
ここで、可動ブラケット24の後端部321に組み付けられた上流側スライド部材89Uが、当該後端部321と固定ブラケット23との間に介在された状態で可動ブラケット24と一体移動する。また、可動ブラケット24の前端部322に組み付けられた下流側スライド部材89Dが、当該前端部322と固定ブラケット23との間に介在された状態で可動ブラケット24と一体移動する。上流側スライド部材89Uおよび下流側スライド部材89Dによって、可動ブラケット24と固定ブラケット23との間の摩擦を低減させることができる。
【0066】
そして、上流側スライド部材89Uおよび可動ブラケット24において、一方(ここでは上流側スライド部材89U)に設けられた凸部94を、他方(ここでは可動ブラケット24)に設けられた凹部97に嵌め込むという簡単な作業によって、上流側スライド部材89Uを可動ブラケット24の後端部321に対して、上下(表裏)の向きを間違えずに容易に組み付けることができる。また、凸部94が凹部97に嵌め込まれているので、組み付け後の上流側スライド部材89Uの(移動方向Z1や左右方向Y1における)位置調整が不要となる。
【0067】
同様に、下流側スライド部材89Dおよび可動ブラケット24において、一方(ここでは下流側スライド部材89D)に設けられた凸部94を、他方(ここでは可動ブラケット24)に設けられた凹部97に嵌め込むといった簡単な作業によって、下流側スライド部材89Dを可動ブラケット24の前端部322に対して、上下の向きを間違えずに容易に組み付けることができる。また、凸部94が凹部97に嵌め込まれているので、組み付け後の下流側スライド部材89Dの(移動方向Z1や左右方向Y1における)位置調整が不要となる。
【0068】
以上の結果、各スライド部材89の組み付けについての工数削減や、組み付け位置の調整の簡素化が達成される。よって、二次衝突時に衝撃吸収のために相対移動する1対の部材間(可動ブラケット24と固定ブラケット23との間)の摩擦を低減させる構成(上流側スライド部材89Uおよび下流側スライド部材89D)の組み付け性の向上を図ることができる。
【0069】
また、挟持部95によって、上流側スライド部材89Uおよび下流側スライド部材89Dのそれぞれを可動ブラケット24に対してより強固に組み付けることができる。
ここで、
図3を参照して、上流側スライド部材89Uおよび下流側スライド部材89Dのそれぞれでは、可動ブラケット24の第2板32と固定ブラケット23との間に差し込まれる本体部90の(左右方向Y1における)最大寸法Mが、一対の側板41の間隔L,N(
図4参照)よりも大きい。また、上流側スライド部材89Uおよび下流側スライド部材89Dのそれぞれでは、左右方向Y1における挟持部95の一端縁95Aおよび他端縁95Bの間隔(複数の挟持部95が左右方向Y1に並んでいる場合は、左右方向Y1両端に位置する1対の挟持部95の外側端縁同士の間隔)Kは、一対の側板41の間隔L以下である。
【0070】
このような寸法関係であれば、上流側スライド部材89Uおよび下流側スライド部材89Dのそれぞれでは、本体部90が一対の側板41の間に入ることができない。そのため、上流側スライド部材89Uおよび下流側スライド部材89Dのそれぞれを、本体部90を一対の側板41の間に差し込んでしまうように向きを間違える(逆組みする)ことなく、可動ブラケット24に組み付けることができる。よって、上流側スライド部材89Uおよび下流側スライド部材89Dの組み付け性の向上を一層図ることができる。
【0071】
また、上流側スライド部材89Uと下流側スライド部材89Dとが同一構造であるので、上流側スライド部材89Uおよび下流側スライド部材89Dのそれぞれを、区別せずに可動ブラケット24に組み付けることができる。よって、上流側スライド部材89Uおよび下流側スライド部材89Dの組み付け性の向上を一層図ることができる。
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【0072】
たとえば、前述した実施形態では、凸部94が、上流側スライド部材89Uおよび下流側スライド部材89Dのそれぞれに設けられていて、凸部94が嵌め込まれる凹部97が、可動ブラケット24に設けられている。これに限らず、凹部97が、上流側スライド部材89Uおよび下流側スライド部材89Dのそれぞれに設けられていて、凸部94が、可動ブラケット24に設けられていてもよい。要は、上流側スライド部材89Uおよび可動ブラケット24において、一方に、凸部94(第1凸部)が設けられ、他方に、凸部94が嵌め込まれる凹部97(第1凹部)が設けられていればよい。同様に、下流側スライド部材89Dおよび可動ブラケット24において、一方に、凸部94(第2凸部)が設けられ、他方に、凸部94が嵌め込まれる凹部97(第2凹部)が設けられていればよい。
【0073】
また、折曲部91および挟持部95の大きさ(特に、左右方向Y1の寸法)や数は、前述した間隔Kが満たされる範囲内で、任意に変更できる。また、各スライド部材89において左右2つの折曲部91がつながっていて、1つの折曲部91となっていてもよい。また、スライド部材89の切り欠き部93の大きさおよび形状は、任意に変更できる。要は、二次衝突時には、切り欠き部93におけるスライド部材89の周縁部が固定ブラケット23側の部品(たとえば、
図7に示すように固定ブラケット23の第1貫通孔66に残っているピン61の破片61Aなど)に引っ掛からないように、切り欠き部93が構成されていればよい。そのため、不要であれば、
図10に示すように、切り欠き部93を省略してもよい。また、スライド部材89に設けられる凸部94または凹部97の数も任意に変更でき、
図10に示すように、本体部90の左右方向Y1における中央に凸部94を1つだけ設けても構わない。
【0074】
また、前述した実施形態では、上流側スライド部材89Uと下流側スライド部材89Dとは、同一構造であったが、寸法において多少の違いがあってもよい。また、上流側スライド部材89Uと下流側スライド部材89Dとで構造が異なる場合には、上流側スライド部材89Uおよび下流側スライド部材89Dのうち、一方に凸部94だけを設けて、他方に凹部97だけを設けるようにすると、上流側スライド部材89Uおよび下流側スライド部材89Dの組み付け間違いを防止できる。