【課題】金属製中空部材の内側の補強すべき空間に、高い比率での強化繊維を有した補強金属製中空部材、及び、金属製中空部材の内面の繊維強化プラスチックによる補強方法を提供する。
【解決手段】補強金属製中空部材1は、(i)1本以上の連続した繊維強化プラスチック線材4と、(ii)繊維強化プラスチック線材4と混合された複数本の連続した第2の強化繊維f2と、(iii)第2の強化繊維f2に含浸され、繊維強化プラスチック線材4と第2の強化繊維f2とを接着し硬化した接着樹脂R2と、を含む繊維強化プラスチック補強体3と、を有し、繊維強化プラスチック補強体3は、接着樹脂R2により金属製中空部材の内面に一体に接着されている。
前記繊維強化プラスチック線材は、直径(d)が1〜5mmの円形断面形状、或いは、幅(w)が1〜20mm、厚さ(t)が0.1〜5mmの矩形断面形状の線状体であり、
前記繊維強化プラスチック線材における第1の強化繊維の体積比率は、30〜65%とされることを特徴とする請求項1に記載の補強金属製中空部材。
前記繊維強化プラスチック補強体における前記繊維強化プラスチック線材の面積比率は、10〜50%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の補強金属製中空部材。
前記繊維強化プラスチック補強体における前記第1の強化繊維及び前記第2の強化繊維を合わせた強化繊維の体積比率は、35〜62%とされることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の補強金属製中空部材。
前記芯材は、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム合金、スチール、ステンレススチール、樹脂又は繊維強化プラスチックであり、前記芯材の断面形状は、円形、三角形、四角形、その他の多角形、又は、楕円形とされることを特徴とする請求項6に記載の補強金属製中空部材。
前記金属製中空部材は、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム合金、スチール又はステンレススチールであり、前記金属製中空部材の断面形状は、円形、三角形、四角形、その他の多角形、又は、楕円形とされることを特徴とする請求項1〜7のいずれかの項に記載の補強金属製中空部材。
前記第1及び第2の強化繊維は、炭素繊維、ガラス繊維などの無機繊維;ボロン繊維、チタン繊維、スチール繊維などの金属繊維;又は、アラミド繊維、PBO(ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール)繊維などの有機繊維;であり、これら繊維を単独で、又は、複数種混入してハイブリッドにて使用することを特徴とする請求項1〜8のいずれかの項に記載の補強金属製中空部材。
前記繊維強化プラスチック線材の前記マトリクス樹脂は、常温硬化型或は熱硬化型のエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、MMA樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、或いは、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂であるか、又は、ナイロン或いはビニロンなどの熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかの項に記載の補強金属製中空部材。
前記繊維強化プラスチック補強体の前記接着樹脂は、常温硬化型或は熱硬化型のエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、MMA樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、或いは、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかの項に記載の補強金属製中空部材。
前記芯材は、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム合金、スチール、ステンレススチール、樹脂又は繊維強化プラスチックであり、前記芯材の断面形状は、円形、三角形、四角形、その他の多角形、又は、楕円形とされることを特徴とする請求項13に記載の金属製中空部材内面の繊維強化プラスチックによる補強方法。
前記金属製中空部材は、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム合金、スチール又はステンレススチールであり、前記金属製中空部材の断面形状は、円形、三角形、四角形、その他の多角形、又は、楕円形とされることを特徴とする請求項12〜14のいずれかの項に記載の金属製中空部材内面の繊維強化プラスチックによる補強方法。
前記強化繊維ロービング束は、連続した強化繊維を複数本束ねた強化繊維束であることを特徴とする請求項12〜16のいずれかの項に記載の金属製中空部材内面の繊維強化プラスチックによる補強方法。
前記強化繊維ロービング束は、1000〜50000本/束の強化繊維を有することを特徴とする請求項17に記載の金属製中空部材内面の繊維強化プラスチックによる補強方法。
前記強化繊維ロービング束は撚り入りとされ、撚り数は5〜30回/mとされることを特徴とする請求項17又は18に記載の金属製中空部材内面の繊維強化プラスチックによる補強方法。
前記金属製中空部材内の前記強化繊維補強体における前記繊維強化プラスチック線材の面積比率は、10〜50%であることを特徴とする請求項12〜19のいずれかの項に記載の金属製中空部材内面の繊維強化プラスチックによる補強方法。
前記金属製中空部材内の前記強化繊維補強体における前記第1の強化繊維及び前記第2の強化繊維を合わせた強化繊維の体積比率は、35〜62%とされることを特徴とする請求項12〜20のいずれかの項に記載の金属製中空部材内面の繊維強化プラスチックによる補強方法。
前記繊維強化プラスチック線材及び前記強化繊維ロービング束の強化繊維は、炭素繊維、ガラス繊維などの無機繊維;ボロン繊維、チタン繊維、スチール繊維などの金属繊維;又は、アラミド繊維、PBO(ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール)繊維などの有機繊維;であり、これら繊維を単独で、又は、複数種混入してハイブリッドにて使用することを特徴とする請求項12〜21のいずれかの項に記載の金属製中空部材内面の繊維強化プラスチックによる補強方法。
前記繊維強化プラスチック線材のマトリクス樹脂は、常温硬化型或いは熱硬化型のエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、MMA樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、或いは、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂であるか、又は、ナイロン或いはビニロンなどの熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項12〜22のいずれかの項に記載の金属製中空部材内面の繊維強化プラスチックによる補強方法。
前記強化繊維ロービング束に含浸され、前記繊維強化プラスチック線材と前記強化繊維ロービング束の強化繊維とを接着し硬化する樹脂は、常温硬化型或は熱硬化型のエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、MMA樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、或いは、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂であり、前記強化繊維ロービング束に含浸されるときの粘度は、常温(20℃)で500mPa・s以下とされることを特徴とする請求項12〜23のいずれかの項に記載の金属製中空部材内面の繊維強化プラスチックによる補強方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、以下の技術が考えられるが、未だ解決すべき課題を有している。
【0008】
(1)未含浸の強化繊維を直接、金属パイプの内面に引き込み、それに樹脂を含浸させる方法が考えられる。この方法は、金属パイプの内側補強空間へ強化繊維を多く入れると、特に、金属パイプの内部断面積が0.5〜1.0cm
2程度となると、長さが50cmを超える、所謂、長尺の細長金属パイプでは、樹脂が引き込めないか、或いは、長時間を要するといった問題が生じた。そのため、この方法は、金属パイプの長さの短いものの補強方法としてのみ採用可能であった。
【0009】
従って、上記方法は、強化繊維を投入できる量が少なく補強効果が小さくなり、また、樹脂含浸に時間がかかり、非効率であり、メリットが見出せず、実施されてこなかった。
【0010】
(2)また、樹脂含浸した強化繊維を強引に、金属パイプの内側の補強すべき空間全体へ、引き込むことも考えられるが、引き込み時に樹脂と金属面との接着力が働き、強化繊維の破断が発生するため、長さの長いものには適用できないといった問題があり採用されなかった。
【0011】
(3)一方、金属パイプの内側の補強すべき空間の断面と略同じ形状で、少し小さな寸法とされる繊維強化プラスチック線材を製作し、それを直接、この空間に引き込み、その後金属パイプとの隙間に樹脂を吸引、若しくは、圧入により充填し、硬化させる方法も考えられる。
【0012】
この方法では、補強すべき金属パイプの断面が変わる度に、適合する形状の繊維強化プラスチック部材を製作しなくてはいけないので、汎用性が無く、コストがかかるが、本方法は、どんな断面にも、投入量の増減で対応でき、コスト面で非常に有意である。
【0013】
しかし、金属パイプの内面と補強する繊維強化プラスチック部材との間に、空間が必要となり、その間は、樹脂のみとなり、補強すべき空間内の補強繊維投入量(Vf)が落ちるといった問題や、金属パイプ内面と繊維強化プラスチック部材との間の空間全面に、接着樹脂を充填させ、確実に接着をさせるのが難しいという課題がある。
【0014】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、金属製中空部材の内側の補強すべき空間に、高い比率での強化繊維を有した補強金属製中空部材、及び、金属製中空部材の内面の繊維強化プラスチックによる補強方法を提供することである。
【0015】
本発明の他の目的は、金属製中空部材内への強化繊維の投入量を増加させながら、更に、樹脂含浸が容易になり、しかも長尺の金属製中空部材にも適用可能で、且つ金属製中空部材内面と繊維強化プラスチックとの接着を確実にし、所望の補強効果を得ることのできる金属製中空部材の内面の繊維強化プラスチックによる補強方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的は本発明に係る補強金属製中空部材、及び、金属製中空部材の内面の繊維強化プラスチックによる補強方法にて達成される。要約すれば、第1の本発明によれば、
所定長さの金属製中空部材と、
前記金属製中空部材の内側空間部に配置された、
(i)複数本の連続した第1の強化繊維にマトリクス樹脂が含浸され硬化された、1本以上の連続した繊維強化プラスチック線材と、
(ii)前記繊維強化プラスチック線材と混合された複数本の連続した第2の強化繊維と、
(iii)前記第2の強化繊維に含浸され、前記繊維強化プラスチック線材と前記第2の強化繊維とを接着し硬化した接着樹脂と、
を含む繊維強化プラスチック補強体と、
を有し、前記繊維強化プラスチック補強体は、前記接着樹脂により前記金属製中空部材の内面に一体に接着されていることを特徴とする金属製中空部材の内面が補強された補強金属製中空部材が提供される。
【0017】
第1の本発明の一実施態様によれば、前記繊維強化プラスチック線材は、直径(d)が1〜5mmの円形断面形状、或いは、幅(w)が1〜20mm、厚さ(t)が0.1〜5mmの矩形断面形状の線状体であり、
前記繊維強化プラスチック線材における第1の強化繊維の体積比率は、30〜65%とされる。
【0018】
第1の本発明の他の実施態様によれば、前記繊維強化プラスチック補強体における前記繊維強化プラスチック線材の面積比率は、10〜50%である。
【0019】
第1の本発明の他の実施態様によれば、前記繊維強化プラスチック補強体における前記第1の強化繊維及び前記第2の強化繊維を合わせた強化繊維の体積比率は、35〜62%とされる。
【0020】
第1の本発明の他の実施態様によれば、前記繊維強化プラスチック補強体は、中心部に空間部を有する環状体とされる。
【0021】
第1の本発明の他の実施態様によれば、前記繊維強化プラスチック補強体の中心部空間部には中空或いは中実の芯材が配置される。前記芯材は、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム合金、スチール、ステンレススチール、樹脂又は繊維強化プラスチックとすることができ、また、前記芯材の断面形状は、円形、三角形、四角形、その他の多角形、又は、楕円形とすることができる。
【0022】
第1の本発明の他の実施態様によれば、前記金属製中空部材は、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム合金、スチール又はステンレススチールであり、前記金属製中空部材の断面形状は、円形、三角形、四角形、その他の多角形、又は、楕円形とされる。
【0023】
第1の本発明の他の実施態様によれば、前記第1及び第2の強化繊維は、炭素繊維、ガラス繊維などの無機繊維;ボロン繊維、チタン繊維、スチール繊維などの金属繊維;又は、アラミド繊維、PBO(ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール)繊維などの有機繊維;であり、これら繊維を単独で、又は、複数種混入してハイブリッドにて使用する。
【0024】
第1の本発明の他の実施態様によれば、前記繊維強化プラスチック線材の前記マトリクス樹脂は、常温硬化型或は熱硬化型のエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、MMA樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、或いは、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂であるか、又は、ナイロン或いはビニロンなどの熱可塑性樹脂である。
【0025】
第1の本発明の他の実施態様によれば、前記繊維強化プラスチック補強体の前記接着樹脂は、常温硬化型或は熱硬化型のエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、MMA樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、或いは、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂である。
【0026】
第2の本発明によれば、所定長さの金属製中空部材の内面を補強する補強方法であって、
(a)1本以上の連続した繊維強化プラスチック線材と、前記繊維強化プラスチック線材と混合された1本以上の連続した強化繊維ロービング束と、を含む樹脂未含浸の強化繊維補強体を作製し、
(b)前記樹脂未含浸の強化繊維補強体を前記金属製中空部材の内部空間に引き込み、
(c)前記樹脂未含浸の強化繊維補強体に接着樹脂を圧入若しくは吸引により注入することにより、樹脂未含浸の前記強化繊維補強体の強化繊維に樹脂を含浸させ、次いで、常温若しくは加熱により樹脂を硬化させて繊維強化プラスチック補強体を形成し、該繊維強化プラスチック補強体が接着樹脂により前記金属製中空部材の内面に一体に接着される、
ことを特徴とする金属製中空部材内面の繊維強化プラスチックによる補強方法が提供される。
【0027】
第3の本発明によれば、所定長さの金属製中空部材の内面を補強する補強方法であって、
(a)前記金属製中空部材の内面の横断面積より小さい横断面積を有した芯材の外周囲に、1本以上の連続した繊維強化プラスチック線材と、前記繊維強化プラスチック線材と混合された1本以上の連続した強化繊維ロービング束とを含む樹脂未含浸の強化繊維補強体を配置し、
(b)前記樹脂未含浸の強化繊維補強体を前記金属製中空部材の内部空間に引き込み、
(c)前記樹脂未含浸の強化繊維補強体に含浸樹脂を圧入若しくは吸引により注入することにより、樹脂未含浸の前記強化繊維補強体の強化繊維に樹脂を含浸させ、次いで、常温若しくは加熱により樹脂を硬化させて繊維強化プラスチック補強体を形成し、該繊維強化プラスチック補強体が接着樹脂により前記金属製中空部材の内面に一体に接着され、
(d)その後、必要に応じて、前記芯材を前記金属製中空部材から引き抜く、
ことを特徴とする金属製中空部材内面の繊維強化プラスチックによる補強方法が提供される。第3の本発明にて、一実施態様によれば、前記芯材は、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム合金、スチール、ステンレススチール、樹脂又は繊維強化プラスチックであり、前記芯材の断面形状は、円形、三角形、四角形、その他の多角形、又は、楕円形とされる。
【0028】
第2、第3の本発明にて、一実施態様によれば、前記金属製中空部材は、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム合金、スチール又はステンレススチールであり、前記金属製中空部材の断面形状は、円形、三角形、四角形、その他の多角形、又は、楕円形とされる。
【0029】
第2、第3の本発明にて、他の実施態様によれば、前記繊維強化プラスチック線材は、
連続した強化繊維を複数本束ねた強化繊維束にマトリクス樹脂が含浸され、硬化された直径(d)が1〜5mmの円形断面形状、或いは、幅(w)が1〜20mm、厚さ(t)が0.1〜5mmの矩形断面形状の線状体であり、
強化繊維の体積比率が30〜65%とされる。
【0030】
第2、第3の本発明にて、他の実施態様によれば、前記強化繊維ロービング束は、連続した強化繊維を複数本束ねた強化繊維束である。
【0031】
第2、第3の本発明にて、他の実施態様によれば、前記強化繊維ロービング束は、1000〜50000本/束の強化繊維を有する。
【0032】
第2、第3の本発明にて、他の実施態様によれば、前記強化繊維ロービング束は撚り入りとされ、撚り数は5〜30回/mとされる。
【0033】
第2、第3の本発明にて、他の実施態様によれば、前記金属製中空部材内の前記強化繊維補強体における前記繊維強化プラスチック線材の面積比率は、10〜50%である。
【0034】
第2、第3の本発明にて、他の実施態様によれば、前記金属製中空部材内の前記強化繊維補強体における前記第1の強化繊維及び前記第2の強化繊維を合わせた強化繊維の体積比率は、35〜62%とされる。
【0035】
第2、第3の本発明にて、他の実施態様によれば、前記繊維強化プラスチック線材及び前記強化繊維ロービング束の強化繊維は、炭素繊維、ガラス繊維などの無機繊維;ボロン繊維、チタン繊維、スチール繊維などの金属繊維;又は、アラミド繊維、PBO(ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール)繊維などの有機繊維;であり、これら繊維を単独で、又は、複数種混入してハイブリッドにて使用する。
【0036】
第2、第3の本発明にて、他の実施態様によれば、前記繊維強化プラスチック線材のマトリクス樹脂は、常温硬化型或は熱硬化型のエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、MMA樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、或いは、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂であるか、又は、ナイロン或いはビニロンなどの熱可塑性樹脂である。
【0037】
第2、第3の本発明にて、他の実施態様によれば、前記強化繊維ロービング束に含浸され、前記繊維強化プラスチック線材と前記強化繊維ロービング束の強化繊維とを接着し硬化する樹脂は、常温硬化型或は熱硬化型のエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、MMA樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、或いは、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂であり、前記強化繊維ロービング束に含浸されるときの粘度は、常温(20℃)で500mPa・s以下とされる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、金属製中空部材の内側の補強すべき空間に、高い比率での強化繊維を投入でき、しかも長尺の中空部材にも適用可能で、且つ金属製中空部材の内面と繊維強化プラスチックとの接着を確実にし、所望の補強効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明に係る補強金属製中空部材、及び、金属製中空部材内面の繊維強化プラスチックによる補強方法を図面に則して更に詳しく説明する。
【0041】
実施例1
(全体構成)
図1(a)〜(d)に、本発明に係る補強金属製中空部材1の一実施例の全体構造を示す。補強金属製中空部材1は、所定長さの金属製中空部材2の内側空間に配置された繊維強化樹脂材(FRP)である繊維強化プラスチック補強体3により金属製中空部材2の内面が補強されている。
【0042】
尚、本発明では、金属製中空部材2とは、横断面形状が三角形、矩形(四角形)或いは五角形以上の多角形とされる角形金属パイプ、又は、断面が円形の丸形金属パイプ、又は、断面が楕円形或いはその他種々の断面形状の金属パイプなどとされる。また、本発明で言う金属製中空部材2は、上述のような長尺の金属パイプを意味すると共に、例えば、
図8に示すように、織機部材であるヘルドフレーム本体2の場合のように、機械部品が中空構造とされ、複数の横リブ21、21にて複数の中空部が形成されている場合をも意味するものとする。また、本発明にて金属製中空部材2とは、金属製中空部材2の一部に細いスリットや穴が設けられている場合も含み、本発明によれば、これら金属製中空部材2の補強も又極めて有効に達成される。
【0043】
ただ、以下の実施例の説明では、説明を簡単とし理解を容易とするために、特別の記載がなされていない限りは、金属製中空部材2は、
図1(a)に示すように、長尺の細長金属製のパイプ2を意味するものとして、単に「金属パイプ」と称して説明する。
【0044】
図1(a)〜(d)を参照すると、本実施例によれば、繊維強化プラスチック補強体3は、
(i)複数本の連続した第1の強化繊維f1にマトリクス樹脂R1が含浸され硬化された繊維強化プラスチック製の線材である、1本以上の連続した繊維強化プラスチック線材4と、
(ii)繊維強化プラスチック線材4と混合された複数本の連続した第2の強化繊維f2と、
(iii)複数本の第2の強化繊維f2に含浸され、繊維強化プラスチック線材4と第2の強化繊維f2とを接着し硬化した接着樹脂R2と、
を含んでおり、繊維強化プラスチック補強体3は、接着樹脂R2により金属パイプ2の内面に一体に接着されている。複数本の第2の強化繊維f2は、複数本の強化繊維f2を収束した強化繊維束(強化繊維ロービング束5)の形態で繊維強化プラスチック線材4と混合され、強化繊維ロービング束5の形態を維持していることもある(
図1(c)参照)。
【0045】
補強金属パイプ1は、
図1(a)に示すように、中空部を全て、繊維強化プラスチック補強体3にて埋めたものとすることもできるが、詳しくは後述するように、
図6(a)、(b)に示すように、補強金属パイプ1の中心部に中空(パイプ状)の或いは中実(ロッド状)の芯材20を配置し、金属パイプ2と芯材20との間の空間部に繊維強化プラスチック補強体3を配置した構造とすることもできる。
図6(a)、(b)には、芯材20がパイプ状とされる二重管構造を示している。内側の芯材20は、そのまま放置でも、取り除いても良い。つまり、繊維強化プラスチック補強体3は、環状体とされる。
【0046】
上記構造とされる本発明の補強金属パイプ1は、
(1)金属パイプ2内の強化繊維補強範囲内での、即ち、繊維強化プラスチック補強体3における第1及び第2強化繊維f1、f2を含めた強化繊維体積比率(Vf)は、35〜62%とされる。
(2)金属パイプ2内の強化繊維補強範囲内での、即ち、繊維強化プラスチック補強体3における強化繊維プラスチック線材4の断面積比率は、10〜50%とされる。ここで、断面積比率とは、即ち、
図1(b)にて各線材4の断面積をS4、本数をnとし、繊維強化プラスチック補強体3の断面積をS3(即ち、本実施例では金属パイプ2の内部の断面積S)としたとき、繊維強化プラスチック線材4の面積比率は、n・S4/S3(即ち、n・S4/S)である。
【0047】
また、上述したように、金属パイプ2内の強化繊維での補強範囲内での、繊維強化プラスチック線材4の本数は、1本以上であり、その配置は、できるだけ均等にバラケさせるのが好ましい。
【0048】
次に、本発明の補強金属製中空部材としての補強金属パイプ1の各構成部材について更に詳しく説明する。
【0049】
(金属製中空部材)
本実施例によると、金属製中空部材としての金属パイプ2は、上述のように、横断面形状が三角形、矩形(四角形)或いは五角形以上の多角形とされる角形パイプであっても良く、又は、断面が円形の丸形パイプ、又は、断面が楕円形或いはその他種々の断面形状のパイプとすることができる。また、本発明は、金属パイプ2の中空部横断面積(S)が小とされる、例えば、25〜50mm
2とされる場合であっても、長さ(L)が長い、具体的には、1000mm以上の、所謂、長尺の細長金属パイプ2に対しても極めて有効に適用し得る。
【0050】
本実施例では、金属パイプ2は、
図1(a)にて一辺の長さ(外寸法)が(H1)、肉厚が(T)とされる断面が正方形の角形パイプであるとして説明する。この時、金属パイプ2の長さ(L)は、金属パイプ2の一辺の長さH1に対してL/H1が10以上の長尺であっても良い。勿論、本発明が、斯かる寸法形状の金属パイプに限定されるものではない。
【0051】
金属パイプ2は、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム合金、鋼、ステンレススチール(SUS)などとされる。
【0052】
上述のように、補強金属パイプ1は、
図6(a)、(b)に示すように、芯材20としてのパイプ或いはロッドを有することができるが、この芯材20も又、金属パイプ2と同様に、横断面形状が三角形、矩形(四角形)或いは五角形以上の多角形とされる角形パイプであっても良く、又は、断面が円形の丸形パイプ、又は、断面が楕円形或いはその他種々の断面形状のパイプであっても良い。材料は、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム合金、鋼、ステンレススチール(SUS)などとすることができる。場合によっては、樹脂、繊維強化プラスチック(FRP)などとすることもできる。勿論、金属パイプ2と芯材20とは同じ材料でも良く、異なる材料とすることもできる。
【0053】
(繊維強化プラスチック線材)
繊維強化プラスチック線材4は、
図1(d)に示すように、直径(d)が1〜5mmの略円形断面形状(
図1d(d−1))であるか、又は、幅(w)が1〜20mm、厚み(t)が0.1〜5mmとされる略矩形断面形状(
図1d(d−2))とされる連続した繊維強化プラスチック(FRP)製の線材である。勿論、線材4の横断面形状は、必要に応じて、その他の種々の断面形状とすることができる。
【0054】
繊維強化プラスチック線材4の強化繊維(第1の強化繊維)f1としては、炭素繊維、ガラス繊維などの無機繊維;ボロン繊維、チタン繊維、スチール繊維などの金属繊維;更には、アラミド繊維、PBO(ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール)繊維などの有機繊維;が単独で、又は、複数種混入してハイブリッドにて使用することができる。また、繊維強化プラスチック線材4に含浸されるマトリクス樹脂R1は、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を使用することができ、熱硬化性樹脂としては、常温硬化型或は熱硬化型のエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、MMA樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、又はフェノール樹脂などが好適に使用され、又、熱可塑性樹脂としては、ナイロン、ビニロンなどが好適に使用可能である。又、繊維強化プラスチック線材4の強化繊維体積比率(Vf)は、30〜65%とされる。
【0055】
また、
図2(a)、(b)に示すように、繊維強化プラスチック線材4は、強化繊維束に撚りが施されていない撚り無し繊維強化プラスチック線材4a(
図2(a))でも、また、強化繊維束に撚りが入った撚り入り繊維強化プラスチック線材4b(
図2(b))でも良い。撚り数は、5〜30回/mが好ましい。もし、
図2(b)に示す撚り入りの繊維強化プラスチック線材4bを使用する場合には、金属パイプ2内に、S撚りの線材と、Z撚りの線材とを略同数配置するのが好ましい。その理由は、一方向の撚りのみの繊維強化プラスチック線材4bは、その撚り癖により、形状の変化を起こし易いため、その影響が補強した金属パイプ1に出ることを防ぐためである。
【0056】
繊維強化プラスチック線材4は、必要に応じて、
図3(a)に示すように、繊維強化プラスチック線材4を複数本、長手方向にスダレ状に引き揃え、各線材4を互いに線材固定材11にて固定したストランドシート10を作製し、このストランドシート10を利用して線材4を金属パイプ2内に配置することもできる。
【0057】
ストランドシート10において各線材4、4間には、0〜10mmの空隙(g)を設ける。又、各線材4を線材固定材11にて固定する方法としては、
図3(a)に示すように、例えば、線材固定材11として横糸を使用し、一方向にスダレ状に配列された複数本の線材4から成るシート形態とされる線材、即ち、連続した線材シートを、線材4に対して横糸11を直交して一定の間隔(P)にて打ち込み、編み付ける方法などを採用し得る。このとき、横糸11は、例えば直径2〜50μmのガラス繊維或いは有機繊維を複数本束ねた糸条とされる。又、有機繊維としては、ナイロン、ビニロン、ポリエステルなどが好適に使用される。
【0058】
各線材4をスダレ状に固定する他の方法としては、
図4(a)に示すように、線材固定材11として、例えば直径5〜20μmのガラス繊維或いは有機繊維にて作製したメッシュ状の支持体シート11を使用することができる。
【0059】
つまり、線材固定材11としてのメッシュ状の支持体シート11を構成するガラス繊維等の糸条とされる縦糸12及び横糸13の表面に低融点タイプの熱可塑性樹脂を予め含浸させておき、メッシュ状支持体シート11をシート形態を成すスダレ状に引き揃えた複数本の線材、即ち、線材シートの片側面、又は、両面積層して加熱加圧し、メッシュ状支持体シート11の縦糸12及び横糸13の部分を線材シートに溶着する。
【0060】
メッシュ状支持体シート11は、上記2軸構成のほかに、ガラス繊維等の糸条を3軸に配向して形成することもできる。また、一方向に配列された線材4に対して直交する横糸12のみを配置した、所謂、1軸に配向して前記シート状に引き揃えた線材4に接着することもできる。
【0061】
線材固定材11の糸条としては、例えばガラス繊維を芯部に有し、低融点の熱融着性ポリエステルをその周囲に配したような二重構造の複合繊維も又好ましく用いられる。
【0062】
更に、各線材2をスダレ状に固定する他の方法としては、
図4(b)に示すように、線材固定材11として、例えば、粘着テープ又は接着テープなどとされる可撓性帯材を使用することができる。可撓性帯材11は、シート形態を成すスダレ状に引き揃えた各繊維強化プラスチック線材4の長手方向に対して垂直方向に、即ち、直交して、複数本の繊維強化プラスチック線材4の片側面、又は、両面を貼り付けて固定する。可撓性帯材11として、幅(w11)1〜10mm程度の、塩化ビニルテープ、紙テープ、布テープ、不織布テープなどの粘着テープ又は接着テープが使用される。これらテープ11を、通常、10〜100mm間隔(P)で各繊維強化プラスチック線材4の長手方向に対して垂直方向に貼り付ける。更に、可撓性帯材11としては、ナイロン、EVA樹脂などの熱可塑性樹脂を帯状に、線材4の長手方向に対して垂直方向に片側面、又は、両面に熱融着させることによっても達成される。
【0063】
このようにして形成されたストランドシート10の長さ(L10)及び幅(W10)は、取扱い上の問題から、一般に、全幅(W10)は、100〜1000mmとされ、長さ(L10)は、1〜5m程度の短冊状のもの、或いは、100m以上のものを製造し得るが、使用時においては、適宜切断して使用される。
【0064】
(第2の強化繊維)
第2の強化繊維f2としては、繊維強化プラスチック線材4の強化繊維(第1の強化繊維f1)と同様のものを使用することができ、炭素繊維、ガラス繊維、などの無機繊維;ボロン繊維、チタン繊維、スチール繊維などの金属繊維;更には、アラミド繊維、PBO(ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール)繊維などの有機繊維;が単独で、又は、複数種混入してハイブリッドにて使用することができる。
【0065】
第2の強化繊維f2は、
図1(b)に示すように、繊維強化プラスチック線材4間に均一に分散して配置されるが、
図1(c)に示すように、第2の強化繊維f2は、通常、第2の強化繊維f2を複数本収束した強化繊維ロービング束5の形態で各線材4間に一様に分散して配置される。
【0066】
強化繊維ロービング束5は、
図2(c)、(d)に示すように、ロービング束に撚りが無い撚り無し強化繊維ロービング束5a(
図2(c))でも、また、ロービング束に撚りが入った撚り入り強化繊維ロービング束5b(
図2(d))でも良い。撚り数は、5〜30回/mが好ましい。特に、撚り無し強化繊維ロービング束5aを使用した場合には、
図1(b)に示すように、第2の強化繊維f2は、解繊されて繊維強化プラスチック線材4間に均一に分散して配置されることとなるが、撚り入り強化繊維ロービング束5bを使用した場合には、
図1(c)に示すように、解繊されることなく線材4の間に強化繊維ロービング束5bの形態を維持したまま一様に分散配置される。
【0067】
また、撚り入りの強化繊維ロービング束5bを使用する場合には、繊維強化プラスチック線材4に関して上述したと同じ理由から、金属パイプ2内に、S撚りの線材と、Z撚りの線材とを略同数配置するのが好ましい。
【0068】
補強金属パイプ1にて、第2の強化繊維f2は、繊維強化プラスチック線材3の強化繊維(第1の強化繊維)f1と同じであっても良く、異なる繊維を使用しても良い。
【0069】
また、必要に応じては、
図3(a)に示すストランドシート10と同様に、
図3(b)に示すように、強化繊維ロービング束5を複数本、長手方向にスダレ状に引き揃え、各ロービング束5を互いに線材固定材11にて固定した繊維シート(ロービングシート)30を作製し、この繊維シート30を利用して強化繊維ロービング束5を金属パイプ2内に配置することもできる。
【0070】
各強化繊維ロービング束5、5間には、0〜10mmの空隙(g)を設ける。なお、空隙(g)は、強化繊維ロービング束5の長手方向に一定である必要はない。即ち、例えば、強化繊維ロービング束5の長手方向に空隙(g)が0mmとなっている個所、即ち、隣り合った強化繊維ロービング束5、5が密着している個所があっても良い。
【0071】
このようにして形成された繊維シート30の長さ(L30)及び幅(W30)は、取扱い上の問題から、一般に、全幅(W30)は、100〜1000mmとされる。又、長さ(L30)は、1〜5m程度の短冊状のもの、或いは、100m以上のものを製造し得るが、使用時においては、適宜切断して使用される。
【0072】
(接着樹脂)
金属パイプ2内に注入する接着樹脂R2は、常温硬化型或は熱硬化型のエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、MMA樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、又はフェノール樹脂などとされる熱硬化性樹脂を使用し得る。使用する接着樹脂R2の粘度は、常温(即ち、20℃)で、500mPa・s(ミリパスカル秒)以下の範囲とされる。500mPa・sを超えると、含浸性が悪くなり、また一方、10mPa・s以下では、該当樹脂が見当たらない。通常、50〜300mPa・sとされる。
【0073】
次に、
図5(a)〜(c)及び
図7(a)〜(c)を参照して、本発明に係る金属パイプ2の内面を繊維強化プラスチックにて補強する補強方法について説明する。
【0074】
(補強方法)
(A)
補強方法の第1実施例
図5(a)〜(c)に示す本発明の補強方法の第一の実施例によると、金属パイプ2の内側の補強すべき空間において、強化繊維(第1の強化繊維f1+第2の強化繊維f2)の体積比率が35〜62%の範囲になる量の、1本以上の連続した繊維強化プラスチック線材4と、複数本の第2の強化繊維f2を混合して、樹脂未含浸の強化繊維補強体3aを作製する。
【0075】
限定されるものではないが、繊維強化プラスチック線材4は、強化繊維f1として炭素繊維を使用した場合には、例えば平均径7μmの単繊維(炭素繊維モノフィラメント)f1を6000〜60000本収束した単繊維束(強化繊維束)に樹脂R1が含浸され、それを単独、若しくは、複数本束ねて、硬化して作製される。
【0076】
また、
図2(a)、(b)に示すように、繊維強化プラスチック線材4は、強化繊維束に撚りが施されていない撚り無し繊維強化プラスチック4a(
図2(a))でも、また、強化繊維束に撚りが入った撚り入り繊維強化プラスチック4b(
図2(b))でも良い。撚り数は、5〜30回/mが好ましい。もし、
図2(b)に示す撚り入りの繊維強化プラスチック線材4bを使用する場合には、上述したように、金属パイプ2内に、S撚りの線材と、Z撚りの線材とを略同数配置するのが好ましい。その理由は、上述したように、一方向の撚りのみの繊維強化プラスチック線材4bは、そのより癖により、形状の変化を起こし易いため、その影響が補強した金属パイプ1に出ることを防ぐためである。
【0077】
複数本の第2の強化繊維f2は、通常、
図2(c)、(d)に示す強化繊維ロービング束5の形態で使用される。
【0078】
限定されるものではないが、強化繊維ロービング束5は、第2の強化繊維f2として炭素繊維を使用した場合には、1本の強化繊維ロービング束5は、例えば平均径7μmの単繊維(炭素繊維モノフィラメント)f2を1000〜50000本収束して作製される。
【0079】
強化繊維ロービング束5は、撚り無し(
図2(c))でも、また、撚り入り(
図2(d))でも良い。撚り数は、5〜30回/mの範囲が好ましい。もし、撚り入りの強化繊維ロービング束5bを使用する場合には、上述したように、金属パイプ内に、S撚りのロービング束と、Z撚りのロービング束とを略同数投入するのが好ましい。
【0080】
繊維強化プラスチック線材4と強化繊維ロービング束5(即ち、第2の強化繊維f2)との混合物である樹脂未含浸の強化繊維補強体3aは、金属パイプ2の内側に引き込み、その混合物(強化繊維補強体3a)の端部を切断後、その金属パイプ2の内側に、接着樹脂R2を圧入、若しくは、吸引により注入することにより、強化繊維ロービング束(即ち、第2の強化繊維f2)に樹脂R2を含浸させ、常温、若しくは、加熱により、樹脂を硬化させる。これにより金属パイプ内面が繊維強化プラスチック補強体3により補強される。
【0081】
更に具体的に説明すると、本実施例では、補強される金属パイプ2は、
図1に示すように、肉厚(T)、一辺の長さ(H1)とされる矩形(正方形)断面を有するものとして説明する。この金属パイプ2の内面を補強するために、
図5(a)〜(c)に示すように、1本以上の連続した繊維強化プラスチック線材4と、1束以上の連続した強化繊維ロービング束5を混合して樹脂含浸前の繊維強化プラスチック前駆体、即ち、樹脂未含浸の強化繊維補強体3aを形成する。本実施例では、樹脂未含浸強化繊維補強体3aも又、金属パイプ2の内面形状と同様の矩形状とされ、金属パイプの長さ(L)より長く長手方向に延在した長さ(L3)とされる。
【0082】
本実施例にて、樹脂未含浸強化繊維補強体3aの先端部には、
図5(a)に示すように、金属パイプ2の内部を貫通して配置された引き込み紐50の一端部50aが、例えば接着剤などにより接着され、且つ、樹脂未含浸強化繊維補強体先端部は固定具51にてしっかりと固定される。次いで、引き込み紐50の他端部50bを持って、引き込み紐50を、本実施例では
図5(a)にて左側に引張ることにより、強化繊維補強体3aを金属パイプ2内部に投入し、配置する。
【0083】
撚り無し強化繊維ロービング束5aを使用した場合は、ロービング束は解繊され、
図1(b)に示すように、繊維強化プラスチック線材4、4間に均一に分散された状態となる。撚り入り強化繊維ロービング束5bを使用した場合は、
図1(c)のように、完全には解繊されず繊維束5bの状態を維持したまま繊維強化プラスチック線材4と混合して配置される。
【0084】
金属パイプ2内部に投入配置された樹脂未含浸の強化繊維補強体3aは、その一端、即ち、
図5(b)にて右側端部は金属パイプ2の右側端面と略同一面にて(I)−(I)面で切断し、他端、即ち、
図5(b)にて左側端部の引き込み紐50が結束された側は、引き込み紐結束部51と金属パイプ2の左側端面との間で、即ち、金属パイプ左側端面から距離(Ls)の位置(II)−(II)面で切断する。
【0085】
上述したように、
図5(a)〜(c)に示す本実施例にて、
(1)金属パイプ2内の強化繊維補強体3aの強化繊維体積比率(Vf)は、35〜62%とされる。
(2)金属パイプ2内の強化繊維補強体3aにおける強化繊維プラスチック線材4の面積比率は、10〜50%とされる。
【0086】
また、上述したように、金属パイプ2内の強化繊維プラスチック線材4の本数は、1本以上とされるが、複数本使用する場合の線材4の投入配置は、できるだけ均等にバラケさせる。
【0087】
次に、金属パイプ2内の樹脂未含浸強化繊維補強体3aに対する含浸樹脂R2の注入方法について説明する。
【0088】
図5(c)に図示するように、樹脂未含浸強化繊維補強体3aが装入された金属パイプ2の左側端2b、即ち、強化繊維補強体3aが一部露出した端部2bを包囲してバグフィルム100の一端開口部101aが金属パイプ端面外周部に適合設置され、バグフィルム100の一端開口部101aと金属パイプ外周部とはシール部材102にて密着接合する。バグフィルム100の他端開口部101bには真空引きのためのパイプ103が接続される。パイプ103は真空ポンプ104に接続されており、真空ポンプ104を作動させることにより真空引きが可能とされる。
【0089】
樹脂未含浸強化繊維補強体3aが挿入された金属パイプ2の右側端2a、即ち、強化繊維補強体3aが金属パイプ端面にて切断されている側の端部2aは、接着樹脂R2が貯留された樹脂タンク110内に浸漬される。樹脂R2は、上述したように、その粘度が常温(20℃)で500mPa・s(ミリパスカル秒)以下、本実施例では、100〜200mPa・sとされた。
【0090】
次いで、真空ポンプ104を駆動すると、金属パイプ2内が真空引きされ、それによって、樹脂R2が金属パイプ2内、即ち、樹脂未含浸強化繊維補強体3aへと流入される。樹脂R2は、強化繊維補強体3aの繊維強化プラスチック線材4の回りに配置されている強化繊維ロービング束(第2の強化繊維f2)に含浸される。従って、繊維強化プラスチック線材4と第2の強化繊維f2が接着すると共に、金属パイプ2の内面に強化繊維補強体3aが接着される。
【0091】
その後、金属パイプ2を樹脂タンク110から取出し、また、バグフィルム100を除去し、常温で放置するか、或いは、必要により加熱することにより、樹脂R2を硬化させる。これにより金属パイプ内面が繊維強化プラスチックとされた強化繊維補強体、即ち、繊維強化プラスチック補強体3により補強される。
【0092】
上記説明では、接着樹脂R2は、真空ポンプ104を駆動することにより金属パイプ2内に、即ち、強化繊維補強体3aに吸引されるものとして説明したが、接着樹脂R2を圧力ポンプなどにより金属パイプ2内へと、即ち、強化繊維補強体3aへと圧入する構成とすることもできる。
【0093】
上述のような本発明による補強方法によると、
(1)繊維強化プラスチック線材4と第2の強化繊維f2(即ち、樹脂未含浸の強化繊維ロービング束5)を同時に、金属パイプの内側の補強すべき空間に、連続して引き込むと、繊維強化プラスチック線材4が曲がることなく直線で引き込まれていくことにより、周囲の樹脂未含浸の強化繊維ロービング束5も直線性を保ちながら引き込まれていく。そのため、樹脂未含浸の強化繊維ロービング束5の糸の緩み、絡みによる膨れ現象が少なくなり、より多くの強化繊維を投入できる。また、強化繊維の直線性も確保できることから、非常に高い物性の発現を得ることが可能となる。
【0094】
(2)繊維強化プラスチック線材4は既に硬化された固体であり、且つ直線であるため、この表面には必ず隙間が発生し、樹脂R2がこの線材4の表面を伝わって通り易くなる。それで、金属パイプ2の補強すべき空間に、適切にこの繊維強化プラスチック線材4を1本以上配置することにより、樹脂の通り道の形成が可能となる。この樹脂R2が線材4の周囲の樹脂未含浸強化繊維ロービング束5に拡散、含浸することにより、金属パイプ2の断面全体へ樹脂が回り、繊維強化プラスチックと金属パイプが接着し、一体化した補強物(補強金属パイプ)が得られる。
【0095】
樹脂未含浸強化繊維ロービング束5のみを金属パイプ2の内側の補強すべき空間に引き込んだ、線材4の入っていない場合は、樹脂R2が金属パイプ2の内側表面を伝わり、空間の中央部へは含浸して行かない状況となる。
【0096】
(3)繊維強化プラスチック線材4を伝わって流れていく樹脂R2が、線材周囲の回りの樹脂未含浸ロービング束5に拡散、含浸され、金属パイプ2の断面全体へ確実に樹脂R2が回るようにするためには、線材4と線材4との距離が短くなるように、線材4を配置するか、若しくは、樹脂R2が強化繊維ロービング束5、5間に入り易くなる撚り入り強化繊維ロービング束5bを用いるのが好ましい。
【0097】
尚、上述したように、繊維強化プラスチック線材4で撚り入りの繊維強化プラスチック4bを使用した場合、及び/又は、樹脂未含浸の強化繊維ロービング束5で撚り入りの強化繊維ロービング束5bを使用した場合、金属パイプ2の内側の補強すべき空間内に投入する撚り入り繊維強化プラスチック線材4b及びロービング束5bは、撚り方向がS撚り(左ネジ撚り)、Z撚り(右ネジ撚り)のものを、ほぼ同数本投入する方が良い。
【0098】
(B)
補強方法の第2実施例
図7(a)〜(c)を参照して本発明の補強方法の第二の実施例について説明する。
【0099】
補強方法の第二の実施例は、
図6に示す補強金属パイプ1を作製するための方法であって、上記
図5(a)〜(c)を参照して説明した補強方法と同様の構成とされる。ただ、樹脂未含浸強化繊維補強体3aの作製方法において異なるのみである。
【0100】
つまり、本実施例によると、金属パイプ2の内側の補強すべき空間において、即ち、この金属パイプ2の内面積Sより小さな面積のパイプ、若しくは、中実ロッド等の芯材20の周囲に形成される芯材20と補強パイプ2との環状空間において、強化繊維(第1の強化繊維f1+第2の強化繊維)の体積比率が35〜62%の範囲になる量の、1本以上の連続した繊維強化プラスチック線材4と、複数本の強化繊維ロービング束5(即ち、第2の強化繊維f2)を混合して、樹脂未含浸強化繊維補強体3aを作製する。
【0101】
繊維強化プラスチック線材4及び強化繊維ロービング束5(第2の強化繊維f2)は、第1実施例にて説明したと同様のものを使用することができる。従って、本実施例での説明は省略する。
【0102】
本実施例においても、
図6(a)、(b)に示すように、第1実施例と同様に、補強される金属パイプ2は、肉厚(T1)、一辺の長さ(H1)とされる矩形(正方形)断面を有するものとされ、金属パイプ2の内部に、肉厚(T2)、一辺の長さ(H3)とされる矩形(正方形)断面を有した芯材としての内パイプ20が配置されるものとする。
【0103】
本実施例では、
図7(a)に示すように、内パイプ20の回りに、繊維強化プラスチック線材4と強化繊維ロービング束5を混合して配置し、樹脂未含浸の強化繊維補強体3aを作製する。
【0104】
本実施例にて、樹脂未含浸強化繊維補強体3aの先端部の内パイプ20の先端開口部20aには、金属パイプ2の内部を貫通して配置された引き込み紐50の一端部50aが装入され、該端部50aを先端開口部20aに固定すると共に、先端開口部を接着剤で充填する。これにより、内パイプ20の先端開口部20aは接着剤にて封止される。また、樹脂未含浸強化繊維補強体3aの先端部は、固定具51にてしっかりと固定される。次いで、引き込み紐50の他端部50bを持って、引き込み紐50を、本実施例では
図7(a)にて左側に引張ることにより、樹脂未含浸の強化繊維補強体3aを金属パイプ2の内部に装入し、配置する。
【0105】
撚り無し強化繊維ロービング束5aを使用した場合には、ロービング束5aは解繊され、
図6(b)に示すように、繊維強化プラスチック線材4、4間に均一に分散された状態となる。撚り入り強化繊維ロービング束5bを使用した場合は、図示してはいないが、
図1(c)に示すと同様に、完全には解繊されず繊維束5bの状態を維持したまま繊維強化プラスチック線材4と混合して配置される。
【0106】
次いで、第1の実施例の場合と同様に、金属パイプ2内部に投入配置された樹脂未含浸の強化繊維補強体3aは、その一端、即ち、
図7(b)にて右側端部は金属パイプ2の右側端面と略同一面にて(I)−(I)面で切断し、他端、即ち、
図7(b)にて左側端部の引き込み紐50が結束された側は、引き込み紐結束部51と金属パイプ2の左側端面との間で、且つ、内パイプ20に接着剤が充填されて封止されている領域にて、即ち、金属パイプ左側端面から距離(Ls)の位置(II)−(II)面で切断する。もし、切断面位置(II)−(II)にて内パイプ20内に接着剤が充填されていない場合は、内パイプ先端開口部に接着剤を充填し封止する。
【0107】
上述したように、
図7(a)、(b)、(c)に示す本実施例においても、
(1)金属パイプ2と内パイプ20との間の環状空間部における強化繊維補強体3aの強化繊維体積比率(Vf)は、35〜62%とされる。
(2)金属パイプ2と内パイプ20との間の環状空間部における強化繊維プラスチック線材4の面積比率は、10〜50%とされる。
【0108】
また、上述したように、金属パイプ2内の強化繊維プラスチック線材4の本数は、1本以上とされるが、複数数本使用する場合は、その投入配置は、できるだけ均等にバラケさせる。
【0109】
次に、第1実施例1と同様にして、金属パイプ2と内パイプ20との間の環状空間部における樹脂未含浸強化繊維補強体3aに含浸樹脂R2を注入する。
【0110】
即ち、
図7(c)に図示するように、樹脂未含浸強化繊維補強体3aが装入された金属パイプ2の左側端2b、即ち、強化繊維補強体3aが一部露出した端部2bを包囲してバグフィルム100の一端開口部101aが金属パイプ端面外周部に適合設置され、バグフィルム100の一端開口部101aと金属パイプ外周部とはシール部材102にて密着接合する。バグフィルム100の他端開口部101bには真空引きのためのパイプ103が接続される。パイプ103は真空ポンプ104に接続されており、真空ポンプ104を作動させることにより真空引きが可能とされる。
【0111】
樹脂未含浸強化繊維補強体3aが挿入された金属パイプ2の右側端2a、即ち、強化繊維補強体3aが金属パイプ端面にて切断されている側の端部2aは、接着樹脂R2が貯留された樹脂タンク110内に浸漬される。樹脂R2は、上述したように、その粘度が常温(20℃)で500mPa・s(ミリパスカル秒)以下、本実施例では、100〜200mPa・sとされた。
【0112】
次いで、真空ポンプ104を駆動すると、金属パイプ2内が真空引きされ、それによって、樹脂R2が内パイプ20内を流れることなく金属パイプ2内の、環状とされる樹脂未含浸強化繊維補強体3aへと流入される。樹脂R2は、強化繊維補強体3aの繊維強化プラスチック線材4の回りに配置されている強化繊維ロービング束5(第2の強化繊維f2)に含浸される。従って、繊維強化プラスチック線材4と第2の強化繊維f2が接着すると共に、金属パイプ2の内面に強化繊維補強体3aが接着される。
【0113】
その後、金属パイプ2を樹脂タンク110から取出し、また、バグフィルム100を除去し、常温で放置するか、或いは、必要により加熱することにより、樹脂R2を硬化させる。これにより金属パイプ内面が繊維強化プラスチックとされた強化繊維補強体、即ち、繊維強化プラスチック補強体3により補強される。必要に応じて、芯材としての内パイプ20は、補強金属パイプ1から除去する。
【0114】
上記説明では、接着樹脂R2は、真空ポンプ104を駆動することにより金属パイプ2内に、即ち、強化繊維補強体3aに吸引されるものとして説明したが、接着樹脂R2を圧力ポンプなどにより金属パイプ2内へと、即ち、強化繊維補強体3aへと圧入する構成とすることもできる。
【0115】
上述のような本実施例による補強方法によると、第1の実施例の補強方法と同様に、
(1)繊維強化プラスチック線材4と第2の強化繊維f2(即ち、樹脂未含浸の強化繊維ロービング束5)を同時に、金属パイプ2の内側の補強すべき空間に連続して引き込むと、繊維強化プラスチック線材4が曲がることなく直線で引き込まれていくことにより、周囲の樹脂未含浸の強化繊維ロービング束5も直線性を保ちながら引き込まれていく。そのため、樹脂未含浸の強化繊維ロービング束5の糸の緩み、絡みによる膨れ現象が少なくなり、より多くの強化繊維を投入できる。また、強化繊維の直線性も確保できることから、非常に高い物性の発現を得ることが可能となる。
【0116】
(2)繊維強化プラスチック線材4は既に硬化された固体であり、且つ直線であるため、この表面には必ず隙間が発生し、樹脂R2がこの線材4の表面を伝わって通り易くなる。それで、金属パイプ2の補強すべき空間に、適切にこの繊維強化プラスチック線材4を1本以上配置することにより、樹脂R2の通り道の形成が可能となる。この樹脂R2が線材4の周囲の樹脂未含浸強化繊維ロービング束5に拡散、含浸することにより、金属パイプ2と内パイプ20との間の環状空間全体へ樹脂が回り、繊維強化プラスチックと金属パイプが接着し、一体化した補強物(補強金属パイプ)が得られる。
【0117】
樹脂未含浸強化繊維ロービング束5のみを金属パイプ2の内側の補強すべき空間に引き込んだ、線材4の入っていない場合は、樹脂が金属パイプの内側表面を伝わり、空間の中央部へは含浸して行かない状況となる。
【0118】
(3)繊維強化プラスチック線材4を伝わって流れていく樹脂R2が、線材周囲の回りの樹脂未含浸ロービング束5に拡散、含浸され、金属パイプ2と内パイプ20との間の環状空間全体へ確実に樹脂R2が回るようにするためには、線材4と線材4との距離が短くなるように、線材を配置するか、若しくは、樹脂R2が強化繊維ロービング束5、5間に入り易くなる撚り入り強化繊維ロービング束5bを用いるのが好ましい。
【0119】
尚、繊維強化プラスチック線材4で撚り入りの繊維強化プラスチック線材4bを使用した場合、及び/又は、樹脂未含浸の強化繊維ロービング束5で撚り入り強化繊維ロービング束5bを使用した場合、金属パイプ2の内側の補強すべき空間内に投入する撚り入り繊維強化プラスチック線材4b、及び、ロービング束5bは、撚り方向がS撚り(左ネジ撚り)、Z撚り(右ネジ撚り)のものを、ほぼ同数本投入する方が良い。
【0120】
(実験例の説明)
次に、本発明に係る繊維強化プラスチックにて補強された補強金属パイプ、及び、金属パイプの内面を繊維強化プラスチックにて補強する補強方法の作用効果を立証するべく、種々の試験サンプルを作製し、樹脂含浸性、曲げ強度に対する性能試験を行った。
【0121】
(A)第1の実験例(実験例1〜12)
第1の実験例では、
図1に示す矩形状断面を有した金属パイプ2を使用し、繊維強化プラスチックを構成する繊維強化プラスチック線材4及び強化繊維ロービング束5を種々変更して補強金属パイプ1を作製した。
【0122】
(試験サンプル)
(a)金属パイプ(2)
外寸(H1):9.0mm角、内寸(H2):6.6mm角、厚み(T):1.2mm、長さ(L):33cmのアルミ製角パイプを使用した(内側断面積(S):43.56mm
2)。アルミの曲げ弾性率(E1)は69GPa、比重は2.7である。
【0123】
尚、計算により、以下のことが求められる。
・9mm角の断面積:81mm
2
・6.6mm角の断面積:43.56mm
2
・9mm角の1.2mm厚部の断面積:37.44mm
2
【0124】
(b)繊維強化プラスチック線材(4)
第1の強化繊維f1の繊維束として炭素繊維束(炭素繊維フィラメント平均径:7μm、収束本数:15000本)(三菱レイヨン株式会社製「TR50」(商品名)を使用し、マトリクス樹脂R1としてエポキシ樹脂(三井化学株式会社製「エポラック R140P」商品名)を含浸して固めた平均径1.1mm(直径)の繊維強化プラスチック線材4を使用した(Vf:61%)。炭素繊維束は10ターン(回)/mの撚り入りとした。即ち、撚り入り繊維強化プラスチック線材4bを使用した。
【0125】
尚、炭素繊維束(15KCF)の断面積は、0.577mm
2、Vf=61%のときの繊維強化プラスチック線材4bの断面積は、0.9459mm
2(直径約1.1mm)である。
【0126】
(c)樹脂未含浸の強化繊維ロービング束(5)(第2の強化繊維f2)
第2の強化繊維f2のロービング束5である炭素繊維束(炭素繊維フィラメント平均径:7μm、収束本数:24000本)(東レ株式会社製「T700S」(商品名)を使用した。撚り入り強化繊維ロービング束5bとしては、10ターン(回)/mの撚りの入ったものを使用した。また、炭素繊維束(24KCF)の断面積は、0.924mm
2である。
【0127】
(d)含浸樹脂(R2)
含浸樹脂R2としてエポキシ樹脂(ナガセケムテック株式会社製「XNR/H6815」(商品名))を使用した。許容可使時間:120分、粘度:260mPa・s(at 25℃)であった。
【0128】
(試験サンプルの種類)
複数本の連続した上記繊維強化プラスチック線材4(即ち、本実験例では撚り入り繊維強化プラスチック線材4b)と、複数本の連続した上記強化繊維ロービング束5を混合して、樹脂未含浸の強化繊維補強体3aを作製した。この強化繊維補強体3aを金属パイプ2の内側に引き込んで、未だ樹脂が含浸されていない試験サンプルを作製した。
【0129】
尚、試験サンプルを作製するに際して、次のことが分かった。つまり、
(1)撚り入りの樹脂未含浸の強化繊維ロービング束5bも撚り無しの樹脂未含浸の強化繊維ロービング束5aも、Vf=53%以上は、抵抗が大きくなり、糸切れも発生し、金属パイプ2内へと投入することができなかった。
(2)繊維強化プラスチック線材4bを23本入れたものは、撚り入りの樹脂未含浸の強化繊維ロービング束5bで、Vf=62%まで、撚り無しの樹脂未含浸の強化繊維ロービング束5aで、Vf=58%まで引き込むことができた。これ以上は、抵抗が大きくなり、糸切れも発生し、金属パイプ内へと投入することができなかった。
(3)繊維強化プラスチック線材4bを5本入れたものは、撚り入りの樹脂未含浸の強化繊維ロービング束5bで、Vf=55%以上は、抵抗が大きくなり、糸切れも発生し、金属パイプ内へと投入することができなかった。繊維強化プラスチック線材4の金属パイプ内面空間に占める断面積は、約10%である。
【0130】
上記実験結果を考慮して、樹脂含浸前の試験サンプルは以下の通りに作製した。
【0131】
(試験サンプル1)
撚り無しの樹脂未含浸の強化繊維ロービング束(24KCF)5aを25本を引き込んだものであり、Vf=53%であった。
【0132】
ここで、計算により試験サンプル1の予想曲げ弾性率を求めると、80.4GPaとなる。
【0133】
(試験サンプル2)
撚り入りの樹脂未含浸の強化繊維ロービング束(24KCF)5bを25本引き込んだものであり、試験サンプル1と同じであり、Vf=53%であった。
【0134】
また、計算により求めた試験サンプル2の予想曲げ弾性率は、試験サンプル1と同じであり、80.4GPaである。
【0135】
(試験サンプル3)
撚り入りの樹脂未含浸の強化繊維ロービング束(24KCF)5bを17本を引き込んだものであり、Vf=36%であった。
【0136】
ここで、計算により試験サンプル3の予想曲げ弾性率を求めると、70.3GPaである。
【0137】
(試験サンプル4)
撚り入り繊維強化プラスチック線材(15KCF)4bを23本、撚り入りの樹脂未含浸の強化繊維ロービング束(24KCF)5bを15本を引き込んだものであり、
(1)撚り入り繊維強化プラスチック線材(15KCF)4bの占有面積比率は、50%であり、
(2)CFRP部全体の繊維含有率は、Vf=62%であった。
【0138】
ここで、計算により試験サンプル4の予想曲げ弾性率を求めると、85.7GPaとなる。
【0139】
(試験サンプル5)
撚り入り繊維強化プラスチック線材(15KCF)4bを23本、撚り無しの樹脂未含浸の強化繊維ロービング束(24KCF)5aを13本を引き込んだものであり、
(1)撚り入り繊維強化プラスチック線材(15KCF)4bの占有面積比率は、50%であり、
(2)CFRP部全体の繊維含有率は、Vf=58%であった。
【0140】
ここで、計算により試験サンプル5の予想曲げ弾性率を求めると、83.3GPaとなる。
【0141】
(試験サンプル6)
撚り入り繊維強化プラスチック線材(15KCF)4bを5本、撚り入りの樹脂未含浸の強化繊維ロービング束(24KCF)5bを23本を引き込んだものであり、
(1)撚り入り繊維強化プラスチック線材(15KCF)4bの占有面積比率は、10.9%であり、
(2)CFRP部全体の繊維含有率は、Vf=55%であった。
【0142】
ここで、計算により試験サンプル6の予想曲げ弾性率を求めると、81.5GPaとなる。
【0143】
(試験サンプル7〜12)
上記試験サンプル1〜6における金属パイプ2の長さを100cmとした試験サンプル7〜12を作製し、その時の樹脂含浸性を試験した。試験サンプル7〜12のその他の条件は上記試験サンプル1〜6と同じであった。
【0144】
上記試験サンプルを使用した樹脂含浸性、曲げ強度試験は、次のようにして行った。
【0145】
(樹脂含浸試験)
樹脂含浸方法は、上述のように、金属パイプ2としての角パイプの内側全長に、連続した樹脂未含浸の強化繊維ロービング束5、又は、連続した繊維強化プラスチック線材4と連続した樹脂未含浸の強化繊維ロービング束5との混合物(即ち、樹脂未含浸強化繊維補強体3a)を作製し、各試験サンプル1〜12を、
図5(c)に示すように、片側端部を含浸させる樹脂槽110に入れ、他方端部に真空で引けるようにバグフィルム100を被せ、真空ポンプ104で角パイプ内部の空気を引きながら、樹脂を含浸させた。その時に掛った時間を測定した。その結果を実験例1〜12として表1に示す。
【0146】
尚、実験例7における樹脂含浸時間における「60(30cm)」は、60分でも30cm強しか樹脂含浸できなかったことを意味しており、同様に、実験例8における樹脂含浸時間における「60(50cm)」は、60分でも50cm強しか樹脂含浸できなかったことを意味する。
【0147】
(曲げ試験)
樹脂含浸された上記試験サンプル1〜6を常温で24時間放置後、硬化炉に入れ、80℃、2時間で樹脂を硬化させ、繊維強化プラスチック補強体3で補強された補強金属パイプ1を作製した。この補強金属パイプ(試験サンプル1〜6)に対して曲げ試験を実施した。曲げ試験は、JISK7203法による3点曲げ試験にて行った。曲げ試験結果を実験例1〜12にて「実測値」として表1に示す。
【0148】
なお、比較例1として、中実のアルミロッド、即ち、:9.0mm角の角ロッドを使用して曲げ試験を行った結果を示す。曲げ弾性率が69GPa、m単重(1m当たりの重さ)は219g/mであった。
【0150】
上記実験例1〜12の実験結果から下記のことが言える。
(考察)
(a)実験例1(試験サンプル1)及び実験例2(試験サンプル2)の曲げ試験では、計算で予測した曲げ弾性率を達成できなかった。曲げ試験後、試験サンプルを中央部付近で切断して、樹脂の含浸状況を調査した。切断面の中央部付近で、樹脂の未含浸部が見られたことから、これが弾性率低下の原因と考えられる。
(b)実験例3(試験サンプル3)、実験例4(試験サンプル4)、実験例5(試験サンプル5)、実験例6(試験サンプル6)の曲げ試験では、ほぼ計算で予測した曲げ弾性率を達成することができた。曲げ試験後、試験サンプルを中央部付近で切断して、樹脂の含浸状況を調査したところ、樹脂の未含浸部は見当たらなかった。このことにより、樹脂含浸が有効にできていることが判明した。
(c)実験例4(試験サンプル4)と比較例1とを比較すると、実験例4は、曲げ弾性率で、約25%のアップとなり、且つ、m単重で、約22%の軽量化が図れることが分かる。
【0151】
(B)第2の実験例(実験例13、14)
第2の実験例では、
図6に示す矩形状断面を有した金属パイプ(外パイプ)2と、芯材としての矩形断面を有した金属パイプ(内パイプ)20とを備えた2重管構造の補強金属パイプ1について、第1の実験例と同様に、繊維強化プラスチックを構成する繊維強化プラスチック線材4及び強化繊維ロービング束5を種々変更して補強金属パイプを作製した。
【0152】
(試験サンプル)
(a)金属パイプ(2、20)
(外パイプ2)
外寸(H1):15mm角、内寸(H2):12.6mm角、厚み(T1):1.2mm、長さ(L):33cmのアルミ製角パイプを使用した。
(内パイプ20)
外寸(H3):9.0mm角、内寸(H4):6.6mm角、厚み(T2):1.2mm、長さ(L):33cmのアルミ製角パイプを使用した。
【0153】
内パイプ20と外パイプ2との空間の断面積:77.76mm
2、アルミの曲げ弾性率(E1)は69GPa、比重は2.7である。
【0154】
尚、計算により、以下のことが求められる。
・9mm角の断面積:81mm
2
・6.6mm角の断面積:43.56mm
2
・9mm角の1.2mm厚部の断面積:37.44mm
2
・15mm角の断面積:225mm
2
・12.6mm角の断面積:158.76mm
2
・15mm角の1.2mm厚部の断面積:66.24mm
2
・12.6mm角と9mm角の間の断面積:77.76mm
2
【0155】
(b)繊維強化プラスチック線材(4)
第1の強化繊維f1の繊維束として炭素繊維束(炭素繊維フィラメント平均径:7μm、収束本数:15000本)(三菱レイヨン株式会社製「TR50」(商品名)を使用し、マトリクス樹脂R1としてエポキシ樹脂(三井化学株式会社製「エポラック R140P」商品名)を含浸して固めた平均径1.1mm(直径)の繊維強化プラスチック線材4を使用した(Vf:61%)。炭素繊維束は10ターン(回)/mの撚り入りとした。即ち、撚り入り繊維強化プラスチック線材4bを使用した。
【0156】
尚、炭素繊維束(15KCF)の断面積は、0.577mm
2、Vf=61%のときの繊維強化プラスチック線材4bの断面積は、0.9459mm
2(直径約1.1mm)である。
【0157】
(c)樹脂未含浸の強化繊維ロービング束(5)(第2の強化繊維f2)
第2の強化繊維f2のロービング束5である炭素繊維束(炭素繊維フィラメント平均径:7μm、収束本数:24000本)(東レ株式会社製「T700S」(商品名)を使用した。撚り入り強化繊維ロービング束5bとしては、10ターン(回)/mの撚りの入ったものを使用した。また、炭素繊維束(24KCF)の断面積は、0.924mm
2である。
【0158】
(d)含浸樹脂(R2)
含浸樹脂R2としてエポキシ樹脂(ナガセケムテック株式会社製「XNR/H6815」(商品名))を使用した。許容可使時間:120分、粘度:260mPa・s(at 25℃)であった。
【0159】
(試験サンプルの種類)
内パイプ20の周囲に複数本の連続した上記繊維強化プラスチック線材4と、複数本の連続した上記強化繊維ロービング束5を混合して配置して樹脂未含浸の強化繊維補強体3aを作製した。この強化繊維補強体を金属パイプの内側に引き込んで、未だ樹脂が含浸されていない試験サンプルを作製した。
【0160】
(試験サンプル13)
撚り入り繊維強化プラスチック線材(15KCF)4bを28本、撚り入りの樹脂未含浸の強化繊維ロービング束(24KCF)5bを32本を引き込んだものであり、
(1)撚り入り繊維強化プラスチック線材(15KCF)4bの占有面積比率は、34%であり、
(2)CFRP部全体の繊維含有率は、Vf=55%であった。
【0161】
ここで、計算により試験サンプル13の予想曲げ弾性率を求めると、82.4GPaである。
【0162】
(試験サンプル14)
撚り入り繊維強化プラスチック線材(15KCF)4bを8本、撚り入りの樹脂未含浸の強化繊維ロービング束(24KCF)5bを38本を引き込んだものであり、
(1)撚り入り繊維強化プラスチック線材(15KCF)4bの占有面積比率は、10%であり、
(2)CFRP部全体の繊維含有率は、Vf=51%であった。
【0163】
ここで、計算により試験サンプル14の予想曲げ弾性率を求めると、79.3GPaである。
【0164】
上記試験サンプルに対して、上記実験例1と同様にして樹脂含浸性、曲げ強度試験を行った。その結果を表1に示す。
【0165】
なお、比較例2として、上記CFRP部が中実のアルミロッドで構成された試験片を使用して曲げ試験を行った結果を示す。即ち、曲げ弾性率は、66.4GPaであり、m単重(1m当たりの重さ)は490g/mであった。
【0166】
尚、試験サンプルを作製するに際して、次のことが分かった。つまり、
(1)繊維強化プラスチック線材が干渉して、線材の投入量が、投入すべき断面積の40%程度しかできなかった。トータル投入CF量も、Vf=55%程度しかできないことが判明した。
(2)繊維強化プラスチック線材の占有率が10%以下になると、トータル投入CF量がさらに低下し、Vf=51%程度にしかならないことが分かった。
【0167】
上記実験例13、14の実験結果から下記のことが言える。
(考察)
(1)樹脂含浸性試験に関し
第1の実験例と同様に、繊維強化プラスチック線材4の投入量が少ないと、樹脂含浸に時間を要し、占有面積が10%を切ると、樹脂含浸時間がかかり、長尺物へは、対応が難しくなることが判明した。
(2)曲げ試験に関し
実験例13の曲げ試験結果と、比較例2に示すアルミ相当部材との比較で、曲げ弾性率で、アルミ相当部材の約1.25倍、m単重で、約17%の軽量化が図れることが分かった。