(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-42827(P2015-42827A)
(43)【公開日】2015年3月5日
(54)【発明の名称】システム天井用の天井板及びシステム天井
(51)【国際特許分類】
E04B 9/04 20060101AFI20150206BHJP
E04C 2/16 20060101ALI20150206BHJP
C09D 7/12 20060101ALI20150206BHJP
【FI】
E04B5/54 C
E04C2/16 B
C09D7/12
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-174805(P2013-174805)
(22)【出願日】2013年8月26日
(71)【出願人】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 義久
【テーマコード(参考)】
2E162
4J038
【Fターム(参考)】
2E162CA35
2E162EA04
2E162EA18
4J038MA02
(57)【要約】
【課題】天井スラブ1から吊り下げられたバー材6を格子状に組んだ天井下地に対し天井板10を天井設備機器と共に載せ掛けて支持したシステム天井において、天井板10中央部の垂れ下がり(撓み)を目立ち難くする。
【解決手段】天井板10の室内側の表面に、平均粒径が化粧塗膜12の塗膜厚さt以上でかつ1mm以下の粒子13,13,…を含む粒状塗装を施す。天井板10の中央部Mが垂れ下がっても、その周縁部Cでは、塗膜12から突出した粒子13,13,…からなる粒状部分14,14,…に当たる光により影を作って、天井板10全体に影を発生させ、見掛け上、天井板10全体が均等に見えるようにして、天井板10中央部の垂れ下がり(撓み)を目立ち難くする。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井スラブから吊り下げられたバー材を格子状に組んだ天井下地に対し天井設備機器と共にバー材に周縁部で載せ掛けられた状態で支持されるシステム天井用の天井板において、
室内側の表面に、粒子を含む粒状塗装が施されており、
上記粒子の平均粒径は、該粒子を除く塗料成分による形成される塗膜の厚さ以上でかつ1mm以下であることを特徴とするシステム天井用の天井板。
【請求項2】
請求項1において、
粒子の平均粒径が0.15mm以上であることを特徴とするシステム天井用の天井板。
【請求項3】
請求項1又は2のシステム天井用の天井板が施工されたことを特徴とするシステム天井。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システム天井用の天井板及びその天井板が施工されたシステム天井に関し、特に、天井板の垂れ下がりに伴う外観見映えの低下を抑制するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、オフィスの天井として、照明設備、空調設備、安全設備(感知器、スプリンクラー、排煙設備、点検口等)を効率的に配置することができるシステム天井が一般に利用されている。このシステム天井は、金属製の複数のバー材を平行状や格子状に組んで天井スラブから吊り下げ、これらのバー材に各種の設備機器と天井材とを載せ掛けることで構成されている。この構造によれば、大面積の天井工事であっても簡単に行うことができるだけでなく、メンテナンスや改装も手間をかけずに行うことができる。
【0003】
上記の天井材としては、軽量で吸音性や意匠性に優れたロックウール化粧吸音板が一般的に用いられている。しかし、このロックウール化粧吸音板は、周縁部をバー材に載置して係止しているだけであるので、施工時に湿度が高いと、天井材が吸湿し、自重によって中央部が下側に撓んで周縁部よりも僅かに垂れ下がる現象が生じる。そして、オフィスでは、建物の側面の窓が大きく、この窓から室内に入った光が天井面に斜めに当たるため、上記垂れ下がった部分は光が遮られて黒く見える一方、周縁部は光が反射して白く見えるようになり、その結果、僅かの垂れ下がりであっても大きく目立つという問題がある(
図6参照)。
【0004】
このような問題に対し、従来、例えば特許文献1に示されるように、板材自体を金属板と積層して撓まないように強化することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−240799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記提案のものでは、板材と金属板との積層化によって天井材が高価となるだけでなく、板材と金属板との積層部分の剥がれの問題が生じるのは避けられず、安定した効果が得られない。
【0007】
本発明の目的は、システム天井にバー材に載せ掛けられて用いられる天井板の表面に工夫を加えることにより、その撓みを目立ち難くするようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明では、天井板自体を補強して撓みの発生を抑制するのではなく、その撓みはそのままとし、天井板の表面に対し、天井板に光が当たったときに周縁部にも影が生じるように粒状塗装を施して、その撓みを目立ち難くするようにした。
【0009】
具体的には、第1の発明は、天井スラブから吊り下げられたバー材を格子状に組んだ天井下地に対し天井設備機器と共にバー材に周縁部で載せ掛けられた状態で支持されるシステム天井用の天井板において、その室内側の表面に、粒子を含む粒状塗装が施されており、その粒子の平均粒径は、該粒子を除く塗料成分による形成される塗膜の厚さ以上でかつ1mm以下であることを特徴とする。
【0010】
尚、粒状塗装における粒子の平均粒径は1mmを越えると、その塗膜からの突出量が大きくなり、天井板の運搬中や施工時に塗装粒子が剥がれ易くなるので、1mm以下としている。
【0011】
この第1の発明では、天井板の表面に、塗膜の厚さ以上で1mm以下の平均粒径を持つ粒子を含む粒状塗装が施されているので、天井板が周縁部でバー材に載せ掛けられた状態で中央部が周縁部よりも垂れ下がるように撓んでも、その周縁部では、塗膜から突出した粒子からなる粒状部分に当たる光によって影ができる。この影により周縁部にも影ができて天井板全体に影が発生するため、見掛け上、天井板全体が均等に見えるようになり、天井板中央部の垂れ下がり(撓み)が目立ち難くなる。
【0012】
また、粒状塗装の塗装粒子が1mm以下であるので、天井板の運搬中や施工時に塗装粒子が剥がれ難くなり、安定した効果が得られる。
【0013】
第2の発明は、上記第1の発明において、粒子の平均粒径が0.15mm以上であることを特徴とする。
【0014】
この第2の発明では、天井板の表面に形成される塗膜の厚さは最大で150μm程度であり、粒子の平均粒径をこの塗膜厚さ以上とするために0.15mm以上とする。このことで、上記第1の発明の効果が有効に発揮される最適な粒子の平均粒径が具体的に得られる。
【0015】
第3の発明のシステム天井は、第1又は第2の発明のシステム天井用の天井板が施工されたことを特徴とする。
【0016】
この第3の発明では、各天井板の中央部の垂れ下がり(撓み)が目立ち難いシステム天井が得られる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によると、システム天井用の天井板の室内側の表面に粒子を含む粒状塗装を施し、その粒子の平均粒径を、粒子を除く塗料成分による形成される塗膜の厚さ以上でかつ1mm以下としたことにより、バー材に載せ掛けられた天井板の中央部が周縁部よりも垂れ下がっても、その周縁部で、塗膜から突出した粒状部分に当たる光により影を発生させて、天井板全体を均等に見えるようにし、天井板中央部の垂れ下がりを安定して目立ち難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、システム天井の構造を上側から見て示す斜視図である。
【
図2】
図2は、システム天井の構造を拡大して示す断面図である。
【
図5】
図5は、天井板の表面に施された粒状塗装の塗膜及び粒状部分を拡大して示す断面図である。
【
図6】
図6は、バー材に載せ掛けられた天井板の中央部が下側に撓んだ状態を示す断面図である。
【
図7】
図7は、実施例及び比較例についての粒状塗装における塗料組成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0020】
図1及び
図2は本発明の実施形態に係るシステム天井を示し、1は建物の室内の天井部分を構成する天井スラブ、2は上端が天井スラブ1に埋め込まれて固定された吊りボルト、3は該吊りボルト2の下端部にナット4,4により取り付けられたハンガーであって、このハンガー3の下端部に複数のバー材6,6,…が取付固定されており、この構造により、複数のバー材6,6,…は天井スラブ1から吊りボルト2及びハンガー3によって吊り下げられている。
【0021】
上記各バー材6は断面T字状の金属製のもので、
図3に示すように、上端に位置する矩形筒状の固定部6aと、この固定部6aの下端から下向きに延びる板状の連結部6bと、この連結部6bの下端に連続し、水平方向に延びる左右1対の係止部6c,6cとを備え、固定部6aにハンガー3の下端部が取付固定されており、連結部6bと係止部6c,6cとで断面T字状をなして該T字が逆向きになった状態で吊り下げられている。
【0022】
上記複数のバー材6,6,…は水平縦方向及び水平横方向に並べられて平面視で格子状に組まれており、これらのバー材6,6,…により面一状の天井下地が構成されている。バー材6,6,…の間には複数の矩形状の収容口8,8,…が形成され、これらの収容口8,8,…の一部には照明器具や空調機器等の天井設備機器(図示せず)が固定支持され、残りの収容口8,8,…にはそれぞれ天井板10,10,…が各々の周縁部で載せ掛けられた状態で支持されており、これら天井設備機器及び天井板10,10,…により格子状のグリッド天井面が形成されている。
【0023】
図2及び
図4に示すように、上記各天井板10は、収容口8の大きさに対応した例えば600×600mmの例えばロックウール材からなり、その四周縁部の下側隅角部には該隅角部を断面矩形状に切り欠いた切欠き段部10aが形成されており、この各切欠き段部10aの下面を収容口8周りのバー材6の係止部6c上面に載置することで、天井板10がバー材6に載せ掛けられた状態で支持されている。
【0024】
天井板10の室内側(下側)の表面には、吸音用の複数のピン穴11,11,…が開口されている。
【0025】
また、
図4及び
図5に示すように、天井板10の室内側(下側)の表面には、塗料の成分に粒子13,13,…が含まれた水性塗料による粒状塗装が施されて化粧塗膜12が形成されており、よって天井板10はロックウール化粧吸音板とされている。
【0026】
そして、上記粒状塗装での粒子13,13,…の平均粒径は、天井板10表面に、粒子13,13,…を除く塗料成分により形成される化粧塗膜12の塗膜厚さt以上でかつ1mm以下とされており、それらの粒子13,13,…により塗膜12から突出した粒状部分14,14,…が形成されている。このことで、例えば建物の窓(図示せず)等から室内に入った光が天井面の複数の天井板10,10,…の表面(下面)に下側から斜めに当たったときに粒状塗装の粒子13,13,…による粒状部分14,14,…によって該各天井板10の表面に影を生じさせるようにしている。
【0027】
上記粒状塗装における塗料は樹脂、顔料、化粧骨材、添加剤、水等が組成として含まれている。樹脂は、例えば酢酸ビニル、ポバール(PVA)、アクリル等が用いられる。
【0028】
顔料は白色顔料及び体質顔料が用いられる。白色顔料は色剤として用いられるもので、可視領域の色に特定の吸収を持たないこと、及び屈折率が大きくて不透明なことが要求され、例えば亜鉛華(酸化亜鉛)、酸化チタン等が顕著に用いられる。一方、体質顔料は他の顔料、塗料の増量剤や、着色性や強度等を改善するための混合剤として用いられる白色顔料であり、例えば炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム等が使用される。
【0029】
添加剤としては分散剤、増粘剤、消泡剤、防カビ剤等が添加される。
【0030】
上記化粧骨材には、上記のように平均粒径が表面の化粧塗膜12の塗膜厚さt以上でかつ1mm以下の粒子13,13,…を含む無機粉体が用いられ、特にゼオライトが好ましい。一般に、ロックウール化粧吸音板からなる天井板10の表面に形成される塗膜12の厚さtは50〜150μmであり、下塗り後に上塗りすれば100μm(=50μm×2)程度となり、さらに着色を施すと150μm程度となる。
【0031】
そして、この塗膜12から突出した粒状部分14,14,…を化粧骨材の粒子13,13,…により作って影を形成するために、化粧骨材における粒子13の平均粒径を塗膜厚さt以上、すなわち0.15mm(150μm)以上とする。また、その粒状部分14,14,…が塗膜12から剥がれ落ちないようにするために、粒子13の平均粒径を経験的に1mm以下(粒子13の塗膜12への接着部分の深さが10%以上)であることが必要である。
【0032】
したがって、
図6に示すように、システム天井の施工状態で、複数の天井板10,10,…が周縁部でバー材6,6,…に載せ掛けられ、その状態で各天井板10の中央部Mが周縁部Cよりも垂れ下がるように撓んだとき、建物の窓等から室内に入った光が天井面の天井板10,10,…の表面に下側から斜めに当たると、各天井板10の垂れ下がった中央部Mは光が遮られて黒く、周縁部C(隣接する天井板10と接する部分でバー材6がある部分)が反射する光によって白く見えようとする。しかし、この実施形態では、各天井板10の表面に、その塗膜12の厚さt以上で1mm以下の平均粒径を持つ粒子13,13,…を含む粒状塗装が施されているので、その塗膜12から突出した粒子13,13,…からなる粒状部分14,14,…に当たる光によって天井板10全体に均等に影ができる(
図6では、天井板10の垂れ下がり及び粒状部分14の大きさを誇張して記載している)。すなわち、この周縁部Cにも中央部Mと同様に影が形成されることで、天井板10全体に影が発生するようになり、見掛け上、天井板10全体が均等に見えて、天井板10中央部の垂れ下がり(撓み)が目立ち難くなる。このことで、各天井板10の中央部の垂れ下がりが目立ち難くなったシステム天井が得られる。
【0033】
また、粒状塗装の塗装の粒子13,13,…が1mm以下であるので、天井板10の運搬中や施工時に粒子13,13,…が剥がれ難くなり、上記効果が長期間に亘り安定して得られる。
【実施例】
【0034】
次に、具体的に実施した実施例について説明する。
【0035】
(実施例)
図7に示すように、樹脂が10重量%、顔料が50重量%、化粧骨材が10重量%、添加剤が1重量%、水が29重量%の水性塗料を作り、ロックウール吸音板の表面に粒状塗装を施して塗膜を形成した。
【0036】
(比較例)
図7に示すように、樹脂が10重量%、顔料が60重量%、添加剤が1重量%、水が29重量%の水性塗料を作り、ロックウール吸音板の表面に塗装を施して塗膜を形成した。
【0037】
実施例及び比較例の天井板をシステム天井のバー材に載せ掛けて施工し、その中央部の垂れ下がり状態で影の発生を観察したところ、比較例の天井板では、中央部が黒く、周縁部が白く目立ったのに対し、実施例の天井板では、周縁部にも中央部と同等に影が生じ、全体として影による差が生じなかった。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、システム天井のバー材に載せ掛けられた天井板の中央部が周縁部よりも垂れ下がっても、その垂れ下がりを目立ち難くできるので、極めて有用で産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0039】
1 天井スラブ
6 バー材
6c 係止部
8 収容口
10 天井板
12 化粧塗膜
t 塗膜厚さ(粒子を除く塗料成分により形成される厚さ)
13 粒子
14 粒状部分