特開2015-4276(P2015-4276A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ボルボトラックコーポレーションの特許一覧 ▶ エルリングクリンガー・マルサン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2015004276-ガスケット 図000003
  • 特開2015004276-ガスケット 図000004
  • 特開2015004276-ガスケット 図000005
  • 特開2015004276-ガスケット 図000006
  • 特開2015004276-ガスケット 図000007
  • 特開2015004276-ガスケット 図000008
  • 特開2015004276-ガスケット 図000009
  • 特開2015004276-ガスケット 図000010
  • 特開2015004276-ガスケット 図000011
  • 特開2015004276-ガスケット 図000012
  • 特開2015004276-ガスケット 図000013
  • 特開2015004276-ガスケット 図000014
  • 特開2015004276-ガスケット 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-4276(P2015-4276A)
(43)【公開日】2015年1月8日
(54)【発明の名称】ガスケット
(51)【国際特許分類】
   F02F 11/00 20060101AFI20141205BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20141205BHJP
   F16J 15/12 20060101ALI20141205BHJP
【FI】
   F02F11/00 B
   F16J15/10 S
   F16J15/12 K
   F02F11/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-128158(P2013-128158)
(22)【出願日】2013年6月19日
(71)【出願人】
【識別番号】512272672
【氏名又は名称】ボルボトラックコーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】592145187
【氏名又は名称】エルリングクリンガー・マルサン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000431
【氏名又は名称】特許業務法人高橋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田 中 敦 之
(72)【発明者】
【氏名】熊 谷 進 吾
【テーマコード(参考)】
3J040
【Fターム(参考)】
3J040AA01
3J040AA12
3J040BA04
3J040EA22
3J040EA43
3J040FA05
3J040HA05
3J040HA17
3J040HA21
(57)【要約】
【課題】シリンダヘッドの冷却水孔とシリンダブロックの冷却水孔を水密に遮断することができて、しかも、ラバーが芯金から外れることがないガスケットの提供。
【解決手段】金属製の芯金(22)とラバー(23)を備え、シリンダブロック(11)の水孔(11wg)とシリンダヘッド(12)の水孔の(12wg)間の領域に配置されており、シリンダブロックの水孔(11wg)からシリンダヘッドの水孔(12wg)に向う冷却水の流れを遮断する位置に設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の芯金とラバーを備え、シリンダブロックの水孔とシリンダヘッドの水孔の間の領域に配置されており、シリンダブロックの水孔からシリンダヘッドの水孔に向う冷却水の流れを遮断する位置に設けられていることを特徴とするガスケット。
【請求項2】
芯金には貫通孔を形成し、芯金の表側及び裏側から貫通孔を覆い且つ貫通孔内に充填されるようにラバーを配置する請求項1のガスケット。
【請求項3】
芯金を半径方向内側の領域と半径方向外側の領域とに分割し、
前記ラバーは、半径方向内側の領域の芯金における半径方向外側縁部の表側及び裏側と、半径方向外側の領域の芯金における半径方向内側縁部の表側及び裏側を覆い、半径方向内側の領域の芯金と半径方向外側の領域の芯金との間の隙間部分に充填されている請求項1のガスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダブロックとシリンダヘッドとの間に介装して、冷却水漏洩を防止するガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来はシリンダブロックの冷却水孔は全てシリンダヘッドの冷却水孔と連通しており、ガスケットによりシリンダヘッドの冷却水孔とシリンダブロックの冷却水孔を水密に遮断することは行われていなかった。
これに対して発明者は種々研究の結果、シリンダブロックの冷却水孔を全てシリンダヘッドの冷却水孔と連通させず、一部のシリンダブロックの冷却水孔のみを対応するシリンダヘッドの冷却水孔と連通させて、残りのシリンダブロックの冷却水孔はシリンダヘッドの冷却水孔と連通させない構造を開発した。
係る構造は新規であり、冷却水が十分な運動エネルギーを保有した状態でシリンダヘッド内の冷却水孔に流入して、シリンダヘッド内を効率良く循環することが出来る。
【0003】
シリンダブロックの冷却水孔がシリンダヘッドの冷却水孔と連通していない箇所で使用されるガスケットの要部断面が図9で示されている。図9において、シリンダブロック11に形成された冷却水孔11wgと、水路11wgに連通するシリンダヘッド12に形成された冷却水孔12wgを、ガスケット(シリンダヘッドガスケット)20Jが遮断している。
ガスケット20Jは、上下2枚のガスケット本体21と、芯金22Jと、上下2枚のラバー部材23Jとで構成されている。
上下2枚のラバー部材23Jは同一形状であり、例えば耐熱性の接着剤によって芯金22Jの表裏両面に貼り付けられている。そして芯金22Jの縁部は、上下2枚のガスケット本体(ガスケットプレート)21によって、挟持されている。
図10は、図9で示すガスケット20Jの平面形状をしめしており、当該ガスケット20JのA−A断面が図11で示されており、B−B断面が図12で示されており、C−C断面が図13で示されている。
【0004】
図9図13で示すガスケット20Jは、上述した様に、シリンダブロックの冷却水孔がシリンダヘッドの冷却水孔と連通していない箇所で使用される場合がある。
そして、シリンダブロックの冷却水孔がシリンダヘッドの冷却水孔と連通していない箇所では、シリンダヘッドガスケット20Jにより、シリンダヘッドの冷却水孔12wgとシリンダブロックの冷却水孔11wgを水密に遮断しなければならない。
【0005】
しかし、図9図13で示す上記構造のガスケット20Jは、ラバー部材23Jが芯金22Jの表裏両面に耐熱性の接着剤によって貼り付けられているだけである。そのため、例えば、エンジンの分解整備を複数回繰り返している場合には、新たにエンジンを分解する際にガスケット20Jをシリンダブロック11上面から取り外す際に、ガスケット20Jがシリンダブロック11上面に固着していると、ラバー部材23Jが芯金22Jから偏奇してしまうことや、ラバー部材の縁部が捲れあがってしまうことや、変形することがある。
ラバー部材23Jが芯金22Jから偏奇し、ラバー部材の縁部が捲れあがり、或いは変形すると、エンジンの分解整備を終えてエンジンを組み立てる際に、当該ガスケット20Jをシリンダブロック11にシリンダヘッドを接続した際に、シリンダヘッドの冷却水孔12wgとシリンダブロックの冷却水孔11wgにおける水密性が損なわれてしまうという問題がある。
また、ガスケットを輸送している際に何らかの理由によって接着剤が効果を失った場合、ラバーが変形、もしくは脱落してしまう。
【0006】
その他の従来技術において、ステンレス鋼製のシールプレートとガスケット本体を有するガスケットが開示されているが(特許文献1参照)、冷却水通路とその外部を水密に隔離するためのものであり、シリンダヘッドの冷却水孔とシリンダブロックの冷却水孔を水密に遮断するものではない。
また、積層構造を有するガスケットも提案されているが(特許文献2参照)、シリンダボア周りの締め付け歪の補充と燃焼ガスの吹き抜けの防止が目的であり、シリンダヘッドの冷却水孔とシリンダブロックの冷却水孔を水密に遮断するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−346198号公報
【特許文献2】特開2001−227410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、シリンダヘッドの冷却水孔とシリンダブロックの冷却水孔を水密に遮断することができて、しかも、ラバーが芯金から外れることがないガスケットの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のガスケット(20)は、金属製の芯金(22)とラバー(23)を備え、シリンダブロック(11)の水孔(11wg)とシリンダヘッド(12)の水孔の(12wg)間の領域に配置されており、シリンダブロックの水孔(11wg)からシリンダヘッドの水孔(12wg)に向う冷却水の流れを遮断する位置に設けられていることを特徴としている。
本発明のガスケット(20)は、シリンダブロック(11)の水孔(11wg)と、対応する位置にあるシリンダヘッド(12)の水孔(12wg)が全て連通しておらずに、その一部のみが連通しているタイプのエンジンで、シリンダブロック(11)の水孔(11wg)と対応する位置にあるシリンダヘッド(12)の水孔(12wg)を連通させない箇所に配置されているのが好ましい。
【0010】
本発明において、芯金(22)には貫通孔(220)を形成し、芯金(22)の表側及び裏側から貫通孔(220)を覆い且つ貫通孔(220)内に充填されるようにラバー(23)を配置するのが好ましい。
【0011】
或いは、芯金を(水孔の中心を半径方向中心とした場合に)半径方向内側の領域(Ei)と半径方向外側の領域(Eo)とに分割し、
前記ラバー(23A)は、半径方向内側の領域(Ei)の芯金(22A)における半径方向外側縁部(221A)の表側及び裏側と、半径方向外側の領域(Eo)の芯金(22B)における半径方向内側縁部(221B)の表側及び裏側を覆い、半径方向内側の領域(Ei)の芯金(22A)と半径方向外側の領域(Eo)の芯金(22B)との間の隙間部分(δ)に充填されているのが好ましい。
その際に、半径方向外側の領域(Eo)の芯金(22B)における半径方向内側縁部(221B)におけるラバー(23A)は、前記水孔(11wg、12wg)を包囲する様に配置されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
上述する構成を具備する本発明によれば、シリンダブロックの水孔(11wg)とシリンダヘッドの水孔(12wg)の間の領域に配置されており、シリンダブロックの水孔(11wg)からシリンダヘッドの水孔(12wg)に向う冷却水の流れを遮断する位置に設けられているので、シリンダヘッドの冷却水孔(12wg)とシリンダブロックの冷却水孔(11wg)を水密に遮断することが出来る。
そして本発明のガスケット(20)は、金属製の芯金(22)とラバー(23)を備えているので、当該ラバー(23)により、シリンダブロック(11)とシリンダヘッド(12)の境界部から冷却水が漏出することが防止される。
【0013】
そして、ガスケット(20)がシリンダブロック(11)の水孔(11wg)とシリンダヘッド(12)の水孔(12wg)の間の領域に配置されれば、シリンダブロック(11)の水孔(11wg)からシリンダヘッド(12)の水孔(12wg)に向う冷却水の流れを遮断する。その結果、ガスケット(20)が配置されていない箇所では、シリンダブロック(11)の冷却水孔(11wg)を流れる冷却水は、シリンダヘッド(12)の冷却水孔(12wg)内に(従来技術に比較して)流速が速い状態で勢い良く流れ、シリンダヘッド(12)の冷却水孔(12wg)内では冷却水が効率良く循環する。
【0014】
そして芯金(22)には貫通孔(220)を形成し、芯金(22)の表側及び裏側から貫通孔(220)を覆い且つ貫通孔(220)内に充填されるようにラバー(23)を配置すれば、芯金(22)の表側を覆うラバーと芯金の裏側を覆うラバーと貫通孔に充填されたラバーは一体となるので、芯金(22)に対して一体的に結合される。
そのため、ラバー(23)が芯金(22)から外れることが防止される。
【0015】
さらに、芯金(22)を複数に分割し、半径方向外側(Eo)の領域の芯金(22B)における半径方向内側縁部(221B)と半径方向内側(Ei)の領域の芯金(22A)における半径方向外側縁部(221A)の間の領域で、ラバー(23A)が前記水孔(11wg、12wg)を包囲する様に配置されていれば、水孔(11wg、12wg)の周りで全周に亘ってシリンダブロック(11)とシリンダヘッド(12)の間に芯金(22A、22B)が存在せず、ラバー(23A)のみが存在するので、シール面全周に亘ってラバー圧縮率が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態に係るガスケットをシリンダブロックの水孔とシリンダヘッドの水孔を塞ぐように配置した状態を示す断面図である。
図2】第1実施形態に係るガスケットの平面図である。
図3】第1実施形態に係るガスケットを構成する芯金の平面図である。
図4図2におけるA−A矢視断面図である。
図5図2におけるB−B矢視断面図である。
図6図2におけるC−C矢視断面図である。
図7】本発明の第2実施形態に係るガスケットの平面図であって、ガスケット本体(ガスケットプレート)を省略した図である。
図8図7におけるX−X矢視断面図である。
図9】従来技術によるガスケットをシリンダブロックの水孔とシリンダヘッドの水孔を塞ぐように配置した断面図である。
図10】従来技術によるガスケットの平面図で、ガスケット本体(ガスケットプレート)を省略した図である。
図11図10におけるA−A矢視断面図である。
図12図10におけるB−B矢視断面図である。
図13図10におけるC−C矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
先ず、図1図6に基づいて、本発明の第1実施形態を説明する。
第1実施形態に係るガスケット20は、シリンダブロック11の水孔11wgと、対応する位置にあるシリンダヘッド12の水孔12wgが全て連通しておらずに、その一部のみが連通しているタイプのエンジンに適用されている。そして、シリンダブロック11の水孔11wgと、対応する位置にあるシリンダヘッド12の水孔12wgを連通させない箇所に配置されている。
【0018】
図1及び図2において、第1実施形態のガスケット20は、上下2枚のガスケット本体21(ガスケットプレート)と、芯金22と、ラバー部材23とで構成されている。ここで、図2ではガスケット本体21の図示を省略している。
芯金22は、図3に示すように、ラバー部材23が配置される領域の複数個所(図示では8箇所)に、貫通孔220が形成されている。
【0019】
ラバー部材23は、芯金22の表側(例えば、図1では上側、図2では紙面に対して看者側)及び裏側(例えば、図1では下側、図2では紙面に対して看者とは反対側)から貫通孔220を覆い且つ貫通孔220内に充填して、芯金22の表側及び裏側が一体となって配置されている。換言すれば、図6で示すように、ラバー部材23は芯金22の貫通孔220を通して芯金22の表裏に一体的に連続して配置されている。
【0020】
図1から明らかなように、第1実施形態に係るガスケット20は、シリンダブロック11の水孔11wgとシリンダヘッド12の水孔12wgの間の領域に配置されており、シリンダブロック11の水孔11wgからシリンダヘッド12の水孔12wgに向う冷却水の流れを遮断する位置に設けられているので、シリンダヘッド12の冷却水孔12wgとシリンダブロック11の冷却水孔11wgを水密に遮断することが出来る。
従って、ガスケット20が配置された箇所ではシリンダブロック11の冷却水孔11wgを流れる冷却水は、シリンダヘッド12の冷却水孔12wgには流れない。そのため、ガスケット20が配置されていない箇所では、シリンダブロック11の冷却水孔11wgを流れる冷却水は、シリンダヘッド12の冷却水孔12wg内に流速が速い状態で勢い良く流れ、シリンダヘッド12の冷却水孔12wg内では冷却水が効率良く循環する。
【0021】
そして、第1実施形態に係るガスケット20は、金属製の芯金22とラバー23を備えているので、当該ラバー23により、シリンダブロック11とシリンダヘッド12の境界部から冷却水が漏出することが防止される。
【0022】
また、芯金22には貫通孔220が形成され、芯金22の表側及び裏側から貫通孔220を覆い、且つ貫通孔220内に充填されるようにラバー23が配置されているため、芯金22の表側を覆うラバー23と芯金22の裏側を覆うラバー23と貫通孔220に充填されたラバー23は一体となり、芯金22に対して表裏一体となって結合される。
そのため、ラバー23が芯金22に強固に結合され、ラバー23が芯金22から外れてしまうことが防止される。
【0023】
次に、図7及び図8に基づいて、本発明の第2実施形態を説明する。
図7図8において、第2実施形態に係るガスケットは全体を符号20Aで示されている。
水孔11wg、12wg(図8参照)の中心を半径方向中心とした場合に、第2実施形態のガスケット20Aは、芯金22が、半径方向内側Eiの領域22Aと、半径方向外側Eoの領域22Bとに分割されている。
【0024】
ラバー部材23Aは、半径方向内側Eiの領域の芯金22Aにおける半径方向外側縁部221Aの表側(例えば、図8では上側、図7では紙面に対して看者側)及び裏側(例えば、図8では下側、図7では紙面に対して看者とは反対側)と、半径方向外側の領域の芯金22Bにおける半径方向内側縁部221Bの表側及び裏側を覆っている。
それと共にラバー部材23Aは、隙間部分δに充填されている。そして隙間部分δは、半径方向内側の領域の芯金22Aと半径方向外側の領域の芯金22Bとの間の空間である。
その結果、ラバー23Aは、前記水孔11wg、12wgを包囲する様に配置される。より詳細には、半径方向外側Eoの芯金22Bにおける半径方向内側縁部221Bと半径方向内側Eiの芯金22Aにおける半径方向外側縁部221Aとの間の領域では、ラバー23Aは、シリンダブロック11とシリンダヘッド12の間に、芯金22A及び芯金22Bが存在しない状態で、全周に亘って前記水孔11wg、12wgを包囲している。
【0025】
従って、シール面全周に亘ってラバー23Aのみでのシールが可能となり、ラバー圧縮率が全周に亘り安定する。
【0026】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
【符号の説明】
【0027】
11・・・シリンダブロック
12・・・シリンダヘッド
20・・・ガスケット
21・・・ガスケット本体/ガスケットプレート
22・・・芯金
23・・・ラバー部材
220・・・貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13