【解決手段】ケーブル巻取装置30は、ロアブーム11に一端部20aが取付けられミドルブーム12に他端部20bが取付けられてロアブーム11とミドルブーム12との通電を確保する導電ケーブル20を巻取るものである。このケーブル巻取装置30は、ロアブーム11に固定されて導電ケーブル20の一端部20a側を巻回する固定側シーブ40と、固定側シーブ40に取付けられてブーム11,12のスライド方向に延びるガイド部材50と、ガイド部材50にスライド可能に取付けられて導電ケーブル20の他端部20b側を巻回するスライド側シーブ60と、スライド側シーブ60と固定側シーブ40との間に介装されてスライド側シーブ60を固定側シーブ40から離間する方向に付勢するスプリング70とを有する。
【背景技術】
【0002】
テレスコブーム装置は、クローラクレーンや高所作業車等、様々な建設機械に用いられている。例えば、下記特許文献1に記載されたテレスコブーム装置は、
図11に示すように、トラッククレーン101に用いられていて、アッパーブーム113がミドルブーム112に対してスライド可能で、ミドルブーム112がロアブーム111に対してスライド可能になっている。
【0003】
このテレスコブーム装置110では、ケーブルリール130がロアブーム111に取付けられ、このケーブルリール130から引き出された導電ケーブル120の先端がアッパーブーム113に取付けられている。そして、テレスコブーム装置110の伸縮に応じて、導電ケーブル120がケーブルリール130によって巻出され又は巻取られる。こうして、張り渡された導電ケーブル120によって、ロアブーム111とアッパーブーム113との通電を確保でき、両者の間で電気的な遣り取りができるようになっている。
【0004】
ところで、このケーブルリール130は、詳細には
図12に示すように構成されている。即ち、ケーブルリール130は、支軸140に回転自在に取付けられて導電ケーブル120を巻回するドラム150と、このドラム150を巻取り方向に付勢するスプリング170と、支軸140の外端部140aの周りに同軸的に配置された電気式ロータリジョイント装置180とを備えて構成されている。
【0005】
そして、電気式ロータリジョイント装置180は、支軸140の外端部140aに取付けられた複数のスリップリング181と、各スリップリング181の間に介装される絶縁体182と、各スリップリング181に対応して配置されて常時スリップリング181に接触するように付勢された複数のブラシ183とを有している。また、各ブラシ183には、導電ケーブル120の各芯線の一端が接続され、各スリップリング181には、支軸140内を貫通する導入ケーブル121の各芯線が接続されている。
【0006】
このように構成されているケーブルリール130では、テレスコブーム装置110が伸張すると、導電ケーブル120がスプリング170の付勢力に抗してドラム150から巻出され、テレスコブーム装置110が収縮すると、導電ケーブル120がスプリング170の付勢力によりドラム150に巻取られる。こうして、テレスコブーム装置110の伸縮で導電ケーブル120が巻出し又は巻取られることで、ドラム150が回転する。しかし、ドラム150が回転しても、ブラシ183とスリップリング181との接触が維持されていて、導電ケーブル120と導入ケーブル121との間の通電を維持できるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、本出願人は、センサやスイッチ等を多く配置して電気的な遣り取りを多くできるテレスコブーム装置を考案している。しかし、この場合、導電ケーブルの芯線の数(以下「芯数」と呼ぶ)が例えば12であるように多く必要になる。このため、仮に芯数が多い導電ケーブルに対応できるケーブルリールを製作しようとすると、芯線がそれぞれ接続されるブラシ及びスリップリングが多くなり、ケーブルリール(電気式ロータリジョイント装置)の幅H(
図12参照)が大きくなる。その結果、仮に製作したケーブルリールをテレスコブーム装置に用いようとしても、建設機械は狭い空間でも使用される可能性があるため、幅が狭い場所で使用できないおそれがある。また、芯数が多いとブラシの接触不良が生じる可能性が高くなり、通電できなくなるおそれがある。こうして、ケーブルリールに代わる新しいケーブル巻取装置が求められていた。
【0009】
そこで、本発明は上記した課題を解決するためになされたものであり、芯数が多い導電ケーブルに対応できると共に通電できなくなる事態を確実に防止できて、幅が狭い建設機械用ケーブル巻取装置を提供すること、及びこのケーブル巻取装置を備えた建設機械用テレスコブーム装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る建設機械用ケーブル巻取装置は、スライド可能に重なる複数の筒状のブームを備えた建設機械用テレスコブーム装置に適用され、相対的にスライドする二つの前記ブームのうち固定側ブームに一端部が取付けられスライド側ブームに他端部が取付けられて前記固定側ブームと前記スライド側ブームとの通電を確保する導電ケーブルを巻取るものであって、前記固定側ブームに固定されて前記導電ケーブルの一端部側を巻回する固定側シーブと、前記固定側ブームに取付けられてブームのスライド方向に延びているガイド部材と、前記ガイド部材にスライド可能に取付けられて前記導電ケーブルの他端部側を巻回するスライド側シーブと、前記スライド側シーブと前記固定側シーブとの間に介装されて前記スライド側シーブを前記固定側シーブから離間する方向に付勢するスプリングと、を有することを特徴とする。
また、本発明に係る建設機械用テレスコブーム装置は、スライド可能に重なる複数の筒状のブームと、相対的にスライドする二つの前記ブームのうちスライド側ブームに一端部が取付けられ固定側ブームに他端部が取付けられて前記スライド側ブームと前記固定側ブームとの通電を確保する導電ケーブルと、上記した本発明に係る建設機械用ケーブル巻取装置と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、テレスコブーム装置の伸縮に応じて、スライド側シーブがガイド部材に沿ってスライドし、導電ケーブルがスライド側シーブ及び固定側シーブから巻出され、又はスライド側シーブ及び固定側シーブに巻取られる。そして、スプリングの付勢力によって常に導電ケーブルが張り渡されている状態を維持できる。こうして、ケーブルリールを用いることなく、導電ケーブルの巻取り及び巻出しを行うことができると共に、スライド側ブームと固定側ブームとの通電を確保できる。
そして、ブラシとスリップリングを用いる構造ではないため、芯数が多い導電ケーブルを用いても、ケーブル巻取装置の幅が大きくならない。更に、ブラシの接触不良によって通電できなくなる事態を確実に防止できる。
【0012】
また、本発明に係る建設機械用ケーブル巻取装置、又は建設機械用テレスコブーム装置において、前記固定側シーブは、その径が前記スライド側シーブの径より小さいものであると良い。
この場合には、テレスコブーム装置が伸張しても導電ケーブルが固定側シーブに確実に接触しないようにできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、芯数が多い導電ケーブルに対応できると共に通電できなくなる事態を確実に防止できて、幅が狭い建設機械用ケーブル巻取装置を提供できる。更に、このケーブル巻取装置を備えた建設機械用テレスコブーム装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る建設機械用ケーブル装置、及び建設機械用テレスコブーム装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態のテレスコブーム装置10を備えたクローラクレーン1を示した側面図である。
図1に示すように、クローラクレーン1では、上部旋回体2がクローラによる下部走行体3に対して旋回可能に設けられていて、上部旋回体2には、運転室やウインチ、動力装置等が設けられている。
【0016】
そして、上部旋回体2は、前方側にテレスコブーム装置10を組付けていて、テレスコブーム装置10を水平方向に延びて倒れている状態から上下方向に延びて起立している状態へ起伏させることができる。ここで、
図2は、本実施形態のテレスコブーム装置10が収縮している状態を示した図であり、
図3は、本実施形態のテレスコブーム装置10が伸張している状態を示した図である。
【0017】
テレスコブーム装置10は、
図2及び
図3に示すように伸縮できるものであり、断面が矩形である筒状の3本のブームが同軸的に重なっている。これら3本のブームのうち上部旋回体2に近い順番で、最も太いブームをロアブーム11と呼び、中間の太さであるブームをミドルブーム12と呼び、最も細いブームをアッパーブーム13と呼ぶことにする。ミドルブーム12はロアブーム11の中に挿入されていてロアブーム11に対してスライド可能であり、アッパーブーム13はミドルブーム12の中に挿入されていてミドルブーム12に対してスライド可能である。
【0018】
こうして、テレスコブーム装置10は、2段階の伸縮ができる構造になっていて、内部に2段階の伸縮を行うための2本のブームシリンダ14,15を有している。一方のブームシリンダ14は、ミドルブーム12をロアブーム11に対してスライドさせる油圧シリンダであり、シリンダチューブ14aとシリンダロッド14bとを有する。シリンダチューブ14aのロッド側端部は、ピンP1を介してミドルブーム12に軸着されていて、シリンダロッド14bの先端部は、ピンP2を介してロアブーム11に軸着されている。こうして、ブームシリンダ14の伸縮により、ロアブーム11とミドルブーム12が伸縮するようになっている。
【0019】
また、他方のブームシリンダ15は、アッパーブーム13をミドルブーム12に対してスライドさせる油圧シリンダであり、シリンダチューブ15aとシリンダロッド15bとを有する。シリンダチューブ15aのロッド側端部は、ピンP3を介してアッパーブーム13に軸着されていて、シリンダロッド15bの先端部は、ピンP4を介してミドルブーム12に軸着されている。こうして、ブームシリンダ15が伸縮すると、ミドルブーム12とアッパーブーム13が伸縮するようになっている。
【0020】
ここで、テレスコブーム装置10には、ロアブーム11及びミドルブーム12の伸張状態を維持するために、それらブーム11,12同士をピン結合するロック機構16が設けられ、ミドルブーム12及びアッパーブーム13の伸張状態を維持するために、それらブーム12,13同士をピン結合するロック機構17が設けられている。これらロック機構16,17のピン結合では、ブーム同士(11,12)、(12,13)が伸び切ったときに、ストッパ構造(図示省略)でブーム同士を停止させる。そして、各ブームに形成されたピン孔が重ね合わされ、そのピン孔にロックピンが差し込まれる。
【0021】
しかし、ブームシリンダ14,15の伸張でブーム同士が伸び切ったときにストッパ構造で生じる衝撃力は大きい。そこで、このテレスコブーム装置10では、その衝撃力を緩和する構造が用いられている。即ち、ブーム同士が伸び切る直前の位置を検出する複数のリミットスイッチ18(
図3参照)と、これらリミットスイッチ18の検出信号に基づいてブームシリンダ14,15に供給する作動油を減圧させるための複数の電磁弁(図示省略)が設けられている。また、ロックピンの入抜状態を運転席で把握するため、ロックピンにセンサが付いている。
【0022】
こうして、本実施形態のテレスコブーム装置10では、リミットスイッチ18やロック機構16,17のセンサ等を多く配置して電気的な遣り取りを多く行うために、芯線の数が多い導電ケーブルが必要になる。しかし、この場合に以下の問題点があった。
【0023】
従来においては、
図12に示すようなケーブルリール130によって、導電ケーブル120の巻取り又は巻出しを行ってブーム同士の通電を確保していた。ここで、仮に芯数が多い導電ケーブル120に対応できるケーブルリール130を製作しようとすると、多くの芯線をブラシ183及びスリップリング181に接続する必要があり、ブラシ183及びスリップリング181が多くなる。これにより、ケーブルリール130(電気式ロータリジョイント装置180)の幅Hが大きくなる。その結果、仮に製作したケーブルリールをテレスコブーム装置10に用いようとしても、クローラクレーン1は狭い空間でも使用される可能性があるため、幅が狭い場所で使用できなくなるおそれがあった。また、芯数が多いとブラシの接触不良が生じる可能性が高くなり、通電できなくなったり漏電が生じるおそれがあった。更に、芯数が多い導電ケーブルに対応できるケーブルリールは特注品になり、コストが高くなるという問題点もあった。
【0024】
そこで、本実施形態では、ケーブルリールに代わる新しいケーブル巻取装置を用いて、上記した問題点を解決するようになっている。ここで、本実施形態で用いる導電ケーブル20について説明する。
図4は、導電ケーブル20を示した図である。導電ケーブル20は、芯数が12である12芯ケーブルであり、例えばビニルキャブタイヤコード(VCTF)である。この導電ケーブル20の両端部には、コネクタ21が取付けられている。なお、用いる導電ケーブルは、芯数が12である導電ケーブル20に限られず、芯数が12以外の多芯である導電ケーブルを用いても良い。
【0025】
次に、本実施形態のケーブル巻取装置の構成について説明する。
図5(A)は、テレスコブーム装置10が収縮しているときのケーブル巻取装置30を示した側面図であり、
図5(B)は、
図5(A)に示したケーブル巻取装置30の平面図である。なお、
図1〜
図3の側面図でケーブル巻取装置30が示されていないのは、
図1〜
図3の側面図で見ている方向と
図5(A)の側面図で見ている方向とが逆だからである。
【0026】
ケーブル巻取装置30は、ロアブーム11とミドルブーム12に適用されていて、ミドルブーム12(スライド側ブーム)とロアブーム11(固定側ブーム)との通電を確保する導電ケーブル20を巻取るものである。このケーブル巻取装置30は、主に、固定側シーブ40と、ガイド部材50と、スライド側シーブ60と、スプリング70とを有して構成されている、以下、各部材40〜70について説明する。
図6(A)は、
図5(A)に示した固定側シーブ40の拡大図であり、
図6(B)は、
図6(A)に示した固定側シーブ40を上から見た図であり、
図6(C)は、
図6(A)に示した固定側シーブ40を右から見た断面図である。
【0027】
固定側シーブ40は、ロアブーム11に固定されて、導電ケーブル20の一端部20a側(一端部20aに近い部分)を巻回するものである。ここで、
図5(A)に示すように、導電ケーブル20の一端部20aは、コネクタ21を介してロアブーム11に設けられた支持部に取付けられている。一方、導電ケーブル20の他端部20bは、コネクタ21を介してミドルブーム12に設けられた支持部に取付けられている。固定側シーブ40は、
図6(A)(B)(C)に示すように、主に3個のシーブ材41と、ベアリング42と、支軸43と、パイプ材44とを有して構成されている。
【0028】
各シーブ材41は、ベアリング42を介して支軸43に回転可能に組付けられていて、例えばナイロンで構成され、導電ケーブル20を円滑に巻出し及び巻取りできるようになっている。支軸43の一端はパイプ材44に固定されていて、支軸43の他端にナット45が螺着されている。パイプ材44は、断面が矩形の筒状であり、ガイド部材50の周りに組付けられて、ボルト46とナット47によってガイド部材50に対して動かないように固定されている。ここで、ガイド部材50は、
図5(A)(B)に示すように、ブーム11,12のスライド方向に延びていて、断面が矩形の筒状であり(
図6(B)参照)、連結部材RKを介してロアブーム11に取付けられている。
【0029】
また、
図6(C)に示すように、パイプ材44には、スライド方向(
図6(C)の上方向)に延びるプレート48が取付けられていて、このプレート48に、スライド方向に直交する方向に延びるプレート49が取付けられている。このプレート49により、導電ケーブル20がシーブ材41側にガイドされて、より円滑に導電ケーブル20の巻出し及び巻取りができるようになっている。
【0030】
スライド側シーブ60は、
図5(A)に示すように、ガイド部材50にスライド可能に取付けられて導電ケーブル20の他端部20b側(他端部20bに近い部分)を巻回するものである。
図7(A)は、
図5(A)に示したスライド側シーブ60の拡大図であり、
図7(B)は、
図7(A)に示したスライド側シーブ60を上から見た断面図であり、
図7(C)は、
図7(A)に示したスライド側シーブ60を右から見た図である。スライド側シーブ60は、
図7(A)(B)(C)に示すように、主に3つのシーブ材61と、ベアリング62と、支軸63と、環状部材64とを有して構成されている。
【0031】
各シーブ材61は、ベアリング62を介して支軸63に回転可能に組付けられていて、例えばナイロンで構成され、導電ケーブル20を円滑に巻出し及び巻取りできるようになっている。支軸63の一端は環状部材64に固定されていて、支軸63の他端にナット65が螺着されている。環状部材64は、断面が矩形になるように構成されたものであり、ガイド部材50の周りに組付けられて、ガイド部材50に沿ってスライド可能になっている。
【0032】
また、
図7(C)に示すように、環状部材64には、スライド方向(
図7(C)の下方向)に延びるプレート66が取付けられていて、このプレート66に、スライド方向に直交する方向に延びるプレート67が取付けられている。このプレート67により、導電ケーブル20がシーブ材61側にガイドされて、より円滑に導電ケーブル20の巻出し及び巻取りができるようになっている。ここで、
図8は、
図5(A)に示したスプリング70の拡大断面図である。
【0033】
スプリング70は、スライド側シーブ60と固定側シーブ40との間に介装されてスライド側シーブ60を固定側シーブ40から離間する方向に付勢するものである。即ち、
図5(A)に示した状態において、スプリング70は収縮した状態で組付けられていて、このスプリング70の付勢力によってスライド側シーブ60及び固定側シーブ40に巻回された導電ケーブル20が弛まないようになっている。このスプリング70は、ガイド部材50の周りを囲んでいて、一端部70aがスライド側シーブ60の環状部材64に係合し、他端部70bが固定側シーブ40のパイプ材44に係合している。
【0034】
こうして、ケーブル巻取装置30では、
図5(A)(B)に示すように、導電ケーブル20がスライド側シーブ60と固定側シーブ40との間で3往復するように架け渡され(6本掛けされ)、導電ケーブル20の一端部20aがロアブーム11に取付けられ、導電ケーブル20の他端部20bがミドルブーム12に取付けられている。そして、スライド側シーブ60は、スプリング70の付勢力に抗してその位置に止まっている。
【0035】
次に、ケーブル巻取装置30の動作について説明する。
図9(A)は、テレスコブーム装置10が伸張しているときのケーブル巻取装置30を示した側面図であり、
図9(B)は、
図9(A)に示したケーブル巻取装置30を示した上面図である。
図5(A)(B)に示した状態から
図9(A)(B)に示すように、テレスコブーム10が伸張すると、スライド側シーブ60がミドルブーム12の移動に伴って
図9の右側に向かってスライドする。このとき、スライド側シーブ60と固定側シーブ40との間に介装されたスプリング70が圧縮するが、スライド側シーブ60はスプリング70の付勢力に抗してスライドし、導電ケーブル20がスライド側シーブ60及び固定側シーブ40からが巻出される。
【0036】
一方、
図9(A)(B)に示した状態から
図5(A)(B)に示すように、テレスコブーム装置10が収縮すると、スライド側シーブ60はスプリング20の付勢力により
図5の左側に向かってスライドし、導電ケーブル20がスライド側シーブ60及び固定側シーブ40に巻取られることになる。こうして、常に張り渡された導電ケーブル20によって、ロアブーム11とミドルブーム12との通電を確保でき、両者の間で電気的な遣り取りができるようになっている。なお、本実施形態では、テレスコブーム10の伸張時に圧縮されたスプリング70の付勢力は約60kgfであるが、導電ケーブル20はケーブル巻取装置30で6本掛けされているため、導電ケーブル20には付勢力の6分の1である約10kgfが作用する。これに対して、導電ケーブル20は約30kgfの引張荷重まで耐えることができるため、問題無く導電ケーブル20を用いることができる。
【0037】
ところで、このケーブル巻取装置10において、固定側シーブ40(シーブ材41)は、その径がスライド側シーブ60(シーブ材61)の径より小さいものになっている。具体的に、シーブ材41の径D1は約230mmに設定され、シーブ材61の径D2は約250mmに設定されている。この理由について、
図10を参照しながら説明する。
図10は、
図9(A)に示した固定側シーブ40とスライド側シーブ60の拡大図である。
図10に示すように、固定側シーブ40の回転中心軸O1とスライド側シーブ60の回転中心軸O2とを結ぶ直線L1がブーム11,12のスライド方向と全く同一方向に延びる場合に、テレスコブーム装置10が伸張すると、
図10の一点鎖線Xで示すように、導電ケーブル20が固定側シーブ40(シーブ材41)に接近することになる。このため、シーブ材41の径D1をシーブ材61の径D2より小さくすることによって、テレスコブーム装置11が伸張しても導電ケーブル20がシーブ材41に確実に接触しないようにしている。なお、上記したシーブ材41の径D1及びシーブ材61の径D2は適宜変更可能である。
【0038】
本実施形態のテレスコブーム装置10及びケーブル巻取装置30の作用効果について説明する。
本実施形態によれば、テレスコブーム装置10の伸縮に応じて、スライド側シーブ60がガイド部材50に沿ってスライドし、導電ケーブル20がスライド側シーブ60及び固定側シーブ40から巻出され、又はスライド側シーブ60及び固定側シーブ40に巻取られる。そして、スプリング70の付勢力によって常に導電ケーブル20が張り渡されている状態を維持できる。こうして、ケーブルリール(
図12参照)を用いることなく、導電ケーブル20の巻取り及び巻出しを行うことができると共に、ミドルブーム12とロアブーム11との通電を確保できる。
【0039】
そして、ブラシとスリップリングを用いる構造ではないため、芯数が多い導電ケーブル20を用いても、導電ケーブル20が太くなるだけであり、ケーブル巻取装置30の幅が大きくならない。更に、ブラシの接触不良が無いため、通電できなくなる事態や漏電する事態を確実に防止できる。また、芯数が異なる別の導電ケーブルを用いようとする場合でも、このケーブル巻取装置30をそのまま用いることができ、柔軟性が高い装置である。更に、このケーブル巻取装置30は、主に固定側シーブ40とガイド部材50とスライド側シーブ60とスプリング70とで構成されているため、非常にシンプルで安価に構成できる。
【0040】
以上、本発明に係る建設機械用ケーブル巻取装置、及び建設機械用テレスコブーム装置の実施形態について説明したが、本発明はこの実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、本実施形態では、ケーブル巻取装置30をロアブーム11とミドルブーム12に適用したが、勿論ミドルブーム12とアッパーブーム13に適用することもできる。また、テレスコブーム装置10は、2段で伸縮できるものに限られず、複数のブームを備えた構造であれば適宜変更可能である。
【0041】
また、本実施形態では、ケーブル巻取装置30では、2個のシーブ(固定側シーブ40とスライド側シーブ60)で導電ケーブル20の巻取り及び巻出しを行ったが、スライド側シーブの数を増やして3個以上のシーブで巻取り及び巻出しを行っても良い。この場合には、ミドルブーム12のロアブーム11に対するストローク量が増えても、固定側シーブ40とスライド側シーブ60との間の距離を変えずに対応することができる。また、固定側シーブ40とスライド側シーブ60において、それぞれ3個のシーブ材41,61で導電ケーブル20を6本掛けにしたが、シーブ材の数は2個又は4個以上であっても良く適宜変更可能である。
【0042】
また、本実施形態では、固定側シーブ40のシーブ材41の径D1をスライド側シーブ60のシーブ材61の径D2より小さくすることで、テレスコブーム装置10が伸張したときに導電ケーブル20がシーブ材41に接触しないようにした。しかしながら、固定側シーブ40の回転中心軸O1とスライド側シーブ60の回転中心軸O2とを結ぶ直線L1(
図10参照)がブーム11,12のスライド方向に対して傾くように固定側シーブ40及びスライド側シーブ60を配置することで、導電ケーブル20がシーブ材41に接触しないようにしても良い。また、導電ケーブル20がシーブ材41に接触しないのであれば、シーブ材41の径D1とシーブ材61の径D2が同じであっても良い。
また、本実施形態のテレスコブーム装置10は、クローラクレーン1に適用されているが、適用される建設機械は適宜変更可能であり、トラッククレーンや高所作業車等であっても良い。