特開2015-40614(P2015-40614A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2015040614-アクチュエータ 図000003
  • 特開2015040614-アクチュエータ 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-40614(P2015-40614A)
(43)【公開日】2015年3月2日
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   F16H 25/24 20060101AFI20150203BHJP
【FI】
   F16H25/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-173355(P2013-173355)
(22)【出願日】2013年8月23日
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊 栄生
【テーマコード(参考)】
3J062
【Fターム(参考)】
3J062AA60
3J062AB22
3J062AC07
3J062BA17
3J062CD22
3J062CD54
(57)【要約】
【課題】高速、高負荷で大ストロークに適用可能なアクチュエータを提供することにある。
【解決手段】少なくとも、送りネジとしてのボールネジ、送りナットとしての変換ナットおよび変換ナットと一体的に形成されているロッドを備え、回転運動を直線運動に変換するアクチュエータにおいて、ボールネジの回転運動の動力源に連結される側は、回転可能に固定され、ロッド内に配置されるボールネジの先端側は、回転と滑りの2自由度を有する支持機構でロッド内に支持される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、送りネジとしてのボールネジ、送りナットとしての変換ナットおよび変換ナットと一体的に形成されているロッドを備え、回転運動を直線運動に変換するアクチュエータにおいて、
前記ボールネジの回転運動の動力源に連結される側は、回転可能に固定され、前記ロッド内に配置される前記ボールネジの先端側は、回転と滑りの2自由度を有する支持機構で前記ロッド内に支持されることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記支持機構は、内周側に転がり軸受、外周側に滑り軸受を備え、前記ボールネジの先端部に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記支持機構を構成する前記転がり軸受は、一対のアンギュラベアリングであり、前記滑り軸受は、外周に固体潤滑剤が被覆されていることを特徴とする請求項2に記載のアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転運動を往復直線運動に変換するアクチュエータに関し、特に、高速、大ストローク、高負荷に適用可能なアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータからの回転運動を直線運動に変換するためのアクチュエータとして、例えば、特許文献1に開示されるものが知られている。特許文献1に開示されるアクチュエータは、送りネジとしてのボールネジと送りナットとしての変位部材を用い、送りネジに伝えられる回転運動を、該送りネジと係合する送りナットを介して送りネジの軸線に沿う直線運動に変換させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3899617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の第2の実施形態として例示されるアクチュエータにおいては、回転運動する送りネジは、その一端としての基端部において、電動モータとの連結部を構成する回転軸が転がり軸受を介して回転可能にフレームに支持されている。送りネジは、直線運動をする変位部材としての送りナットにネジ係合するとともに、該送りナットにその一端が連結されている筒状部材内に延在している。送りネジの他端としての先端部は、筒状部材内において自由端として配置されるか、または、摺動、回転可能な滑り軸受を介して筒状部材内に支持されている。なお、筒状部材は、その他端がフレーム端部から突出し、往復動可能にフレームに支持されている。
【0005】
送りネジとしてのボールネジの先端部が自由端としてガイドなどの支持部材なしに配置されるアクチュエータは、低速、低負荷である場合には、アクチュエータとしての機能を十分に発揮し得る。しかしながら、このようにボールネジの先端部が自由端であるアクチュエータは、送りネジの危険速度が最も低いので、速度及び負荷能力に制限がある。したがって、送りネジの回転が高速になるとともに、送りナットの往復直線運動のストロークが長くなると、ボールネジの先端部が自由端であるアクチュエータを採用することは不可能となる。
【0006】
また、特許文献1に開示されるように先端部を滑り軸受で支持した場合、上記自由端の場合と比べて、危険速度で約4倍となり、高速、大ストロークへの適用が可能となる。しかしながら、特許文献1に示されるように先端部が滑り軸受のみで支持された場合、高速になることで、筒状部材内における滑り軸受が高速回転になる。さらに、高負荷が要求される場合、ボールネジおよび支持部の直径が大きくなり、高速で回転すると、滑り軸受の周速が非常に速くなる(例えば、送りネジの回転速度が、2500rpmで、滑り軸受の外径が70mmであるとすると、周速は、約9m/secとなる)。それにより、直線のみの摺動に比べ、滑り軸受の筒状部材に対する滑り摩擦が大きくなり、滑り軸受は短い期間で磨耗してしまう。
【0007】
本発明の目的は、このような問題点に鑑みて、高速、高負荷で、大ストロークに適用可能なアクチュエータ、例えば、ストローク1.5m以上、速度1.5m/sec以上のアクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るアクチュエータは、少なくとも、送りネジとしてのボールネジ、送りナットとしての変換ナットおよび変換ナットと一体的に形成されているロッドを備え、回転運動を直線運動に変換するアクチュエータにおいて、ボールネジの回転運動の動力源に連結される側は、回転可能に固定され、ロッド内に配置されるボールネジの先端側は、回転と滑りの2自由度を有する支持機構でロッド内に支持されることを特徴とする。
【0009】
これにより、回転運動は、転がり軸受で受け持つことになるので、滑り軸受が直線方向の摺動のみとなり、摺動速度が小さくなり、滑り軸受とロッド内面との間に生ずる摩擦力が小さくなり、軸受の寿命が長くなる。
【0010】
本発明に係るアクチュエータの支持機構は、内周側に転がり軸受、外周側に滑り軸受を備え、ボールネジの先端部に取り付けられている。
【0011】
本発明に係るアクチュエータの支持機構は、また、支持機構を構成する前記転がり軸受が、一対のアンギュラベアリングであり、往復運動時の軸方向の摩擦力による負荷を受け持ち、同じく支持機構を構成する滑り軸受は、外周に固体潤滑剤が被覆されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、ロッド内に配置されるボールネジの先端側が、回転と滑りの2自由度を有する支持機構でロッド内に支持されていることで、支持部の摺動速度が小さくなり、許容速度と許容荷重を大幅に上昇させることができる。それにより、高速、高負荷であって、ストロークが大きく、メンテナンス周期の長いアクチュエータを実現させることが可能となる。
【0013】
さらに、本発明に係るアクチュエータは、高速高負荷での適用が可能となることで、例えば、ドライビングシミュレータの駆動用アクチュエータとして利用可能となり、それにより、高性能のドライビングシミュレータの実現が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るアクチュエータの断面図である。
図2】本発明に係るアクチュエータを構成する送りネジ先端部の支持構造を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1及び2を用いて本発明に係るアクチュエータの好ましい実施形態について説明する。
【0016】
本実施形態において、回転運動を直線運動に変換するアクチュエータ1は、概略、ボールネジ2、シリンダ3、変換ナット4及びロッド5を備えている。ボールネジ2、シリンダ3、変換ナット4及びロッド5は、同じ中心軸O−Oを有し、垂直断面で同心円状に配置される。
【0017】
アクチュエータ1を構成する送りネジとしてのボールネジ2は、電動モータのような動力源(不図示)から提供される、中心軸O−O回りに回転する回転運動を伝動する部材である。ボールネジ2は、基端部としての一端を電動モータに直接または間接的に連結される連結部6、螺旋状のネジ溝が切られた本体部8および先端部としての他端に小径部9を備えている。ボールネジ2の基端部である連結部6において、ボールネジ2は、これに限定されるものではないが、転がり軸受としての一対のアンギュラベアリングを介して、シリンダ3に対して回転可能に支持される。ボールネジ2の先端部である小径部9において、ボールネジ2は、後述する支持機構20を介してシリンダ5の内面52に対して回転可能にかつ滑り可能に支持される。このような構成から理解されるように、本実施形態では、ボールネジ2は、中心軸O−Oの回りに回転運動するように構成されているだけであって、中心軸O−Oに沿って移動するようには構成されていない。
【0018】
シリンダ3は、円筒状の金属性ケースであって、該シリンダ3内を後述する送りナットとしての変換ナット4が往復移動する。シリンダ3は、基端部としての一端部において、ボールベアリング(転がり軸受)7を介してボールネジ2を回転可能に支持している。シリンダ3は、また、末端部としての他端部において、滑り軸受32を介して、後述するアクチュエータ1を構成する変位部材としてのロッド5を軸方向に往復動可能に支持する。
【0019】
アクチュエータ1を構成する送りナットとしての変換ナット4は、ボールネジ2の回転運動を直線運動に変換する部材であって、本実施形態では、ボール(不図示)を介してボールネジ2に係合し、該ボールネジ2に回転可能に取り付けられている。変換ナット4は、また、ボールネジ2が回転することで、ナットガイド51を介してシリンダ3内を往復動可能に、シリンダ3内に配置される。
【0020】
ロッド5は、変換ナット4により変換された直線運動を伝動する部材であって、変換ナット4とともに往復移動をする変位部材を構成している。ロッド5は、また、シリンダ3に対して入れ子式に伸縮するように、シリンダ3内に同心状に嵌め込まれている。ロッド5は、チューブ状部材であって、ロッド5の基端側は、ナットガイド51に結合されるように、ナットガイド51と一体的に形成される。ロッド5の末端(先端)側は、シリンダ3から突出し、例えば、ピボット等を介して、ドライビングシミュレータの操作台(コックピット)などに連結され、操作台を駆動する。
【0021】
ロッド5は、上述したように、シリンダ3の他端において滑り軸受32を介して往復動可能にシリンダ3に支持されるとともに、ボールネジ2の先端部を、支持機構20を介して、ロッド5の内面52において、回転可能にかつ往復動可能に支持している。
【0022】
本発明の特徴点である支持機構20は、図2に示されるように、ボールネジ2の先端部に形成された小径部9に取り付けられている。
【0023】
支持機構20は、回転と滑りの2自由度を有するように構成された支持機構であって、本実施形態では、滑り軸受兼ベアリング外輪押さえ21、転がり軸受22、一対のベアリング内輪押さえ23、24、ベアリング外輪押さえ25、固定用ボルト26およびロックナット27を備えている。
【0024】
滑り軸受兼ベアリング外輪押さえ21は、金属製であり、ロッド5の内面52に接する外周表面は、自己潤滑性のある固体材料としての固体潤滑剤、例えば、「ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン共重合体樹脂、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体樹脂、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体樹脂、ポリビニリデンフルオライド樹脂、ポリビニルフルオライド樹脂、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂」などのフッ素系樹脂、ポリイミド樹脂(PI)、ポリアミド6樹脂(PA6)、ポリアミドイミド樹脂(PAI)、ピーク樹脂(PEEK)などの合成樹脂が被覆される。さらに、外周表面に溝などを設けて、グリースなどの潤滑剤を適用することで滑り軸受としての機能を向上させることができる。滑り軸受兼ベアリング外輪押さえ21は、ボールネジ2(小径部9)との間に配置される転がり軸受22による転がり摩擦がロッド5との間に配置される滑り軸受21の滑り摩擦より十分に小さい。したがって、滑り軸受兼ベアリング外輪押さえ21は、ロッド5の内面52に対して回転することがなく、中心軸O−Oに沿って往復方向に摺動し、滑り軸受としてのみ機能する。
【0025】
転がり軸受22は、これに限定されるものではないが、本実施形態では、一対のアンギュラベアリングで構成されている。転がり軸受22は、図2に示されるように、滑り軸受兼ベアリング外輪押さえ21、ベアリング外輪押さえ25により転がり軸受22のベアリング外輪が挟み込まれ、固定用ボルト26を用いて一体的に形成される。これにより、内周側に転がり軸受、外周側に滑り軸受を備える、環状の滑り軸受兼転がり軸受が形成される。環状の滑り軸受兼転がり軸受が、さらに、一対のベアリング内輪押さえ23、24およびロックナット27を用いて転がり軸受22のベアリング内輪がボールネジ22の先端小径部9に一体的に固定される。それにより、環状の滑り軸受兼転がり軸受は、ボールネジ2の小径部9に軸方向に位置決めされるとともに、ボールネジ2の先端をロッド5に対して回転と滑りの2自由度を有するように支持することができる。
【0026】
本発明は、上述したように、送りネジとしてボールネジを使用したサーボアクチュエータにおいて、送りナットとしての変換ナットに一体的に形成されたロッドの内面を利用してボールネジの先端に回転と滑りの2自由度を有する支持機構を備えている。このように回転運動を伝動するボールネジの取り付け方式が、基端部が従来と同様に固定されるとともに、末端部が回転と滑りの2自由度を有する支持機構で支持されることで、許容速度と許容荷重を大幅に上昇させることができる。それにより、高速、高負荷であってストロークが大きく、メンテナンス周期の長いアクチュエータを実現させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明に係るアクチュエータは、高速、高負荷、大ストロークでの適用が可能となることで、例えば、ドライビングシミュレータの駆動用アクチュエータとして利用可能となり、結果として、高性能のドライビングシミュレータの実現が可能となる。
【符号の説明】
【0028】
1 アクチュエータ
2 ボールネジ(送りネジ)
3 シリンダ
4 変換ナット(送りナット)
5 ロッド
9 (変換ナットの)先端部(小径部)
20 支持機構
21 滑り軸受(兼ベアリング外輪押さえ)
22 転がり軸受
23 ベアリング内輪押さえ
24 ベアリング内輪押さえ
25 ベアリング外輪押さえ
26 固定用ボルト
27 ロックナット
図1
図2