アンテナは、第1送信アンテナと、第1送信アンテナの短手方向に移動した位置に設けられた第3送信アンテナとを有する。そして、第1送信アンテナおよび第3送信アンテナの間の位置に、長手方向の一部が第1および第3送信アンテナの長手方向の一部と重複するように設けられた第2送信アンテナを有する。さらに、第3送信アンテナの位置を中心として第2送信アンテナの位置に対して点対称となる位置に第4送信アンテナを有する。アンテナは、各長手方向の一部が第2送信アンテナの長手方向の一部と重複するように複数本の受信アンテナを有する。路面に対して垂直方向に位相差のある送信波を出力する送信アンテナと、路面に対して水平方向に位相差のある反射波を受信する受信アンテナとを一つのアンテナに設けられる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
【0027】
<第1の実施の形態>
<1.車両全体図>
図1は、車両CRの全体図である。車両CRは、後述する車両制御システム1のレーダ装置10と車両制御装置20とを主に備える。車両CRは、車両CRの前方のバンパー近傍にレーダ装置10を備えている。レーダ装置10は、一回の走査で路面に対する水平方向、および、路面に対する垂直方向の所定範囲を走査する。その結果、レーダ装置10は、物標の路面に対する水平方向の位置(縦距離および横距離)と、物標の路面に対する垂直方向の高さと、車両CRに対する物標の相対速度とを含む情報(以下、「物標情報」という。)を導出する。レーダ装置10による物標情報の導出処理の詳細は後述する。車両制御装置20は、車両CRの内部に設けられている。車両制御装置20は、車両CRの各装置を制御するECU(Electronic Control Unit)である。
【0028】
<2.システムブロック図>
図2は、車両制御システム1のブロック図である。車両制御システム1は、車両CRの挙動を制御するシステムである。レーダ装置10と、車両制御装置20と、車速センサ21と、ステアリングセンサ22と、スロットル23と、ブレーキ24とを有している。レーダ装置10と車両制御装置20とは電気的に接続されている。車両制御装置20は、車速センサ21と、ステアリングセンサ22と、スロットル23と、ブレーキ24と電気的に接続されている。
【0029】
車両制御装置20は、複数種類の車両制御の中から車両CRの走行状況等に応じて、少なくとも1つの車両制御を行う。車両制御の例としてACC制御とPCS制御とがある。車両制御装置20は、車両CRが走行する自車線内で前方車両に追従して走行する。具体的には、車両制御装置20は、車両CRの走行に伴いスロットル23、および、ブレーキ24の少なくとも一の装置を制御する。そして車両制御装置20は、前方車両との間で所定の車間距離を確保した状態で車両CRを前方車両に追従して走行させる。このように車両CRが前方車両との所定の車間距離を確保した状態で、前方車両を追従走行させる制御がACC制御である。
【0030】
また車両制御装置20は、車両CRと他車両との衝突に備え、車両CRの乗員を保護する。具体的には、車両制御装置20は、車両CRが他車両に衝突する危険性がある場合に、例えば次のように車両CRを制御する。車両制御装置20は、車両CRの乗員に対して図示しない警報器を用いて警告する。車両制御装置20は、ブレーキ24を制御して車両CRの速度を低下させる。車両制御装置20は、車室内のシートベルトにより乗員を座席に固定する。その結果、車両CRと他車両とが衝突した場合でも、車両CRの乗員への衝撃が軽減される。このように車両CRの乗員を保護する制御がPCS制御である。
【0031】
車速センサ21は、車両CRの車軸の回転数に基づき車両CRの速度に応じた信号を車両制御装置20に出力する。車両制御装置20は、車速センサ21からの信号に基づき現時点の車両CRの速度を導出する。
【0032】
ステアリングセンサ22は、車両CRのドライバーの操作によるステアリングホイールの回転角を導出する。その結果、ステアリングセンサ22は、車両CRの車体の角度の情報を車両制御装置20に出力する。車両制御装置20は、ステアリングセンサ22から取得した情報に基づき車両CRの走行する自車線のカーブ半径の値を導出する。
【0033】
スロットル23は、車両CRのドライバーの操作により車両CRの速度を加速させる。またスロットル23は、車両制御装置20の制御により車両CRの速度を加速させる。例えばスロットル23は、車両CRと前方車両との縦距離を一定値に保つように車両CRの速度を加速させる。
【0034】
ブレーキ24は、車両CRのドライバーの操作により車両CRの速度を減速させる。またブレーキ24は、車両制御装置20の制御により車両CRの速度を減速させる。例えばブレーキ24は、車両CRと前方車両との縦距離を一定値に保つように車両CRの速度を減速させる。
【0035】
次に、レーダ装置10について説明する。レーダ装置10は、アンテナ101と、ミキサ13(13a〜13d)と、AD(Analog to Digital)変換器14(14a〜14d)と、信号生成部15と、発振器16と、スイッチ17と、信号処理部18とを有する。
【0036】
アンテナ101は、送信アンテナ11と、受信アンテナ12とを有している。送信アンテナ11は、送信アンテナ11a、11b、11c、および、11dの4本のアンテナで構成される。送信アンテナ11は、スイッチ17のスイッチングにより所定周期で切り替えられる。その結果、4本の送信アンテナのうちの少なくともいずれか1本の送信アンテナが送信波を出力する。
【0037】
受信アンテナ12は、受信アンテナ12a、12b、12c、および、12dの4本のアンテナで構成される。4本の受信アンテナは、物標からの反射波を受信する。
【0038】
<2−1.アンテナ構成>
ここで、
図3を用いて、アンテナ101の構成を具体的に説明する。
図3は、アンテナ101の構成を説明する図である。
図3では、XY座標軸を用いて方向を説明する。XY座標軸は、送信アンテナ11および受信アンテナ12の少なくとも一方のアンテナに相対的に固定される。誘電体基板102の基板面に設けられる送信アンテナ11および受信アンテナ12の短手方向(以下、「短手方向」という。)がX軸方向に対応する。送信アンテナ11および受信アンテナ12の長手方向(以下、「長手方向」という。)がY軸方向に対応する。
【0039】
アンテナ101には、誘電体基板102の基板面に送信アンテナ11と、受信アンテナ12とが設けられている。誘電体基板102は、短手方向(X軸方向)に幅W0(例えば、約6.0cm)、長手方向(Y軸方向)に長さL0(例えば、約6.0cm)の略正方形の形状の基板である。
【0040】
次に、送信アンテナ11の各送信アンテナ(11a〜11d)について説明する。各送信アンテナ(11a〜11d)は、図示しない複数の伝送線路にアンテナ素子が複数設けられた構成である。送信アンテナ11の伝送線路は、送信信号をアンテナ素子に伝達する。アンテナ素子は、送信信号に基づく送信波を出力する。
【0041】
送信アンテナ11aは、短手方向(X軸方向)において誘電体基板102の基板面に向かって右側(+X側)の位置で、長手方向(Y軸方向)において誘電体基板102の略中央付近の位置に設けられている。言い換えると、送信アンテナ11aは、誘電体基板102の右端の略中央に設けられている。送信アンテナ11aは、短手方向(X軸方向)に幅W11(例えば、約0.6cm)、長手方向(Y軸方向)に長さL1(例えば、約1.8cm)の略長方形の形状のアンテナである。
【0042】
送信アンテナ11bは、送信アンテナ11aと後述する送信アンテナ11cの間に設けられている。送信アンテナ11bは、短手方向(X軸方向)において誘電体基板102の基板面に向かって送信アンテナ11aの左側(−X側)の位置に設けられている。言い換えると、送信アンテナ11bは、短手方向(X軸方向)において送信アンテナ11aに隣接する位置に設けられている。
【0043】
また、送信アンテナ11bは、長手方向(Y軸方向)において誘電体基板102の基板面に向かって送信アンテナ11aよりも上側(+Y側)の位置に設けられている。言い換えると、送信アンテナ11bは、長手方向(Y軸方向)において送信アンテナ11aの一部と重複する位置に設けられている。
【0044】
送信アンテナ11bは、短手方向(X軸方向)に幅W12(例えば、約1.0cm)、長手方向(Y軸方向)に長さL1(例えば、約1.8cm)の略長方形の形状のアンテナである。送信アンテナ11bは、長手方向(Y軸方向)において送信アンテナ11aに対して長さL2(例えば、約0.9cm)だけ誘電体基板102の基板面に向かって上側(+Y側)の位置に設けられている。長さL2は、送信アンテナ11aの長さL1のうちの約半分の長さである。
【0045】
送信アンテナ11cは、短手方向(X軸方向)において誘電体基板102の基板面に向かって送信アンテナ11bの左側(−X側)の位置に設けられている。言い換えると、送信アンテナ11cは、短手方向(X軸方向)において送信アンテナ11bに隣接する位置に設けられている。
【0046】
また、送信アンテナ11cは、長手方向(Y軸方向)において誘電体基板102の基板面に向かって送信アンテナ11bよりも下側(−Y側)の位置に設けられている。言い換えると、送信アンテナ11cは、長手方向(Y軸方向)において送信アンテナ11bの一部と重複する位置に設けられている。
【0047】
送信アンテナ11cは、短手方向(X軸方向)に幅W11(例えば、約0.6cm)、長手方向(Y軸方向)に長さL1(例えば、約1.8cm)の略長方形の形状のアンテナである。つまり、送信アンテナ11cは、送信アンテナ11aと略同一の形状のアンテナである。なお、後述する水平角度導出時の位相の折り返し対策のために、送信アンテナ11aと11cは送信波の出力方向が水平方向において左右にずれている。送信アンテナ11cは、長手方向(Y軸方向)において送信アンテナ11bに対して長さL2(例えば、約0.9cm)だけ誘電体基板102の基板面に向かって下側(−Y側)の位置に設けられている。長さL2は、送信アンテナ11bの長さL1のうちの約半分の長さである。
【0048】
なお、送信アンテナ11cは、送信アンテナ11aの位置から短手方向(X軸方向)において誘電体基板102の基板面に向かって左側(−X側)に移動した位置に設けられているともいえる。
【0049】
送信アンテナ11dは、短手方向(X軸方向)において誘電体基板102の基板面に向かって送信アンテナ11cの左側(−X側)の位置に設けられている。言い換えると、送信アンテナ11dは、短手方向(X軸方向)において送信アンテナ11cに隣接する位置に設けられている。
【0050】
また、送信アンテナ11dは、長手方向(Y軸方向)において誘電体基板102の基板面に向かって送信アンテナ11cよりも下側(−Y側)の位置に設けられている。言い換えると、送信アンテナ11dは、長手方向(Y軸方向)において送信アンテナ11cの一部と重複する位置に設けられている。
【0051】
送信アンテナ11dは、短手方向(X軸方向)に幅W12(例えば、約1.0cm)、長手方向(Y軸方向)に長さL1(例えば、約1.8cm)の略長方形の形状のアンテナである。送信アンテナ11dは、長手方向(Y軸方向)において送信アンテナ11cに対して長さL2(例えば、約0.9cm)だけ誘電体基板102の基板面に向かって下側(−Y側)の位置に設けられている。長さL2は、送信アンテナ11cの長さL1のうちの約半分の長さである。
【0052】
また、送信アンテナ11dは、送信アンテナ11bとの位置関係でみると、送信アンテナ11cの位置を対称の中心位置として送信アンテナ11bに対して対称な位置に設けられている。これにより、レーダ装置10は、アンテナ101の面積を拡大することなく長手方向(Y軸方向)の複数の送信アンテナを設けることができる。
【0053】
さらに、4本の送信アンテナ(11a〜11d)は、長手方向(Y軸方向)に左側で3段、右側で2段の階段状に設けられている。言い換えると、4本の送信アンテナ(11a〜11d)は、への字を左右逆にした逆への字型に設けられている。これにより送信アンテナ11bから出力される送信波と、送信アンテナ11cから出力される送信波と、送信アンテナ11dから出力される送信波との間で長手方向(Y軸方向)のずれに対応する位相差が生じる。これにより、レーダ装置10は、物標の路面に対する垂直方向の高さを導出する送信波を出力できる。
【0054】
次に受信アンテナ12の各受信アンテナ(12a〜12d)について説明する。各受信アンテナ(12a〜12d)は、図示しない複数の伝送線路にアンテナ素子が複数設けられた構成である。受信アンテナ12のアンテナ素子は、反射波を受信して伝送線路に受信信号を伝達する。
【0055】
受信アンテナ12は、誘電体基板102の基板面に設けられている。受信アンテナ12は、4本の受信アンテナ12a〜12dを含むアンテナである。各受信アンテナ(12a〜12d)は、短手方向(X軸方向)に幅W13(例えば、約0.5cm)、長手方向(Y軸方向)に長さL1(例えば、約1.8cm)の略長方形の形状のアンテナである。受信アンテナ12は、短手方向(X軸方向)において誘電体基板102に向かって左側(−X側)の位置に設けられている。また、受信アンテナ12は、長手方向(Y軸方向)において誘電体基板102に向かって上側(+Y側)の位置に設けられている。言い換えると、受信アンテナ12は、誘電体基板102の左上端に設けられている。
【0056】
受信アンテナ12の各受信アンテナ(12a〜12d)は、短手方向(X軸方向)においてそれぞれが隣接する位置に設けられている。また、各受信アンテナ(12a〜12d)は、長手方向(Y軸方向)においてそれぞれが同じ位置に設けられている。そして、各アンテナ12(12a〜12d)は、長手方向(Y軸方向)において送信アンテナ11bの一部と重複する位置に設けられている。言い換えると、3本の送信アンテナ11b〜11dで構成される階段状のデッドスペースに各受信アンテナ(12a〜12d)が配置される。これにより、送信アンテナ11と受信アンテナ12とを同一の誘電体基板102の基板面の比較的少ないスペースに設けることができる。その結果、レーダ装置10のアンテナ101の面積は、拡大することなくレーダ装置10の小型化を実現できる。そして、送信アンテナ11および受信アンテナ12が設けられたアンテナ101を略正方形の形状とでき、アンテナ101を搭載するレーダ装置10自体も小型化できる。
【0057】
<2−2.送信範囲>
次に、送信アンテナ11の各送信アンテナ(11a〜11d)の送信範囲について
図4〜
図8を用いて説明する。
図4〜
図8においては、xyz座標軸を用いて方向を説明する。xyz座標軸は、車両CRに対して相対的に固定される。車両CRの車幅方向が、x軸方向に対応する。車両CRの進行方向が、y軸方向に対応する。車両CRの高さ方向(車高方向)が、z軸方向に対応する。なお、
図4〜
図6は、車両CRの高さ方向(z軸方向)の上方(+z側)から下方(−z側)を見た図である。
図7および
図8は、車両CRの車幅方向(x軸方向)の左側(−x側)から右側(+x側)を見た図である。
【0058】
図4は、送信アンテナ11bおよび11dの自車線RCの路面(以下、「路面」という。)に対する水平方向の送信範囲を示す図である。
図4には、自車線RC上を走行する車両CRの前方(+y側)に送信範囲Tr2が示されている。送信範囲Tr2は、送信アンテナ11bから出力される送信波の範囲である。ここで、自車線RCの幅は約3.6mである。自車線RCの右側には、自車線RCに隣接している車線RR(以下、「右車線RR」という。)がある。自車線RCの左側には、自車線RCに隣接している車線RL(以下、「左車線RL」という。)がある。
【0059】
第2基準軸Ce2は、車両CRの進行方向(+y側)に延伸する軸であり、送信範囲Tr2の略中央に位置している。送信範囲Tr2は、第2基準軸Ce2の路面に対する水平方向の角度を±0°とした場合、車両CRの車幅方向(x軸方向)の右側(+x側)に水平方向の角度約+21°、左側(−x側)に水平方向の角度約−21°の範囲を有する。以下では、各基準軸の角度を±0°とする車両CRの車幅方向(x軸方向)の角度を「水平角度」という。水平角度は、路面に対する水平方向の角度ともいえる。なお、第2基準軸Ce2の長さは約150mとなる。つまり、送信範囲Tr2は、縦距離約150m以内で水平角度約±21°以内の範囲となる。水平角度約±21°以内は、車両CRが自車線RCの略中央に位置する場合に、自車線RCの幅(約3.6m)を含む範囲である。送信アンテナ11bは、送信範囲Tr2の範囲内に送信波を出力する。その結果、送信範囲Tr2の範囲内に存在する物標からの反射波を受信アンテナ12が受信する。
【0060】
送信範囲Tr4は、送信アンテナ11dから出力される送信波の範囲である。第4基準軸Ce4は、第2基準軸Ce2と同様に送信範囲(送信範囲Tr4)の略中央に位置している。送信範囲Tr4は、第4基準軸Ce4の水平角度を±0°とした場合、車両CRの車幅方向(x軸方向)の右側(+x側)に水平角度約+21°、左側(−x側)に水平角度約−21°の範囲を有する。なお、第4基準軸Ce4の長さは約150mとなる。つまり、送信範囲Tr4は、縦距離約150m以内で水平角度約±21°以内の範囲となる。水平角度約±21°以内は、車両CRが自車線RCの略中央に位置する場合に、自車線RCの幅(約3.6m)を含む範囲である。送信アンテナ11dは、送信範囲Tr4の範囲内に送信波を出力する。その結果、送信範囲Tr4の範囲内に存在する物標からの反射波を受信アンテナ12が受信する。
【0061】
図5は、送信アンテナ11aの路面に対する水平方向の送信範囲を示す図である。
図5には、自車線RC上を走行する車両CRの右前方(+y側および+x側)に送信範囲Tr1が示されている。送信範囲Tr1は、送信アンテナ11aから出力される送信波の範囲である。第1基準軸Ce1は、車両CRの進行方向(+y側)に対して車幅方向(x軸方向)の右側(+x側)に傾いて延伸する軸であり、送信範囲Tr1の略中央に位置している。第1基準軸Ce1は、上述の第2基準軸Ce2の水平角度を±0°とした場合、水平角度約+7°に位置する。また、第1基準軸Ce1の水平角度を±0°とした場合、送信範囲Tr1の右端は、水平角度約+38°に位置する。言い換えると、第2基準軸Ce2の水平角度を±0°とした場合、送信範囲Tr1の右端は、水平角度約+45°に位置する。
【0062】
そして、第1基準軸Ce1の水平角度を±0°とした場合、送信範囲Tr1の左端は、水平角度約−38°に位置する。なお、第1基準軸Ce1の長さは約80mとなる。つまり、送信範囲Tr1は、縦距離約80m以内で、第1基準軸Ce1の水平角度を±0°とした場合、水平角度約±38°以内の範囲となる。水平角度約±38°以内は、車両CRが自車線RCの略中央に位置する場合に、自車線RCの幅(約3.6m)と右車線RR(約3.6m)の幅に相当する。言い換えると、水平角度約±38°以内は、車両CRが自車線RCの略中央に存在する場合の横距離約-1.8m〜約+5.4mに相当する。送信アンテナ11aは、送信範囲Tr1の範囲内に送信波を出力する。その結果、送信範囲Tr1の範囲内に存在する物標からの反射波を受信アンテナ12が受信する。
【0063】
図6は、送信アンテナ11cの路面に対する水平方向の送信範囲を示す図である。
図6には、自車線RC上を走行する車両CRの左前方(+y側および−x側)に送信範囲Tr3が示されている。送信範囲Tr3は、送信アンテナ11cから出力される送信波の範囲である。第3基準軸Ce3は、車両CRの進行方向(+y側)に対して車幅方向(x軸方向)の左側(−x側)に傾いて延伸する軸であり、送信範囲Tr3の略中央に位置している。第3基準軸Ce3は、上述の第2基準軸Ce2の水平角度を±0°とした場合、水平角度約−7°に位置する。また、第3基準軸Ce3の水平角度を±0°とした場合、送信範囲Tr3の左端は、水平角度約−38°に位置する。言い換えると、第2基準軸Ce2の水平角度を±0°とした場合、送信範囲Tr3の左端は、水平角度約−45°に位置する。
【0064】
そして、第3基準軸Ce3の水平角度を±0°とした場合、送信範囲Tr3の右端は、水平角度約+38°に位置する。なお、第3基準軸Ce3の長さは約80mとなる。つまり、送信範囲Tr3は、縦距離約80m以内で、第3基準軸Ce3の水平角度を±0°とした場合、水平角度約±38°以内の範囲となる。水平角度約±38°以内は、車両CRが自車線RCの略中央に位置する場合に、自車線RC(約3.6m)の幅と左車線RL(約3.6m)の幅に相当する。言い換えると、水平角度約±38°以内は、車両CRが自車線RCの略中央に存在する場合の横距離約-5.4m〜約+1.8mに相当する。送信アンテナ11cは、送信範囲Tr3の範囲内に送信波を出力する。その結果、送信範囲Tr3の範囲内に存在する物標からの反射波を受信アンテナ12が受信する。
【0065】
上記の内容から送信範囲Tr2およびTr4は、送信範囲Tr1およびTr3と比べて送信波の出力される距離が長く、水平角度が狭い範囲となる。言い換えると、送信範囲Tr1およびTr3は、送信範囲Tr2およびTr4と比べて送信波の出力される距離が短く、水平角度が広い範囲となる。
【0066】
そして、車両制御装置20は、送信範囲Tr1〜Tr4の全送信範囲から導出された物標情報に基づき、車両CRに対して必要な制御を行う。車両制御装置20は、他車両を追従走行するACCの制御を車両CRに対して行う。他車両は、例えば、車両CRの走行する車線内を車両CRと同じ方向に走行し、比較的遠方(例えば、100m)に存在する物標である。他車両は、送信範囲Tr1〜Tr4の少なくともいずれかの範囲に存在する。また、車両制御装置20は、車両CRと他車両との衝突を防止等するために車両CRに対してPCS制御を行う。他車両は、例えば、所定速度(例えば、60km/h)以上で車両CRに接近し、近傍の位置(例えば、30m以下)に存在する物標である。他車両は、送信範囲Tr1〜Tr4の少なくともいずれかの範囲に存在する。このように、レーダ装置10は、
図3で説明したアンテナ101の送信アンテナ11および受信アンテナ12の構成を用いて、車両制御装置20の複数種類の車両制御のうち少なくとも一つの車両制御に必要な物標情報を導出するための送信波を出力できる。これにより、車両制御装置20は、複数種類の車両制御のうち物標情報に基づき適正な車両制御を行える。
【0067】
図7は、送信アンテナ11bおよび11dの路面に対する垂直方向の送信範囲Tr2およびTr4を示す図である。以下では、送信範囲Tr2、および、Tr4の垂直方向の送信範囲について説明するが、2つの送信範囲は略同一の送信範囲となるため、送信範囲Tr2を例に説明する。
図7には、自車線RC上を走行する車両CRの前方(+y側)に送信範囲Tr2が示されている。送信範囲Tr2は、路面に対する第2基準軸Ce2の垂直方向の角度を±0°とした場合、車両CRの高さ方向の上側(+z側)に垂直方向の角度約+8.5°、下側(−z側)に垂直方向の角度約−8.5°の範囲を有する。以下では、各基準軸の角度を±0°とし、車両CRの高さ方向(z軸方向)の角度を「垂直角度」という。垂直角度は、路面に対する垂直方向の角度ともいえる。なお、第2基準軸Ce2は、路面と略平行でありその長さは約150mとなる。つまり、送信範囲Tr2は、縦距離約150m以内で垂直角度約±8.5°以内の範囲となる。送信アンテナ11bは、送信範囲Tr2の範囲内に送信波を出力する。その結果、送信範囲Tr2の範囲内に存在する物標からの反射波を受信アンテナ12が受信する。
【0068】
図8は、送信アンテナ11cの路面に対する垂直方向の送信範囲Tr3を示す図である。
図8には、自車線RC上を走行する車両CRの前方(+y側)に送信範囲Tr3が示されている。送信範囲Tr3は、第3基準軸Ce3の垂直角度を±0°とした場合、車両CRの高さ方向の上側(+z側)に垂直角度約+8.5°、下側(−z側)に垂直角度約−8.5°の範囲を有する。なお、第3基準軸Ce3は、路面と略平行でありその長さは約80mとなる。つまり、送信範囲Tr3は、縦距離約80m以内で垂直角度約±8.5°以内の範囲となる。送信アンテナ11cは、送信範囲Tr3の範囲内に送信波を出力する。その結果、送信範囲Tr3の範囲内に存在する物標からの反射波を受信アンテナ12が受信する。
【0069】
上記の内容から送信範囲Tr2およびTr4は、送信範囲Tr3と比べて縦距離が長く、垂直角度が略同一の範囲となる。言い換えると、送信範囲Tr3は、送信範囲Tr2およびTr4と比べて縦距離が短く、垂直角度が略同一の範囲となる。
【0070】
図2に戻り、ミキサ13は、ミキサ13a〜13dの4つのミキサを有する。ミキサ13は、各受信アンテナ(12a〜12d)に設けられている。ミキサ13は、受信アンテナ12で受信した反射波に対応する受信信号と、送信波に対応する送信信号とを混合する。ミキサ13は、受信信号と送信信号との差の信号であるビート信号をAD変換器14に出力する。
【0071】
AD変換器14は、AD変換器14a〜14dの4つのAD変換器を有する。AD変換器14は、各受信アンテナ(12a〜12d)に設けられている。AD変換器14は、ミキサ13から入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換する。具体的には、AD変換器14は、アナログ信号であるビート信号を所定周期でサンプリングする。AD変換器14は、サンプリングしたビート信号を量子化し、デジタル信号に変換する。AD変換器14は、デジタル信号を信号処理部18に出力する。
【0072】
信号生成部15は、変調用の三角波信号を生成し、発振器16に出力する。発振器16は、三角波信号をミリ波帯(例えば、76.5GHz)の信号に変調し、スイッチ17に出力する。
【0073】
スイッチ17は、各送信アンテナ(11a〜11d)と接続される。スイッチ17は、接続する送信アンテナを所定のタイミング(例えば、5msec)ごとに切替える。スイッチ17は、ミリ波帯の信号である送信信号を送信アンテナ11a、11b、11c、および、11dのいずれかのアンテナに出力する。
【0074】
<2−3.送信波出力タイミング>
ここで、送信アンテナ11a〜11dの送信波の出力タイミングについて、
図9を用いて説明する。
図9は、各送信アンテナ(11a〜11d)の送信波の出力タイミングを説明するグラフである。
図9の縦軸は周波数[GHz]を、横軸は時間[msec]を表す。図中の送信信号TSは、中心周波数を例えば、76.5GHzとして、第1の所定周波数(例えば76.6GHz)まで上昇した後に第2の所定周波数(例えば、76.4GHz)まで下降をするように200MHzの間で一定の変化を繰り返す信号である。
【0075】
送信信号TSの送信区間Tx1は、送信アンテナ11aから送信波が出力される区間である。言い換えると送信アンテナ11aは、時刻t0〜t1の第1送信区間Tx1の間、送信波を出力する。スイッチ17は、時刻t1〜t1aの間で送信波を出力するアンテナを送信アンテナ11aから送信アンテナ11cに切替える。
【0076】
第3送信区間Tx3は、送信アンテナ11cから送信波が出力される区間である。言い換えると送信アンテナ11cは、時刻t1a〜t2の第3送信区間Tx3の間、送信波を出力する。
【0077】
第1処理区間Tx5は、後述する信号処理部18が物標からの反射波に基づいて、物標の路面に対する水平方向の位置を導出する区間である。
【0078】
第1送信区間Tx1、第3送信区間Tx3、および、第1処理区間Tx5を含む区間が第1区間Tx10となる。第1区間Tx10は、時刻t0〜t3の区間である。第1区間Tx10では、送信アンテナ11a、送信アンテナ11cの順で送信波が出力される。また、第1区間Tx10では、信号処理部18が送信波に対する物標からの反射波に基づいて、物標の路面に対する水平方向の位置を導出する。
【0079】
スイッチ17は、時刻t3からt3aの間で送信波を出力するアンテナを送信アンテナ11cから送信アンテナ11aに切替える。
【0080】
第1送信区間Tx1aは、送信アンテナ11aから送信波が出力される区間である。言い換えると送信アンテナ11aは、時刻t3a〜t4の第1送信区間Tx1aの間、送信波を出力する。スイッチ17は、時刻t4からt4aの間で送信波を出力するアンテナを送信アンテナ11aから送信アンテナ11bに切替える。
【0081】
第2送信区間Tx2aは、送信アンテナ11bから送信波が出力される区間である。言い換えると送信アンテナ11bは、時刻t4a〜t5の第2送信区間Tx2aの間、送信波を出力する。スイッチ17は、時刻t5からt5aの間で送信波を出力するアンテナを送信アンテナ11bから送信アンテナ11cに切替える。
【0082】
第3送信区間Tx3aは、送信アンテナ11cから送信波が出力される区間である。言い換えると送信アンテナ11cは、時刻t5a〜t6の第3送信区間Tx3aの間、送信波を出力する。スイッチ17は、時刻t6からt6aの間で送信波を出力するアンテナを送信アンテナ11cから送信アンテナ11dに切替える。
【0083】
第4送信区間Tx4aは、送信アンテナ11dから送信波が出力される区間である。言い換えると送信アンテナ11dは、時刻t6a〜t7の第4送信区間Tx4aの間、送信波を出力する。
【0084】
第2処理区間Tx5aは、信号処理部18が物標からの反射波に基づいて、物標の路面に対する水平方向の位置、および、垂直方向の高さを導出する区間である。
【0085】
第1送信区間Tx1a、第2送信区間Tx2a、第3送信区間Tx3a、第4送信区間Tx4a、および、第2処理区間Tx5aを含む区間が第2区間Tx11となる。第2区間Tx11は、時刻t3a〜t8の区間である。第2区間Tx11では、送信アンテナ11a、11b、11c、11dの順で送信波が出力される。また、第2区間Tx11では、信号処理部18が送信波に対する物標からの反射波に基づいて、物標の路面に対する水平方向の位置、および、垂直方向の高さを導出する。
【0086】
つまり、第1送信区間Tx1aおよび第3送信区間Tx3aの受信信号に基づき水平方向の位置を導出し、第2送信区間Tx2a、第3区間Tx3a、第3送信区間Tx3a、および、第4送信区間Tx4aの受信信号に基づき垂直方向の高さを導出する。このように物標の路面に対する水平方向の位置、および、垂直方向の高さの導出の両方の処理に送信アンテナ11b、11c、および、11dの複数本の送信アンテナを兼用することで、送信アンテナ11の本数を減少させられる。その結果、レーダ装置10は、比較的小型化されたアンテナ101により物標の路面に対する水平方向の位置および垂直方向の高さを導出できる。
【0087】
スイッチ17は、時刻t8からt8aの間で送信波を出力するアンテナを送信アンテナ11cから送信アンテナ11aに切替える。
【0088】
なお、第1区間Tx10および第2区間Tx11を含む周期区間Tx100が物標導出処理の1周期となる。言い換えると、時刻t8aから物標導出処理の次の周期が開始する。次の周期では、前の周期と同様に第1区間で送信アンテナ11a、11cの順で送信波が出力され、物標導出処理が行われる。そして、第2区間で送信アンテナ11a、11b、11c、11dの順で送信波が出力され、物標導出処理が行われる。なお、周期区間Tx100の時間は、例えば110msecである。第1区間Tx10の時間が、例えば50msecであり、第2区間Tx11の時間が、例えば60msecである。また送信アンテナ11の1本の送信アンテナから送信波が出力される時間は、例えば5msecである。
【0089】
また、上述のように1周期の間の第2区間Tx11では、4つの送信アンテナ(11a〜11d)から送信波を出力し、物標の水平方向の位置および垂直方向の高さを導出する。これに対して、1周期の間の第1区間Tx10では、2つの送信アンテナ(11aおよび11c)から送信波を出力して物標の水平方向の位置のみを導出するのは次の理由のためである。つまり、送信波の出力に伴いレーダ装置10の内部の回路が発熱し、レーダ装置10の破損を防止するためである。
【0090】
また、水平方向の位置は、車両CRに対して急な前方割り込みを行う他車両等への対応のため比較的高い頻度の導出が要求される。しかし、垂直方向の高さは、道路標識等の上方物が車両CRに対して急な割り込みを行うことはないため、比較的低い頻度の導出でもよい。これにより、レーダ装置10の発熱を防止でき物標導出処理に悪影響を及ぼすことを防止できる。さらに、レーダ装置10は1周期の間に少なくとも物標の水平角度の位置を2回導出でき、物標の垂直方向の高さを1回導出できる。つまり、レーダ装置10は、物標の垂直方向の高さの変化に比べて、物標の水平方向の位置の変化を早期に導出できる。その結果、レーダ装置10から物標情報を受信した車両制御装置20は、ACC制御およびPCS制御の少なくともいずれかの制御において車両制御が必要な物標に対して適切な制御を行える。
【0091】
<2−4.ビート信号導出>
ここで、第1区間Tx10を例に送信信号TSと後述する受信信号RSとに基づくビート信号BSの導出について説明する。
図10は、送信信号TSと受信信号RSとに基づくビート信号BSの導出を説明する図である。
【0092】
なお、
図10の各記号、および、後述する数式各記号は次の内容を示すものである。f
r:距離周波数、f
d:速度周波数、f
o:送信波の中心周波数、△F:周波数偏移幅、f
m:変調波の繰り返し周波数、c:光速(電波の速度)、T:車両CRと物標との電波の往復時間、f
s:送信/受信周波数、R:縦距離、V:相対速度。
【0093】
図10の上段の図は、送信信号TS、および、受信信号RSの信号波形を示す図である。
図10の中段の図は、送信信号TSと受信信号RSとの差分により生じるビート周波数BFを示す図である。
図10下段の図は、ビート周波数BFに対応するビート信号BSを示す図である。
【0094】
図10上段の図は、縦軸が周波数[GHz]、横軸が時間[msec]を示す図である。図中の送信信号TSは、中心周波数をf
0(例えば、76.5GHz)として、所定周波数(例えば76.6GHz)まで上昇した後に所定周波数(例えば、76.4GHz)まで下降をするように200MHzの間で一定の変化を繰り返す。
【0095】
送信信号TSは、所定周波数まで周波数が上昇する区間(以下、「UP区間」という。)を有する。UP区間は、区間U1(時刻t0〜t11)および区間U3(時刻t1a〜t12)が該当する。送信信号TSは、所定周波数まで上昇した後に所定の周波数まで下降する区間(以下、「DOWN区間」という。)を有する。DOWN区間は、区間D1(時刻t11〜t1)および区間D3(時刻t12〜t2)が該当する。そして第1送信区間Tx1は、区間U1および区間D1を含む。第3送信区間Tx3は、区間U3および区間D3を含む。
【0096】
第1送信区間Tx1において送信アンテナ11aから送信波が出力される。送信波は、物標にあたって反射波として受信アンテナ12に受信される。その結果、受信アンテナ12を介して受信信号RSがミキサ13に出力される。なお、受信信号RSについても送信信号TSと同じように所定周波数まで周波数が上昇するUP区間と、所定周波数まで周波数が下降するDOWN区間とがある。また、第3送信区間Tx3では送信アンテナ11cから送信波が出力され、反射波に基づく受信信号RSが受信アンテナ12を介してミキサ13に出力される。
【0097】
なお、車両CRに対する物標の縦距離に応じて、送信信号TSに比べて受信信号RSに時間的な遅れ(時間T)が生じる。さらに、車両CRの速度と物標の速度との間に速度差がある場合は、送信信号TSに対して受信信号RSにドップラーシフト分の差が生じる。
【0098】
図10中段の図は縦軸が周波数[kHz]、横軸が時間[msec]を示す図であり、図中にはUP区間およびDOWN区間の送信信号と受信信号との差を示すビート周波数が示されている。例えば、区間U1ではビート周波数BF1が導出され、区間D1ではビート周波数BF2が導出される。このように各区間において、ビート周波数BFが導出される。
【0099】
図10下段の図は、縦軸が振幅[V]、横軸が時間[msec]を示す図である。図中には、ビート周波数BFに対応するアナログ信号のビート信号BSが示されている。ビート信号BSは、AD変換器14によりアナログ信号からデジタル信号に変換される。
【0100】
なお、
図10では受信アンテナ12が、物標の1つの反射点から反射波を受信した場合のビート信号BSが示されている。これに対して、受信アンテナ12が、物標の複数の反射点から複数の反射波を受信した場合、当該複数の反射波に応じたビート信号BSが導出される。
【0101】
図2に戻り、信号処理部18は、フーリエ変換部18aと、ピーク抽出部18bと、水平角度導出部18cと、縦距離・相対速度導出部18dと、垂直角度導出部18eとを有する。
【0102】
フーリエ変換部18aは、AD変換器によって変換されたデジタル信号を図示しないDSP(Digital Signal Processor)回路によって周波数を分析する。具体的には、フーリエ変換部18aは、デジタル信号を高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)して周波数ごとの信号に分解したFFTデータを生成する。
【0103】
ピーク抽出部18bは、FFTデータにおける周波数ごとの信号うち信号レベルが所定の閾値を超える信号をピーク信号として抽出する。
【0104】
水平角度導出部18cは、物標の路面に対する水平方向の角度を所定の角度推定方式を用いて導出する。具体的には、水平角度導出部18cは、受信アンテナ12a〜12dで受信された受信信号に基づくピーク信号から物標の路面に対する水平方向の角度を導出する。水平角度導出部18cは、物標の路面に対する水平方向の角度を距離・相対速度導出部18dに出力する。
【0105】
<2−5.水平角度導出>
ここで、水平角度導出部18cが、角度推定方式の例としてESPRITを用いた場合の処理について
図11を参照して説明する。レーダ装置10が、角度推定方式としてESPRITを用いた場合、4本の受信アンテナにより略同一の縦距離に位置する3つの物標のそれぞれの水平角度を導出できる。つまり、レーダ装置10は、略同一の縦距離に位置する複数の物標のうち受信アンテナ12の総アンテナ本数から1を減算した数と同じ数の物標の水平角度を導出できる。
図11は、ESPRITの処理概要を説明する図である。
【0106】
ESPRITは、受信アンテナ12a〜12dを位置のずれた2つのサブアレーに分け、この2つのサブアレーの位相差から到来波(反射波)の到来方向を推定する手法である。
【0107】
図11に示すように、K素子リニアアレーがある。到来波数はLとし、第i到来波の角度はθ
i(i=1,2,・・・,L)とする。
【0108】
ESPRITは、回転不変式(rotational invariance)「J
1AΦ=J
2A」に基づき、アレー全体の平行移動によって生じる各到来波の位相回転を推定する手法である。行列J
1、および、行列J
2は、(K−1)×Kの変換行列である。Kは受信アンテナ12の本数である。Aは、それぞれθ
1〜θ
Lを変数とするアレー応答ベクトルからなる方向行列である。Φは、L次の対角行列である。
【0109】
図11に示すように、K素子のリニアアレーにおいて、第1素子から第(K−1)素子はサブアレー#1、第2素子から第K素子はサブアレー#2となる。これにより、上記回転不変式のJ
1Aは、行列Aの1〜(K−1)行目をJ
2Aは行列の2〜K行目を抽出することを意味する。すなわち、J
1Aは、サブアレー#1の方向行列を表す。J
2Aは、サブアレー#2の方向行列を表す。
【0110】
ここで、Aが既知であれば、Φが求められてパスの到来角が推定される。しかしAは、推定すべきものであるため、直接Φを求解することができない。そこで、K次元受信信号ベクトルのK×K共分散行列R
xxを求められる。そして、R
xxが固有値展開され、その結果得られる固有値から、熱雑音電力σ
2よりも大きい固有値に対応する固有ベクトルを用いて信号部分空間行列E
sが生成される。
【0111】
生成された信号部分空間行列E
sと行列Aとは、双方の間に唯一存在するL次の正則行列Tを用いてA=E
sT
−1と表せる。ここで、E
sはK×L行列である。TはL×Lの正則行列である。A=E
sT
−1の式が上記回転不変式に代入されると、(J
1E
s)(TΦT
−1)=J
2E
sが得られる。この式からTΦT
−1を求めて固有値展開すれば、固有値が、Φの対角成分となる。その結果、固有値から到来波の角度を推定される。
【0112】
図2に戻り、距離・相対速度導出部18dは、縦距離および相対速度を導出する。具体的には、距離・相対速度導出部18dは、UP区間のピーク信号とDOWN区間のピーク信号とをペアリングしてペアデータを導出する。そして、距離・相対速度導出部18dは、ペアデータに対応する物標の縦距離を下記(1)式を用いて導出する。また、距離・相対速度導出部18dは、ペアデータに対応する物標の相対速度を下記(2)式を用いて導出する。なお、水平角度導出部18cにより導出された水平角度と縦距離の情報から三角関数を用いた演算により、ペアデータに対応する物標の横距離が導出される。
【0114】
【数2】
なお、距離・相対速導出部18dは、各送信アンテナの送信波に基づく受信信号から物標の距離・相対速度を導出する。例えば、
図9で説明した第2区間Tx11では、フーリエ変換部18aは第2処理区間Tx5aで4本の送信アンテナに対して3つのFFTデータを生成する。4本の送信アンテナに対してFFTデータが3つである理由は、送信アンテナ11bと11dとの送信範囲(Tr2、Tr4)が略同じ範囲のためである。そして、フーリエ変換部18aは、第2処理区間Tx5aにおいて、4本の送信アンテナと4本の受信アンテナにより、3×4=12個のFFTデータを生成する。なお、1本の送信アンテナに対する4本の受信アンテナのFFTデータのピーク信号は、信号レベルおよび周波数等で略同じ特徴を示す。そのため、例えば4つのFFTデータのピーク信号はその信号レベル等を平均して用いる。以下では、説明を簡略化するため、1本の送信アンテナに対する4本の受信アンテナのFFTデータのピーク信号は平均して用いるものとし、4本の送信アンテナに対する3つのFFTデータについて説明する。
【0115】
フーリエ変換部18aは、送信アンテナ11aの第1送信区間Tx1aのFFTデータを生成する。また、フーリエ変換部18aは、送信アンテナ11bの第2送信区間Tx2aと送信アンテナ11dの第4送信区間Tx4aとに基づくFFTデータを生成する。第2送信区間Tx2aと第4送信区間Tx4aとのFFTデータは、例えば、両方の区間に対応するビート信号を平均して導出したFFTデータである。さらに、フーリエ変換部18aは、送信アンテナ11cの第3送信区間Tx3aのFFTデータを生成する。
【0116】
そして、ピーク抽出部18bは、3つのFFTデータからピーク信号を抽出する。ここで、ピーク信号が複数のFFTデータの同じ周波数に存在する場合、信号レベルの高いピーク信号がピーク抽出の対象とする。その結果、ピーク抽出部18bは、送信アンテナ11a〜11dに対応する送信範囲Tr1、Tr2、Tr3、および、Tr4のすべての送信範囲の物標に対応するピーク信号を抽出できる。そのため、距離・相対速度導出部18dは、送信アンテナ11a〜11dの全送信範に存在する物標の距離・相対速度を導出できる。また、水平角度導出部18cは、送信アンテナ11a〜11dの全送信範囲に存在する物標の角度から横距離を導出できる。
【0117】
車両制御装置20は、このようにして導出された物標情報に基づき、ACC制御およびPCS制御の少なくともいずれかの制御を行う。つまり、レーダ装置10は、1つのアンテナ101に設けられた各送信アンテナ(11a〜11d)を用いることで、比較的狭角で遠方までのビーム放射と、比較的広範囲で近距離のビーム放射とを実現できる。その結果、車両制御装置20は、各送信アンテナ(11a〜11d)の全送信範囲のいずれかの位置で導出された物標情報に基づき、ACC制御およびPCS制御のいずれかを車両CRに対して行える。
【0118】
垂直角度導出部18eは、物標の路面に対する垂直方向の高さを導出する。垂直角度導出部18eは、物標の路面に対する垂直角度を導出する。具体的には、垂直角度導出部18eは、送信アンテナ11b、11c、および、11dから出力された送信波が,物標に反射した反射波に基づいて物標の路面に対する垂直角度を導出する。ここで、物標の路面に対する垂直角度は、送信アンテナ11b、11c、および、11dの基板面に対する垂直方向の位相差に基づき、上述したESPRITの角度推定方式を用いて導出される。そして、垂直角度と縦距離の情報から三角関数を用いた演算により、物標の路面に対する垂直方向の高さが導出される。
【0119】
<2−6.垂直角度の導出>
ここで、垂直角度の導出について
図12〜
図15を用いて具体的に説明する。
図12は、物標からの反射波について説明する図である。
図12では上述の
図7等と同様に、xyz座標軸を用いて方向を説明する。
図12は、レーダ装置10の送信アンテナ11bの送信範囲Tr2を示している。送信範囲Tr2の範囲内には、車両CRの位置する路面の前方(+y方向)で垂直方向(z軸方向)の上側(+z側)に上方物TAが存在する。上方物TAは、例えば道路標識等の看板であり、路面の高さを0mとした場合の高さ約4.5mの位置に存在する。また、車両CRに対する上方物TAの縦距離は約70mである。
【0120】
上方物TAからの反射波は、受信アンテナ12に直接的に受信される反射波D21である。垂直角度導出部18eは、受信アンテナ12に受信された反射波D21により、車両CRの高さ方向(z軸方向)の上側(+z側)に位置する上方物TAの垂直角度を導出する。
【0121】
なお、送信アンテナ11b以外にも11cおよび11dの送信範囲Tr3およびTr4の範囲内に上方物TAが存在する場合、上方物TAからの反射波が、受信アンテナ12に受信される。垂直角度導出部18eは、受信アンテナ12に受信される反射波により、車両CRの高さ方向(z軸方向)の上側(+z側)の上方物TAの垂直角度を導出する。
【0122】
次に、垂直角度を導出する際に用いられる送信アンテナ11および受信アンテナ12の組み合わせと、受信信号RSとについて説明する。
【0123】
図13は、第2区間Tx11における送信アンテナ11の各送信アンテナ(11a〜11d)と、受信アンテナ12の各受信アンテナ(12a〜12d)とに対応する受信信号RSの各受信信号(RS1〜RS16)を示す表である。
図13には、縦軸に送信アンテナ11a〜11dが示され、横軸に受信アンテナ12a〜12dが示されている。そして、
図13には、各送信アンテナ(11a〜11d)と各受信アンテナ(12a〜12d)とに対応する各受信信号(RS1〜RS16)が示されている。つまり、
図13には、受信信号RSが、どの受信アンテナに受信された反射波に基づく信号かが示されている。言い換えると、受信信号RSがどの送信アンテナから出力された送信波に基づく受信信号かが示されている。例えば、受信信号RS1は、受信アンテナ12aに受信された反射波に基づく受信信号である。受信信号RS1は、送信アンテナ11aから出力された送信波が物標に反射した反射波に基づく信号である。また、受信信号RS2は、受信アンテナ12bに受信された反射波に基づく受信信号である。受信信号RS5は、送信アンテナ11bから出力された送信波が物標に反射した反射波に基づく信号である。
【0124】
図13には、4本の送信アンテナ(11a〜11d)と4本の受信アンテナ(12a〜12d)とに対応する16個の受信信号(RS1〜RS16)が示されている。つまり、第2区間Tx11の間に受信された受信信号が示されている。垂直角度導出部181は、受信信号として、「RS5、RS9、RS13」を一つの組とし、その他の3つの組を生成する。つまり、垂直角度導出部18eは、「RS6、RS10、RS14」、「RS7、RS11、RS15」、「RS8、RS12、RS16」の3つの組を生成する。そして、垂直角度導出部18eは、所定の角度推定方式を用いて、1つの組の3つの受信信号RSの位相差から略同一の縦距離に位置する2つの物標の垂直角度を導出する。
【0125】
例えば、垂直角度導出部18eは、角度推定方式であるESPRITを用いて、「RS5、RS9、RS13」の位相差から例えば、上方物TAの垂直角度を導出する。なお、垂直角度は、4つの組のそれぞれから導出される。そのため、垂直角度導出部181は、4つの組の垂直角度を平均した値を上方物TAの垂直角度φとして導出する。そして、上方物TAの垂直角度φと上方物TAの縦距離の情報から三角関数を用いた演算により、上方物TAの路面に対する垂直方向の高さが導出される。レーダ装置10は、上方物TAの水平方向の位置と、垂直方向の高さと、相対速度との情報を含む物標情報を車両制御装置20に出力する。
【0126】
なお、上述の垂直角度と同様に、水平角度も複数の受信信号RSの位相差から導出される。
図14は、第1区間Tx10および第2区間Tx11における送信アンテナ11の各送信アンテナ(11a〜11d)と、受信アンテナ12の各受信アンテナ(12a〜12d)とに対応する受信信号RSの各受信信号(RS1〜RS16)を示す表である。詳細には、
図14の上段には、縦軸に送信アンテナ11a、11cが示され、横軸に受信アンテナ12a〜12dが示されている。
図14上段の表中には、各受信信号(R1〜R8)が示されている。また、
図14の下段には、縦軸に送信アンテナ11a〜11dが示され、横軸に受信アンテナ12a〜12dが示されている。
図14下段の表中には、各受信信号(R1〜R16)が示されている。
【0127】
図14の上段の各受信信号(R1〜R8)は、第1区間Tx10の間に受信された信号である。水平角度導出部18cは、「RS1、RS2、RS3、RS4」を一つの組とし、「RS5、RS6、RS7、RS8」を別の組として2つの組を生成する。水平角度導出部18cは、所定の角度推定方式を用いて、1つの組の4つの受信信号の位相差から例えば、上方物TAの水平角度を導出する。
【0128】
水平角度導出部18cは、角度推定方式であるESPRITを用いて、「RS1、RS2、RS3、RS4」の位相差から、上方物TAの水平角度を導出する。その結果、上方物TAは送信アンテナ11aの送信範囲の角度に存在することとなる。
【0129】
ここで、上方物TAの位置によっては、上方物TAが、送信アンテナ11aの送信範囲Tr1のみに含まれている場合と、送信範囲Tr1と送信アンテナ11cの送信範囲Tr3とに含まれる場合とがある。上方物TAが送信範囲Tr1のみに含まれるのは例えば次の場合である。上方物TAと車両CRとの距離が比較的近い距離(例えば、30m)で、車両CRの斜め右(第2基準軸Ceの水平角度+35度)に位置する場合である。また、上方物TAが送信範囲Tr1およびTr3に含まれるのは例えば次の場合である。上方物TAと車両CRとの距離が比較的近い距離(例えば、30m)で、車両CRの真正面(第2基準軸Ceの水平角度±0度)に位置する場合である。
【0130】
また、上方物TAの水平角度は、受信アンテナ12の各アンテナ(12a〜12d)が受信する受信信号の位相差に基づき導出される。例えば、受信アンテナ12aを基準のアンテナとした場合、受信アンテナ12aと12bとの位相差に基づき上方物TAの水平角度が導出される。そして、上方物TAが、送信範囲Tr1のみに含まれる場合の受信アンテナ12aと12bとの位相差を0degとする。また、上方物TAが、送信範囲Tr1およびTr3に含まれる場合の受信アンテナ12aと12bとの位相差を360degとする。この場合、位相差360degは、位相が折り返すことで、位相差0degと等しくなる。その結果、上方物TAが車両CRの真正面(水平角度±0度)に存在するのか、車両CRの斜め右(水平角度+35度)に存在するのかが判定できない。
【0131】
このような位相の折り返しによる水平角度の誤検出を防止するため、送信波の出力方向が水平方向で左右にずれている送信アンテナ11aおよび11cを用いて物標の正確な角度を導出する。例えば、送信アンテナ11aのFFTデータのピーク信号がある周波数(例えば、100kHz)で導出されている。このピーク信号の位相差は0degである。これに対して、送信アンテナ11cのFFTデータのピーク信号がある周波数(100kHz)で導出されている。しかし、このピーク信号の位相差が0degでない場合、上方物TAは、送信範囲Tr1にのみ存在することとなる。つまり、送信アンテナ11aの送信範囲Tr1でのみ上方物TAが導出されている場合、上方物TAは水平角度+35度に存在することとなる。
【0132】
また、送信アンテナ11aのFFTデータのピーク信号がある周波数(100kHz)で導出されている。このピーク信号の位相差は0degである。そして、送信アンテナ11cのFFTデータのピーク信号がある周波数(100KHz)で導出されている。このピーク信号の位相差は0degである。このような場合、上方物TAは、送信範囲Tr1および送信範囲Tr3に存在することとなる。つまり、送信アンテナ11aの送信範囲Tr1、および、送信アンテナ11cの送信範囲Tr3でのみ上方物TAが導出されている場合、上方物TAは、水平角度±0度に存在することとなる。このように、レーダ装置10は、送信範囲の異なる複数の送信アンテナを用いて位相の折り返しによる物標の水平角度の誤検出を防止し、物標の正確な水平角度を導出する。
【0133】
また、
図14の下段の各受信信号(R1〜R16)は、第2区間Tx11の間に受信された受信信号である。水平角度導出部18cは、「RS1、RS2、RS3、RS4」を一つの組とし、その他の3つの組を生成する。つまり、水平角度導出部18cは、「RS5、RS6、RS7、RS8」、「RS9、RS10、RS11、RS12」、「RS13、RS14、RS15、RS16」の3つの組を生成する。水平角度導出部18cは、所定の角度推定方式を用いて、1つの組の4つの受信信号の位相差から上方物TAの水平角度を導出する。例えば、水平角度導出部18cは、角度推定方式であるESPRITを用いて、「RS1、RS2、RS3、RS4」の位相差から上方物TAの水平角度を導出する。なお、水平角度は、4つの組のそれぞれから導出される。そのため、水平角度導出部18cは、4つの組の水平角度を平均した値を上方物TAの水平角度として導出する。
【0134】
なお、上記と同様にレーダ装置10は、送信範囲の異なる複数の送信アンテナを用いて位相の折り返しによる物標の水平角度の誤検出を防止し、正確な水平角度を導出する。
【0135】
なお、
図13および
図14に示した受信信号により、水平角度導出部18cは、物標の水平方向の角度を導出する。例えば水平角度導出部18cは、前方車両および上方物TAの水平方向の角度を導出する。垂直角度導出部18eは、物標の垂直方向の角度を導出する。例えば垂直角度導出部18eは、前方車両および上方物TAの垂直方向の角度を導出する。
【0136】
<3.処理フローチャート>
次に
図16を用いてレーダ装置10の処理を説明する。
図16は、レーダ装置10の処理フローチャートである。レーダ装置10のフーリエ変換部18aは、AD変換器14から出力されたデジタル信号を高速フーリエ変換して周波数ごとの信号に分解する(ステップS101)。
【0137】
水平角度導出部18cは、水平角度を所定の角度推定方式を用いて導出する(ステップS102)。距離・相対速度導出部18dは、ピーク信号をペアリングしてペアデータに対応する物標の縦距離および相対速度を導出する(ステップS103)。
【0138】
垂直角度導出部18eは、物標の路面に対する垂直方向の角度を導出する(ステップS104)。信号処理部18は、物標情報を車両制御装置20に出力する(ステップS105)。ここで、ステップS102およびS103で導出した物標のうち、ステップS104で導出した垂直方向角度から上方物TAと判定された物標はACC制御、および、PCS制御の制御対象外となる。そのため、レーダ装置10は、上方物TAを除外した物標情報を車両制御装置20に出力する。これにより、レーダ装置10は、物標の路面に対する水平方向の位置、および、垂直方向の高さを導出できる。
【0139】
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、この発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。以下では、このような変形例について説明する。なお、上記実施の形態で説明した形態、および、以下で説明する形態を含む全ての形態は、適宜に組み合わせ可能である。
【0140】
上記実施の形態において、アンテナ101の誘電体基板102、送信アンテナ11、および、受信アンテナ12の長さおよび幅の値は一例であり、別の値であってもよい。
【0141】
また、上記実施の形態において、送信アンテナ11および受信アンテナ12の本数を各4本として説明したが、送信アンテナ11の本数、および、受信アンテナ12の本数は4本以外の複数本であってもよい。
【0142】
また、上記実施の形態において、第1区間Tx10では、送信アンテナ11a、送信アンテナ11cの順で送信波が出力されると説明した。第2区間Tx11では、送信アンテナ11a、送信アンテナ11b、送信アンテナ11c、送信アンテナ11dの順で送信波が出力されると説明した。ここで、第1区間Tx10および第2区間Tx11の送信波の出力順は一例である。別の例として例えば、第1区間Tx10では、送信アンテナ11c、送信アンテナ11aの順で送信波が出力してもよい。第2区間Tx11では、送信アンテナ11a、送信アンテナ11d、送信アンテナ11c、送信アンテナ11bの順で送信波を出力してもよい。つまり、物標の水平方向の位置および垂直方向の高さが導出できる順序であれば、送信アンテナ11から送信波を出力する順序はどの順序であってもよい。
【0143】
また、上記実施の形態において、送信範囲Tr1〜Tr4の範囲について、基準軸Ceを±0°とする角度を具体的な値で示して説明した。ここで角度の値は一例であり、角度の値は他の値であってもよい。
【0144】
また、上記実施の形態において、第1区間Tx10から次の区間である第2区間Tx11への送信アンテナ11cから11aへの切替えは、時刻t3〜t3aの間に行われると説明した。言い換えると、送信アンテナ11cから11aへの切替えは、第1区間Tx10の物標導出処理が終了した後に行われると説明した。これに対して送信アンテナ11cから11aの切替えを時刻t2から所定時間内に行うようにしてもよい。つまり、第1処理区間Tx5の処理が開始される前に送信アンテナ11cから11aへの切替えを行ってもよい。また、第2区間Tx11から次の区間である第1区間Tx10への送信アンテナ11dから11aへの切替えは、時刻t8〜t8aの間に行われると説明した。言い換えると、送信アンテナの11dから11aへの切替えは、第2区間Tx11の物標導出処理が終了した後に行われると説明した。これに対して送信アンテナ11dから11aの切替えを時刻t7から所定時間内に行うようにしてもよい。つまり、第2処理区間Tx5aの処理が開始される前に送信アンテナ11dから11aへの切替えを行ってもよい。
また、上記の実施の形態において、レーダ装置10が用いる角度推定方式はESPRITを例に説明した。しかしこれ以外にもDBF(Digital Beam Forming)、PRISM(Propagator method based on an Improved Spatial-smoothing Matrix)、および、MUSIC(Multiple Signal Classification)などのうちいずれか一の角度推定方式を用いてもよい。
【0145】
また、上記実施の形態において、レーダ装置10は、車両CR以外の他の機器に用いられてもよい。レーダ装置10は、例えば航空機および船舶のいずれか1つに用いられてもよい。