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特開2015-40227紫外線硬化組成物および該組成物を用いた硬化塗膜を有する物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-40227(P2015-40227A)
(43)【公開日】2015年3月2日
(54)【発明の名称】紫外線硬化組成物および該組成物を用いた硬化塗膜を有する物品
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/22 20060101AFI20150203BHJP
   C09D 171/00 20060101ALI20150203BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20150203BHJP
   C08F 220/20 20060101ALI20150203BHJP
   B32B 27/16 20060101ALI20150203BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20150203BHJP
【FI】
   C08F220/22
   C09D171/00
   C09D4/02
   C08F220/20
   B32B27/16 101
   B32B27/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-170568(P2013-170568)
(22)【出願日】2013年8月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000108030
【氏名又は名称】AGCセイミケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080159
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 望稔
(74)【代理人】
【識別番号】100090217
【弁理士】
【氏名又は名称】三和 晴子
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 貴央
【テーマコード(参考)】
4F100
4J038
4J100
【Fターム(参考)】
4F100AG00
4F100AK25B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100EH46B
4F100EJ54B
4F100JB14B
4J038FA111
4J038GA12
4J038KA02
4J038KA06
4J038NA01
4J038NA05
4J038NA07
4J038NA11
4J038NA25
4J038PA17
4J038PC02
4J038PC03
4J038PC06
4J038PC08
4J100AL08P
4J100AL62Q
4J100AL63R
4J100BA08R
4J100BB18P
4J100CA05
4J100DA48
4J100JA01
(57)【要約】
【課題】高い撥水撥油性による高い防汚性といったフッ素化合物の優れた特性を有すると共に、相溶性、硬化性に優れた紫外線硬化組成物の提供。前記紫外線硬化組成物を硬化させることにより、高い撥水撥油性を有し防汚性に優れ、高い硬度を有するとともに、優れた外観を有する物品の提供。
【解決手段】フッ素含有(メタ)アクリレート化合物(A)、二官能(メタ)アクリレート化合物(B)、および多官能(メタ)アクリレート化合物(C)を含有することを特徴とする紫外線硬化組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素含有(メタ)アクリレート化合物(A)、二官能(メタ)アクリレート化合物(B)、および多官能(メタ)アクリレート化合物(C)を含有することを特徴とする紫外線硬化組成物。
【請求項2】
前記フッ素含有(メタ)アクリレート化合物(A)が下記式(A−1)で表される化合物である、請求項1に記載の紫外線硬化組成物。
【化1】

(式中のRa1はHまたはCH基であり、nは1〜6の整数であり、mは1〜6の整数である。)
【請求項3】
前記二官能(メタ)アクリレート化合物(B)が下記式(B−1)で表される化合物である、請求項1または請求項2に記載の紫外線硬化組成物。
【化2】

(式中のRb1、Rb2は相互に独立してHまたはCH基であり、Xは(C2pO)または(CHO(pは1〜4の整数、lは1〜10の整数である。)で表される2価の基である。)
【請求項4】
前記二官能(メタ)アクリレート化合物(B)が下記式(B−2)で表される化合物である、請求項1〜3のいずれかに記載の紫外線硬化組成物。
【化3】

(式中のRb1、Rb2およびlは前記式(B−1)と同じ意味である。)
【請求項5】
前記多官能(メタ)アクリレート化合物(C)が下記式(C−1)で表される化合物である、請求項1〜4のいずれかに記載の紫外線硬化組成物
【化4】

(式中のRc2、Rc3、Rc4、Rc5、Rc6、およびRc7、は相互に独立してC2r−R(RはHまたはOH基であり、rは1〜10の整数である。)で表される1価の基または下記式(c1)で表わされる基であり、sは0または1であり、Rc2、Rc3、Rc4、Rc5、Rc6、およびRc7の少なくとも3つは下記式(c1)で表わされる基である。)
【化5】

(式中のRc1はHまたはCH基であり、Zは(OC2p(pは1〜4の整数、lは1〜10の整数である。)で表される2価の基または単結合である。)
【請求項6】
前記多官能(メタ)アクリレート化合物(C)が下記式(C−2)で表される化合物である、請求項1〜5のいずれかに記載の紫外線硬化組成物。
【化6】

(式中のRc1はHまたはCH基であり、YはC2r−R(RはHまたはOH基であり、rは1〜10の整数である。)で表される1価の基である。)
【請求項7】
前記紫外線硬化組成物中の前記フッ素含有(メタ)アクリレート化合物(A)の含有量が20質量%以上である請求項1〜6のいずれかに記載の紫外線硬化組成物。
【請求項8】
前記紫外線硬化組成物中の前記フッ素含有(メタ)アクリレート化合物(A)の含有量が40質量%以上である請求項1〜7のいずれかに記載の紫外線硬化組成物。
【請求項9】
前記紫外線硬化組成物中の前記フッ素含有(メタ)アクリレート化合物(A)の含有量が55質量%以上である請求項1〜8のいずれかに記載の紫外線硬化組成物。
【請求項10】
前記紫外線硬化組成物を硬化させた硬化塗膜を有する物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥水撥油性、硬度、および透明性に優れ、紫外線照射により硬化可能で、パーフルオロアルキル基、および(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含有する紫外線硬化組成物に関する。また、該組成物を硬化させた硬化塗膜を有する物品に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル化合物は紫外線や電子線等の活性エネルギー線の照射により容易に硬化させることができ、プラスチック樹脂やガラスに代表される各種物品表面に塗工し硬化させることで、表面を保護し新たな機能を付与するハードコート剤として非常に幅広い用途に用いられている。
【0003】
これらハードコート剤はその用途の広がりに応じて、従来の求められてきた硬度、耐摩耗性、耐薬品性、耐久性等に加え、防汚性、耐候性、すべり性、帯電防止性、防曇性、難焦性、反射防止等の更なる機能が求められてきている。中でも防汚性の付与が着目を浴びている。
【0004】
こうしたアクリル系硬化性組成物への防汚性の付与としては、表面にフッ素系の化合物層をつくり、撥水撥油性を高めることで水、油を含んだ汚れ成分を弾かせる試みが広くなされている。典型的な手法としては側鎖にパーフルオロアルキル基を有する重合性モノマー、例えば、アクリル酸含フッ素アルキルエステルやメタクリル酸含フッ素アルキルエステルから得られる重合体が広く知られている。
【0005】
ところが、近年、環境負荷の懸念から炭素数8以上の長鎖パーフルオロアルキル基を含有する化合物の利用を制限する動きが強まっている。しかしながら、炭素数8未満のパーフルオロアルキル基を含有するアクリル化合物は、炭素数8以上の長鎖パーフルオロアルキル基を持つものに比べ、その表面特性が顕著に悪いことが知られている。
【0006】
一方、連続する炭素数が3以下のパーフルオロアルキル基とエーテル結合性酸素原子からなるパーフルオロポリエーテル類を導入した光硬化可能なフッ素化合物が知られている。例えば、ヘキサフルオロプロピレンオキシドオリゴマーから誘導される下記のアクリル化合物が提案されている(特許文献1参照)。
【化1】
【0007】
また、フッ素含有ポリエーテルジオールと2−イソシアネートエチルメタクリレートとの反応物からなるウレタンアクリレートが提案されている(特許文献2参照)。しかし、フッ素含有化合物の撥水撥油特性から、光重合開始剤、非フッ素化アクリレート、及び非フッ素化有機溶剤との相溶性が低く、配合可能な成分及び用途が限定的であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−194322号公報
【特許文献2】特開平11−349651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、高い撥水撥油性による高い防汚性といったフッ素化合物の優れた特性を有すると共に、相溶性、硬化性に優れた紫外線硬化組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、前記紫外線硬化組成物を硬化させることにより、高い撥水撥油性を有し防汚性に優れ、高い硬度を有するとともに、優れた外観を有する物品を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、組成中に後述する特定の(メタ)アクリレート化合物を含有することにより、上記課題を解決する紫外線硬化組成物を見出し、本発明をなすに至った。
【0011】
本発明は、フッ素含有(メタ)アクリレート化合物(A)、二官能(メタ)アクリレート化合物(B)、および多官能(メタ)アクリレート化合物(C)を含有することを特徴とする紫外線硬化組成物を提供する。
【0012】
前記紫外線硬化組成物において、前記フッ素含有(メタ)アクリレート化合物(A)が下記式(A−1)で表される化合物であるのが好ましい。
【化2】

(式中のRa1はHまたはCH基であり、nは1〜6の整数であり、mは1〜6の整数である。)
【0013】
前記紫外線硬化組成物において、前記二官能(メタ)アクリレート化合物(B)が下記式(B−1)で表される化合物であるのが好ましい。
【化3】

(式中のRb1、Rb2は相互に独立してHまたはCH基であり、Xは(C2pO)または(CHO(pは1〜4の整数、lは1〜10の整数である。)で表される2価の基である。)
【0014】
前記紫外線硬化組成物において、前記二官能(メタ)アクリレート化合物(B)が下記式(B−2)で表される化合物であるのがより好ましい。
【化4】

(式中のRb1、Rb2およびlは前記式(B−1)と同じ意味である。)
【0015】
前記紫外線硬化組成物において、前記多官能(メタ)アクリレート化合物(C)が下記式(C−1)で表される化合物であるのが好ましい。
【化5】

(式中のRc2、Rc3、Rc4、Rc5、Rc6、およびRc7、は相互に独立してC2r−R(RはHまたはOH基であり、rは1〜10の整数である。)で表される1価の基または下記式(c1)で表わされる基であり、sは0または1であり、Rc2、Rc3、Rc4、Rc5、Rc6、およびRc7の少なくとも3つは下記式(c1)で表わされる基である。)
【化6】

(式中のRc1はHまたはCH基であり、Zは(OC2p(pは1〜4の整数、lは1〜10の整数である。)で表される2価の基または単結合である。)
【0016】
前記紫外線硬化組成物において、前記多官能(メタ)アクリレート化合物(C)が下記式(C−2)で表される化合物であるのがより好ましい。
【化7】

(式中のRc1はHまたはCH基であり、YはC2r−R(RはHまたはOH基であり、rは1〜10の整数である。)で表される1価の基である。)
【0017】
前記紫外線硬化組成物中の前記フッ素含有(メタ)アクリレート化合物(A)の含有量が20質量%以上であるのが好ましく、40質量%以上であるのがより好ましく、55質量%以上であるのがさらに好ましい。
【0018】
また、本発明は、前記紫外線硬化組成物を硬化させた硬化塗膜を有する物品も提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の紫外線硬化組成物は、相溶性に優れるだけでなく、光で硬化して撥水撥油性の硬化物を形成することができ、防汚用のハードコート剤として有用である。
また、本発明の物品は、本発明の紫外線硬化組成物を硬化させた硬化塗膜を有するため、高い撥水撥油性を有し防汚性に優れ、高い硬度を有するとともに、優れた外観を有する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の紫外線硬化組成物は、主として、フッ素含有(メタ)アクリレート化合物(A)と、二官能(メタ)アクリレート化合物(B)と、多官能(メタ)アクリレート化合物(C)とを含んでなる。
本明細書において(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。
また、本明細書において、フッ素含有(メタ)アクリレート化合物(A)を化合物(A)と、二官能(メタ)アクリレート化合物(B)を化合物(B)と、多官能(メタ)アクリレート化合物(C)を化合物(C)と、それぞれ記すことがある。
【0021】
化合物(A)は、特に構造を限定されないが、例えば、炭素数が1〜6のパーフルオロアルキル基を含有する前記式(A−1)で表される化合物が挙げられる。
式(A−1)において、nは4〜6が好ましく、4または6がより好ましく、6が特に好ましい。nがこの範囲であると、優れた撥水撥油性を発現することができる。
【0022】
化合物(A)の含有量は、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは40質量%以上であり、さらに好ましくは55質量%以上である。
なかでも、20〜90質量%であり、より好ましくは40〜80質量%であり、さらに好ましくは55〜70質量%であることが好ましい。このような範囲で用いることにより、硬化性を損なうことなく、優れた撥水撥油性を発現することができる。
なお、化合物(A)の含有量は、本発明の紫外線硬化樹脂組成物100質量%中の、化合物(A)の含有量を意味する。化合物(B)等他の成分も同様である。
【0023】
本発明において、化合物(B)は、1分子中に(メタ)アクリロイル基を2個含有する化合物のことを意味する。例えば、前記式(B−1)、式(B−2)で表わされる化合物が挙げられる。これらの式で表わされる化合物としては、より具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のポリアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10―デカンジオール等のポリアルキレンジオールのジ(メタ)アクリレート等の化合物が挙げられる。これら化合物は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
化合物(B)の含有量は、好ましくは5〜25質量%であり、より好ましくは10〜20質量%である。このような範囲で用いることにより、硬化性を損なうことなく、相溶性を調製することができる。
【0025】
本発明において、化合物(C)は、1分子中に(メタ)アクリロイル基を3個以上含有する化合物のことを意味する。例えば、エトキシ化グリセリントリアクリレート等のグリセリン誘導体や、前記式(C−1)、式(C−2)で表わされる化合物が挙げられる。これらの式で表わされる化合物としては、より具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の化合物が挙げられる。これら化合物は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
化合物(C)の含有量は、好ましくは5〜25質量%であり、より好ましくは8〜20質量%である。このような範囲で用いることにより、撥水撥油性を損なうことなく、優れた硬化性を発現することができる。
【0027】
本発明の組成物は、重合開始剤、溶剤等を含有していてもよい。
【0028】
重合開始剤としては、特に限定されないが、活性エネルギー線によりラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。例えば、1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンゾフェノン、2−メチル[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン}、1−[4−(4−ベンゾイルフェニルスルフォニル)フェニル]−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルフォニル)プロパン−1−オンが挙げられる。これらの重合開始剤は1種類でも使用できるが、2種以上を任意の割合で配合して使用してもよい。
【0029】
溶剤としては、従来公知の溶剤成分を使用すればよく、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル等、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、ジエチルエーテルなどのエーテル類、ヘキサンなどの炭化水素類が挙げられる。これらの溶剤は1種類でも使用できるが、2種以上を任意の割合で配合して使用してもよい。
【0030】
なお、本発明の紫外線硬化組成物は、本発明の目的を損なわない範囲であれば、重合開始剤、溶剤以外の他の成分を含んでいても構わない。他の成分としては、オリゴマー等の高分子量成分や、化合物(A)、(B)、(C)以外の重合性の化合物が挙げられる。
オリゴマー等としては、ウレタンアクリレートオリゴマー等が挙げられる。該オリゴマーは、共栄社化学社製UA−306I等、市販品として入手可能である。
重合性の化合物としては、具体的には、(メタ)アクリル酸、炭素数1〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、反応性を有する官能基を含む化合物、例えば、マレイン酸、無水イタコン酸、無水コハク酸等のエチレン性不飽和カルボン酸類、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシ(メタ)アクリルアミド等のアミド化合物、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル等の水酸基含有化合物、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有化合物、(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有化合物、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸などのカルボキシル基含有化合物、などが挙げられるが、これらに限られない。
本発明の紫外線硬化組成物は、これら他の成分を含んでいても構わないが、オリゴマーなど分子量の比較的大きい原料を導入せず、化合物(A)、(B)、(C)のようなモノマーのみで構成されていても、優れた性能を発揮することができる。
【0031】
基材としては、プラスチック、木材、ガラス、金属、セラミック等を用いることができる。
【0032】
塗布は、例えば、ディップコート法、フローコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、バーコート法、スピンコート法、ロールコート法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、はけ塗り法等により行うことができる。
【0033】
以下に本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断わりのない限り、以下の実施例の記載において「%」で表示されるものは「質量%」を表すものとする。
使用した化合物は、市場から試薬として入手することができるもしくは、既知の合成法によって容易に合成できるものである。
【実施例】
【0034】
[実施例1]
化合物(A)として2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート57.1質量%と、化合物(B)としてエチレングリコールジアクリレート19.0質量%と、化合物(C)としてトリメチロールプロパントリメタクリレート19.0質量%と、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンであるイルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の商品名。以下「イルガキュア184」と記す。)4.8質量%とを混合して、液状の紫外線硬化組成物を調製した。
【0035】
[実施例2]
化合物(A)として2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート57.1質量%と化合物(B)として1,9ノナンジオールジアクリレート19.0質量%と、化合物(C)としてトリメチロールプロパントリアクリレート19.0質量%と、光重合開始剤としてイルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の商品名)4.8質量%とを混合して、液状の紫外線硬化組成物を調製した。
【0036】
[実施例3]
化合物(A)として2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート57.1質量%と、化合物(B)として1,9ノナンジオールジアクリレート19.0質量%と、化合物(C)としてエチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート19.0質量%と、光重合開始剤としてイルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の商品名)4.8質量%とを混合して、液状の紫外線硬化組成物を調製した。
【0037】
[実施例4]
化合物(A)として2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート57.1質量%と、化合物(B)として1,9ノナンジオールジアクリレート19.0質量%と、化合物(C)としてトリメチロールプロパントリメタクリレート19.0質量%と、光重合開始剤としてイルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の商品名)4.8質量%とを混合して、液状の紫外線硬化組成物を調製した。
【0038】
[実施例5]
化合物(A)として2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート57.1質量%と、化合物(B)としてブレンマーPDE−200(日油社製の商品名)19.0質量%と、化合物(C)としてトリメチロールプロパントリメタクリレート19.0質量%と、光重合開始剤としてイルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の商品名)4.8質量%とを混合して、液状の紫外線硬化組成物を調製した。
【0039】
[実施例6]
化合物(A)として2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート57.1質量%と、化合物(B)としてブレンマーPDE−400(日油社製の商品名)19.0質量%と、化合物(C)としてトリメチロールプロパントリメタクリレート19.0質量%と、光重合開始剤としてイルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の商品名)4.8質量%とを混合して、液状の紫外線硬化組成物を調製した。
【0040】
[実施例7]
化合物(A)として2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート57.1質量%と、化合物(B)として1,9ノナンジオールジアクリレート19.0質量%と、化合物(C)としてトリメチロールプロパントリメタクリレート18.1質量%と、ペンタエリスリトールテトラアクリレート1.0質量%と光重合開始剤としてイルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の商品名)4.8質量%とを混合して、液状の紫外線硬化組成物を調製した。
【0041】
[実施例8]
化合物(A)として2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート57.1質量%と、化合物(B)として1,9ノナンジオールジアクリレート19.0質量%と、化合物(C)としてトリメチロールプロパントリメタクリレート18.1質量%と、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート1.0質量%と、光重合開始剤としてイルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の商品名)4.8質量%とを混合して、液状の紫外線硬化組成物を調製した。
【0042】
[実施例9]
化合物(A)として2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート57.1質量%と、化合物(B)として1,9ノナンジオールジアクリレート19.0質量%と、化合物(C)としてトリメチロールプロパントリメタクリレート9.5質量%と、オリゴマーとしてウレタンアクリレート化合物であるUA−306I(共栄社化学社製の商品名)9.5質量%と、光重合開始剤としてイルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の商品名)4.8質量%とを混合して、液状の紫外線硬化組成物を調製した。
【0043】
[実施例10]
実施例4〜7、および9で得られた紫外線硬化組成物を基材に塗布した。これに、160mW/cmのメタルハライドランプで高さ2cmの位置から紫外線を照射して架橋重合させて、硬化重合体を含むコート層を約70μm膜厚用のバーコーターを使用して形成した。
得られたコート層について、相溶性、外観(透明性)、鉛筆硬度、接触角の評価を行った。結果を表1に示す。
【表1】
【0044】
相溶性は、硬化前の組成物について、目視による観察によって、析出がないものを○、部分的にあるものを△、全面的にあるものを×とする3段階で評価した。
【0045】
外観は、目視による観察によって、変色がないものを○、部分的にあるものを△、全面的にあるものを×とする3段階で評価した。
【0046】
鉛筆硬度は、鉛筆硬度計750g荷重(JIS K 5600−5−4:1999準拠)にて試験を行い、傷の付かなかった鉛筆の硬度を示した。
【0047】
接触角は、自動接触角計OCA-20(データ・フィジックス社)を用いて、水、n−ヘキサデカンについて測定した。
【0048】
これらの結果から、本発明の紫外線硬化組成物は、相溶性に優れ、高い撥水撥油性を有し防汚性に優れ、高い硬度を有すると共に、外観に優れるコート層を形成できることが分かった。