(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-43083(P2015-43083A)
(43)【公開日】2015年3月5日
(54)【発明の名称】可変倍率を有するウィン−ダイソン光学システム
(51)【国際特許分類】
G02B 13/26 20060101AFI20150206BHJP
G02B 17/08 20060101ALI20150206BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20150206BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20150206BHJP
【FI】
G02B13/26
G02B17/08 A
H01L21/30 515D
G03F7/20 521
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】48
(21)【出願番号】特願2014-164915(P2014-164915)
(22)【出願日】2014年8月13日
(31)【優先権主張番号】61/867,671
(32)【優先日】2013年8月20日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/341,777
(32)【優先日】2014年7月26日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】502400304
【氏名又は名称】ウルトラテック インク
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100147706
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 世子
(72)【発明者】
【氏名】スタイツ、ジー、デビッド
(57)【要約】 (修正有)
【課題】可変倍率を有するマイクロリソグラフィー用の1×倍率ウィン−ダイソン光学システムを提供する。
【解決手段】第1及び第2のプリズムPA、PBと、正レンズ群12とを備える。正レンズ群12は、第1及び第2の分割レンズ要素20A、20Bを有する分割レンズ20を含む。第1及び第2の分割レンズ要素20A、20Bは、第1及び第2のプリズムPA、PBにそれぞれ隣接している。第1及び第2の分割レンズ要素20A、20Bは、軸方向に可動であり、1×ウィン−ダイソン光学システム10の倍率を、約500部/ミリオンまで変化させる。1×ウィン−ダイソン光学システム用の調整可能な正レンズ群も開示され、正レンズ群は、光学システム倍率の軽微な変化を許容する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変の公称1×倍率を有するウィン−ダイソンマイクロリソグラフィー光学システムであって、光学軸に沿って、:
凹表面を有する凹面鏡と、;
前記凹面鏡の前記凹表面から軸方向に離間している正レンズ群と、;
光軸のそれぞれの側に、前記正レンズ群と隣接して前記凹面鏡の反対側に配置される第1及び第2の全内部反射(TIR)プリズムとを備え、;
前記正レンズ群は、第1及び第2の分割レンズ要素を規定する分割レンズを含み、前記第1及び第2の分割レンズ要素は、光軸のそれぞれの側に位置し、前記第1及び第2のTIRプリズムとそれぞれ隣接し、前記第1及び第2の分割レンズ要素は、軸方向に可動であり、倍率を、前記公称1×倍率から約500部/ミリオンまで変化させる
ウィン−ダイソンマイクロリソグラフィー光学システム。
【請求項2】
マイクロリソグラフィーレンズは、i線LEDスペクトルより高い光を結像する、請求項1に記載のウィン−ダイソンマイクロリソグラフィー光学システム。
【請求項3】
公称106mm×36mmの画像領域寸法を有する、請求項1または2に記載のウィン−ダイソンマイクロリソグラフィー光学システム。
【請求項4】
可変の公称1×倍率を有するマイクロリソグラフィー光学システムであって、光学軸に沿って、:
ウィン−ダイソン構造で配置される、凹面鏡、正レンズ群、並びに、第1及び第2の全内部反射(TIR)プリズムを備え、
前記正レンズ群は、前記第1及び第2のTIRプリズムとそれぞれ隣接している第1及び第2の分割レンズ要素を含み、前記第1及び第2の分割レンズ要素は、軸方向に可動であり、倍率を、前記公称1×倍率から変化させる
マイクロリソグラフィー光学システム。
【請求項5】
倍率を、約500部/ミリオンまで変化させる、請求項4に記載のマイクロリソグラフィー光学システム。
【請求項6】
前記第1及び第2の分割レンズ要素は、Δz=±5mmの移動範囲を有している、請求項4または5に記載のマイクロリソグラフィー光学システム。
【請求項7】
光軸に対して配置された、第1及び第2のプリズムと正レンズ群とを有する1×倍率ウィン−ダイソン光学システムにおいて倍率を変化させる方法であって、
前記正レンズ群の第1及び第2の分割レンズ要素を、前記1×倍率を規定する中立位置から軸に沿って反対方向に動かすことを含み、前記1×倍率を、500部/ミリオンまで変化させる方法。
【請求項8】
前記第1及び第2の分割レンズ要素を軸に沿って動かすことが、前記第1及び第2の分割レンズ要素を、前記中立位置に対して±5mmまで動かすことを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
可変の公称1×倍率を有するウィン−ダイソンマイクロリソグラフィー光学システムであって、光学軸に沿って、:
凹表面を有する凹面鏡と、
前記凹面鏡の凹表面から離間する正レンズ群と、
光軸のそれぞれの側に、前記凹面鏡の反対側に前記正レンズ群と隣接して配置される第1及び第2の全内部反射(TIR)プリズムとを備え、;
前記正レンズ群は、第1及び第2の分割レンズ要素を規定する分割レンズを含み、前記第1及び第2の分割レンズ要素は、光軸のそれぞれの側に位置し、前記第1及び第2のTIRプリズムとそれぞれ隣接し、前記第1及び第2の分割レンズ要素の少なくとも一つは、軸方向に可動であり、倍率を変化させる
ウィン−ダイソンマイクロリソグラフィー光学システム。
【請求項10】
前記第1及び第2の分割レンズ要素は、軸に沿って反対方向に移動可能である、請求項9に記載のウィン−ダイソンマイクロリソグラフィー光学システム。
【請求項11】
倍率が、公称1×倍率から500部/ミリオンまで変化可能である、請求項9または10に記載のウィン−ダイソンマイクロリソグラフィー光学システム。
【請求項12】
前記第1及び第2の分割レンズ要素は、前記1×倍率と関連して、中立位置に対して±5mmまで軸方向に動くことができる、請求項9から11の何れか1項に記載のウィン−ダイソンマイクロリソグラフィー光学システム。
【請求項13】
倍率を有し、光軸の反対側に操作可能に配置された第1及び第2のプリズムを含むウィン−ダイソンマイクロリソグラフィー光学システム用の調整可能な正レンズ群であって、
少なくとも一つの正レンズ要素と、
第1及び第2の分割レンズ要素からなる分割レンズであって、該第1及び第2の分割レンズ要素は、前記光軸のそれぞれの側に位置し、前記第1及び第2のプリズムに間近に隣接して、それぞれが操作可能に配置されている分割レンズとを備え、
前記第1及び第2の分割レンズ要素の少なくとも一つは、軸方向に可動であり、倍率を変化させる
調整可能な正レンズ群。
【請求項14】
前記少なくとも一つの正レンズ要素は、一つの複レンズと、2つの単レンズ要素とを含む、請求項13に記載の調整可能な正レンズ群。
【請求項15】
前記第1及び第2の分割レンズ要素のそれぞれが軸方向に移動可能である、請求項13または14に記載の調整可能な正レンズ群。
【請求項16】
前記第1及び第2の分割レンズ要素は、平凸レンズの部分で形成されている、請求項13から15の何れか1項に記載の調整可能な正レンズ群。
【請求項17】
前記第1及び第2の分割レンズ要素は、それぞれS−FPL51Yガラスで形成されている、請求項13から16の何れか1項に記載の調整可能な正レンズ群。
【請求項18】
前記ウィン−ダイソンマイクロリソグラフィー光学システムは、光線経路交点を有し、前記第1及び第2の分割レンズ要素は、前記光線経路交点のプリズムのように存在している、請求項13から17の何れか1項に記載の調整可能な正レンズ群。
【請求項19】
前記第1及び第2の分割レンズ要素の少なくとも一つの軸上の動きは、倍率を、500部/ミリオン(ppm)まで変化させる、請求項13から18の何れか1項に記載の調整可能な正レンズ群。
【請求項20】
前記第1及び第2の分割レンズ要素のそれぞれが、中立位置に対して±5mmまで軸方向に動くことができる、請求項13から19の何れか1項に記載の調整可能な正レンズ群。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
この出願は、米国特許法(35 U.S.C.)第119条(e)の下で、2013年8月20日に出願された米国仮出願第61/867,671号の優先権の利益を主張する。また、当該米国仮出願第61/867,671号は、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0002】
本開示は、マイクロリソグラフィー用の光学システムに関し、より具体的には、ウィン−ダイソン(Wyne−Dyson)構造を有する単位倍率反射屈折光学システムに関する。ここで、当該光学システムは、公称単位倍率からの可変倍率を有する。
【0003】
「マイクロリソグラフィー用の単位倍率の大型反射屈折レンズ」という名称で、2013年5月20日に出願された米国特許出願第13/897,514号を含む、本明細書中で引用されるあらゆる特許、特許出願、及び、公報は、参照により本明細書中に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
フォトリソグラフィー機器は、集積回路(IC)の製造において、半導体(例えば、シリコン)ウエハ上に微小な特徴をプリントするために使用される。フォトリソグラフィー機器は、例えば、層の相互接続を規定するパターンを形成することを含む後(バックエンド)処理のためにも使用される。層の相互接続により、ICを駆動するための電力が供給される。フォトリソグラフィー機器は、高速通信バスの金属経路のパターンを形成するための後処理においても使用される。高速通信バスは、ICの制御論理及びデータ入力/出力(I/O)を伝送するために用いられる。
【0005】
過去20年程度の間、製造に用いられるシリコンウエハの寸法は、8”(200mm)から12”(300mm)へと拡大しており、今や、16”(450mm)のものが検討されている。ICの製造コストは、2つの主要な要因:収率とスループット(すなわち、ウエハ/時間)に関連している。収率が100%に近付くと、ICのコストは製造工程のスループットによって大部分が規定される。
【0006】
スループットを増大させる一つの方法は、ウエハ上のダイ(die)の寸法を大きくすることである。もう一つの方法は、1回に撮像できるダイの数を増加させることである。この両方を実行するために、フォトリソグラフィー機器は、大きなダイ用の複合ダイ構成を支持する必要があり、これにより、ウエハあたりの工程時間(走査時間)が短くなる。これは、単位倍率(1×)のフォトリソグラフィー機器によって処理することのできる粗い後層において、より容易に実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第1,401,345号明細書
【特許文献2】米国特許第1,783,998号明細書
【特許文献3】米国特許第2,742,817号明細書
【特許文献4】米国特許第7,148,593号明細書
【特許文献5】米国特許第7,573,655号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J.Dyson著、「サイデル収差のない単位倍率光学システム」、米国光学学会誌、1959年7月
【非特許文献2】Zhang Yudongら著、「1:1反射屈折の広帯域深紫外線(UV)の高NAリソグラフィーレンズの新しい群」、SPIE1463(1991):688−694頁
【非特許文献3】R.M.H.Newら著、「ダイソン光学の分析的最適化」、米国光学会31「応用光学」、第10号:1444−1449頁
【非特許文献4】Zhangら著、「単位倍率光学システムにおける発展」、米国光学会により発行、応用光学34、第7号、1995年3月1日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
強固であるが単純なフォトリソグラフィー機器用の1倍(1×)投影光学システムが必要とされている。この1倍(1×)投影光学システムは、i線LED波長で動作し、4から6個のダイを処理可能な領域寸法を有し、可変倍率も有する。可変倍率は、リソグラフィーパターンオーバーレイにおいて起こり得る登録誤差を少なくとも部分的に補償することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一局面は、可変倍率を有するマイクロリソグラフィー用の1倍(1×)ウィン−ダイソン(Wyne−Dyson)光学システムである。この1倍ウィン−ダイソン光学システムは、第1及び第2のプリズム、並びに、正レンズ(凸レンズ)群を備えている。正レンズ群は、第1のミラーから軸方向に離間している。前記正レンズ群は、第1及び第2の分割レンズ要素を有する分割レンズを含む。第1及び第2の分割レンズ要素は、それぞれ前記第1及び第2のプリズムに隣接して位置する。前記第1及び第2の分割レンズ要素は、軸方向に可動であり、前記1倍ウィン−ダイソン光学システムの倍率を、約500部/ミリオン(ppm)まで変化させる。
【0011】
本開示の別の局面は、可変の公称1×倍率を有するウィン−ダイソンマイクロリソグラフィー光学システムである。このウィン−ダイソンマイクロリソグラフィー光学システムは、光学軸に沿って、:凹面鏡、正レンズ群、並びに、第1及び第2の全内部反射(TIR)プリズムを備えている。前記凹面鏡は、凹表面(くぼんだ表面)を有する。前記正レンズ群は、前記凹面鏡の前記凹表面から軸方向に離間している。前記第1及び第2のTIRプリズムは、光軸のそれぞれの側に、前記正レンズ群と隣接して前記凹面鏡の反対側に配置されている。さらに、前記正レンズ群は、第1及び第2の分割レンズ要素を規定する分割レンズを含む。前記第1及び第2の分割レンズ要素は、光軸のそれぞれの側に位置し、それぞれ前記第1及び第2のTIRプリズムと隣接する。前記第1及び第2の分割レンズ要素は、軸方向に可動であり、倍率を、前記公称1×倍率から約500部/ミリオン(ppm)まで変化させる。
【0012】
本開示の別の局面は、上述のウィン−ダイソンマイクロリソグラフィー光学システムであって、マイクロリソグラフィーレンズは、i線LEDスペクトルより高い(i線LEDスペクトルを超える)光を結像する。
【0013】
本開示の別の局面は、上述のウィン−ダイソンマイクロリソグラフィー光学システムであって、公称106mm×36mmの画像領域寸法を有する。
【0014】
本開示の別の局面は、可変の公称1×倍率を有するマイクロリソグラフィー光学システムである。この光学システムは、光学軸に沿って、ウィン−ダイソン構造で配置された:凹面鏡、正レンズ群、並びに、第1及び第2の全内部反射(TIR)プリズムを備えている。;ここで、前記正レンズ群は、第1及び第2の分割レンズ要素を含む。第1及び第2の分割レンズ要素は、前記第1及び第2のTIRプリズムとそれぞれ隣接して位置する。前記第1及び第2の分割レンズ要素は、軸方向に可動であり、倍率を、前記公称1×倍率から変化させる。
【0015】
本開示の別の局面は、上述のマイクロリソグラフィー光学システムであって、倍率を、約500部/ミリオン(ppm)まで変化させる。
【0016】
本開示の別の局面は、上述のマイクロリソグラフィー光学システムであって、前記第1及び第2の分割レンズ要素は、Δz=±5mmの移動範囲を有している。
【0017】
本開示の別の局面は、1×倍率ウィン−ダイソン光学システムにおいて倍率を変化させる方法である。この光学システムは、光軸に対して配置された、第1及び第2のプリズムと正レンズ群とを有する。本方法は、前記正レンズ群の第1及び第2の分割レンズ要素を、前記1×倍率を規定する中立位置から軸に沿って反対方向に動かすことを含み、前記1×倍率を、500部/ミリオン(ppm)まで変化させる。
【0018】
本開示の別の局面は、上述の方法であって、前記第1及び第2の分割レンズ要素を軸に沿って動かすことが、前記第1及び第2の分割レンズ要素を、前記中立位置に対して±5mmまで動かすことを含む。
【0019】
本開示の別の局面は、可変の公称1×倍率を有するウィン−ダイソンマイクロリソグラフィー光学システムである。本ウィン−ダイソンマイクロリソグラフィー光学システムは、光学軸に沿って、:凹表面を有する凹面鏡と、前記凹面鏡の凹表面から離間する正レンズ群と、光軸のそれぞれの側に、前記凹面鏡の反対側に前記正レンズ群と隣接して配置される第1及び第2の全内部反射(TIR)プリズムとを備えている。;ここで、前記正レンズ群は、分割レンズを含む。分割レンズは、第1及び第2の分割レンズ要素を規定する。前記第1及び第2の分割レンズ要素は、光軸のそれぞれの側に位置し、それぞれ前記第1及び第2のTIRプリズムと隣接する。ここで、前記第1及び第2の分割レンズ要素の少なくとも一つは、軸方向に可動であり、倍率を変化させる。
【0020】
本開示の別の局面は、上述のウィン−ダイソンマイクロリソグラフィー光学システムであって、第1及び第2の分割レンズ要素は、軸に沿って反対方向に移動可能である。
【0021】
本開示の別の局面は、上述のウィン−ダイソンマイクロリソグラフィー光学システムであって、倍率が、公称1×倍率から500部/ミリオン(ppm)まで変化可能である。
【0022】
本開示の別の局面は、上述のウィン−ダイソンマイクロリソグラフィー光学システムであって、前記第1及び第2の分割レンズ要素は、前記1×倍率と関連して、中立位置に対して±5mmまで軸方向に動くことができる。
【0023】
本開示の別の局面は、倍率を有するウィン−ダイソンマイクロリソグラフィー光学システム用の調整可能な正レンズ群であり、この正レンズ群は、第1及び第2のプリズムを含む。第1及び第2のプリズムは、光軸の反対側に操作可能に配置される。前記調整可能な正レンズ群は、少なくとも一つの正レンズ要素と、分割レンズとを備える。分割レンズは、第1及び第2の分割レンズ要素からなる。該第1及び第2の分割レンズ要素は、前記光軸のそれぞれの側に位置し、それぞれ前記第1及び第2のプリズムに間近に隣接して、それぞれが操作可能に配置されている。第1及び第2の分割レンズ要素の少なくとも一つは、軸方向に可動であり、倍率を変化させる。
【0024】
本開示の別の局面は、上述の調整可能な正レンズ群であって、前記少なくとも一つの正レンズ要素は、1つの複レンズと、2つの単レンズ要素とを含む。
【0025】
本開示の別の局面は、上述の調整可能な正レンズ群であって、前記第1及び第2の分割レンズ要素のそれぞれが軸方向に移動可能である。
【0026】
本開示の別の局面は、上述の調整可能な正レンズ群であって、前記第1及び第2の分割レンズ要素は、平凸レンズの部分で形成されている。
【0027】
本開示の別の局面は、上述の調整可能な正レンズ群であって、前記第1及び第2の分割レンズ要素は、それぞれS−FPL51Yガラスで形成されている。
【0028】
本開示の別の局面は、上述の調整可能な正レンズ群であって、前記ウィン−ダイソンマイクロリソグラフィー光学システムは、光線経路交点を有し、前記第1及び第2の分割レンズ要素は、前記光線経路交点のプリズムのように(prizm−wise)存在している。
【0029】
本開示の別の局面は、上述の調整可能な正レンズ群であって、前記第1及び第2の分割レンズ要素の少なくとも一つの軸上の動きにより、倍率が、500部/ミリオン(ppm)まで変化する。
【0030】
本開示の別の局面は、上述の調整可能な正レンズ群であって、前記第1及び第2の分割レンズ要素のそれぞれが、中立位置に対して±5mmまで軸方向に動くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、半導体リソグラフィー(すなわち、フォトリソグラフィー)用途の、本開示による改良型ウィン−ダイソン単位倍率光学システムの光学的な図である。ここで、改良型ウィン−ダイソン単位倍率光学システムは、倍率調整に用いられる一対の分割レンズ要素を有する正レンズ群を含む。
【
図2】
図2は、
図1の改良型ウィン−ダイソン単位倍率光学システムの改良版の詳細図であり、倍率調整に用いられる分割レンズ要素を示す。
【
図3】
図3は、一対の分割レンズ要素のさらに詳細な図である。
【
図4A】
図4Aは、
図3と同様の詳細図であり、各分割レンズ要素を軸に沿って反対方向に動かすことで、改良型ウィン−ダイソン単位倍率光学システムの倍率がどのように変化するかを示す。
【
図4B】
図4Bは、
図3と同様の詳細図であり、各分割レンズ要素を軸に沿って反対方向に動かすことで、改良型ウィン−ダイソン単位倍率光学システムの倍率がどのように変化するかを示す。
【
図4C】
図4Cは、
図3と同様の詳細図であり、各分割レンズ要素を軸に沿って反対方向に動かすことで、改良型ウィン−ダイソン単位倍率光学システムの倍率がどのように変化するかを示す。
【
図5】
図5は、一例において、公称幅106mm及び高さ36mmの長方形状をそれぞれ有する、対物表現、及び、画像領域を示す。
【
図6】
図6は、両方が理想的な1×倍率の画像領域座標、及び、1.00041×に変更された倍率の画像領域座標の表である。
【
図7A】
図7A及び
図7Bは、格子収差プロット(grid distortion plot)である。
図7Aは、領域の左側半分を拡大して示すものである。
【
図7B】
図7A及び
図7Bは、格子収差プロット(grid distortion plot)である。
図7Bは、全領域を示すものである。
【
図8】
図8は、分割レンズ要素の軸方向のシフト量Δz(mm)に対する倍率変化ΔM(ppm)をプロットした図である。
【
図9】
図9は、光学システムの種々の開口数値について、分割レンズ要素の軸方向のシフト量Δz(mm)に対する多色のストレール(Strehl)比(PSR)のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
〔詳細な説明〕
下記の特許請求の範囲の記載は、発明の詳細な説明に組み込まれると共にその一部を構成する。
【0033】
本開示は、マイクロリソグラフィー用のレンズに関し、より具体的には、マイクロリソグラフィーに用いられるウィン−ダイソン構造の単位倍率反射屈折レンズ(光学システム)に関する。本光学システムは、多数のダイを収容するための広い領域を有し、リソグラフィーパターンオーバーレイにおいて起こり得る登録誤差を少なくとも部分的に補償するのに適した可変倍率を有する。
【0034】
以下の技術刊行物及び特許文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0035】
J.Dyson著、「サイデル収差のない単位倍率光学システム」、米国光学学会誌、1959年7月。
【0036】
Zhang Yudongら著、「1:1反射屈折の広帯域深紫外線(UV)の高NAリソグラフィーレンズの新しい群」、SPIE1463(1991):688−694頁。
【0037】
R.M.H.Newら著、「ダイソン光学の分析的最適化」、米国光学会31「応用光学」、第10号:1444−1449頁。
【0038】
Zhangら著、「単位倍率光学システムにおける発展」、米国光学会により発行、応用光学34、第7号、1995年3月1日。
【0039】
米国特許第1,401,345号、第1,783,998号、第2,742,817号、第7,148,593号、及び、第7,573,655号。
【0040】
図1は、半導体リソグラフィー(すなわち、フォトリソグラフィー)用途の、本開示による改良型ウィン−ダイソン単位倍率(1×)光学システム(「光学システム」)10の光学的な図である。光学システム10は、分割レンズ(または、レンズ対)20を含む。分割レンズ(または、レンズ対)20は、分割レンズ要素20A及び20Bを規定する。分割レンズ要素20A及び20Bは、1×の公称システム倍率から倍率調整を行うために用いられる。倍率の変化は、わずかであるため(例えば、約500部/ミリオン(ppm)まで)、光学システム10の全体倍率は、名目上(公称)1×である。光学システム10は、2つの焦点面、すなわち、以下で説明するように形成された対物面OP及び画像面IPを含む。対物面OPから画像面IPに向かって光学システム10を通過する光線LRは、3つの領域点で示される。
【0041】
光学システム10は、第1のミラーPMを含む。第1のミラーPMは、z方向に延びる軸A1に沿って配置される。光学システム10は、正レンズ群12も含む。正レンズ群12は、第1のミラーから軸方向に離間し、対物面OPと画像面IPとの光学上の間に存在する。正レンズ群12は、1つ以上の正レンズ要素Lを備えている(
図2参照)。正レンズ群12は、全体として正の光出力を有する。
図1及び
図2に示されるように、光学システム10の例示的な正レンズ群12は、分割レンズ20とともに、4つのレンズ要素L1からL4を含む。種々の構成のレンズ要素が使用可能であり、一例として、レンズ要素L1及びL2で形成された複レンズと、2つの単レンズL3及びL3が示される。
【0042】
光学システム10は、一対の折り返しプリズムPA及びPBを含む。折り返しプリズムPA及びPBは、第1のミラーの反対側で正レンズ群12に隣接して存在する。折り返しプリズムPA及びPBは、軸A1の反対側に存在する。これらは、2つの焦点面、すなわち、レチクル又はフォトマスクRが操作可能に配置される対物面OPと、半導体ウエハWの表面が配置される画像面IPとを分離するために、このように構成されている。折り返しプリズムPA及びPBがないと、2つの焦点面OP及びIPは、光学システム10の折り返し特性のために、重なり合うであろう。一例では、折り返しプリズムPA及びPBは、全内部反射(TIR)面を規定する表面TIR
A及びTIR
Bをそれぞれ有している。
【0043】
上述した
図2は、
図1の光学システム10の正レンズ群12の詳細図であり、倍率調整を行うために操作可能に配置された分割レンズ要素20A,20Bによって構成されるレンズ対20を示す。
図2は、正レンズ群12の例示的なレンズ要素L1からL4も示す。対物面OPからの光線LRの外側への進路、及び、第1のミラーPMからの戻り光線は、分割レンズ要素20A,20Bによって占有される領域を超えて、すなわち、第1のミラーにより近づいて、光路交差点RPIにおいて交差する。そのため、レンズ対20の分割レンズ要素20A及び20Bは、光路交差点RPIのプリズムのように存在していると言うことができる。
【0044】
図3は、レンズ対20の分割レンズ要素20A,20Bのさらに詳細な図である。一例では、レンズ対20の分割レンズ要素20A,20Bは、(円形の)平凸レンズで形成される。一例では、レンズ対20は、25メートルの焦点距離を有している。レンズ対20の焦点距離は、この場合には、ガラスの屈折率n(例えば、n=1.497を有するオハラ(Ohara)S−FPL51Y、又は、MIL−497811)、及び、凸面曲率半径1.28×10
4mm(12.8メートル)によって決まる。レンズ対20は、正レンズ群12における他のレンズ要素Lと組み合わせて1×倍率で最適化され、主要な設計要件:NA、領域寸法、スペクトル範囲、収差、並びに、MTF及び/又はストレール(Strehl)比で測定される画質を満足する。光学システム10は、本質的にテレセントリックであり、第1のミラーPMに対して対称である。したがって、対物の再焦点合わせ及び共役像は、倍率を変化させない。
【0045】
図4A−4Cは、
図3と同様の詳細図であり、レンズ対20の各分割レンズ要素20A及び20Bを、軸に沿って軸シフト量Δzだけ反対方向に動かすことで、光学システム10の倍率がどのように変化するかを示す。
図4Aにおいて、分割レンズ要素20Aは、中立位置の左側へ移動し(
図4B)、その一方、分割レンズ要素20Bは、その反対方向に同じ量だけ移動する。
図4Cでは、分割レンズ要素20Aは右側へ移動し、分割レンズ要素20Bは左側へ移動する。第1のミラーPMからウエハWまでの(GFL
W)グループ焦点距離(GFL)と、レチクルRから第1のミラーPMまでの(GFL
R)グループ焦点距離(GFL)との比率は、倍率比:M=GFL
W/GFL
Rを決定する。
【0046】
例として、分割レンズ要素20A,20Bの両方は、中立位置に集中し(
図4B)、倍率は、正確に1倍(1×)であり、グループ焦点距離(GFL)は、GFL
W=GFL
R=915.5942mmと等しくなる。分割レンズ要素20Aを右へ(レチクルRから遠ざかるように)移動させることで、グループ焦点距離は、GFL
R=915.4069mmに減少する、その一方、ウエハへのグループ焦点距離は、GFL
W=915.7816mmとなる。
【0047】
比率GFL
W/GFL
R=1.0004094×となり、倍率ΔMにおける変化が409部/ミリオン(ppm)となる。したがって、画像寸法は、0.0041%だけ増加する。これは、長方形画像の形式寸法106×28mmに、43×11ミクロン(μm)の増加を付与する。厳密な単位倍率からのわずかな変化により、リソグラフィー処理において発生し得る登録誤差を、少なくとも部分的に補償することができる。
【0048】
他の例では、分割レンズ要素20A,20Bのうちの一つのみが、1倍(1×)倍率を規定する
図4Bの(一列に並んだ)中立位置に対して移動する。
【0049】
図5は、対物領域OF及び画像領域IFの表現であり、一例として、公称幅106mm×高さ36mmの長方形形式をそれぞれ有している。
図6は、ともに理想的な1倍(1×)倍率の画像領域座標、及び、変更倍率M=1.00041×の画像領域座標の表である。表6の数値は、4つの角の(x,y)座標、及び、中心(0,0)座標を加えた長方形境界周囲の4つの中心端座標を示す。列の左側の組は、光学システム10の倍率が1倍(1×)になるように、分割レンズ要素20A,20Bが一例に並んだ時を表す。列の右側の組は、分割レンズ要素20A,20Bが、反対方向に等しくΔz=±5mmだけシフトし、M=1.00041×の倍率の増加を生成した場合を表す。分割レンズ要素20A,20Bの動作方向を反転させることにより、M=0.99959×の倍率低下となる。
【0050】
列1及び列2における実軸(Raal)X及びYの領域値と、列3及び列4における実軸のX及びYの領域値との標準化された差は、M=1.00041のGFL比に適合する。収差に起因する軽微な許容差は、分割レンズ要素20A及び20Bの中立位置において、光学システム10をゼロ収差に最適化したことに由来する(
図4B参照)。絶対的な寸法差は、Xにおいて±21.3ミクロンであり、Yにおいて±7.2ミクロンであるか、あるいは、各形式寸法を通じて、幅42.6ミクロン及び高さ14.4ミクロンの全体的な変化である。これらは、軽微であるが重大な差であり、リソグラフィーパターンオーバーレイにおいて見られる登録誤差を少なくとも部分的に補償することができる。分割レンズ要素20A及び20Bの方向を反転することにより、M=0.9996×の画像の縮小または倍率低下が引き起こされ、幅−42.6ミクロン及び高さ−14.4ミクロンのより小さな画像寸法がもたらされる。
【0051】
図7A及び
図7Bは、収差Dの格子状のプロットであり、
図7Aは、領域の左半分を拡大したものを示し、
図7Bは、領域全体を示す。そのプロットは、倍数(倍率)53,000で拡大される局所的な収差誤差「X」を示し、これにより、小さな長方形ボックスのそれぞれが、水平(X方向)100nm×垂直(Y方向)18nmの範囲に及ぶ。最悪の場合の角部収差の値は、Xにおいて20nm未満かつYにおいて10nm未満であり、許容される。収差に加えて、他の実施上の配慮は、本明細書で開示される光学システム10及び方法を用いる倍率変化の可能性の範囲を限定する。
【0052】
図8は、分割レンズ要素20A及び20Bの軸シフト量Δz(mm)に対する倍率変化ΔM(ppm)のプロットである。分割レンズ要素20A及び20Bの両方が、最大でΔz=±5mmまで、反対方向に等しい距離だけ動き、倍率変化の範囲は、ΔM=±409ppm、又は、±0.000409%である。
【0053】
図9は、種々の開口数値における分割レンズ要素20A,20Bの軸シフト量Δz(mm)に対する多色のストレール(Strehl)比(PSR)のプロットである。PSRの縦軸は、0から1までの範囲である。0.8を超える値は、回折限界と見なされる(λ/4波長RMS)。図示される3つの曲線は、開口数(NA)の値がそれぞれ0.16、0.24、及び、0.32のものである。NAが増加するに従って、PSRは、0.9の範囲で有用値を下回る。開口数0.16NAでは、±5mmの全範囲を利用することができる。しかし、NAが大きくなるに従って、範囲は厳しく制限され、開口数0.24NAでは±2mmであり、開口数0.32NAでは±0.7mmに制限される。これらのシフト量は、開口数0.16NAでΔM=±409ppm、開口数0.24NAでΔM=±170ppm、開口数0.32NAでΔM≒±75ppmの倍率変化に相当する。
【0054】
より大きな開口数(NA)システムの領域寸法は、より小さな開口数(NA)システムの領域寸法よりも小さい。開口数0.32NAの倍率範囲±75ppmにおいて70mm×28mmの領域寸法を仮定すると、領域寸法の変化は、水平方向±5.25μm及び垂直方向±2.1μmに制限される。
【0055】
当業者には明白であるが、本開示の精神又は範囲を逸脱することなく、本開示に対して種々の修正及び変更を加えることができる。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲およびその均等範囲内において行われる本開示の修正および変更を包含することが意図される。
【外国語明細書】
1. Abstract
2. Representative Drawing
Fig.1
Fig.1
Fig.2
Fig.3
Fig.4A
Fig.4B
Fig.4C
Fig.5
Fig.6
Fig.7A
Fig.7B
Fig.8
Fig.9