(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-3997(P2015-3997A)
(43)【公開日】2015年1月8日
(54)【発明の名称】LEDリフレクター構成材料、LEDリフレクター、及びLED照明器具
(51)【国際特許分類】
C08F 18/18 20060101AFI20141205BHJP
C08F 20/26 20060101ALI20141205BHJP
C08K 3/00 20060101ALI20141205BHJP
C08L 31/02 20060101ALI20141205BHJP
C08L 33/14 20060101ALI20141205BHJP
F21S 2/00 20060101ALI20141205BHJP
F21Y 101/02 20060101ALN20141205BHJP
【FI】
C08F18/18
C08F20/26
C08K3/00
C08L31/02
C08L33/14
F21S2/00 216
F21Y101:02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-130265(P2013-130265)
(22)【出願日】2013年6月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000236609
【氏名又は名称】フドー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079005
【弁理士】
【氏名又は名称】宇高 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100154405
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 大吾
(72)【発明者】
【氏名】山崎 一正
(72)【発明者】
【氏名】小山 剛司
【テーマコード(参考)】
3K243
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
3K243MA01
4J002BE023
4J002BF01W
4J002BG07X
4J002CF003
4J002CL063
4J002DE076
4J002DE146
4J002DE236
4J002DG046
4J002DJ006
4J002DJ016
4J002DL006
4J002FA043
4J002FD013
4J002FD016
4J002FD097
4J002GC00
4J002GP00
4J100AG70P
4J100AL66Q
4J100BA03Q
4J100BC45Q
4J100CA01
4J100CA03
4J100CA04
4J100JA32
4J100JA57
(57)【要約】
【課題】耐熱性に優れ、加工性に優れ、安価なLEDリフレクターを提供することである。
【解決手段】LEDリフレクター構成材料であって、前記材料は熱硬化性樹脂を含み、前記熱硬化性樹脂は、ビスフェノール骨格を有する不飽和化合物と、ジアリールイソフタル酸エステルモノマー及びオリゴマーの群の中から選ばれる一種または二種以上とを用いて構成されてなり、前記ジアリールイソフタル酸エステルモノマー及びオリゴマーの群の中から選ばれる一種または二種以上は、前記不飽和化合物100質量部に対して、10〜900質量部の割合であるLEDリフレクター構成材料。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
LEDリフレクター構成材料であって、
前記材料は熱硬化性樹脂を含み、
前記熱硬化性樹脂は、ビスフェノール骨格を有する不飽和化合物と、ジアリールイソフタル酸エステルモノマー及びオリゴマーの群の中から選ばれる一種または二種以上とを用いて構成されてなる
ことを特徴とするLEDリフレクター構成材料。
【請求項2】
前記ジアリールイソフタル酸エステルモノマー及びオリゴマーの群の中から選ばれる一種または二種以上は、前記不飽和化合物100質量部に対して、10〜900質量部の割合である
ことを特徴とする請求項1のLEDリフレクター構成材料。
【請求項3】
LEDリフレクター構成材料であって、
前記材料は熱硬化性樹脂を含み、
前記熱硬化性樹脂はジアリールイソフタル酸エステルモノマー及びオリゴマーの群の中から選ばれる一種または二種以上を用いて構成されてなる
ことを特徴とするLEDリフレクター構成材料。
【請求項4】
LEDリフレクター構成材料であって、
前記材料は熱硬化性樹脂を含み、
前記熱硬化性樹脂はビスフェノール骨格を有する不飽和化合物を用いて構成されてなる
ことを特徴とするLEDリフレクター構成材料。
【請求項5】
前記材料は、前記熱硬化性樹脂の他に、無機充填剤、白色顔料、離型剤、及び補強材の群の中から選ばれる一つ以上の物質が用いられて構成されてなる
ことを特徴とする請求項1〜請求項4いずれかのLEDリフレクター構成材料。
【請求項6】
請求項1〜請求項5いずれかのLEDリフレクター構成材料を用いて成形されてなる
ことを特徴とするLEDリフレクター。
【請求項7】
射出成形により成形されてなる
ことを特徴とする請求項6のLEDリフレクター。
【請求項8】
成形後、バリ取りがブラスト処理および/またはマシニングセンター処理により行われてなる
ことを特徴とする請求項6又は請求項7のLEDリフレクター。
【請求項9】
請求項6〜請求項8いずれかのLEDリフレクターが装着されてなる
ことを特徴とするLED照明器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はLED照明器具に関する。特に、耐熱性・耐光性に優れたLED照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
LED照明技術・製品の普及は、近年、目覚ましい。しかし、LEDの初期の輝度を如何に長く保つかが大きな問題になっている。LEDの輝度低下の一つとして、LEDリフレクターの熱変色による反射率の低下が挙げられる。従って、熱変色が少ない素材でLEDリフレクターを構成することがLEDの寿命延長の要素である。
【0003】
セラミックス製のLEDリフレクターが提案(特許文献1)されている。
【0004】
ナイロンやポリアミド樹脂製のリフレクターが提案(特許文献2,3,4)されている。
【0005】
不飽和ポリエステル樹脂製のリフレクターが提案(特許文献5,6)されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2006/013899号公報
【特許文献2】特開平6−200153号公報
【特許文献3】特開2002−374007号公報
【特許文献4】特開2010−100682号公報
【特許文献5】特許4844699号公報
【特許文献6】特許4893874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記セラミックス製のLEDリフレクター(特許文献1)には次の問題点が有る。セラミックスは加工性に限界が有る。この為、価格が高くなる。従って、汎用のLEDリフレクターとしては適してない。
【0008】
ナイロンやポリアミド樹脂製のLEDリフレクター(特許文献2,3,4)は、熱による変色が大きい。従って、LED照明器具の寿命が短い。
【0009】
不飽和ポリエステル樹脂製のLEDリフレクター(特許文献5,6)は、耐熱性に欠ける。従って、LED照明器具の寿命が短い。
【0010】
熱による変色が小さい特徴のLEDリフレクターは、熱硬化性エポキシ樹脂を用いて構成することが考えられた。エポキシ樹脂はリードフレームとの密着性が良好である。しかし、成形時に発生するバリのフレームに対する密着性が良く、このバリの除去が困難である。エポキシ樹脂は材料の保管を低温で行う必要がある。エポキシ樹脂は比較的高価である。エポキシ樹脂は射出成形が容易でない。この為、エポキシ樹脂成形材料はLEDリフレクター構成材料に適していないことが判った。
【0011】
従って、本発明が解決しようとする課題は、前記問題点を解決することである。すなわち、耐熱性に優れ(熱による変色が小さい)、加工性に優れ、安価なLEDリフレクターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決する為の研究が、鋭意、推し進められた。その結果、LEDリフレクター構成材料として、ビスフェノール骨格を有する不飽和化合物および/または下記に示される構造を有するジアリールイソフタル酸エステルモノマー及びオリゴマーの群の中から選ばれる一種または二種以上を用いて構成されてなる熱硬化性樹脂を用いることが、非常に、好適であることが判って来た。
【0013】
前記知見を基にして本発明が達成された。
【0014】
本発明は、ジアリールイソフタル酸エステルモノマー及びオリゴマーの群の中から選ばれる一種または二種以上を用いて構成されてなる熱硬化性樹脂を含むLEDリフレクター構成材料を提案する。
【0015】
本発明は、ビスフェノール骨格を有する不飽和化合物を用いて構成されてなる熱硬化性樹脂を含むLEDリフレクター構成材料を提案する。
【0016】
本発明は、ビスフェノール骨格を有する不飽和化合物と、ジアリールイソフタル酸エステルモノマー及びオリゴマーの群の中から選ばれる一種または二種以上とを用いて構成されてなる熱硬化性樹脂を含むLEDリフレクター構成材料を提案する。
【0017】
本発明は、
LEDリフレクター構成材料であって、
前記材料は熱硬化性樹脂を含み、
前記熱硬化性樹脂は、ビスフェノール骨格を有する不飽和化合物と、ジアリールイソフタル酸エステルモノマー及びオリゴマーの群の中から選ばれる一種または二種以上とを用いて構成されてなり、
前記ジアリールイソフタル酸エステルモノマー及びオリゴマーの群の中から選ばれる一種または二種以上は、前記不飽和化合物100質量部に対して、10〜900質量部の割合である
ことを特徴とするLEDリフレクター構成材料を提案する。
【0018】
本発明は、好ましくは、前記熱硬化性樹脂の他に、無機充填剤、白色顔料、離型剤、及び補強材の群の中から選ばれる一つ以上の物質が用いられて構成されてなるLEDリフレクター構成材料を提案する。
【0019】
本発明は、前記LEDリフレクター構成材料を用いて成形されてなることを特徴とするLEDリフレクターを提案する。
【0020】
本発明は、前記LEDリフレクター構成材料を用いて、好ましくは、射出成形により成形されてなることを特徴とするLEDリフレクターを提案する。
【0021】
本発明は、好ましくは、前記成形後、バリ取りがブラスト処理および/またはマシニングセンター処理により行われてなることを特徴とするLEDリフレクターを提案する。
【0022】
本発明は、前記LEDリフレクターが装着されてなることを特徴とするLED照明器具を提案する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の熱硬化性樹脂組成物が用いられたLEDリフレクターは、熱や光による劣化(変色)が小さく耐熱性・耐光性に優れている。この結果、LEDランプが長寿命である。更には、樹脂組成物の保存安定性、ハンドリング性が良好で、トランスファー成形性や射出成形性に優れ、安価に得られる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
第1の本発明はLEDリフレクター構成材料である。本発明の実施形態の材料は、ビスフェノール骨格を有する不飽和化合物を用いて構成された熱硬化性樹脂を含む。或いは、前記された構造のジアリールイソフタル酸エステルモノマー及びオリゴマーの群の中から選ばれる一種または二種以上を用いて構成されてなる熱硬化性樹脂を含む。ジアリールイソフタル酸エステルオリゴマーとは、前記構造のモノマーが自己重合による二量化、或いは三量化などの化合物を指す。ジアリールイソフタル酸エステルは、通常、モノマーや二量化、或いは三量化の混合物を含んでいる。好ましくは、ビスフェノール骨格を有する不飽和化合物と、ジアリールイソフタル酸エステルモノマー及びオリゴマーの群の中から選ばれる一種または二種以上とを用いて構成されてなる熱硬化性樹脂を含む。特に好ましくは、ビスフェノール骨格を有する不飽和化合物と、ジアリールイソフタル酸エステルモノマー及びオリゴマーの群の中から選ばれる一種または二種以上とを用いて構成された熱硬化性樹脂を含み、前記ジアリールイソフタル酸エステルモノマー及びオリゴマーの群の中から選ばれる一種または二種以上は、前記不飽和化合物100質量部に対して、10〜90質量部の割合である。更に好ましくは、前記ジアリールイソフタル酸エステルは、前記不飽和化合物100質量部に対して、30質量部以上の割合である。前記ジアリールイソフタル酸エステルは、前記不飽和化合物100質量部に対して、70質量部以下の割合である。前記重合組成物の他に、好ましくは、重合開始剤が用いられて重合された熱硬化性樹脂である。好ましくは、前記熱硬化性樹脂の他に、無機充填剤、白色顔料、離型剤、及び補強材の群の中から選ばれる一つ以上の物質が用いられて構成されてなる。好ましくは、前記熱硬化性樹脂の他に、無機充填剤、白色顔料、離型剤、及び補強材が用いられて構成されてなる。
【0026】
前記特許文献5,6には、ジアリールフタレートの記載が有る。しかし、ジアリールイソフタレートの記載・示唆は無い。更には、ジアリールフタレートとジアリールイソフタレートとの相違についても触れられていない。ビスフェノール骨格を有する不飽和化合物の記載・示唆は無い。ジアリールフタレートを用いたLEDリフレクターは、耐熱性や耐光性が不十分で有った。これに対して、本実施形態のLEDリフレクターは、耐熱性や耐光性に優れていた。すなわち、LEDリフレクター(LED照明器具)の耐久性に優れていた。
【0027】
第2の本発明はLEDリフレクターである。本発明の実施形態のLEDリフレクターは、前記LEDリフレクター構成材料を用いて成形されてなる。好ましくは、射出成形により成形されてなる。好ましくは、前記成形後、バリ取りがブラスト処理および/またはマシニングセンター処理により行われてなる。
【0028】
第3の本発明はLED照明器具である。本発明の実施形態のLED照明器具は、前記LEDリフレクターが装着されてなる。
【0030】
前記熱硬化性樹脂を製造する為に、好ましくは、重合開始剤が用いられる。前記重合開始剤としては、好ましくは、加熱分解型の有機過酸化物が挙げられる。例えば、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシオクトエート、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド等が挙げられる。これらの中でも、10時間半減期温度が100℃以上の有機過酸化物が好ましい。例えば、ジクミルパーオキサイドが挙げられる。前記重合開始剤は一種(単独)でも、二種以上が併用されても良い。
【0031】
前記白色顔料としては、例えば酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酸化ジルコニウム等が挙げられる。これらの物質の中から、一種または二種以上が適宜用いられる。前記白色顔料の中でも、酸化チタン、酸化アルミニウム、チタン酸バリウムは特に好ましい。酸化チタンとしては、例えばアナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、ブルサイト型酸化チタンが挙げられる。これらの中でも熱安定性に優れたルチル型酸化チタンは特に好ましい。白色顔料は、好ましくは、平均粒径が2μm以下のものであった。より好ましくは、平均粒径が0.1〜1μmのものであった。更に好ましくは、平均粒径が0.3〜0.7μmのものであった。平均粒径はレーザー回折散乱法等により測定できる。白色顔料は、前記樹脂100質量部に対して、好ましくは100質量部以上であった。より好ましくは、100〜300質量部であった。白色顔料の配合量を前記の如くにした場合、耐熱性に優れ、白色で高い反射率を有するLEDリフレクターが得られた。
【0032】
前記無機充填剤としては、例えばシリカ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムジルコンなどのジルコニウム系などが挙げられる。これらの物質の中から、一種または二種以上が適宜用いられる。無機充填剤の中でも、特に好ましくは、シリカである。例えば、溶融シリカ粉末、球状シリカ粉末、破砕シリカ粉末、結晶シリカ粉末が挙げられる。無機充填剤は、好ましくは、平均粒径が250μm以下のものであった。より好ましくは、平均粒径が10〜100μmのものであった。斯かる平均粒径の無機充填剤が用いられた場合、成形性、耐熱性、耐湿性に優れたLEDリフレクターが得られた。平均粒径はレーザー回折散乱法等により測定できる。無機充填剤は、前記樹脂100質量部に対して、好ましくは、50質量部以上であった。より好ましくは、50〜250質量部であった。無機充填剤の配合量を前記の如くにした場合、成形性、耐熱性、光反射率に優れたLEDリフレクターが得られた。無機充填剤と白色顔料との合計量は、前記樹脂組成物全体量に対して、好ましくは、30〜80質量%(より好ましくは40〜60質量%)であった。無機充填剤と白色顔料との合計量に占める前記白色顔料の割合は、好ましくは、50質量%以上(より好ましくは、60〜95質量%)であった。無機充填剤と白色顔料との合計量は、前記樹脂100質量部に対して、好ましくは、500質量部以下(より好ましくは、200〜400質量部)であった。無機充填剤と白色顔料とを前記割合とすることによって、組成物の流動性が良く、成形性が良好であった。白色顔料や無機充填剤は、微粒になると、例えば凝集が起き易い。従って、脂肪酸やカップリング剤等で表面処理が行われていることが好ましかった。
【0033】
前記補強材としては、例えばBMC,SMC等のFRPに用いられる不飽和ポリエステル樹脂組成物の補強材に使用されるものが用いられる。例えば、ガラス繊維、ビニロン繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ワラストナイト等が挙げられる。これらの中でも、ガラス繊維は好ましかった。ガラス繊維としては、例えば珪酸ガラス、ホウ珪酸ガラスを原料とするEガラス(電気用無アルカリガラス)、Cガラス(化学用含アルカリガラス)、Aガラス(耐酸用ガラス)、Sガラス(高強度ガラス)等のガラス繊維が挙げられる。これらを長繊維(ロービング)、短繊維(チョップドストランド)としたものが適宜用いられる。これらのガラス繊維に対して表面処理が施されていても良い。特に、繊維径10〜15μmのEガラス繊維をシランカップリング剤にて表面処理し、表面処理したモノフィラメントを200本、400 本、又は800本を酢酸ビニル等の収束剤にて収束させる方法などが採用される。補強材は、好ましくは、前記樹脂100質量部に対して、10〜200質量部(より好ましくは、10〜100質量部、更に好ましくは20〜80質量部)であった。補強材の配合量を前記の如くにした場合、強度に優れ、硬化収縮が抑えられた。補強材はLEDリフレクターとしての反射率低下となるが、強度保持の観点からは大事である。
【0034】
前記離型剤としては、熱硬化性樹脂に用いられる脂肪酸系、脂肪酸金属塩系、鉱物系などのワックス類を用いることが出来る。脂肪酸系や脂肪酸金属塩系の離型剤は、耐熱性に優れたLEDリフレクターが得られたことから、好ましかった。具体的には、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム等が挙げられる。離型剤は、単独で用いても良く、二種以上が併用されても良い。離型剤は、好ましくは、前記樹脂100質量部に対して、4〜15質量部の割合であった。離型剤の配合量を前記の如くにした場合、離型性と外観性とが共に良く、光反射率に優れたLEDリフレクターが得られた。
【0035】
前記配合成分以外にも、樹脂の硬化条件を調整する為の硬化触媒、重合禁止剤、着色剤、増粘剤、その他有機系添加剤や無機系添加剤などが必要に応じて適宜配合される。その他、酸化物や水和物、無機発泡粒子、シリカバルーン等も必要に応じて適宜用いられる。
【0036】
前記樹脂組成物は、各成分を配合し、ミキサー、ブレンダー等を用いて十分均一に混合した後、加圧ニーダー、熱ロール、エクストルーダー等にて混練し、粉砕・整粒して製造される。重合開始剤は火災・爆発に対してより安全性を高めたマスターバッチとして使用するのが好ましい。
【0037】
前記配合による樹脂組成物は乾式の樹脂組成物である。配合成分として液状物を用いることにより、乾式の条件以外の、粘性を有する湿式不飽和ポリエステル樹脂組成物や、エポキシ樹脂組成物等とは異なり、保存安定性及びハンドリング性に優れている。粘性を有する湿式不飽和ポリエステル樹脂組成物の場合には、通常のペレット状とすることが出来ず、ハンドリング性が悪く、射出成形機で成形する場合にはホッパーにプランジャー等の設備を設ける必要があり、製造コストが高く付く。乾式とは30℃以下の温度範囲において固体であり、粉砕加工や押出しペレット加工により粒状に加工できることを意味する。
【0038】
前記LEDリフレクターは、熱硬化性樹脂組成物の成形手段を用いることで得られる。前記樹脂組成物は、乾式で、かつ、溶融時の熱安定性が良好な為、射出成形法、射出圧縮成形法、トランスファー成形法などの溶融加熱成形法を用いることが出来る。これらの中でも、射出成形機を用いた射出成形法が特に好適である。すなわち、射出成形法により、成形時間を短縮でき、かつ、複雑な形状のLEDリフレクターを簡単に製造できる。そして、得られたLEDリフレクターは、熱による変色が小さい。このLEDリフレクターが組み込まれたLED電球などのLED照明器具は、その寿命が長い。かつ、安価である。更には、成形したLEDリフレクターのフレーム上にバリが発生するが、バリを、例えばブラスト処理および/またはマシニングセンター処理により、簡単に、除去できた。例えば、ショットブラスト、サンドブラスト、ガラスビーズブラスト等を挙げることが出来る。
【0039】
本発明のLED照明器具は、上記のようにして得られるLEDリフレクターを装着して構成される。
図1はLED照明器具(LED電球)の概略断面図である。LEDリフレクター3は、リードフレーム1上に実装されたLED素子2の発光を効率よく反射するための反射板である。その形状は、実装されるLED素子2の光量や色、指向性などを考慮して、適宜、設計される。LEDリフレクター3は、リードフレーム1との密着性を考慮して、リードフレーム1を抱え込む構造が好ましい。金属製のリードフレーム1を用いる場合には、LEDリフレクター3との密着性を向上させる為、トリアジン系化合物等による金属表面処理を施すことも考えられる。
【0040】
以下、本発明が具体的に説明される。但し、以下の説明は、本発明の一実施形態に過ぎず、これに限定されるものでは無い。すなわち、本発明の特長が大きく損なわれない変形・応用例も本発明に含まれる。
【0041】
[LEDリフレクター用樹脂組成物]
下記の表−1に示される割合で、A(ジアリールイソフタル酸エステル)と、B(ビスフェノール骨格を有する不飽和化合物)とが用いられた。尚、比較例として、C(ジアリールフタレート)、及びD(不飽和ポリエステル)が用いられた場合も挙げられる。
表−1
A B C D
実施例1 10質量部 90質量部 0 0
実施例2 50質量部 50質量部 0 0
実施例3 90質量部 10質量部 0 0
比較例1 0 0 100質量部 0
比較例2 0 0 0 100質量部
*A:ジアリールイソフタル酸エステル(ダイソー(株)製イソダップ)
*B:ビスフェノール骨格を有する不飽和化合物(昭和電工(株)製ビニルエステルVR-90)
*C:ジアリールフタレート(ダイソー(株)製オルソ系ダッププレポリマーA)
*D:不飽和ポリエステル(日本ユピカ(株)製ユピカ8524)
【0042】
上記組成物100質量部に対して、1質量部の重合開始剤(ジクミルパーオキサイド(40%マスターバッチ) 日油(株)製のパークミルD40)が用いられ、熱硬化性樹脂が得られた。
【0043】
前記熱硬化性樹脂100質量部に対して、150質量部の白色顔料(ルチル型酸化チタン)、10質量部の無機充填剤(シリカ粉)、2質量部の離型剤(ステアリン酸カルシウム)、1質量部の酸化防止剤(アデカスタブHP-10)、1質量部の紫外線防止剤(アデカスタブLA-36)、10重量部のガラス繊維が配合された。
【0044】
上記組成物(LEDリフレクター構成材料)および射出成形機を用いて、金型温度160℃、硬化時間60秒の条件で、JISK6911に準拠し、試験片(吸水等円板状試験片、曲げ等方形状試験片)を成形した。
【0045】
上記組成物(LEDリフレクター構成材料)およびトランスファー成形機を用いて、JISK6911に準拠し、試験片(吸水等円板状試験片、曲げ等方形状試験片)を成形した。
【0046】
このようにして得られた試験片によるLEDリフレクターの特性が調べられたので、その結果が表−2に示される。
表−2
射出成形性 トランスファー成形性 耐熱性 耐光性
実施例1 〇 〇 〇 〇
実施例2 〇 〇 〇 〇
実施例3 〇 〇 〇 〇
比較例1 〇 〇 × ×
比較例2 〇 〇 × ×
*射出成形性:〇;成形性が良 ×;成形性が不良
*トランスファー成形性:〇;成形性が良 ×;成形性が不良
*耐熱性:150℃、1000時間処理後の試料表面の反射率を反射率測定器(日本電色工業株式会社製分光色彩計)で測定した。反射率が80%以上のものを○、80%未満のものを×で表示した。
*耐光性:LED450nmの光を照射し、1000時間後の反射率を測定波長450nmで行い、反射率が80%以上のものを○、80%未満のものを×で表示した。
【符号の説明】
【0047】
1 リードフレーム
2 LED素子
3 LEDリフレクター