特開2015-42936(P2015-42936A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社野田修護商店の特許一覧 ▶ 環境エネルギー株式会社の特許一覧 ▶ 板野 正義の特許一覧

特開2015-42936金属切粉の乾燥方法及びそれを用いた金属切粉乾燥装置
<>
  • 特開2015042936-金属切粉の乾燥方法及びそれを用いた金属切粉乾燥装置 図000010
  • 特開2015042936-金属切粉の乾燥方法及びそれを用いた金属切粉乾燥装置 図000011
  • 特開2015042936-金属切粉の乾燥方法及びそれを用いた金属切粉乾燥装置 図000012
  • 特開2015042936-金属切粉の乾燥方法及びそれを用いた金属切粉乾燥装置 図000013
  • 特開2015042936-金属切粉の乾燥方法及びそれを用いた金属切粉乾燥装置 図000014
  • 特開2015042936-金属切粉の乾燥方法及びそれを用いた金属切粉乾燥装置 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-42936(P2015-42936A)
(43)【公開日】2015年3月5日
(54)【発明の名称】金属切粉の乾燥方法及びそれを用いた金属切粉乾燥装置
(51)【国際特許分類】
   F26B 5/16 20060101AFI20150206BHJP
   C22B 1/00 20060101ALI20150206BHJP
   F27B 7/00 20060101ALN20150206BHJP
【FI】
   F26B5/16
   C22B1/00 601
   F27B7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-151508(P2014-151508)
(22)【出願日】2014年7月25日
(31)【優先権主張番号】特願2013-154547(P2013-154547)
(32)【優先日】2013年7月25日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】503368568
【氏名又は名称】株式会社野田修護商店
(71)【出願人】
【識別番号】313009877
【氏名又は名称】環境エネルギー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】513188745
【氏名又は名称】板野 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100095603
【弁理士】
【氏名又は名称】榎本 一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤元 薫
(72)【発明者】
【氏名】朝見 賢二
(72)【発明者】
【氏名】谷 春樹
(72)【発明者】
【氏名】板野 正義
(72)【発明者】
【氏名】野田 修嗣
【テーマコード(参考)】
3L113
4K001
4K061
【Fターム(参考)】
3L113AA01
3L113AB05
3L113AB10
3L113AC08
3L113AC29
3L113AC45
3L113AC46
3L113AC58
3L113AC63
3L113AC68
3L113BA01
3L113DA10
3L113DA24
4K001AA02
4K001AA09
4K001AA10
4K001AA30
4K001BA22
4K001CA09
4K001GA07
4K061AA08
4K061BA02
4K061BA12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】切削油剤が付着した金属切粉と、乾燥処理材とを乾燥炉内で混合し、金属切粉に付着した切削油剤を乾燥させることにより残留炭素が著しく少なく、溶融炉への投入の際に発生していた黒煙や発火の発生を防ぎ安全性に優れるとともに、乾燥後の金属切粉の酸化度が低く、金属の再生歩留まりに優れた金属切粉の乾燥方法を提供する。
【解決手段】切削油、金属屑、バイト屑が付着した金属切粉を乾燥炉内で多孔質材や、固体酸触媒、固体塩基触媒の内いずれか1以上を含有する乾燥処理材と混合し、前記乾燥処理材で切削油剤に由来する油分を乾燥させる金属切粉の乾燥方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削油、金属屑、バイト屑が付着した金属切粉を乾燥炉内で多孔質材や、固体酸触媒、固体塩基触媒の内いずれか1以上を含有する乾燥処理材と混合し、前記乾燥処理材で切削油剤に由来する油分を乾燥させることを特徴とする金属切粉の乾燥方法。
【請求項2】
前記乾燥処理材が150℃〜450℃に加熱されていることを特徴とする請求項1に記載の金属切粉の乾燥方法。
【請求項3】
前記乾燥処理材が250℃〜450℃に加熱されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属切粉の乾燥方法。
【請求項4】
前記固体酸触媒が、FCC触媒、FCC廃触媒、活性白土、酸性白土、γ−アルミナ、合成シリカ・アルミナ、ゼオライト、固体リン酸の内いずれか1以上を含むことを特徴とする請求項3に記載の金属切粉の乾燥方法。
【請求項5】
前記固体塩基触媒が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、酸化ジルコニウムの内いずれか1以上を含むことを特徴とする請求項3に記載の金属切粉の乾燥方法。
【請求項6】
請求項1乃至5の内いずれか1に記載の金属切粉の乾燥方法に用いられる金属切粉乾燥装置であって、乾燥炉と、前記乾燥炉に乾燥処理材を投入する乾燥処理材投入部と、前記乾燥炉に前記金属切粉を投入する金属切粉投入部と、前記乾燥炉に配設された混合部と、前記混合部を駆動し前記乾燥炉内で前記乾燥処理材と前記金属切粉を混合する駆動部と、前記乾燥炉から前記混合物を取出す取出し部と、前記取出し部から取出された前記混合物を前記乾燥処理材と乾燥済みの前記金属切粉に分離する分離部と、を備えたことを特徴とする金属切粉乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム、亜鉛、銅、鉄等の金属製品や、真鍮、ステンレス等の合金類の切削加工や研削加工(以下、切削加工と云う。)等で使用する切削油剤が表面に付着した金属切粉と、乾燥処理材を混合することで、切削油剤を効率よく乾燥し、金属切粉の溶融再生時の黒煙や発火の発生を防止すると共に、金属切粉の酸化を防ぎ、更に粉塵爆発の原因となる切削等の際に発生した金属屑の微粉やバイト屑等を除去することができる金属切粉の乾燥方法及びそれを用いた金属切粉乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属切粉は、溶融炉で溶融再生され各金属資源として再利用される。しかしながら、切削加工時に発生する金属切粉は、その表面に、切削油剤や切削等の際に発生した金属屑の微粉やバイト屑等が付着している。これらを除去するために、金属切粉の溶融処理を行う前に、加熱乾燥を行う方法が取られている。
これらの、金属切粉の例として、アルミニウムについて述べると、現在の日本ではアルミニウムの年間総需要量は400万tを越え、世界的に見ても、アルミニウムの需要量はここ10数年で2倍以上の伸びを示しており、総需要量は年間4,500万tにも上る。そこで、アルミニウムの切削加工時に発生する金属切粉を高効率で再利用できる環境負荷の少ない乾燥方法が求められている。
従来、アルミニウムの金属切粉の再利用では、金属切粉をアルミニウム地金に再生する前工程として、金属切粉に付着した切削油剤を乾燥させる必要がある。主な乾燥方法は400℃〜600℃の熱風により切削油剤を蒸発させる単純な乾燥方法が用いられている。この様な従来の乾燥方法では完全に切削油分は乾燥せず、金属切粉表面に残留した切削油剤の由来の油分、もしくは油分がコークとなり金属切粉表面に残留し、金属切粉を溶解炉へ投入した際に、黒煙や発火が発生していた。また、乾燥中に撹拌することでアルミニウムの微粉やバイト屑、その他の粉塵が発生するので、それが原因で粉塵爆発をおこす危険性があり、安全性に大きな課題を抱えていた。
また、乾燥は大気下で行うのでアルミニウムが酸化しアルミニウムの再生歩留りが落ちるという課題もあった。
これらの課題を解決するために、(特許文献1)には、「炉両端に軸受けを持った回転軸に設けた撹拌部材からなる内部撹拌装置を備え、密閉した乾留炉内で、酸素濃度を制御し、300℃〜500℃に維持して可燃物の付着したアルミニウムの切粉を部分燃焼させ、加熱乾留処理する乾燥装置」や、(特許文献2)には「油分をできる限り燃焼性のガスに分解せずに液状で回収し、さらに熱分解炉に不活性ガスを注入して熱処理を行うことで装置外部へ人体に有害かつ発火の危険性を有する熱分解気体の発生を防止する金属切粉等の処理装置」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平6−17520
【特許文献2】特開2007‐302965
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記従来の技術においては、以下のような課題を有していた。
(1)(特許文献1)及び(特許文献2)に開示の技術は、金属切粉の乾燥を大気下、300℃〜400℃で行っているが、沸点の高い油分が乾燥できず、切削油由来の成分もしくは炭素成分(コーク等)として残留することにより、金属切粉を溶融炉に投入した際に黒煙や発火が発生し、また金属屑の微粉やその表面に付着したバイト屑等の粉塵により、粉塵爆発を起こす危険性があった。更に乾燥時の熱と大気中の酸素でアルミニウムが酸化しアルミニウムの再生歩留まりを低下させるという課題があった。
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、切削油剤が付着した金属切粉と、乾燥処理材とを乾燥炉内で混合し、金属切粉に付着した切削油剤を乾燥させることにより残留炭素が著しく少なく、溶融炉への投入の際に発生していた黒煙や発火の発生を防ぎ安全性に優れるとともに、乾燥後の金属切粉の酸化度が低く、金属の再生歩留まりに優れた金属切粉の乾燥方法の提供、及び、金属切粉の乾燥時の残留炭素が著しく少なく、金属再生時の黒煙や発火の発生を防ぎ、乾燥後の金属切粉の酸化度が低く、金属の再生歩留まりに優れ、更に乾燥時に発生していた金属切粉の微粉末やバイト屑を乾燥炉内で分離し、粉塵爆発の発生を防ぐ安全性に優れた金属切粉乾燥装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段及びそれによって得られる作用、効果】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の金属切粉の乾燥方法及び、それを用いた金属切粉乾燥装置は以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載の金属切粉の乾燥方法は、切削油や金属屑、バイト屑が表面に付着した金属切粉を、乾燥炉内で微粒子状の多孔質材や、固体酸触媒、固体塩基触媒の内いずれか1以上を含有する乾燥処理材と混合し、前記乾燥処理材で前記切削油剤を乾燥させる構成を有している。
この構成により、以下のような作用、効果を有する。
(1)金属切粉と乾燥処理材を乾燥炉内で混合すると、細かく複雑な形状をした金属切粉の切断部や加工部の凹部や切れ目の隅にまで乾燥処理材が完全に入り込み、金属切粉の表面に付着した切削油剤の水分や油分を乾燥できる。
(2)乾燥処理材が微粒子状の多孔質材や、固体酸触媒、固体塩基触媒の内いずれか1以上を含有するので、混合時に金属切粉の表面に乾燥処理材が塗されるだけで、乾燥処理材の水分や油分を速やかに吸着するので、乾燥性に優れる。
(3)乾燥率が高く、残留するコークが少ないので、溶融炉へ投入した際、黒煙や発火の発生を防ぐことができ、安全性に優れる。
(4)金属切粉の表面は切削油分と共に、金属屑やバイト屑等の極小の微粉末も付着しているが、細かい粒径の乾燥処理材と金属切粉が共擦りし金属切粉の表面に付着した水分や油分と共に粉塵の原因となる微粉末を取り除くことができる。又、コークが少ないので、コークに付着していた該微粉末等も少なくすることができる。これにより、金属切粉を溶融炉に投入する際に煙となって発生する粉塵が無く、粉塵爆発を防ぎ安全性に優れる。
(5)乾燥処理材が常温でも乾燥を行うことが可能で、省エネルギー性に優れる。
(6)乾燥炉内の乾燥処理材上に金属切粉を投入し、混合するだけで、細かく複雑な形状の金属切粉の表面を乾燥処理材で完全に覆うことができ、乾燥を迅速に進行させ、金属切粉を短時間で乾燥できる。また、切削剤が高分子量の油分を含有する場合でも、乾燥処理材が油分を吸着するので、切削油剤の分子量に関係無く乾燥することができ、乾燥効率に優れる。
【0007】
乾燥処理材としては、多孔質材や、固体酸触媒、固体塩基触媒の内いずれか1以上を好適に用いることができる。
多孔質材としては、シリカやゼオライト、活性炭等の多孔質材料を用いることができる。
固体酸触媒としては、FCC触媒、FCC廃触媒、活性白土、酸性白土、γ−アルミナ、合成シリカ・アルミナ、ゼオライト、固体リン酸等を用いることができる。
FCC廃触媒は未だ触媒活性を充分に有しているので、FCC廃触媒が350〜450℃に加熱されている場合、切削油剤中の高分子量の油分が触れると同時に接触分解され低分子量化するので、切削油分のガス化が容易になり切粉の乾燥が促進される。また、FCC廃触媒自体が産業廃棄物であるため、廃棄物の有効利用につながり省資源性に優れる。
固体塩基触媒としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の酸化物、酸化ジルコニウム等の油脂の分解触媒を用いることができる。
【0008】
乾燥処理材の粒径は金属切粉の大きさの1/10程度より小さいものであればよく、その粒径は、小さいものほど好ましい。また、比表面積の大きい多孔質材等の微粒子状のものを用いた場合、水分や油分の吸収性及び加熱した場合の伝熱と接触分解を効率よく進行させることができる。
FCC触媒やFCC廃触媒は、粒径が1〜100μm、好ましくは約40〜80μm程度に造粒された合成ゼオライト系の接触分解触媒が好適に用いられる。接触分解触媒の粒径が40μmより小さくなるにつれ、再利用が困難になる傾向がある。また、80μmよりも大きくなるにつれ、接触分解触媒が金属切粉の加工面の微細な凹凸や金属切粉の切れ目にある水分や油分との接触が不充分となり、乾燥効率が悪くなる傾向にあるので好ましくない。
乾燥処理材の表面にコークが蓄積して触媒機能が低下した場合には、大気下もしくは酸素制御下で乾燥炉の温度を500℃以上に上げることで再活性化を行うことができる。
【0009】
金属切粉としては、アルミニウム、亜鉛、銅、鉄等の金属製品や、真鍮、ステンレス等の合金類を切削加工や研削加工する際に大量に発生する金属屑や切削屑、シュレッダー屑のほか、使用済みの各種缶等の金属製品の使用済み屑等様々な形状の金属切粉を用いることができ、特に材質や形状を限定するものではない。
【0010】
金属切粉は、切削油剤として、日本工業規格(JIS K2241)における不水溶性切削油剤(N1種、N2種、N3種、N4種)や、水溶性切削油剤(A1種、A2種、A3種)及び、これらの混合物で切削・研削加工したものが用いられる。また、一般的に切削油剤には、添加剤として、極圧添加剤、乳化剤(潤滑剤)、防錆剤、防食剤、界面活性剤、消泡剤、防腐剤等が添加されているがこれらを含んでいてもよい。水溶性切削油剤は、水で希釈し使用するが、このように水を含んでいる場合も用いることができる。尚、切削油剤には切削油の他研削油も含まれる。
【0011】
乾燥の前処理として、金属切粉を、一辺の平均長さが100mm以下程度に粉砕や、切断等を行ったものを用いるのが好ましい。前処理を行うことで、装置内での詰まり等のトラブルを防ぐことができる。
また、乾燥の前処理として、遠心分離機等の脱水機によりある程度、金属屑等や油分や水分を除去する場合もある。これによって、乾燥時間を短縮し、乾燥処理材の寿命を長くでき、更に再生に必要な熱量を低減できるので、省エネルギーに優れる。
【0012】
金属切粉と、乾燥処理材の混合割合としては、容量比で(a)金属切粉:(b)乾燥処理材=1:0.5〜1:5であることが好ましい。金属切粉と乾燥処理材の混合割合がb/a<0.5の場合、充分に乾燥処理材を金属切粉に塗すことができないので、金属切粉の表面に残留する油分等の乾燥度にバラツキが生じ乾燥効率が低下するので好ましくない。また、金属切粉と乾燥処理材の混合割合がb/a>5の場合、乾燥性は優れるものの、金属切粉の量に比べて乾燥処理材の量が多くなり、処理効率の面から好ましくない。金属切粉の乾燥効率を高めるには、乾燥処理材が金属切粉の加工面の微小な凹凸や切れ目等にも充分に入り込むことができる程度の量が必要で、金属切粉の表面全体を乾燥処理材が覆うことが大切となる。
【0013】
乾燥炉については後述する。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の金属切粉の乾燥方法であって、前記乾燥処理材が150℃〜450℃に加熱されている構成を有している。
この構成により、請求項1の作用、効果に加え、以下のような作用、効果を有する。
乾燥処理材が150℃〜450℃に加熱されていることにより、乾燥炉内で金属切粉が加熱され、乾燥処理材に混合されることで、金属切粉の表面に付着した切削油剤に含まれる水分を迅速に蒸発させるとともに、金属切粉の表面に付着した切削油剤の油分を吸収又は接触分解等により乾燥させることができる。
【0015】
乾燥炉内の温度は150℃〜450℃に制御される。150℃未満では、乾燥処理材の細孔内の水分の乾燥性が低く乾燥性に欠ける。150℃以上で加熱することで、短時間で水分を蒸発させるとともに、油分を熱分解又は接触分解することができる。450℃を超える高温では、乾燥時間や乾燥性の点では優れるが、省エネルギー性を低下させることになり好ましくない。また、油分の熱分解が生じ易く、その分、コークの生成量が増加するので好ましくない。コークは金属再生時の黒煙や発火の原因となり、また、金属屑を付着しそれが溶融再生時発塵の原因となるためである。
また、乾燥処理材の細孔が切削油剤の水分を吸収することで乾燥性が低下した場合は,150℃以上で加熱することで、水分を乾燥させ油分を接触分解で除去し乾燥処理材を再生することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の金属切粉の乾燥方法であって、前記乾燥処理材が250℃〜450℃好ましくは350℃〜450℃に加熱されている構成を有している。
この構成により、請求項1又は2の作用、効果に加え、以下のような作用、効果を有する。
(1)乾燥処理材が250℃〜450℃好ましくは350℃〜450℃に加熱されていることにより、乾燥炉内で金属切粉が加熱された乾燥処理材に混合されることで、金属切粉の表面に付着した切削油剤に含まれる水分を迅速に蒸発させると共に油分を接触分解又は熱分解することができ、乾燥させることができる。
(2)乾燥処理材が250℃好ましくは350℃以上に加熱されていることにより、乾燥処理材が固体酸触媒や固体塩基触媒の場合、切削油剤に由来する油分を高効率で接触分解することができるため乾燥が促進されると共にコークの発生を低減することができる。
【0017】
乾燥炉内の加熱温度が350℃よりも低くなるにつれ接触分解の効率が悪くなる傾向があるので好ましくない。また、450℃を超えると熱分解が起こりやすく、かつ金属切粉が酸化されやすくなるので好ましくない。ただし、酸素がない条件下であれば、温度に関係なく酸化されない。
乾燥炉内の温度は、外部加熱や熱風の吹込み、炉内ヒータ等で制御される。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の金属切粉の乾燥方法であって、前記固体酸触媒が、FCC触媒、FCC廃触媒、活性白土、酸性白土、γ−アルミナ、合成シリカ・アルミナ、ゼオライト、固体リン酸の内いずれか1以上である構成を有している。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の金属切粉の乾燥方法であって、前記固体塩基触媒が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、酸化ジルコニウムの内いずれか1以上を含む構成を有している。
【0020】
この構成により、請求項4又は5の発明は、請求項3の作用、効果に加え、以下のような作用、効果を有する。
(1)固体酸触媒の乾燥処理材と金属切粉を250℃〜450℃好ましくは350℃〜450℃に加熱制御された雰囲気で混合することにより、金属切粉の表面に付着した切削油剤に含まれる水分を急速に蒸発させると共に、油分を迅速に接触分解することができ、乾燥性に優れる。
(2)接触分解触媒として広く使用されているこれらの固体酸触媒の場合、入手が容易で、低原価で利用できる。
(3)廃触媒の有効利用で省資源化につながる。
【0021】
固体酸触媒や固体塩基触媒を用いているので、切削油剤に由来する油分が接触分解され、熱分解に比べコークの生成量が少なく、コークによる金属切粉への金属屑やバイト屑等の付着が無く、乾燥処理材と金属切粉の分離性に優れる。
また、長時間の乾燥により、コークの付着などで、固体酸触媒や固体塩基触媒の活性が低下した場合は、500℃〜600℃に加熱し、酸素制御下で再生することができる。
【0022】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5の内いずれか1に記載の金属切粉の乾燥方法に用いられる金属切粉乾燥装置であって、乾燥炉と、前記乾燥炉に乾燥処理材を投入する乾燥処理材投入部と、前記乾燥炉に前記金属切粉を投入する金属切粉投入部と、前記乾燥炉に配設された混合部と、前記混合部を駆動し前記乾燥炉内で前記乾燥処理材と前記金属切粉を混合する駆動部と、前記乾燥炉から前記混合物を取出す取出し部と、前記取出し部から取出された前記混合物を前記乾燥処理材と乾燥済みの前記金属切粉に分離する分離部と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用、効果を有する。
(1)乾燥炉に配設された混合部と、混合部を駆動する駆動部を備えているので、乾燥処理材と金属切粉混合することにより、常温でも金属切粉の表面の水分や油分を吸着し乾燥を行うことが可能で省エネルギー性に優れる。
(2)微粒子状の乾燥処理材で、細かく複雑な形状の金属切粉の表面を濃密に覆うことができ、切削油剤中の水分や油分等をきわめて短時間で吸着させることができる。また、外部加熱器等を配設することにより、150℃程度に加熱することにより水分を短時間で乾燥でき、更に350℃以上に加熱することにより切削油剤由来の油分を熱分解に加え接触分解を行うことができ、乾燥効率に優れる。
(3)乾燥炉内に高温の固体酸触媒や固体塩基触媒を含む乾燥処理材を備えた場合、接触分解反応を進行させ、金属切粉を短時間で乾燥させるので、乾燥効率に優れる。
(4)混合部によって、微粒子状の乾燥処理材と金属切粉を混合し、金属切粉の表面を乾燥処理材で覆うと共に、微小な凹み部や切れ目、隅部等に乾燥処理材が入り込み、乾燥を行うことができるので、きわめて高い乾燥効率を実現できる。
(5)金属切粉を乾燥炉に投入する投入部と、乾燥後の金属切粉を取出す取出し部を備えているので、切削油や金属屑、バイト屑等のついた金属切粉を乾燥炉に連続的に投入しながら抜出し乾燥させることができ、処理効率に優れる。
(6)混合物を乾燥処理材と金属切粉に分離する分離部と、分離部で分離した乾燥処理材を再び乾燥処理剤投入部へ搬送する搬送部を備えた場合は、一定量の乾燥処理材を乾燥炉に投入するだけで、乾燥処理剤を循環させながら切削油や金属屑、バイト屑等の付着した金属切粉を連続的に乾燥させることができ、処理効率に優れる。
(7)分離部を有しているので、金属切粉と乾燥処理剤を分離できる。また分離部の後に乾燥処理剤の抜出補充部を設けた場合は、分離した乾燥処理材の一部入れ替えや、補充を、装置を止めること無く行うことができ連続運転性に優れる。
(8)混合部を備えることにより、乾燥処理材と金属切粉が共擦りし金属切粉の表面に付着した粉塵の原因となる微粉末を取り除くことができる。その結果、金属切粉を溶融炉に投入する際に発生する粉塵が無く、粉塵爆発を防ぎ安全性に優れる。
(9)コークの生成が極めて少ないので、乾燥後の金属切粉を溶融炉へ投入する際に発生していた黒煙や発火の無い安全性に優れた金属切粉乾燥装置を提供することができる。
(10)乾燥炉と、混合部と、駆動部を有しているので、固体酸触媒や固体塩基触媒を500〜600℃に加熱することにより、短時間にコークを燃焼させ該触媒を再生し再利用することができる。
【0023】
ここで、乾燥炉としては、例えば、ロータリーキルン方式、容器内に金属切粉と乾燥処理材を投入し撹拌機で撹拌する撹拌方式等を用いることができる。ロータリーキルン方式や、撹拌方式は、乾燥炉内の金属切粉と乾燥処理材を混合し好適に金属切粉と乾燥処理材とが接触できるので乾燥効率に優れる。
【0024】
乾燥炉内の圧力は、大気圧又は僅かに正圧に維持するのが好ましい。内部で加熱された金属切粉と乾燥処理材が撹拌されているため、切削油剤の乾燥によって可燃性ガスが生成され、負圧にした場合、外気を吸い込み酸素濃度が上昇し装置内で着火し爆発する危険性があるからである。
乾燥炉内には窒素や炭酸ガスなどのキャリアガスや廃ガスを導入することにより、接触分解により発生する分解ガスや水蒸気からなる排ガスを系外に排気させることができる。
また、乾燥炉の内部の酸素濃度は不活性ガス等を用いたり、排ガスを循環させたりして制御することができる。酸素濃度の制御方法としては、排気ガス中の酸素濃度を計測して不活性ガスや排気ガスの投入量を調整することで行っても良い。酸素濃度を低くすることで、爆発の危険性を低減し安全性に優れると共に、乾燥炉内の酸素濃度が低いので、乾燥炉内で金属切粉が酸化されるのを防止することができる。
【0025】
乾燥処理材として、固体酸触媒や固体塩基触媒を用いる場合、切削油剤に由来する油分は、乾燥処理材で接触分解され軽質の炭化水素油になるので、凝縮器で燃料油として回収する構成にすることもできる。
【0026】
金属切粉投入部や乾燥処理材投入部としては、スクレーパーコンベアや、スクリューコンベア等金属切粉や乾燥処理材を乾燥炉に投入することができるものであれば、特に制限なく用いることができる。
また、金属切粉投入部や乾燥処理材投入部には、予備加熱部を設けることで、乾燥処理材と金属切粉が混合すると同時に迅速に乾燥乃至は接触分解を促進させることができるので好ましい。
金属切粉投入部や乾燥処理材投入部には、それらの前後にスライドゲート等を設けるのが好ましい。スライドゲートを配設することで乾燥炉内の気密性をあげ、酸素濃度の制御をすることができるので金属切粉の酸化を防ぐことができる。
【0027】
金属切粉の前処理として脱水装置等、簡易的に金属切粉に付着した水分や油分、金属屑等を取り除く装置を設けても良い。また、投入する金属切粉のサイズを調整するために、粉砕や切断等のサイズ調整工程を設けても良い。粉砕には、剪断式(一軸剪断破砕機等)や衝撃式(ハンマークラッシャー等)の粉砕機を用いることができる。金属切粉のサイズを調整することで、乾燥処理材の投入量の調整が容易になり作業性を上げることができる。
【0028】
取出し部としては、金属切粉を乾燥炉から取出すことができるものであれば、特に制限なく用いることができる。例えばスクリューコンベア等を用いることができる。また、乾燥処理材投入部等と同様に気密性を上げるために、その前後にスライドゲート等を配設することもできる。
【0029】
分離部としては、金属切粉と乾燥処理材、バイト屑、金属屑等を分離することができれば良く、振動篩等を用いることができる。金属切粉が非磁性体の場合、乾燥した金属切粉から鉄粉を除去する磁選機を配置するのが好ましい。これにより、バイト屑などを除去することができる。
【0030】
搬送部としては、分離部で分離した乾燥処理材を接触分解投入部に搬送できればよい。搬送部では乾燥処理材の状態を見て、乾燥処理材の一部入れ替えや、補充をすることができる。
【0031】
乾燥炉に加熱部を設けることもできる。加熱部としては、乾燥炉内の乾燥処理材を加熱できるものであれば、特に制限なく用いることができる。例えば、乾燥炉の外側若しくは内側から輻射熱によって乾燥炉内を加熱するものや、乾燥炉内に熱風を吹き込んで乾燥炉内を加熱するもの,若しくは電気ヒータ等を用いることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】実施の形態の金属切粉乾燥装置の構成図
図2】実施例3と比較例4の水抽出液によるGC−MS分析結果を示すグラフ
図3】実施例3と比較例4のヘキサン抽出液によるGC−MS分析結果を示すグラフ
図4】実施例4の蛍光X線分析結果を示すグラフ
図5】比較例5の蛍光X線分析結果を示すグラフ
図6】比較例6の蛍光X線分析結果を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0033】
(実施の形態)
本発明の実施の形態における金属切粉乾燥装置について、以下図面を参照しながら説明する。
なお、本発明は以下に説明する実施の形態に限定されるものではない。
図1は実施の形態における金属切粉乾燥装置の構成図である。
図1中、1は金属切粉を乾燥させるロータリーキルン方式の金属切粉乾燥装置、2は150℃から450℃好ましくは350℃〜450℃で金属切粉と乾燥処理材を混合し乾燥させる円筒型の乾燥炉、3は乾燥炉2の外周に配設され温度制御された電気ヒータによって乾燥炉2を加熱する加熱部、4は乾燥炉2と加熱部3の外周に配設された断熱部、5は乾燥炉2の回転によって乾燥炉2の金属切粉と乾燥処理材を混合する乾燥炉2の内壁に配設された混合促進用の混合羽根、6は乾燥炉2の下部で乾燥炉2を回転自在に支持するローラー状の支持部、7は乾燥炉2をモーター等の駆動部7’によって回転される混合部、8は乾燥炉2の金属切粉や乾燥処理材の投入側に乾燥炉2を回転自在に支持するために基台に配設された投入側接続部、9は乾燥処理材を乾燥炉2に投入する投入側接続部8に配設された乾燥処理材投入部、10は金属切粉を乾燥炉2に投入する投入側接続部8に配設された金属切粉投入部、11は乾燥炉2に排ガスやキャリアガスを注入する投入側接続部8に配設されたガス導入部、12は乾燥炉2の乾燥済みの金属切粉や乾燥処理材、金属屑、バイト屑等を取出す取出し側接続部、13は乾燥炉2で発生した水蒸気や分解ガス等の排ガスを排出する取出し側接続部12に配設された排ガス排気部、14は乾燥炉2で乾燥済みの金属切粉と乾燥処理材等を取出す取出し側接続部12に配設されスライドゲート14´を備えた取出し部、15は取出し部14で取出された金属切粉と乾燥処理材等の混合物を金属切粉と乾燥処理材等に分離する分離部、16は分離部15で分離された乾燥処理材を乾燥処理材投入部9に搬送する搬送部、16´は乾燥処理剤を適宜排出する乾燥処理材排出部である。また乾燥炉2は投入側から取出し側に向けて乾燥炉内の移動速度に合わせ適宜傾けられている。
【0034】
本実施の形態では、ロータリーキルン方式の金属切粉乾燥装置について説明したが、これに限定されるものではなく、撹拌方式の金属切粉乾燥装置を用いても良い。この場合、混合部は撹拌翼で構成される。また、加熱部3は乾燥炉2を外周から加熱したり、キャリアガスや分解ガスを加熱した熱風を乾燥炉2の中に吹き込んで加熱したりしてもよい
【0035】
以上のように構成された実施の形態における金属切粉乾燥装置を用いて、以下金属切粉の乾燥方法について説明する。
金属切粉乾燥装置1の乾燥炉2に乾燥処理材投入部9や金属切粉投入部10で投入された乾燥処理材及び金属切粉は混合部7の回転と内部の混合促進用の混合羽根5で撹拌混合される。さらに乾燥炉2の内部の、乾燥処理材及び金属切粉は乾燥炉2の外周の加熱部3によって350℃〜450℃に加熱されている。また、このとき予め乾燥炉2の内部に先に乾燥処理材を投入し加熱しておくことで、後から投入される金属切粉に付着した切削油剤の水分や油分への伝熱、油分の接触分解を投入とほぼ同時に行うことができ金属切粉の乾燥を促進することができる。次いで、金属切粉と乾燥処理材の混合割合が一定になるように金属切粉と乾燥処理材を投入しながら、乾燥を最適条件に保ちながら行う。乾燥炉2内の金属切粉と乾燥処理材は混合されながら、金属切粉の水分は蒸発され、乾燥処理材に接触した油分は多孔質材やFCC廃触媒等の個体酸触媒、固体塩基触媒で熱分解や接触分解されて軽質油ガスとなり、排ガス排気部13でキャリアガスとともに系外に排出される。乾燥を終えた金属切粉と乾燥処理材は取出し部14で取り出され、分離部15で金属切粉と乾燥処理材や、金属切粉の微粉、バイト屑等は各々分離され、分離された乾燥処理材は搬送部16で乾燥処理材投入部9に搬送される。乾燥処理材は、搬送部16の途中で乾燥処理剤排出部16´で適宜一部抜き取り排出され、その分新乾燥処理材と入れ替えて循環して用いられる。
【0036】
以上のように実施の形態における金属切粉乾燥装置は構成されているので、以下のような作用、効果が得られる。
(1)乾燥処理材としてFCC廃触媒を用いる場合は、乾燥炉内の乾燥処理材を350℃〜450℃に加熱するだけで、金属切粉を乾燥できると共に、乾燥後の金属切粉に残存する油分がなく、金属の熔融再生の際に黒煙や発火の発生を防ぎ金属の再生歩留まりに優れた金属切粉乾燥装置を提供することができる。
(2)分離部でバイト屑や、金属屑等の微粉末等の粉塵が乾燥処理材と共に分離されているので、金属切粉を溶融炉に投入する際に粉塵爆発の発生の危険性が無く、安全性に優れた金属切粉乾燥装置を提供することができる。
(3)乾燥炉内で、加熱された乾燥処理材によって、伝熱と接触分解反応を同時に進行させ、金属切粉を短時間で乾燥するので、乾燥効率に優れる。
(4)混合部によって、乾燥処理材と金属切粉を混合することで、乾燥処理材が金属切粉の微小な凹み部や切れ目、隅部等に入り込み、乾燥処理剤が固体酸触媒や固体塩基触媒の場合は効率よく接触分解を行うので、残留油分やコークがほとんど生じない乾燥性に優れた金属切粉乾燥装置を提供することができる。
(5)混合物を乾燥処理材と金属切粉に分離する分離部と、分離部で分離した乾燥処理材を再び乾燥処理材投入部へ搬送する搬送部と、を備えているので、一定量の乾燥処理材を乾燥炉に投入することができるので、切削油のついた金属切粉を連続的に乾燥させることができ、処理効率に優れる。
(6)乾燥炉から排出した乾燥処理材を分離できるので、分離した乾燥処理材の一部入れ替えや、補充を、装置を止めること無く行うことができ連続運転性に優れる。
(7)分離部に除鉄手段を備える場合は、溶融炉に鉄等の不純物の混入を防止できる。
<乾燥重量の確認>
【実施例1】
【0037】
乾燥処理材として、FCC廃触媒を用い、この触媒300Lを、内容積500Lの乾燥炉に収容し、乾燥炉を3rpmで回転させながら撹拌し、熱風循環ガスを用いて400℃まで加熱した。加熱温度は乾燥炉内の熱電対で測定した。
乾燥炉が400℃に上昇したのを確認し、金属切粉投入部から大気圧下の乾燥炉にアルミニウムの切削工程で得られた未乾燥の金属切粉を20L/minで10分間、合計200L投入した。ガス導入部からキャリアガスとして窒素ガスを10L/minで導入し、その後10分間撹拌した後、ヒータの電源を落として自然冷却し金属切粉の乾燥を行った。次いで、乾燥炉から金属切粉を取り出し、実施例1の乾燥金属切粉を得た。
なお、投入した金属切粉は実際のアルミニウムの切削加工(切削加工では日本工業規格JIS K2241の水溶性切削油剤のA1とA2を1:1の比で混合したものを用いた)で得られた平均長さが10mmの金属切粉を用いた。
また、FCC廃触媒は、平均粒径が40〜80μmのものを用いた。
【実施例2】
【0038】
実施例1の乾燥金属切粉を蒸発皿に約20g量りとり、電気炉を用い、大気下600℃で3時間焼成処理した後、再び重量を測定し焼成処理前と焼成処理後の重量変化量を求め、結果を(表1)に示した。(表1)に示した乾燥処理前総重量(g)は、蒸発皿の上に約20gの実施例1の乾燥金属切粉を図り取った時の重量であり、焼成処理後総重量(g)は電気炉で大気下600℃で3時間焼成処理した後の蒸発皿と乾燥金属切粉の重量であり、重量変化量(g)は焼成処理後総重量(g)から焼成処理前総重量(g)を引いた値であり、残留率(%)は、後述する比較例2(未乾燥)の金属切粉の重量変化(g)を基準に実施例1の重量変化(g)を百分率で表したものである(残留率(%)=実施例1の重量変化(g)÷比較例2の重量変化(g)×100)。
【0039】
(比較例1)
実施例1と同一のアルミニウムおよび切削油剤を用いて、アルミニウムを切削加工して得られた未乾燥の金属切粉を用い、実施例2と同様に焼成処理を行い焼成処理前と焼成処理後の重量変化を求めた。その結果を(表1)に示す。
【0040】
(比較例2)
従来の乾燥方法と同様に、内容積500Lのロータリーキルンを3rpmで回転させながら撹拌し、熱風循環ガスを用いて400℃まで加熱した。大気圧下の乾燥炉に、実施例1と同一のアルミニウムおよび切削油剤を用いて、アルミニウムの切削工程で得られた未乾燥の金属切粉を20L/minで10分間、合計200L投入し乾燥を行った。以上のように従来の乾燥方法で乾燥した金属切粉を冷却し乾燥後の比較例2の金属切粉を得た。
【0041】
(比較例3)
比較例2の金属切粉を用いた以外は実施例2と同様に焼成処理を行い焼成処理前と焼成処理後の重量変化を求めた。結果を(表1)に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
(表1)より、焼成処理によって実施例2では、重量が0.05g増加している。これは実施例2の金属切粉は本願発明の実施例1の乾燥によって、金属切粉表面の切削油剤がほとんど乾燥されており、焼成処理しても、重量が減らず、逆に、重量が増加したのは金属切粉が酸化したためと考えられる。また、比較例3では重量が0.89g減少しており、これは従来の乾燥方法では除去しきれていなかった切削油剤が焼成処理によって除去されたためと考えられる。比較例1で重量が2.49g減少していることからアルミニウムの切削加工で得られた未乾燥の金属切粉には元々、2.49gの切削油が付着していたと思われるため、比較例3における重量変化量が全て焼成処理による切削油の除去によるものとすると、比較例3の従来法の乾燥方法では、切削油成分の残留率が約35.7%あることがわかった。実施例2の金属切粉の切削油成分の残留率は、ほとんど無いと考えられるので従来法の乾燥方法よりも実施例2の乾燥方法が著しく優れていることが分かる。
〈発煙と発塵の確認〉
【実施例3】
【0044】
実施例2及び比較例1,3の金属切粉をるつぼに入れ電気炉にて900℃まで加熱した。実施例2の乾燥後の金属切粉は加熱中の発煙が認められなかった。比較例1は加熱中に黒煙と発塵が認められた。比較例3は比較例1に比べて、比較的量は少ないが、比較例1と同様に発煙と発塵が認められた。
以上のことから、黒煙や発塵からも実施例2の金属切粉の残量油分が少ないこと,および、残量油分が少ないことで残留油分に付着しているバイト屑等が少ないため発塵が少なかったことがわかる。このように、本願発明の乾燥方法が従来法よりも、残留する油分が著しく少ない優れた乾燥方法であることが明らかになった。
<含有成分の確認>
【実施例4】
【0045】
金属切粉の表面に残留した切削油剤の油分を確認するため、実施例1の乾燥後の金属切粉30gを内径3cm、高さ20cmのガラス容器に充填し、抽出液として水およびヘキサンを用いて、それぞれ30mlを1ml/minで滴下し金属切粉の表面の付着物の抽出液を得た。
得られた抽出液(水、及びヘキサン)をそれぞれGC−MS(株式会社島津製作所製:GC−MS−QP5050)を使用して分析を行った。得られたそれぞれの抽出液の分析結果を、水を抽出液として用いたときの測定結果を図2及び(表2)に、ヘキサンを抽出液として用いた時の測定結果を図3及び(表3)に示す。
【0046】
(比較例4)
比較例2の金属切粉を用いた以外は、実施例4と同様にして乾燥後の金属切粉の分析を行った。得られたそれぞれの抽出液の分析結果を、水を抽出液として用いたときの測定結果を図2及び(表2)に、ヘキサンを抽出液として用いた時の測定結果を図3及び(表3)に示す。
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
図2は実施例3と比較例4の水抽出液によるGC−MS分析結果を示すグラフであり、図3は実施例3と比較例4のヘキサン抽出液によるGC−MS分析結果を示すグラフである。
各表のピークナンバーは、それぞれの抽出液で検出されたピークの多い方に併せ、番号をつけ、実施例3と比較例4の両方から抽出されたピークについては図2及び図3にピークナンバーを示した。
図2及び(表2)より、乾燥後の金属切粉に残っている油分を図2中の下側のグラフの実施例3と図2中の上側のグラフの比較例4を比較してみると、図2より、水抽出液では、実施例3及び比較例4からも同様の位置(保持時間)にピークが確認され(ピークナンバー1,2,3,4,5)処理方法は異なるが、残留している成分は同じであることが分かる。また、これらの共通の位置のピークはMS分析から、C1122COOCH3(ピークナンバー3)及びC16(ピークナンバー4),C17(ピークナンバー5)のn−パラフィンであることがそれぞれ確認された。含有量を表す各ピークの面積は、いずれの成分においても、実施例3の面積が著しく小さく、表面に残留している切削油が少ないことが分かる。
図3及び、(表3)より、ヘキサン抽出液から、図3中の下側のグラフの実施例3及び図3中の上側のグラフの比較例4から同じような成分が確認でき、C5、C6のi−パラフィンやシクロヘキサンなど(ピークナンバー1,2,3,7,8)が主成分として検出された。ヘキサン抽出液でも同様に、含有量を表す各ピークの面積は、各成分において、比較例4に比べ実施例3の面積が著しく小さく、次に高分子域の化学物質の含有量が極めて少なかった。尚、GC−MS分析と合わせて実施例2及び比較例3の乾燥重量の測定結果から、表面に付着している成分は同様のものが見られ、抽出液の種類に関わらず実施例3の切削油の方が少なく、乾燥が進んでいることが明らかになった。
<酸化の比較>
【実施例5】
【0050】
実施例1の金属切粉の蛍光X線分析を行った。その結果を図4に示す。
【0051】
(比較例5)
未乾燥の金属切粉の蛍光X線分析を行った。その結果を図5に示す。
【0052】
(比較例6)
比較例2の金属切粉の蛍光X線分析を行った。その結果を図6に示す。
【0053】
図4及び図5より、未乾燥の金属切粉の比較例5(未乾燥)の酸素のピークと本願発明の乾燥方法で乾燥後の金属切粉の実施例5の酸素のピーク強度が殆ど変わらないことが見てとれる。また、図5及び図6より、実施例5の酸素のピークと従来方法で乾燥を行った比較例6(従来法)の酸素のピークでは、比較例6の酸素のピークのほうが明らかに大きく、酸化が進んでいることが明らかになった。図4乃至図6より、本願発明の乾燥方法によれば金属切粉の酸化は著しく少ないことがわかった。
<油種による乾燥性の評価>
【実施例6】
【0054】
FCC廃触媒を乾燥処理材に用いて、油種の違いによる乾燥性の評価を行った。まず、乾燥炉として半球状に形成されたステンレス製の容器(内容量600mL)を用いて、乾燥処理材として400mLのFCC廃触媒を入れ、加熱部としてガスコンロで容器を加熱しFCC廃触媒が400℃一定になるように、容器内を撹拌棒で約10rpmの速さで撹拌し、加熱した。
加熱温度は熱電対で測定した。容器の中のFCC廃触媒が400℃に上昇したのを確認し、日本工業規格JIS K2241の水溶性切削油A1種(トラスコ中山株式会社製)を水で20倍に希釈した切削油剤に浸漬したアルミニウムの金属切粉100mLを投入し、容器内を撹拌棒で約10rpmの速さで撹拌し3分間乾燥した。乾燥後、直ぐに乾燥炉内の金属切粉とFCC廃触媒及びアルミニウム切粉を30メッシュの目開きの篩にかけて分離した。乾燥した金属切粉を冷却し実施例6の金属切粉を得た。
実施例6の金属切粉を蒸発皿に約30g量りとり、電気炉を用い、大気下600℃で2時間焼成処理した後、再び重量を測定した。結果を(表4)に示す。
【実施例7】
【0055】
切削油剤として、日本工業規格JIS K2241の水溶性切削油A2種(トラスコ中山株式会社製)を水で20倍に希釈した切削油を用いた以外は、実施例6の金属切粉と同様の方法を用いて実施例7の金属切粉を得た。得られた金属切粉についても実施例6と同様の測定を行った。結果を(表4)に示す。
【実施例8】
【0056】
切削油剤として、日本工業規格JIS K2241の水溶性切削油A2種(トラスコ中山株式会社製)を水で20倍に希釈した切削油を用いた以外は、実施例6の金属切粉と同様の方法を用いて実施例7の金属切粉を得た。得られた金属切粉についても実施例6と同様の測定を行った。結果を(表4)に示す。
【0057】
【表4】
【0058】
(表4)から明らかなように、実施例6乃至8の重量変化量(g)はいずれも0.01g増加しており、このことから、いずれの場合も、付着している切削油が非常に少ないことが分かる。
ここで、実施例6乃至8の重量が増加しているのは、焼成処理時に、酸化が進んだためと考えられる。また、重量変化量が非常に小さいことから(表1)に記載された比較例3の従来法の乾燥方法では、切削油成分の残留率が約35.7%あり、(表4)に記載された実施例6乃至8の金属切粉の切削油成分の残留率は、ほとんど無いと考えられるので、従来法の乾燥方法よりも実施例6乃至実施例8の水溶性切削油A1種乃至A3種のいずれに対しても優れた乾燥性を示すことが分かる。
<触媒による乾燥性の評価>
【実施例9】
【0059】
乾燥処理材として、FCC廃触媒の代わりに活性白土を用いた以外は実施例6と同様の方法で乾燥した実施例9の金属切粉を得た。また、実施例6と同様に焼成処理と重量の測定を行った。重量測定の結果を(表5)に示す。
【実施例10】
【0060】
乾燥処理材として、FCC廃触媒の代わりに活性アルミナを用いた以外は実施例6と同様の方法で乾燥した実施例10の金属切粉を得た。また、実施例6と同様に焼成処理と重量の測定を行った。重量測定の結果を(表5)に示す。
【0061】
【表5】
【0062】
(表5)から明らかなように、実施例9、実施例10の重量変化量(g)は、いずれの場合も、付着している切削油が非常に少ないことが分かる
ここで、実施例9の重量が増加しているのは、金属切粉表面の酸化が進んだためと考えられる。また、実施例9の活性白土や、実施例10の活性アルミナを触媒として用いた場合にも本願の乾燥方法が従来の乾燥方法より優れた乾燥性を示すことがわかる。
<温度による乾燥性の評価>
【実施例11】
【0063】
加熱温度を25℃とした以外は実施例6と同様の方法で乾燥を行い実施例11の金属切粉を得た。また、実施例6と同様に焼成処理と重量の測定を行った。重量測定の結果を(表6)に示す。
【実施例12】
【0064】
加熱温度を150℃とした以外は実施例6と同様の方法で乾燥を行い実施例12の金属切粉を得た。また、実施例6と同様に焼成処理と重量の測定を行った。重量測定の結果を(表6)に示す。
【実施例13】
【0065】
加熱温度を250℃とした以外は実施例6と同様の方法で乾燥を行い実施例13の金属切粉を得た。また、実施例6と同様に焼成処理と重量の測定を行った。重量測定の結果を(表6)に示す。
【実施例14】
【0066】
加熱温度を450℃とした以外は実施例6と同様の方法で乾燥を行い実施例14の金属切粉を得た。また、実施例6と同様に焼成処理と重量の測定を行った。重量測定の結果を(表6)に示す。
【0067】
【表6】
【0068】
(表6)から明らかなように、実施例11乃至14の重量変化量(g)は、いずれの場合も、付着している切削油が非常に少ないことが分かる。
ここで、実施例11及び実施例14の重量が増加しているのは、酸化が進んだためと考えられる。また、実施例6は、実施例1で用いた温度で乾燥をおこなっているので、実施例11乃至実施例14の25℃〜450℃の範囲で本願の乾燥方法が、従来の乾燥方法より優れた乾燥性を示すことがわかった。
<時間による乾燥性の評価>
【実施例15】
【0069】
乾燥時間を30秒とした以外は、実施例6と同様の方法で乾燥を行い実施例15の金属切粉を得た。また、実施例6と同様に焼成処理と重量の測定を行った。重量測定の結果を(表7)に示す。
【実施例16】
【0070】
乾燥時間を5分とした以外は、実施例6と同様の方法で乾燥を行い実施例16の金属切粉を得た。また、実施例6と同様に焼成処理と重量の測定を行った。重量測定の結果を(表7)に示す。
【0071】
【表7】
【0072】
(表7)から明らかなように、実施例15、実施例16の重量変化量(g)は、いずれの場合も、付着している切削油が非常に少ないことが分かる。
実施例15、実施例16はいずれも、実施例1及び比較例3の乾燥方法よりも短い時間で乾燥を行っていることから、本願の乾燥方法が、従来の乾燥方法よりも、短い時間で優れた乾燥性を示すことがわかった。
尚、本実施例では、FCC廃触媒を用いた金属切粉の乾燥について説明をしたが、FCC廃触媒と同様の物性を示す他の個体酸触媒や固体塩基触媒を用いても同様の結果が得られることは明らかである。
【産業上利用可能性】
【0073】
以上のように、本発明によれば、金属切粉を常温でも乾燥できるとともに、250℃〜450℃で固体酸触媒や固体塩基触媒を用いることで黒煙や発塵の極めて少ない高い乾燥性を備えると共に、省エネルギー性に優れ、金属切粉表面の酸化が少なく原料金属の高い再生歩留まりを得ることができる優れた金属切粉の乾燥方法を提供することができた。
また、本発明の金属切粉乾燥装置によれば、高い乾燥性を備え、原料金属の再生時に溶融炉での黒煙や発火の発生が少なく、金属切粉表面の粉塵爆発の原因となる微粉末を乾燥処理材と一緒に分離するので、粉塵爆発の危険性を回避することができる安全性に優れた金属切粉乾燥装置を提供することができた。
【符号の説明】
【0074】
1 金属切粉乾燥装置
2 乾燥炉
3 加熱部
4 断熱部
5 混合羽根
6 支持部
7 混合部
7, 駆動部
8 投入側接続部
9 乾燥処理材投入部
10 金属切粉投入部
11 ガス導入部
12 取出し側接続部
13 排ガス排気部
14 取出し部
14´ スライドゲート
15 分離部
16 搬送部
16´乾燥処理剤排出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6