【実施例1】
【0027】
図1乃至
図6に於いて、車両用の可変伝動機10は、入力車1と出力車2間に施すベルト3で成る変速伝動装置10Aと、該同一平面側に入力操作器9と出力操作器8を
図4で示す調節装置90で調節する変速制御装置10Bとで構成される。本例では入力操作器9は入力第一及び入力第二加圧装置11,51でなる個別加圧装置50を更に出力操作器8は出力第一及び出力第二加圧装置を共用して構成した共用加圧装置21でなる複合加圧装置40を有し夫々
図4に示す駆動源60で付勢される。入力第一、入力第二及び共用加圧装置11,51及び21は夫々入力第一、入力第二及び共用圧縮装置14,54及び24を有し入力弾性装置31と、入力当接装置35と、出力複合装置20とを夫々加圧操作する。入力操作器9は入力車1に入力第一及び入力第二加圧装置11及び51とで成り調節装置90の個別指令に応じ又出力操作器8は出力車2に共用加圧装置21が単一指令に応じて作動し夫々弾性力と加圧力を識別供給する能力を有する。尚入出力側に略同等機能部品が存在する為本明細書では各部品名称に「入力」、「出力」又は「第一」、「第二」の区別を要す時はその区別を付すが、前後の記述や図面等で解る時は省くことがある。
【0028】
変速伝動装置10Aは夫々可動車1a,2aと固定車1b,2bを相対向しキーを経て前者が後者に対し軸芯方向に摺動可能に配された可変径プーリ1,2を含み、夫々入力軸1cと出力軸2cに互に逆向きに配される。各プーリ1,2は夫々一対の軸受7,6で軸支されて回転し、更に本体10と各可動車1a,2aとの間を夫々一対の軸受5,4で回転力を分離しながら入力第一、入力第二及び共用加圧装置11,51及び21で夫々該プーリ可動車を加圧操作している。本体10は、車両等の他伝動機器等を収める第一本体10aと、可変伝動機10を収める第二本体10bとが分離可能に組付される。
【0029】
Vベルト3は、入力車が出力車を引張伝動する引張型と押込伝動する押込型との二種類のベルトが周知で本発明にはこの両者が適用可能である。その構造説明は省略し例えば前者は米国特許第4,493,681号等で又後者は同第3,949,621号等の例示を記述するに留める。尚本実施例思想は特に引張ベルトでもカム機構等の不安定摩擦力の補償対策を付せずに安定伝動を果すので、金属芯体3aを耐熱樹脂、セラミック、金属等の複合材3bを囲む構造の引張型ベルト3で図示する。本発明の変速伝動装置10Aは次に述べる変速制御装置10Bの操作により
図7に示す通り広い可変速可変トルク帯域の全帯域で定馬力の動力伝動を高効率で果すものである。
【0030】
各操作器9,8は、対応する各伝達車1,2の可動車1a,2aに加圧力又は弾性力を制御指令に応じて個別に識別供給可能に構成されている。即ち第一加圧装置による加圧力供給は対応伝達車を基準車機能に又第二加圧装置による弾性力供給は対応伝達車を追従車機能に夫々働かせる。ここで、基準車・追従車機能とは、摩擦伝動時の安定要因の設定を基準車側で定め又不安定要因を追従車側で自己収束し整定する機能を云う。即ち基準車機能は摩擦伝動時のベルトの基準位置を定めて出力回転数や速比を決定する機能で、ベルト接触半径を定めるプーリV溝の位置決め制御を意味する。変速操作時はプーリからベルトに加圧力付与して可変径位置決め制御するが速比が決まると実質的に加圧力印加も停止し可動車によるV溝位置は固定されるので通常の定速比プーリと同一条件のV溝を形成する。追従車機能はベルト・プーリの接触面摩粍や内外の外乱振動等の誤差要因が生じても上述位置決め制御とは全く無関係に両者間に常時所定摩擦圧の供給を維持しその誤差要因を正規伝動状態に瞬時に復帰させる自己整定乃至自動調芯機能を弾性力の働きで果し各軸の入力又は出力トルクを決定する機能である。
【0031】
入力操作器9は、本例では入力車1への加圧力供給用の入力第一加圧装置11と弾性力供給用の入力第二加圧装置51とを夫々個別に持つ個別加圧装置50で構成される。更に入力第一及び入力第二加圧装置は入力第一及び入力第二圧縮装置14,54と入力第一及び入力第二駆動源60a,60bとで夫々構成される。入力第一加圧装置11は入力切換器の当接装置35と入力第一圧縮装置14との直列構造で、又入力第二加圧装置51は弾性装置31と入力第二圧縮装置54との直列構造で夫々構成され両者は共用の摺動体36と軸受5を経てプーリ1の可動車1aを互に回転軸芯方向に平行に加圧する。当接装置35と弾性装置31は入力車1の軸1cの外周に同軸で同芯円上に並列で軸芯方向に平行に配され、又入力第一及び入力第二圧縮装置14,54は同軸上に縦続配列される。従って各加圧装置の加圧形態は、車1aに対し入力第一圧縮装置14が第二本体10bの内壁から又入力第二圧縮装置54が外壁から
図2の圧力伝達装置70を経て弾性装置31に圧力伝達する。
【0032】
第一及び第二加圧装置11,51の第一及び第二圧縮装置14,54は共に夫々第一及び第二摺動装置13,53とこれを付勢する第一及び第二付勢装置12,52とで成る。第一及び第二摺動装置13,53は、二つの摺動具16,17と56,57並びに両者間を摺動させる第一及び第二押圧装置15,55を有し本例ではボールネジである。第一摺動装置13は管状形成し入力車1の周囲に又第二摺動装置53は棒状形成され該軸1の延長上に離隔して位置する。第一及び第二付勢装置12,52は本例では共にウォーム18,58とホイール19,59から成るウォーム伝達機で成り、夫々軸18a,58aに第一及び第二駆動源60a,60bからの速比、入力トルク指令が入力され第一及び第二摺動装置13,53が一旦位置決めされると各制御指令の供給を停止しても該位置を保つセルフロック機能を果す。第一及び第二加圧装置11,51はテーパローラ5とスラスト軸受5bとの間で非回転状態で車1を加圧する。歯車19のキー19aを経た雄ネジの摺動具16と歯車59に直結の雌ネジの摺動具57とは回転に伴って上下に摺動する事はなく、第一加圧装置11では摺動具17が又第二加圧装置51では摺動具56が各摺動装置13、53のもつ傾斜に従い上下動する。
【0033】
入力第一加圧装置11の当接装置35は切換器として働き、間隙38を経て配される二つの摺動材36,37で成り、入力第一圧縮装置14の作動指令の選択に応じ両者を互に当接する当接動作時と、両者間を離隔させる当接解除時とを調節装置90の制御指令で加圧力の供給と停止を制御される。当接動作時は入力第一圧縮装置14が摺動材36,37と軸受5を介し、入力車1に直接加圧力を与えるので該車1が可変径位置決め制御の基準車機能を果す事になる。当接解除時は間隙38を生じ入力第一圧縮装置14は入力車1には作用しないので追従車機能のトルク制御が選択できる。本例では摺動材37は入力第一圧縮装置14の摺動具17と共用し摺動材36は弾性装置31の摺動体34と共用する。77は自転阻止の回止具である。
【0034】
入力第二加圧装置51の弾性装置31は中心貫通孔を施され、四枚の皿バネの直列構造で示す弾性体32と、これを両端で加圧する二つの摺動体33,34とで成り、入力第一摺動装置13の第一摺動具16、17と当接装置35の外周に該貫通孔が同芯配置される。弾性体は弾性振動の伝達を一端で可能で他端で不能に構成し且つ両端が摺動可能な為浮遊状態に支持される。
図2の通り弾性装置31は本例では入力第二圧縮装置54との間に圧力伝達装置70が配されて弾性体32を直列圧縮し同時に生じた弾性力を摺動体34と軸受5を介し供給するので、この時該車1が可変加圧制御の追従車機能を果す事になる。従って入力第一加圧装置11の加圧力と入力第二加圧装置51の弾性力とは共に共通の摺動体34と軸受5を経て互に車1を並列印加する。
【0035】
図2の圧力伝達装置70は、入力第二圧縮装置54の摺動具56の端部56aに連結しこれを中心受加圧点から左右対称に延長した第一伝達手段71と摺動体33を兼ねる第二伝達手段74とでなる横伝達手段78と、その両端に連結し摺動具56の軸芯方向に平行に二本の加圧軸72でなる縦伝達手段73と、更に弾性装置31の押圧用加圧軸72,72の摺動方向を円滑案内する軸受と本体貫通孔でなる支持装置79と成る。各手段71,72,73は四角形枠を形成し高加圧でも四角形を保守させる為各軸72,72をリニヤボール軸受75,76を介して本体10dで支持し摺動具56と同方向に加圧する。尚本例では摺動体33と加圧環74を共用し弾性装置31を直列加圧する。
【0036】
図3の出力操作器8は、本例では出力車2への出力第一加圧装置の加圧力供給と出力第二加圧装置の弾性力供給とを単一構成にした共用加圧装置21が共用駆動源60cへの制御指令に応じて両者を夫々識別供給する。出力操作器9と異なり、出力弾性装置41と出力切換器である出力当接装置45を並列組付した複合装置20を、同じく出力第一及び出力第二圧縮装置を単一構成にした共用圧縮装置24で直列組付した複合加圧装置40である共用加圧装置21を持つ。共用圧縮装置24は2つ摺動具26,27とボールネジ26aの共用押圧装置25とでなる共用摺動装置23、更にウォーム28とホイール29で成りセルフロック機能を持つウォーム伝達機の共用付勢装置22で成る。共用及び入力第二圧縮装置24及び54の相違点は、入力第二摺動装置53は右ネジ加圧されるが共用摺動装置23は左ネジ加圧された事と、各摺動装置の傾斜ピッチに従い摺動具56は非回転で上下動するが、摺動具26は回転しかつ上下動する為軸受49が配される事と、更に入力第二圧縮装置54の全体が振動不能に本体10bに設置されるが、共用圧縮装置24では共用摺動装置23のみは伝達車2と弾性装置41との間を弾性振動が伝達可能な連動状態又は浮遊状態に支持する為摺動具26は共用付勢装置22のホイール29との間に軸芯方向に摺動可能にスプライン結合26cを延長配置して回転伝動を可能にした事等がある。
【0037】
軸受49を経て加圧される弾性装置41は環状鍋に形成した摺動体43と、摺動体44との間で収納加圧する複数の皿バネでなる弾性体42を持つ。本例では
図2の弾性体32は伝達車側に又
図3の弾性体42は本体側に夫々配されるが、共に弾性体32,42の一端は弾性振動可能に他端は振動不能に支持させて摩擦伝動面での振動抑制を効果的に実施する。当接装置45は、二つの摺動材46,47で成り、本例では摺動材47が摺動体43の鍋状外縁で又摺動材46は摺動体44で夫々共用している。
図3は中心線の左半分で弾性装置41の軽負荷時には間隙48が介在し当接装置45が当接解除状態で弾性力を又右半分で弾性装置41が所定値を越え当接装置45が当接動作状態で加圧力を夫々伝達車2に識別供給する状態を示す。尚本例の当接動作状態では弾性体42の弾性力Psは加圧力に加わり常時供給する。
【0038】
尚共用加圧装置21でも入力第二加圧装置51と同一構造の縦伝達手段83と横伝達手段88と支持装置89とで成り左右対称に四角形枠の圧力伝達装置80を持つ為類似参照符号を付し説明を省く。相違点は本例では全加圧機構を固定車2bの裏側に配し弾性振動も相互に伝える事である。又
図5は共用加圧装置21の本体10dと複合装置20の一端間に配した第一検出器の圧力検出器94の断面図である。環状の弾性体42と摺動材47とが液封した主ダイヤフラム104を同時に圧縮可能に構成した環状検出端101と、この検出端101の一箇所から放射状に延長して副ダイヤフラム106を変位する導出端102と、この端部に配し半導体歪ゲージをもった圧力−電気信号変換部103と、更に油媒体105とで成る。単に印加弾性力又は加圧力だけで無く定速比運転時での出力摩擦伝達面での摩擦圧の値を適正に感知し且つ摩擦圧によるトルクの負帰還制御が可能となる。
【0039】
図4の通り各操作器8,9は、入力第一、入力第二及び共用加圧装置11,51及び21に夫々個別に入力第一、入力第二及び共用駆動源60a,60b及び60cを隣接して施し電子調節装置90から制御指令が個別に供給される。各駆動源60には夫々にギヤヘッド64、直流サーボの可逆モータ65,ブレーキ66,エンコーダ67を持ち各対応する参照部品番号に符号a,b,cを付して示す。両操作器には互に同期したサーボ制御を要するが、各圧縮装置14,54及び24の移動操作量は夫々異る為対応の各軸18a,58a及び28aへの制御指令は調節装置90から個別に設けた速比の異なる歯車伝達機61a,61b,61cをもち必要に応じ歯車68,69を付設する。
【0040】
調節装置90は、CPU又は演算処理装置95及び各種RAM,ROMでなる記憶装置96,97を中心としてA/D乃至D/A等の変換増幅器98、伝送バスをもつ入出力装置91を経て入力及び出力情報を導出入する。入力情報はエンジン等のスタータスイッチ等の変速機10の起動指令と、変速指令又は除加圧指令などの制御指令と、
図1で第二検出器として伝達車1,2の回転数検出器92,93の回転数と、圧力検出器94からフィルタ99を経たベルトプーリ摩擦接触圧と、更に各エンコーダ操作量Ra,Rb,Rc等である。出力情報は変換増幅器98a,98b,98cから各モータ65a,65b,65cへの操作指令Ea,Eb,Ecとブレーキ指令Ba,Bb,Bcである。
【0041】
記憶装置96は演算処理装置95がプログラマブル制御を実行する基礎情報を持つ。記憶装置97は三つの処理情報で成りメモリ97aはプーリ1が追従車機能でプーリ2が基準車機能で作動する時の制御情報を、メモリ97bはプーリ1が基準車機能でプーリ2が追従車機能で作動する時の制御情報を、メモリ97cは両プーリ1,2の機能切換時の同期操作情報や各操作器8,9を非同期で個別の単独操作した時の定トルク型伝動機とトルク変換型伝動機、入力及び出力弾性力の同時操作や除加圧の為の指令操作等の制御情報を予め記憶される。フィルタ99は弾性力から弾性振動分を除く。上述の駆動源60および調節装置90の各機器は例えば山洋電気(株)出版「1998〜99サーボシステム総合カタログ」等で既に開示され市販中なので詳細説明は省く。
【0042】
次に第1実施例の動作を述べる。本例の思想は、引張型ベルトを用いて入力又は出力車のいずれの伝達車に対してもベルトプーリ間の接触半径が大きい時は常に該伝達車を基準車機能に、接触半径が小さい時は常に該伝達車を追従車機能に夫々働かせる為に、対応する各操作器からの加圧力又は弾性力を識別して供給制御する事である。本例では入力及び出力回転数N1,N0の速比ε(=N1/N0)が中間域のε=1を基準に切換える場合を述べる。即ち変速領域が、ε>1の大速比域又は低速域では入力車1に追従車機能を出力車2に基準車機能を与え個別操作して成る第一伝動装置Aの伝動形態で、逆にε<1の小速比域又は高速域では入力車1に基準車機能を出力車2に追従車機能を与え個別操作して成る第二伝動装置Bの伝動形態で夫々作動する様に、両操作器8,9と伝動装置の動作形態を切換える。
図1は入力車1が最小半径r10で出力車2が最大半径r00なので、操作器9では入力切換器の当接装置35は当接解除状態で弾性装置31の弾性力を、操作器8では出力切換器の当接装置45が当接動作状態で加圧力を夫々供給し第一伝動装置Aを成し、この伝動中に増速指令が供給されたとする。
【0043】
図6は、変速域の速比εを横軸に、ベルトプーリ間摩擦力Pと接触半径rを夫々左右の縦軸に示す動作特性図で、
図6Aは入力車の又
図6Bは出力車の各特性を示す。起動時は
図1の最大速比εmaxの為に入力車1には弾性体32の最大圧縮圧により最大入力摩擦圧が施される。最大張力のVベルト3を経て出力車2のV溝には張力による最大出力摩擦圧が保証される。本例の場合は出力当接装置45が当接動作中でも弾性体42の弾性加圧力は軸受49、共用摺動装置23及び圧力伝達装置80を経て、
図6Bの二点鎖線の基礎圧Ps0は供給され続ける。従って出力車2の出力摩擦圧はベルト張力と基礎圧Ps0が重畳した最大値P0maxになる。増速指令が加わり三つのモータ67が動くと各軸18a,58a,28aが回動し、入力車側では当接装置35の間隙38が挾まるが影響は無く、弾性体32が第二圧縮装置54により
図6Aの通り圧縮がP11に減圧されるのでトルク指令としての供給弾性力も減り入力摩擦圧も減る。出力車側ではベルト張力による出力摩擦圧分が減少する為出力摩擦圧もP01に減圧し同時に共用圧縮装置21により複合装置20はそのままの状態で共用圧縮装置21の摺動具26,27間のみが相対変位し、圧力伝達装置80を経て可動車2aを速比指令としての供給加圧力で強制移動しベルト半径をr01に減ずる。この時同時に弾性力の働きで減圧に拘わらず入力車1の半径r10は増しr11に移動する。この一連の動作が同時に同期して行われる。以下同様に再度増速指令が加わると同じ動作を繰返し、速比ε=1に達するまで繰返す。
【0044】
更に増速指令がε=1に達すると当接装置35、45が両切換器として働き二つの操作器8,9の動作が瞬時に切換わる。即ち入力側では当接装置35の僅かに残された間隙38は調節装置90の指令で瞬時に消去し摺動材36,37は当接動作状態に入り弾性体32の弾性力は当接装置35の加圧力に優先的に速比を固定して切換が行われる。出力側では同時に共用付勢装置22の働きで摺動具26は上昇し複合装置20を減圧するので当接装置45は圧力検出器94から当接解除状態に入り、弾性体42の弾性力が共用摺動装置23、圧力伝達装置80を経て車2に伝えられる。従ってε<1の小速比域では、入力車1が接触半径を増大し基準車機能で又出力車2が接触半径を減少し追従車機能で成る第二伝動装置Bとして働く事になる。第一伝動装置Aでは出力回転数は出力操作器8で直接制御し、出力トルクは入力操作器9でベルト張力を経て間接制御して双方で一方加圧装置を形成したのに比し、切換後は第二伝動装置Bでは出力回転数が操作器9の速比指令で間接制御され出力トルクが操作器8のトルク指令で直接制御され双方で他方加圧装置を形成する。従って以後は調節装置90による各制御指令と該各補償信号の供給切換がある以外は全く同様に安定伝動を続ける。
図3の左半分は増速指令が更に加わり出力回転数での速比εs の出力車2及び共用加圧装置21の圧縮状態を示す。最小速比εminまで同じ動作をする。
【0045】
逆に再び最大速比εmaxに復帰するには上述と逆回転の減速指令を各モータ65に与える事で上述と逆の動作手順で達成できる。速比ε=1での機能切換は、ベルト3の長手方向の伸びと幅方向の厚味の経年変化の悪影響を無くす為に本例では調節装置90が常時入出力車回転数検出器92,93と圧力検出器94から算出する速比信号εとトルク信号を基準に各加圧装置へのトルク及び速比指令の指令供給の切換をする例を述べる。然も実際には速比ε=1付近での伝動装置A及びB間のハンチングを阻止する為各指令は
図6A,6Bに示す通り動作スキ間(Differential)を施して制御される。尚上述の例では操作器9の弾性装置31又は当接装置35の一方のみしか車1の加圧に影響しない例なので第一及び第二圧縮装置14,54を常に駆動しても良いが必ずしもそうする必要は無く、車1に影響しない第二圧縮装置54は
図2の左側摺動体の如くその期間のトルク指令の供給を停止しある圧縮状態で待機しても良くまた切換時のみだけでなく常時両者を同時駆動させれば良い。更に弾性体31,41、プーリ1,2、ベルト3等の伝動部材が長期間の高圧縮圧で磨耗やヘタリ変径劣化した時に各車1,2で所定摩擦圧が継続維持でき無くなる恐れが残るが、本例では
図1の最大速比状態で伝動運転を停止する際でも調節装置90から各加圧装置51,21の高加圧を低加圧に強制的に解除又は加圧する除圧又は加圧の為の指令を与え長期間の運転停止の時の強制解放による経年劣化の阻止対策を施し得る。又各増幅器98は両操作器の切換時のみ直流モータ65を供給電圧又はパルス量操作で急速切換動作でき瞬時速動指令を供給して機能切換しても良い。
【0046】
更に本例では、出力トルクを入力及び出力操作器9、8の間接又は直接加圧制御で果す場合を持つが、各弾性体32,42の劣化した時にも高精度の所望摩擦圧を入力及び出力車1、2で保証する為圧力検出器がトルクの算出に使用される。入出力車1、2が基準車機能で働く時でも弾性力供給しても良くクサビ摩擦圧は同検出器で常時感知できるので、当然サーボ制御させれば良い。各摩擦圧又はトルクの低下時のトルク補償制御は、弾性体31等の劣化による各摩擦圧又はトルク検出値を知るCPU95とメモリ97aとで予め負荷に応じて定めた摩擦圧又はトルク基準値に適するように入力又は出力操作器9、8に閉ループ制御を施すことによってサーボ制御すれば良く、他にも開ループ制御等で所定摩擦圧供給での可変トルク制御を任意に制御する事が達成できる。出力回転数を入力又は出力操作器9、8の間接又は直接位置決め制御で行う際回転数検出器93を用いた時も同様である。
【0047】
本例の効用は、両車1,2のベルトプーリ間の接触半径又は面積が減少時は高圧の弾性力の常時供給を維持し続けるので加圧不足に因る滑りを解消し、接触半径又は面積が増大時は変速動作時以外には弾性力を全く印加しないか又は可変制御した弾性力を加えるだけなので摩擦係数変動や摩擦力過剰の不安定化を招く事が無く、必要以上の外部加圧に因るベルトの巻込み現象に伴う伝動不良が解消する。故に本明細書及び請求項で「実質的な非加圧」とは摩擦伝動に悪影響の無い範囲内で積極的に弾性力を可変制御しても良い事を意味する。その結果
図7の通り二つの効率特性の各最高効率域のズレを利用して大速比域での第一伝動装置Aと小速比域での第二伝動装置Bとを両最高効率域間の中間域で単に安定連結するだけで無く両変速領域を安定のまま大幅に拡大し広帯域化ができる事を示し、所望摩擦圧の安定維持が確立する為に高速度の変速応答性を果しかつ低速域及び高速域の該変速領域の両端域でも高効率伝動を果す。然も最大の利点はベルト巻込み現象が解消する為従来周知の押込型ベルトだけで無く引張型ベルトを、カム機構等の調整装置を全く付さずに適用できる点に有る。尚各操作器の機能切換位置は必ずしも速比ε=1に制約されず任意に変更可能である。
【実施例4】
【0053】
上述実施例で入出力車のいずれか一方が弾性力による追従車機能を持つ理由はベルトの周長伸びや厚味摩粍等の誤差要因の吸収能力を弾性力自体に持たせて常時安定伝動の維持を果させる為である。従って入力操作器9を
図10の構造で又出力操作器8を
図3の構造で夫々組立てた可変伝動機であっても又入力弾性体32が出力弾性体42よりバネ圧を大きく選定し実質的に加圧力として機能する時は安定伝動を果す。そこで本発明では入力及び出力車に同時に弾性力供給して両車でトルク制御を行ってもよいが少なくとも同時に加圧力供給状態にすべきでは無い。従って、両操作器8、9の一方を個別加圧装置又は複合加圧装置で他方を第二圧縮装置が弾性装置を直列圧縮する弾性加圧装置として両操作器でトルクの可変加圧制御をしても良いので負荷に応じた可変トルク制御が可能である。従ってこの時各加圧装置が第3実施例等の様に当接装置等の切換器を持つ必要は無く、更に入力車1に
図10の操作器9を又出力車に図示しない定速比プーリを施しても出力トルクを入力操作器で調節する本発明思想は達成できると共に本発明の範囲に含む。
従って本発明は「特許請求の範囲」から当業者が容易に創作しうる範囲内に於いて各種の変更、変形を加えても該範囲に包含される。
【0054】
実施態様1において、出力プーリは可変径型又は定速比プーリで該ベルト接触半径が一定である可変伝動機。実施態様2において、調節装置は予め負荷に応じ定めた速比対入出力摩擦圧の設定圧基準値を収めた記憶装置と演算処理装置でプログラマブル制御した可変伝動機。実施態様3において、調節装置は摩擦圧又はトルクの検出値と設定摩擦圧又はトルク基準値との夫々偏差に応じた補償量を入力操作器への操作量に加味した閉ループ制御又は入出力トルクに応じ予め定めた弾性力指令を施す開ループ制御をしてなる可変伝動機。実施態様4において、各圧縮装置は二摺動具間に押圧装置を施した摺動装置と該押圧装置を動かす付勢装置とでなり該摺動装置及び付勢装置の一方又は双方に自己反転阻止機能を持たせてなる可変伝動機。実施態様5において、入力第一及び出力第一加圧装置は二摺動材が該相互間間隙の有無で当接又は解放状態に応じて上記各プーリ可動車に加圧力供給の有無を制御可能な入力及び出力当接装置を持つ可変伝動機。実施態様6において、各弾性装置は、弾性体及び該弾性体の両端に配した二摺動体で成り、弾性力振動の伝達を一端で可能に他端で不能に支持した該弾性体の一端又は他端を第二又は共用圧縮装置で圧縮した可変伝動機。
【0055】
実施態様7において、調節装置は該速比がε=1の時点に切換えてなる可変伝動機。実施態様8において、調節装置は各操作器の切換の際に該動作時点に速比減少と増大時の間で動作スキ間を有する可変伝動機。実施態様9において、各操作器は該入力操作器に複合加圧装置を又該出力操作器に個別加圧装置を夫々施した可変伝動機。実施態様10において、調節装置は変速機停止中に該第二及び複合加圧装置の各弾性装置の圧縮を解放状態にする可変伝動機。実施態様11において、調節装置は本体と第二又は共用圧縮装置及び弾性装置との間に入出力摩擦圧を感知する圧力検出器をもつ可変伝動機。実施態様12において、入力又は/及び出力操作器は受加圧点から左右に伸びる上側及び下側の横伝達手段と、該各横伝達手段の端部間を互に繋げた二本の加圧軸でなる縦伝達手段と、更に該縦伝達手段を本体及び軸受で摺動可能に支える支承体とでなる圧力伝達装置を持つ可変伝動機。
【0056】
実施態様13において、各操作器は該プーリ周囲に配した該各弾性装置又は当接装置、該各圧縮装置、若しくは該各加圧装置と、該プーリ離隔地の該圧縮装置、該弾性装置又は当接装置、若しくは該プーリ軸受との間を夫々圧力伝達装置で互に圧力伝達してなる可変伝動機。実施態様14において、第一及び第二加圧装置は該各圧縮装置の一方を環状で該プーリ軸を貫通させ他方を該軸延長上に施す可変伝動機。実施態様15において、第一及び第二加圧装置は互に円環状の該弾性装置と該当接装置を該プーリ軸芯方向に平行に施した可変伝動機。実施態様16において、第一及び第二加圧装置は該プーリ可動車の軸受と該弾性及び当接装置の共用摺動体とを経て加圧した可変伝動機。実施態様17において、両操作器は一方を該個別加圧装置で他方を第二圧縮装置が弾性装置を直列圧縮する弾性加圧装置でなる可変伝動機。
【0057】
実施態様18において、複合加圧装置は円環状をなす該弾性装置の内側又は外側に該当接装置を互に同芯円上に配した可変伝動機。実施態様19において、複合加圧装置は二摺動材間の間隙を制御する該当接装置と、二摺動体及び弾性体でなる該弾性装置とを一方の該摺動体にて一端閉止の円環状型枠に形成した単一複合装置を持つ可変伝動機。実施態様20において、複合加圧装置は該二摺動材の一方を該型枠摺動体に又他方を該弾性体と該一方摺動材間に摺動可能に配し予め最小圧縮圧Ps1で封じた閉止型でなり上記入力操作器に配した可変伝動機。実施態様21において、複合加圧装置は該摺動材の一方を該型枠摺動体で又他方を本体で夫々共用し該両摺動材の当接時に該弾性体の最大圧縮圧Ps0を供給する開放型でなり上記出力操作器に配した可変伝動機。実施態様22において、両操作器は一方を該複合加圧装置で他方を第二圧縮装置が弾性装置を直列圧縮する弾性加圧装置でなる可変伝動機。