(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-43411(P2015-43411A)
(43)【公開日】2015年3月5日
(54)【発明の名称】印刷回路基板用絶縁フィルム及びそれを用いた製品
(51)【国際特許分類】
H05K 1/03 20060101AFI20150206BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20150206BHJP
H01B 17/56 20060101ALI20150206BHJP
【FI】
H05K1/03 610R
B32B27/20 Z
H01B17/56 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-118974(P2014-118974)
(22)【出願日】2014年6月9日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0101247
(32)【優先日】2013年8月26日
(33)【優先権主張国】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154379
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】リ,チュン グン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドン フン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ジョン ユン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ジェ ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ジェ チュン
【テーマコード(参考)】
4F100
5G333
【Fターム(参考)】
4F100AA01B
4F100AA01E
4F100AA07C
4F100AA08C
4F100AA14C
4F100AA16C
4F100AA17C
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4F100AA19C
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4F100AK01C
4F100AK01E
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4F100AL05C
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4F100YY00B
5G333AA03
5G333AB12
5G333CB17
5G333DA03
5G333DA16
5G333DA21
5G333DA25
(57)【要約】
【課題】内層回路及び内層回路のスルーホールの充填性を向上させることができる印刷回路基板用絶縁フィルム及びそれを用いた製品を提供する。
【解決手段】本発明の印刷回路基板用絶縁フィルム200は、キャリアフィルム12と、キャリアフィルム12上に形成され、無機充填剤を含む絶縁層100と、絶縁層100上に形成されたカバーフィルム10と、を含み、ここで、絶縁層100中の無機充填剤の含量は、キャリアフィルム12からカバーフィルム10側に向かって低くなる濃度勾配を有するものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアフィルムと、
前記キャリアフィルム上に形成され、無機充填剤を含む絶縁層と、
前記絶縁層上に形成されたカバーフィルムと、を含み、
ここで、前記絶縁層中の無機充填剤の含量は、キャリアフィルムからカバーフィルム側に向かって低くなる濃度勾配を有する、印刷回路基板用絶縁フィルム。
【請求項2】
前記絶縁層は、無機充填剤リッチ領域層及び樹脂リッチ領域層で構成され、
前記無機充填剤リッチ領域層と樹脂リッチ領域層との厚さ比は1:0.25〜1.5である、請求項1に記載の印刷回路基板用絶縁フィルム。
【請求項3】
前記絶縁層の厚さは10〜40μmである、請求項2に記載の印刷回路基板用絶縁フィルム。
【請求項4】
前記無機充填剤リッチ領域層中の無機充填剤の含量は樹脂組成物に対して70〜95重量%であり、樹脂リッチ領域層中の無機充填剤の含量は樹脂組成物に対して20〜40重量%である、請求項2に記載の印刷回路基板用絶縁フィルム。
【請求項5】
前記キャリアフィルムはポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリイミド(PI)で形成され、前記カバーフィルムはポリプロピレン(PP)またはポリエチレン(PE)で形成され、前記絶縁層はエポキシ樹脂、硬化剤及び無機充填剤を含有する樹脂組成物で形成される、請求項1に記載の印刷回路基板用絶縁フィルム。
【請求項6】
前記無機充填剤は、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、炭化ケイ素(SiC)、硫酸バリウム(BaSO4)、タルク、雲母粉、水酸化アルミニウム(AlOH3)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、炭酸カルシウム(CaCO3)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、酸化マグネシウム(MgO)、窒化ホウ素(BN)、ホウ酸アルミニウム(AlBO3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、及びジルコン酸カルシウム(CaZrO3)から選択される一つ以上である、請求項1に記載の印刷回路基板用絶縁フィルム。
【請求項7】
前記絶縁フィルムは、キャリアフィルムと絶縁層との間に配置されたプライマー層をさらに含む、請求項1に記載の印刷回路基板用絶縁フィルム。
【請求項8】
前記プライマー層は、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、熱可塑性樹脂、及び無機充填剤を含有する樹脂組成物で形成される、請求項7に記載の印刷回路基板用絶縁フィルム。
【請求項9】
前記絶縁層に、ガラス繊維が含有されたプリプレグを含む、請求項1に記載の印刷回路基板用絶縁フィルム。
【請求項10】
前記ガラス繊維は、E−ガラス、T−ガラス、S−ガラス、及びクォーツ(quarts)ガラスからなる群から選択される一つ以上である、請求項9に記載の印刷回路基板用絶縁フィルム。
【請求項11】
前記絶縁フィルムは、キャリアフィルムとプリプレグとの間に配置されたプライマー層をさらに含む、請求項9に記載の印刷回路基板用絶縁フィルム。
【請求項12】
前記プライマー層は、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、熱可塑性樹脂、及び無機充填剤を含有する樹脂組成物で形成される、請求項11に記載の印刷回路基板用絶縁フィルム。
【請求項13】
請求項1に記載の絶縁層のカバーフィルムが除去された面が、所定の回路パターンが形成された基材上に接続して積層される、印刷回路基板。
【請求項14】
請求項9に記載のプリプレグのカバーフィルムが除去された面が、所定の回路パターンが形成された基材上に接続して積層される、印刷回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷回路基板用絶縁フィルム及びそれを用いた製品に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、電子産業が飛躍的に発展するにつれて、電子製品の性能も高性能化、多機能化、及び複合化している。この電子製品の傾向に応じて、その部品も高性能化、多機能化、及び複合化している状況である。部品の中でも、特に、印刷回路基板が高機能化、微細化、及び薄層化している。印刷回路基板の回路の微細化及び薄層化のために、低い粗さ及び熱膨張係数を有するフィルム形態の絶縁材料、特に高分子複合材料に対する関心が高まっている。このフィルム形態の絶縁材料の熱膨張率を低めるために、無機充填剤の充填量を増加させているが、無機充填剤の充填量が増加すると、印刷回路基板の工程において二つの問題点が発生する恐れがある。
【0003】
第一に、絶縁材料と金属回路との剥離強度(peel strength)が低下する恐れがある。現在、ビルドアップ絶縁フィルムの密着力は、硬化された絶縁フィルムの表面を化学的にエッチングして表面粗さを形成した後、その上にめっきを行うことにより、絶縁材料と金属回路との物理的結合(anchor)及び部分的な化学的結合がなされる。この際、無機充填剤の充填量が増加された絶縁フィルムでは、表面粗さ及び化学的結合が制限される。
【0004】
第二に、絶縁フィルムを接合する際に、高い粘度特性によって流れ性が低下し、内層回路基板における絶縁材料の回路充填性が制限されるため、絶縁層の内部に空隙(void)及び欠陥(defect)が発生し、これによって、後で印刷回路基板の信頼性の問題が発生する恐れがある。
【0005】
一方、特許文献1には、埋め込みパターンを有する印刷回路基板が開示されているが、絶縁フィルムを内層回路及び内層回路に形成されたビアホール(via hole)やスルーホール(through hole)に充填するには限界点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国登録特許第1022903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明者らは、印刷回路基板において、絶縁層中の無機充填剤の含量が濃度勾配を有する絶縁材及びこれを適用した印刷回路基板を用いることにより、内層回路及び内層回路のスルーホール(through hole)の充填性を向上することを確認し、本発明を成すに至った。
【0008】
したがって、本発明の一つの目的は、内層回路及び内層回路のスルーホールの充填性を向上させることができる印刷回路基板用絶縁フィルムを提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、所定の回路パターンが形成された基材上に、絶縁層の樹脂リッチ領域層が接続して積層された印刷回路基板を提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、所定の回路パターンが形成された基材上に、プリプレグの樹脂リッチ領域層が接続して積層された印刷回路基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一つの目的を達成するための絶縁フィルムは、キャリアフィルムと、前記キャリアフィルム上に形成され、無機充填剤を含む絶縁層と、前記絶縁層上に形成されたカバーフィルムと、を含み、ここで、前記絶縁層中の無機充填剤の含量は、キャリアフィルムからカバーフィルム側に向かって低くなる濃度勾配を有する。
【0012】
本発明の一具現例による前記絶縁層は、無機充填剤リッチ領域層及び樹脂リッチ領域層で構成され、前記無機充填剤リッチ領域層と樹脂リッチ領域層との厚さ比は1:0.25〜1.5である。
【0013】
本発明の一具現例による前記絶縁層の厚さは、10〜40μmである。
【0014】
本発明の一具現例による前記無機充填剤リッチ領域層中の無機充填剤の含量は樹脂組成物に対して70〜95重量%であり、樹脂リッチ領域層中の無機充填剤の含量は樹脂組成物に対して20〜40重量%である。
【0015】
本発明の一具現例による前記キャリアフィルムはポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリイミド(PI)で形成され、前記カバーフィルムはポリプロピレン(PP)またはポリエチレン(PE)で形成され、前記絶縁層はエポキシ樹脂、硬化剤及び無機充填剤を含有する樹脂組成物で形成される。
【0016】
本発明の一具現例による前記無機充填剤は、シリカ(SiO
2)、アルミナ(Al
2O
3)、炭化ケイ素(SiC)、硫酸バリウム(BaSO
4)、タルク、雲母粉、水酸化アルミニウム(AlOH
3)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)
2)、炭酸カルシウム(CaCO
3)、炭酸マグネシウム(MgCO
3)、酸化マグネシウム(MgO)、窒化ホウ素(BN)、ホウ酸アルミニウム(AlBO
3)、チタン酸バリウム(BaTiO
3)、及びジルコン酸カルシウム(CaZrO
3)から選択される一つ以上である。
【0017】
本発明の一具現例による前記絶縁フィルムは、キャリアフィルムと絶縁層との間に配置されたプライマー層をさらに含む。
【0018】
本発明の一具現例による前記プライマー層は、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、熱可塑性樹脂、及び無機充填剤を含有する樹脂組成物で形成される。
【0019】
本発明の他の具現例による絶縁フィルムは、前記絶縁層に、ガラス繊維が含有されたプリプレグを含む。
【0020】
本発明の他の具現例による前記ガラス繊維は、E−ガラス、T−ガラス、S−ガラス、及びクォーツ(quarts)ガラスからなる群から選択される一つ以上である。
【0021】
本発明の他の具現例によるプリプレグを含む絶縁フィルムは、キャリアフィルムとプリプレグとの間に配置されたプライマー層をさらに含む。
【0022】
本発明の他の具現例によるプリプレグを含む絶縁フィルムにおいて、前記プライマー層は、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、熱可塑性樹脂、及び無機充填剤を含有する樹脂組成物で形成される。
【0023】
本発明の他の目的を達成するための印刷回路基板は、本発明の一具現例による絶縁層のカバーフィルムが除去された面が、所定の回路パターンが形成された基材上に接続して積層される。
【0024】
本発明のさらに他の目的を達成するための印刷回路基板は、本発明の他の具現例によるプリプレグのカバーフィルムが除去された面が、所定の回路パターンが形成された基材上に接続して積層される。
【発明の効果】
【0025】
本発明の代表的な実施例による印刷回路基板用絶縁フィルム及びそれを用いた製品によると、絶縁層中の無機充填剤の含量が濃度勾配を有する絶縁材及びそれを適用した印刷回路基板は、内層回路及び内層回路のスルーホールの充填性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施例による絶縁フィルムの断面図である。
【
図2】本発明の他の実施例による絶縁フィルムにおいて、キャリアフィルムと絶縁層との間に配置されたプライマー層をさらに含む絶縁フィルムの断面図である。
【
図3】本発明のさらに他の実施例による絶縁層に、ガラス繊維を含有するプリプレグが形成された絶縁フィルムの断面図である。
【
図4】本発明のさらに他の実施例によるプリプレグを含む絶縁フィルムにおいて、キャリアフィルムとプリプレグとの間に配置されたプライマー層をさらに含む絶縁フィルムの断面図である。
【
図5A】本発明の代表的な実施例による絶縁フィルムを基材上に積層する過程を概略的に示す工程図である。
【
図5B】本発明の代表的な実施例による絶縁フィルムを基材上に積層する過程を概略的に示す工程図である。
【
図5C】本発明の代表的な実施例による絶縁フィルムを基材上に積層する過程を概略的に示す工程図である。
【
図5D】本発明の代表的な実施例による絶縁フィルムを基材上に積層する過程を概略的に示す工程図である。
【
図5E】本発明の代表的な実施例による絶縁フィルムを基材上に積層する過程を概略的に示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の目的、特定の長所及び新規の特徴は、添付図面に係る以下の詳細な説明及び好ましい実施例によってさらに明らかになるであろう。本明細書において、各図面の構成要素に参照番号を付け加えるに際し、同一の構成要素に限っては、たとえ異なる図面に示されても、できるだけ同一の番号を付けるようにしていることに留意しなければならない。また、「一面」、「他面」、「第1」、「第2」などの用語は、一つの構成要素を他の構成要素から区別するために用いられるものであり、構成要素が前記用語によって限定されるものではない。以下、本発明を説明するにあたり、本発明の要旨を不明瞭にする可能性がある係る公知技術についての詳細な説明は省略する。
【0028】
以下、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。
【0029】
(絶縁フィルム)
図1は、本発明の一実施例による絶縁フィルムの断面図である。
【0030】
図1を参照すれば、絶縁フィルム200は、キャリアフィルム12上に無機充填剤を含む絶縁層100を形成した後、前記絶縁層100上にカバーフィルム10を積層することにより形成することができる。
【0031】
前記キャリアフィルム12は、制限されるものではないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリイミド(PI)などで形成することができる。前記絶縁フィルム200を基板に積層し、真空ラミネート工程を行った後、最終的に前記キャリアフィルム12を除去することができる。
【0032】
前記カバーフィルム10は、ポリプロピレン(PP)またはポリエチレン(PE)などで形成することができ、前記絶縁フィルム200を基材上に積層する際に、回路パターン上にラミネート工程を行うために除去することができる。
【0033】
前記絶縁層100は、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、熱可塑性樹脂、及び無機充填剤を含有する樹脂組成物で形成することができ、前記絶縁層100中の無機充填剤の含量は、上/下非対称形態を有する。
【0034】
前記エポキシ樹脂としては、特に制限されないが、一般的に用いられるナフタレン系エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック系エポキシ樹脂、クレゾールノボラック系エポキシ樹脂、ゴム変性型エポキシ樹脂、環状脂肪族系エポキシ樹脂、シリコン系エポキシ樹脂、窒素系エポキシ樹脂、及びリン系エポキシ樹脂から選択される一つ以上であることができる。
【0035】
前記硬化剤としては、通常、エポキシ樹脂に含有されたエポキシド環(epoxide ring)と反応することができる反応基を含むものであれば何れも使用可能であり、特に限定されない。具体的には、脂肪族/芳香族アミン系硬化剤、環状脂肪族アミンとその誘導体硬化剤、酸無水物系硬化剤、ポリアミドアミン系硬化剤、ポリスルフィド硬化剤、フェノール系硬化剤、ビスフェノールA型硬化剤、ジシアンジアミド硬化剤などが挙げられ、前記硬化剤を1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0036】
前記硬化促進剤としては、第3級アミン系、イミダゾール系、ウレア系などが挙げられ、前記硬化剤と1種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
前記熱可塑性樹脂としては、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂などが挙げられ、これらから一つ以上の樹脂を選択することができる。
【0038】
前記無機充填剤としては、シリカ(SiO
2)、アルミナ(Al
2O
3)、炭化ケイ素(SiC)、硫酸バリウム(BaSO
4)、タルク、クレー、雲母粉、水酸化アルミニウム(AlOH
3)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)
2)、炭酸カルシウム(CaCO
3)、炭酸マグネシウム(MgCO
3)、酸化マグネシウム(MgO)、窒化ホウ素(BN)、ホウ酸アルミニウム(AlBO
3)、チタン酸バリウム(BaTiO
3)、及びジルコン酸カルシウム(CaZrO
3)などを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。前記無機充填剤は、特に制限されないが、平均粒子直径が0.01〜5μmであることが好適である。
【0039】
前記絶縁フィルムの絶縁層は、10〜40μmの厚さを有し、無機充填剤リッチ領域層と樹脂リッチ領域層とに区分することができる。前記絶縁層の厚さが10μm未満であると、内層回路を充填する際に絶縁材としての役割を十分に果たすことができず、40μmを超過すると、印刷回路基板の薄板化を実現することが困難となる恐れがある。
【0040】
前記絶縁層中の無機充填剤リッチ領域層と樹脂リッチ領域層との厚さ比は1:0.25〜1.5である。前記樹脂リッチ領域層の厚さ比が0.25未満であると、前記絶縁層の流れ性が低下して内層回路を充填する際に問題が発生する恐れがあり、1.5を超過すると、前記絶縁層の熱膨張係数特性が低下する恐れがある。
【0041】
前記無機充填剤リッチ領域層中の無機充填剤の含量は、樹脂組成物に対して70〜95重量%が好適である。前記無機充填剤リッチ領域層中の無機充填剤の含量が70重量%未満であると、絶縁層の熱膨張係数が低下する恐れがあり、95重量%を超過すると、絶縁層自体の脆性(brittle)が増加して、レーザードリル加工を行う際に問題が発生する恐れがある。
【0042】
前記樹脂リッチ領域層中の無機充填剤の含量は、樹脂組成物に対して20〜40重量%が好適である。前記樹脂リッチ領域層中の無機充填剤の含量が20重量%未満であると、絶縁層の熱膨張係数が低下する恐れがあり、40重量%を超過すると、流れ性が低下して内層回路を充填する際に問題が発生する恐れがある。
【0043】
前記絶縁層は、樹脂組成物が収容されているサービスタンク(service tank)からキャスティング(casting)設備の前段のスロットダイヘッド(slot die head)に樹脂組成物が移送され、前記移送された樹脂組成物を、走行しているキャリアフィルムロール上にスロットダイヘッドの吐出部を介して吐出することにより形成することができる。
【0044】
前記スロットダイヘッドは、前記絶縁層の無機充填剤リッチ領域層及び樹脂リッチ領域層を形成するために、二重吐出を行うことができる。前記絶縁層は一定の厚さの塗膜に形成された後、キャスティング乾燥炉で乾燥過程を経て、合紙ロールによりカバーフィルムと合紙させることにより、本発明の絶縁フィルムを形成することができる。
【0045】
図2は、本発明の他の実施例による絶縁フィルムにおいて、キャリアフィルムと絶縁層との間に配置されたプライマー層をさらに含む絶縁フィルムの断面図である。
【0046】
図2を参照すれば、絶縁フィルム200は、キャリアフィルム12と絶縁層100との間に配置されたプライマー層120をさらに含むことができる。
【0047】
前記プライマー層120は、前記絶縁層100の無機充填剤リッチ領域層上にめっき工程により金属層を形成する際に、絶縁層100と金属層との密着力を高めるために前記絶縁層100の無機充填剤リッチ領域層上に形成されるものであって、5μm未満の厚さを有することが好適である。
【0048】
前記プライマー層120は、金属層との密着力を強化させるために、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、熱可塑性樹脂、及び無機充填剤を含有する樹脂組成物で形成することができる。また、プライマー層120は、特に制限されないが、めっきの密着力を向上させる物質をさらに含むことができる。
【0049】
図3は、本発明のさらに他の実施例による絶縁層に、ガラス繊維を含有するプリプレグが形成された絶縁フィルムの断面図である。
【0050】
図3を参照すれば、絶縁フィルム200は、キャリアフィルム12上の無機充填剤を含む絶縁層内に、ガラス繊維を含有するプリプレグ110が形成される。次に、前記プリプレグ110上にカバーフィルム10を積層することにより、絶縁フィルムを形成することができる。
【0051】
前記キャリアフィルムは、制限されるものではないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリイミド(PI)などで形成することができる。前記プリプレグを基板に積層し、真空ラミネート工程を行った後に、前記キャリアフィルムを最終的に除去することができる。
【0052】
前記カバーフィルムは、ポリプロピレン(PP)またはポリエチレン(PE)などで形成することができ、前記プリプレグを含む絶縁フィルムを基材上に積層する際に、回路パターン上にラミネート工程を行うために除去することができる。
【0053】
前記プリプレグ110は、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、熱可塑性樹脂、及び無機充填剤を含有する樹脂組成物で形成することができ、前記プリプレグ110に含有されたガラス繊維を基準として、無機充填剤の含量が上/下非対称形態を有する。
【0054】
前記ガラス繊維は、熱膨張係数特性を向上させるために含まれるものであって、特に制限されないが、E−ガラス、T−ガラス、S−ガラス、及びクォーツ(quarts)ガラスからなる群から選択される一つ以上であることができる。
【0055】
前記エポキシ樹脂としては、特に制限されないが、一般的に用いられるナフタレン系エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック系エポキシ樹脂、クレゾールノボラック系エポキシ樹脂、ゴム変性型エポキシ樹脂、環状脂肪族系エポキシ樹脂、シリコン系エポキシ樹脂、窒素系エポキシ樹脂、及びリン系エポキシ樹脂から選択される一つ以上であることができる。
【0056】
前記硬化剤としては、通常、エポキシ樹脂に含有されたエポキシド環(epoxide ring)と反応することができる反応基を含むものであれば何れも使用可能であり、特に限定されない。具体的には、脂肪族/芳香族アミン系硬化剤、環状脂肪族アミンとその誘導体硬化剤、酸無水物系硬化剤、ポリアミドアミン系硬化剤、ポリスルフィド硬化剤、フェノール系硬化剤、ビスフェノールA型硬化剤、ジシアンジアミド硬化剤などが挙げられ、前記硬化剤を1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0057】
前記硬化促進剤としては、第3級アミン系、イミダゾール系、ウレア系などが挙げられ、前記硬化剤と1種以上を組み合わせて用いることができる。
【0058】
前記熱可塑性樹脂としては、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂などが挙げられ、これらから一つ以上の樹脂を選択することができる。
【0059】
前記無機充填剤としては、シリカ(SiO
2)、アルミナ(Al
2O
3)、炭化ケイ素(SiC)、硫酸バリウム(BaSO
4)、タルク、クレー、雲母粉、水酸化アルミニウム(AlOH
3)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)
2)、炭酸カルシウム(CaCO
3)、炭酸マグネシウム(MgCO
3)、酸化マグネシウム(MgO)、窒化ホウ素(BN)、ホウ酸アルミニウム(AlBO
3)、チタン酸バリウム(BaTiO
3)、及びジルコン酸カルシウム(CaZrO
3)などを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。前記無機充填剤は、特に制限されないが、平均粒子直径が0.01〜5μmであることが好適である。
【0060】
前記プリプレグは、樹脂組成物が収容されているサービスタンク(service tank)からキャスティング(casting)設備の前段のスロットダイヘッド(slot die head)に樹脂組成物が移送され、前記移送された樹脂組成物を、走行しているキャリアフィルムロール上にスロットダイヘッドの吐出部を介して吐出することにより形成することができる。
【0061】
前記スロットダイヘッドは、無機充填剤リッチ領域層、樹脂リッチ領域層、及び前記無機充填剤リッチ領域層と樹脂リッチ領域層との間に配置されたガラス繊維を含有するプリプレグを形成するために、三重吐出を行うことができる。前記三重吐出により、キャリアフィルムロール上に、無機充填剤リッチ領域層、ガラス繊維、及び樹脂リッチ領域層が順に形成される。前記プリプレグは、一定の厚さの塗膜に形成された後、キャスティング乾燥炉で乾燥過程を経て、合紙ロールによりカバーフィルムと合紙させることにより、本発明の絶縁フィルムを形成することができる。
【0062】
図4は、本発明のさらに他の実施例によるプリプレグを含む絶縁フィルムにおいて、キャリアフィルムとプリプレグとの間に配置されたプライマー層をさらに含む絶縁フィルムの断面図である。
【0063】
図4を参照すれば、絶縁フィルム200は、キャリアフィルム12とプリプレグ110との間にプライマー層120をさらに含んで形成することができる。
【0064】
前記プライマー層120は、前記プリプレグの無機充填剤リッチ領域層上にめっき工程により金属層を形成する際に、プリプレグと金属層との密着力を高めるために前記プリプレグの無機充填剤リッチ領域層上に形成されるものであって、5μm未満の厚さを有することが好適である。
【0065】
前記プライマー層120は、金属層との密着力を強化させるために、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、熱可塑性樹脂、及び無機充填剤を含有する樹脂組成物で形成されることができる。また、前記プライマー層120は、特に制限されないが、めっきの密着力を向上させる物質をさらに含むことができる。
【0066】
(印刷回路基板)
図5Aから
図5Eは、本発明の代表的な実施例による絶縁フィルムを基材上に積層する過程を概略的に示す工程図である。
【0067】
図5A及び
図5Bを参照すれば、所定の回路パターン310が形成された基材300上に、カバーフィルム10が除去された絶縁フィルムを積層することができる。
【0068】
この際、前記回路パターン310上に積層される面は、絶縁層100のカバーフィルム10が除去された面である。
【0069】
前記回路パターン310上に絶縁層100のカバーフィルム10が除去された面を接続させて積層する理由は、前記絶縁層100の樹脂リッチ領域層が無機充填剤リッチ領域層より粘性が低く、流動性が大きいため、前記回路パターン310の間に空隙(void)が発生することを抑制することができ、回路パターン310の間の充填性を向上させることができるためである。
【0070】
また、内層回路のビアホール(via hole)またはスルーホール(through hole)を充填する際に、別のプラッギング(plugging)工程を行わなくても内層回路を充填することができる。基材300上に積層されるカバーフィルム10が除去された絶縁フィルム200は、真空ラミネートなどの高温加圧工程を経た後、最終的にキャリアフィルム12を除去することができる。
【0071】
また、特に限定されないが、本発明の代表的な実施例による絶縁フィルムの他にも、絶縁層にプライマー層をさらに含む絶縁フィルム、プリプレグを含む絶縁フィルム、及びプリプレグにプライマー層をさらに含む絶縁フィルムも、所定の回路パターンが形成された基材上に積層することができる。
【0072】
以上、本発明を具体的な実施例に基づいて詳細に説明したが、これは本発明を具体的に説明するためのものであり、本発明はこれに限定されず、該当分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想内にての変形や改良が可能であることは明白であろう。
【0073】
本発明の単純な変形乃至変更はいずれも本発明の領域に属するものであり、本発明の具体的な保護範囲は添付の特許請求の範囲により明確になるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、印刷回路基板用絶縁フィルム及びそれを用いた製品に適用可能である。
【符号の説明】
【0075】
10 カバーフィルム
12 キャリアフィルム
100 絶縁層
110 プリプレグ
120 プライマー層
200 絶縁フィルム
300 基材
310 回路パターン