特開2015-42890(P2015-42890A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-42890(P2015-42890A)
(43)【公開日】2015年3月5日
(54)【発明の名称】内燃機関のクランク軸用主軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 9/02 20060101AFI20150206BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20150206BHJP
   F16C 33/10 20060101ALI20150206BHJP
【FI】
   F16C9/02
   F16C17/02 Z
   F16C33/10 Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-174741(P2013-174741)
(22)【出願日】2013年8月26日
(71)【出願人】
【識別番号】591001282
【氏名又は名称】大同メタル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川島 有騎
(72)【発明者】
【氏名】幸島 元彦
【テーマコード(参考)】
3J011
3J033
【Fターム(参考)】
3J011AA07
3J011AA20
3J011BA13
3J011CA01
3J011JA02
3J011KA02
3J011MA02
3J011MA06
3J011NA01
3J011PA02
3J033AA02
3J033AA05
3J033BA02
3J033BA12
3J033EA01
3J033EA02
3J033GA04
3J033GA11
3J033GA20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】異物の排出性に優れた内燃機関のクランク軸用主軸受を提供する。
【解決手段】突合せ部分の内周面側に軸線方向溝を形成する第1および第2の半割軸受41、42を有する主軸受が提供される。各半割軸受は、周方向中央部を含む主円筒部と、半割軸受の周方向端面から周方向中央部へ向かって中心角で3°以上15°以下まで延びるクラッシュリリーフ部とを有する。各クラッシュリリーフ部には、軸線方向溝に連通するように周方向に延びる複数のクラッシュリリーフ溝が形成される。第1の半割軸受は、周方向に延びる油溝41aと、主円筒部からクラッシュリリーフ部に向かって壁厚が薄くなるように形成された移行領域とをさらに有する。移行領域は、軸線方向から見て半径方向に内向きの凸形状の内向凸曲面を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のクランク軸を支承するための主軸受であって、それぞれの周方向端面同士を突き合わせることによって円筒形状に組み合わされる第1および第2の半割軸受を有する主軸受において、
前記第1および第2の半割軸受は、組み合わされたとき、それぞれの突合せ部分の内周面側に、前記主軸受の軸線方向全長に亘って延びる軸線方向溝を共に形成するように構成され、
前記各半割軸受は、該半割軸受の周方向中央部を含む主円筒部と、前記主円筒部よりも壁厚が薄くなるように該半割軸受の周方向両端部に軸線方向全長に亘って形成されたクラッシュリリーフ部とを有し、前記各クラッシュリリーフ部は、前記半割軸受の前記周方向端面から前記周方向中央部へ向かって中心角で3°以上15°以下まで延び、
前記各クラッシュリリーフ部には、前記軸線方向溝に連通するように前記クラッシュリリーフ部の全長に亘って周方向に延びる複数のクラッシュリリーフ溝が形成され、
前記第1の半割軸受は、少なくとも前記主円筒部の全長を通して周方向に延びるようにその内周面に形成された油溝を有し、また
前記第1の半割軸受は、少なくとも前記クランク軸の回転方向前方側の前記クラッシュリリーフ部と前記主円筒部との間に、前記主円筒部から前記クラッシュリリーフ部に向かって壁厚が薄くなるように形成された移行領域をさらに有し、前記移行領域は、前記半割軸受の軸線方向から見て半径方向に内向きの凸形状の内向凸曲面を有する
ことを特徴とする主軸受。
【請求項2】
前記移行領域に接続する前記クラッシュリリーフ部は、前記接続位置での半径方向の深さが0.002〜0.030mmである請求項1に記載の主軸受。
【請求項3】
前記移行領域は、周方向の長さが1〜4mmである請求項1または2に記載の主軸受。
【請求項4】
前記各クラッシュリリーフ溝は、半径方向の深さが1〜20μmであり、また軸線方向の幅が0.05〜0.5mmである請求項1から3までのいずれか一項に記載の主軸受。
【請求項5】
前記第1および第2の半割軸受が組み合わされたとき、前記第1の半割軸受の前記クラッシュリリーフ部に形成された前記それぞれのクラッシュリリーフ溝は、前記第2の半割軸受の前記クラッシュリリーフ部に形成された前記それぞれのクラッシュリリーフ溝に対して、軸線方向に最小で0を超え最大で前記クラッシュリリーフ溝の前記幅未満ずれるようになされている請求項1から4までのいずれか一項に記載の主軸受。
【請求項6】
前記各軸線方向溝は、半径方向の深さが0.1〜1mmであり、また円周方向の幅が0.3〜2.0mmである請求項1から5までのいずれか一項に記載の主軸受。
【請求項7】
前記移行領域は、前記クラッシュリリーフ部から遠い側に前記内向凸曲面を有し、また前記クラッシュリリーフ部に近い側に半径方向に外向きの凸形状の外向凸曲面を有する請求項1から6までのいずれか一項に記載の主軸受。
【請求項8】
少なくとも前記クランク軸の回転方向前方側の前記油溝の周方向端部が前記クラッシュリリーフ部内に位置する請求項1から7までのいずれか一項に記載の主軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、内燃機関のクランク軸を支承するための主軸受に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のクランク軸は、そのジャーナル部において、一対の半割軸受から成る主軸受を介して内燃機関のシリンダブロック下部に支承される。主軸受に対しては、オイルポンプによって吐出された潤滑油が、シリンダブロック壁内に形成されたオイルギャラリーから主軸受の壁に形成された貫通口を通じて、主軸受の内周面に沿って形成された潤滑油溝内に送り込まれる。また、ジャーナル部の直径方向には第1潤滑油路が貫通形成され、この第1潤滑油路の両端開口が主軸受の潤滑油溝と連通するようになっている。さらに、ジャーナル部の第1潤滑油路から、クランクアーム部を通る第2潤滑油路が分岐して形成され、この第2潤滑油路が、クランクピンの直径方向に貫通形成された第3潤滑油路に連通している。このようにして、シリンダブロック壁内のオイルギャラリーから貫通口を通じて主軸受の内周面に形成された潤滑油溝内に送り込まれた潤滑油は、第1潤滑油路、第2潤滑油路および第3潤滑油路を経て、第3潤滑油路の末端に開口した吐出口から、クランクピンとコンロッド軸受の摺動面間に供給される(例えば特許文献1参照)。
【0003】
シリンダブロック壁内のオイルギャラリーから主軸受の潤滑油溝に送られる潤滑油は、例えば各部品の加工の際に生じた残留異物を随伴する可能性がある。この異物は、ジャーナル部と主軸受の間の摺動面およびクランクピンとコンロッド軸受の間の摺動面に損傷を与える恐れがあり、したがって潤滑油の流れから速やかに外部に排出する必要がある。
【0004】
そこで従来、内燃機関のクランク軸を支承するための主軸受であって、主軸受を構成する各半円筒形状軸受の内周面が、曲率の異なる2種類の円弧、すなわち円周方向中央部を含む第一彎曲面(主円筒部)および第二彎曲面(クラッシュリリーフ部)から形成され、半円筒形状軸受の両突き合せ端面の幅方向全長に亘って軸線方向溝が形成され、第二彎曲面が、各半円筒形状軸受の円周方向端面から測定した円周角(θ)で20°から50°の範囲に形成され、また第二彎曲面に多数の微細な円周方向溝が形成された主軸受が提供され(特許文献2の図1および5)、それによって、潤滑油に付随して一方の半円筒形状軸受の潤滑油溝に混入した異物を、第二彎曲面とクランク軸の表面とが作る隙間に分散して流し、その後軸線方向溝から主軸受の外部へ排出し、他方の半円筒形状軸受の内周面位置に達して同内周面に局部的に埋収、堆積されないようにしている(特許文献2の段落0011)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−277831号公報
【特許文献2】特開2011−58568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来、すべり軸受(半割軸受)の内周面(第1彎曲面、第2彎曲面)とジャーナル表面との間の軸受隙間は狭く設定されている。例えば特許文献2に開示される主軸受の場合、第二彎曲面の形成範囲が、半割軸受の周方向端面から中央部側へ向かって最小でも20°以上と広く設定されているが、半割軸受10の周方向中央部での軸受壁厚W1と周方向端部での軸受壁厚W2との差が5〜30μmであることから、以下のような問題点がある。
【0007】
(1)隙間領域の上流側では、第2彎曲面の周方向中央部よりも半割軸受の周方向中央部側での第二彎曲面とクランク軸のジャーナル部表面との間の隙間が、油溝に混入した異物のサイズに対して狭くなり過ぎる。また、「第2彎曲面とジャーナル表面との間の隙間をジャーナル表面に付随し周方向端部側へ流れる油の圧力>油溝内の油の圧力」となり、異物は油溝から第2彎曲面とジャーナル表面との間の隙間に分散し流れ難い。さらに、隙間に排出された(少数の)異物は、クランク軸のジャーナル部表面により第2彎曲面に押し込まれて堆積してしまう。
【0008】
(2)また、第2彎曲面の形成範囲においては、半割軸受の周方向中央部側から周方向端部側への単位円周角度毎の隙間の増加率が小さいので、隙間領域の下流側では、半割軸受の周方向中央部側の第2彎曲面とジャーナル表面間の隙間(すなわち隙間領域の上流側)で圧力が高くなった油が、ジャーナル表面に付随して半割軸受の周方向端部側の第2彎曲面とジャーナル表面との間の隙間(すなわち隙間領域の下流側)に送られる。これにより、隙間領域の下流側でも「第2彎曲面とジャーナル表面との間の隙間をジャーナル表面に付随し周方向端部側へ流れる油の圧力>油溝内の油の圧力」となりがちである。このため、図14Aに示すように、油溝内の異物は、少数の異物だけが半割軸受の周方向端部側の第2彎曲面とジャーナル部の表面の隙間に流出し、大部分の異物は、油溝の周方向端部側へと進み、他方の半割軸受の内周面へ混入しやすい。さらに、上述したような第2彎曲面とジャーナル表面との間の隙間をジャーナル表面に付随し周方向端部側へ流れる油の圧力によって、図14Aおよび14Bに示すように、隙間に流出した少数の異物もまた軸線方向溝を通過し、他方の半割軸受の内周面へ押し流されやすい。
【0009】
したがって本願発明の1つの目的は、異物の排出性に優れた内燃機関のクランク軸用主軸受を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本願発明の1つの観点によれば、
内燃機関のクランク軸を支承するための主軸受であって、それぞれの周方向端面同士を突き合わせることによって円筒形状に組み合わされる第1および第2の半割軸受を有する主軸受において、
第1および第2の半割軸受は、組み合わされたとき、それぞれの突合せ部分の内周面側に、主軸受の軸線方向全長に亘って延びる軸線方向溝を共に形成するように構成され、
各半割軸受は、半割軸受の周方向中央部を含む主円筒部と、主円筒部よりも壁厚が薄くなるように半割軸受の周方向両端部に軸線方向全長に亘って形成されたクラッシュリリーフ部とを有し、各クラッシュリリーフ部は、半割軸受の周方向端面から周方向中央部へ向かって中心角にして3°以上15°以下の範囲まで延び、
各クラッシュリリーフ部には、軸線方向溝に連通するようにクラッシュリリーフ部の全長に亘って周方向に延びる複数のクラッシュリリーフ溝が形成され、
第1の半割軸受は、少なくとも主円筒部の全長を通して周方向に延びるようにその内周面に形成された油溝を有し、また
第1の半割軸受は、少なくともクランク軸の回転方向前方側のクラッシュリリーフ部と主円筒部との間に、主円筒部からクラッシュリリーフ部に向かって壁厚が薄くなるように形成された移行領域をさらに有し、移行領域は、半割軸受の軸線方向から見て半径方向に内向きの凸形状の内向凸曲面を有する
ことを特徴とする主軸受が提供される。
【0011】
上記主軸受において、好適には、移行領域に接続するクラッシュリリーフ部は、接続位置での半径方向の深さが0.002〜0.030mmである。
【0012】
また上記主軸受において、好適には、移行領域は、周方向の長さが1〜4mmである。
【0013】
また上記主軸受において、好適には、各クラッシュリリーフ溝は、半径方向の深さが1〜20μmであり、また軸線方向の幅が0.05〜0.5mmである。
【0014】
また上記主軸受において、好適には、第1および第2の半割軸受が組み合わされたとき、第1の半割軸受のクラッシュリリーフ部に形成されたそれぞれのクラッシュリリーフ溝は、第2の半割軸受のクラッシュリリーフ部に形成されたそれぞれのクラッシュリリーフ溝に対して、軸線方向に最小で0を超え最大でクラッシュリリーフ溝の幅未満ずれるようになされている。
【0015】
また上記主軸受において、好適には、各軸線方向溝は、半径方向の深さが0.1〜1mmであり、また円周方向の幅が0.3〜2.0mmである。
【0016】
また上記主軸受において、移行領域は、クラッシュリリーフ部から遠い側に内向凸曲面を有し、またクラッシュリリーフ部に近い側に半径方向に外向きの凸形状の外向凸曲面を有していてもよい。
【0017】
また上記主軸受において、少なくともクランク軸の回転方向前方側の油溝の周方向端部がクラッシュリリーフ部内に位置していてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本願発明によれば、少なくとも一方の半割軸受のクラッシュリリーフ部と主円筒部との間に移行領域が形成され、それによってクラッシュリリーフの半割軸受の周方向中央部側の端部は、従来の軸受と比較して、半割軸受の外径側に偏位している。
【0019】
このため、(A)クラッシュリリーフの上流側領域においても油溝内の異物FMがリリーフ隙間へ移動可能な隙間空間が、移行領域73と油溝41aの接続部付近に形成され(図10B)、また(B)クランク軸のジャーナル部表面とクラッシュリリーフ面との間のリリーフ隙間の油は、上流領域においても 圧力が減少する。より具体的には、主円筒面とジャーナル表面間の隙間で圧力が高くなった油は、隙間体積が大きい(隙間体積が急激の増加する)本願発明のリリーフ隙間空間に進入すると同時に急激に圧力が下がる。このため、油溝内の異物は油とともに、特に、移行領域とジャーナル表面間の隙間からリリーフ隙間へも分散し流れるようになる(図10A)。
【0020】
リリーフ隙間に分散して流れた異物は、クラッシュリリーフ面を形成する複数のクラッシュリリーフ溝74の凹部にガイドされ、半割軸受の周方向端部側でクラッシュリリーフ溝が連通する軸線方向溝77に送られ、さらに主軸受の軸線方向両端部の軸線方向溝の両端部の開口から外部へ排出される。
【0021】
本願発明では、上述したように主円筒部とジャーナル表面間の隙間で圧力が高くなった油は、隙間体積が大きい(隙間体積が急激に増加する)リリーフ隙間に進入すると同時に急激に圧力が下がる。さらに、図10Aの移行領域73からリリーフ隙間に流れる油流(矢印で示す油流)は、図示しない主円筒部とジャーナル表面間の隙間側からリリーフ隙間へ流れるジャーナル表面に付随し軸受の周方向に直進する油流と、リリーフ隙間内で交差するように衝突する。このため、リリーフ隙間では、軸受の周方向に流れる油の流れが弱められる。これらにより、本願発明のリリーフ隙間に流出した異物は、リリーフ面(クラッシュリリーフ溝)とジャーナル表面との間の隙間をジャーナル表面に付随して周方向端部側へ流れる油の圧力によって軸線方向溝を通過し、他方の半割軸受の内周面へ押し流されるような問題が起き難い。
【0022】
また本願発明によれば、クラッシュリリーフ部の形成範囲は、半割軸受の周方向端面から、円周角度(θ)で、3°以上15°以下までである。この理由は、クラッシュリリーフの形成範囲が、半割軸受の周方向端面から円周角度(θ)で、3°未満であると、油溝内の異物がリリーフ隙間へ分散し流出し難くなるからであり(リリーフ隙間の容積が小さすぎて、主円筒部とジャーナル表面間の隙間で圧力が高くなった油が隙間空間に進入したとき、油の圧力を低下させる効果が不十分になる)、また円周角度(θ)が15°を超えると、異物が軸線方向溝を通過して他方の半割軸受の内周面へ進入しやすくなるからである。
【0023】
より詳細には、図10Aの移行領域からリリーフ隙間に流れる油流(矢印で示す油流)は、図示しない主円筒部とジャーナル表面間の隙間側からリリーフ隙間へ流れるジャーナル表面に付随し軸受の周方向に直進する油流と、リリーフ隙間内で交差するように衝突する。このため、リリーフ隙間では、軸受の周方向へ流れる油の流れが弱められる。クラッシュリリーフの形成範囲が円周角度(θ)で15°を超えると、リリーフ隙間の半割軸受の周方向端部付近では、リリーフ隙間の上流側で周方向への直進速度が弱められた油が、ジャーナル表面に付随しリリーフ隙間の半割軸受の周方向端部付近へ送られるまでの間に再度、軸受の周方向へ直進速度を増し、これにより異物が軸線方向溝を通過して他方の半割軸受の内周面へ進入しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】内燃機関のクランク軸を、ジャーナル部およびクランクピン部で裁断した断面図である。
図2】本願発明の実施例による一方の半割軸受の正面図である。
図3】本願発明の実施例による一方の半割軸受の底面図である。
図4】本願発明の実施例による他方の半割軸受の底面図である。
図5】一対の半割軸受を組み付けた状態の主軸受の正面図である。
図6】クラッシュリリーフ近傍の形状について説明する拡大正面図である。
図7】クラッシュリリーフ近傍の形状について主円筒部を平面展開して具体的な寸法を説明する展開図である。
図8】クラッシュリリーフ溝の断面図である。
図9】軸線方向溝の断面図である。
図10A】本願発明の主軸受の作用を説明するための、軸受内側から見た図である。
図10B】本願発明の主軸受の作用を説明するための正面図である。
図11】対になったクラッシュリリーフ溝の位置関係を説明する説明図である。
図12】本願発明の他の実施例による一方の半割軸受の正面図である。
図13】本願発明の他の実施例による一対の半割軸受を説明するための、軸受内側から見た図である。
図14A】従来技術の主軸受の作用を説明した、軸受内側から見た図である。
図14B】従来技術の主軸受の作用を説明した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本願発明の実施例について図面を参照しながら説明する。尚、理解を容易にするために、図面においてクラッシュリリーフは誇張して描かれている。
【実施例】
【0026】
(軸受装置の全体構成)
図1に示すように、本実施例の軸受装置1は、シリンダブロック8の下部に支承されるジャーナル部6と、ジャーナル部6と一体に形成されてジャーナル部6を中心として回転するクランクピン5と、クランクピン5に内燃機関から往復運動を伝達するコンロッド2とを備えている。そして、軸受装置1は、クランク軸を支承するすべり軸受として、ジャーナル部6を回転自在に支承する主軸受4と、クランクピン5を回転自在に支承するコンロッド軸受3とをさらに備えている。
【0027】
尚、クランク軸は複数のジャーナル部6と複数のクランクピン5とを有するが、ここでは説明の便宜上、1つのジャーナル部6および1つのクランクピン5を図示して説明する。図1において、紙面奥行き方向の位置関係は、ジャーナル部6が紙面の奥側で、クランクピン5が手前側となっている。
【0028】
ジャーナル部6は、一対の半割軸受41、42によって構成される主軸受4を介して、内燃機関のシリンダブロック下部81に軸支されている。図1で上側にある半割軸受41には、内周面全長に亘って油溝41aが形成されている。また、ジャーナル部6は、直径方向に貫通する潤滑油路6aを有し、ジャーナル部6が矢印X方向に回転すると、潤滑油路6aの両端開口が交互に主軸受4の油溝41aに連通する。
【0029】
クランクピン5は、一対の半割軸受31、32によって構成されるコンロッド軸受3を介して、コンロッド2の大端部ハウジング21(ロッド側大端部ハウジング22およびキャップ側大端部ハウジング23)に軸支されている。
【0030】
上述したように、主軸受4に対して、オイルポンプによって吐出された潤滑油が、シリンダブロック壁内に形成されたオイルギャラリーから主軸受4の壁に形成された貫通口を通じて主軸受4の内周面に沿って形成された油溝41a内に送り込まれる。
【0031】
さらに、ジャーナル部6の直径方向に第1の潤滑油路6aが貫通形成され、第1の潤滑油路6aの両端開口が潤滑油溝41aと連通している。そして、ジャーナル部6の第1の潤滑油路6aから分岐してクランクアーム部(図示せず)を通る第2の潤滑油路5aが形成され、第2の潤滑油路5aが、クランクピン5の直径方向に貫通形成された第3の潤滑油路5bに連通している。
【0032】
このようにして、潤滑油は、第1の潤滑油路6a、第2の潤滑油路5aおよび第3の潤滑油路5bを経て、第3の潤滑油路5bの端部の吐出口5cから、クランクピン5とコンロッド軸受3の間に形成される隙間に供給される。
【0033】
(半割軸受の構成)
そして、本実施例の主軸受4は、一対の半割軸受41、42の周方向の端面を突き合わせて、全体として円筒形状に組み合わせることによって形成される(図5参照)。それぞれの半割軸受41(42)は、図2に示すように、鋼板上に軸受合金を薄く接着させたバイメタルによって半円筒形状に形成されたものである。半割軸受41は、周方向の中央部を含んで形成された主円筒部71と、周方向の両端部に形成されたクラッシュリリーフ部70、70と、主円筒部71とクラッシュリリーフ70、70の間にあってクラッシュリリーフ70、70に向かって壁厚が薄くなるように形成された移行領域73、73とを備えている。
【0034】
(実施例1)
図3および5から理解されるように、半割軸受41の内周面に形成された油溝41aは円周方向中央部を通して延び、半割軸受41の周方向両端面72に開口するように形成される。油溝41aの深さは、油溝41aの周方向全長に亘って一定である。尚、ここでいう油溝41aの深さとは、主円筒部71では、主円筒部71の内周面から油溝底面までの深さであり、クラッシュリリーフ部70および移行領域73では、それらを形成しなかった場合の仮想の内周面71vからの深さである。
【0035】
図3から理解されるように、油溝41aは半割軸受41の軸線方向における幅の中央に配置される。油溝41aの底部には半割軸受41を径方向に貫通する貫通口(図示せず)が形成され、油は、シリンダブロックの壁内のオイルギャラリーから、この貫通口を通して油溝41a内に供給される。油溝41aの幅は、内燃機関の仕様により異なるが、例えば乗用車用の小型内燃機関の場合、4〜7mm程度であり、油溝41aの深さは、0.5〜1.5mm程度である。
【0036】
尚、油溝41aは、実施例1に限定されず、油溝の幅や深さは、半割軸受41の周方向中央部付近で最大で、半割軸受41の周方向端面72側へ向かって次第に小さくなるようにすることができ、あるいは半割軸受41の周方向中央部付近で最小で、半割軸受41の周方向端面72側へ向かって次第に大きくなるようにすることもできる。
【0037】
またこの実施例1では、油溝は下側の半割軸受42の内周面には形成されていないが、半割軸受41の油溝41aと連続するように、周方向に延びる部分溝を半割軸受42の内周面に形成してもよい。
【0038】
尚、本願発明では上側の半割軸受41のクランク軸の回転方向の前方側の移行領域73は必須構成であるが、後方側の移行領域73は必須構成ではなく、また下側の半割軸受42のクランク軸の回転方向の前方側の移行領域73および後方側の移行領域73もまた必須構成ではない。
【0039】
実施例1では、半割軸受41、42は、前方側および後方側の両側に移行領域73、73を備えている。実施例1と異なり、半割軸受41のクランク軸6の回転方向の後方側には移行領域73を形成せずに、クラッシュリリーフ部70と主円筒部71を直接接続するように形成してもよい。また、下側の半割軸受42には移行領域73を形成せずに、クラッシュリリーフ部70と主円筒部71を直接接続するように形成してもよい。尚、ここでいう「クランク軸6の回転方向の前方側の移行領域73」とは、1つの半割軸受41または42に着目した場合に、両端近傍にある移行領域73のうち、回転するジャーナル6表面の任意の点が2番目に通過する移行領域73のことを意味する。
【0040】
半割軸受41は、クランク軸の回転方向の前方側および後方側の両方に移行領域73を形成すれば、半割軸受41の周方向両端部の内周面の加工工程を共通化でき、また半割軸受42にも移行領域73を形成すれば、半割軸受41と半割軸受42の内周面の加工工程を共通化することができる。
【0041】
主円筒部71は、半割軸受41(または42)の内周面の大部分を占める半円筒面を有し、この半円筒面は相手軸との間で主たる摺動面を形成する。そしてこの主円筒部71に隣接して、図6および7に示すように、クラッシュリリーフ部70に向かって徐々に壁厚が減少する移行領域73が設けられている。言い換えると、移行領域73において、クラッシュリリーフ部70の内面から主円筒部71の内面へ向かって、相手軸側に近づくように傾斜曲面が形成される。
【0042】
半割軸受41(または42)の軸線方向から見た移行領域73は、半割軸受41(または42)の半径方向内向きに凸の内向凸曲面からなる。すなわち、半割軸受41(または42)の軸線方向から見たときの半割軸受41の仮想内周面71vに対する移行領域73の傾斜曲面の傾きは、クラッシュリリーフ部70に接続する位置で最も大きく、主円筒部71に接続する位置で最も小さくなって主円筒部71に滑らかに接続している。
【0043】
尚、移行領域は平面から形成してもよいが、その場合、主円筒部71と移行領域の接続箇所に角部(角縁部)が形成され、この角部がクランク軸のジャーナル部表面と接触し、損傷が起こりやすくなる。本願発明のように移行領域を傾斜曲面で形成することにより、そのような問題が起き難くなる。
【0044】
尚、移行領域73の内面形状は、移行領域73と油溝41aとの接続部に、油溝内の異物が、リリーフ隙間(移行領域73の内面とクラッシュリリーフ部70の内面と仮想内周面とで形成される隙間)へ流れる形状であればよい。例えば、外径側に凸の外向凸曲面を含んでいてもよく、あるいはクラッシュリリーフ70に近い側の外向凸曲面とクラッシュリリーフ70から遠い側の内向凸曲面とを有するS字状の複合曲面であってもよい。
【0045】
次に、図7を参照しながら、クラッシュリリーフ70および移行領域73の具体的な寸法について説明する。図7は、主円筒部71の内周面が平面(断面内では直線)となるように展開した展開図である。
【0046】
クラッシュリリーフ70cの周方向端面での深さD1は、従来のクラッシュリリーフと同様でよい。内燃機関の仕様によっても異なるが、乗用車用の小型の内燃機関用軸受の場合、例えば深さD1は0.01〜0.05mm程度である。また、クラッシュリリーフ70cは、油溝41aからリリーフ隙間への異物排出作用のために、半割軸受の周方向端部から周方向中央部側へむかって円周角θが3°以上15°以下の範囲まで形成することが好ましい(図2および7参照)。
【0047】
クラッシュリリーフ部70の移行領域73に接続する位置での深さD2は、0.002〜0.030mmとすることができる。深さD2がこの範囲にあれば、(A)クラッシュリリーフの上流側領域においても油溝内に異物FMがリリーフ隙間へ移動可能な隙間空間が、移行領域73と油溝41aの接続部付近に形成され(図10B)、また(B)クランク軸のジャーナル部6の表面とクラッシュリリーフ部70の内面との間のリリーフ隙間の油は、上流領域においても 圧力が減少し、それにより油溝内の異物が潤滑油とともに、特に、移行領域とジャーナル表面間の隙間からリリーフ隙間へも分散して流れるようになる(図10A)。
【0048】
尚、深さD2が0.002mm未満の場合、油溝の異物が通るための隙間が小さくなりすぎ、またリリーフ隙間内の油の圧力を低下させる効果も低下するので、油溝内の異物をリリーフ隙間に分散して流し難い。また深さD2が0.030mmを超える場合、半割軸受41(または42)の幅方向端部におけるクラッシュリリーフ70cの隙間(クラッシュリリーフ部70内面と仮想内周面71vとで挟まれる隙間)が大きくなるため、半割軸受41(または42)の軸受幅方向の両端部から外部への潤滑油の漏れ量が多くなる。
【0049】
実施例1による移行領域73の周方向の長さL2は、1〜4mmの範囲であり、より好ましくは2〜3mmの範囲である。
【0050】
クラッシュリリーフ部70は、半割軸受41、42の周方向の端面72(図5参照)に隣接する領域に、主円筒部71よりも壁厚が薄くなるように形成された壁厚減少領域である。クラッシュリリーフ部70は、一対の半割軸受41、42をシリンダブロック下部81および軸受キャップ82に組み付けた状態における、突合せ端面(周方向の端面72)の位置ずれや変形を吸収するクラッシュリリーフ70cを形成することを企画して設けられる(例えばSAE J506(項目3.26および項目6.4)、DIN1497(セクション3.2)、JIS D3102参照)。
【0051】
実施例1によるクラッシュリリーフ部70は、図6および7に示すように、端面72の位置での深さD1が、移行領域73に接続する位置での深さD2よりも深くなるように形成されている。ここで、クラッシュリリーフ70cの深さとは、主円筒部71の内周面をクラッシュリリーフ部70上に延長した仮想内周面71vからクラッシュリリーフ部70の表面までの距離をいうものとする。
【0052】
さらに、本実施例によるクラッシュリリーフ部70の内面は、半割軸受41、42の半径方向外向きに凸形状の外向凸曲面から形成される。すなわち半割軸受41の軸線方向から見たときに半割軸受41、42の仮想内周面71vに対するクラッシュリリーフ部70の内面の傾きは、移行領域73に接続する位置で最も大きく、また端面72の位置で最も小さく、仮想内周面71vに対して略平行である。
【0053】
尚、上述した主円筒部71、クラッシュリリーフ部70、および移行領域73の形状は、一般的な形状測定器、例えば真円度測定器によって計測可能である。すなわち、実際のシリンダブロック下部の軸受ハウジング部、またはこれらに類似したハウジング内に軸受を組み付けた状態で、軸受の内面の形状を円周方向に連続的に測定することができる。
【0054】
クラッシュリリーフ部70には、図3および4に示すように、複数のクラッシュリリーフ溝74、75が、軸受の周方向と平行に延在するように、クラッシュリリーフ70の内周面の周方向全長にわたって形成されている。クラッシュリリーフ溝74、75は、半割軸受41、42の幅方向に複数並列して配置され、全幅に亘って形成されている。したがって、クラッシュリリーフ部の内周面に平坦な領域は存在しない(半割軸受41の油溝41aの形成範囲は除く)。また複数のクラッシュリリーフ溝74、75は、全て同じ溝幅、溝深さになされ、クラッシュリリーフ70の内周面の周方向全長に亘っても、同じ溝幅、溝深さになされる。
【0055】
より詳細に説明すると、クラッシュリリーフ溝74は、図8に示すように、所定の溝幅WG且つ所定の溝深さDGの円弧形状(円弧部が奥側になっている形状)に形成されている。換言すると、個々のクラッシュリリーフ溝74はU字形状の切削溝であり、幅方向に一定間隔(WG)で並設されて、全体として鋸刃状または浅い櫛状の断面形状を形成している。ここで、溝幅WGとは、隣接する山部の頂点間の半割軸受41、42の幅方向の距離をいうものとし、溝深さDGとは、頂点から谷部の底点までの内周面に垂直方向の距離をいうものとする。クラッシュリリーフ溝74は、具体的には、溝幅WGが0.05〜0.5mmであり、溝深さDGが1〜20μmであることが好ましい。
【0056】
本願発明によれば、図10Aに示すように、複数のクラッシュリリーフ溝74は、軸受の周方向と平行に延びるように、クラッシュリリーフ部70の内周面の周方向全長に亘って形成されている。本願発明とは異なり、例えば図10Aの上側の半割軸受41のクラッシュリリーフ溝74のうち、油溝41aよりも紙面右側のクラッシュリリーフ溝74および紙面左側のクラッシュリリーフ溝を、周方向ではなく、半割軸受41の軸線方向の中央部(油溝41a)へ向かって傾ける(軸受の周方向に対して傾ける)ようにした場合、リリーフ隙間に排出された異物は、再度、半割軸受の軸線方向の中央部(油溝41a側)に向かって送られるため、軸受の外部へ排出され難くなる。また、例えば図10aの上側の半割軸受41のクラッシュリリーフ溝74のうち、油溝41aよりも紙面右側のクラッシュリリーフ溝74および紙面左側のクラッシュリリーフ溝を、半割軸受41の軸線方向の端部へ向かうように傾けた場合、半割軸受41から外部への油の漏れ量が多くなってしまう。
【0057】
さらに、クラッシュリリーフ部70には、図3、4、6、7および9に示すように、半割軸受41、42の周方向の内側端縁に、半割軸受41、42の軸線方向に連続して延びる傾斜面76が形成されている。すなわち、軸線方向溝77は、一対の半割軸受41、42が円筒形に組み合わされた状態で、互いに当接する円周方向端面72の内縁に沿って、且つ主軸受の軸線方向の幅全長に亘って軸線方向溝が形成される。尚、実施例1とは異なり、互いに当接する2つの円周方向端面72のうち一方の円周方向端面のみに傾斜面76を形成してもよく、その場合、一対の半割軸受41、42が円筒形に組み合わされたときに傾斜面76は他方の円周方向端面72と協同して軸線方向溝77が形成される。
【0058】
軸線方向溝77は、具体的には、組み合わせた状態での周方向の溝幅WJが0.3〜2mmであり、半径方向の溝深さDJが0.1〜1mmであることが好ましい。異物の排出路となる軸線方向溝77の寸法は、潤滑油に混入する異物の大きさを考慮して決めればよく、軸受の大きさには影響されない。尚、図9では、軸線方向溝77はV形状断面の溝を示したが、異物の排出が可能であれば断面形状はこれに限定されない。
【0059】
軸線方向溝77は、クラッシュリリーフ溝74よりも深く形成される。このため、クラッシュリリーフ溝74の周方向端部の開口は、軸線方向溝77の内面(傾斜面76)に開口する。このためクラッシュリリーフ溝74の内面凹部にガイドされて流れる潤滑油および異物は直接軸線方向溝77内に進入するので、軸線方向溝77内に軸線方向への油流が形成されやすい。したがって潤滑油とともに軸線方向溝77内に進入した異物は、軸受外へ排出されやすくなる。
【0060】
ところで、図10Aおよび10Bに示すように、油溝41aから一方の半割軸受41のリリーフ隙間に排出された異物FMの一部は、軸線方向溝77を通り越して、他方の半割軸受42のリリーフ隙間へ進入してしまう場合がある。そこで、以下のようにクラッシュリリーフ溝74、75を配置することが好ましい。
【0061】
一方の半割軸受41と対になる他方の半割軸受42のクラッシュリリーフ部70には、周方向に連続する複数のクラッシュリリーフ溝75が設けられている。本実施例では、図11に示すように、本実施例の一方の半割軸受41の複数のクラッシュリリーフ溝74は、他方の半割軸受42の複数のクラッシュリリーフ溝75に対して、幅方向に溝幅WGの半分だけずらされている。すなわち、一対の半割軸受41、42の周方向端面同士の突合せ部、すなわち一方のクラッシュリリーフ溝74と他方のクラッシュリリーフ溝75の接続位置では(実際には軸線方向溝76が存在するので、直接は接続しない)、一方のクラッシュリリーフ溝74の谷部(クラッシュリリーフ溝の凹形状の開口)が他方のクラッシュリリーフ溝75の山部(隣り合う2個の周方向溝74の間に形成される凸形状)に対応するように配置される。
【0062】
したがって異物は、クラッシュリリーフ溝74とクラッシュリリーフ溝75の接続位置で抵抗を受けるので、一方の半割軸受41のクラッシュリリーフ溝74内を流れてきた異物が、他方の半割軸受42のクラッシュリリーフ溝75へ進入し難くなり、また同時に、軸線方向溝77内を軸受幅方向の端部側へ流れる油流によって軸受の外部へ排出されやすくなる。尚、油もまたクラッシュリリーフ溝74とクラッシュリリーフ溝75の接続位置において抵抗を受けるが、クラッシュリリーフ溝74からクラッシュリリーフ溝75へも流れる。
【0063】
(実施例2)
図12および13に示すように、実施例1の一方の半割軸受41とは異なり、油溝41aが、主円筒面からの深さが半割軸受41の周方向の中央部で最大で、周方向両端部に向かって次第に小さくなるよう形成される。油溝41aの周方向両端部は、クラッシュリリーフ部70内に位置付けられ、油溝41aの周方向端部よりも先側には複数のクラッシュリリーフ溝を有するクラッシュリリーフ部70の面が形成される。他の構成は実施例1の半割軸受41の構成と同じである。
【0064】
実施例2においても、図13に示すように、一方の半割軸受41と対になる他方の半割軸受42のクラッシュリリーフ部70に周方向に延びる複数のクラッシュリリーフ溝75が設けられている。本実施例の一方の半割軸受41の油溝41aの周方向先側の複数のクラッシュリリーフ溝74は、他方の半割軸受42の複数のクラッシュリリーフ溝75に対して、幅方向に溝幅WGの半分だけずらされている。このため、油溝41a内に残留し、一方の半割軸受41のクラッシュリリーフ溝74内を流れてきた異物は、他方の半割軸受42のクラッシュリリーフ溝75へ進入し難く、軸線方向溝77内を軸受幅方向の端部側へ流れる油流によって軸受の外部へ排出されやすくなる。
【0065】
実施例1および実施例2では、一方の半割軸受41の複数のクラッシュリリーフ溝74は、他方の半割軸受42の複数のクラッシュリリーフ溝75に対して、幅方向に溝幅WGの半分だけずらされた例を示したが、本願発明はこれに限定されない。複数のクラッシュリリーフ溝74は、他方の半割軸受42の複数のクラッシュリリーフ溝75に対して、幅方向に0を越え溝幅WG未満の範囲内で、ずらされていてもよい。換言すると、一方のクラッシュリリーフ溝74と他方のクラッシュリリーフ溝75は、接続位置においてそれぞれの溝幅の中央部の位置が、半割軸受41の幅方向に少なくとも0を超え、最大で溝幅WG未満の範囲でずらされて配置されていればよい。また好ましくは、一方のクラッシュリリーフ溝74と他方のクラッシュリリーフ溝75は、接続位置においてそれぞれの溝幅の中央部の位置が、半割軸受41の幅方向に少なくとも溝幅WGの10%以上、最大で溝幅WGの50%以下の範囲でずらされて配置される。しかし、異物の排出性能はやや劣るものの、ククラッシュリリーフ溝74とクラッシュリリーフ溝75は整合していてもよい。
【0066】
以上、図面を参照して、本願発明の実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、これらの実施例に限らず、本願発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本願発明に含まれる。
【0067】
例えば、実施例では、クラッシュリリーフ部70にのみ複数のクラッシュクラッシュリリーフ溝74を設ける場合について説明したが、主円筒面に複数の周方向溝を設けてもよい。また、移行領域73に複数の周方向溝を設けてもよい。さらに、半割軸受41、42の軸線方向両端部の内周面側には、軸受壁厚の減少領域(クラウニング部)を設けてもよい。
【符号の説明】
【0068】
2 コンロッド
3 コンロッド軸受
4 主軸受
5 クランクピン
5a、5b 潤滑油路
5c 吐出口
6 ジャーナル部
6a 潤滑油路
41、42 半割軸受
41a 油溝
70 クラッシュリリーフ部
70c クラッシュリリーフ
71 主円筒部
71v 仮想の内周面
72 端面
73 移行領域
74、75 クラッシュリリーフ溝
76 傾斜面
77 軸線方向溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14A
図14B