(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-4029(P2015-4029A)
(43)【公開日】2015年1月8日
(54)【発明の名称】機能性フィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 7/04 20060101AFI20141205BHJP
B32B 23/20 20060101ALI20141205BHJP
【FI】
C08J7/04 S
B32B23/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-131472(P2013-131472)
(22)【出願日】2013年6月24日
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126169
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 淳子
(74)【代理人】
【識別番号】100130812
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 淳
(72)【発明者】
【氏名】中山 武史
(72)【発明者】
【氏名】川崎 貴史
(72)【発明者】
【氏名】金野 晴男
【テーマコード(参考)】
4F006
4F100
【Fターム(参考)】
4F006AA12
4F006AB03
4F006AB54
4F006AB69
4F006AB72
4F006BA10
4F006CA06
4F006CA07
4F100AA02B
4F100AJ06B
4F100AK07
4F100AT00A
4F100BA02
4F100CA02B
4F100EH46B
4F100GB15
4F100JL07
4F100JN01
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】 本発明は、防曇性・透明性・安全性に優れた機能性フィルムを提供することを目的にする。
【解決手段】 フィルム基材上にカルボキシメチルセルロースを含有する塗工層を設けることを特徴とする防曇性・透明性・安全性に優れた機能性フィルム。前記カルボキシメチルセルロースが、セルロースのグルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が0.25〜1.80であることが好ましい。また、前記塗工層が架橋剤(カリウムミョウバン)を含有していることがさらに好ましい。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム基材上にカルボキシメチルセルロースを含有する塗工層を設けた機能性フィルム。
【請求項2】
前記カルボキシメチルセルロースが、セルロースのグルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が0.25〜1.80であることを特徴とする請求項1に記載の機能性フィルム。
【請求項3】
前記塗工層が架橋剤を含有していることを特徴とする請求項1〜2に記載の機能性フィルム。
【請求項4】
前記架橋剤がカリウムミョウバンであることを特徴とする請求項3に記載の機能性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性フィルムに関する。具体的は防曇性を有する防曇性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、エチレン/酢酸
ビニル共重合体、ポリエステル、ポリアミドなどの熱可塑性樹脂からなるフィルムは、それらの優れた特性を活かして、食品等の包装材料、農業用フィルムなどの用途に用いられている。しかし、これらのフィルムの表面は、本質的には疎水性であるため、例えば、青果物包装用のフィルムや弁当の蓋材などに水滴が付くと、視認性が悪化する。また農業用ハウス等に使用する場合においては、フィルムの表面に付着した水滴が太陽光線を遮断して作物の成育に悪影響を及ぼす問題がある。
これらの問題を解決するために、流滴剤または防曇剤と称する界面活性剤を、フィルムに練り込んで成形したり、あるいは成形後のフィルムの表面に塗布したりして、防曇性を付与することが行われている(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−50492号公報
【特許文献2】特開2006−299213号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の方法で防曇性を付与したフィルムは、フィルム表面に防曇剤がブリードアウトして、表面が白化したり、フィルム同士がブロッキングしたりする等の問題が生じる場合があった。また長期の使用により流出した防曇剤の安全性が問題となる場合もあった。そこで本発明は、防曇性・透明性・安全性に優れた機能性フィルム(防曇性フィルム)フィルムを提供することを目的にする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下の(1)〜(4)を提供する。
(1) フィルム基材上にカルボキシメチルセルロースを含有する塗工層を設けた機能性フィルム。
(2) 前記カルボキシメチルセルロースが、セルロースのグルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が0.25〜1.80であることを特徴とする請求項1に記載の機能性フィルム。
(3) 前記塗工層が架橋剤を含有していることを特徴とする(1)〜(2)に記載の機能性フィルム。
(4) 前記架橋剤がカリウムミョウバンであることを特徴とする(3)に記載の機能性フィルム。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、防曇性・透明性・安全性に優れた防曇性フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。本明細書において「〜」は両端の値を含む。
【0008】
1.カルボキシメチルセルロース
本発明において、カルボキシメチルセルロース(以下、単に「CMC」と言うことがある)は、カルボキシメチルセルロース又はその塩を意味する。カルボキシメチルセルロースは、セルロース原料にカルボキシメチル基を導入して得られるものである。このカルボキシメチルセルロースは親水基が多く、水蒸気を吸収する能力が高いために防曇性フィルムに好適に用いることができる。
【0009】
<原料>
セルロース原料としては、木材由来のクラフトパルプまたはサルファイトパルプ、さらにはケナフ、麻、イネ、バカス、竹等の植物由来のセルロース系原料を使用できる。しかしながら、セルロース系原料中に広葉樹由来のリグニンが多く残留してしまうとカルボキシメチル化反応を阻害する恐れがあるので、本発明においては、化学パルプの製造方法により得られたセルロース系原料が好ましい。リグニンをさらに除去するために、このようにして得られたセルロース系原料に公知の漂白処理を施すことがより好ましい。
【0010】
<セルロース原料へのカルボキシメチル基の導入(カルボキシメチル化)>
本発明において、セルロース原料のカルボキシメチル化は公知の方法を用いて行うことができ、特に限定されるものではないが、その一例として、セルロース原料にモノクロロ酢酸などのエーテル化剤と触媒である水酸化アルカリ金属(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)を水及び/又はメタノール、エタノール、N−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、N−ブタノール、イソブタノール、第3級ブタノール等の低級アルコール媒体下で反応させることによって、カルボキシメチル化されたセルロースを得ることができる。なお、この方法において、得られるカルボキシメチル化セルロースのグルコース単位当たりのカルボキシメチル基置換度は、反応させるエーテル化剤の添加量、触媒であるアルカリ量、水及び/又は低級アルコールの組成比率をコントロールすることによって、調整することができる。
【0011】
本発明において、カルボキシメチル化されたセルロースのグルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が0.25〜1.80であることが好ましい。グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換基が0.25より小さいと、水への溶解が困難になり、塗工した後に未溶解物が残り視認性が悪化する。1.80より大きいと経済性が悪く好ましくない。なお、カルボキシメチル置換度は、以下の方法により測定できる。
【0012】
試料約2.0gを精秤して、300ml共栓三角フラスコに入れる。硝酸メタノール(無水メタノール1Lに特級濃硝酸100mlを加えた液)100mlを加え、3時間振盪して、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Na−CMC)をカルボキシメチルセルロース(H−CMC)にする。その絶乾H−CMC1.5〜2.0gを精秤し、300ml共栓三角フラスコに入れる。80%メタノール15mlでH−CMCを湿潤し、0.1NのNaOH100mlを加えて室温で3時間振盪する。指示薬としてフェノールフタレインを用いて、0.1NのH2SO4で過剰のNaOHを逆滴定する。次式:[{100 × F’−(0.1NのH2SO4(ml))×F}/(H−CMCの絶乾質量(g))]×0.1=Aカルボキシルメチル置換度=0.162A/(1−0.058A)
A:1gのH−CMCを中和するのに必要な1NのNaOHの量(ml)
F’:0.1NのH2SO4のファクター
F:0.1NのNaOHのファクター
【0013】
2.架橋剤
本発明において、塗工層の耐水性向上の観点から、塗工層に架橋剤を含有させることが好ましい。架橋剤の種類としては特に限定されるものではなく、多価金属塩(銅、亜鉛、銀、鉄、カリウム、ナトリウム、ジルコニウム、アルミニウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、チタンなどの多価金属と、炭酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、燐酸イオン、珪酸イオン、窒素酸化物、ホウ素酸化物などのイオン性物質が結合した化合物)、アミン化合物、アミド化合物、アルデヒド化合物、ヒドロキシ酸など適宜選択して使用することができる。これらの中では、カルボキシメチルセルロースとの反応性の点から、多価金属塩、特にカリウムミョウバンを使用することが好ましい。
【0014】
架橋剤の配合料は、塗工可能な塗料濃度や塗料粘度の範囲内であれば特に限定されることなくが、一般的にはカルボキシメチルセルロース100重量部に対して、0.1〜30重量部、より好ましくは0.5〜20重量部である。0.1重量部より少ないと、十分な効果が得られず、30重量部より多いと、架橋の効果がこれ以上得られないため、不経済である。
【0015】
3.その他
本発明において、カルボキシメチルセルロースを含有する塗工層を形成させる方法は公知の方法を用いることができる。また、前記塗工層を形成させる塗工液に、所望の効果を阻害しない範囲で各種添加剤を加えることができる。例えば、疎水性フィルムを基材に用いた場合、イソプロピルアルコールなどの有機溶剤、アセチレングリコールやシリコン化合物などの表面調整剤を添加することで、塗工液のレベリング性、消泡性が向上する。また分散液の粘性を下げるため、塩化ナトリウムやアクリル酸ソーダなどのイオン性をもつ化合物を添加することも可能である。また耐水性付与のために、上述の架橋剤を添加することも可能である。これら添加剤は、食品包材や農業資材への利用のためには、安全性の高い材料を用いることが望ましい。
【0016】
4.基材
本発明の機能性フィルムに使用される基材は、透明性の高い基材であれば特に問わないが、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系材料由来の基材、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル基材、ガラス、等を例示することができ、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0017】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、本発明にかかる物質の諸物性の評価は以下の方法で測定した。
【0018】
<フィルムの防曇性の評価>
200mlビーカーに約100mlのお湯(90℃)を注ぎ、得られた積層フィルムの塗工面が熱湯側になるようにフィルムをビーカーにのせて30秒間蒸気を当てた後、フィルムの視認性を確認した。
【0019】
[実施例1]
カルボキシメチル基の置換度が0.74であるカルボキシメチルセルロースの粉末(商品名:APP−84、日本製紙ケミカル(株)社製)を濃度10%になるよう希釈してミキサーにより溶解してから、分散液の液量に対して1重量部のアセチレングリコール系界面活性剤(日信化学社製:オルフィンEXP4200)を添加し、ポリプロピレン(PP)フィルム(厚み25μm)上にアプリケーターを用いて、乾燥後の塗工量が0.5g/m
2になるよう塗工・乾燥し、防曇性フィルムを得た。得られた防曇性フィルムは、フィルム表面が蒸気で曇ることなく、透明性が保たれ、視認性は良好であった。
【0020】
[実施例2]
カルボキシメチル基の置換度が1.39であるカルボキシメチルセルロースの粉末(商品名:A02−SH、日本製紙ケミカル(株)社製)を用いて濃度5%に希釈した以外は、実施例1と同様に防曇性フィルムを得た。得られた防曇性フィルムは、フィルム表面が蒸気で曇ることなく、透明性が保たれ、視認性は良好であった。
【0021】
[実施例3]
カルボキシメチル基の置換度が0.25であるカルボキシメチルセルロースの粉末(商品名:SLD−FM、日本製紙ケミカル(株)社製)を用いて濃度1%に希釈し、高圧ホモジナイザーにて30MPaで10回処理を行った。これを用いて実施例1と同様に防曇性フィルムを得た。得られた防曇性フィルムは、フィルム表面が蒸気で曇ることなく、透明性が保たれ、視認性は良好であった。
【0022】
[実施例4]
実施例1記載のカルボキシメチルセルロースの溶解液に、セルロース重量100部に対してカリウムミョウバンを3質量部添加した。これをPPフィルム(厚み25μm)上にアプリケーターを用いて、乾燥後の塗工量が0.5g/m
2になるよう塗工・乾燥し、防曇性フィルムを得た。得られた防曇性フィルムは、フィルム表面が蒸気で曇ることなく、透明性が保たれ、視認性は良好であった。
【0023】
[比較例1]
カルボキシメチルセルロースを塗工しなかったこと以外は実施例1と同様にして、PPフィルムの防曇性を評価した。フィルム表面は蒸気で曇りが生じ、視認性が悪化した。