(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-40411(P2015-40411A)
(43)【公開日】2015年3月2日
(54)【発明の名称】免震床及びその設置方法
(51)【国際特許分類】
E04F 15/18 20060101AFI20150203BHJP
E04F 15/024 20060101ALI20150203BHJP
【FI】
E04F15/18 601B
E04F15/024 605
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-171795(P2013-171795)
(22)【出願日】2013年8月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000103644
【氏名又は名称】オイレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098095
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 武志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 清春
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 充
(72)【発明者】
【氏名】岩下 敬三
【テーマコード(参考)】
2E220
【Fターム(参考)】
2E220AA21
2E220AA23
2E220AA39
2E220AA51
2E220CA37
2E220DA19
2E220EA11
2E220FA09
2E220FA11
2E220GB02Y
(57)【要約】
【課題】免震床の床としての配設を容易に行い得るフリーアクセスパネルを具備した免震床及びこの免震床の設置方法を提供すること。
【解決手段】免震床1は、プレキャストコンクリート製の基台本体2及び基台本体2の上面3に設けられた凹球面状の下側摺動面4を有した基台5と、プレキャストコンクリート製のパネル本体6及びパネル本体6の下面7に設けられた凹球面状の上側摺動面8を有していると共に基台5の上方に配されたフリーアクセスパネル9と、基台5の下側摺動面4に摺動自在に接する凸球面状の摺動下面10及びフリーアクセスパネル9の上側摺動面8に摺動自在に接する凸球面状の摺動上面11を備えていると共に基台5及びフリーアクセスパネル9間に介在された介在部材12とを具備している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレキャストコンクリート製の基台本体及びこの基台本体に設けられた凹球面状の下側摺動面を有した基台と、プレキャストコンクリート製のパネル本体及びこのパネル本体に設けられた凹球面状の上側摺動面を有していると共に基台の上方に配されたフリーアクセスパネルと、基台の下側摺動面に摺動自在に接する凸球面状の摺動下面及びフリーアクセスパネルの上側摺動面に摺動自在に接する凸球面状の摺動上面を備えていると共に基台及びフリーアクセスパネル間に介在された介在部材とを具備している免震床。
【請求項2】
下側摺動面と上側摺動面とは、同一の曲率半径を有している請求項1に記載の免震床。
【請求項3】
介在部材の摺動下面は、基台の下側摺動面の曲率半径と同一の曲率半径を有しており、介在部材の摺動上面は、フリーアクセスパネルの上側摺動面の曲率半径と同一の曲率半径を有している請求項1又は2に記載の免震床。
【請求項4】
基台は、基台本体の上面において基台本体に埋設されて当該基台本体に一方の面で固定されていると共に金属薄板からなる少なくとも一つの下皿状部材を具備しており、下側摺動面は、下皿状部材の他方の面からなる請求項1から3のいずれか一項に記載の免震床。
【請求項5】
基台本体は、方形状であり、基台は、基台本体の上面の少なくとも四隅の夫々に配されていると共に金属薄板からなる四個の下皿状部材を具備しており、各下皿状部材は、基台本体の上面において基台本体に埋設されて当該基台本体に一方の面で固定されており、下側摺動面は、下皿状部材の夫々の他方の面からなる請求項1から3のいずれか一項に記載の免震床。
【請求項6】
フリーアクセスパネルは、パネル本体の下面においてパネル本体に埋設されて当該パネル本体に一方の面で固定されていると共に金属薄板からなる少なくとも一つの上皿状部材を具備しており、上側摺動面は、上皿状部材の他方の面からなる請求項1から5のいずれか一項に記載の免震床。
【請求項7】
パネル本体は、方形状であり、フリーアクセスパネルは、パネル本体の下面の少なくとも四隅の夫々に配されていると共に金属薄板からなる四個の上皿状部材を具備しており、各上皿状部材は、パネル本体の下面においてパネル本体に埋設されて当該パネル本体に一方の面で固定されており、上側摺動面は、上皿状部材の夫々の他方の面からなる請求項1から5のいずれか一項に記載の免震床。
【請求項8】
複数個の基台を有しており、介在部材は、各基台とフリーアクセスパネルとの間に介在されている請求項1から7のいずれか一項に記載の免震床。
【請求項9】
基台は、長方形状の基台本体に埋設固定されていると共に下側摺動面の中央部の下部を通って基台本体の外周面における短辺側の外面に平行に且つ当該外周面における短辺側の一方の外面から他方の外面に向かう方向において所定の間隔をもって伸びた少なくとも二本の仮固定用の金属製の棒状体と、この棒状体の両端部の夫々に螺合されていると共に各端面が基台本体の長辺側の外面において露出して基台本体に埋設固定されているナットとを具備している請求項1から8のいずれか一項に記載の免震床。
【請求項10】
フリーアクセスパネルは、長方形状のパネル本体に埋設固定されていると共に上側摺動面の中央部の上部を通ってパネル本体の外周面における短辺側の外面に平行に且つ当該外周面における短辺側の一方の外面から他方の外面に向かう方向において所定の間隔をもって伸びた少なくとも二本の金属製の仮固定用の棒状体と、この仮固定用の棒状体に並置されてパネル本体に埋設固定されていると共にパネル本体の外周面における短辺側の外面に平行に且つ当該外周面における短辺側の一方の外面から他方の外面に向かう方向において所定の間隔をもって伸びた少なくとも二本の金属製の連結用の棒状体と、仮固定用及び連結用の棒状体の両端部の夫々に螺合固定されていると共に端面がパネル本体の長辺側の外面において露出してパネル本体に埋設固定されているナットとを具備している請求項1から8のいずれか一項に記載の免震床。
【請求項11】
(1)プレキャストコンクリート製の基台本体、この基台本体の上面の少なくとも四隅において当該基台本体に埋設固定されていると共に凹球面状の下側摺動面及び凸球面状の面を有した下皿状部材、この下皿状部材のそれぞれの凸球面状の面の中央部の上部を通って基台本体に埋設固定された少なくとも二本の金属製の第一の棒状体、この第一の棒状体の端部に螺合固定されていると共に端面で基台本体の側面に露出して基台本体に埋設固定された仮固定用の第一のナットを備えた基台と、プレキャストコンクリート製のパネル本体、このパネル本体の下面の少なくとも四隅に埋設固定されていると共に凹球面状の上側摺動面及び凸球面状の面を有した上皿状部材、この上皿状部材のそれぞれの凸球面状の面の中央部の上部を通ってパネル本体に埋設固定された少なくとも二本の金属製の仮固定用の第二の棒状体、この第二の棒状体の端部に螺合固定されていると共に端面でパネル本体の側面に露出してパネル本体に埋設固定された第二のナットを備えたフリーアクセスパネルとの間に介在部材を、その摺動下面を下皿状部材の下側摺動面に、その摺動上面を上皿状部材の上側摺動面に夫々接触させて、配置する工程と、
(2)四個の貫通孔を備えた金属製の板体と、この板体に固定された第三のナットと、この第三のナットに螺合した第一のボルトとを備えた仮固定金具を準備する工程と、
(3)第一及び第二のナットに板体の四個の貫通孔の夫々を介して第二のボルトを螺合して基台及びフリーアクセスパネルを仮固定金具の板体によって互いに仮固定する工程と、
(4)互いに仮固定された基台及びフリーアクセスパネルを設置現場に搬送して基礎床面上に載置する工程と、
(5)第一のボルトの先端面に対面する基礎床面上に金属製の敷板を配置すると共に該敷板に第一のボルトの先端面を接触させる工程と、
(6)第一のボルトを敷板に向かって螺進させてフリーアクセスパネルの基礎床面からの高さを調整する工程と、
(7)フリーアクセスパネルの高さの調整後、基台と基礎床面との間の隙間部分にグラウト材を打設する工程と、
(8)グラウト材の硬化後に、基台及びフリーアクセスパネルから仮固定金具を取り外す工程と、
を具備する免震床の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内に設置されるコンピュータ、サーバーのような機器や工場内に設置される機械等の機械器具類が設置される免震機能を有した免震床及びその設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
室内に設置されるコンピュータ、サーバーのような機器や工場内に設置される機械等の機械器具類が設置される免震機能を有した免震床に関して、例えば特許文献1では、基礎上に配置される免震構造体と、この免震構造体上に、上から見て縦横に互いに隣り合うように整列して複数配置されているフロアパネルによって構成されたフリーアクセスフロアを設けた免震床構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−97500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば、鉄骨フレームを組み込んだ鉄骨フレーム上に複数のフリーアクセスパネル(床部材)を配設することで免震床を設置する方法が挙げられるが、この場合は、鉄骨フレーム及びフリーアクセスパネルの夫々の位置決めが難しく、また、いったん設置した後の免震床のレイアウト等に伴う再設置も困難である。
【0005】
本発明は、前記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、免震床の床としての配設を容易に行い得るフリーアクセスパネルを具備した免震床及びこの免震床の設置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の免震床は、プレキャストコンクリート製の基台本体及びこの基台本体に設けられた凹球面状の下側摺動面を有した基台と、プレキャストコンクリート製のパネル本体及びこのパネル本体に設けられた凹球面状の上側摺動面を有していると共に基台の上方に配されたフリーアクセスパネルと、基台の下側摺動面に摺動自在に接する凸球面状の摺動下面及びフリーアクセスパネルの上側摺動面に摺動自在に接する凸球面状の摺動上面を備えていると共に基台及びフリーアクセスパネル間に介在された介在部材とを具備している。
【0007】
斯かる免震床によれば、基台本体及びパネル本体は、プレキャストコンクリート製であるので、当該基台本体及びパネル本体を工場で製造でき、また、凹球面状の下側摺動面及び凹球面状の上側摺動面を基台本体及びパネル本体の製造時に同時に形成できるので、製造コストの削減を図ることができる。
【0008】
本発明の免震床において、下側摺動面と上側摺動面とは、同一の曲率半径を有していてもよく、また、介在部材の摺動下面は、基台の下側摺動面の曲率半径と同一の曲率半径を有しており、介在部材の摺動上面は、フリーアクセスパネルの上側摺動面の曲率半径と同一の曲率半径を有していてもよく、これら下側摺動面及び上側摺動面は、凹球面の一部として、また、摺動下面及び摺動上面は、凸球面の一部として形成されていてもよい。
【0009】
本発明において、基台は、基台本体の上面において基台本体に埋設されて当該基台本体に一方の面で固定されていると共に金属薄板からなる少なくとも一つの下皿状部材を具備していてもよく、この場合、下側摺動面は、下皿状部材の他方の面からなっていてもよく、また、フリーアクセスパネルは、パネル本体の下面においてパネル本体に埋設されて当該パネル本体に一方の面で固定されていると共に金属薄板からなる少なくとも一つの上皿状部材を具備していてもよく、この場合には、上側摺動面は、上皿状部材の他方の面からなっていてもよい。
【0010】
基台本体は、長方形及び正方形を含む方形状であってもよく、この場合には、基台は、基台本体の上面の少なくとも四隅の夫々に配されていると共に金属薄板からなる四個の下皿状部材を具備し、各下皿状部材は、基台本体の上面において基台本体に埋設されて当該基台本体に一方の面で固定され、下側摺動面は、下皿状部材の夫々の他方の面からなっていてもよく、また、パネル本体は、長方形及び正方形を含む方形状であってもよく、この場合にも、基台と同様に、フリーアクセスパネルは、パネル本体の下面の少なくとも四隅の夫々に配されていると共に金属薄板からなる四個の上皿状部材を具備し、各上皿状部材は、パネル本体の下面においてパネル本体に埋設されて当該パネル本体に一方の面で固定され、上側摺動面は、上皿状部材の夫々の他方の面からなっていてもよい。
【0011】
また、本発明の免震床においては、一個のフリーアクセスパネルに対して複数個の基台を有していてもよく、この場合、介在部材は、各基台とフリーアクセスパネルとの間に介在されているとよく、複数個の基台は、夫々の基台自体の重量を軽減することができると共に基台が設置される床等の基礎床面とフリーアクセスパネルとの間に空間が形成されるため、当該空間に配線等を通すことができる。
【0012】
下側摺動面を有した下皿状部材及び上側摺動面を有した上皿状部材には、金属薄板、好ましくは耐候性鋼板であるステンレス鋼板をプレス成形して得られたものが好ましい。
【0013】
介在部材は、平面視円形状を呈する鋼等の金属材料から形成された扁平状の摺動基体と、摺動基体の下面の円形状凹部に一部が埋設されて固定された合成樹脂からなる下摺動体と、摺動基体の上面の円形凹部に一部が埋設されて固定された合成樹脂からなる上摺動体とを具備していてもよく、摺動下面及び摺動上面となる下摺動体及び上摺動体の夫々の下方露出表面(下面)及び上方露出表面(上面)は、対面する下側摺動面及び上側摺動面の曲率半径と同一の曲率半径を有した球面の一部として形成されて、対面する下側摺動面及び上側摺動面に摺動自在に接触していてもよい。
【0014】
下摺動体及び上摺動体の夫々は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂を主体とし、場合により、それにガラス繊維等の補強繊維又はガラス粉末等の補強材を混入した円盤状の板体で構成してもよい。
【0015】
本発明の免震床において、基台は、長方形状の基台本体に埋設固定されていると共に下側摺動面の中央部の下部を通って基台本体の外周面における短辺側の外面に平行に且つ当該短辺側の一方の外面から他方の外面に向かう方向において所定の間隔をもって伸びた少なくとも二本の金属製の仮固定用の棒状体と、この棒状体の端部の夫々に螺合されていると共に各端面が基台本体の長辺側の外面において露出して基台本体に埋設固定されているナットとを具備していてもよく、フリーアクセスパネルは、長方形状のパネル本体に埋設固定されていると共に上側摺動面の中央部の上部を通ってパネル本体の外周面における短辺側の外面に平行に且つ当該短辺側の一方の外面から他方の外面に向かう方向において所定の間隔をもって伸びた少なくとも二本の金属製の仮固定用の棒状体と、この仮固定用の棒状体に並置されてパネル本体に埋設固定されていると共にパネル本体の外周面における短辺側の外面に平行に且つ当該短辺側の一方の外周面から他方の外周面に向かう方向において所定の間隔をもって伸びた少なくとも二本の金属製の連結用の棒状体と、仮固定用及び連結用の棒状体の端部の夫々に螺合固定されていると共に端面がパネル本体の長辺側の外面において露出してパネル本体に埋設固定されているナットとを具備していてもよい。
【0016】
フリーアクセスパネルに埋設固定された少なくとも二本の金属製の仮固定用の棒状体と、基台に埋設固定された少なくとも二本の金属製の仮固定用の棒状体とは、フリーアクセスパネル及び基台の厚さ方向に相対向して配設されているとよい。
【0017】
本発明の免震床において、免震床を長手方向に複数個配列する場合、相隣り合う免震床のフリーアクセスパネルの端部間に跨って金属製の連結板をあてがい、この連結板に形成された少なくとも二個の貫通孔をパネル本体に埋設固定された連結用の棒状体に固定されたナットの端面に合致させると共にこのナットにボルトを螺合固定してフリーアクセスパネル同士を連結板によって連結するようにしてもよい。
【0018】
本発明の免震床において、基台は、工場において、(1)方形状の型枠を組立てる工程と、(2)凹球面状の下側摺動面を備えた金属薄板からなる下皿状部材を、この型枠の少なくとも四隅に凹球面状の下側摺動面を下向きにして配置する工程と、(3)型枠内に互いに直交する複数個の鉄筋を配筋する工程と、(4)下皿状部材の凸球面状の底面の中央部を通って型枠の幅方向に沿い且つ型枠の長手方向に所定の間隔をもって両端部にナットを螺合固定した金属製の仮固定用の棒状体をそれぞれ少なくとも二本ずつ配置する工程と、(5)型枠内にコンクリートを打設する工程と、(6)打設後、コンクリートを養生して十分にコンクリートを硬化させた後、型枠を取り外す工程とを経て製造されてもよく、このようにして製造された基台は、上面の少なくとも四隅に埋設固定された金属薄板からなると共に凹球面状の下側摺動面を備えた下皿状部材と、下皿状部材の凸球面状の面の中央部の下部を通って且つ所定の間隔をもって埋設固定されている共に両端部にナットを螺合固定した仮固定用の棒状体とを備えている。
【0019】
本発明の免震床におけるフリーアクセスパネルは、工場において、(1)方形状の型枠を組立てる工程と、(2)凹球面状の下側摺動面を備えた金属薄板からなる上皿状部材を、この型枠の少なくとも四隅に凹球面状の開口部を下向きにして配置する工程と、(3)型枠内の長手方向及び幅方向に複数個の鉄筋を配筋する工程と、(4)該上皿状部材の凸球面状の底面の中央部を通って型枠の幅方向に沿い且つ型枠の長手方向に所定の間隔をもって両端部に仮固定用のナットを螺合固定した金属製の仮固定用の棒状体をそれぞれ少なくとも二本ずつ配置する工程と、(5)型枠内の長手方向の一方の端部に該仮固定用の棒状体と長手方向に並置すると共に型枠の長手方向に所定の間隔をもって両端部に連結用のナットを螺合固定した少なくとも二本の金属製の連結用の棒状体を配置する工程と、(6)型枠内にコンクリートを打設する工程と、(7)打設後、コンクリートを養生して十分にコンクリートを硬化させた後、型枠を取り外す工程とを経て製造されてもよく、このようにして製造されたフリーアクセスパネルは、下面の少なくとも四隅に埋設固定された金属薄板からなる下方に向かって凹球面状の上側摺動面を備えた上皿状部材と、上皿状部材の凸球面状の底面の中央部の上部を通って且つ所定の間隔をもって埋設固定された少なくとも二本の金属製の仮固定用の棒状体と、フリーアクセスパネルの長手方向の一方の端部に仮固定用の棒状体と長手方向に並置して埋設固定された少なくとも二本の金属製の連結用の棒状体とを備えている。
【0020】
本発明の免震床の設置方法は、プレキャストコンクリート製の基台本体、この基台本体の上面の少なくとも四隅において当該基台本体に埋設固定されていると共に凹球面状の下側摺動面及び凸球面状の面を有した下皿状部材、この下皿状部材のそれぞれの凸球面状の面の中央部の上部を通って基台本体に埋設固定された少なくとも二本の金属製の第一の棒状体、この第一の棒状体の端部に螺合固定されていると共に端面で基台本体の側面に露出して基台本体に埋設固定された仮固定用の第一のナットを備えた基台と、プレキャストコンクリート製のパネル本体、このパネル本体の下面の少なくとも四隅に埋設固定されていると共に凹球面状の上側摺動面及び凸球面状の面を有した上皿状部材、この上皿状部材のそれぞれの凸球面状の面の中央部の上部を通ってパネル本体に埋設固定された少なくとも二本の金属製の仮固定用の第二の棒状体、この第二の棒状体の端部に螺合固定されていると共に端面でパネル本体の側面に露出してパネル本体に埋設固定された第二のナットを備えたフリーアクセスパネルとの間に介在部材を、その摺動下面を下皿状部材の下側摺動面に、その摺動上面を上皿状部材の上側摺動面に夫々接触させて、配置する工程と、四個の貫通孔を備えた金属製の板体と、この板体に固定された第三のナットと、この第三のナットに螺合した第一のボルトとを備えた仮固定金具を準備する工程と、第一及び第二のナットに板体の四個の貫通孔の夫々を介して第二のボルトを螺合して基台及びフリーアクセスパネルを仮固定金具の板体によって互いに仮固定する工程と、互いに仮固定された基台及びフリーアクセスパネルを設置現場に搬送して基礎床面上に載置する工程と、第一のボルトの先端面に対面する基礎床面上に金属製の敷板を配置すると共に該敷板に第一のボルトの先端面を接触させる工程と、第一のボルトを敷板に向って螺進させてフリーアクセスパネルの基礎床面からの高さを調整する工程と、フリーアクセスパネルの高さの調整後、基台と基礎床面との間の隙間部分にグラウト材を打設する工程と、グラウト材の硬化後に、基台及びフリーアクセスパネルから仮固定金具を取り外す工程と、を具備している。
【0021】
斯かる免震床の設置方法によれば、作業スペースを小さくして、作業時間の大幅な短縮を可能とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、工場生産を可能とし、製造コストの削減を図ることができ、仮固定金具によって予め一体化されているので、設置現場への搬送が容易となると共に、位置決め、配置を容易に行い得る免震床及び免震床の設置方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明の免震床の好ましい例の一部破断平面説明図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す例のIV−IV線矢視断面説明図である。
【
図5】
図5は、
図1に示す例のV−V線矢視断面説明図である。
【
図9】
図9は、
図1に示す例のフリーアクセスパネルの平面説明図である。
【
図12】
図12は、
図1に示す例の仮固定状態の説明図で、(a)は正面説明図、(b)は側面説明図である。
【
図16】
図16は、本発明の免震床の好ましい他の例の平面説明図である。
【
図18】
図18は、本発明の免震床の好ましい更に他の例の正面説明図である。
【
図19】
図19は、本発明の免震床の好ましい更に他の例の平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に本発明の実施の形態を、図に示す好ましい例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明はこれら例に何等限定されない。
【0025】
図1から
図10において、本例の免震床1は、プレキャストコンクリート製の基台本体2及び基台本体2の上面3に設けられた凹球面状の下側摺動面4を有した基台5と、プレキャストコンクリート製のパネル本体6及びパネル本体6の下面7に設けられた凹球面状の上側摺動面8を有していると共に基台5の上方に配されたフリーアクセスパネル(床部材)9と、基台5の下側摺動面4に摺動自在に接する凸球面状の摺動下面10及びフリーアクセスパネル9の上側摺動面8に摺動自在に接する凸球面状の摺動上面11を備えていると共に基台5及びフリーアクセスパネル9間に介在された介在部材12とを具備している。
【0026】
平面視長方形状の基台本体2は、当該基台本体2の平坦な上面3、下面21及び外周面22となるこれら上面3、下面21及び外周面22を有すると共に上面3の四隅に設けられた凹所23を有した平面視長方形状であって直方体状のコンクリート体24と、外周面22における長辺側の外面25及び26並びに短辺側の外面27及び28に対して夫々平行に伸びてコンクリート体24内に格子状に配筋された複数本の鉄筋29a及び29b(以下、鉄筋29aが伸びる方向を方向Xと、鉄筋29bが伸びる方向を方向Yとする)とを具備しており、これら鉄筋29a及び29bによってコンクリート体24を補強したプレキャストコンクリート(以下「PC」と略称する)製となっている。
【0027】
基台5は、基台本体2に加えて、上面3の四隅の凹所23においてコンクリート体24に埋設されて当該コンクリート体24に一方の面31で固定されていると共に金属薄板からなる四個の下皿状部材32と、コンクリート体24に埋設固定されていると共に下側摺動面4の中央部の下方を通って外面27及び28に平行であって方向Yに且つ外面27から外面28に向かう方向Xにおいて所定の間隔をもって伸びた二対の仮固定用の金属製の棒状体33及び34並びに35及び36と、外面27側の一対の棒状体33及び34並びに外面28側の一対の棒状体35及び36の方向Yの各両端部37の夫々に螺合されていると共に各端面39及び40が外面25及び26において露出してコンクリート体24に埋設固定されているナット41及び42とを具備している。
【0028】
凹所23の夫々に配された下皿状部材32は、所望の曲率半径を有する下に凸の凸球面状の一方の面31と、面31に相補的であって面31と同一の曲率半径を有する凹球面状の他方の面45とを有しており、下側摺動面4は、下皿状部材32の夫々の他方の面45からなっている。
【0029】
基台本体2と同様に平面視長方形状のパネル本体6は、当該パネル本体6の平坦な下面7、上面51及び外周面52となるこれら下面7、上面51及び外周面52を有すると共に下面7の四隅に設けられた凹所53を有した平面視長方形状であって直方体状のコンクリート体54と、外周面52における長辺側の外面55及び56並びに短辺側の外面57及び58に対して夫々平行に伸びてコンクリート体54内に格子状に配筋された複数本の鉄筋59a及び59bとを具備しており、これら鉄筋59a及び59bによってコンクリート体54を補強しPC製となっている。
【0030】
フリーアクセスパネル9は、パネル本体6に加えて、下面7の四隅の凹所53においてコンクリート体54に埋設されて当該コンクリート体54に一方の面61で固定されていると共に金属薄板からなる四個の上皿状部材62と、コンクリート体54に埋設固定されていると共に上側摺動面8の中央部の上方を通って外面57及び58に平行であって方向Yに且つ外面57から外面58に向かう方向Xにおいて所定の間隔をもって伸びた二対の仮固定用の金属製の棒状体63及び64並びに65及び66と、棒状体63及び64並びに65及び66に方向Xに並置されてコンクリート体54に埋設固定されていると共にコンクリート体54の外面57及び58に平行であって方向Yに且つ外面57から外面58に向かう方向Xにおいて所定の間隔をもって伸びた二対の金属製の連結用の棒状体67及び68並びに69及び70と、仮固定用において外面57側の棒状体63及び64並びに外面58側の棒状体65及び66並びに連結用において外面57側の棒状体67及び68並びに外面58側の棒状体69及び70の両端部71及び72の夫々に螺合固定されていると共に各端面73及び74並びに75及び76が外面55及び56において露出してコンクリート体54に埋設固定されているナット77及び78並びに79及び80とを具備している
【0031】
凹所53の夫々に配された上皿状部材62は、所望の曲率半径を有する上に凸の凸球面状の一方の面61と、面61に相補的であって面61と同一の曲率半径を有する凹球面状の他方の面85とを有しており、上側摺動面8は、上皿状部材62の夫々の他方の面85からなっている。
【0032】
凹球面状の下側摺動面4と凹球面状の上側摺動面8とは、同一の曲率半径を有している。
【0033】
摺動部材としての機能を発揮する介在部材12は、平面視円形状を呈する鋼等の金属材料から形成された扁平状の摺動基体91と、摺動基体91の下面の円形状凹部92に一部が埋設されて摺動基体91に固定されていると共に下に凸の凸球面状の摺動下面10を下面に有した合成樹脂製の摺動体93と、摺動基体91の上面の円形状凹部94に一部が埋設されて摺動基体91に固定されていると共に上に凸の凸球面状の摺動上面11を上面に有した合成樹脂製の摺動体95とを具備している。
【0034】
摺動面となる摺動体93及び95の夫々の摺動下面10及び摺動上面11は、対面する凹球面状の下側摺動面4及び上側摺動面8の曲率半径と同一の曲率半径を有しており、対面する凹球面状の下側摺動面4及び上側摺動面8に摺動自在に接触している。
【0035】
以下、上記の免震床1の製造方法を説明する。
【0036】
基台5は、例えば、工場において、一対の長辺側の枠及び一対の短辺側の枠並びに底枠を有した長方形状の型枠を組立てる工程と、凸球面状の一方の面31及び凹球面状の下側摺動面4となる他方の面45を備えた金属薄板からなる下皿状部材32を、この型枠の底枠の四隅に他方の面45を下向きにして配置する工程と、型枠の長辺側の枠及び短辺側の枠に平行に複数本の鉄筋29a及び29bを配筋する工程と、下皿状部材32の面31の中央部の上方を通って型枠の短辺側の枠に平行に且つ型枠の長辺側の枠の伸びる方向に所定の間隔をもって端部37にナット41及び42を螺合固定した金属製の仮固定用の棒状体33及び34並びに35及び36において一方の一対の棒状体33及び34を短辺側の一方の枠側に、他方の一対の棒状体35及び36を短辺側の他方の枠側にそれぞれ配置する工程と、型枠内にコンクリートを打設する工程と、打設後、コンクリートを養生して十分にコンクリートを硬化させた後、型枠を取り外す工程とを経て製造される。
【0037】
フリーアクセスパネル9は、基台5の製造方法と同様に、例えば、工場において、一対の長辺側の枠及び一対の短辺側の枠並びに底枠を有した長方形状の型枠を組立てる工程と、凸球面状の一方の面61及び凹球面状の上側摺動面8となる他方の面85を備えた金属薄板からなる上皿状部材62を、この型枠の底枠の四隅に他方の面85を下向きにして配置する工程と、型枠の長辺側の枠及び短辺側の枠に平行に複数本の鉄筋59a及び59bを配筋する工程と、上皿状部材62の面61の中央部の上方を通って型枠の短辺側の枠に平行に且つ型枠の長辺側の枠に伸びる方向に所定の間隔をもって端部71にナット77及び78を螺合固定した金属製の仮固定用の棒状体63及び64並びに65及び66において一方の一対の棒状体63及び64を短辺側の一方の枠側に、他方の一対の棒状体65及び66を短辺側の他方の枠側にそれぞれ配置する工程と、一対の棒状体63及び64並びに65及び66の夫々に並置すると共に型枠の短辺側の枠に平行に且つ型枠の長辺側の枠の伸びる方向に所定の間隔をもって端部72にナット79及び80を螺合固定した二対の金属製の連結用の棒状体67及び68並びに69及び70において一方の一対の棒状体67及び68を短辺側の一方の枠側に、他方の一対の棒状体69及び70を短辺側の他方の枠側に配置する工程と、型枠内にコンクリートを打設する工程と、打設後、コンクリートを養生して十分にコンクリートを硬化させた後、型枠を取り外す工程とを経て製造される。
【0038】
このようにして工場で製造された基台5とフリーアクセスパネル9とを、介在部材12を、その摺動下面10を下皿状部材32の下側摺動面4に、その摺動上面11を上皿状部材62の上側摺動面8に夫々接触させて、配置して基台5とフリーアクセスパネル9と介在部材12とを組立てることにより、免震床1を製造し得る。
【0039】
次にこのようにして製造された免震床1の取付現場への設置方法の一例を
図11から
図14を参照して説明する。
【0040】
設置に当たって基台5とフリーアクセスパネル9とを仮固定してユニット化するために準備する四個の仮固定金具100の夫々は、平面視長方形状をなす金属製の板体101と、板体101の長手方向の上部に形成された貫通孔102と、板体101の一方の板面103に固定されていると共に内面に雌ねじ部を有するナット104と、外面に雄ねじ部105を有すると共にナット104の雌ねじ部に雄ねじ部105で螺合して配されたボルト106と、板体101に板体101の幅方向に所定の間隔をもって形成された一対の貫通孔107と、貫通孔107よりも上方の位置で板体101の幅方向に所定の間隔をもって形成された一対の貫通孔108と、貫通孔107及び108の夫々に挿通されるボルト109及び110とを備えている。
【0041】
斯かる四個の仮固定金具100は、板体101の他方の板面111を基台本体2及びパネル本体6の外面25及び55並びに26及び56にそれぞれ接触させ、一方の一対の貫通孔107を基台本体2の外面25及び26で露出したナット41及び42の端面39及び40にそれぞれ合致させ、他方の一対の貫通孔108をパネル本体6の外面55及び56で露出したナット77及び78の端面73及び74にそれぞれ合致させ、貫通孔107及び108を挿通したボルト109及び110をナット41及び42並びに77及び78に螺合させて、コンクリ−ト体24とコンクリ−ト体54とに締結することによって、介在部材12を挟んだ基台5とフリーアクセスパネル9とを仮に相互に互いに連結固定してユニット化するようになっている。
【0042】
ユニット化された基台5、フリーアクセスパネル9及び介在部材12は、仮固定金具100の板体101の貫通孔102に固定されたワイヤロープ等の紐状体115を介して吊り上げられて取付現場へ搬送される。
【0043】
取付現場へ搬送された仮固定状態の免震床1は、床等の基礎床面121に載置され、免震床1が基礎床面121に載置された状態で、必要に応じて、仮固定金具100の板体101の一方の板面103に固定されたナット104に螺合されたボルト106の先端面122を基礎床面121に載置された金属製の敷板123に接触させ、この状態でボルト106を回転させてナット104をねじ送りして板体101によって連結固定された基台5及びフリーアクセスパネル9を上昇させ、免震床1の高さ調整を行い、高さ調整を行ったのち、基台5のコンクリート体24の下面21と基礎床面121との間の離間隙間部分に型枠を組み(図示せず)、型枠内にグラウト材124を打設し、グラウト材124の硬化期間経過後に仮固定金具100を免震床1から取り外し、これにより免震床1の基礎床面121への設置は、完了する。高さ調整が不要の場合には、グラウト材124の打設は不要となる。
【0044】
以上のように基礎床面121に設置された免震床1は、常時においては、介在部材12が下側摺動面4及び上側摺動面8のほぼ中央に位置されて、パネル本体6の上面51に設置された機械器具等の構造物(図示せず)の鉛直荷重を受け止めて、当該構造物を基礎床面121上で支承している。そして、地震動等により大きな水平力が基礎床面121及び基台5に付加されると、下側摺動面4及び上側摺動面8に対して介在部材12の摺動下面10及び摺動上面11に滑りが生じて、
図15に示すように、介在部材12が揺動されつつ基礎床面121及び基台5に対してフリーアクセスパネル9及び構造物が水平方向Hに相対的に振動される。このような振動において、介在部材12は、
図2に示すような位置に復帰しようとし、しかも、基礎床面121及び基台5の水平方向Hに移動に基づくフリーアクセスパネル9及び構造物の震動エネルギは、下側摺動面4及び上側摺動面8と摺動下面10及び摺動上面11との間の摩擦によって吸収され、減衰される。したがって、地震等の大きな水平力が基礎床面121及び基台5に付加されても、構造物が損壊されるような事態を防ぎ得る。
【0045】
免震床1は、基台5と、フリーアクセスパネル9と、下側摺動面4及び上側摺動面8間に配された介在部材12とを具備しているが、
図16及び
図17に示すように、斯かる斯かる免震床1の複数個を、方向Xにおいて互いに隣接する一方の基台本体2の外面28と他方の基台本体2の外面27とを及び一方のパネル本体6の外面58と他方のパネル本体6の外面57とを互いに接触させて、方向Xに並置し、金属製の連結板131を、当該連結板131の貫通孔を貫通すると共にナット80及び79に螺合したボルト132により、外面55及び56において一方のパネル本体6の方向Xの一方の端部と他方のパネル本体6の方向Xの他方の端部とに跨って当該一方のパネル本体6と他方のパネル本体6とに固定し、斯かる連結板131により、方向Xに並置された複数個の免震床1を連結してもよい。
【0046】
また、免震床1は、
図18に示すように、上側摺動面8に対面する下側摺動面4を方向Yに夫々二個備えていると共に夫々基台5と同等の二個の基台141及び142と、一個のフリーアクセスパネル9と、基台141及び142の夫々及び一個のフリーアクセスパネル9間の夫々に介在された介在部材12とを具備して、二個の基台141及び142で介在部材12を介して一個のフリーアクセスパネル9を支承するようにしてもよい。
【0047】
方向Xに間隔をもって並置された基台141及び142を有した免震床1によれば、重量を軽減することができると共に基台141及び142間に配線等を通すことができ、また、免震床1の設置時において、基台141及び142と基礎床面121との間の離間隙間部分へのグラウト材124の打設を容易とするばかりでなく、設置作業を簡易化させることができる。
【0048】
更に、免震床1は、
図19に示すように、下側摺動面4を備えた四個の下皿状部材32、上側摺動面8を備えた四個の上皿状部材62及び四個の介在部材12に加えて、方向Xにおいてこれら下皿状部材32及び上皿状部材62間の中央部において、下皿状部材32、上皿状部材62及び介在部材12と同様に形成された二個の下皿状部材151、上皿部材152及び介在部材153を具備していてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 免震床
2 基台本体
3 上面
4 下側摺動面
5 基台
6 パネル本体
7 下面
8 上側摺動面
9 フリーアクセスパネル
10 摺動下面
11 摺動上面
12 介在部材