特開2015-42895(P2015-42895A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2015-42895クランプ装置、及びこれを備えた輸液ポンプ装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-42895(P2015-42895A)
(43)【公開日】2015年3月5日
(54)【発明の名称】クランプ装置、及びこれを備えた輸液ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   F16B 2/12 20060101AFI20150206BHJP
   A61M 5/168 20060101ALI20150206BHJP
   B23Q 3/06 20060101ALN20150206BHJP
【FI】
   F16B2/12 B
   A61M5/14 417
   B23Q3/06 303E
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2013-220195(P2013-220195)
(22)【出願日】2013年10月23日
(31)【優先権主張番号】特願2013-151294(P2013-151294)
(32)【優先日】2013年7月22日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】311001347
【氏名又は名称】NKワークス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156845
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 威一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100112896
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 宏記
(72)【発明者】
【氏名】冨士川 雄
(72)【発明者】
【氏名】嶋村 泰伸
(72)【発明者】
【氏名】藤村 勇斗
【テーマコード(参考)】
3C016
3J022
4C066
【Fターム(参考)】
3C016CA08
3C016CB06
3C016CB14
3C016CC01
3J022DA16
3J022EA42
3J022EB14
3J022EC17
3J022FA01
3J022FA05
3J022FB06
3J022FB12
3J022GB32
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD11
4C066QQ15
4C066QQ26
(57)【要約】
【課題】クランプ装置における軸体の雄ネジ部と雌ネジ部との噛合を容易に解除可能にする。
【解決手段】本発明の一側面に係るクランプ装置は、支持機構に噛合する雄ネジ部が形成された軸体と、軸体を軸周りに回転させる第1操作部材と、支持機構と軸体との噛合状態を解除する噛合解除機構と、を備える。支持機構は、軸体の雄ネジ部と噛合する複数の雌ネジ部材と、軸体の雄ネジ部の方に各雌ネジ部材を押圧する複数の弾性部材と、を備える。噛合解除機構は、複数の噛合解除部材と、各雌ネジ部材を押圧する方向に噛合解除部材に力を付与する第2操作部材と、を備える。各雌ネジ部材は、弾性部材によって押圧されて、雄ネジ部に噛合する第1のポジションと、弾性部材の弾性力に抗して噛合解除部材によって押圧されることで、雄ネジ部から離間する第2のポジションと、をとり得るように構成されている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端部及び第2の端部を有する基部と、
前記基部の第1の端部側に配置された固定部材と、
前記基部の第2の端部側に、前記固定部材と対向するように配置された支持機構と、
前記支持機構を貫通して前記基部に沿って延び、前記支持機構に噛合する雄ネジ部が形成された軸体と、
前記軸体の第1の端部に回転自在に取付けられ、前記固定部材との間でクランプ対象物を挟持する可動部材と、
前記軸体の第2の端部に取付けられ、当該軸体を軸周りに回転させる第1操作部材と、
前記支持機構に作用するように設けられ、当該支持機構と前記軸体との噛合状態を解除する噛合解除機構と、
を備え、
前記支持機構は、
前記軸体の軸周りに分割され、前記軸体の雄ネジ部と噛合する複数の雌ネジ部材と、
前記軸体の雄ネジ部の方に前記各雌ネジ部材を押圧する複数の弾性部材と、
を備え、
前記噛合解除機構は、
前記支持機構を貫通し、前記各雌ネジ部材を押圧可能に構成された複数の噛合解除部材と、
前記噛合解除部材の端部に取付けられ、前記各雌ネジ部材を押圧する方向に当該噛合解除部材に力を付与する第2操作部材と、
を備え、
前記各雌ネジ部材は、
前記弾性部材によって押圧されて、前記雄ネジ部に噛合する第1のポジションと、
前記弾性部材の弾性力に抗して前記噛合解除部材によって押圧されることで、前記雄ネジ部から離間する第2のポジションと、をとり得るように構成されている、
クランプ装置。
【請求項2】
前記雌ネジ部材が少なくとも2個設けられており、
前記噛合解除部材は、前記軸体を挟むように少なくとも2個設けられ、前記軸体を中心に回転自在に支持され、前記第2操作部材を軸周りに回転させる操作が行われると、前記軸体の軸周りに回転して、前記各雌ネジ部材をそれぞれ押圧するように構成されている、
請求項1に記載のクランプ装置。
【請求項3】
前記各雌ネジ部材が前記第1のポジションをとる場合に当該各雌ネジ部材を当該第1のポジションで固定する固定具であって、前記各噛合解除部材が前記軸体の軸回りに回転するのに応じて前記各雌ネジ部材の固定を解除可能な固定具、を更に備える、
請求項2に記載のクランプ装置。
【請求項4】
前記固定具は、前記各噛合解除部材が前記軸体の軸回りに回転するのに応じて、回転するように構成されている、
請求項3に記載のクランプ装置。
【請求項5】
前記クランプ対象物の方向に前記可動部材を移動させるために前記第1操作部材を軸周りに回転させる第1方向は、前記各雌ネジ部材を前記第2のポジションにするために前記第2操作部材を軸周りに回転させる第2方向とは逆向きであり、
前記固定具は、前記第2操作部材を前記第1方向に所定の角度回転させた場合に、前記各雌ネジ部材を前記第1のポジションで固定するように構成されている、
請求項4に記載のクランプ装置。
【請求項6】
前記可動部材と前記固定部材とで前記クランプ対象物を挟持した状態で、前記第1操作部材を前記第1方向に更に回転させた場合に、前記第1操作部材の回転する力を伝達して、前記固定具により前記各雌ネジ部材が前記第1のポジションで固定されるように、前記第1操作部材が回転する前記第1方向に前記第2操作部材を回転させる回転伝達部材を更に備える、
請求項5に記載のクランプ装置。
【請求項7】
前記各雌ネジ部材は前記固定具の方向に延びる突起部を備え、
前記固定具は、前記各雌ネジ部材が前記第1のポジションをとる場合に、前記各雌ネジ部材の突起部を係止する係止部を備える、
請求項3から6のいずれか1項に記載のクランプ装置。
【請求項8】
前記クランプ対象物の方向に前記可動部材を移動させるために前記第1操作部材を軸周りに回転させる第1方向は、前記各雌ネジ部材を前記第2のポジションにするために前記第2操作部材を軸周りに回転させる第2方向とは逆向きである、
請求項2から7のいずれか1項に記載のクランプ装置。
【請求項9】
前記各雌ネジ部材は、前記第1のポジション及び前記第2のポジションを取りうるように、前記支持機構内で揺動自在に支持されている、
請求項2から8のいずれか1項に記載のクランプ装置。
【請求項10】
前記各雌ネジ部材は、前記弾性部材を挿入する窪み部を備え、
前記窪み部は、前記第2操作部材が操作されて前記各雌ネジ部材が揺動する際に、挿入された前記弾性部材と接触して前記第2のポジションを確定する側面部を備える、
請求項9に記載のクランプ装置。
【請求項11】
前記軸体は、前記第2操作部材を貫通して延び、
前記第2操作部材は、前記軸体の前記第2の端部に取り付けられた前記第1操作部材を把持した手で操作可能な範囲に位置するように構成されている、
請求項1から10のいずれか1項に記載のクランプ装置。
【請求項12】
輸液を送出する輸液ポンプ本体と、
前記輸液ポンプ本体に取付けられ、当該輸液ポンプ本体を被固定物に固定する、請求項1から11のいずれか1項に記載のクランプ装置と、
を備える、
輸液ポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランプ装置、及びこれを備えた輸液ポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なクランプ装置としては、固定部材と、雄ネジ付きの軸体が取付けられた可動部材とを有し、軸体を支持部材の雌ネジ部に螺合させたものが知られている。このクランプ装置は、固定部材と可動部材との間にクランプ対象物を挟み、軸体を軸回りに回転させることで可動部を固定部に近接させ、これによって可動部材をクランプ対象物に締め付けるといった使用がなされる。しかしながら、このクランプ装置では、軸体を回転させることで可動部材を固定部材に近接させるため、操作に時間を要するという問題がある。そこで、クランプ対象物にクランプ装置を取り付けやすくするため、軸体を軸方向に対して迅速に移動できるように、軸体と雌ネジ部との噛合を解除する機構を設けたものが提案されている(特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−125248号公報
【特許文献2】特開2009−045114号公報
【特許文献3】特開2010−046281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1〜3で開示されているクランプ装置では、軸体の雄ネジと雌ネジ部との噛合を解除するためには、2つの操作部材を操作しなければならない。すなわち、軸体の引っ張りと回転という2種類の操作を行って初めて軸体の雄ネジと雌ネジ部との噛合を解除することができる。そのため、軸体の雄ネジ部と雌ネジ部材との噛合を解除する操作が複雑であるという問題があった。
【0005】
本発明は、一側面では、このような点を考慮してなされたものであり、クランプ装置における軸体の雄ネジ部と雌ネジ部との噛合を簡単な操作で解除できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。
【0007】
すなわち、本発明の第1形態は、第1の端部及び第2の端部を有する基部と、前記基部の第1の端部側に配置された固定部材と、前記基部の第2の端部側に、前記固定部材と対向するように配置された支持機構と、前記支持機構を貫通して前記基部に沿って延び、前記支持機構に噛合する雄ネジ部が形成された軸体と、前記軸体の第1の端部に回転自在に取付けられ、前記固定部材との間でクランプ対象物を挟持する可動部材と、前記軸体の第2の端部に取付けられ、当該軸体を軸周りに回転させる第1操作部材と、前記支持機構に作用するように設けられ、当該支持機構と前記軸体との噛合状態を解除する噛合解除機構と、を備えるクランプ装置である。
【0008】
そして、前記支持機構は、前記軸体の軸周りに分割され、前記軸体の雄ネジ部と噛合する複数の雌ネジ部材と、前記軸体の雄ネジ部の方に前記各雌ネジ部材を押圧する複数の弾性部材と、を備える。また、前記噛合解除機構は、前記支持機構を貫通し、前記各雌ネジ部材を押圧可能に構成された複数の噛合解除部材と、前記噛合解除部材の端部に取付けられ、前記各雌ネジ部材を押圧する方向に当該噛合解除部材に力を付与する第2操作部材と、を備える。
【0009】
更に、前記各雌ネジ部材は、前記弾性部材によって押圧されて、前記雄ネジ部に噛合する第1のポジションと、前記弾性部材の弾性力に抗して前記噛合解除部材によって押圧されることで、前記雄ネジ部から離間する第2のポジションと、をとり得るように構成されている。
【0010】
上記構成では、基部の第1の端部側に固定部材が配置され、基部の第2の端部側に支持機構が配置されている。この支持機構には軸体が貫通しており、支持機構に噛合する雄ネジ部が軸体に形成されている。そして、軸体の第1の端部には、固定部材との間でクランプ対象物を挟持する可動部材が回転自在に取り付けられており、軸体の第2の端部には、この軸体を軸周りに回転させる第1操作部材が取り付けられている。
【0011】
よって、上記構成では、支持機構と軸体とが噛合した状態において、第1操作部材を回転させると、ネジ機構により軸体を可動部材とともに軸方向に移動させることができる。したがって、固定部材と可動部材との間でクランプ対象物を挟持することができる。
【0012】
一方、支持機構は、軸体の周りに分割された複数の雌ネジ部材と、各雌ネジ部材を押圧する複数の弾性部材と、を備える。弾性部材は、例えば、圧縮バネである。各雌ネジ部材は、当該弾性部材に押圧されて、軸体の雄ネジ部に噛合する第1のポジションを取る。
【0013】
これに対して、支持機構と軸体との噛合状態を解除する噛合解除機構が支持機構に作用するように設けられている。噛合解除機構は、支持機構を貫通し、各雌ネジ部材を押圧可能に構成された複数の噛合解除部材と、当該噛合解除部材の端部に取り付けられ、各雌ネジ部材を押圧する方向に噛合解除部材に力を付与する第2操作部材と、を備える。各雌ネジ部材は、前記第2操作部材の操作に基づいて、弾性部材の弾性力に抗して噛合解除部材に押圧されることで、軸体の雄ネジ部から離間する第2のポジションを取る。
【0014】
よって、上記構成では、支持機構と軸体とが噛合した状態において、第1操作部材とは無関係な第2操作部材を操作することで、軸体の雄ネジ部と雌ネジ部材との噛合を解除することができる。これにより、軸体は雌ネジ部材に拘束されることなく、軸方向に自由に移動することができる。そのため、ネジ機構によらずに、軸体を軸方向に移動させることで、可動部材と固定部材とを迅速に近接させることができる。このように、上記構成によれば、クランプ装置における軸体の雄ネジ部と雌ネジ部との噛合を簡単な操作で解除できるようになる。
【0015】
また、本発明の第2形態は、前記雌ネジ部材が少なくとも2個設けられており、前記噛合解除部材が、前記軸体を挟むように少なくとも2個設けられ、前記軸体を中心に回転自在に支持され、前記第2操作部材を軸周りに回転させる操作が行われると、前記軸体の軸周りに回転して、前記各雌ネジ部材をそれぞれ押圧するように構成されている、上記第1形態のクランプ装置である。当該構成によれば、軸方向の操作ではなく、軸周りの操作で、軸体の雄ネジ部と雌ネジ部との噛合を解除することができるようになるため、クランプ装置の軸方向の長さを抑制することが可能になる。
【0016】
また、本発明の第3形態は、前記各雌ネジ部材が前記第1のポジションをとる場合に当該各雌ネジ部材を当該第1のポジションで固定する固定具であって、前記各噛合解除部材が前記軸体の軸回りに回転するのに応じて前記各雌ネジ部材の固定を解除可能な固定具、を更に備える、上記第2形態のクランプ装置である。当該構成によれば、各雌ネジ部材を第1ポジションで固定することが可能になる。そのため、可動部材と固定部材とでクランプ対象物を挟持している間に、各雌ネジ部材と軸体の雄ネジ部との噛合が緩んでしまうことを防止することが可能になる。
【0017】
また、本発明の第4形態は、前記固定具が、前記各噛合解除部材が前記軸体の軸回りに回転するのに応じて、回転するように構成されている、上記第3形態のクランプ装置である。当該構成によれば、第2操作部材によって各噛合解除部材を操作するのに応じて、固定具を操作することが可能になる。
【0018】
また、本発明の第5形態は、前記クランプ対象物の方向に前記可動部材を移動させるために前記第1操作部材を軸周りに回転させる第1方向が、前記各雌ネジ部材を前記第2のポジションにするために前記第2操作部材を軸周りに回転させる第2方向とは逆向きであり、前記固定具が、前記第2操作部材を前記第1方向に所定の角度回転させた場合に、前記各雌ネジ部材を前記第1のポジションで固定するように構成されている、上記第4形態のクランプ装置である。当該構成によれば、各雌ネジ部材が軸体の雄ネジ部から離間する第2のポジションを取るように第2操作部材を操作する方向とは逆向きに操作することで、軸体の雄ネジ部に噛合する第1のポジションで各雌ネジ部材を固定することが可能になる。そのため、各雌ネジ部材の各ポジションに対する第2操作部材の誤操作を防止することが可能になり、クランプ装置の操作性を向上させることができる。
【0019】
また、本発明の第6形態は、前記可動部材と前記固定部材とで前記クランプ対象物を挟持した状態で、前記第1操作部材を前記第1方向に更に回転させた場合に、前記第1操作部材の回転する力を伝達して、前記固定具により前記各雌ネジ部材が前記第1のポジションで固定されるように、前記第1操作部材が回転する前記第1方向に前記第2操作部材を回転させる回転伝達部材を更に備える、上記第5形態に係るクランプ装置である。当該構成によれば、クランプ装置の増し締めを行うのと同時に、軸体の雄ネジ部と噛合する第1のポジションに各雌ネジ部を固定することが可能になる。そのため、クランプ対象物にクランプ装置を取り付ける手順を簡略化でき、クランプ装置の操作性を向上させることが可能である。
【0020】
また、本発明の第7形態は、前記各雌ネジ部材が前記固定具の方向に延びる突起部を備え、前記固定具が、前記各雌ネジ部材が前記第1のポジションをとる場合に、前記各雌ネジ部材の突起部を係止する係止部を備える、上記第3形態から第6形態のいずれかの形態に係るクランプ装置である。当該構成によれば、各雌ネジ部材の突起部と固定具の係止部とによって各雌ネジ部材を第1のポジションで固定することが可能になる。そのため、比較的簡単な構成で、各雌ネジ部の第1ポジションでの固定を達成することができる。
【0021】
また、本発明の第8形態は、前記クランプ対象物の方向に前記可動部材を移動させるために前記第1操作部材を軸周りに回転させる第1方向は、前記各雌ネジ部材を前記第2のポジションにするために前記第2操作部材を軸周りに回転させる第2方向とは逆向きである、上記第2形態から第7形態のいずれかの形態に係るクランプ装置である。当該構成によれば、第1操作部材の操作方向と第2操作部材の操作方向とが異なるため、第1操作部材の操作と第2操作部材の操作とを混同してしまうことを防止することが可能になる。
【0022】
また、本発明の第9形態は、前記各雌ネジ部材が、前記第1のポジション及び前記第2のポジションを取りうるように、前記支持機構内で揺動自在に支持されている、上記第2形態から第8形態のいずれかの形態に係るクランプ装置である。当該第9形態では、各雌ネジ部材を押圧する噛合解除部材の軸周りの回転の向きと各雌ネジ部材の揺動の向きとが適合しうる。各雌ネジ部材を押圧する噛合解除部材の軸周りの回転の向きと各雌ネジ部材の揺動の向きとが適合する場合、噛合解除部材の回転力はスムーズに各雌ネジ部材に伝達されるため、噛合解除部材を回転させる第2操作部材の操作性を向上させることが可能になる。
【0023】
また、本発明の第10形態は、前記各雌ネジ部材が、前記弾性部材を挿入する窪み部を備え、前記窪み部が、前記第2操作部材が操作されて前記各雌ネジ部材が揺動する際に、挿入された前記弾性部材と接触して前記第2のポジションを確定する側面部を備える、上記第9形態のクランプ装置である。当該構成によれば、窪み部の備える側面部により第2のポジションが確定されるため、第2操作部材の誤操作に基づく噛合解除部材の過度の回転を防止することが可能になる。
【0024】
また、本発明の第11形態は、前記軸体が、前記第2操作部材を貫通して延びており、前記第2操作部材が、前記軸体の前記第2の端部に取り付けられた前記第1操作部材を把持した手で操作可能な範囲に位置するように構成されている、上記第1形態から第10形態のいずれかの形態に係るクランプ装置である。当該構成によれば、第1操作部材を把持したまま第2操作部材を操作することが可能になるため、クランプ装置の操作性を向上させることが可能になる。
【0025】
また、本発明の第12形態は、輸液を送出する輸液ポンプ本体と、前記輸液ポンプ本体に取付けられ、当該輸液ポンプ本体を被固定物に固定する、上記第1形態から第11形態のいずれかの形態に係るクランプ装置と、を備える、輸液ポンプ装置である。当該構成によれば、クランプ装置における軸体の雄ネジ部と雌ネジ部との噛合を簡単な操作で解除できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、クランプ装置における軸体の雄ネジ部と雌ネジ部との噛合を簡単な操作で解除できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、第1実施形態に係るクランプ装置の構成を例示する。
図2図2は、第1実施形態にクランプ装置の噛合状態での構成を例示する。
図3図3は、第1実施形態に係る支持機構の噛合状態での構成を例示する。
図4図4は、第1実施形態に係る噛合解除機構の構成を例示する。
図5図5は、第1実施形態に係るクランプ装置の噛合解除状態での構成を例示する。
図6図6は、第1実施形態に係る支持機構の噛合解除状態での構成を例示する。
図7図7は、第1実施形態において、被固定物(クランプ対象物)にクランプ装置を取り付ける手順を例示する。
図8図8は、第1実施形態において、被固定物(クランプ対象物)からクランプ装置を取り外す手順を例示する。
図9図9は、第2実施形態に係るクランプ装置の構成を例示する分解斜視図である。
図10図10は、第2実施形態に係るクランプ装置を組み立てた状態を例示する。
図11A図11Aは、第1面側から見たロックプレートを例示する。
図11B図11Bは、第1面側から見たロックプレートを例示する斜視図である。
図11C図11Cは、第2面側から見たロックプレートを例示する。
図11D図11Dは、第2面側から見たロックプレートを例示する斜視図である。
図12A図12Aは、第1噛合状態におけるロックプレート及び各雌ネジ部材の状態を例示する。
図12B図12Bは、第1噛合状態における各雌ネジ部材の状態を例示する。
図12C図12Cは、第1噛合状態におけるロックプレートと各雌ネジ部材の突起部との位置関係を例示する。
図13A図13Aは、噛合解除状態におけるロックプレート及び各雌ネジ部材の状態を例示する。
図13B図13Bは、噛合解除状態における各雌ネジ部材の状態を例示する。
図13C図13Cは、噛合解除状態におけるロックプレートと各雌ネジ部材の突起部との位置関係を例示する。
図14A図14Aは、第2噛合状態におけるロックプレート及び各雌ネジ部材の状態を例示する。
図14B図14Bは、第2噛合状態における各雌ネジ部材の状態を例示する。
図14C図14Cは、第2噛合状態におけるロックプレートと核雌ネジ部材の突起部との位置関係を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。ただし、以下で説明する本実施形態は、あらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。つまり、本発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。
【0029】
§1 第1実施形態
[クランプ装置の構成]
まず、図1及び図2を用いて、第1実施形態に係るクランプ装置101Aの構成を説明する。図1は、第1実施形態に係る輸液ポンプ装置100の構成を例示する正面図、図2はクランプ装置101Aの斜視図である。図1に例示されるように、第1実施形態に係るクランプ装置101Aは、輸液ポンプ本体102を被固定物(クランプ対象物)200に固定するための装置であり、基部1、固定部材2、及び支持機構3を備える。以下、各部材について詳述する。なお、被固定物200は、クランプ装置101Aに挟持される対象物であり、クランプ対象物200と読み替えられてよい。また、輸液ポンプ本体102は、公知のものを用いることができる。
【0030】
図1及び図2に示すように、基部1は、軸方向(図中のx軸)に延びる板状の部材であり、その両側に第1の端部11及び第2の端部12を有する。また、基部1は側面に側面板13が設けられた断面コ字状に形成されている。基部1の第1の端部11側には、基部1と垂直に連結された矩形状の固定部材2が配置されている。固定部材2も側面板21を有しており、断面コ字状に形成されている。側面板21は、被固定物の形状に対応しており、この例では、円弧状の外形の被固定物に対応するように、円弧状の凹部を有している。また、基部1の第2の端部12側には、矩形状の支持機構3が、基部1とは垂直に連結されており、これにより、支持機構3と固定部材2とは対向するように配置されている。これら基部1、固定部材2、及び支持機構3は、一体の構成として形成されてもよいし、個別の構成として形成されてもよい。また、基部1、固定部材2、及び支持機構3で構成する形状は、第1実施形態のようにコ字型であってもよいし、それ以外の形状であってもよい。
【0031】
支持機構3には、クランプ装置101Aの備える構成要素の一つとして、基部1に沿って延びる軸体4が貫通している。軸体4の外周面には、支持機構3に噛合するための雄ネジ部41が形成されている。この軸体4は、雄ネジ部41によって支持機構3と噛合することで、支持機構3に支持されている。すなわち、支持機構3には、後述するように、雄ネジ部41と噛合する雌ネジ部材31、33が内蔵されている。なお、雄ネジ部41は、軸体4の軸方向全体に形成されていてもよいし、軸体4の軸方向の一部に形成されていてもよい。
【0032】
そして、軸体4の第1の端部43には、クランプ装置101Aの備える構成要素の一つとして、矩形状の可動部材5が回転自在に取り付けられている。可動部材5が取り付けられる第1の端部43は軸方向の固定部材2側に位置しており、可動部材5は、軸体4とともに軸方向に移動することができる。つまり、可動部材5は、固定部材2と支持機構3との間で、当該固定部材2に対して隣接自在に移動することができる。これにより、固定部材2との間で被固定物200を挟持することができる。
【0033】
そのため、可動部材5には固定部材2と同様に、側面板52が設けられており、円弧状の外形を有する被固定物200を挟持できるように、側面板52には円弧状の凹部が形成されている。第1実施形態で、被固定物200は、当該クランプ装置101Aによって輸液ポンプ本体102等の固定対象物を固定する先であり、例えば、机の天板、円柱状のポールである。したがって、固定部材2及び可動部材5には、上記のような円弧状の凹部が形成されている。なお、被固定物200が水平な面を有する机の天板である場合、固定部材2及び可動部材5それぞれの被固定物200側の面は水平に形成されてもよい。なお、上記のような側面板を設けず、可動部材5及び固定部材2自体を挟持する対象となる被固定物200の形状に応じた形状を有してもよい。
【0034】
また、第1の端部43の軸方向反対側に位置する軸体4の第2の端部44には、クランプ装置101Aの備える構成要素の一つとして、第1操作部材6が取り付けられている。第1操作部材6は、可動部材5を移動させるための操作部材であり、ノブ、取っ手等と称されてもよい。第1操作部材6の形状は、実施の形態に応じて適宜選択されてよく、例えば、第1実施形態のように丸形であってもよい。第1操作部材6の形状は、クランプ装置101Aの利用者が把持しやすい形状であることが望ましい。第1操作部材6は、クランプ装置101Aの利用者による軸周りの回転操作に応じて、軸体4を軸周りに回転させることができる。
【0035】
支持機構3と軸体4とが噛合した状態において、第1操作部材6を軸体4とともに軸周りに回転すると、ネジ機構により、軸体4は軸方向に移動する。そして、軸体4が軸方向に移動した分だけ、軸体4の第1の端部43に取り付けられた可動部材5は軸方向に移動する。つまり、支持機構3と軸体4とが噛合した状態では、利用者は、第1操作部材6を回転する操作を行うことで、可動部材5を軸方向に移動させて、可動部材5と固定部材2との間の距離を調節することができる。
【0036】
ここで、第1操作部材6の回転方向と可動部材5の移動方向との関係は、実施の形態に応じて、適宜、決定されてよい。第1実施形態では、軸体4の軸方向(図中のx軸)を基準として右回りに第1操作部材6を回転させると、可動部材5は固定部材2側(図中のx軸正の方向)に移動し、可動部材5と固定部材2との間の距離が短くなる。他方、軸体4の軸方向(図中のx軸)を基準として左回りに第1操作部材6を回転させると、可動部材5は支持機構3側(図中のx軸負の方向)に移動し、可動部材5と固定部材2との間の距離は広くなる。すなわち、右回りの方向が本発明の第1方向に相当する。また、左回りの方向が本発明の第2方向に相当する。
【0037】
なお、軸体4が軸周りに回転すると、軸体4の第1の端部43に取り付けられた可動部材5が軸周りに回転してしまう可能性がある。これを防止するために、可動部材5には、軸方向に垂直な方向(図中の紙面に垂直な方向)で基部1を挟むように、一対の回転防止片51が設けられてもよい。これら回転防止片51は、基部1の側面板13と当接するとともに、側面板13に沿って移動するようになっている。
【0038】
このように、第1実施形態に係るクランプ装置101Aでは、第1操作部材6を回転させることで、可動部材5を軸方向に移動させることができる。しかしながら、可動部材5の軸方向のすべての移動を第1操作部材6の回転操作で行うと、可動部材5の移動距離によっては、利用者に大きな負担がかかってしまうことがある。すなわち、軸体4の移動はネジ機構によるものであるため、可動部材5の移動に時間を要するという問題がある。このような負担を軽減するために、一般的には、軸体4と共に可動部材5を軸方向に自在に移動できるように、支持機構3と軸体4との噛合状態を解除する機構が設けられる。第1実施形態に係るクランプ装置101Aは、支持機構3と軸体4との噛合状態を解除するための当該構成として、後述する噛合解除機構7を備えている。
【0039】
なお、図1に例示されるように、第1実施形態に係るクランプ装置101Aは、輸液を送出する輸液ポンプ本体102とともに、輸液ポンプ装置100を構成する。つまり、第1実施形態に係るクランプ装置101Aは、輸液を送出する輸液ポンプ本体102に取り付けられ、輸液ポンプ本体102を被固定物(クランプ対象物)200に固定するために用いられる。ただし、第1実施形態に係るクランプ装置101Aを適用する対象は、輸液ポンプ本体102に限定されなくてよく、実施の形態に応じて、適宜、選択されてよい。
【0040】
また、第1実施形態では、輸液ポンプ本体102の側面部にクランプ装置101Aの基部1をネジなどの固定部材を用いて固定することで、クランプ装置101Aが輸液ポンプ本体102に取り付けられる。しかしながら、クランプ装置101A及び輸液ポンプ本体102を固定する箇所は、輸液ポンプ本体102の側面部及びクランプ装置101Aの基部1に限定されなくてよく、実施の形態に応じて、適宜、選択されてよい。
【0041】
[噛合解除機構の説明]
次に、図3も用いて、噛合解除機構7の構成及び作用を説明する。ここで、第1実施形態に係る噛合解除機構7は、軸体4を支持する支持機構3に作用して、支持機構3と軸体4との噛合状態を解除する。そのため、まずは、図1図3を用いて、支持機構3と軸体4との噛合状態を説明する。
【0042】
(噛合状態)
図3は、噛合状態における支持機構3の構成を例示する断面図である。図3で例示されるように、支持機構3は、直方体状の筐体30を備えており、内部には、対向する2対の内壁面で囲まれた内部空間が形成されている。ここでは、長手方向で対向する内壁面を第1壁面301,第2壁面302と称し、それとは直交する方向で対向する内壁面を第3壁面303,第4壁面304と称することとする。そして、これら壁面で囲まれた内部空間には、軸体4を支持するために、2個の雌ネジ部材(第1雌ネジ部材31、第2雌ネジ部材33)と2個の弾性部材(第1弾性部材32、第2弾性部材34)とが設けられている。
【0043】
第1雌ネジ部材31及び第2雌ネジ部材33は、軸体4の軸周りに分割されて配置されている。そして、これら第1雌ネジ部材31及び第2雌ネジ部材33は、軸部311及び軸部331により揺動自在に支持されている。具体的には、図3に示すように、第1雌ネジ部材31は、第3壁面303側で軸部311に揺動自在に支持されており、揺動によって雌ネジ面314と雄ネジ部41とが近接離間するようになっている。一方、第2雌ネジ部材33は、第4壁面304側で軸部331に揺動自在に支持されており、揺動によって雌ネジ面334と雄ネジ部41とが近接離間するようになっている。
【0044】
また、第1雌ネジ部材31及び第2雌ネジ部材33は、軸体4側を向く雌ネジ面314,334をそれぞれ有している。一方、第1雌ネジ部材31及び第2雌ネジ部材33において、雌ネジ面314,334と反対側、つまり筐体30の内壁面を向く側には、窪み部312、332がそれぞれ形成されている。そして、これら窪み部312、332には、筐体30内の第1壁面301及び第2壁面302にそれぞれ固定された第1弾性部材32及び第2弾性部材34がそれぞれ嵌め込まれている。これによって、第1雌ネジ部材31及び第2雌ネジ部材33は、揺動されつつ、軸体4の雄ネジ部41の方に押圧され、雄ネジ部41と噛み合う。第1弾性部材32及び第2弾性部材34は、それぞれ第1雌ネジ部材31及び第2雌ネジ部材33それぞれを弾性力によって雄ネジ部41の方へ押圧する部材であり、例えば、圧縮バネである。このような弾性部材32、34により、常時において、第1雌ネジ部材31及び第2雌ネジ部材33は、軸体4の雄ネジ部41に噛み合った状態が維持される。このときの第1雌ネジ部材31及び第2雌ネジ部材33のポジションが、本発明の各雌ネジ部材の第1のポジションに相当する。
【0045】
各雌ネジ部材31、33における各窪み部312、332は、筐体の壁面に向けてテーパ状に広がっており、各弾性部材32、34は、窪み部312、332の壁面に沿うように延びている。例えば、図3に示すような各雌ネジ部材31、33が雄ネジ部41と噛み合っているとき、第1雌ネジ部材31においては、窪み部312の第3壁面303側の側面に沿うように第1弾性部材32が配置される。一方、第2雌ネジ部材33においては、窪み部332の第4壁面304側の側面に沿うように第2弾性部材34が配置される。すなわち、各弾性部材32,34は、側面に沿うように配置されることで、弾性力を真っ直ぐに雄ネジ部41に対して作用させることができる。また、各雌ネジ部材31,33が揺動して雄ネジ部41から離間した場合には、反対側の側面に、沿うように配置される。
【0046】
また、第1雌ネジ部材31を揺動させると、窪み部312の側面部と第1弾性部材32とが接触して、第1雌ネジ部材31の動きを阻害する。そのため、第1弾性部材32と窪み部312とに基づいて、第1雌ネジ部材31の揺動する範囲が規定される。後述する図6の例示では、窪み部312の有する側面部313によって、第1雌ネジ部材31が雄ネジ部41から離間するポジション(本発明の第2のポジションに相当する)が確定されている。これらの点は、第2雌ネジ部材33についても同様である。したがって、第1実施形態では、第1雌ネジ部材31及び第2雌ネジ部材33の揺動する範囲を確定することができるため、第2操作部材73の誤操作に基づく第1噛合解除部材71及び第2噛合解除部材72の過度の回転を防止することが可能になる。なお、第1雌ネジ部材31を揺動させた場合に、雌ネジ部材31の側面と第4壁面304とが接触することで、第1雌ネジ部材31の動きが阻害されてもよい。この場合、第4壁面304によって、第1雌ネジ部材31の揺動する範囲が規定される。すなわち、第4壁面304によって、第1雌ネジ部材31が雄ネジ部41から離間するポジション(本発明の第2のポジションに相当する)が確定される。
【0047】
(噛合解除機構の構成と解除動作)
次に、図4も用いて、支持機構3と軸体4との噛合状態を解除する噛合解除機構7の構成を説明する。図4は、第1実施形態に係る噛合解除機構7を例示する。図4で例示されるように、噛合解除機構7は、支持機構3の両雌ネジ部材31、33と軸体4との噛合状態を解除するために、棒状に形成された2個の噛合解除部材(第1噛合解除部材71、第2噛合解除部材72)と、これら噛合解除部材71、72それぞれに力を付与するための第2操作部材73と、を備える。この第2操作部材73は、第1操作部材6よりも支持機構3側に配置されている。
【0048】
第1噛合解除部材71及び第2噛合解除部材72は、軸体4と平行に、且つ軸体4を挟むように対向して配置されている。具体的には、図3に示すように、第1雌ネジ部材31と第2雌ネジ部材33との隙間にそれぞれ配置されており、これらが一体的に、軸体4の周囲で回転するように、支持機構3の筐体30に支持されている。また、第1噛合解除部材71及び第2噛合解除部材72の固定部材2側の端部は、円形のリング部材74に固定されており、このリング部材74は、可動部材5に回転自在に固定されている。リング部材74には、軸体4が挿通されているが、軸体4の動作には干渉しないようになっている。一方、両噛合解除部材71、72の反対側の端部には、円筒状の第2操作部材73が取り付けられている。第2操作部材73には、貫通孔が形成されており、この貫通孔に軸体4が挿通されている。したがって、第2操作部材73は軸体4の動作には干渉しないようになっている。
【0049】
第2操作部材73は、第1操作部材6を把持した手で操作可能な範囲に位置するように構成されている。これによって、第1操作部材6を把持したままで第2操作部材73を操作することが可能になる。すなわち、第1操作部材6と第2操作部材73とを片手で操作可能になり、クランプ装置101Aの操作性を向上させることが可能になる。
【0050】
また、第2操作部材73は、支持機構3と軸体4との噛合状態を解除する操作を行うための構成要素であり、第2操作部材73を軸体4回りに左向きに回転させると、両噛合解除部材71、72は軸体4回りに一体的に回転する。こうして、両噛合解除部材71、72が軸体4回りに回転すると、これらは、それぞれは、第1雌ネジ部材31及び第2雌ネジ部材33それぞれを押圧して、軸体4の雄ネジ部41から離間させる。具体的には、図5及び図6に示すように、第1噛合解除部材71が第1雌ネジ部材31を押圧し、第2噛合解除部材72が第2雌ネジ部材33を押圧する。これにより、第1雌ネジ部材31は第1弾性部材32の弾性力に抗して揺動し、軸体4から離間する。一方、第2雌ネジ部材33も第2弾性部材34の弾性力に抗して揺動し、軸体4から離間する。この状態で、両雌ネジ部材31、33は、軸体4から離間するため、軸体4は、両雌ネジ部材31、33に拘束されることなく、軸方向の移動が可能となる。このときの第1雌ネジ部材31及び第2雌ネジ部材33のポジションが、本発明の各雌ネジ部材の第2のポジションに相当する。
【0051】
したがって、第1実施形態によれば、第1噛合解除部材71及び第2噛合解除部材72それぞれの回転力を第1雌ネジ部材31及び第2雌ネジ部材33それぞれにスムーズに伝達できる。そして、この回転力に連動するように、第1雌ネジ部材31及び第2雌ネジ部材33は揺動する。そのため、第1噛合解除部材71及び第2噛合解除部材72を回転させる第2操作部材73の操作性を向上させることが可能になる。
【0052】
[操作手順例]
次に、図7及び図8を用いて、クランプ装置101Aの操作手順を説明する。以下で説明する操作手順は一例に過ぎず、適宜、ステップの省略、置換、及び、追加が可能である。
【0053】
(取り付け操作)
まず、図7を用いて、クランプ装置101Aを被固定物200に取り付ける手順を説明する。図7は、被固定物200にクランプ装置101Aを取り付ける手順を例示する。
【0054】
まず、ステップS11では、利用者は、被固定物200に固定部材2が接触するようにクランプ装置101Aを配置する。そして、利用者は、第2操作部材73を左回りにひねって、支持機構3と軸体4との噛合状態を解除する。利用者が第2操作部材73を左回りにひねると、上述のとおり、第1噛合解除部材71によって第1雌ネジ部材31が押圧されて揺動し、第2噛合解除部材72によって第2雌ネジ部材33が押圧されて揺動する。その結果、第1雌ネジ部材31及び第2雌ネジ部材33は軸体4の雄ネジ部41から離間する。これによって、第1雌ネジ部材31及び第2雌ネジ部材33と雄ネジ部41との噛合は解除される。そのため、利用者は、第1操作部材6の回転操作に依らず、可動部材5を軸方向に自在に移動させることができるようになる。
【0055】
次のステップS12では、利用者は、ステップS11において第2操作部材73を左回りにひねった状態を維持したまま、可動部材5が被固定物200に接触するまで、可動部材5を固定部材2側に移動させる。ここで、利用者は、可動部材5を固定部材2側に移動させるために、第1操作部材6及び第2操作部材73のいずれを軸方向正の向きに押圧してもよい。ただし、第2操作部材73は、第1操作部材6を把持した手で操作可能な範囲に位置するように構成されている。よって、利用者は、第2操作部材73を手指でひねりつつ、第1操作部材6を手掌で押し込むことができる。そのため、利用者は、第1操作部材6を押圧する方が、小さい力で可動部材5を移動させることができる。
【0056】
なお、第1雌ネジ部材31及び第2雌ネジ部材33それぞれは、第1弾性部材32及び第2弾性部材34それぞれによって、軸体4の雄ネジ部41と噛合する方向に押圧されている。よって、第2操作部材73から利用者が手を離すと、クランプ装置101Aは噛合状態に戻ってしまう。そのため、利用者は、クランプ装置101Aの噛合解除状態を維持するために、ステップS11で第2操作部材73をひねった状態を維持する。
【0057】
これに続くステップS13では、利用者は、第2操作部材73から手を離すことで、クランプ装置101Aを噛合状態に戻す。そして、利用者は、第1操作部材6を右回りに回して、被固定物200からクランプ装置101Aが外れないように、固定部材2と可動部材5との間の距離を微調整する。すなわち、第1操作部材6を回転させることで、軸体4を被固定物200側へ移動させ、可動部材5で被固定物200を締め付ける。以上の工程で、利用者は、固定部材2と可動部材5との間の距離について、ステップS12の操作で大まかな調整を行い、ステップS13の操作で微調整を行う。これによって、当該クランプ装置101A(輸液ポンプ本体102)を被固定物200に取り付ける作業は完了する。
【0058】
(取り外し操作)
次に、図8を用いて、クランプ装置101Aを被固定物200から取り外す手順を説明する。図8は、被固定物200からクランプ装置101Aを取り外す手順を例示する。
【0059】
まず、ステップS21では、利用者は、第2操作部材73を左回りにひねって、支持機構3と軸体4との噛合状態を解除する。これによって、第1雌ネジ部材31及び第2雌ネジ部材33と雄ネジ部41との噛合に基づいて発生していた被固定物200を挟持する力は解放される。そのため、この時点で、利用者は、クランプ装置101Aを被固定物200から取り外すことが可能である。
【0060】
次のステップS22では、利用者は、第2操作部材73を左回りにひねった状態を維持したまま、第1操作部材6及び第2操作部材73の少なくともいずれかを把持しながら軸方向負の向きに引っ張ることで、可動部材5を支持機構3側に移動させる。このステップS22の操作は、専ら、次回以降にクランプ装置101Aを利用するために行われる。このステップS22の操作を行う時点で次回以降の被固定物200の大きさが不明である場合、当該大きさの不明な被固定物200に備えるため、利用者は、可動部材5を支持機構3側に最大限移動させてもよい。
【0061】
続くステップS23では、利用者は、第2操作部材73から手を離すことで、クランプ装置101Aを噛合状態に戻す。そして、利用者は、クランプ装置101Aを被固定物200から引き離す。これによって、当該クランプ装置101A(輸液ポンプ本体102)を被固定物200から取り外す作業が完了する。
【0062】
[特徴]
以上のように、第1実施形態によれば、支持機構3を貫通し、各雌ネジ部材31、33を押圧可能に構成された2個の噛合解除部材71、72と、これら噛合解除部材71、72の端部に取り付けられ、各雌ネジ部材31、33を押圧する方向に噛合解除部材71、72に力を付与する第2操作部材73と、を備える。そして、各雌ネジ部材31、33は、第2操作部材73の回転操作に基づいて、弾性部材32、34の弾性力に抗して噛合解除部材71、72に押圧されることで、軸体4の雄ネジ部41から離間する。
【0063】
よって、上記構成では、支持機構3と軸体4とが噛合した状態において、第1操作部材6とは無関係な第2操作部材73を操作することで、軸体4の雄ネジ部41と雌ネジ部材31、33との噛合を解除することができる。これにより、軸体4は雌ネジ部材31、33に拘束されることなく、軸方向に自由に移動することができる。そのため、ネジ機構によらずに、軸体4を軸方向に移動させることで、可動部材5と固定部材2とを迅速に近接させることができる。このように、上記構成によれば、クランプ装置における軸体4の雄ネジ部41と両雌ネジ部材31、33との噛合を、第2操作部材73の回転操作のみで解除できるようになる。
【0064】
また、第1実施形態では、第1雌ネジ部材31及び第2雌ネジ部材33それぞれを図6で例示される第2のポジションにするために第2操作部材73を軸周りに回転させる方向は、軸体4の軸方向を基準として左回りである。一方、被固定物200の方向に可動部材5を移動させるために第1操作部材6を軸周りに回転させる方向は、軸体4の軸方向を基準として右回りである。
【0065】
そのため、支持機構3と軸体4との噛合状態を解除するために第2操作部材73を操作する回転方向は、可動部材5を固定部材2側に移動させるために第1操作部材6を操作する回転方向とは逆向きである。そのため、クランプ装置101Aを被固定物200に取り付ける際に、第2操作部材73の操作と第1操作部材6の操作とを混同してしまうことを防止することが可能である。
【0066】
§2 第2実施形態
[クランプ装置の構成]
次に、図9及び図10を用いて、第2実施形態に係るクランプ装置101Bの構成を説明する。図9は、第2実施形態に係るクランプ装置101Bの構成を例示する分解斜視図である。また、図10は、図9で示される各部品を組み立てることで作製されるクランプ装置101Bの構成を例示する。
【0067】
図9及び図10で例示されるように、第2実施形態に係るクランプ装置101Bは、第1実施形態に係るクランプ装置101Aとほぼ同様の構成要素を有する。そのため、第1実施形態に係るクランプ装置101Aと共通する構成要素については同じ符号を付け、適宜、説明を省略する。
【0068】
第2実施形態に係るクランプ装置101Bは、第1実施形態と同様に、輸液ポンプ本体102を被固定物(クランプ対象物)200に固定するための装置であり、基部1、固定部材2、及び支持機構3を備える。固定部材2は、基部1の第1の端部側に配置されており、支持機構3は、固定部材2と対向するように、基部1の第2の端部側に配置されている。
【0069】
第2実施形態に係る支持機構3は、第1実施形態と同様の構成を有しており、基部1に沿って延びる軸体4が貫通している。軸体4の外周面には雄ネジ部41が形成されており、この雄ネジ部41には、支持機構3に内蔵される第1雌ネジ部材31と第2雌ネジ部材33とが噛合する。
【0070】
軸体4の第1の端部には、可動部材5が回転自在に取り付けられている。この可動部材5と固定部材2とで被固定物200を挟持することで、クランプ装置101Bがこの被固定物200に取り付けられる。
【0071】
また、軸体4の第2の端部には、軸体4を軸回りに回転させるための第1操作部材6が取り付けられている。各雌ネジ部材(31、33)が雄ネジ部41に噛合している状態では、軸方向に対して右回りに第1操作部材6を回転させることで、可動部材5を固定部材2側(軸方向正の向き)に移動させることができる。他方、軸方向に対して左回りに第1操作部材6を回転させると、可動部材5は、支持機構3側(軸方向の負の向き)に移動する。
【0072】
第2実施形態に係るクランプ装置101Bは、第1実施形態と同様に、支持機構3に内蔵される各雌ネジ部材(31、33)と軸体4の雄ネジ部41との噛合状態を解除するための構成として、噛合解除機構7を備えている。噛合解除機構7は、一対の噛合解除部材(71、72)と、これら噛合解除部材(71、72)それぞれに力を付与するための第2操作部材73と、を備えている。
【0073】
第1雌ネジ部材31及び第2雌ネジ部材33はそれぞれ、第1弾性部材32及び第2弾性部材34の弾性力によって、雄ネジ部41の方に押圧されている。ここで、第2操作部材73を左回りに回転させると、両噛合解除部材(71、72)は軸体4の軸回りに一体的に回転する。そして、第1噛合解除部材71は、第1弾性部材32の弾性力に対抗して、第1雌ネジ部材31を押圧する。また、第2噛合解除部材72は、第2弾性部材34の弾性力に対抗して、第2雌ネジ部材33を押圧する。これにより、第1雌ネジ部材31及び第2雌ネジ部材33は軸体4の雄ネジ部41から離間する。そのため、軸体4は、両雌ネジ部材(31、33)に拘束されることなく、軸方向に自在に移動可能になる。
【0074】
すなわち、第1実施形態と同様に、第2実施形態に係るクランプ装置101Bにおいて両雌ネジ部材(31、33)が雄ネジ部41に噛合している状態では、軸体4を軸方向に自在に移動することはできない。この状態では、第1操作部材6を回転操作することで、軸体4を軸方向に移動させることができる。一方で、第2操作部材73を左回りに回転させることで、両雌ネジ部材(31、33)を雄ネジ部41から離間させた状態では、第1操作部材6の回転操作によらず、軸体4を軸方向に自在に移動させることができる。
【0075】
そのため、クランプ装置101Bを被固定物200に取り付ける場合、利用者は、上記第1実施形態の取り付け操作で説明したように、第2操作部材73を操作して、両雌ネジ部材(31、33)と雄ネジ部41との噛合を解除する。次に、利用者は、第1操作部材6の回転操作によらずに軸体4を軸方向に移動させて、固定部材2と可動部材5との間の距離を被固定物200の大きさに合わせて大まかに調節する。そして、利用者は、第2操作部材73の操作を止めて、両雌ネジ部材(31、33)を雄ネジ部41に噛合させる。最後に、利用者は、第1操作部材6を操作することで軸体4を軸方向に移動させて、固定部材2と可動部材5との間の距離を被固定物200の大きさに合わせて微調整する。これにより、クランプ装置101Bを被固定物200に取り付けることができる。
【0076】
ここで、可動部材5と固定部材2とで被固定物200を挟持すると、この挟持する力の反作用の力が被固定物200から軸体4にかかる。この反作用の力は、雄ネジ部41及び各雌ネジ部材(31、33)のねじ山を介して、両弾性部材(32、34)の弾性力に対抗する力となる。そのため、各弾性部材(32、34)の弾性力の大きさによっては、この反作用の力が影響して、両雌ネジ部材(31、33)が雄ネジ部41から離間してしまう可能性がある。これにより、クランプ装置101Aでは、可動部材5と固定部材2とで被固定物200を挟持した状態、換言すると、クランプ装置101Aを被固定物200に取り付けた状態を維持できない場合がある。
【0077】
そこで、第2実施形態に係るクランプ装置101Bは、このような問題を解消するために、第1実施形態とは異なり、円盤状のロックプレート8を備えている。図9で例示されるように、ロックプレート8は、第1カバー部材35と第2カバー部材36との間で、軸体4の軸回りに回転可能に配置されている。
【0078】
このロックプレート8は、両雌ネジ部材(31、33)が雄ネジ部41に噛合している状態で、換言すると、各雌ネジ部材(31、33)が第1のポジションをとっている状態で、各雌ネジ部材(31、33)を固定する。これにより、両雌ネジ部材(31、33)が雄ネジ部41から離間してしまうことを抑制し、クランプ装置101Bが被固定物200から外れてしまうことを防止することができる。
【0079】
なお、ロックプレート8は、各噛合解除部材(71、72)が軸体4の軸回りに回転するのに応じて各雌ネジ部材(31、33)の固定を解除することができる。このロックプレート8は、本発明の固定具に相当する。ロックプレート8については後述で詳細に説明する。
【0080】
また、図9で例示されるように、第2実施形態では、第1実施形態とは異なり、各雌ネジ部材(31、33)の第2操作部材73側の面に、ロックプレート8の方向に延びる円柱状の突起部(315、335)が設けられている。ロックプレート8は、これらの突起部(315、335)を利用して、各雌ネジ部材(31、33)を第1のポジションで固定する。
【0081】
更に、図9で例示されるように、第2実施形態に係るクランプ装置101Bでは、第1実施形態とは異なり、第1操作部材6と第2操作部材73との間に摩擦パッド9が配置されている。摩擦パッド9は、円盤状の形状を有しており、軸体4を貫通するための開口を有している。
【0082】
[ロックプレート]
次に、図11A図11Dを用いて、各雌ネジ部材(31、33)を図3で例示される第1のポジションで固定するためのロックプレート8について説明する。図11Aは、第1面84側から見たロックプレート8を例示する。図11Bは、第1面84側から見たロックプレート8を例示する斜視図である。図11Cは、第2面85側から見たロックプレート8を例示する。図11Dは、第2面85側から見たロックプレート8を例示する斜視図である。
【0083】
ロックプレート8の第1面84は、両雌ネジ部材(31、33)の方向を向いている(図9のx軸の正の向き)。また、ロックプレート8の第2面85は、第2操作部材73の方向を向いている(図9のx軸の負の向き)。図11A図11Dで例示されるように、ロックプレート8の中央には、第1面84から第2面85に貫通するU字状の溝83が設けられている。
【0084】
この溝83の幅は、ロックプレート8の中央付近の領域で軸体4の幅に応じた大きさになっており、それ以外の領域で各噛合解除部材(71、72)の幅に応じた大きさになっている。そして、図9で例示されるように、軸体4と各噛合解除部材(71、72)とがこの溝83を通ることで、ロックプレート8が、軸体4及び各噛合解除部材(71、72)を挟んだ状態になっている。これにより、ロックプレート8は、第1面84及び第2面85に対して水平方向に軸体4及び各噛合解除部材(71、72)から外れないようになっている。
【0085】
また、図11A及び図11Bで例示されるように、ロックプレート8の第1面84には、雌ネジ部材31の突起部315が嵌る略矩形状の第1凹部81が設けられ、雌ネジ部材33の突起部335が嵌る略矩形状の第2凹部82が設けられている。第1凹部81及び第2凹部82の概ねの領域はそれぞれ、各突起部(315、335)が自在に移動可能なように、各突起部(315、335)の幅よりも広くなっている。一方、図11Aにおいて、第1凹部81の上部には、突起部315の幅に合わせて、やや幅の狭くなった係止部811が設けられている。同様に、第2凹部82の下部には、突起部335の幅に合わせて、やや幅の狭くなった係止部821が設けられている。
【0086】
ロックプレート8を軸方向に対して右回り(図11Aでは左回り)に回転させると、突起部315は第1凹部81の係止部811に嵌まり込み、突起部335は第2凹部82の係止部821に嵌まり込む。各係止部(811、812)は、各突起部(315、335)の幅に合わせて設けられているため、突起部315は係止部811に係止され、突起部335は係止部821に係止される。第2実施形態では、このようなロックプレート8と各雌ネジ部材(31、33)の各突起部(315、335)という簡易な構造を利用することで、各雌ネジ部材(31、33)を第1のポジションで固定することが可能になる。
【0087】
[動作例]
最後に、第2実施形態に係るクランプ装置101Bの動作例を説明する。第2実施形態に係るクランプ装置101Bは、第1実施形態に係るクランプ装置101Aと同じ操作手順で、被固定物200への取り付け及び被固定物200からの取り外しを行うことができる。すなわち、図7で例示される手順により、クランプ装置101Bを被固定物200に取り付けることができる。また、図8で例示される手順により、クランプ装置101Bを被固定物200から取り外すことができる。
【0088】
ただし、クランプ装置101Bは、第1実施形態とは異なり、各雌ネジ部材(31、33)を固定するためのロックプレート8を備えている。そのため、図7及び図8で例示される過程において、クランプ装置101Aの場合とは支持機構3内部の状態が異なる場面が生じる。以下では、図7で例示される取り付け操作を用いて、この点について説明する。
【0089】
(第1噛合状態)
まず、図12A図12Cを用いて、図7で例示される初期状態における支持機構3内部の状態を説明する。図7で例示される初期状態は、第1操作部材6及び第2操作部材73共に操作されていない状態である。本動作例では、この状態では、両雌ネジ部材(31、33)は雄ネジ部41に噛合しているが、ロックプレート8は各雌ネジ部材(31,33)を固定していないとする。
【0090】
ここで、両雌ネジ部材(31、33)が雄ネジ部41に噛合しているが、ロックプレート8が各雌ネジ部材(31、33)を固定していない状態を、説明の便宜のため、第1噛合状態と称する。第1噛合状態はデフォルト状態と称されてもよい。図12Aは、第1噛合状態におけるロックプレート8及び各雌ネジ部材(31、33)の状態を例示する。図12Bは、第1噛合状態における核雌ネジ部材の状態を例示する。図12Cは、第1噛合状態におけるロックプレート8と各雌ネジ部材(31、33)の突起部(315、335)との位置関係を例示する。
【0091】
なお、説明の便宜のため、図12A図12Cの上下方向を「上下」、図12A図12Cの左右方向を「左右」と称する。図12A図12Cの紙面手前から奥側の方向は、図9及び図10のx軸の正の方向に対応する。また、図12A図12Cでは、両雌ネジ部材(31、33)が対抗する方向をy軸で表現し、両雌ネジ部材(31、33)が対抗する方向に垂直な方向をz軸で表現する。後述する図13A図13C及び図14A図14Cも同様である。
【0092】
第2実施形態では、第1雌ネジ部材31及び第2雌ネジ部材33の互いに対向するそれぞれの面は、z軸に対して右向きにS度傾斜している。そのため、軸体4は、両噛合解除部材(71、72)を結ぶ線がz軸に対して右向きにS度傾斜した状態で、両雌ネジ部材(31、33)に拘束されている。
【0093】
ここで、図12A図12Cで例示されるように、ロックプレート8は、各歯合解除部材(71、72)を溝83により挟んだ状態になっている。そのため、両噛合解除部材(71、72)を結ぶ線と溝83の軸Dとが一致した状態で、両噛合解除部材(71、72)の軸回りの回転に応じて、ロックプレート8は回転する。つまり、第2実施形態によれば、第2操作部材73の操作に応じて、ロックプレート8を操作することが可能になる。説明の便宜のため、溝83の軸Dとz軸とのなす角をロックプレート8の傾きと称することにする。すなわち、図12A図12Cの状態では、ロックプレート8は右向きにS度傾いていると称する。
【0094】
図12A及び図12Bで例示されるように、この状態では、各雌ネジ部材(31、33)は、各弾性部材(32、34)によって、雄ネジ部41の方向に押圧され、雄ネジ部41と噛合している。しかしながら、図12Cで例示されるように、この状態では、各突起部(315、335)は、各係止部(811、821)に係止されていない。そのため、各弾性部材(32、34)に対抗する力が発生した場合に、各雌ネジ部材(31、33)は、各凹部(81、82)の幅の分だけ揺動可能になっている。
【0095】
(噛合解除状態)
次に、図13A図13Cを用いて、図7で例示されるステップS11の操作を利用者が行い、上記初期状態のクランプ装置101Bにおいて噛合を解除した際の支持機構3内部の状態を説明する。図13Aは、噛合解除状態におけるロックプレート8及び各雌ネジ部材(31、33)の状態を例示する。図13Bは、噛合解除状態における各雌ネジ部材(31、33)の状態を例示する。図13Cは、噛合解除状態におけるロックプレート8と各雌ネジ部材(31、33)の突起部(315、335)との位置関係を例示する。
【0096】
図7で例示されるステップS11のように、利用者が第2操作部材73を軸方向に対して左回りに回転させると、ロックプレート8は、当該回転操作に応じて、左回りに回転する。図13A及び図13Bでは、ロックプレート8が左向きにT度傾きまで、第2操作部材73を左回りにひねった状態が例示されている。
【0097】
このようにロックプレート8を左回りに回転させた場合、図12C及び図13Cで例示されるように、各係止部(811、821)は、各突起部(315、335)に離れる方向に移動する。そのため、この状態では、各雌ネジ部材(31、33)は、ロックプレート8によっては固定されず、各凹部(81、82)の幅の分だけ揺動することができる。
【0098】
したがって、図13A及び図13Bで例示されるように、この状態では、各噛合解除部材(71、72)の作用によって、第1雌ネジ部材31は軸部311を基点として第1壁面301の方向に揺動し、第2雌ネジ部材33は軸部331を基点として第2壁面302の方向に揺動する。そして、各雌ネジ部材(31、33)が雄ネジ部41から離間することで、支持機構3と軸体4との噛合が解除された状態(噛合解除状態)になる。図7で例示されるステップS12の操作中も同様である。
【0099】
(第2噛合状態)
最後に、図14A図14Cを用いて、ステップS13の操作が完了した後の支持機構3内部の状態を説明する。ステップS13において利用者が第2操作部材73から手を離すと、各弾性部材(32、34)の作用により、クランプ装置101Bは上記第1噛合状態に戻る。ここで、第2実施形態では、第1操作部材6と第2操作部材73との間の距離が若干変更可能に構成されている。
【0100】
可動部材5と固定部材2とで被固定物200を挟持していない場面では、利用者が第1操作部材6を操作する力は可動部材5の方向に抜けていく。そのため、第1操作部材6と第2操作部材73とを挟み込むように発生する力は弱い。したがって、この場面では、第1操作部材6と第2操作部材73との間の距離は、これらの間に配置された摩擦パッド9が作用しない程度に拡がった状態が保たれる。この状態では、第1操作部材6と第2操作部材73とはそれぞれ独立に操作することができる。
【0101】
一方、本ステップS13における取り付け強度の調整手順のように、可動部材5と固定部材2とが被固定物200に接触した場面でクランプ装置101Bの増し締めを行うと、被固定物200からの反作用の力が第1操作部材6に作用する。そのため、この場面では、第1操作部材6と第2操作部材73とを挟み込むように発生する力が強くなる。そして、この力の影響によって、第1操作部材6と第2操作部材73との間の距離は、摩擦パッド9が作用する程度に狭められる。
【0102】
摩擦パッド9は、本発明の回転伝達部材に相当し、第1操作部材6の回転する力を第2操作部材73に伝達し、第2操作部材73の回転する力を第1操作部材6に伝達する。摩擦パッド9の素材には、例えば、発砲ウレタン、ゴム類、皮材等が用いられる。第1操作部材6の回転する力を第2操作部材73に伝達できる程度の大きさ、摩擦係数を有する素材等で構成される。
【0103】
そのため、第1操作部材6と第2操作部材73との間の距離が摩擦パッド9の作用する程度に狭められた状態では、第1操作部材6と第2操作部材73とは一体に動作する。よって、ステップS13において利用者がクランプ装置101Bの増し締めを行うと、摩擦パッド9の作用によって、第1操作部材6の右回りの回転する力が第2操作部材73に伝達される。そうすると、ロックプレート8は、図12A図12Cで例示される状態から更に右回りに回転する。
【0104】
図12A図12Cで例示されるように、ロックプレート8を右回りに回転させると、各係止部(811、821)は、各突起部(315、335)に近付く方向に移動する。ここで、各係止部(811、821)は、各突起部(315、335)の大きさに合わせて形成され、各突起部(315、335)の位置に合わせて配置されている。そのため、ロックプレート8の傾きが所定の角度(図14A及び図14Bでは角度U)になるまで、ロックプレート8を右回りに回転させると、各突起部(315、335)は、図14Cに例示されるように、各係止部(811、821)に嵌まり込む。これにより、各突起部(315、335)は、各係止部(811、821)に係止された状態になる。
【0105】
各突起部(315、335)が各係止部(811、821)に係止されると、各係止部(811、821)は各突起部(315、335)の大きさに合わせて形成されているため、各雌ネジ部材(31、33)は、y軸方向に揺動しないように固定される。すなわち、この状態では、ロックプレート8は、各雌ネジ部材(31、33)が雄ネジ部41に噛合している状態、換言すると、各雌ネジ部材(31、33)が第1のポジションをとっている状態で、各雌ネジ部材(31、33)を揺動しないように固定する。これによって、第2実施形態では、固定部材2と可動部材5とで被固定物200を挟持する力が緩んでしまったり、クランプ装置101Bが被固定物200から独りでに外れてしまったりすることを防止することができる。
【0106】
なお、このように、各雌ネジ部材(31、33)が雄ネジ部41に噛合しつつ、ロックプレート8が各雌ネジ部材(31、33)を第1のポジションで固定している状態を、説明の便宜のため、第2噛合状態と称する。図14Aは、第2噛合状態におけるロックプレート及び各雌ネジ部材(31、33)の状態を例示する。図14Bは、第2噛合状態における各雌ネジ部材(31、33)の状態を例示する。図14Cは、第2噛合状態におけるロックプレート8と各雌ネジ部材(31、33)の突起部(315、335)との位置関係を例示する。
【0107】
このように、第2実施形態では、利用者が、図7のステップS13の操作として第1操作部材6を操作すると、摩擦パッド9の作用によって、第2操作部材73が間接的に操作される。これにより、被固定物200から外れないようにクランプ装置101Bを増し締めしつつ、ロックプレート8で各雌ネジ部材(31、33)を固定することができる。
【0108】
同様に、クランプ装置101Bが被固定物200に取り付けられた状態では、第1操作部材6と第2操作部材73との間の距離は摩擦パッド9が作用する程度に狭められている。そのため、利用者は、第1操作部材6を左回りに回転させることで、摩擦パッド9を介して第2操作部材73を左回りに間接的に回転させて、ロックプレート8による各雌ネジ部材(31、33)の固定を解除してもよい。
【0109】
したがって、第2実施形態では、第1操作部材6と第2操作部材73との間に摩擦パッド9が配置されていることで、取り付け強度の調整段階において、利用者は、第2操作部材73を直接操作することなく、ロックプレート8を操作することが可能になる。つまり、第2実施形態では、摩擦パッド9の作用により、利用者の操作を簡略化し、クランプ装置101Bの操作性を向上させることができる。
【0110】
なお、摩擦パッド9の作用によらず、利用者は、第2操作部材73を右回りに直接回転させて、ロックプレート8で各雌ネジ部材(31、33)を固定してもよい。また、利用者は、図8のステップS21のように、第2操作部材73を左回りに直接回転させて、ロックプレート8による各雌ネジ部材(31、33)の固定を解除してもよい。
【0111】
ここで、第2実施形態では、利用者は、図12A及び図14Aで例示されるように、ロックプレート8を右回りに回転させることで、クランプ装置101Bの状態を第1噛合状態から第2噛合状態にすることができる。この第1噛合状態におけるロックプレート8の傾きである角度Sを第1角度と称し、第2噛合状態におけるロックプレート8の傾きである角度Uを第2角度と称してもよい。
【0112】
そして、第2角度は、各雌ネジ部材(31、33)を第2のポジションにするために第2操作部材73を軸回りに回転させる方向とは反対の向き(第2実施形態では右向き)を基準として、第1角度よりも大きな角度に設定されてよい。すなわち、図12A及び図14Aの例では、角度Uは角度Sよりも右方向の成分を大きければよい。
【0113】
そのため、図12A及び図14Aの例において、角度U及び角度Sが共に左方向の成分を持つように仮に設定された場合には、角度Uは、角度Sの絶対値よりも小さな値の絶対値になるように設定されればよい。このように、第1のポジションと第2のポジションとにおけるロックプレート8の傾きを設定することで、これらのポジションにかかる第2操作部材73の操作方向を互いに逆向きにすることができる。
【0114】
つまり、各雌ネジ部材(31、33)を第1のポジションで固定する第2操作部材73の操作方向は、各雌ネジ部材(31、33)を第2のポジションにするための第2操作部材73の操作方向と逆向きになる。これにより、第2実施形態では、各雌ネジ部材(31、33)の各ポジションに対する第2操作部材73の誤操作を防止することが可能になり、クランプ装置101Bの操作性を向上させることができる。
【0115】
なお、図8のステップS21及びステップS22の手順では、クランプ装置101Bは、上記噛合解除状態になる。また、図8のステップS23の手順では、クランプ装置101Bは、上記第1噛合状態になる。ただし、利用者は、摩擦パッド9が作用するか否かに関わらず、図7及び図8の各ステップにおいて、第2操作部材73を右回りに直接回転させることで、クランプ装置101Bの状態を第1噛合状態から第2噛合状態にしてもよい。同様に、利用者は、第2操作部材73を左回りに直接回転させることで、クランプ装置101Bの状態を第2噛合状態から第1噛合状態にしてもよい。
【0116】
§3 変形例
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限り、種々の変形が可能である。
【0117】
例えば、噛合解除部材71,72の数は、実施の形態に応じて、適宜、選択されてよい。上記各実施形態では、図3図4図9及び図10で例示されるように、2つの噛合解除部材(第1噛合解除部材71及び第2噛合解除部材72)が、軸体4を挟むように設けられ、軸体4を中心に回転自在に支持されている。しかしながら、噛合解除部材の数は、2個に限定されなくてもよく、3個以上でもよい。この場合には、雌ネジ部材の数は、噛合解除部材の数に合わせて設けられる。
【0118】
また、第1雌ネジ部材31及び第2雌ネジ部材33は、第1噛合解除部材71及び第2噛合解除部材72それぞれに押圧されることで揺動しているが、第1雌ネジ部材31及び第2雌ネジ部材33が動く方向は、特に限定されなくてよい。例えば、第1噛合解除部材71及び第2噛合解除部材72それぞれに、第1弾性部材32及び第2弾性部材34それぞれの弾性力の方向に水平な方向に押圧されることで、第1雌ネジ部材31及び第2雌ネジ部材33それぞれは水平方向に動いてもよい。
【0119】
また、各雌ネジ部材31、33の形状及び大きさ、各噛合解除部材71の形状及び大きさ、その他、説明した部材などについては、上述した動作を行える限り、特には限定されない。
【0120】
また、上記各実施形態では、クランプ装置を輸液ポンプの固定に用いたが、本発明のクランプ装置は、これに限定されるものではなく、種々の固定物を固定するのに使用することができる。
【0121】
また、上記第2実施形態では、ロックプレート8の各凹部(81、82)と各突起部(315、335)とによって、ロックプレート8は、各雌ネジ部材(31、33)を第1のポジションで固定する。しかしながら、各雌ネジ部材(31、33)を第1のポジションで固定する方法は、このような方法に限定されなくてもよく、適宜、実施の形態に応じて設定されてもよい。また、ロックプレート8の各凹部(81、82)及び各突起部(315、335)の形状は、実施の形態に応じて適宜決定されてよく、上記第2実施形態とは異なっていてもよい。例えば、ロックプレート8の各凹部(81、82)は、第1面84から第2面85に貫通する開口であってもよい。
【0122】
また、上記第2実施形態では、第1噛合状態、第2噛合状態、及び噛合解除状態において、ロックプレート8は、それぞれS度、U度、及びT度傾いている。これらの角度は、実施の形態に応じて、適宜、決定されてよい。例えば、第1噛合状態におけるS度は0度であってもよい。
【符号の説明】
【0123】
1…基部、11…第1の端部、12…第2の端部、13…側面板、
2…固定部材、21…側面板、
3…支持機構、
30…筐体、301…第1壁面、302…第2壁面、
303…第3壁面、304…第4壁面、
31…第1雌ネジ部材、311…軸部、312…窪み部、313…側面部、
314…雌ネジ面、315…突起部、
32…第1弾性部材、
33…第2雌ネジ部材、331…軸部、332…窪み部、333…側面部、
334…雌ネジ面、335…突起部、
34…第2弾性部材、
35…第1カバー部材、36…第2カバー部材、
4…軸体、41…雄ネジ部、43…第1の端部、44…第2の端部、
5…可動部材、51…回転防止片、52…側面板、
6…第1操作部材、
7…噛合解除機構、71…第1噛合解除部材、72…第2噛合解除部材、
73…第2操作部材、74…リング部材、
8…ロックプレート(固定具)、
81…第1凹部、811…係止部、
82…第2凹部、821…係止部、
83…溝部、84…第1面、85…第2面、
9…摩擦パッド、
100…輸液ポンプ装置、101A…クランプ装置、101B…クランプ装置、
102…輸液ポンプ本体、
200…被固定物(クランプ対象物)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図14C