グラフト共重合体(A)と共重合体(B)を含む熱可塑性樹脂組成物であって、グラフト共重合体(A)はアクリル系ゴム状重合体の存在下で、シアン化ビニル系単量体、芳香族ビニル系単量体をグラフト重合して得られるグラフト共重合体(A)であり、共重合体(B)は芳香族ビニル系単量体及びシアン化ビニル系単量体を重合することで得られる共重合体(B)であり、熱可塑性樹脂組成物中に存在するアクリル系ゴム状重合体に関して、円相当粒子径が250nm以上である粒子がアクリル系ゴム状重合体に対して10重量%以下であり、熱可塑性樹脂組成物の200℃、せん断速度100(1/sec)で測定したダイスウェル比が1.10以上であることを特徴とする押出成形用熱可塑性樹脂組成物。
グラフト共重合体(A)20〜90重量部と共重合体(B)10〜80重量部を含む熱可塑性樹脂組成物(グラフト共重合体(A)と共重合体(B)の合計は100重量部)であって、グラフト共重合体(A)はアクリル系ゴム状重合体10〜80重量部の存在下で、シアン化ビニル系単量体、芳香族ビニル系単量体及びこれらと共重合可能な他のビニル系単量体から選ばれた少なくとも一種の単量体20〜90重量部をグラフト重合して得られるグラフト共重合体(A)であり、共重合体(B)は芳香族ビニル系単量体及びシアン化ビニル系単量体、必要に応じてその他の共重合可能な他のビニル系単量体を重合することで得られる共重合体(B)であり、熱可塑性樹脂組成物中に存在するアクリル系ゴム状重合体に関して、円相当粒子径が250nm以上である粒子がアクリル系ゴム状重合体に対して10重量%以下であり、熱可塑性樹脂組成物の200℃、せん断速度100(1/sec)で測定したダイスウェル比が1.10以上であることを特徴とする押出成形用熱可塑性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明はグラフト共重合体(A)20〜90重量部と共重合体(B)10〜80重量部を含む押出成形用熱可塑性樹脂組成物(グラフト共重合体(A)と共重合体(B)の合計は100重量部)である。
【0010】
本発明で用いられるグラフト共重合体(A)は、アクリル系ゴム状重合体の存在下に、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体及びこれらと共重合可能な他のビニル系単量体から選ばれた少なくとも一種の単量体をグラフト重合して得られた、グラフト共重合体である。
【0011】
本発明で用いられるアクリル系ゴム状重合体は、架橋剤の存在下にアルキル基の炭素数が1〜16の(メタ)アクリル酸エステル系単量体を含む単量体(混合物)を重合して得られる。炭素数が1〜16の(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が例示される。
【0012】
アクリル系ゴム状重合体に用いられる架橋剤としては、例えばジビニルベンゼン、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジシクロペンタジエンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0013】
アクリル系ゴム状重合体は、本発明の目的を阻害しない範囲で、炭素数が1〜16の(メタ)アクリル酸エステル系単量体と共に他の共重合可能な単量体、例えば共役ジエン系単量体、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体が例示される。
【0014】
共役ジエン系単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、クロロプレン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等を挙げることができる。
【0015】
芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ブロムスチレン等が挙げられ、一種又は二種以上用いることができる。特にスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
【0016】
シアン化ビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、フマロニトリル等が挙げられ、一種又は二種以上用いることができる。特にアクリロニトリルが好ましい。
【0017】
アクリル系ゴム状重合体の構造に特に制限はなく、例えばコア層とシェル層を有する、いわゆる複合ゴムの形態であっても良いし、3層以上の層を有する多層構造であっても良い。複合ゴムとしては、芳香族ビニル系単量体を含む単量体(混合物)を重合したコア層に(メタ)アクリル酸エステル系単量体を重合してシェル層とした複合ゴムや、共役ジエン系ゴム状重合体を含む単量体(混合物)を重合したコア層に(メタ)アクリル酸エステル系単量体を重合してシェル層とした複合ゴムが挙げられる。
【0018】
グラフト共集合体(A)の重合に用いられるアクリル系ゴム状重合体の重量平均粒子径に特に制限はないが、押出成形用熱可塑性樹脂組成物中のアクリル系ゴム状重合体に関して、円相当粒子径が250nm以上である粒子がアクリル系ゴム状重合体に対して10重量%以下となるように粒子径をコントロールする必要がある。アクリル系ゴム状重合体の粒子径をコントロールする手法としては、いかなる方法であっても構わないが、例えば乳化剤の種類及び使用量、重合開始剤の種類及び使用量、単量体の添加速度等を変更する方法が挙げられる。
【0019】
アクリル系ゴム状重合体を重合する際に用いられる重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性重合開始剤、クメンハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、t−ブチルハイドロパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等の油溶性重合開始剤が挙げられる。また、必要に応じて還元剤が用いられるが、還元剤の具体例としては、硫酸第一鉄7水塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、ピロ亜硫酸塩、亜ニチオン酸塩、ニチオン酸塩、チオ硫酸塩、ホルムアルデヒドスルホン酸塩、ベンズアルデヒドスルホン酸塩、また、L−アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸などのカルボン酸類、更にはラクトース、デキストロース、サッカロースなどの還元糖類、更にはジメチルアニリン、トリエタノールアミンなどのアミン類が挙げられる。さらに、キレート剤としては、ピロリン酸四ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0020】
重合の際に用いられる乳化剤としては、カルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩等が挙げられる。好ましく用いられる乳化剤の具体例としては、オレイン酸カリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム、ロジン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0021】
アクリル系ゴム状重合体のトルエン溶媒でのゲル含有量に特に制限はないが、物性バランスの観点から、アクリル系ゴム状重合体のゲル含有量が75%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。
【0022】
本発明のグラフト共重合体(A)は、上述のアクリル系ゴム状重合体の存在下に、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体及びこれらと共重合可能な他のビニル系単量体から選ばれた少なくとも1種の単量体をグラフト重合して得られるグラフト共重合体である。
【0023】
グラフト共重合体(A)を構成する芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ブロムスチレン等が挙げられ、一種又は二種以上用いることができる。特にスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
【0024】
グラフト共重合体(A)を構成するシアン化ビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、フマロニトリル等が挙げられ、一種又は二種以上用いることができる。特にアクリロニトリルが好ましい。
【0025】
グラフト共重合体(A)を構成する共重合可能な他のビニル系単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、マレイミド系単量体、アミド系単量体等が挙げられ、一種又は二種以上用いることができる。(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸4−t−ブチルフェニル、(メタ)アクリル酸(ジ)ブロモフェニル、(メタ)アクリル酸クロルフェニル等を例示でき、マレイミド系単量体としてはN−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等を例示でき、アミド系単量体としてはアクリルアミド、メタクリルアミド等を例示できる。
【0026】
本発明で用いられるグラフト共重合体(A)はグラフト共重合体100重量部中にアクリル系ゴム状重合体が10〜90重量部含まれている必要がある。アクリル系ゴム状重合体が10重量部より少ない又は90重量部を超えると成形加工性に劣る。アクリル系ゴム状重合体の含有量は30〜80重量部であることが好ましく、40〜70重量部であることがより好ましい。
【0027】
アクリル系ゴム状重合体とグラフト重合する、上述の単量体の組成比率に特に制限はないが、芳香族ビニル系単量体60〜90重量%、シアン化ビニル系単量体10〜40重量%及び共重合可能な他のビニル系単量体0〜30重量%の組成比率、芳香族ビニル系単量体30〜80重量%、(メタ)アクリル酸エステル系単量体20〜70重量%及び共重合可能な他のビニル系単量体0〜50重量%の組成比率、芳香族ビニル系単量体20〜70重量%、(メタ)アクリル酸エステル系単量体20〜70重量%、シアン化ビニル系単量体10〜60重量%及び共重合可能な他のビニル系単量体0〜30重量%の組成比率等であることが好ましい。
【0028】
グラフト共重合体(A)を重合するための手法に特に制限はなく、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法等の公知の重合法を用いることが出来る。乳化重合法を用いた場合、上述のアクリル系ゴム状重合体に上述の単量体をグラフト重合することによって、グラフト共重合体(A)のラテックスを得ることが出来る。グラフト共重合体(A)のラテックスは、公知の方法により凝固され、洗浄、脱水、乾燥工程を経ることでグラフト共重合体(A)のパウダーを得ることができる。
【0029】
グラフト共重合体(A)のグラフト率(グラフト共重合体のアセトン可溶分量と不溶分量及びグラフト共重合体中のアクリル系ゴム状重合体の重量から求める。)、及びアセトン可溶分の還元粘度(0.4g/100cc、N,Nジメチルホルムアミド溶液として30℃で測定)に特に制限はなく、要求性能によって任意の構造のものを使用することができるが、物性バランスの観点から、グラフト率は5〜150%であることが好ましく、還元粘度は0.2〜2.0dl/gであることが好ましい。
【0030】
本発明で用いられる共重合体(B)は芳香族ビニル系単量体及びシアン化ビニル系単量体、必要に応じてその他の共重合可能な他のビニル系単量体を重合することで得られる共重合体である。
【0031】
共重合体(B)を構成する芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体及び共重合可能な他の単量体としては、グラフト共重合体(A)で用いられる単量体と同様のものを用いることができる。
【0032】
本発明で用いられる共重合体(B)は従来公知の重合技術、例えば乳化重合法、塊状重合法、懸濁重合法、溶液重合法等の重合法により重合することができる。それぞれの重合方法で得られた重合体を組み合わせても良く、重合方法や組成比率の異なる一種又は二種以上の共重合体を組み合わせても良い。
【0033】
共重合体(B)を構成する各単量体の比率に特に制限はないが、共重合体(B)を構成する単量体の合計量を100重量部とした場合に、物性バランスの観点から芳香族ビニル系単量体は50〜85重量部、シアン化ビニル系単量体は15〜50重量部、共重合可能な他の単量体は0〜35重量部であることが好ましい。
【0034】
本発明で用いられる共重合体(B)は押出成形用熱可塑性樹脂組成物を押出成形する際の成形加工性に関連しており、押出成形用熱可塑性樹脂組成物中のアクリル系ゴム状重合体の含有量やダイスウェルを調節する役割を有する。
【0035】
本発明の押出成形用熱可塑性樹脂組成物に関して、200℃、せん断速度100(1/sec)で測定したダイスウェル比は1.10以上であることが必要である。ダイスウェル比が1.10未満の場合は押出成形時の成形加工性に劣る。ダイスウェル比は1.15以上であることが好ましく、1.20以上であることがより好ましい。
【0036】
押出成形用熱可塑性樹脂組成物のダイスウェル比を調節する方法としては、グラフト共重合体(A)と共重合体(B)の使用比率を調整する方法や、共重合体(B)として重量平均分子量の異なる共重合体を二種以上用いる方法等が挙げられる。
【0037】
本発明の押出成形用熱可塑性樹脂組成物は該樹脂組成物中のアクリル系ゴム状重合体に関して、円相当粒子径が250nm以上である粒子がアクリル系ゴム状重合体に対して10重量%以下であることが必要である。粒子が10重量%よりも多いと、得られる樹脂組成物の低白化性に劣る。粒子が8重量%以下であることが好ましく、5重量%以下であることがより好ましい。また、アクリル系ゴム状重合体の重量平均粒子径が異なる2種以上のグラフト共重合体(A)を用いた場合であっても、円相当粒子径が250nm以上である粒子がアクリル系ゴム状重合体に対して10重量%以下であれば、低白化性に優れる樹脂組成物が得られる。
【0038】
本発明の押出成形用熱可塑性樹脂組成物はグラフト共重合体(A)と共重合体(B)の合計を100重量部とした時に、グラフト共重合体(A)が20〜90重量部、共重合体(B)が10〜80重量部の使用比率であることが必要である。グラフト共重合体(A)が20重量部未満又は90重量部を超えると成形加工性が劣る。グラフト共重合体(A)が30〜80重量部、共重合体(B)が20〜70重量部であることが好ましく、グラフト共重合体(A)が40〜70重量部、共重合体(B)が30〜60重量部であることがより好ましい。
【0039】
本発明の押出成形用熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じてヒンダードアミン系の光安定剤、ヒンダードフェノール系、含硫黄有機化合物系、含リン有機化合物系等の酸化防止剤、フェノール系、アクリレート系等の熱安定剤、ベンゾエート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系の紫外線吸収剤、有機ニッケル系、高級脂肪酸アミド類等の滑剤、リン酸エステル類等の可塑剤、ポリブロモフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノール−A、臭素化エポキシオリゴマー、臭素化等の含ハロゲン系化合物、リン系化合物、三酸化アンチモン等の難燃剤・難燃助剤、臭気マスキング剤、カーボンブラック、酸化チタン、顔料、及び染料等を添加することもできる。更に、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、炭素繊維、金属繊維等の補強剤や充填剤を添加することもできる。
【0040】
押出成形用熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて他の熱可塑性樹脂と混合して使用することもできる。このような他の熱可塑性樹脂として、例えば、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ乳酸樹脂等を使用することができる。
【0041】
本発明の押出成形用熱可塑性樹脂組成物は、上述の成分を混合することで得ることができる。混合するために、例えば、押出し機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー等の公知の混練装置を用いることができる。さらに、公知の押出成形法により種々の押出成形体を製造することができる。
【実施例】
【0042】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。なお、実施例中にて示す「部」及び「%」は重量に基づくものである。
【0043】
アクリル酸ブチルゴムラテックス(a−1)の製造
窒素置換したガラスリアクターに、脱イオン水180重量部、アクリル酸ブチル15重量部、メタクリル酸アリル0.1重量部、アルケニルコハク酸ジカリウム0.36重量部(固形分換算)、過硫酸カリウム0.15重量部を仕込み、65℃で1時間反応させた。その後、アクリル酸ブチル85重量部、メタクリル酸アリル0.53重量部の混合液及び脱イオン水20重量部にアルケニルコハク酸ジカリウム0.64重量部(固形分換算)を溶解した乳化剤水溶液を3時間かけて連続的に添加した。滴下後、3時間保持して、アクリル酸ブチルゴムラテックス(a−1)を得た。ここで、アルケニルコハク酸ジカリウムとしては、花王株式会社製のラテムルASKを用いた。
【0044】
得られたアクリル酸ブチルゴムラテックス(a−1)の円相当粒子径の比率を下記に記載する方法で算出した。得られたアクリル酸ブチルゴムラテックス(a−1)を15部(固形分換算)、スチレンを64部、アクリロニトリルを21部用いてグラフト重合を行い、グラフト共重合体を得た。グラフト共重合体のパウダーを溶融混練してペレットを得た。得られたペレットを、クライオミクロトームを用いて−85℃の雰囲気下で超薄切片を切り出し、四酸化ルテニウム(RuO
4)で染色し、透過型電子顕微鏡(JEM−1400:日本電子製)で写真撮影した。画像解析装置(旭化成 IP−1000PC)を用いて、1000個のゴム粒子の面積を計測し、その円相当径及びゴム粒子の重量を求めることで、250nm以上のゴム粒子の重量比率を算出した結果、250nm以上のアクリル系ゴム粒子は2重量%であった。また、重量平均粒子径は120nmであった。
【0045】
アクリル酸ブチルゴムラテックス(a−2)の製造
窒素置換したガラスリアクターに、脱イオン水180重量部、アクリル酸ブチル15重量部、メタクリル酸アリル0.1重量部、アルケニルコハク酸ジカリウム0.12重量部(固形分換算)、過硫酸カリウム0.15重量部を仕込み、65℃で1時間反応させた。その後、アクリル酸ブチル85重量部、メタクリル酸アリル0.53重量部の混合液及び脱イオン水20重量部にアルケニルコハク酸ジカリウム0.88重量部(固形分換算)を溶解した乳化剤水溶液を3時間かけて連続的に添加した。滴下後、3時間保持して、アクリル酸ブチルゴムラテックス(a−2)を得た。
【0046】
得られたアクリル酸ブチルゴムラテックス(a−2)の250nm以上のゴム粒子の重量比率及び重量平均粒子径を上述の方法で算出した結果、250nm以上のゴム粒子は70重量%であり、重量平均粒子径は280nmであった。
【0047】
アクリル系複合ゴムラテックス(a−3)の製造
窒素置換したガラスリアクターに、脱イオン水270重量部、スチレン2重量部、アクリル酸ブチル1重量部、アルケニルコハク酸ジカリウム1重量部(固形分換算)及び過硫酸カリウム0.2重量部を仕込み、65℃で1時間重合した。その後、スチレン78重量部、アクリル酸ブチル19重量部、メタクリル酸アリル0.5重量部からなる混合モノマー溶液およびアルケニルコハク酸ジカリウム2重量部(固形分換算)を含む乳化剤水溶液30重量部を各々4時間に亘って連続添加し、その後2時間重合を継続し、重合を終了し、芳香族ビニル系重合体を得た。次に、窒素置換したガラスリアクターに、脱イオン水150重量部、得られた芳香族ビニル系重合体ラテックスを固形分換算で10重量部、アクリル酸ブチル5重量部、メタクリル酸アリル0.05重量部、アルケニルコハク酸ジカリウム0.05重量部(固形分換算)、過硫酸カリウム0.3重量部を仕込み、65℃で1時間反応させた。その後、アクリル酸ブチル85重量部、メタクリル酸アリル0.45重量部の混合液および脱イオン水20重量にアルケニルコハク酸ジカリウム0.45重量部(固形分換算)を溶解した乳化剤水溶液を4時間に亘り連続添加した。その後、重合を65℃で3時間継続し、重合を終了し、アクリル系複合ゴム重合体ラテックス(a−3)を得た。
【0048】
得られたアクリル系複合ゴム重合体ラテックス(a−3)の250nm以上のゴム粒子の重量比率及び重量平均粒子径を上述の方法で算出した結果、250nm以上のゴム粒子は6重量%であり、重量平均粒子径は180nmであった。
【0049】
グラフト共重合体(A−1)の製造
ガラスリアクターに、アクリル酸ブチルゴムラテックス(a−1)40重量部(固形分換算)を仕込み窒素置換を行った。窒素置換後、槽内を昇温し60℃に到達したところで、ブドウ糖0.2重量部、無水ピロリン酸ナトリウム0.1重量部及び硫酸第1鉄0.005重量部を脱イオン水10重量部に溶解した水溶液を添加した。65℃に到達後、アクリロニトリル12重量部、スチレン28重量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.1部、クメンハイドロパーオキサイド0.3重量部の混合液及び脱イオン水20重量部にオレイン酸カリウム1.0重量部を溶解した乳化剤水溶液を5時間かけて連続的に滴下した。滴下後、3時間保持してグラフト共重合体ラテックスを得た。その後、塩析・脱水・乾燥し、グラフト共重合体(A−1)のパウダーを得た。
【0050】
グラフト共重合体(A−2)〜(A−5)の製造
表1に従いアクリル酸ブチルゴムラテックス(a−1)を40重量部から60重量部へ、アクリル酸ブチルゴムラテックス(a−1)からアクリル酸ブチルゴムラテックス(a−2)又はアクリル系複合ゴムラテックス(a−3)へ変更した以外はグラフト共重合体(A−1)と同様に製造し、グラフト共重合体ラテックス(A−2)〜(A−5)を得た。その後、塩析・脱水・乾燥し、グラフト重合体(A−2)〜(A−5)のパウダーを得た。
【0051】
【表1】
【0052】
共重合体(B−1)の製造
公知の乳化重合法により、スチレン75重量%、アクリロニトリル25重量%であり、重量平均分子量が10万である共重合体(B−1)を得た。
【0053】
共重合体(B−2)の製造
公知の乳化重合法により、スチレン75重量%、アクリロニトリル25重量%であり、重量平均分子量が40万である共重合体(B−2)を得た。
【0054】
共重合体(B−3)の製造
公知の乳化重合法により、スチレン75重量%、アクリロニトリル25重量%であり、重量平均分子量が450万である共重合体(B−3)を得た。
【0055】
添加剤(C)
C−1(紫外線吸収剤):商品名「スミソーブ200」(住友化学(株)製)
C−2(光安定剤):商品名「アデカスタブ LA77Y」(ADEKA(株)製)
【0056】
<実施例1〜7及び比較例1〜7>
表2に示すグラフト共重合体(A)、共重合体(B)及び添加剤(C)を混合した後、40mm単軸押出機(田辺プラスチックス機械(株)製)を用いて220℃にて溶融混練してペレットを得た。得られたペレットより、種々の成形品を成形し、物性評価を行った。評価結果を表2に示す。なお、それぞれの評価方法を以下に示す。
【0057】
ダイスウェル比
各実施例及び比較例で得られたペレットのダイスウェル比を下記の方法で測定した。
MALNVERN社製 キャピラリーレオメータを用い、200℃、せん断速度100(1/sec)、オリフィス直径2.0mmで押し出されたストランド径をノギスで測定し、ストランド直径をオリフィス直径で除した数値をダイスウェル比とした。
【0058】
低白化性
各実施例及び比較例で得られたペレットを用い、40mmシート押出機(田辺プラスチックス機械(株)製)を使用して成形温度200℃の条件で厚さ1mmのシートを作成し、シートを90°折り曲げた際の白化の有無を目視により判定した。
◎:白化なし
○:わずかに白化
×:著しく白化
【0059】
耐候性
各実施例及び比較例で得られたペレットを用い、射出成形機(山城精機製作所製 SAV−30−30 シリンダー温度:220℃ 金型温度:60℃)にて成形された成形品(90mm×55mm×2.5mm)を用いて、スガ試験機(株)製サンシャインスーパーロングライフウェザーメーター(WEL−SUN−HCH−B)を使用し、63℃、雨ありの条件下で1500時間の加速曝露試験を行った。その後測色計を用い、曝露前と曝露後の色差(ΔE)を測定した。
◎:ごくわずかな色相変化 ΔE=3未満
○:軽微な色相変化 ΔE=3以上 5未満
×:許容できない色相変化 ΔE=5以上
【0060】
成形加工性
上記の厚さ1mmのシートの両端部がダイス形状どおりに形成されているのかを目視により判定した。
◎:ダイス形状のとおり正確に形成されている
○:僅かに丸みを帯びているがダイス形状どおりに形成されている
×:丸みを帯び、ダイス形状どおりに形成されていない
【0061】
【表2】
【0062】
表2に示すように、本願発明の押出成形用熱可塑性樹脂組成物を用いた場合は、耐候性だけでなく、低白化性及び成形加工性に優れる結果となった。粒子数の比率が十分に小さい場合は低白化性だけでなく耐候性に特に優れ、ダイスウェル比が1.10を十分に超える場合は成形加工性に特に優れる結果となった。
【0063】
表2の比較例1、2、4〜7に示すように、アクリル系ゴム状重合体の粒子数が10%を超えた場合は低白化性に劣る結果となった。また、ダイスウェル比が1.10未満の比較例2及び3では、成形加工性に劣る結果となった。