(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-40206(P2015-40206A)
(43)【公開日】2015年3月2日
(54)【発明の名称】刺激性(収斂性、酸味、苦み)のある薬物を含有する口腔内速崩壊錠およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4365 20060101AFI20150203BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20150203BHJP
A61K 9/26 20060101ALI20150203BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20150203BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20150203BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20150203BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20150203BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20150203BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20150203BHJP
【FI】
A61K31/4365
A61K9/20
A61K9/26
A61K47/38
A61K47/04
A61K47/32
A61K47/10
A61P9/10
A61P7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-173663(P2013-173663)
(22)【出願日】2013年8月23日
(71)【出願人】
【識別番号】000169880
【氏名又は名称】高田製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】増井 宏徳
(72)【発明者】
【氏名】島村 自然
(72)【発明者】
【氏名】石井 健祐
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076AA41
4C076AA42
4C076BB01
4C076CC14
4C076DD29
4C076DD37
4C076DD41
4C076DD47
4C076DD59
4C076DD67
4C076EE11
4C076EE13
4C076EE16
4C076EE23
4C076EE31
4C076EE32
4C076EE41
4C076FF24
4C076FF52
4C086AA10
4C086CB26
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA09
4C086ZA36
4C086ZA54
(57)【要約】
【課題】口腔内速崩壊錠が強く要望されている医薬品について、強い刺激性、不快な味により、従来の口腔内速崩壊錠に用いられている技術では服用時の不快感が避けることができていないものがある。さらに、口腔内速崩壊錠とした場合でも、良好な崩壊性および溶出性を必要とし、純度低下も回避しなければならない。
【解決手段】刺激性(収斂性、酸味、苦み)のある薬物、特に、クロピドグレルの口腔内速崩壊錠剤化に関する検討過程で、アミノアルキルメタクリレートコポリマーと制酸剤とを併用すると、その有する刺激性、酸味、苦みをマスキングすることが出来、良好な打錠性を示し、崩壊性も良好である口腔内速崩壊錠剤を製造できることを見出した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
刺激性(収斂性、酸味、苦み)のある薬物、制酸剤ならびにpH依存性ポリマー(胃用性)および/又はpH非依存性ポリマーを含有することを特徴とする口腔内速崩壊錠。
【請求項2】
刺激性(収斂性、酸味、苦み)のある薬物を含有する口腔内速崩壊錠において、当該薬物を含有する薬物粒子を、pH依存性ポリマー(胃用性)および/又はpH非依存性ポリマーを用いてコーティングしたもの、と、制酸剤とを含有する口腔内速崩壊錠。
【請求項3】
刺激性(収斂性、酸味、苦み)のある薬物を含有する口腔内速崩壊錠において、当該薬物を含有する薬物粒子を、pH依存性ポリマー(胃用性)およびpH非依存性ポリマーを用いてコーティングしたもの、と、制酸剤とを含有する口腔内速崩壊錠。
【請求項4】
請求項3において、pH依存性ポリマー(胃用性)およびpH非依存性ポリマーの比率が1:10〜10:1である口腔内速崩壊錠。
【請求項5】
請求項2、3または4において、薬物粒子を、先ず、直接、水不溶性セルロースエーテルポリマーで コーティングし、次いで各請求項に規定したコーティングを行ったものを使用することを特徴とする 口腔内速崩壊錠。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項において、刺激性(収斂性、酸味、苦み)のある薬物が、クロピドグレル硫酸塩である口腔内速崩壊錠。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項において、制酸剤が、酸化マグネシウムである口腔内速崩壊錠。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項において、制酸剤が、口腔内崩壊錠剤全重量に対して0.1〜30重量%含有される口腔内速崩壊錠。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項において、pH依存性ポリマー(胃用性)が、オイドラギットE(製品名)のようなアミノアルキルメタクリレートコポリマーEまたはAEA(製品名)のようなポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートである口腔内速崩壊錠。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項において、pH非依存性ポリマーが、オイドラギットRS(製品名)のようなアンモニオアルキルメタクリレートコポリマー(Type B)である口腔内速崩壊錠。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項において、更に、香料及びl−メントールを含有する口腔内速崩壊 錠。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項において、用いるポリマーの量が、口腔内崩壊錠剤全体に対して、0.01重量%〜50重量%である口腔内速崩壊錠。
【請求項13】
刺激性(収斂性、酸味、苦み)のある薬物を含有する口腔内速崩壊錠の製造において、当該薬物を含有する薬物粒子を製造し、次いで、pH依存性ポリマー(胃用性)および/又はpH非依存性ポリマーを用いてコーティングし、該コーティングされた物と制酸剤とを含有させることを特徴とする製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刺激性(収斂性、酸味、苦み)のある薬物、特に、クロピドグレルまたはその生理学的に許容される塩を含有する口腔内速崩壊錠に関する。
詳しくは、刺激性を抑制し、溶出性を示し、さらに崩壊性も良好である服用感の改善された、刺激性(収斂性、酸味、苦み)のある薬物、特に、クロピドグレル硫酸塩が含有された口腔内速崩壊錠およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クロピドグレル(Clopidogrel)は公知化合物であり、化学名が、(+)−(S)−メチル 2−(2−クロロフェニル)−2−(4、5、6、7−テトラヒドロチエノ[3、2−c]ピリジン−5−イル)アセテートとして知られている(例えば、特許文献1)。そして、その塩としては、硫酸塩、塩酸塩、硫酸水素塩、臭化水素塩等がある。
【0003】
クロピドグレルは血小板凝集抑制剤等として作用することにより、虚血性脳血管障害後の再発抑制、経皮的冠動脈形成術が適用される急性冠症候群等の患者の治療に有用である。
日本においては、これまで、フィルムコート錠の形態で市販されている。
【0004】
クロピドグレルを含有する経口製剤に関するものとして、下記のような技術が知られている。
【0005】
(イ)クロピドグレルに糖アルコールおよびpH調節剤を併用添加することにより硫酸クロピドグレルが有する不快な味を改善した経口投与製剤(例えば、特許文献2)。但し、後記の比較例2の結果より分かるとおり、効果は不十分であった。
(ロ)クロピドグレルおよびスルホアルキルエーテルシクロデキストリン(SAE-CD)を含む組成物であって、加水分解、熱的分解、および光分解に対するクロピドグレルの安定性が改善された経口投与製剤(例えば、特許文献3);
(ハ)不快味を呈する薬物としてクロピドグレルおよび合成ケイ酸アルミニウムにワックスを溶融したものをコーティングしたワックス状物質粒子(例えば、特許文献4)。
【0006】
しかしながら、上記技術では、クロピドグレルのような刺激性(収斂性、酸味、苦み)のある薬物を経口投与製剤とした場合には、その不快な味を十分にマスキングできておらず、経口投与、特に口腔内速崩壊錠に利用できる製剤技術ではない。
【0007】
一方、以下の通り、アミノアルキルメタクリレートコポリマーを味のマスキングに用いた技術が知られている。
(イ)テルビナフィンの味のマスキングにアミノアルキルメタクリレートコポリマーを用いた製剤(例えば、特許文献5および6);
(ロ)アンブロキソール等の苦味薬剤を、オイドラギッドRSによって味のマスキングした技術(例えば、特許文献7);
(ハ)苦味のある薬剤であるカルバペネム系抗生剤を含有する経口顆粒製剤であって、味のマスキングにオイドラギッドRSを用いた技術(例えば、特許文献8);
(ニ)オイドラギッドを用いて苦味エグ味が隠蔽された速放性粒状物(例えば、特許文献9)。
【0008】
これらは、いずれもアミノアルキルメタクリレートコポリマーを用いて苦味をマスキングした製剤であるが、強い刺激性(収斂性、酸味、苦み)のある薬物に用いられたものではなく、さらに、アミノアルキルメタクリレートコポリマーの種類によってマスキングの程度の差があるとの記載も示唆も一切されていない。
【0009】
なお、少なくともマクロライド系抗生物質で構成された粉粒状組成物が、pH非依存型水不溶性ポリマー及び胃溶性ポリマーで構成されたポリマー組成物により被覆されている経口製剤用組成物であって、前記pH非依存型水不溶性ポリマーと前記胃溶性ポリマーとの割合(重量比)が、pH非依存型水不溶性ポリマー/胃溶性ポリマー=1/1〜1/20である経口製剤用組成物が開示されているが、口腔内速崩壊錠としては記載も示唆もされていない。(例えば、特許文献10)。
【0010】
また、クロピドグレル製剤等に対して、制酸剤、特に酸化マグネシウムが用いられた製剤として、下記文献が知られている。
(イ)高いpH依存性溶解度を有する有効成分の放出制御のための医薬品多層錠剤に関する技術で、特許請求の範囲にpH維持賦形剤として酸化マグネシウムが記載されている(例えば、特許文献11)。
(ロ)抗血小板薬および酸阻害薬(プロトンポンプ阻害薬)を含む経口剤形である、いわゆる配合剤であって、アルカリ化剤の一例として酸化マグネシウムが記載されている(例えば、特許文献12)。
(ハ)硫酸クロピドグレルが有する不快な味を改善した経口投与製剤であって、糖アルコールおよびpH調節剤を併用添加しており、そのpH調節剤の一例として酸化マグネシウムが記載されている(例えば、特許文献13)。
これらは、いずれも酸化マグネシウムを用いているものの、アミノアルキルメタクリレートコポリマーと同時に用いられているものはない。
【0011】
したがって、本発明のごとく、刺激性を抑制する一方、高い溶出性を維持し、またさらに崩壊性も良好である服用感の改善された刺激性(収斂性、酸味、苦み)のある薬物、特に、クロピドグレル硫酸塩を含有する口腔内速崩壊錠については、従来一切知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第4847265号
【特許文献2】特開2009−185082号公報
【特許文献3】特表2010−525083号公報
【特許文献4】特開2012−158610号公報
【特許文献5】特開2012−136523号公報
【特許文献6】特開2003−119122号公報
【特許文献7】WO02/002083号公報
【特許文献8】特開2004−35518号公報
【特許文献9】特開2000−191519号公報
【特許文献10】特開2006−232789号公報
【特許文献11】特表2008−508227号公報
【特許文献12】特表2009−532500号公報
【特許文献13】特開2009−185082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
クロピドグレル硫酸塩等はその強力な薬理作用から医療上良く使用されている薬剤であるが、クロピドグレルそのものに刺激性、収斂性があり、医薬品として服用した場合、不快な味を呈するという欠点を有していることが知られていた。
そのため、既存の製品はフィルムコート錠とすることで服用時の不快な味を呈しない製剤としたものである。しかしながら、QOL(Quality of Life)の観点から錠剤よりも口腔内速崩壊錠が求められており、クロピドグレル等についても口腔内速崩壊錠が強く要望されているものの、クロピドグレルの強い刺激性、不快な味により、従来の口腔内速崩壊錠に用いられている技術では服用時の不快感は避けることができていない。
さらに、口腔内速崩壊錠とした場合、良好な崩壊性および溶出性を必要とし、純度低下も回避しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本件発明者は、永年にわたり、上記の従来の口腔内速崩壊錠に用いられている技術では避けることができない課題を解決すべく、永年にわたり、鋭意、研究を行った結果、下記のような知見を得て、それを解決した結果として、良好な打錠性を示し、服用時の不快感もなく、良好な崩壊性および溶出性を示し、純度低下も回避しうる、新しい、刺激性(収斂性、酸味、苦み)のある薬物、特に、クロピドグレル硫酸塩を含有する口腔内速崩壊錠およびその製造方法を見出し、本発明を完成した。
【0015】
(イ)クロピドグレル硫酸塩のような、刺激性(収斂性、酸味、苦み)のある薬物については、甘味剤や矯味剤のような添加剤に関しては、いかなるものを用いても、味のマスキングをすることはできないこと。
(ロ)pH依存性ポリマー(胃溶性)を用いてコーティングすることにより、味のマスキングはある程度は達成できること。
(ハ)刺激性(収斂性、酸味、苦み)のある薬物の中には、添加剤やポリマー自体と反応するものがあり、特に、酸性塩の薬物は、Na塩、K塩、Ca塩等の金属塩の添加剤や塩基性の添加剤と反応性を有すること。
(ニ)刺激性(収斂性、酸味、苦み)のある薬物の中にはpH依存性ポリマー(胃溶性)、例えば、オイドラギットEとも反応してしまうものがあり、直接コーティングすると純度が悪くなること。
(ホ)かかる場合に、中間層に反応性の低い、例えば、エチルセルロースなどの水不溶性セルロースエーテルポリマーでコーティングするとある程度解決すること。
(ヘ)この場合、さらに、pH依存性ポリマー(胃溶性)とpH非依存性ポリマーによる混合コーティングを行うことが好ましいこと。
(ト)さらに、酸化マグネシウムのような制酸剤と一緒に用いることにより、味のマスキングができること、を見出した。
【0016】
以上のように、本発明者は、刺激性(収斂性、酸味、苦み)のある薬物、特に、クロピドグレルの口腔内速崩壊錠剤化に関する検討過程で、錠剤のコーティング剤として繁用されているアミノアルキルメタクリレートコポリマーを制酸剤と併用すると、クロピドグレルの有する刺激性、酸味、苦みマスキングすることが出来、良好な打錠性を示し、崩壊性も良好である口腔内崩壊錠剤になることがわかった。
【0017】
具体的には、アミノアルキルメタクリレートコポリマーの種類のうち、オイドラギッドEおよび/またはオイドラギッドRSを用いた場合に刺激性を抑制する効果があること、特にオイドラギットRSが最も刺激性を抑制する効果があることを見出した。また、オイドラギットEとRS併用でコーティングを行い、制酸剤を後添加で加えることで、刺激性、酸味、苦み共にマスキングすることが出来、特に制酸剤のなかでも酸化マグネシウムが優れていることを見出したのである。
【0018】
すなわち、本発明は、
(イ)刺激性(収斂性、酸味、苦み)のある薬物、制酸剤ならびにpH依存性ポリマー(胃用性)および/又はpH非依存性ポリマーを含有することを特徴とする口腔内速崩壊錠、を提供するものであり、また、
(ロ)刺激性(収斂性、酸味、苦み)のある薬物を含有する口腔内速崩壊錠において、当該薬物を含有する薬物粒子を、pH依存性ポリマー(胃用性)および/又はpH非依存性ポリマーを用いてコーティングしたもの、と、制酸剤とを含有する口腔内速崩壊錠、を提供するものであり、更に、
(ハ)刺激性(収斂性、酸味、苦み)のある薬物を含有する口腔内速崩壊錠において、当該薬物を含有する薬物粒子を、pH依存性ポリマー(胃用性)およびpH非依存性ポリマーを用いてコーティングしたもの、と、制酸剤とを含有する口腔内速崩壊錠、を提供するものであり、
【0019】
好適には、
(ニ)上記(ハ)において、pH依存性ポリマー(胃用性)およびpH非依存性ポリマーの比率が1:10〜10:1である口腔内速崩壊錠;
(ホ)上記(ロ)、(ハ)または(ニ)において、薬物粒子に、まず、直接、水不溶性セルロースエーテルポリマーでコーティングし、次いで各項において規定したコーティングを行ったものを使用することを特徴とする口腔内速崩壊錠;
(ヘ)上記(イ)乃至(ホ)のいずれか一項において、刺激性(収斂性、酸味、苦み)のある薬物が、クロピドグレル硫酸塩である口腔内速崩壊錠;
(ト)上記(イ)乃至(ヘ)のいずれか一項において、制酸剤が、酸化マグネシウムである口腔内速崩壊錠;
(チ)上記(イ)乃至(ト)のいずれか一項において、制酸剤が、口腔内崩壊錠剤全重量に対して0.1〜30重量%含有される口腔内速崩壊錠;
(リ)上記(イ)乃至(チ)のいずれか一項において、pH依存性ポリマー(胃用性)が、オイドラギットE(製品名)のようなアミノアルキルメタクリレートコポリマーEまたはAEA(製品名)のようなポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートである口腔内速崩壊錠;
(ヌ)上記(イ)乃至(リ)のいずれか一項において、pH非依存性ポリマーが、オイドラギットRS(製品名)のようなアンモニオアルキルメタクリレートコポリマー(Type B)である口腔内速崩壊錠;
(ル)上記(イ)乃至(ヌ)のいずれか一項において、更に、香料及びl−メントールを含有する口腔内速崩壊錠、を提供するものであり、また、
(ヲ)刺激性(収斂性、酸味、苦み)のある薬物を含有する口腔内速崩壊錠の製造において、当該薬物を含有する薬物粒子を製造し、次いで、pH依存性ポリマー(胃用性)および/又はpH非依存性ポリマーを用いてコーティングし、該コーティングされた物と制酸剤を含有することを特徴とする製造方法、を提供するものである。
(ワ)上記(イ)乃至(ヲ)のいずれか一項において、用いるポリマーの量が、口腔内崩壊錠剤全体に対して、0.01重量%〜50重量%であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、服用時の刺激性、酸味、苦味を抑えると共に、製剤から有効成分の放出性も良好であり、良好な打錠性を示し、製剤の経時的安定性がよく、製剤中に分解物を生じることなく、配合変化にも優れた、刺激性(収斂性、酸味、苦み)のある薬物を含有する口腔内速崩壊錠を得ることができた。クロピドグレルにアミノアルキルメタクリレートコポリマーおよび/さらに酸化マグネシウムを用いたクロピドグレル含有口腔内速崩壊錠は医薬品として極めて有用である。
したがって、患者にとってQOLの点でも優れた医薬品を提供できるという利点を有する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の「刺激性(収斂性、酸味、苦み)のある薬物」に関して、かかる性質を有するものであれば特に限定はないが、粘膜刺激性のある薬物として、クロピドグレル硫酸塩、モルヒネ硫酸塩などのような硫酸塩;アレンドロン酸ナトリウム、リセドロン酸ナトリウムなどのようなビスホスホネート剤:ソリフェナシンコハク酸塩などを挙げることができ、好適には、硫酸塩を挙げることができ、更に好適には、クロピドグレル硫酸塩である。
【0022】
強い苦みのある薬物として、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシンなどのようなマクロライド系;硫酸(塩酸)キニーネ、ベルベリン塩化物水和物、メトクロプラミド塩酸塩、プロバンテリン臭化物、ジメトチアジンメシル酸塩、および銅クロロフィリンナトリウムなどを挙げることができる。
【0023】
本発明の「制酸剤」としては、アルカリ性を示すものであれば特に限定はなく、例えば、酸化マグネシウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、水酸化マグネシウム、水酸化アルミナマグネシウム、水酸化アルミニウムゲル、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウム共沈物、沈降炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム・炭酸カルシウム共沈物、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸ナトリウム、無水リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウムなどを挙げることができ、制酸剤は2種以上を用いてもよい。好適には、酸化マグネシウムである。
【0024】
本発明で用いる制酸剤の量は、口腔内速崩壊錠剤全体に対して、0.01重量%〜30重量%が好ましく、0.1重量%〜20重量%がより好ましく、更には、3重量%〜7重量%が好ましい。
【0025】
本発明の「薬物粒子」とは、本発明の「刺激性(収斂性、酸味、苦み)のある薬物」を含有する粒子であれば、特に限定はないが、好適には、後記の「溶融造粒物」のような、造粒物を挙げることができる。
【0026】
本発明の「pH依存性ポリマー(胃用性)」としては、水には溶けず、胃のpHで溶解するポリマーであれば、特に限定はなく、例えば、オイドラギットE100(球形顆粒)、EPO(粉末)(いずれも製品名)のようなアミノアルキルメタクリレートコポリマーE;AEA(製品名)のようなポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート;コリコートスマートシール30D(製品名)のようなメタクリル酸メチル・メタクリル酸ジエチルアミノエチル共重合体分散液を挙げることができ、いずれを用いることができるが、好適には、オイドラギットEおよびAEAであり、更に好適には、酸性媒体で膨張および溶解するメタクリル酸共重合体であるオイドラギットEである。
【0027】
本発明の「pH非依存性ポリマー」としては、pHに依存せずに徐放により溶解するポリマーであれば、特に限定はなく、例えば、オイドラギットRS100(球形顆粒)、RSPO(粉末)、RS30D(30%水分散液)(いずれも製品名)のようなアンモニオアルキルメタクリレートコポリマー(Type B);オイドラギットRL100(球形顆粒),RLPO(粉末),RL30D(30%水分散液)(いずれも製品名)のようなアンモニオアルキルメタクリレートコポリマー(Type A);エチルセルロース;エチルメチルセルロース;エチルプロピルセルロース;オイドラギットNE30D(30%水分散液)(製品名)のようなアクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液:コリコートSR30D(30%分散液)(製品名)のような酢酸ビニル樹脂分散液を挙げることができ、いずれを用いることができるが、好適には、オイドラギットRSである。
【0028】
本発明で用いるポリマーの量は、口腔内速崩壊錠剤全体に対して、0.01重量%〜50重量%が好ましく、0.1重量%〜30重量%がより好ましく、更には、1重量%〜10重量%が好ましい。
【0029】
本発明の「pH非依存性ポリマー」、好適にはオイドラギットRS、「pH依存性ポリマー(胃用性)」、好適にはオイドラギットEは、単独又は混合して用いることができる。
【0030】
本発明の「pH依存性ポリマー(胃用性)およびpH非依存性ポリマー」を混合して併用する際の配合比率は特に限定されないが、「pH非依存性ポリマー」:「pH依存性ポリマー(胃用性)」が、1:10〜10:1が好ましく、1:5〜5:1が特に好ましい。
【0031】
本発明の「口腔内速崩壊錠」とは、口腔内の唾液のみで95秒以内、好ましくは65秒以内、更に好ましくは30秒以内に崩壊し、水を摂取することなく口腔内で崩壊させて服用が可能な錠剤を意味する。また、この「口腔内速崩壊錠」は、錠剤のPTP取出し時において、割れ・欠けを生じない程度の錠剤硬度を有するものがよい。
【0032】
本発明の「香料」とは、匂いが付くものであれば特に限定はないが、着香剤といわれるものを含み、例えば、グレープ、オレンジエッセンス、オレンジ油、カラメル、カンフル、ケイヒ油、スペアミント油、ストロベリーエッセンス、チョコレートエッセンス、チェリーフレーバー、トウヒ油、パインオイル、ハッカ油、バニラフレーバー、ビターエッセンス、フルーツフレーバー、ペパーミントエッセンス、ミックスフレーバー、ミントフレーバー、レモンパウダー、アップル、マンゴー、レモン油、ローズ油等が挙げられ、特に、グレープ系の香料が好適である。
【0033】
本発明において、香料及びl−メントールを含有することにより、さらに製剤の味をよくする効果(服用性)が認められた。
【0034】
本発明の口腔内速崩壊錠は、オイドラギット、酸化マグネシウム等以外に、所望により、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、香料、着色剤、矯味剤、甘味剤、安定化剤、抗酸化剤、流動化剤および溶解補助剤からなる群より選択される1種もしくは2種以上の添加剤成分を含有してもよい。これらの添加剤は、崩壊時間又は硬度に悪影響を与えない程度の量を添加することができる。
【0035】
本発明に用いられる賦形剤としては、例えば、乳糖、無水乳糖をはじめ、D−マンニトール等の糖アルコール、結晶セルロース、リン酸水素カルシウム等が挙げられる。これら賦形剤は単独又は二種以上を混合して使用してもよい。これらの中で最も好ましいものとしては、乳糖、D−マンニトールを挙げることができる。
【0036】
本発明に用いられる崩壊剤としては、例えば、クロスポビドン、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、トウモロコシデンプン、アルファー化デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム等が挙げられる。
【0037】
また、圧縮成型時に添加する崩壊剤として最も好ましいのはクロスポビドンであり、口腔内速崩壊錠の総量に対して1〜20質量%、好ましくは3〜10質量%程度、最も好ましくは5%程度を使用するのが好ましい。
【0038】
本発明の口腔内速崩壊錠は、更に必要であれば錠剤の製造に一般に用いられる上記以外の種々の医薬用添加剤を含んでいてもよい。
上記以外の種々の医薬用添加剤としては、例えば甘味剤、矯味剤、滑沢剤、流動化剤、着色剤などが挙げられる。
【0039】
これらの成分は本発明の口腔内速崩壊錠における崩壊性、成形性を損なわない範囲であれば、通常、任意の量を単独あるいは混合して使用することができる。
【0040】
本発明の口腔内速崩壊錠において使用する甘味剤としては、非糖質の天然甘味料や合成甘味料が好ましい。例えば、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、サッカリン又はその塩、グリチルリチン酸又はその塩、ステビア又はその塩、スクラロース、ソーマチン等が挙げられる。
【0041】
矯味剤としては、例えば、アスコルビン酸およびその塩、グリシン、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩酸、希塩酸、クエン酸およびその塩、無水クエン酸、L−グルタミン酸およびその塩、コハク酸およびその塩、酢酸、酒石酸およびその塩、炭酸水素ナトリウム、フマル酸およびその塩、リンゴ酸およびその塩、氷酢酸、イノシン酸二ナトリウム、ハチミツ等が挙げられる。
【0042】
本発明の口腔内速崩壊錠は、通常の医薬品にみられる口腔内速崩壊錠の製法を用いることができる。流動層造粒法、噴霧乾燥法、練合法、転動造粒法等の公知の方法により製造することができる。
【0043】
本発明の口腔内速崩壊錠の製造は、各工程について通常行う方法により、製造でき、特に限定はないが、例えば下記の方法で行うことができる。
【0044】
1.溶融造粒工程
流動層型コーティング装置(マルチプレックス)に、クロピドグレル硫酸塩のような刺激性(収斂性、酸味、苦み)のある薬物、および、例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースのような賦形剤を口腔内速崩壊錠全体に対して1%〜50%、マクロゴールのような結合剤を口腔内速崩壊錠全体に対して1%〜50%等の添加物を袋混合し、溶融造粒を行った。取出し後、30Mふるいで篩過し、「溶融造粒物」を得た。
この平均粒径は、例えば、75〜500μm、好ましくは、100〜350μm程度であった。
【0045】
2.コーティング工程
ポリマー組成物を含む溶液は、特に制限されないが、好ましくは、水及び低級アルコール(例えば、エタノール、イソプロパノールなどのC
1-4 アルコール)、脂肪族ケトン(アセトン)又はこれらの混合溶媒を用いた溶液である。なお、安全性の面から、特に、エタノール溶液が好ましく使用できる。
溶液中のポリマー組成物の濃度は、1〜30重量%、好ましくは、2〜20重量%、さらに好ましくは、3〜15重量%程度の範囲から選択できる。
【0046】
2−1.オイドラコート工程
エタノールに、アミノアルキルメタクリレートコポリマー(製品名オイドラギットE:EvonikRohm)、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー(製品名オイドラギットRS:EvonikRohm)を、それぞれ単独で、あるいは、「pH非依存性ポリマー」:「pH依存性ポリマー(胃用性)」の割合が、1:10〜10:1、好ましくは、1:5〜5:1の割合で混合溶解させた後、クエン酸トリエチル、トリアセチン、セバシン酸ジブチル、アセチル化モノグリセリドのような可塑剤を溶解させた。その後、酸化チタンを分散させ、メッシュ篩過することにより、フィルムコーティング液(以下、「オイドラコート溶液」と表記する)を調製した。
【0047】
流動層型コーティング装置に、上記で得られた「溶融造粒物」または下記「エトセルコート粒子」を入れ、オイドラコート溶液を噴霧した。取り出し後、18Mふるいで篩過し、「オイドラコート粒子」を得た。
ポリマー組成物の割合は、口腔内速崩壊錠全体に対して、0.01%〜50%、好ましくは、0.1%〜30%、さらに好ましくは、1%〜20%程度である。
このようなポリマー組成物にも、前記で例示した添加剤が含まれていてもよい。これらの添加剤も単独で又は二種以上組み合わせて使用でき、最終製剤中の含量に制限はない。
【0048】
2−2.エトセルコート工程
本工程は所望の工程であるが、上記のコーティングの前に、「溶融造粒物」について、直接、本コーティングを施すことにより更に効果を増強する目的で行う工程である。
エタノールに、トコフェロールのような安定化剤、エチルセルロース、などの水不溶性セルロースエーテルポリマーを溶解させ、ヒプロメロースのようなコーティング剤を分散させ、精製水を入れヒプロメロースを溶解させる。さらに、トリアセチン、クエン酸トリエチル、セバシン酸ジブチル、アセチル化モノグリセリドのような可塑剤を溶解させた後、タルクのようなコーティング剤を分散させることにより、フィルムコーティング液(以下、「エトセルコート溶液」と表記する)を調製した。流動層型コーティング装置に、上記「溶融造粒物」を入れ、エトセルコート溶液を噴霧した。取出し後、30Mふるいで篩過し、「エトセルコート粒子」を得た。
【0049】
本発明は、刺激性(収斂性、酸味、苦み)のある薬物、特に、クロピドグレル又はその塩を含む「溶融造粒物」に、上記2−2に従って、水不溶性セルロースエーテルポリマー等をコーティングし、さらにアミノアルキルメタクリレートコポリマーを、2−1に従ってコーティングすることを特徴とする、刺激性(収斂性、酸味、苦み)のある薬物、特に、クロピドグレル含有口腔内速崩壊錠の製造方法を含む。
【0050】
本発明者らは、刺激性(収斂性、酸味、苦み)のある薬物、特に、クロピドグレルとアミノアルキルメタクリレートコポリマーを直接接触させないことにより、すなわち、刺激性(収斂性、酸味、苦み)のある薬物、特に、クロピドグレル又はその塩を含む「溶融造粒物」に、エチルセルロース等をコーティングし、さらにアミノアルキルメタクリレートコポリマーをコーティングすることにより、刺激性(収斂性、酸味、苦み)のある薬物、特に、クロピドグレルの配合性が向上することを見出した。
【0051】
3.混合工程
上記「オイドラコート粒子」、乳糖水和物、結晶セルロースのような賦形剤、軽質無水ケイ酸のような流動化剤、クロスポビドンのような崩壊剤、アスパルテーム、スクラロースのような甘味剤、酸化マグネシウムのような制酸剤を袋混合した。その後、ステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤を加え、袋混合し、「錠用顆粒」を製造した。
【0052】
4.打錠工程
超小型錠剤機(製品名VELA5 0312SS2MZ:株式会社菊水製作所)に、上記「錠用顆粒」を入れ、硬度が4.0kgf以上となるように打錠した。
【0053】
形状等について
本発明の口腔内速崩壊錠は、どの様な形状も採用することができ、例えば丸形、楕円形、球形、円柱状、棒状型、ドーナツ型の形状および積層錠、有核錠等であってもよく、通常は円柱状の錠剤が使用される。
【0054】
本発明の口腔内速崩壊錠は、唾液により、口腔内で速やかに崩壊し、ざらつきを残さずに滑らかに服用可能であった。本発明の口腔内速崩壊錠の口溶けは、通常1〜95秒、好ましくは1〜65秒、更に好ましくは1〜30秒程度である。
【0055】
また、一般的に口腔内速崩壊錠の硬度(錠剤硬度計による測定値)は、最低20N(2kgf)以上であれば問題のない値であることが知られているが、本発明の口腔内速崩壊錠は30N(3kgf)以上、更には40N(4kgf)以上でも良好な口腔内速崩壊性を示す。なおこの製剤は、口腔内で崩壊させることなく服用することや、水と一緒に服用することもできる。
【実施例】
【0056】
[実施例1]
表1に示す処方に従って下記のようにして刺激性(収斂性、酸味、苦み)のある薬物、特に、クロピドグレル口腔内速崩壊錠を製造した。
【0057】
<溶融造粒工程>
流動層型コーティング装置(マルチプレックスFD-MP-01D/SPC型:株式会社パウレック製)に、クロピドグレル硫酸塩450.25g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(製品名LH−B1:信越化学工業株式会社)115.28g、マクロゴール6000(製品名PEG6000P:日油株式会社)138.00gを袋混合し、給気温度80.0℃で、30min以上保持することにより溶融造粒を行った。取り出し後、30Mふるいで篩過し、「溶融造粒物」を製造した。
【0058】
<エトセルコート工程>
エタノール(適量)に、トコフェロール(エーザイ・フードケミカル株式会社)10.63g、エチルセルロース(製品名エトセル スタンダード7プレミアム エチルセルロース:ダウケミカル社)95.50gを溶解させる。その後、ヒプロメロース(製品名TC−5E:信越化学工業株式会社)12.42gを分散させ、精製水(適量)を入れ、ヒプロメロースを溶解させる。さらに、トリアセチン(大八化学工業株式会社)2.07gを溶解させた後、タルク(松村産業株式会社)41.40gを分散させることにより、フィルムコーティング液(以下、「エトセルコート溶液」と表記する)を調製した。流動層型コーティング装置に、上記で得られた溶融造粒物703.53gを入れ、エトセルコート溶液を噴霧した。取出し後、30Mふるいで篩過し、「エトセルコート粒子」を製造した。
【0059】
<オイドラコート工程>
エタノール(甘糟産業株式会社)(適量)に、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE(製品名オイドラギットE:EvonikRohm)73.14g、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー(製品名オイドラギットRS:EvonikRohm)18.63gを溶解させた後、クエン酸トリエチル(製品名シトロフレックス:森村商事株式会社)3.73gを溶解させた。その後、酸化チタン46.37gを分散させ、メッシュ篩過することにより、フィルムコーティング液(以下、「オイドラコート溶液」と表記する)を調製した。
流動層型コーティング装置に上記で得られたエトセルコート粒子865.55gを入れ、オイドラコート溶液を噴霧した。取出し後、18Mふるいで篩過し、「オイドラコート粒子」を製造した。
【0060】
<混合工程>
オイドラコート粒子1007.40g、乳糖水和物(製品名Tablettose 70:メグレジャパン株式会社)533.922g、結晶セルロース(製品名KG−1000:旭化成ケミカルズ株式会社)100.74g、軽質無水ケイ酸(製品名アドソリダー101:フロイント産業株式会社)10.074g、クロスポビドン(製品名コリドンCL−F:BASFジャパン株式会社)100.74g、アスパルテーム(味の素株式会社)100.74g、スクラロース(製品名スクラロース(P):三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)50.37g、酸化マグネシウム(製品名酸化マグネシウム(重質):協和化学工業株式会社)100.74gを袋混合した(100回以上)。その後、ステアリン酸マグネシウム(製品名ステアリン酸マグネシウム(植物性))10.074gを加え、袋混合し(50回以上)、「錠用顆粒」を製造した。
【0061】
<打錠工程>
超小型錠剤機(製品名VELA5 0312SS2MZ:株式会社菊水製作所)に錠用顆粒を入れ、硬度が4.0kgf以上となるように打錠した。
【0062】
【表1】
【0063】
[実施例2]〜[実施例6]
実施例1に準じて実施例2〜実施例6の口腔内速崩壊錠剤を得た。
なお、実施例6のみ、トコフェロールを、溶融造粒中に0.15mg、エトセルコート中に2.16mg含有させた。
【0064】
【表2】
【0065】
<混合工程>
表3に示す分量で、クロピドグレル硫酸塩および各添加剤を袋混合(100回以上)し、錠用顆粒を調製した。
【0066】
<打錠工程>
超小型錠剤機(製品名VELA5 0312SS2MZ:株式会社菊水製作所)に錠用顆粒を入れ、硬度が4.0kgf以上となるように打錠した。
【0070】
(官能試験)
3名の被験者により官能試験を行った。各実施例で得られた口腔内速崩壊錠1個を口に含み、刺激性、酸味および、苦みの各要素を1〜5の5段階で評価した。
【0071】
結果
刺激性:(1:刺激性が強い〜5:刺激性はない)
酸味:(1:非常に酸味が強い〜5:酸味はない)
苦み:(1:非常に苦い〜5:苦くない)
【0073】
表の結果から明らかなとおり、本発明品は刺激性等のない良好な口腔内速崩壊錠であることが示された。
【0074】
(溶出試験)
クロピドグレル硫酸塩の口腔内速崩壊錠の溶出試験を行った。
試験液に溶出試験第1液900mLを用い、毎分50回転で試験を行った。
各サンプル1個を取り試験を開始し、規定された時間に溶出液20mL以上を取り、孔径0.45um以下のメンブランフィルターでろ過した。
初めのろ液10mLを除き、次のろ液1mLを正確に量り、試験液を加え正確に3mLとし、試料溶液とした。
別に定量用のクロピドグレル硫酸塩(別途水分を測定しておく)約30mgを精密に量り、メタノールに溶かし正確に100mLとした。
この液6mLを正確に量り、溶出試験第1液を加えて正確に50mLとし、標準溶液とした。
試料溶液および標準溶液10uLずつを正確にとり、次の条件で液体クロマトグラフィーにより試験を行い、表示量に対する溶出率(%)を求めた。
【0075】
クロピドグレル(C
16H
16ClNO
2S)の表示量に対する溶出率(%)
=M
S × A
T / A
S × 3 × 1 / C × 108 × 0.766
M
S:脱水物に換算した定量用クロピドグレル硫酸塩の秤取量(mg)
A
T:クロピドグレルのピーク面積(試料溶液)
A
S:クロピドグレルのピーク面積(標準溶液)
C:1錠中のクロピドグレル(C
16H
16ClNO
2S)の表示量(mg)
【0076】
試験条件
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:220nm)
カラム:内径3.9mm,長さ15cmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充てんした。
カラム温度:30℃付近の一定温度
移動相:1−ペンタンスルホン酸ナトリウム0.87gを水1000mLに溶かし,リン酸を加えてpH2.5に調整する。この液950mLにメタノール50mLを加える。この液600mLに液体クロマトグラフィー用アセトニトリル/メタノール混液(19:1)400mLを加えた。
流量:クロピドグレルの保持時間が約8分になるように調整した。
【0080】
表の結果から明らかなとおり、本発明品は良好な溶出性を示し、加速条件下においても、不利益な変化は生ぜず、溶出遅延は起きなかった。
【0081】
(口腔内での崩壊性)
各実施例で得られたクロピドグレル口腔内速崩壊錠について確認を行った。3名の被験者により各口腔内崩壊錠1個を口に含み、崩壊性を評価した。結果を表8に示す。なお、崩壊性は、下記で評価した。
×:60秒以上かかる、○:30秒〜60秒で崩壊する、◎:30秒以内で崩壊する
【0084】
(崩壊試験)
各実施例で得られたクロピドグレル口腔内速崩壊錠について、日本薬局方崩壊試験を行い、崩壊時間を測定した。
【0087】
表の結果から明らかなとおり、本発明品は良好な崩壊性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明により、良好な打錠性を示し、口腔内で崩壊性も良好であると共に、実用的な錠剤硬度が確保され、更に服用時に不快な味がマスキングされているといった特徴を有する、刺激性(収斂性、酸味、苦み)のある薬物、特に、クロピドグレル製剤を提供することができた。これによって、高齢者にとって易服用性となるだけでなく、多忙な現代社会人がどこへでも手軽に携帯し、水を摂取せず、苦痛を伴うことなくあらゆる場面で容易に刺激性(収斂性、酸味、苦み)のある薬物、特に、クロピドグレルを服用することが可能となった。