(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-4252(P2015-4252A)
(43)【公開日】2015年1月8日
(54)【発明の名称】コンクリート構造物耐震補強部材及びコンクリート構造物耐震補強工法
(51)【国際特許分類】
E04G 23/02 20060101AFI20141205BHJP
【FI】
E04G23/02 F
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-131420(P2013-131420)
(22)【出願日】2013年6月24日
(11)【特許番号】特許第5435832号(P5435832)
(45)【特許公報発行日】2014年3月5日
(71)【出願人】
【識別番号】593179783
【氏名又は名称】株式会社フジモト
(74)【代理人】
【識別番号】100119220
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 武彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100094787
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 健二
(72)【発明者】
【氏名】槇谷 榮次
(72)【発明者】
【氏名】藤本 隆司
【テーマコード(参考)】
2E176
【Fターム(参考)】
2E176AA04
2E176BB29
(57)【要約】
【課題】構造が簡単で組み立て作業が容易で、正確に位置決めすることが可能で、耐震性能を格段に向上することが可能なコンクリート構造物耐震補強部材及びコンクリート構造物耐震補強工法を提供することを目的とする。
【解決手段】1対を向き合わせてコンクリート構造物8の柱または梁の周囲に間隙をおいて配置され硬化剤が充填されコンクリート構造物と一体化されるコンクリート構造物耐震補強部材1において、水平切断面がコ字形または半円形の本体部2と、前記本体部の上下に内側に水平に伸びるように形成される上下フランジ部3,4と、前記上下フランジ部間に形成される垂直部5と、前記上フランジ部の前端から垂直に上部に伸びる複数の位置決め用爪部材7と、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対を向き合わせてコンクリート構造物の柱または梁の周囲に間隙をおいて配置され硬化剤が充填されコンクリート構造物と一体化されるコンクリート構造物耐震補強部材において、水平切断面がコ字形または半円形の本体部と、前記本体部の上下に内側に水平に伸びるように形成される上下フランジ部と、前記上下フランジ部間に形成される垂直部と、前記上フランジ部の前端から垂直に上部に伸びる複数の位置決め用爪部材と、を備えることを特徴とするコンクリート構造物耐震補強部材。
【請求項2】
前記上下フランジ部に複数の開口を形成し、複数のコンクリート構造物補強部材を縦方向または横方向に連設配置する際、隣り合う上下フランジ部の前記開口が合致するように形成することを特徴とする請求項1に記載のコンクリート構造物耐震補強部材。
【請求項3】
前記コンクリート構造物耐震補強部材を鋼製また強化樹脂製とすることを特徴とする請求項1または2に記載のコンクリート構造物耐震補強部材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかのコンクリート構造物耐震補強部材1対をコンクリート構造物の柱または梁の周囲を囲むように互いに向き合うよう配置し、縦方向または横方向に連設配置する際、隣り合うコンクリート構造物耐震補強部材の向きを90度変えて配置し、コンクリート構造物の周囲をコンクリート構造物耐震補強部材で間隙を開けて囲み、連設したコンクリート構造物補強部材を固定した後、コンクリート構造物とコンクリート構造物耐震補強部材間の間隙に硬化剤を充填し固化させコンクリート構造物とコンクリート構造物耐震補強部材を一体化することを特徴とするコンクリート構造物耐震補強工法。
【請求項5】
コンクリート構造物とコンクリート構造物耐震補強部材間の間隙に鉄筋を配筋することを特徴とする請求項4に記載のコンクリート構造物耐震補強工法。
【請求項6】
コンクリート構造物の周囲に配置したコンクリート構造物耐震補強部材の外周に接着剤を介して高張力繊維シートを巻き付け固定することを特徴とする請求項4または5に記載のコンクリート構造物耐震補強工法。
【請求項7】
前記高張力繊維シートの上に繊維補強モルタルを積層して表面仕上げすることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載のコンクリート構造物耐震補強工法。
【請求項8】
前記硬化剤を有機繊維、鋼繊維を含む高強度繊維補強モルタルとすることを特徴とする請求項4ないし7のいずれか1項に記載のコンクリート構造物耐震補強工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物の柱や梁の耐震補強に用いるコンクリート構造物耐震補強部材及びそれを用いたコンクリート構造物耐震補強工法に関する。
【0002】
過去の大地震により鉄筋コンクリート構造物が大きな被害を受けた。その被害の原因としてコンクリート構造物のせん断破壊が指摘されている。コンクリート構造物のせん断破壊を防止し、復元力特性の安定と粘りを確保するには、コンクリート構造物を有効に拘束することが最適であることが判明している。
【0003】
このような考えに基づいて、コンクリート構造物の柱や梁の外周に鋼板や繊維補強シートを巻き付けてせん断耐力を高めるコンクリート構造物耐震補強構造や、コンクリート構造物の柱や梁の外周を鋼板で巻き、鋼板とコンクリート構造物の間にモルタル等を充填し固化させるコンクリート構造物耐震補強構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−265680号公報
【特許文献2】特開2006−63608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、コンクリート部材に繊維シートを貼着する耐震補強構造は、コンクリート部材が大きな応力を受けるとコンクリートとの付着性能が十分でないとコンクリート表面から繊維シートが剥がれてしまい、その強度を発揮することができないという問題を有する。
【0006】
また、コンクリート構造物の周囲を鋼板で巻き、鋼板とコンクリート構造物の間にモルタル等を充填して固化する耐震補強構造は、予め工場で成形した鋼板を現場で組み立て、その継手部を溶接等の手段により接合するものであるため、狭い空間での作業のため溶接作業が困難であり、溶接不良が発生しやすいという問題を有する。
【0007】
本発明は、従来技術のもつ課題を解決する、構造が簡単で組み立て作業が容易で、正確に位置決めすることが可能で、耐震性能を格段に向上することが可能なコンクリート構造物耐震補強部材及びコンクリート構造物耐震補強工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のコンクリート構造物耐震補強部材は、前記課題を解決するために、1対を向き合わせてコンクリート構造物の柱または梁の周囲に間隙をおいて配置され硬化剤が充填されコンクリート構造物と一体化されるコンクリート構造物耐震補強部材において、水平切断面がコ字形または半円形の本体部と、前記本体部の上下に内側に水平に伸びるように形成される上下フランジ部と、前記上下フランジ部間に形成される垂直部と、前記上フランジ部の前端から垂直に上部に伸びる複数の位置決め用爪部材と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明のコンクリート構造物耐震補強部材は、前記上下フランジ部に複数の開口を形成し、複数のコンクリート構造物補強部材を縦方向または横方向に連設配置する際、隣り合う上下フランジ部の前記開口が合致するように形成することを特徴とする。
【0010】
また、本発明のコンクリート構造物耐震補強部材は、前記コンクリート構造物耐震補強部材を鋼製また強化樹脂製とすることを特徴とする。
【0011】
また、本発明のコンクリート構造物耐震補強工法は、請求項1〜3のいずれかのコンクリート構造物耐震補強部材1対をコンクリート構造物の柱または梁の周囲を囲むように互いに向き合うよう配置し、縦方向または横方向に連設配置する際、隣り合うコンクリート構造物耐震補強部材の向きを90度変えて配置し、コンクリート構造物の周囲をコンクリート構造物耐震補強部材で間隙を開けて囲み、コンクリート構造物とコンクリート構造物耐震補強部材間の間隙に硬化剤を充填し固化させコンクリート構造物とコンクリート構造物耐震補強部材を一体化することを特徴とする。
【0012】
また、本発明のコンクリート構造物耐震補強工法は、コンクリート構造物とコンクリート構造物耐震補強部材間の間隙に鉄筋を配筋することを特徴とする。
【0013】
また、本発明のコンクリート構造物耐震補強工法は、コンクリート構造物の周囲に配置したコンクリート構造物耐震補強部材の外周に接着剤を介して高張力繊維シートを巻き付け固定することを特徴とする。
【0014】
また、本発明のコンクリート構造物耐震補強工法は、前記高張力繊維シートの上に繊維補強モルタルを積層して表面仕上げすることを特徴とする。
【0015】
また、本発明のコンクリート構造物耐震補強工法は、前記硬化剤を有機繊維、鋼繊維を含む高強度繊維補強モルタルとすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
1対を向き合わせてコンクリート構造物の柱または梁の周囲に間隙をおいて配置され硬化剤が充填されコンクリート構造物と一体化されるコンクリート構造物耐震補強部材において、水平切断面がコ字形または半円形の本体部と、前記本体部の上下に内側に水平に伸びるように形成される上下フランジ部と、前記上下フランジ部間に形成される垂直部と、前記上フランジ部の前端から垂直に上部に伸びる複数の位置決め用爪部材と、を備えることで、水平上下フランジ部が縦方向または横方向に連設する際確実に整列し、さらに上フランジ部に配置した位置決め用爪部材が隣り合うコンクリート構造物補強部材を正確に位置決めすることが可能となり、上下フランジ部及び垂直部が硬化剤でコンクリート構造物と一体化される際補強リブとして機能する。
上下フランジ部に複数の開口を形成し、複数のコンクリート構造物補強部材を縦方向または横方向に連設配置する際、隣り合う上下フランジ部の前記開口が合致するように形成することで、コンクリート構造物とコンクリート構造物補強部材間に硬化剤を充填する際、開口が空気をに逃がす通路となり、硬化剤が固化する際の空洞の形成を防止することが可能となる。
コンクリート構造物耐震補強部材を鋼製また強化樹脂製とすることで、入手が容易であり成形が容易な材料であるので低コストで製造が可能となる。
コンクリート構造物耐震補強部材1対をコンクリート構造物の柱または梁の周囲を囲むように互いに向き合うよう配置し、縦方向または横方向に連設配置する際、隣り合うコンクリート構造物耐震補強部材の向きを90度変えて配置し、コンクリート構造物の周囲をコンクリート構造物耐震補強部材で間隙を開けて囲み、前記コンクリート構造物耐震補強部材を固定した後、コンクリート構造物とコンクリート構造物耐震補強部材間の間隙に硬化剤を充填し固化させコンクリート構造物とコンクリート構造物耐震補強部材を一体化することで、水平上下フランジ部が縦方向または横方向に連設する際確実に整列し、さらに上フランジ部に配置した位置決め用爪部材が隣り合うコンクリート構造物補強部材を正確に位置決めすることが可能となるので組立て作業を効率良く実施することができる。また、上下フランジ部及び垂直部が硬化剤でコンクリート構造物と一体化される際補強リブとして機能し、耐震性能の高い耐震工法を提供することが可能となる。
コンクリート構造物とコンクリート構造物耐震補強部材間の間隙に鉄筋を配筋することで、より耐震性能が向上する。
コンクリート構造物の周囲に配置したコンクリート構造物耐震補強部材の外周に接着剤を介して高張力繊維シートを巻き付け固定することで、コンクリート構造物耐震補強材の固定に溶接等の手段を用いることなく、耐震性能を向上させて容易に固定作業を実施することが可能となる。
高張力繊維シートの上に繊維補強モルタルを積層して表面仕上げすることで、外観上の美観が向上すると共に耐震性能を向上することが可能となる。
硬化剤を有機繊維、鋼繊維を含む高強度繊維補強モルタルとすることで、狭い間隙にも流動性、自己充填性を持ち、硬化後のコンクリート構造物とコンクリート構造物耐震補強部材を強固に一体化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】(a)(b)本発明の実施形態を示す図である。
【
図3】(a)(b)本発明の実施形態を示す図である。
【
図5】(a)(b)本発明の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態を図により説明する。
図1(a)(b)、
図2は、本発明のコンクリート構造物補強部材の一実施形態を示す図である。
【0019】
この実施形態のコンクリート構造物補強部材1は、断面が矩形のコンクリート構造物の柱または梁の耐震補強のために使用される。コンクリート構造物補強部材1は、水平切断面がコ字形の本体部2を備えている。本体部2の上下に一定幅で水平に内側に伸びる上フランジ部3と下フランジ部4が形成される。上フランジ部3と下フランジ部4及び本体部2の両側端に垂直部5が形成される。
【0020】
上フランジ部3と下フランジ部4には所定間隔で開口6が形成される。開口6の形成位置に関しては後述する。上フランジ部3の前端に複数の位置決め爪部材7が上フランジ部3の表面から上部に垂直に伸びるように配置される。位置決め爪部材7の作用については後述する。
【0021】
図2は、断面矩形のコンクリート構造物8の柱または梁の周囲に1対のコンクリート構造物補強部材1を互いに向き合い垂直部5が面接触しコンクリート構造物8とコンクリート構造物補強部材1,1間に一定の空隙が形成された状態を示す図である。コンクリート構造物補強部材1は、鋼製または強化樹脂等の一定の強度を有し、入手が容易で、成形加工が容易な材料で形成される。
【0022】
図3(a)(b)、
図4は、本発明のコンクリート構造物補強部材の他の実施形態を示す図である。
【0023】
この実施形態のコンクリート構造物補強部材1aは、断面が円形のコンクリート構造物の柱または梁の耐震補強のために使用される。コンクリート構造物補強部材1aは、水平切断面がコ字形の本体部2aを備えている。本体部2aの上下に一定幅で水平に内側に伸びる上フランジ部3aと下フランジ部4aが形成される。上フランジ部3aと下フランジ部4a及び本体部2aの両側端に垂直部5aが形成される。
【0024】
上フランジ部3aと下フランジ部4aには所定間隔で開口6aが形成される。開口6aの形成位置に関しては後述する。上フランジ部3aの前端に複数の位置決め爪部材7aが上フランジ部3aの表面から上部に垂直に伸びるように配置される。位置決め爪部材7aの配置位置と作用については後述する。
【0025】
図4は、断面円形のコンクリート構造物8aの柱または梁の周囲に1対のコンクリート構造物補強部材1aを互いに向き合い垂直部5が面接触しように配置し、コンクリート構造物8aとコンクリート構造物補強部材1a,1a間に一定の空隙が形成された状態を示す図である。
【0026】
図5(a)(b)は、
図1(a)(b)に示されるコンクリート構造物補強部材1を用いたコンクリート構造物8の耐震補強の実施形態を示す図である。この実施形態では、コンクリート構造物1として断面矩形のコンクリート柱を例とし、コンクリート構造物耐震補強部材1を縦方向に連設しているが、コンクリート梁の場合、支持部材で支持しながらコンクリート構造物耐震補強部材1を横方向に連設していく。コンクリート構造物の断面が円形の場合は、
図3(a)(b)に示すコンクリート構造物耐震補強部材1aを用いる。
【0027】
最初に耐震補強するコンクリート構造物8の表面の劣化部分等をはつり作業により除去し、コンクリート構造物の表面を粗面とする。はつり深さはかぶりコンクリートの深さ以内とする。その後、コンクリート構造物8の周囲に鉄筋9を配筋する。
【0028】
周囲に鉄筋9が配筋されたコンクリート構造物8の周囲にコンクリート構造物耐震補強部材1を向い合せに互いの垂直部5が面接触するように配置する。この実施形態では、コンクリート構造物8がコンクリート柱であるため、コンクリート構造物耐震補強部材1を縦方向に連設していく。1段目のコンクリート構造物耐震補強部材1の上に2段目のコンクリート構造物耐震補強部材1を積層する。2段目のコンクリート構造物耐震補強部材1は、1段目のコンクリート構造物耐震補強部材と90度向きを変えて配置する。90度向きを変えて順に積層していくのは、垂直部同士の接合部が1列に整列しないようにして地震時の曲げモーメントに対する抵抗力の減少を防止するためである。
【0029】
図7は、互いに向き合うように配置した1対のコンクリート構造物耐震補強部材1の上に、1個のコンクリート構造物耐震補強部材1を下部のコンクリート構造物耐震補強部材1の向きに対して90度向きを変えて積層した状態を示す図である。
図7に示すように1段目のコンクリート構造物耐震補強部材1の上フランジ部3の前端に配置された位置決め爪部材7が2段目のコンクリート構造物耐震補強部材1の下フランジ部4の前端に当接して2段目のコンクリート構造物耐震補強部材1の積層位置を正確に位置決めする。
【0030】
1段目のコンクリート構造物耐震補強部材1の上に2段目のコンクリート構造物耐震補強部材1を90度向きを変えて積層すると、上下フランジ部3,4の開口6の形成位置は、1段目のコンクリート構造物耐震補強部材の上フランジ部3に形成した開口6と、2段目のコンクリート構造物耐震補強部材1の下フランジ部4に形成した開口6が互いに連通するように形成される。複数段のコンクリート構造物耐震補強部材1をコンクリート構造物8の周囲を囲むように積層し、コンクリート構造物耐震補強部材1を固定した後、コンクリート構造物8とコンクリート構造物耐震補強材間の間隙に硬化剤を充填し硬化させ、一体化する。その際、開口6が連通しているので硬化剤中の空気を逃がし、硬化後の硬化剤中の空洞の発生を防止する。
【0031】
図6は、コンクリート構造物8の周囲に積層したコンクリート構造物耐震補強部材1を固定する1実施形態を示す図であ
る。この実施形態は、コンクリート構造物耐震補強材1の周囲に高張力繊維シート10を接着剤を介して巻き付け固定するものである。コンクリート構造物耐震補強部材1の固定に溶接などの手段を用いないので、固定作業が容易であり、固定後のコンクリート構造物耐震補強部材1の強度も増加し、結果として耐震性能が向上する。高張力繊維シート10の巻き付け固定が終了した後、その上に繊維補強モルタルを積層して表面仕上げする。繊維補強モルタルで表面仕上げすることで、外観上の美観が向上すると共に耐震性能を向上することが可能となる。
【0032】
コンクリート構造物1とコンクリート構造物耐震補強部材1間の間隙に充填される硬化剤としては、流動性、自己充填性に優れ、硬化後の強度の大きなものが望まれる。その1つとして、鋼繊維や有機繊維を配合した高強度繊維補強コンクリートのモルタルがあげられる。積層されるコンクリート構造物耐震補強部材1の上下フランジ部3,4及び垂直部5が補強リブとして機能を発揮し、硬化剤の硬化によりコンクリート構造物8と一体化し耐震性能を格段に向上することが可能となる。
【0033】
以上のように、本発明のコンクリート構造物耐震補強部材及びそれを用いたコンクリート構造物耐震補強工法によれば、水平上下フランジ部が縦方向または横方向に連設する際確実に整列し、さらに上フランジ部に配置した位置決め用爪部材が隣り合うコンクリート構造物補強部材を正確に位置決めすることが可能となるので組立て作業を効率良く実施することができる。また、上下フランジ部及び垂直部が硬化剤でコンクリート構造物と一体化される際補強リブとして機能し、耐震性能の高い耐震工法を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0034】
1,1a:コンクリート構造物補強部材、2,2a:本体部、3,3a:上フランジ部、4,4a:下フランジ部、5,5a:垂直部、6,6a:開口、7,7a:位置決め爪部材、8,8a:コンクリート構造物、9:鉄筋、10:高張力繊維シート
【手続補正書】
【提出日】2013年11月6日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対を向き合わせて、それを複数縦方向または横方向に連設配置してコンクリート構造物の柱または梁の周囲に間隙をおいて配置され、硬化剤が充填されコンクリート構造物と一体化されるコンクリート構造物耐震補強部材において、水平切断面がコ字形または半円形の本体部と、前記本体部の上下に内側に水平に伸びるように形成される上下フランジ部と、前記上下フランジ部間に形成される垂直部と、前記上フランジ部の前端から垂直に上部に伸びる複数の位置決め用爪部材と、を備え、
前記上下フランジ部に複数の開口を形成し、複数のコンクリート構造物補強部材を縦方向または横方向に連設配置する際、隣り合う上下フランジ部の前記開口が合致するように形成することを特徴とするコンクリート構造物耐震補強部材。
【請求項2】
前記コンクリート構造物耐震補強部材を鋼製また強化樹脂製とすることを特徴とする請求項1または2に記載のコンクリート構造物耐震補強部材。
【請求項3】
請求項1または2のコンクリート構造物耐震補強部材1対をコンクリート構造物の柱または梁の周囲を囲むように互いに向き合うよう配置し、縦方向または横方向に連設配置する際、隣り合うコンクリート構造物耐震補強部材の向きを90度変えて配置し、コンクリート構造物の周囲をコンクリート構造物耐震補強部材で間隙を開けて囲み、連設したコンクリート構造物補強部材を固定した後、コンクリート構造物とコンクリート構造物耐震補強部材間の間隙に硬化剤を充填し固化させコンクリート構造物とコンクリート構造物耐震補強部材を一体化することを特徴とするコンクリート構造物耐震補強工法。
【請求項4】
コンクリート構造物とコンクリート構造物耐震補強部材間の間隙に鉄筋を配筋することを特徴とする請求項3に記載のコンクリート構造物耐震補強工法。
【請求項5】
コンクリート構造物の周囲に配置したコンクリート構造物耐震補強部材の外周に接着剤を介して高張力繊維シートを巻き付け固定することを特徴とする請求項3または4に記載のコンクリート構造物耐震補強工法。
【請求項6】
前記高張力繊維シートの上に繊維補強モルタルを積層して表面仕上げすることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載のコンクリート構造物耐震補強工法。
【請求項7】
前記硬化剤を有機繊維、鋼繊維を含む高強度繊維補強モルタルとすることを特徴とする請求項3ないし6のいずれか1項に記載のコンクリート構造物耐震補強工法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明のコンクリート構造物耐震補強部材は、前記課題を解決するために、1対を向き合わせて
、それを複数縦方向または横方向に連設配置してコンクリート構造物の柱または梁の周囲に間隙をおいて配置され、硬化剤が充填されコンクリート構造物と一体化されるコンクリート構造物耐震補強部材において、水平切断面がコ字形または半円形の本体部と、前記本体部の上下に内側に水平に伸びるように形成される上下フランジ部と、前記上下フランジ部間に形成される垂直部と、前記上フランジ部の前端から垂直に上部に伸びる複数の位置決め用爪部材と、を備え、
前記上下フランジ部に複数の開口を形成し、複数のコンクリート構造物補強部材を縦方向または横方向に連設配置する際、隣り合う上下フランジ部の前記開口が合致するように形成することを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
1対を向き合わせて
、それを複数縦方向または横方向に連設配置してコンクリート構造物の柱または梁の周囲に間隙をおいて配置され、硬化剤が充填されコンクリート構造物と一体化されるコンクリート構造物耐震補強部材において、水平切断面がコ字形または半円形の本体部と、前記本体部の上下に内側に水平に伸びるように形成される上下フランジ部と、前記上下フランジ部間に形成される垂直部と、前記上フランジ部の前端から垂直に上部に伸びる複数の位置決め用爪部材と、を備え、
前記上下フランジ部に複数の開口を形成し、複数のコンクリート構造物補強部材を縦方向または横方向に連設配置する際、隣り合う上下フランジ部の前記開口が合致するように形成することで、水平上下フランジ部が縦方向または横方向に連設する際確実に整列し、さらに上フランジ部に配置した位置決め用爪部材が隣り合うコンクリート構造物補強部材を正確に位置決めすることが可能となり、上下フランジ部及び垂直部が硬化剤でコンクリート構造物と一体化される際補強リブとして機能し、コンクリート構造物とコンクリート構造物補強部材間に硬化剤を充填する際、開口が空気をに逃がす通路となり、硬化剤が固化する際の空洞の形成を防止することが可能となる。
コンクリート構造物耐震補強部材を鋼製また強化樹脂製とすることで、入手が容易であり成形が容易な材料であるので低コストで製造が可能となる。
コンクリート構造物耐震補強部材1対をコンクリート構造物の柱または梁の周囲を囲むように互いに向き合うよう配置し、縦方向または横方向に連設配置する際、隣り合うコンクリート構造物耐震補強部材の向きを90度変えて配置し、コンクリート構造物の周囲をコンクリート構造物耐震補強部材で間隙を開けて囲み、前記コンクリート構造物耐震補強部材を固定した後、コンクリート構造物とコンクリート構造物耐震補強部材間の間隙に硬化剤を充填し固化させコンクリート構造物とコンクリート構造物耐震補強部材を一体化することで、水平上下フランジ部が縦方向または横方向に連設する際確実に整列し、さらに上フランジ部に配置した位置決め用爪部材が隣り合うコンクリート構造物補強部材を正確に位置決めすることが可能となるので組立て作業を効率良く実施することができる。また、上下フランジ部及び垂直部が硬化剤でコンクリート構造物と一体化される際補強リブとして機能し、耐震性能の高い耐震工法を提供することが可能となる。
コンクリート構造物とコンクリート構造物耐震補強部材間の間隙に鉄筋を配筋することで、より耐震性能が向上する。
コンクリート構造物の周囲に配置したコンクリート構造物耐震補強部材の外周に接着剤を介して高張力繊維シートを巻き付け固定することで、コンクリート構造物耐震補強材の固定に溶接等の手段を用いることなく、耐震性能を向上させて容易に固定作業を実施することが可能となる。
高張力繊維シートの上に繊維補強モルタルを積層して表面仕上げすることで、外観上の美観が向上すると共に耐震性能を向上することが可能となる。
硬化剤を有機繊維、鋼繊維を含む高強度繊維補強モルタルとすることで、狭い間隙にも流動性、自己充填性を持ち、硬化後のコンクリート構造物とコンクリート構造物耐震補強部材を強固に一体化することが可能となる。