【解決手段】増倍率MがM=1となるPDモードでAPD12が動作する第1のバイアス電圧をAPD12に供給し、APD12から出力される第1の光電流を検出する。前記増倍率MがM>1となるAPDモードでAPD12が動作する第2のバイアス電圧をAPD12に供給し、APD12から出力される第2の光電流を検出する。第1の光電流と第2の光電流との比に基づいてレーザダイオード11の温度を検出する。検出されたレーザダイオード11の温度に対応する駆動電流を前記レーザダイオードに供給する。
前記第1の光電流を検出するステップ及び前記第2の光電流を検出するステップにおいて、前記レーザダイオードは、一定の電流が供給されるようにバイアスされる、請求項1又は2に記載の発光モジュールの制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に本願発明の実施形態の内容を列記して説明する。
【0011】
一実施形態に係る発光モジュールの制御方法は、レーザダイオードと、レーザダイオードの光出力の強度を検出するアバランシェフォトダイオードと、を備える発光モジュールの制御方法であって、増倍率Mが所定値となる第1の動作モードでアバランシェフォトダイオードが動作する第1のバイアス電圧をアバランシェフォトダイオードに供給し、アバランシェフォトダイオードから出力される第1の光電流を検出するステップと、増倍率Mが所定値より大きい第2の動作モードでアバランシェフォトダイオードが動作する第2のバイアス電圧をアバランシェフォトダイオードに供給し、アバランシェフォトダイオードから出力される第2の光電流を検出するステップと、第1の光電流と第2の光電流との比に基づいてレーザダイオードの温度を検出するステップと、検出されたレーザダイオードの温度に対応する駆動電流をレーザダイオードに供給するステップと、を含む。
【0012】
上記の発光モジュールの制御方法では、アバランシェフォトダイオードに第1のバイアス電圧を供給した時の第1の光電流と、アバランシェフォトダイオードに第2のバイアス電流を供給した時の第2の光電流とが検出され、これらの比が算出される。アバランシェフォトダイオードに第1のバイアス電圧を供給した時には、アバランシェフォトダイオードは、増倍率Mが所定値となる第1の動作モードで動作する。アバランシェフォトダイオードに第2のバイアス電圧を供給した時には、アバランシェフォトダイオードは、増倍率Mが所定値より大きい第2の動作モードで動作する。したがって、第1の光電流と、第2の光電流と、の比をとることにより、アバランシェフォトダイオードの増倍率Mが計算される。このアバランシェフォトダイオードの増倍率Mは、温度に強く依存する。したがって、第1の光電流と第2の光電流との比を用いれば、レーザダイオードの温度を検出することができる。ここで、上記発光モジュールでは、アバランシェフォトダイオードは、レーザダイオードの光出力の強度を検出するためのデバイスとしても機能する。光出力の強度を検出するためのデバイスは、通常の発光モジュールにも搭載されるものであり、当該デバイスの出力を発光モジュールの外部に引き出すためのリードピンも設けられている。したがって、上記の発光モジュールの制御方法によれば、通常の発光モジュールにも設けられているリードピンを用いてレーザダイオードの温度を検出することができるため、新たなリードピンを設けることなく発光モジュールの内部の温度を検出することができる。
【0013】
さらに、上記の発光モジュールの制御方法では、第1及び第2の光電流のどちらを検出する場合であっても、あるバイアス電圧をアバランシェフォトダイオードに供給し、アバランシェフォトダイオードから出力される光電流を検出するという構成は共通である。したがって、第1及び第2の光電流を検出するためのどちらの回路構成も、アバランシェフォトダイオードに電圧を供給する可変電圧出力回路と、アバランシェフォトダイオードからの光電流を検出する電流検出回路という、実質的に同様な回路構成とすることができる。したがって、上記の発光モジュールの制御方法によれば、簡易な回路構成により発光モジュールの内部の温度を検出することができる。
【0014】
一実施形態において、レーザダイオードは、電界吸収型変調器とともに光集積素子として一体に集積されており、光集積素子は、温度制御素子上に搭載されており、第1の光電流と第2の光電流との比に基づいて温度制御素子の温度を制御してもよい。
【0015】
電界吸収型変調器に供給されるバイアス電圧に対する光吸収特性は、温度に対して非常に敏感である。小さな変調電圧で光出力を効率的に変調するためには、電界吸収型変調器の温度を精度よく検出し、バイアス電圧を最適値に保つ必要がある。上述の構成の場合には、レーザダイオード及び電界吸収型変調器が同一の光集積素子上に一体に集積され、この光集積素子が温度制御素子上に搭載されている。したがって、アバランシェフォトダイオードから出力される第1の光電流と第2の光電流との比に基づいて発光モジュールの内部の温度を検出し、検出された温度に応じて、温度制御素子により、電界吸収型変調器の温度を制御することができる。このため、上記の構成によれば、発光モジュールの内部の温度を検出することにより、電界吸収型変調器の温度を精度よく検出してその温度を制御することができ、電界吸収型変調器を小さな変調電圧で効率的に変調することができる。
【0016】
一実施形態において、第1の光電流を検出するステップ及び第2の光電流を検出するステップにおいて、レーザダイオードは、一定の電流が供給されるようにバイアスされてもよい。この場合には、第1の光電流を検出するステップと、第2の光電流を検出するステップとの間で、レーザダイオードの光出力及び動作温度の変動が実質的にないとみなせるようになるため、第1の光電流と第2の光電流とが、光入力が等しいという条件下で検出されたとみなせるようになる。このため、上記の構成によれば、第1の光電流と第2の光電流との比から、より正確に発光モジュールの内部の温度を計算することができる。
【0017】
[本願発明の実施形態の詳細]
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
(第1実施形態)
図1を参照して、第1実施形態に係る発光モジュールの制御方法について説明する。
図1は、第1実施形態に係る制御方法により制御される光送信器の構成を示す回路図である。光送信器1Aは、発光モジュール10Aを備える。発光モジュール10Aは、レーザダイオード(LD:Laser Diode)11及びアバランシェフォトダイオード(APD:Avalanche PhotoDiode)12を備える。本実施形態の発光モジュール10Aは、直接変調方式に対応している。すなわち、レーザダイオード11にはバイアス電流及び変調電流が供給され、これによりレーザダイオード11の出力光Loutは、直接変調される。
【0019】
レーザダイオード11は、供給された電流に応じて出力光Loutを出射する。出力光Loutは、不図示の光ファイバを介して、光送信器1Aからの送信光として出射される。また、レーザダイオード11は、出力光Loutを出射すると同時に、モニタ光Lmonを出射する。レーザダイオード11の発光波長は、例えば1.3μmである。また、例えばレーザダイオード11の温度を変更することにより、レーザダイオード11の発光波長が可変となっていてもよい。
【0020】
APD12は、レーザダイオード11により出射されたモニタ光Lmonを受光し、受光したモニタ光Lmonに応じた光電流を発生させる。この光電流に応じて、不図示のAPC(Automatic Power Control)制御回路は、レーザダイオード11による出力光Loutの発光強度及び消光比を一定に保つように、レーザダイオード11に供給される電流を制御する。後で詳述するように、本実施形態では、APD12は、レーザダイオード11の温度を検出するための素子としても用いられる。
【0021】
レーザダイオード11及びAPD12は、例えば1つのCANパッケージ内に封入され、互いに近接するように配置されている。したがって、レーザダイオード11の温度とAPD12の温度とは、ほぼ等しいとみなせる。
【0022】
レーザダイオード11には、電流源21が接続されている。電流源21は、LDバイアス制御回路22により決定されたバイアス電流及び変調電流をレーザダイオード11に供給する。LDバイアス制御回路22は、後述するAPD温度検出回路34から出力された温度信号に応じてバイアス電流及び変調電流を決定する。
【0023】
APD12には、可変電圧源31及び電流検出回路32が直列に接続されている。可変電圧源31は、APDバイアス制御回路33から出力されたAPDバイアス信号に応じたバイアス電圧をAPD12に印加する。APDバイアス信号は、以下のPDモード信号とAPDモード信号とを含む。PDモード信号は、増倍率Mが所定値(例えば、M=1)となるPDモード(第1の動作モード)となるような逆バイアス電圧をAPD12に印加することを可変電圧源31に指示する。APDモード信号は、増倍率Mが所定値より大きい(例えばM>1)となるAPDモード(第2の動作モード)となるような逆バイアス電圧をAPD12に印加することを可変電圧源31に指示する。可変電圧源31は、例えば0Vから30Vの範囲の電圧を出力することができる。電流検出回路32は、APD12が発生した光電流を検出する。
【0024】
電流検出回路32により検出された光電流の大きさを示すAPD電流信号と、APDバイアス制御回路33により出力されたAPDバイアス信号は、APD温度検出回路34に送出される。APD温度検出回路34は、電流検出回路32からのAPD電流信号と、APDバイアス制御回路33からのAPDバイアス信号とに基づき、後述する方法によってAPD12の温度を検出する。APD温度検出回路34は、検出されたAPD12の温度を示す温度信号をLDバイアス制御回路22に出力する。APD温度検出回路は、APD12の温度と、APD12の増倍率Mとの関係を、例えばROM(Read Only Memory)等に保持している。
【0025】
ここで、可変電圧源31、電流検出回路32、APDバイアス制御回路33及びAPD温度検出回路34を用いてAPD12の温度を検出する方法の原理について説明する。
【0026】
図2は、APDのバイアス電流と増倍率との関係を示すグラフである。
図2の横軸は、APDに印加される逆バイアス電圧VR(単位:V)を示す。
図2の縦軸は、増倍率Mを示す。増倍率Mは、1個の入射フォトンに対して、光電流として出力される電子・正孔対の数を示す値である。
図2の実線の曲線及び破線の曲線は、それぞれ温度が25℃及び85℃のそれぞれの場合におけるAPDの増倍率を示す。
【0027】
図2に示されるように、25℃及び85℃のいずれにおいても、逆バイアス電圧VRが約6Vの場合、増倍率Mはほぼ1である。増倍率Mがほぼ1であることは、逆バイアス電圧VRが小さいことにより、増倍作用が生じていないため、1個の入射フォトンに対して1対の電子・正孔対だけが光電流として取り出されていることを示す。
【0028】
逆バイアス電圧VRが約6Vから約13Vの場合、25℃及び85℃のいずれにおいても、逆バイアス電圧VRの増加に応じて、増倍率Mは、ゆるやかに上昇する。逆バイアス電圧VRを増加させていくと、逆バイアス電圧VRが約13Vのときに、25℃及び85℃のいずれにおいても、増倍率Mは階段状に急増する。さらに逆バイアス電圧VRを増加させていくと、増倍率Mはさらに増加する。逆バイアス電圧VRが約13V以上の領域においては、25℃での増倍率Mは、85℃での増倍率Mよりも大きくなっている。25℃では、逆バイアス電圧VRが約26Vのときに増倍率Mは最大値70をとり、以後、逆バイアス電圧VRの増加に伴って増倍率Mは減少する。85℃では、逆バイアス電圧VRが約29Vのときに増倍率Mは最大値70をとり、以後、逆バイアス電圧VRの増加に伴って増倍率Mは減少する。
【0029】
図3は、APDの温度と増倍率との関係を示すグラフである。横軸は温度(単位:℃)を示す。縦軸は増倍率Mを示す。実線のグラフは、逆バイアス電圧VRが25Vの場合の増倍率Mを示す。破線のグラフは、逆バイアス電圧VRが8Vの場合の増倍率Mを示す。
図3のグラフは、逆バイアス電圧VRが8V及び25Vのそれぞれにおいて、温度を−40℃、0℃、25℃、及び85℃の4種類の温度で増倍率Mを実測することにより得られたものである。破線のグラフで示されるように、逆バイアス電圧VRが8Vの時は、増倍率は、全温度範囲でほぼ1である。逆バイアス電圧VRが25Vの時は、増倍率Mは、−40℃のとき約16、0℃のとき約11、25℃のとき約8、85℃のとき約5であり、温度の増加に応じて減少している。この
図3から、逆バイアス電圧VRが25Vの時の増倍率Mに基づいてAPD12の温度を推定することができることが分かる。すなわち、APD12の増倍率を検出し、検出された増倍率に対応する温度を算出することにより、APD12の温度を推定することができる。
【0030】
上述したAPDの温度と増倍率との関係を踏まえて、以下、
図4を参照して、本実施形態の発光モジュール10Aの制御方法について説明する。
図4は、発光モジュール10Aの制御方法を示すフローチャートである。
【0031】
まず、APDバイアス制御回路33が可変電圧源31を制御し、可変電圧源31が、増倍率MがM>1となるAPDモードでAPD12が動作する第1のバイアス電圧を、APD12に逆バイアス電圧として印加する。第1のバイアス電圧は、例えば8Vである。そして、電流検出回路32が、逆バイアス電圧が8Vのときの光電流(第1の光電流)を検出し、検出結果をAPD電流信号としてAPD温度検出回路34に出力する(ステップS11)。
【0032】
次に、APDバイアス制御回路33が可変電圧源31を制御し、可変電圧源31が、増倍率MがM=1となるPDモードでAPD12が動作する第2のバイアス電圧を、APD12に逆バイアス電圧として印加する。第2のバイアス電圧は、例えば25Vである。そして、電流検出回路32が、APD12の逆バイアス電圧が25Vのときの光電流(第2の光電流)を検出し、検出結果をAPD電流信号としてAPD温度検出回路34に出力する(ステップS12)。
【0033】
次に、APD温度検出回路34が、APD12の逆バイアス電圧VRが25Vのときの光電流と、APD12の逆バイアス電圧が8Vのときの光電流との比を計算し、この比に基づいてAPD12の温度を検出する(ステップS13)。
図3に示されるように、逆バイアス電圧が8Vのときの増倍率はほぼ1である。したがって、APD12の逆バイアス電圧が25Vのときの光電流と、APD12の逆バイアス電圧が8Vのときの光電流との比は、APD12の逆バイアス電圧が25Vのときの増倍率にほぼ等しい。
【0034】
ここで、APD温度検出回路34は、APD12の温度と、APD12の増倍率との関係を、例えばROM等にデータとして保持している。APD温度検出回路34は、ROMに保持されたデータと、逆バイアス電圧が25Vのときと8Vのときの光電流の比とを照合し、逆バイアス電圧が25Vのときと8Vのときの光電流の比に最も近い増倍率のデータに対応する温度をROMから読み出すことにより、APD12の温度を検出することができる。また、前述したように、レーザダイオード11とAPD12とは、互いに近接するように配置されているため、レーザダイオード11の温度はAPD12の温度とほぼ等しい。従って、上記のステップS13により、レーザダイオード11の温度が検出される。
【0035】
なお、上記ステップS11及びS13において、レーザダイオード11は、一定の電流が供給されるようにバイアスされる。これにより、一連のステップの実行の際におけるモニタ光Lmonの強度の変動、並びにレーザダイオード11及びAPD12の温度の変動がほぼないものとみなすことができる。
【0036】
ステップS13の実行後に、APD温度検出回路34は、ステップS13で検出されたレーザダイオード11の温度を表す温度信号を、LDバイアス制御回路22に出力する。LDバイアス制御回路22は、APD温度検出回路34から出力された温度信号に基づいて、レーザダイオード11の温度に対応する駆動電流をレーザダイオード11に供給するように、電流源21を制御する(ステップS14)。
【0037】
なお、上述したレーザダイオード11の温度を検出する制御を行うタイミングは、任意のタイミングとすることができる。一例としては、レーザダイオード11の発光波長をある値に設定した後、最初にAPD12によりレーザダイオード11の温度を検出し、その後、一定のタイミングでAPD12によりレーザダイオード11の温度を検出することを繰り返すようにしてもよい。この場合、基本的には常時APD12によりレーザダイオード11のモニタ光Lmonの強度の検出を行いつつ、レーザダイオード11の温度を検出するタイミングでのみ、APD12によりレーザダイオード11のモニタ光Lmonの強度の検出を止めるといった制御を行うことが考えられる。
【0038】
以上で説明した第1実施形態に係る発光モジュール10Aの制御方法によれば、光増倍が行われていない第1の光電流と、光増倍が行われている第2の光電流と、の比をとることにより、APD12の増倍率Mが計算される。このAPDの増倍率Mは、温度に強く依存する。したがって、第1の光電流と第2の光電流との比を用いることにより、レーザダイオード11の温度が検出されることができる。ここで、発光モジュール10Aでは、APD12は、レーザダイオード11の出力光Loutの強度を検出するためのデバイスとしても機能する。光出力の強度を検出するためのデバイスは、通常の発光モジュールにも搭載されるものであり、当該デバイスの出力を発光モジュールの外部に引き出すためのリードピンも設けられている。したがって、発光モジュール10Aの制御方法によれば、通常の発光モジュールにも設けられているリードピンを用いてレーザダイオード11の温度を検出することができるため、新たなリードピンを設けることなく発光モジュール10Aの内部の温度を検出することができる。
【0039】
なお、レーザダイオード11からのモニタ光Lmonの強度をモニタするための一般的なダイオードに順方向の一定の電流を供給し、このときにダイオードに発生する順方向電圧の温度依存性を利用してレーザダイオード11の温度を検出することも考えられる。しかし、この場合には、上述のダイオードの順方向電圧の温度依存性は小さいため、環境温度や動作温度の大雑把な見積もりは可能であるとしても、例えば、WDM(Wavelength Division Multiplexing、波長分割多重)等の変調方式を用いるためにレーザダイオード11の発振波長が高い精度で求められる場合には、このような温度検出方法ではレーザダイオード11の温度及び発振波長を高い精度で制御することはできない。これに対し、本実施形態の発光モジュール10Aの制御方法によれば、
図3からも分かるように、APD12の大きな温度依存性を利用してレーザダイオード11の温度を検出することができるため、レーザダイオード11の温度を高い精度で制御することができる。
【0040】
さらに、上記の発光モジュール10Aの制御方法では、第1及び第2の光電流のどちらを検出する場合であっても、可変電圧源31があるバイアス電圧をAPD12に供給し、電流検出回路32がAPD12から出力される光電流を検出するという構成は共通である。したがって、第1及び第2の光電流を検出するためのどちらの回路構成も、APDに供給する電圧を与える可変電圧出力回路と、APDからの光電流を検出する電流検出回路という、実質的に同様な回路構成とすることができる。したがって、上記の発光モジュールの制御方法によれば、簡易な回路構成により発光モジュールの内部の温度を検出することができる。
【0041】
また、第1の光電流を検出するステップS11及び第2の光電流を検出するステップS12において、レーザダイオード11は、一定の電流が供給されるようにバイアスされる。このため、第1の光電流を検出するステップと、第2の光電流を検出するステップとの間で、レーザダイオード11の光出力及び動作温度の変動が実質的にないとみなせる。したがって、第1の光電流と第2の光電流とが、光入力が等しいという条件下で検出されたとみなせる。このため、第1の光電流と第2の光電流との比から、より正確に発光モジュール10Aの内部の温度を計算することができる。
【0042】
(第2実施形態)
図5を参照して、第2実施形態に係る発光モジュールの制御方法について説明する。
図5は、第2実施形態に係る光送信器の構成を示す回路図である。
【0043】
光送受信器1Bは、発光モジュール10Bを備える。発光モジュール10Bは、レーザダイオード11、APD12及びEA(Electro-Absorption)変調器13(電界吸収型変調器)を備える。本実施形態の発光モジュール10Bは、外部変調方式に対応している。すなわち、レーザダイオード11には直流のバイアス電流が供給され、レーザダイオード11は直流光を出射する。EA変調器13は、レーザダイオード11により出射された直流光を、外部から入力された変調信号に応じて変調して出力光Loutとし、この出力光Loutを発光モジュール10Bの外部に出射する。
【0044】
レーザダイオード11は、EA変調器13とともに光集積素子14として、一の半導体基板上に一体に集積されている。そして、光集積素子14とAPD12とは、例えば1つのCANパッケージ内に封入され、互いに近接するように配置されている。したがって、レーザダイオード11の温度、APD12の温度及びEA変調器13の温度は、ほぼ等しいとみなせる。
【0045】
レーザダイオード11には、可変電圧源23が接続されている。可変電圧源23は、LDバイアス制御回路22により決定されたバイアス電圧をレーザダイオード11に供給する。LDバイアス制御回路22は、後述するAPD温度検出回路34から出力された温度信号に応じて、レーザダイオード11のバイアス電圧を決定する。LDバイアス制御回路22は、APD温度検出回路34から出力された温度信号に応じてバイアス電圧を決定し、このバイアス電圧を可変電圧源23がレーザダイオード11に供給するように、可変電圧源23を制御する。
【0046】
EA変調器13には、コイルL1及びL2を介してバイアス電流源41が接続されるとともに、コンデンサC1及びC2を介して交流電圧源43が接続されている。コイルL1及びL2は、バイアス電流源41とEA変調器13とを直流的に接続するとともに、高周波成分を遮断するための素子である。コンデンサC1及びコンデンサC2は、交流電圧源43から出力される電圧の高周波電圧成分をEA変調器13に印加させるとともに、直流電圧成分を遮断するための素子である。
【0047】
発光モジュール10Bは、さらにペルチェ素子15(温度制御素子)を備える。ペルチェ素子15には、電流源16が接続されている。電流源16は、ペルチェ素子制御回路17により決定された電流をペルチェ素子15に供給する。ペルチェ素子制御回路17は、APD温度検出回路34から出力された温度信号に応じて電流を決定する。ペルチェ素子制御回路17は、この電流を電流源16がペルチェ素子15に供給するように、電流源16を制御する。
【0048】
バイアス電流源41には、EAバイアス制御回路42が接続されている。EAバイアス制御回路42は、APD温度検出回路34から出力された温度信号に応じてEA変調器13のバイアス電流を決定する。バイアス電流源41は、EAバイアス制御回路42により決定されたバイアス電流をEA変調器13に供給する。
【0049】
交流電圧源43には、EA変調振幅制御回路44が接続されている。EA変調振幅制御回路44は、APD温度検出回路34から出力された温度信号に応じてEA変調器13の変調振幅を決定する。交流電圧源43は、EA変調振幅制御回路44により決定された変調振幅の交流電圧をEA変調器13に供給する。
【0050】
APD12、可変電圧源31、電流検出回路32、APDバイアス制御回路33及びAPD温度検出回路34の各部の構成と、これらの各部の相互間の接続関係は、第1実施形態の発光モジュール10Aの場合と概ね同様である。ただし、APD温度検出回路34は、検出されたAPD12の温度を示す温度信号をペルチェ素子制御回路17、LDバイアス制御回路22、EAバイアス制御回路42及びEA変調振幅制御回路44に出力する点で、発光モジュール10Aの場合と異なっている。
【0051】
図6は、第2実施形態に係る発光モジュール10Bの構成を示す模式図である。前述したように、レーザダイオード11及びEA変調器13は、光集積素子14として、一体に集積されている。この光集積素子と、APD12とが、ペルチェ素子15上に搭載されている。この構成により、ペルチェ素子15は、ペルチェ素子15上に搭載されたレーザダイオード11、APD12及びEA変調器13の温度を制御する。
【0052】
第2実施形態に係る発光モジュール10Bの制御方法は、第1実施形態に係る発光モジュール10Aの制御方法とほぼ同様である。
【0053】
さらに、第2実施形態に係る発光モジュール10Bの制御方法では、上述した第1の光電流と第2の光電流との比に基づいて、ペルチェ素子15の温度を制御する。具体的には、第1実施形態と同様の方法により、第1の光電流と第2の光電流との比に基づいて、APDバイアス制御回路33がAPD12の温度を求める。この求められたAPD12の温度に基づいて、ペルチェ素子制御回路17が電流値を決定し、電流源16がこの決定された電流値の電流をペルチェ素子15に供給することにより、ペルチェ素子15の温度を制御する。
【0054】
以上で説明した第2実施形態に係る発光モジュール10Bの制御方法によっても、第1実施形態に係る発光モジュール10Aの制御方法と同様の作用効果が得られる。
【0055】
さらに、本実施形態のレーザダイオード11は、EA変調器13とともに光集積素子14として一体に集積されており、光集積素子14は、ペルチェ素子15上に搭載されており、第1の光電流と第2の光電流との比に基づいてペルチェ素子15の温度を制御している。
【0056】
EA変調器13に供給されるバイアス電圧に対する光吸収特性は、温度に対して非常に敏感である。また、EA変調器13のバイアス電圧は、精密に制御される必要がある。この点について、
図7を参照して説明する。
【0057】
図7は、EA変調器13における波長と吸収係数との関係を示すグラフである。横軸は、光の波長を示す。縦軸は、吸収係数αを示す。曲線α(V1,T1),α(V2,T1),α(V1,T2),α(V2,T2)は、それぞれ、バイアス電圧がV1で温度がT1のときの吸収係数α、バイアス電圧がV2で温度がT1のときの吸収係数α、バイアス電圧がV1で温度がT2のときの吸収係数α、バイアス電圧がV2で温度がT2のときの吸収係数αを示す。
【0058】
曲線α(V1,T1)は、バイアス電圧がV1で温度がT1のときのバンドギャップエネルギーEgに対応する波長λ
Eg(V1,T1)から立ち上がり、短波長側に向かって急激に増加し、さらに短波長側に向かうと、波長の減少に対してゆるやかに増加するような曲線を描く。曲線α(V2,T1)は、同様に波長λ
Eg(V2,T1)から立ち上がり、短波長側に向かって急激に増加し、さらに短波長側に向かうと、波長の減少に対してゆるやかに増加するような曲線を描く。曲線α(V1,T1)及びα(V2,T1)は、波長方向に略平行移動された関係にある。
【0059】
波長λの位置に破線で示される直線Lλに注目すると、曲線α(V1,T1)と直線Lλとは交差していない。このことは、EA変調器13のバイアス電圧をV1とすれば、EA変調器13は波長λの光をほとんど吸収しないことを示している。また、曲線α(V2,T1)と直線Lλとは、点(λ,α(V2,T1,λ))で交差している。α(V2,T1,λ)は、曲線α(V2,T1)の最大値に近い。このことは、EA変調器13のバイアス電圧をV2とすれば、EA変調器13は波長λの光をよく吸収することを示している。
【0060】
したがって、波長λの光については、EA変調器13のバイアス電圧をV1とV2の2通りに切り替えることで、光を小さな変調信号によって効率よく変調することができる。仮に電圧V1又は電圧V2が変化すれば、
図7に示される波長−吸収係数曲線が波長方向にシフトすることにより、波長λの光の吸収量が過剰となったり不足したりするため、変調を効率よく行うことができなくなる。
【0061】
ここで、温度がT2になると、曲線α(V1,T1)及び曲線α(V2,T1)は波長軸上において大きくシフトして曲線α(V1,T2)及び曲線α(V2,T2)にそれぞれ移動する。このように、EA変調器13の吸収係数αは、温度に対して敏感に変化する。したがって、温度T2において波長λの光をうまく変調するには、EA変調器13のバイアス電圧を調整することにより、曲線α(V1,T2)及び曲線α(V2,T2)をそれぞれ曲線α(V1,T1)及びα(V2,T1)の位置まで移動させる必要がある。
【0062】
このように、EA変調器13のバイアス電圧の設定にあたっては、温度を精密に知ることが重要である。ここで、本実施形態の発光モジュール10Bの制御方法によれば、レーザダイオード11及びEA変調器13が同一の光集積素子14上に一体に集積され、光集積素子14がペルチェ素子15上に搭載されている。したがって、APD12から出力される第1の光電流と第2の光電流との比に基づいて発光モジュール10B内部の温度を検出し、検出された温度に応じてペルチェ素子15によりEA変調器13の温度を制御することができる。このため、EA変調器13の温度を精度よく検出してその温度を制御することができ、EA変調器13を小さな変調電圧で効率的に変調することができる。
【0063】
以上、本発明に係る好適な実施形態について図示し説明してきたが、本発明は上述した特定の実施形態に限定されるものではない。すなわち、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形及び変更が可能であることは、当業者によって容易に認識される。
【0064】
例えば、
図4に示されるステップS11とステップS12とを交互に繰り返し、2回のステップS11で検出されたそれぞれの第1の光電流の間の差が一定の閾値を下回った後にステップS13及びステップS14を行うようにしてもよい。これは、例えば、レーザダイオード11をある波長で発振させ始めた直後など、レーザダイオード11からのモニタ光Lmonの強度が安定していない場合に特に有効である。